説明

コイン選別機

【目的】 コンパクトに資するコイン選別機を提供する。
【構成】 投入されたコインをスロープに沿って下降させ、そのスロープに沿って設けた複数のコイン選別開口によって、前記コインを外径別に選別するコイン選別機において、前記スロープが折り返され、そのスロープの往路および復路いずれにも前記コイン選別開口が設けられていることを特徴とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、外径の異なるコインを選別するためのコイン選別機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コイン選別機として、投入されたコインをスロープに沿って下降させ、そのスロープに沿って設けた複数のコイン選別開口によって、前記コインを外径別に選別するものが知られている。この種のコイン選別機については、例えば、実公昭62−13170号公報に記載されている。
【0003】
このコイン選別機1は、例えば、現在日本国内で用いられている1円、50円、5円、100円、10円および500円の各硬貨(コイン種の1つ)を選別するための使用されている。周知の通り、前記硬貨の外径は、1円、50円、5円、100円、10円および500円の順に大きくなっている。したがって、各硬貨の外径よりも高さ寸法・幅寸法が僅かに大きいコイン選別開口を、小さい順にスロープに沿って設けておき、 投入された硬貨を1円、50円、5円、100円、10円および500円の順にコイン選別開口から脱落させて、選別してゆくものである。もちろん、このコイン選別機は、硬貨の外径さえ異なれば、外国の硬貨の選別にも適用できるし、また、玩具に用いられるコインにも適用できる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、この種のコイン選別機においては、各コイン選別開口の幅寸法が、自身が選別すべきコインの外径よりも大きくなっている上に、それらが、直線状のスロープの脇に設けられているため、スロープの直線距離が長くなり、結局、コイン選別機の幅寸法が奥行き寸法に比べて大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
本考案は、このような問題点に鑑みなされたもので、コンパクトに資するコイン選別機を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の手段は、投入されたコインをスロープに沿って下降させ、そのスロープに沿って設けた複数のコイン選別開口によって、前記コインを外径別に選別するコイン選別機において、前記スロープを折り返し、そのスロープの往路および復路いずれにも前記コイン選別開口を設けたものである。
【0007】
第2の手段は、投入されたコインをスロープに沿って下降させ、そのスロープに沿って設けた複数のコイン選別開口によって、前記コインを外径別に選別するコイン選別機において、前記コイン選別開口のうちの少なくとも1つの横寸法は、対応するコインの外径よりも小さくなっているものである。
【0008】
第3の手段は、第1の手段において、前記コイン選別開口のうちの少なくとも1つの横寸法を、対応するコインの外径よりも小さくしたものである。
【0009】
第4の手段は、第1〜第3の手段におけるコイン選別開口を画成する開口枠を、スロープの往路および復路において、反対方向に傾斜させたものである。
【0010】
第5の手段は、第4の手段におけるスロープの折返し部分に、コインを一旦起立させる起立案内部材を設けたものである。
【0011】
【作用】
スロープを折り返し、そのスロープの往路および復路いずれにもコイン選別開口を設けたものによれば、コイン選別開口が並列的に並ぶことになり、コイン選別機の横寸法を小さくすることが可能である。勿論、その分、コイン選別機の奥行は大きくなるが、コイン選別機を組み込んだ装置全体の上から見た形状は方形あるいは円形に近くなり、コンパクトになるとともに、全体としてバランスの良いものとなり、外郭のデザインの構成上でも有利となる。また、コイン選別開口のうちの少なくとも1つの横寸法を、対応するコインの外径よりも小さくしたものでは、スロープ全体の長さを短くし、その分だけ、コンパクト化を図ることができる。
【0012】
【実施例】
以下、本考案の一実施例に係るコイン選別機について、図面を参照して説明する。
図1には実施例のコイン選別機の外観斜視図が示されている。このコイン選別機1は、2個のセレクト板2、3とを有し、これらセレクト板2、3は左側から見ると、図2に示すように、「y」字形状に組み合わされ、その両端は、三角形状の端板4、4(図4参照)によって塞がれた構造となっている。このコイン選別機1は、図2に示すように、セレクト板2、3がそれぞれ一の鉛直面に対して反対方向に傾斜するように設置される。例えば、図2に示すように、セレクト板2、3がそれぞれ水平面と例えば70゜の角度をなすように設置される。このコイン選別機1には、コイン(この実施例では硬貨)5を投入するためのコイン投入口6と、このコイン投入口6から投入されたコイン5を転動させるためのスロープ7、8と、これらスロープ7、8に沿って設けられたコイン選別開口9a、9b、9c、9d、9e、9fとを有している。そして、コイン投入口6から投入されたコイン5を、スロープ7、8上で転動させ、コイン選別開口9a、9b、9c、9d、9e、9fによって、コイン5を大きさ(外径)別に選別するようになっている。
【0013】
次に、このコイン選別機1の詳細を説明する。
【0014】
コイン投入口6はセレクト板2に付設されている。このコイン投入口6は、選別すべきコインすべてを受容できる大きさとなっている。この実施例のコイン選別機1は、1円玉、5円玉、10円玉、50円玉、100円玉および500円玉を選別するためのものであるので、コイン投入口6を、そのコインの中で一番大きな500円玉を受容できる大きさとすれば、他のすべての硬貨を受容できることになる。
【0015】
セレクト板2におけるコイン投入口6下側には、図3に示すように、スロープ7の始端部が位置している。このスロープ7は下り勾配を有しており、コイン投入口6から投入されたコイン5を始端部で受け、そのコイン5を自重によって転動させつつ下降させる働きをする。つまり、スロープ7はコイン5の転動面を構成している。また、このスロープ7の転動面はセレクト板2の主面と直角をなしており、スロープ7を転動するコイン5の片面を、セレクト板7の主面(開口枠)に凭れかからせ易くなっている。
【0016】
6個のコイン選別開口のうちコイン選別開口9a、9b、9cは、この順に、スロープ7に沿うようにしてセレクト板2に形成されている。これらコイン選別開口9a、9b、9cは、それぞれ、1円玉、50円玉、5円玉を選別するためのものである。すなわち、コイン選別開口9a、9b、9cは、6種のコインのうちで大きさの小さいものから順に3個のコインを選別するためのものである。
このコイン選別開口9a、9b、9cの上縁の、スロープ7の転動面からの高さ寸法は、それぞれ、1円玉、50円玉、5円玉の外径寸法よりも大きくなっている。しかし、コイン選別開口9a、9b、9cの横寸法は、必ずしも、対応するコイン5の外径よりも大きくなっていなくとも良い。というのは、コイン選別開口9a、9b、9cの上縁の、スロープ7の転動面からの高さ寸法が、対応するコイン5の外径よりも大きくなっているので、コイン5がゆっくりとスロープ7を転動する場合を考えると、対応するコイン5の前側半分以上がコイン選別開口9a、9b、9cに干渉すると、セレクト板2の傾き故に、コイン5の前半部は支えを失い、その前半部が自重によって外方へぐらつき、コイン5の先端がコイン選別開口9a、9b、9cの前縁に突き当たり、当該コイン選別開口内へ呑み込まれてしまうからである。このようにすれば、スロープ7の全体的な長さを短くすることができる。但し、スロープ7の勾配が急で、コイン5の下降速度がすごく速い場合には、コイン選別開口9a、9b、9cの横寸法を、対応するコイン5の外径寸法よりも大きめにするか、コイン選別開口9a、9b、9c近傍に、対応するコイン5の先端をコイン選別開口9a、9b、9cに向かわせる案内部を設けるようにすれば良い。
【0017】
なお、前記スロープ7の終端部はコイン選別開口9cの前縁下側にまで延びている。また、このスロープ7の終端部先には、コイン5を他のセレクト板3に受け渡すための連絡部10が設けられている。すなわち、コイン選別開口9cを通過したコイン5を一旦端板4に突き当て、コイン5の速度を0となした上で、連絡部10を通じてセレクト板3に受け渡すようになっている。さらに、コイン選別開口9cの上および横には、コイン選別開口9cを通過したコイン5を起立させる三角形状の折返し用案内板11a、11bが設けられている。この折返し用案内板11a、11bは、セレクト板2の主面に凭れ掛かっていたコイン5を起立させて、セレクト板3に受け渡す働きをする。
【0018】
一方、セレクト板3においては、図4に示すように、連絡口10の下側に、スロープ8の始端部が位置している。このスロープ8は下り勾配を有しており、連絡部10を通じて入ってきたコイン5を始端部で受け、そのコイン5を自重によって転動させつつ下降させる働きをする。つまり、スロープ8は、前記スロープ7と同様に、コイン5の転動面を構成している。また、このスロープ8の転動面は、前記スロープ7と同様に、セレクト板3の主面と直角をなしており、スロープ8を転動するコイン5の片面を、セレクト板8の主面(開口枠)に凭れかからせ易くなっている。
【0019】
コイン選別開口9d、9e、9fは、この順に、スロープ8に沿うようにしてセレクト板3に形成されている。これらコイン選別開口9d、9e、9fは、それぞれ、100円玉、10円玉、500円玉を選別するためのものである。このコイン選別開口9d、9e、9fの上縁の、スロープ8からの高さ寸法は、それぞれ、100円玉、10円玉、500円玉の外径寸法よりも大きくなっている。
しかし、コイン選別開口9d、9e、9fの横寸法は、必ずしも、対応するコイン5の外径よりも大きくなっていなくとも良い。理由は、コイン選別開口9a、9b、9cのところで述べた通りである。
【0020】
なお、スロープ8の終端部はコイン選別開口9fの前縁下側まで延びている。
【0021】
このように構成されたコイン選別機1によれば、コイン選別開口9a、9b、9cによって選別されたコイン(1円玉、50円玉、5円玉)5はコイン選別機1の裏側に落ち、コイン選別開口9d、9e、9fによって選別されたコイン(100円玉、10円玉、500円玉)5はコイン選別機1の表側に落ちる。したがって、選別されたコイン5を受けるためのコイン受けはコイン選別機1の表裏に設置されることになる。図5には、筒状コイン受け20をコイン選別機1の周りに配した例が示されている。
【0022】
以上のように構成されたコイン選別機1によれば、コイン選別開口9a、9b、9cと、コイン選別開口9d、9e、9fとが並列的に並ぶことになり、コイン選別機1の横幅を小さくすることが可能である。勿論、その分、コイン選別機1の奥行は大きくなるが、コイン選別機1を組み込んだ装置全体の上から見た形状は方形あるいは円形に近くなり、コンパクトになるとともに、全体としてバランスの良いものとなり、外郭のデザインの構成上でも有利となる。
【0023】
以上、本考案者のなした実施例について説明したが、本考案は、かかる実施例に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。
【0024】
例えば、前記実施例では、コイン選別開口をスロープの横にそのスロープに沿って設けたが、スロープを幅広にして、そのスロープ自体に、しかもそのスロープに沿ってコイン選別開口を設けてもよい。
【0025】
【考案の効果】
以上のように、本考案のコイン選別機によれば、コイン選別開口が並列的に並ぶことになり、コイン選別機の横幅を小さくすることが可能である。勿論、その分、コイン選別機の奥行は大きくなるが、コイン選別機を組み込んだ装置全体の上から見た形状は方形あるいは円形に近くなり、コンパクトになるとともに、全体としてバランスの良いものとなり、外郭のデザインの構成上でも有利となる。
また、コイン選別開口のうちの少なくとも1つの横寸法を、対応するコインの外径よりも小さくしたものでは、スロープ全体の長さを短くし、その分だけ、コンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のコイン選別機の外観斜視図である。
【図2】実施例のコイン選別機の左側面図である。
【図3】実施例のコイン選別機の一方のセレクト板の構成図である。
【図4】実施例のコイン選別機の他方のセレクト板の構成図である。
【図5】実施例のコイン選別機におけるコイン受けの配置状態を示す図である。
【符号の説明】
1 コイン選別機
5 コイン
7,8 スロープ
9a,9b,9c,9d,9e,9f コイン選別開口

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 投入されたコインをスロープに沿って下降させ、そのスロープに沿って設けた複数のコイン選別開口によって、前記コインを外径別に選別するコイン選別機において、前記スロープが折り返され、そのスロープの往路および復路いずれにも前記コイン選別開口が設けられていることを特徴とするコイン選別機。
【請求項2】 投入されたコインをスロープに沿って下降させ、そのスロープに沿って設けた複数のコイン選別開口によって、前記コインを外径別に選別するコイン選別機において、前記コイン選別開口のうちの少なくとも1つの横寸法は、対応するコインの外径よりも小さくなっていることを特徴とするコイン選別機。
【請求項3】 前記コイン選別開口のうちの少なくとも1つの横寸法は、対応するコインの外径よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1記載のコイン選別機
【請求項4】 前記コイン選別開口を画成する開口枠は、前記スロープの往路および復路において、一の鉛直面に対して反対方向に傾斜していることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかに記載のコイン選別機。
【請求項5】 前記スロープの折返し部分には、前記コインを起立させる起立案内部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のコイン選別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】第3001110号
【登録日】平成6年(1994)6月8日
【発行日】平成6年(1994)8月23日
【考案の名称】コイン選別機
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−2043
【出願日】平成6年(1994)2月16日
【出願人】(000003584)株式会社トミー (248)
【出願人】(000134394)株式会社トイボックス (4)