説明

コネクタ及びワイヤハーネス

【課題】組み付けが容易で、かつハウジングの外面に装着されたシール部材を抜け止めすることが可能なコネクタ、及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、電線10の一端部に接続される端子2と、端子2の筒状部21を収容する収容部611を有するハウジング3と、収容部21の外面に装着される環状のシール部材4と、シール部材4を抜け止めする抜け止め部材5とを備え、抜け止め部材5は、収容部611への筒状部21の挿入方向とは反対方向から収容部611に係合する係合部52と、収容部611のシール部材4との接触面よりも外側に張り出してシール部材4の側面4cに対向する壁部51とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材を外周に有するコネクタ、及び当該コネクタを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングの外周面に装着されたシール部材を有するコネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタは、電線の一端に接続される端子と、電線及び端子の接続部分の周りにモールド成型される第1ハウジングと、電線を挿通させる電線挿通孔を有し、第1ハウジングに対して軸方向に沿って組み付けられる第2ハウジングと、第2ハウジングの外周面に装着されるシール部材とを備えている。そして、このシール部材は、第1ハウジング及び第2ハウジングにそれぞれ設けられた一対の位置決め部によって軸方向の両側が挟まれることにより、第1及び第2ハウジングに対する軸方向移動が規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコネクタでは、第1ハウジングをモールド成型した後に、モールドされた端子の側から第2ハウジングの電線挿通孔に電線を挿通させることができないので、第1ハウジングと第2ハウジングとを組み付けるには、第2ハウジングの電線挿通孔に電線の他端を挿入し、電線のほぼ全長にわたって第2ハウジングを電線に沿って移動させるか、もしくは第2ハウジングに電線の一端を予め挿通した状態で第1ハウジングのモールド成型を行う必要がある。
【0006】
前者の場合には、電線の全長が長いと第2ハウジングを電線に沿って移動させるために多大な工数が必要となり、また電線の両端に同様のコネクタを設ける場合には、この手順によって組み付けを行うことができない。一方、後者の場合には、第1ハウジングのモールド成型を行う際に第2ハウジングを電線に仮固定しなければならず、この仮固定、及び仮固定の解除のための工数が発生する。つまり、何れの組み付け手順を採用しても、余分な工数がかかるという構造上の問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、組み付けが容易で、かつハウジングの外面に装着されたシール部材を抜け止めすることが可能なコネクタ、及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、電線の一端部に接続される端子と、前記端子の少なくとも一部を収容する収容部を有するハウジングと、前記収容部の外面に装着される環状のシール部材と、前記シール部材を抜け止めする抜け止め部材とを備え、前記抜け止め部材は、前記収容部への前記端子の挿入方向とは反対方向から前記収容部に係合する係合部と、前記収容部の前記シール部材との接触面よりも外側に張り出して前記シール部材の側面に対向する壁部とを有するコネクタを提供する。
【0009】
また、前記抜け止め部材の前記係合部は、前記収容部の内面に形成された凹部に係合する係合突起と、前記係合突起と前記壁部とを連結する弾性変形可能な連結部とを有しているとよい。
【0010】
また、前記ハウジングは、前記収容部を有するアウタハウジングと、前記アウタハウジングの内部に配置されるインナハウジングとを有して構成され、前記インナハウジングは、前記端子の少なくとも一部を収容すると共に前記収容部に嵌合される嵌合部を有し、前記係合突起は、前記凹部との係合が解除される方向の変位が前記嵌合部により規制されているとよい。
【0011】
また、前記収容部は、前記端子が挿入される第1の開口端と前記係合部が挿入される第2の開口端との間の外周に、前記シール部材を介して前記壁部に対向する第1の段差面と、前記第1の段差面よりも前記第1の開口端側に形成され、前記第1の段差面の外周側に形成された第2の段差面とを有し、前記収容部が相手側コネクタの受容部に受容されたとき、前記第2の段差面が前記受容部の端面に対向するとよい。
【0012】
また、前記端子は、前記電線が圧着される電線接続部の中心軸線が、前記収容部に挿入され、相手側コネクタの端子に接触する接触部の中心軸線と交差するように形成されているとよい。
【0013】
また、前記電線は、車両の走行用の駆動源としての電動モータにモータ電流を供給するモータ電流供給用の電線であってもよい。
【0014】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の何れかに記載のコネクタと、前記端子が接続される電線とを有するワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、組み付けが容易で、かつハウジングの外面に装着されたシール部材を抜け止めすることが可能なコネクタ、及びワイヤハーネスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るコネクタ、及びコネクタを有するワイヤハーネスを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【図2】端子を示す斜視図である。
【図3】ばね部材を示す斜視図である。
【図4】第3ハウジング部材を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のB−B線断面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【図5】シール部材を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図6】抜け止め部材を示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は背面図、(d)は側面図、(e)は斜視図である。
【図7】(a)は、アウタハウジングの第1ハウジング部材に、インナハウジングの第3ハウジング部材、端子、シール部材、及び抜け止め部材が組み付けられた状態を示す拡大断面図である。(b)は、コネクタ1が嵌合される相手側コネクタ9の構成を示す断面図である。
【図8】コネクタと相手側コネクタが嵌合した状態を示す断面図である。
【図9】第1ハウジング部材にシール部材及び抜け止め部材を組み付ける手順を示す説明図である。
【図10】第1ハウジング部材、シール部材、抜け止め部材、及び第3ハウジング部材を第1ハウジング部材の第2の開口端側から見た分解斜視図である。
【図11】図10に示す各部材を第1ハウジング部材61の第1の開口端側から見た分解斜視図である。
【図12】第3ハウジング部材の嵌合部に端子の一部である筒状部を収容した状態を、第4ハウジング部材、Oリング、及び第2ハウジング部材と共に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係るコネクタ、及びワイヤハーネスを、図1〜図12を参照して説明する。このワイヤハーネスは、例えば車両の走行用の駆動源としての電動モータにモータ電流を供給するために用いられる。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るコネクタ、及びコネクタを有するワイヤハーネスを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【0019】
このワイヤハーネス100は、3本の電線10と、電線10の一端部に設けられたコネクタ1とを有している。コネクタ1は、3本の電線10のそれぞれの一端部に接続される3つの端子2と、端子2を保持するハウジング3と、ハウジング3に装着されるシール部材4と、シール部材4を抜け止めする抜け止め部材5とを備えている。
【0020】
電線10は、図1(c)に示すように、銅等の導電性の金属からなる芯線11と、芯線11を被覆する被覆部材12を有している。芯線11は、例えば複数の導体素線を撚り合わせた複数の子撚線を、さらに撚り合わせて形成された撚線(親撚線)である。なお、図示は省略しているが、電線10の他端部にも同様の構成を有するコネクタ1が設けられている。
【0021】
電線10の両端部に設けられた一対のコネクタ1は、例えば一方が車両の走行用の駆動源としての電動モータに接続され、他方がPWM(Pulse Width Modulation)制御によるスイッチングにより三相交流電流を発生させるインバータに接続される。この場合、電線10は、電動モータにモータ電流を供給するモータ電流供給用の電線として機能する。
【0022】
ハウジング3は、図1(c)に示すように、アルミニウム等の導電性を有する金属からなるアウタハウジング60と、非導電性のPBT(Polybutylene terephthalate:ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性樹脂からなるインナハウジング70とを備えている。インナハウジング70は、アウタハウジング60の内部に配置されている。
【0023】
アウタハウジング60は、インナハウジング70を収容する収容空間を有する第1ハウジング部材61と、第1ハウジング部材61の収容空間を覆う板状の第2ハウジング部材62とを有している。第1ハウジング部材61と第2ハウジング部材62とは、複数(本実施の形態では4本)のボルト64によって固定されている。また、第1ハウジング部材61には、外方に突出するボルト保持部610が3箇所に形成され、各ボルト保持部610には、インバータ等の機器側にコネクタ1を固定するためのボルト65が回転可能に保持されている。
【0024】
インナハウジング70は、内部に3つの端子2を収容する収容空間を有する第3ハウジング部材71と、第3ハウジング部材71に嵌合される第4ハウジング部材72とを有している。第4ハウジング部材72は、第3ハウジング部材71の収容空間を覆う蓋として機能し、第3ハウジング部材71との間に3本の電線10を挟持している。第4ハウジング部材72と第1ハウジング部材61との間には、Oリング631が配置されている。
【0025】
第3ハウジング部材71には、第1ハウジング部材61の収容部611に嵌合される嵌合部711が形成され、この嵌合部711に端子2の一部が収容されている。端子2は、第4ハウジング部材72に形成された内方突起721によって嵌合部711から抜け出さないように移動規制されている。収容部611、嵌合部711、及び端子2の詳細については後述する。
【0026】
コネクタ1からの電線10の導出部には、シール部材632が配置されると共に、編組シールド層81、及び編組シールド層81を覆うカバー部材82が締付リング83によって固定されている。
【0027】
図2は、端子2を示す斜視図である。端子2は、一端に相手側の端子が挿入される筒状の筒状部21を有し、他端に電線10の一端部が接続される電線接続部23を有し、筒状部21と電線接続部23とが連結部22によって連結されている。筒状部21は、相手側コネクタの端子に接触する接触部の一例である。端子2の材料としては、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、銅、銅合金等の導電性の金属を用いることができる。また、端子2の表面を錫等によってメッキしてもよい。
【0028】
筒状部21は、四辺が底部211、一対の側部212,213、及び天井部214から形成された断面矩形状である。筒状部21の天井部214と一対の側部212,213との間の角部には、4つの開口21aが形成されている。また、底部211には、天井部214との対向面に、筒状部21の長手方向に沿って延びる一対の突条211bが形成されている。
【0029】
電線接続部23は、長円状に扁平した管状であり、かしめによって電線10の一端部が圧着される。端子2は、筒状部21の中心軸線Cと電線接続部23の中心軸線Cとが互いに直交して交差するL型端子である。筒状部21には、次に述べるばね部材24が収容される。
【0030】
図3は、ばね部材24を示す斜視図である。ばね部材24は、緩やかに湾曲して形成された湾曲部240と、端子2の開口21aに係止される4つのL字状の爪部241と、湾曲部240と爪部241とを連結する連結部242とを一体に有する。湾曲部240は、その弾性によって、相手側端子を一対の突条211bに押し付ける。
【0031】
図4は、第3ハウジング部材71を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のB−B線断面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【0032】
第3ハウジング部材71は、平板状の底部710a、及び底部710aの周縁に立設された側壁710bからなる本体部710と、底部710aに直交するように突出して形成され、3つの端子2の筒状部21を収容する嵌合部711とを一体に有している。嵌合部711は、有底筒状に形成され、その底部には、相手側端子を挿通させる3つのスリット状の開口711aが形成されている。嵌合部711には、2つの隔壁部711bが形成され、この隔壁部711bによって隣り合う端子2の筒状部21の収容空間が区画されている。図4(a)及び(e)では、この隔壁部711bを破線で示している。
【0033】
図5は、シール部材4を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【0034】
シール部材4は、外周面4aと内周面4bとの間に、互いに向かい合う一対の側面4cを有する帯状環体の弾性体である。シール部材4は、断面長方形状の本体部40と、本体部40の外周側に互いに並列して設けられた一対の突条41と、一対の突条41の間に形成された溝部42とを一体に有して構成されている。シール部材4は、例えば合成ゴムからなり、所定の範囲で伸縮自在である。
【0035】
図6は、抜け止め部材5を示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は背面図、(d)は側面図、(e)は斜視図である。
【0036】
抜け止め部材5は、例えば弾性を有する樹脂からなり、その厚さ方向に対向する表(おもて)面51a及び裏面51bを有する環状板体の壁部51と、壁部51の裏面51bに直交するように立設された複数(本実施の形態では4つ)の係合部52とを一体に有している。係合部52は、壁部51の裏面51bに根元部が接続された長板状の連結部521と、連結部521の先端部に形成された係合突起522とからなる。連結部521は、弾性変形可能であり、係合突起522と壁部51とは、この連結部521によって弾性的に連結されている。
【0037】
図7(a)は、アウタハウジング60の第1ハウジング部材61に、インナハウジング70の第3ハウジング部材71、端子2、シール部材4、及び抜け止め部材5が組み付けられた状態を示す、コネクタ1の一部を拡大した断面図である。
【0038】
第1ハウジング部材61は、端子2の筒状部21を第3ハウジング部材71の嵌合部711と共に収容する収容部611を有している。収容部611は、3つの端子2の配列方向に沿う方向の内径が、この方向に直交する方向の内径よりも長い角筒状である。また、収容部611は、第3ハウジング部材71の底部710aに面する第1ハウジング部材61の底面61aに対して直交するように突出して形成されている。以下、収容部611の根元側(底面61a側)の開口端を第1の開口端611a、収容部611の先端側の開口端を第2の開口端611bとする。
【0039】
収容部611は、互いに外寸が異なる3つの筒部を有している。以下、この3つの筒部を、外寸が小さいものから順に、第1筒部612、第2筒部613、第3筒部614とする。第1筒部612は、収容部611の第2の開口端611b側に設けられ、第3筒部614は、収容部611の第1の開口端611a側に設けられている。第2筒部613は、第1筒部612と第3筒部614との間に設けられている。これにより、第1の開口端611aと第2の開口端611bとの間の収容部611の外周に、第1の段差面としての段差面612b及び第2の段差面としての段差面613bが形成されている。
【0040】
第1筒部612の外面612aは、シール部材4の内周面4bが接触する接触面である。すなわち、シール部材4は、第1筒部612の外面612aに装着されている。第1筒部612と第2筒部613との間に形成された段差面612bは、シール部材4の一方の側面41cに対向する。
【0041】
また、第2筒部613と第3筒部614との間に形成された段差面613bは、段差面612bよりも第1の開口端611a側であって、段差面612bの外周側に形成されている。段差面612bの外側の周縁の形状及び大きさは、段差面613bの内側の周縁の形状及び大きさと実質的に同一であり、段差面612bと段差面613bとの間には、第2筒部613の外面613aが介在している。
【0042】
第2筒部613の一部及び第3筒部614の内面には、外方に、すなわち第2筒部613及び第3筒部614の厚みが薄くなるように窪んだ凹部611cが形成されている。凹部611cには、抜け止め部材5の係合突起522が係合(かかり合うこと)している。この係合突起522と凹部611cとの係合により、抜け止め部材5が収容部611から離脱しないように組み付けられている。
【0043】
係合突起522は、凹部611cとの係合が解除される方向の変位が、第3ハウジング部材71の嵌合部711により規制されている。つまり、係合突起522が収容部611の内方に移動しようとすると、連結部521が嵌合部711の外面711cに当接し、それ以上の連結部521の弾性変形が抑止される。これにより、収容部611に嵌合部711が嵌合された状態では、係合突起522と凹部611cとの係合が解除されないようになっている。
【0044】
また、抜け止め部材5の壁部51は、第1筒部612の外面612aよりも外側に張り出して、その裏面51bがシール部材4の他方の側面41cに対向する。収容部611の段差面612bは、抜け止め部材5の裏面51bにシール部材4を介して対向している。これにより、シール部材4は、第1の開口端611a側への移動が段差面612bとの当接により、また第2の開口端611b側への移動が裏面51bとの当接により、それぞれ規制されている。
【0045】
図7(b)は、コネクタ1が嵌合される相手側コネクタ9の構成を示す断面図である。相手側コネクタ9は、例えば電動モータにモータ電流を出力するインバータの出力部に設けられている。また、この相手側コネクタ9が電動モータの入力側に設けられていてもよい。
【0046】
相手側コネクタ9は、収容部611を受容する空間が形成された受容部90と、コネクタ1と相手側コネクタ9との嵌合により端子2に接触する板状端子91とを有している。受容部90の内面90a及び端面90cは、互いに直交するように形成され、内面90aと端面90cとの間には、内面90a及び端面90cに対して傾斜したテーパ面90bが形成されている。テーパ面90bは、コネクタ1側の開口端に向かって内径が拡大し、コネクタ1を相手側コネクタ9に嵌合する際、コネクタ1(抜け止め部材5)を内面90a側に案内するように機能する。なお、テーパ面90bは平面状であっても曲面状であってもよい。
【0047】
図8は、コネクタ1と相手側コネクタ9とが嵌合した状態を示す断面図である。コネクタ1と相手側コネクタ9との嵌合は、シール部材4や抜け止め部材5等が組み付けられた第1ハウジング部材61の収容部611を受容部90内に挿入し、ボルト65を受容部90に形成された螺子孔901に螺合させることにより行われる。
【0048】
コネクタ1が相手側コネクタ9に嵌合されると、収容部611が受容部90に受容され、シール部材4の外周面4aが受容部90の内面90aに接触し、収容部611と受容部90の内面90aとの間が液密に封止される。シール部材4の外周面4aは、その全体が内面90aに対向する。また、第2筒部613の外面613aのシール部材4側の一部は内面90aに対向し、他の一部はテーパ面90bに対向する。段差面613bは、端面90cに対向する。
【0049】
板状端子91は、その先端側の一部が嵌合部711の開口711aを挿通し、嵌合部711内に収容された端子2の筒状部21内に挿入される。板状端子91は、ばね部材24の弾性力によって突条211bに押し付けられて接触し、端子2と電気的に接続される。
【0050】
(コネクタ1の組み付け手順)
次に、コネクタ1の組み付け手順について、図9〜12を参照して説明する。
【0051】
図9は、第1ハウジング部材61にシール部材4及び抜け止め部材5を組み付ける手順を示す説明図である。図10は、第1ハウジング部材61、シール部材4、抜け止め部材5、及び第3ハウジング部材71を第1ハウジング部材61の第2の開口端611b側から見た分解斜視図である。図11は、図10に示す各部材を第1ハウジング部材61の第1の開口端611a側から見た分解斜視図である。図12は、第3ハウジング部材71の嵌合部711に端子2の一部である筒状部21を収容した状態を、第4ハウジング部材72、Oリング631、及び第2ハウジング部材62と共に示す分解斜視図である。
【0052】
コネクタ1の組み付けでは、まず第1ハウジング部材61に係る第1筒部612の外面621aにシール部材4を嵌着し、次に抜け止め部材5を収容部611に組み付ける。抜け止め部材5は、収容部611の第2の開口端611bから収容部611の内部に係合部52を挿入し、係合突起522を凹部611cに係合させることにより、収容部611に固定される。つまり、抜け止め部材5は、第2の開口端611b側から収容部611に係合して固定される。
【0053】
上記のようにシール部材4及び抜け止め部材5を収容部611に組み付けた後、収容部611内に第3ハウジング部材71の嵌合部711を嵌合し、第1ハウジング部材61に第3ハウジング部材71を組み付ける。これにより、係合突起522と凹部611cとの係合が解除されない状態となる。
【0054】
次に、予め電線接続部23に電線10の一端部が圧着された3つの端子2の筒状部21を嵌合部711に収容する。筒状部21は、第1の開口端611aから収容部611に挿入されることとなる。その後、第4ハウジング部材72、Oリング631、及び第2ハウジング部材62を順次第1ハウジング部材61に組み付ける。これにより、コネクタ1の組み付けが完了する。
【0055】
なお、この組み付け手順は一例として示したものであり、組み付け手順は、組み付けが可能な範囲で任意に変更可能である。
【0056】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0057】
(1)端子2の筒状部21は、第1の開口端611a側から収容部611に挿入され、抜け止め部材5は、第2の開口端611b側から収容部611に係合する。つまり、抜け止め部材5は、第1ハウジング部材61と別体であり、収容部611への筒状部21の挿入方向とは反対方向から収容部611に係合するので、電線10を収容部611に挿通させる必要がない。つまり、従来のコネクタのように電線をその全長に亘ってハウジングの挿通孔に挿通させるような必要がなく、ワイヤハーネスを容易に組み立てることができる。
【0058】
(2)抜け止め部材5は、係合突起522が連結部521の弾性変形によって収容部611の凹部611cに係合するので、例えば接着剤等を用いることなく、容易に組み付けを行うことが可能である。
【0059】
(3)係合突起522の凹部611cとの係合が解除される方向の係合突起522の変位が第3ハウジング部材71によって規制されるので、例えばコネクタ1を相手側コネクタ9から離脱する際に、シール部材4と受容部90の内面90aとの摩擦抵抗によって抜け止め部材5が収容部611から抜け出す方向の力を受けても、抜け止め部材5が収容部611から抜け出すことを防止できる。
【0060】
(4)段差面612bよりも第1の開口端611a側に形成された段差面613bが受容部90の端面90cに当接するので、シール部材4の外周面4aは、その全体がその全体が内面90aに対向する。これにより、収容部611と内面90aとの間のシールを確実に行うことができる。
【0061】
(5)端子2は、筒状部21の中心軸線Cと電線接続部23の中心軸線Cとが互いに直交して交差するL型端子であるので、電線10が受容部90の端面90cに沿った方向にコネクタ1から引き出され、電線10が端面90cに交差する方向に突出することが抑制される。これにより、例えばワイヤハーネス100を車両に搭載した場合には、その搭載性が向上する。また、このようなL型端子を採用する場合には、端子が圧着された電線をハウジングの挿通孔に挿通させてコネクタを組み立てることが実際上困難であるが、本実施の形態に係るコネクタ1の構成によれば、L型端子である端子2を採用しても、組み付けに支障が生じない。
【0062】
(6)車両の走行用の電動モータにモータ電流を供給する電線は、ある程度の長さを有すると共に、電流容量を確保するため、例えば通信用等に用いられる電線に比較して直径が大きくなる。このような電線は、取回しの自由度が低いので、ハウジングの挿通孔に挿通させる場合の困難性が高くなるが、本実施の形態に係るコネクタ1の構成によれば、モータ電流供給用の電線であっても、組み付けに支障が生じない。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0064】
また、上記実施の形態では、端子2が雌端子である場合について説明したが、これに限らず、端子2として雄端子を適用することも可能である。また、上記実施の形態では、コネクタ1に接続される電線10の本数が3本である場合について説明したが、これに限らず、1本又は2本でもよい。あるいは4本以上であってもよい。コネクタ1及びワイヤハーネス100の用途についても、特に制限はない。
【0065】
またさらに、上記実施の形態では、端子2がL型端子であり、ハウジング3もまた側面視においてL字状である場合について説明したが、これに限らず、端子2の筒状部21の中心軸線Cと電線接続部23の中心軸線Cとがハウジング3内における電線10の長手方向に沿って平行で、収容部611がハウジング3内における電線10の長手方向に沿って形成されたコネクタ及びワイヤハーネスにも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…コネクタ、2…端子、3…ハウジング、4…シール部材、4a…外周面、4b…内周面、4c…側面、5…抜け止め部材、9…相手側コネクタ、10…電線、11…芯線、12…被覆部材、21…筒状部、21a…開口、22…連結部、23…電線接続部、24…ばね部材、40…本体部、41…突条、41c…側面、42…溝部、51…壁部、51a…表面、51b…裏面、52…係合部、60…アウタハウジング、61…第1ハウジング部材、61a…底面、62…第2ハウジング部材、64,65…ボルト、70…インナハウジング、71…第3ハウジング部材、72…第2ハウジング部材、81…編組シールド層、82…カバー部材、83…締付リング、90…受容部、90a…内面、90b…テーパ面、90c…端面、91…板状端子、100…ワイヤハーネス、211…底部、211b…突条、212,213…側部、214…天井部、240…湾曲部、241…爪部、242…連結部、521…連結部、522…係合突起、610…ボルト保持部、611…収容部、611a…第1の開口端、611b…第2の開口端、611c…凹部、612…筒部、612a…外面(接触面)、612b…段差面、613…筒部、613a…外面、613b…段差面、614…筒部、631…Oリング、632…シール部材、710…本体部、710a…底部、710b…側壁、711…嵌合部、711a…開口、711b…隔壁部、711c…外面、901…螺子孔、C,C…中心軸線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の一端部に接続される端子と、
前記端子の少なくとも一部を収容する収容部を有するハウジングと、
前記収容部の外面に装着される環状のシール部材と、
前記シール部材を抜け止めする抜け止め部材とを備え、
前記抜け止め部材は、前記収容部への前記端子の挿入方向とは反対方向から前記収容部に係合する係合部と、前記収容部の前記シール部材との接触面よりも外側に張り出して前記シール部材の側面に対向する壁部とを有する
コネクタ。
【請求項2】
前記抜け止め部材の前記係合部は、前記収容部の内面に形成された凹部に係合する係合突起と、前記係合突起と前記壁部とを連結する弾性変形可能な連結部とを有する、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記収容部を有するアウタハウジングと、前記アウタハウジングの内部に配置されるインナハウジングとを有して構成され、
前記インナハウジングは、前記端子の少なくとも一部を収容すると共に前記収容部に嵌合される嵌合部を有し、
前記係合突起は、前記凹部との係合が解除される方向の変位が前記嵌合部により規制されている、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記収容部は、前記端子が挿入される第1の開口端と前記係合部が挿入される第2の開口端との間の外周に、前記シール部材を介して前記壁部に対向する第1の段差面と、前記第1の段差面よりも前記第1の開口端側に形成され、前記第1の段差面の外周側に形成された第2の段差面とを有し、
前記収容部が相手側コネクタの受容部に受容されたとき、前記第2の段差面が前記受容部の端面に対向する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記端子は、前記電線が圧着される電線接続部の中心軸線が、前記収容部に挿入されて相手側コネクタの端子に接触する接触部の中心軸線と交差するように形成されている、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記電線は、車両の走行用の駆動源としての電動モータにモータ電流を供給するモータ電流供給用の電線である、
請求項1乃至5の何れか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のコネクタと、
前記端子が接続される電線とを有する
ワイヤハーネス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−110009(P2013−110009A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255001(P2011−255001)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】