説明

コモンレール

【課題】分岐部分の応力集中を低減することができ、さらにその組立を容易にすることができるコモンレールとする。
【解決手段】貫通孔12aが形成されたレール部品12と、分岐部品14と、直列に配置されたレール部品12と分岐部品14の列を収容する外管16と、外管16の端部にあって、レール部品12と分岐部品14の列を押圧する押圧部材18と、を備える。分岐部品14は、隣接するレール部品12の端壁面12b及び貫通孔12aの開口に対面する端壁面14c、14dを有し、さらに分岐部品14には、1つの端壁面14cに開口して貫通孔12aに連通し、貫通孔12aよりも小径で互いに分離された複数の分岐孔14a、14bが形成されており、押圧部材18によりレール部品12の端壁面12bと分岐部品14の端壁面14c、14dとが互いに押圧されてシールされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンレールに関し、特に、分岐部分の応力集中を低減することができ、さらにその組立を容易にすることができるコモンレールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なコモンレールは、その中心部にレール長手方向に延びる円柱状の主管孔が画成されており、この主管孔の内側壁面の複数個所に交差開口してレール長手方向に直交する分岐孔が形成されている。この分岐孔の主管孔に対する交差開口部分は、応力集中が発生し、疲労破壊の起点となるという問題がある。主管孔の周囲に発生する引張応力と、分岐孔の周囲に発生する引張応力とが合成されて、他の部分よりも大きい引張応力が発生するからである。
【0003】
このような問題を解決するために、従来、疲労強度を高めた特殊な材質を使用する他に、以下のような様々な提案がなされている。
(1) 主管孔において、分岐孔の部分の孔径を小さくして、分岐孔付近の肉厚を厚くして応力集中を低減する(例えば、特許文献1、2)。
(2) 主管孔に対して分岐孔の中心をオフセットすることにより応力集中を低減する(例えば、特許文献1)。
(3) 分岐孔の交差開口近傍を凹面にすることにより応力集中を低減する(例えば、特許文献3、4)。
(4) 主管孔及び/又は分岐孔の断面を楕円形にすることにより応力集中を低減する(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3778385号公報
【特許文献2】特開2010−77846号公報
【特許文献3】特開平8−232802号公報
【特許文献4】特開2004−44448号公報
【特許文献5】特開平10−169527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来提案される構造では、加工が困難であったり、又は実用上有意差のある応力集中の低減は得られず、その応力集中の低減に限度があるという問題がある。
【0006】
本発明者らは、かかる問題を解決するために、特願2010−263898において、その応力集中を低減することができる流路分岐構造を提案している。
【0007】
本発明は、かかる流路分岐構造を適用したコモンレールにおいて更なる改良を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
主管孔を有するコモンレールであって、
前記主管孔を構成する貫通孔を備えた複数の部品と、
直列に配置された前記複数の部品を含む列を収容する外管と、
外管内に収容された前記複数の部品を含む列を押圧する押圧部材と、を有し、
前記複数の部品の少なくとも1つの部品は、該部品に隣接する主管孔の部分に対面する2つの端壁面と、同じ1つの端壁面に開口して該部品に隣接する主管孔の部分に連通し、互いに分離して形成された複数の分岐孔とを有して、該複数の分岐孔の少なくとも1つが該部品の前記貫通孔となっており、
前記押圧部材により前記複数の部品を含む列の隣接する部品同士の端壁面同士が互いに押圧されてシールが確保されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコモンレールにおいて、前記複数の分岐孔のうちの少なくとも1つの分岐孔は、該分岐孔を有する部品の少なくとも1つの端壁面とその部品に形成された分岐ポートとの間を貫通することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のコモンレールにおいて、前記外管には、前記部品の分岐ポートと整合する分岐ポートが形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコモンレールにおいて、前記外管と前記少なくとも1つの部品との間には、回り止め構造が設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコモンレールにおいて、前記複数の部品の少なくとも1つの部品は、複数の分岐孔を持たず、主管孔を構成する貫通孔のみが形成されたレール部品であることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコモンレールにおいて、前記押圧部材は、外管内にねじ込まれて、前記複数の部品を含む列を押圧することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のコモンレールにおいて、前記押圧部材は、前記複数の部品を含む列の両側にそれぞれ配置されて互いに接近する方向にねじ込まれることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のコモンレールにおいて、前記複数の分岐孔が開口する前記端壁面は、前記隣接する主管孔の部分に対面する部分が平坦面又は凹曲面となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、少なくとも一つの部品の端壁面が該部品と隣接する主管孔の部分に対面するために、端壁面が主管孔の内部流体からの圧縮応力を受ける。よって、複数の分岐孔が分岐する分岐部分付近において従来のような引張応力の合成が起こらないので、従来に比較して応力集中を十分に低減させることができる。こうして合成応力の増大を避けることができるので、各部品を小型化及び軽量化することができる。また、部品の材質として、特別に疲労強度を高めた材質を使用する必要はなく、廉価な材質を用いることができるので、材料費の低減を図ることができる。また、部品の加工を簡単に行うことができる。
【0017】
さらには、押圧部品が、外筒内に収容されて直列に配置された複数の部品の列を押圧することで、隣接する部品の端壁面同士の全てのシールを一度に確保することができるため、組立工数が少なくてすみ、組立を非常に容易にすることができる。
【0018】
押圧部材を外管内にねじ込むことで、押圧力を得ることができる。
【0019】
前記複数の分岐孔が開口する端壁面の隣接する主管孔の部分に対面する部分を平坦面又は凹曲面とすることで、主管孔の内部流体からの圧縮応力を確実に受けるようにすることができ、引張応力の合成を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態によるコモンレールの断面図である。
【図2】レール部品の縦断面図である。
【図3A】分岐部品の縦断面図である。
【図3B】分岐部品の縦断面図である。
【図3C】分岐部品の縦断面図である。
【図3D】分岐部品の縦断面図である。
【図3E】分岐部品の縦断面図である。
【図3F】分岐部品の縦断面図である。
【図3G】分岐部品の縦断面図である。
【図4】外管の縦断面図である。
【図5】押圧部材の縦断面図である。
【図6】本発明のコモンレールの流路分岐部分に作用する応力の説明断面図である。
【図7】図1のコモンレールの変形例を表す説明断面図である。
【図8】図1のコモンレールの変形例を表す説明断面図である。
【図9】図1のコモンレールの変形例を表す説明断面図である。
【図10】図1のコモンレールの変形例を表す説明断面図である。
【図11】図1のコモンレールの変形例を表す説明断面図である。
【図12】(a)は本発明のコモンレールの分岐ポートの接続構造を表す断面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態によるコモンレールの断面図である。
図において、コモンレール10は、内部流体からの内圧が作用する貫通孔12aが形成されたレール部品12と、レール部品12に隣接し、複数の分岐孔14a、14bが形成される分岐部品14と、直列に配置されたレール部品12と分岐部品14の列を収容する外管16と、外管16の端部に設けられてレール部品12と分岐部品14の列を押圧する押圧部材18と、から構成される。これらの部品の素材は金属とすることが好ましいが、耐圧性を持つ素材であれば、任意の素材を使用することができる。
【0023】
任意の数のレール部品12と任意の数の分岐部品14とが交互にレール軸方向に連なって配置されて、各レール部品12の貫通孔12aと各分岐部品14の貫通孔としての一つの分岐孔14aとが連通することでコモンレールの主管孔が構成されている。図1では、3つのレール部品12と4つの分岐部品14とが示されているが、これは一例であり、必要なポートの数等に応じて任意の数のレール部品12と分岐部品14とを使用することができる。
【0024】
図2に示したように、レール部品12は、基本的に円筒状をなしており、レール軸方向に一致する中心軸に沿って貫通孔12aが形成される。また、円筒状のレール部品12の両側の端壁面12bの一部はテーパ面12cとなっている。
【0025】
図3Aに示したように、分岐部品14は、基本的に円柱形状(または多角形柱形状でもよい)をなしており、その両端にある第1端壁面14c及び第2端壁面14dの一部は凹部となっており、隣接するレール部品12の端壁面12b及び貫通孔12aに対面するようになっている。その凹部の底面は、レール軸方向に一致する中心軸に直交する平坦面となっており、且つその凹部の側面はテーパ面14eとなってレール部品12の端壁面12bのテーパ面12cに対面するようになっている。さらに、分岐部品14の側周面の任意の位置には分岐ポート14fが形成される。
【0026】
分岐部品14の少なくとも1つの分岐孔14aは、第1端壁面14cと第2端壁面14d同士を貫通する貫通孔となる。これに対して、別の少なくとも1つの分岐孔14bは、第1端壁面14cと分岐ポート14f同士を貫通するようにして、中心軸に対して傾斜して形成される。分岐孔14aは第1端壁面14c及び第2端壁面14dに開口しており、分岐孔14bは第1端壁面14cと分岐ポート14fに開口している。分岐孔14a、14bは、それぞれ貫通孔12aよりも小径となっており、互いに分離されて交差しないように配置される。
【0027】
分岐部品14の分岐孔の構成は、図3Aに示したものに限らず、任意の構成とすることができる。例えば、図3Bに示す例では、別の分岐孔14bが第2端壁面14dと分岐ポート14f同士を貫通するようにして、中心軸に対して傾斜して形成され、分岐孔14bは、第2端壁面14dと分岐ポート14fに開口している。2つの分岐孔14bは、互いに交差しないように、立体的に分離されている。
【0028】
また、図3Cに示す例では、分岐ポート14fが2つ形成されている。そして、1つの分岐孔14bが第1端壁面14cと1つの分岐ポート14f1とを貫通し、第1端壁面14cと該1つの分岐ポート14f1に開口しているのに対して、別の分岐孔14bが第2端壁面14dと別の分岐ポート14f2とを貫通し、第2端壁面14dと該別の分岐ポート14f2に開口している。分岐孔14aと2つの分岐孔14bは、互いに交差しないように、立体的に分離されている。
【0029】
さらに、図3Dに示す例では、図3Cの例に加えて、さらに別の分岐孔14bが第1端壁面14cと別の分岐ポート14f2とを貫通し、第1端壁面14cと該別の分岐ポート14f2に開口し、さらに別の分岐孔14bが第2端壁面14dと前記1つの分岐ポート14f1とを貫通し、第2端壁面14dと該一つ分岐ポート14f1に開口している。分岐孔14aと4つの分岐孔14bは、互いに交差しないように、立体的に分離されている。
【0030】
以上の例はあくまで例示であり、3つ以上の分岐ポート及び3つ以上の分岐孔14bを立体的に交差しないようにして、設けることも勿論可能であり、1つまたは2つの端壁面14c、14dと任意の数の分岐ポートとの間で、任意の分岐孔を形成することが可能である。
【0031】
レール部品12と分岐部品14との列の端部に配置される分岐部品14’としては、列内の分岐部品14と同じ構成のものであってよいが、列内の分岐部品14と異なる構成とすることもできる。図1に示した列の端部に配置される分岐部品14’においては、図3Eに示すように、その第1端壁面14cの凹部がテーパ面のないものとなっている。また、分岐部品14’の外周面にはOリング15が装着されているが、このOリング15は省略することも可能である。または、図3F及び図3Gに示すように、分岐孔14aがない構成とすることもできる。
【0032】
図4に示すように、外管16には、分岐部品14,14’の分岐ポート14fに対応して分岐ポート16aが形成されており、レール部品12と分岐部品14との列が外管16内で適切に位置決めされたときに、両ポート14f、16aが整合するようになっている。また、外管16の内周面の両端には、雌ネジ部16bが形成される。さらに、外管16の内周面には、分岐部品14の外周面との間で回り止めを行うべく、キーとキー溝、または多角形同士の嵌合、溝と位置決めピンといった回り止め構造のための要素が設けられるとよい。図示例の回り止め構造では、外管16の分岐部品14、14’が配置されるべき箇所に位置決め穴16cが形成されており、位置決め穴16cに嵌合する位置決めピン17が対応する分岐部品14、14’に形成された軸溝14g(図3A参照)にはめ込まれて回り止めを行うものとなっている。
【0033】
図5に示すように、押圧部材18の外周面には、外管16の雌ネジ部16bに螺合する雄ネジ18aが形成され、押圧部材18の外端壁面には、押圧部材18を外管16内にねじ込む作業用の工具を挿入するための工具挿入穴18bが形成される。工具挿入穴18bの形状は任意であり、工具挿入穴18に代えて任意のトルク付与構造を設けることもできる。また、押圧部材18の内端部の内端壁面18cは平坦面となっており、さらに内端壁面18cの中心部分には凹部18dが形成される。
【0034】
以上のように構成されるコモンレール10において、その組立を行うには、外筒16内に、順番に分岐部品14(または分岐部品14’)とレール部品12を挿入する。そして、外筒16内に押圧部材18をねじ込み、分岐部品14の分岐ポート14fを分岐ポート16aに整合させると共に、2つの押圧部材18を互いに接近させることによって、レール部品12と分岐部品14との列を両側から押し付けることで、レール部品12の端部が隣接する分岐部品14の端壁面14c、14dの凹部内に挿入され、端壁面14c、14dがレール部品12の貫通孔12aの開口及びレール部品12の端壁面12bに対面する。そして、端壁面14c、14dのテーパ面14eと、端壁面12bのテーパ面12cとが当接して突き当てられることでシールが確立されて液密性が確保される。
【0035】
また、押圧部材18の内端部が分岐部品14’の端壁面14cの凹部内に挿入され、端壁面14cが押圧部材18の内端壁面18c及び凹部18dに対面する。そして、分岐部品14’の端壁面14cに、押圧部材18の内端壁面18cが当接して突き当てられることでシールが確立されて液密性が確保される。
【0036】
以上のように組み立てられるコモンレール10においては、貫通孔12aに各分岐部品14の分岐孔14a、14bがそれぞれ連通され、且つ分岐孔14aと分岐孔14bとが互いに分離されるために、流路が分岐される。貫通孔としての分岐孔14aは、両隣のレール部品12の貫通孔12aを連通させて、貫通孔12aと共にコモンレールの主管孔を構成する。主管孔には内部流体が貯留されて非常に高い内圧が生じている。また、分岐孔14bは、コモンレールの主管孔から分岐して分岐ポート14f及び分岐ポート16aに連通する分岐路となる。分岐ポート14f及び分岐ポート16aには任意の配管を接続することができる。
【0037】
図6に示すように、分岐部品14の分岐部分付近には、第1端壁面14cの一部が貫通孔12aに対面しているために、貫通孔12aの内部流体から圧縮応力σzが作用する。よって、分岐部品14の分岐部分付近は、分岐孔14a、14bのそれぞれのフープ張力によって引張応力σtを受けるものの、従来の主管孔のフープ張力の引張応力との合成ではなく、圧縮応力との合成となる。従って、従来に比較して応力集中を十分に低減させることができ、疲労破壊の発生を防ぐことができる。
【0038】
さらに、レール部品12と分岐部品14とは、主として端壁面12bと端壁面14c、14dとの間で直接当接し、それ以外では直接に接合していないので、レール部品12から分岐部品14への引張応力の伝達を防ぐという観点でも有利な構造となっている。
【0039】
また、レール部品12と分岐部品14との列の端部に配置される分岐部品14’については、その第1端壁面14cの一部が押圧部材18の凹部18dに対面しているため、レール部品12と対面する場合と同様に圧力が作用し、同様に応力集中が低減されている。こうして各押圧部材18の凹部18dもコモンレールの主管孔を構成し、両側にある押圧部材18にも均等に圧力が作用するようになっている。
【0040】
以上に説明したように、本発明によるコモンレールでは応力集中を避けることができるので、各部品を小型化及び軽量化することができる。従って、作業性が向上し、部品製造時の熱処理の際、特に冷却時における温度勾配の均一化を図ることができるので、部品の材料組織の不均一を防ぎ、品質向上を図ることができる。また、部品の材質として、特別に強度の高い材料を使用する必要はなく、廉価な材料を用いることができるので、材料費の低減を図ることができる。
【0041】
また、レール部品12と分岐部品14とに部品が分離されているために、それぞれの加工が簡単になっている。
【0042】
ところで、分岐部品14と隣接するレール部品12とを個別に接続して、互いの端壁面12bと端壁面14c、14dとの間でのシールを確保する方式とすると、その接続作業や接続のためのカップリング部品が必要となり、工数・部品数が多くなり、軽量化の利点が損なわれ、且つカップリング部品があるために全体の外径が大きくなり、設計自由度が制限されるという問題が発生する。
【0043】
しかしながら、本発明では、外管16内のレール部品12と分岐部品14との列を押圧部材18によって全体的に押圧することで、分岐部品14とレール部品12との間の全てのシールを一度に確保することができるため、組立工数が少なくてすみ、その組立が非常に容易になっている。また、個別に接続するためのカップリング部品が不要であるので、構成が簡単で部品点数が少なく且つ設計自由度が増加し、さらには低コスト化及び軽量化することができると共に、カップリング部品によって外径寸法が大きくなることを防ぐことができる。
【0044】
さらには、外管16があるために、万が一、分岐部品14と隣接するレール部品12との間のシールが損なわれ、または一部の部品が損傷したとしても、外管16で保護することができるため、内部流体が外部に直接漏れ出すことを防ぐ構造とすることも容易にできる。
【0045】
また、以上の例では、押圧部材18がレール部品12と分岐部品14の列を押圧する機能を果たすと共にコモンレールの主管孔の両端を塞ぐ機能を兼用しているので、部品点数が一層削減されている。任意には押圧部材18を、例えば圧力といった測定変数を検出するセンサや、例えば主管孔内の圧力が所定圧力を超えた場合に解放する安全弁、リリーフ弁といったバルブや、主管孔を他の流路に連通するための継手、といった機能を兼用する部材とすることも可能である。または、コモンレールの主管孔の両端を塞ぐために、押圧部材18とは異なるプラグ部材20を設けることも可能である(図9、図10参照)。
【0046】
また、図7に示すように、分岐部品14のレール部品12の貫通孔12aに対面する第1端壁面14cの部分は、平坦面ではなく凹曲面とすることもできる。凹曲面とすることで、加工性は図1の例に比較して複雑化するものの、分岐部品14の分岐部分付近における圧縮応力が確実に作用するために、図1の例と同様に応力集中を効果的に低減させることができる。
【0047】
または、図8に示すように、分岐部品14の第1端壁面14c及び第2端壁面14dに凹部の代わりに凸部14gを設け、レール部品12の端壁面12bに凹部12dを設けて、凹部12d内に凸部14gを挿入するようにしてもよく、または凹部及び凸部を省略してもよい。また、テーパ面12c、14eを省略して、分岐部品14の第1端壁面14c及び第2端壁面14dの平坦面をレール部品12の端壁面12bの平坦面に突き当てるようにしてもよい。
【0048】
即ち、分岐部品14の端壁面14c、14dは、平坦面、凹曲面、テーパ面、段面(凹部、凸部含む)、凸曲面、球面の1つ以上の任意の組み合わせとすることができ、レール部品と分岐部品との間のシールは、平坦面同士、テーパ面の突き当てに限らず、球面による突き当てによるシール、または銅合金等のシールを介在してもよい。
【0049】
また、押圧部材18を外管16の両側に配置する代わりに、図9に示すように、外管16の一端を閉塞したものとし、外管16の開放端のみに押圧部材18を設けることも可能であり、レール部品12と分岐部品14の列を押圧部材18と外管16の閉塞端とで押圧するようにしてもよい。
【0050】
また、以上の例では、レール部品12と分岐部品14とが交互に配置されて列をなしていたが、これに限るものではない。必要な分岐ポートの数及び寸法によっては、分岐部品14を連続して配置するようにしてもよく、その場合には、一方の分岐部品14の端壁面と他方の分岐部品14の端壁面との間でシールが確保されるようにするとよい。さらには、図11に示すように、分岐部品14のみで列を構成することも可能であり、または、レール部品12及び分岐部品14以外の他の部品を含めることも可能である。
【0051】
図12は、コモンレール10の分岐ポート14f、16aと分岐配管34との接続例を表している。この例の接続構造では、分岐ポート14fの周囲に当接し分岐ポート16a内へと延びるアダプタ30が設けられており、アダプタ30の外周にはコネクタ32が設けられる。コネクタ32は、外管16の分岐ポート16aの周囲の内周面に当接すると共に、分岐ポート16aを挿通して外部に延出しており、延出した部分の外周面には雄ネジが形成されている。
【0052】
一方、分岐ポートに接続される分岐配管34は好ましくは二重管であり、その端部にある接続部34aの外周側にはカップリング36が配設される。接続部34aの外周面には雄ネジが形成されて該雄ネジにはカラー38が螺着されており、カップリング36の内周面に形成された環状リブ36aがカラー38に当接することでカップリング36の接続端側方向への移動が制限されている。また、カップリング36の接続端側の内周面には雌ネジが形成される。
【0053】
カラー38とカップリング36とを外周に取り付けた接続部34aをコネクタ32内に挿入して、カップリング36を回転して、カップリング36の雌ネジとコネクタ32の雄ネジを螺合していくと、接続部34aが分岐ポート16a内に移動していき、接続部34aが分岐ポート16aに連通すると共に、接続部34aの端壁面がアダプタ30の端壁面に当接してシールを確保することができる。
【0054】
コネクタ32と分岐ポート16aとの間、カップリング36とコネクタ32との間、カップリング36と外管34との間にそれぞれOリング40を介在させてシールを確保することにより、外管16または分岐配管34内で液体漏れが発生したとしても、その漏れが外部に出ることを防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 コモンレール
12 レール部品
12a 貫通孔
12b 端壁面
12c テーパ面
14 分岐部品
14a 分岐孔(貫通孔)
14b 分岐孔
14c 端壁面(第1端壁面)
14d 端壁面(第2端壁面)
14e テーパ面
14f 分岐ポート
14g 軸溝(回り止め構造)
16 外管
16a 分岐ポート
16c 位置決め穴(回り止め構造)
17 位置決めピン(回り止め構造)
18 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管孔を有するコモンレールであって、
前記主管孔を構成する貫通孔を備えた複数の部品と、
直列に配置された前記複数の部品を含む列を収容する外管と、
外管内に収容された前記複数の部品を含む列を押圧する押圧部材と、を有し、
前記複数の部品の少なくとも1つの部品は、該部品に隣接する主管孔の部分に対面する2つの端壁面と、同じ1つの端壁面に開口して該部品に隣接する主管孔の部分に連通し、互いに分離して形成された複数の分岐孔とを有して、該複数の分岐孔の少なくとも1つが該部品の前記貫通孔となっており、
前記押圧部材により前記複数の部品を含む列の隣接する部品同士の端壁面同士が互いに押圧されてシールが確保されることを特徴とするコモンレール。
【請求項2】
前記複数の分岐孔のうちの少なくとも1つの分岐孔は、該分岐孔を有する部品の少なくとも1つの端壁面とその部品に形成された分岐ポートとの間を貫通することを特徴とする請求項1記載のコモンレール。
【請求項3】
前記外管には、前記部品の分岐ポートと整合する分岐ポートが形成されることを特徴とする請求項2記載のコモンレール。
【請求項4】
前記外管と前記分岐部品との間には、回り止め構造が設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコモンレール。
【請求項5】
前記複数の部品の少なくとも1つの部品は、複数の分岐孔を持たず、主管孔を構成する貫通孔のみが形成されたレール部品であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコモンレール。
【請求項6】
前記押圧部材は、外管内にねじ込まれて、前記複数の部品を含む列を押圧することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコモンレール。
【請求項7】
前記押圧部材は、前記複数の部品を含む列の両側にそれぞれ配置されて互いに接近する方向にねじ込まれることを特徴とする請求項6記載のコモンレール。
【請求項8】
前記複数の分岐孔が開口する前記端壁面は、前記隣接する主管孔の部分に対面する部分が平坦面又は凹曲面となっていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のコモンレール。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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