説明

コリオリ流量計による圧力損失の影響を与えない流量計測と流量制御装置

【課題】見かけ上差圧の生じない、コリオリ流量計による流量計測と流量制御装置を提供する。
【解決手段】コリオリ流量計24と,コリオリ流量計24の上流位置に配置されコリオリ流量計24へ流体を輸送するポンプ25と,ポンプ25の上流側近傍位置とコリオリ流量計24の下流側近傍位置との差圧を計測する差圧計測手段26と,コリオリ流量計24、ポンプ25及び差圧計測手段26が電気的に接続され、且つ差圧がゼロ若しくはゼロに近づくようにポンプ25の吐出量を制御する制御手段27と,を備えて流量計測・流量制御装置21を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリオリ流量計による圧力損失の影響を与えない流量計測と流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2を参照しながら従来の流量計測装置について説明する(例えば下記特許文献1参照)。図2において、引用符号1a、1b、1cは貯蔵タンクを示している。この貯蔵タンク1a、1b、1cには、目的に応じた充填液が貯蔵されている。貯蔵タンク1a、1b、1cの底部には、給液管2a、2b、2cが取り付けられている。この給液管2a、2b、2cには、開閉弁3a、3b、3cが取り付けられている。開閉弁3a、3b、3cは、共通の給液管(流体が流れる管)4に接続されている。給液管4には、上流側から順次、ポンプ5、コリオリ流量計6、流量調節弁7、充填ノズル8が接続されている。コリオリ流量計6の検出端には、信号線9を介して制御手段10が接続されている。制御手段10には、信号線11を介して電磁弁12が接続されている。電磁弁12は、エアー配管13を介して流量調節弁7に接続されている。
【0003】
上記構成において、例えば貯蔵タンク1aに貯蔵された液体を充填容器14に充填しようとする場合、先ず、開閉弁3aが開弁される。次に、電磁弁12の作動により流量調節弁7が開弁すると、貯蔵タンク1a内の液体(充填液)は、ポンプ5により輸送されて給液管4を流れる。この時、コリオリ流量計6及び制御手段10により質量流量が得られる。給液管4を流れる液体は、充填ノズル8を介して充填容器14に流れ込み、これによって液体の充填が開始される。制御手段10には、充填される流量値が予め設定されている。制御手段10は、この制御手段10で積算される積算値が上記の設定値に達すると、電磁弁12を作動させるように設定されている。電磁弁12は、制御手段10からの作動信号により作動すると、エアー配管13を介して流量調節弁7を閉弁させる。これにより、液体の充填が停止する。
【0004】
コリオリ流量計6は、例えば門型のフローチューブと、加振装置と、一対の振動検出器と、トランスミッターとを備えて構成されている。フローチューブには、被測定流体が流れるようになっている。フローチューブは、加振装置によって、フローチューブの固有振動数で振動するようになっている。フローチューブは、この両端が固定されており、フローチューブの振動先端に行くほど振幅が大きくなるようになっている。
【0005】
振動している門型のフローチューブの中を被測定流体が流れると、この被測定流体は振動方向の加速度を受けることになる。フローチューブの形状が門型であるため、被測定流体は固定端から振動先端へ向かって流れる時と、振動先端から固定端へ向かって流れる時とで反対方向のコリオリの力が発生する。この結果、門型のフローチューブは、振動の半サイクル間でねじれ、次の半サイクル間では逆方向にねじれが生じる。この時のねじれ角は質量流量に比例し、門型のフローチューブの左右(流入、流出)に取り付けられた振動検出器によって得られる、門型のフローチューブの左右の振動信号から振動位相差が検出される。この振動位相差は質量流量に比例するので、振動位相差をもとに周波数信号やアナログ信号などの流量信号が生成されて出力される。
【特許文献1】特開平9−69191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コリオリ流量計6の上流及び下流において給液ライン4を流れる液体の圧力を計測してみると、圧力差が生じている。圧力差は、言い換えれば圧力損失であって、従来の設備においては、この設備に揚程(送液力)がない場合、コリオリ流量計6により生じる圧力損失が原因で所定の流量が流れなくなってしまうという危険性を含んでいる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、見かけ上差圧の生じない、コリオリ流量計による流量計測と流量制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のコリオリ流量計による圧力損失の影響を与えない流量計測と流量制御装置は、コリオリ流量計と,該コリオリ流量計の上流位置に配置され該コリオリ流量計へ流体を輸送するポンプと,該ポンプの上流側近傍位置と前記コリオリ流量計の下流側近傍位置との差圧を計測する差圧計測手段とを備え,前記コリオリ流量計、前記ポンプ及び前記差圧計測手段を電気的に接続するとともに、前記差圧をゼロ若しくはゼロに近づくように前記ポンプの吐出量を制御する制御手段を設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポンプをコリオリ流量計の上流位置に配置し、これらの前後の差圧を正圧でしかもゼロ若しくはゼロ近傍になるようにポンプの回転数を制御することで、見かけ上差圧(圧力損失)の生じないコリオリ流量計にすることができる。また、本発明によれば、高粘性流体でしかも十分な揚程(送液力)のない設備への使用を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のコリオリ流量計による圧力損失の影響を与えない流量計測と流量制御装置の一実施の形態を示す構成図である。
【0011】
図1において、引用符号21は本発明のコリオリ流量計による圧力損失の影響を与えない流量計測と流量制御装置(以下、流量計測・流量制御装置と略記する)を示している。流量計測・流量制御装置21は、上流に貯蔵タンク22を有する給液管(流体が流れる管)23を有する設備に設置されている。流量計測・流量制御装置21は、コリオリ流量計24を含んで構成されている。具体的には、コリオリ流量計24と、ポンプ25と、差圧計測手段26と、制御手段27とを備えて構成されている。尚、本形態の設備は一例であるものとする。給液管23の下流には、流量調節弁28が設けられている。
【0012】
貯蔵タンク22には、目的に応じた充填液が貯蔵されている(貯蔵タンク22の数は複数であってもよいものとする)。貯蔵タンク22の底部には、給液管29が取り付けられている。この給液管29には、開閉弁30が取り付けられている。開閉弁30は、給液管23の最上流位置に接続されている。
【0013】
給液管23は、貯蔵タンク22に貯蔵される充填液(流体であり本発明では被制御流体でもある)を例えば充填容器まで流す管であり、従来例の給液管1(図2参照)と同様に設計製造されている。
【0014】
コリオリ流量計24は、被測定流体(被制御流体)が流れるフローチューブの一端又は両端を支持し、この支持点回りにフローチューブ内の被測定流体の流れ方向と直角な方向に振動を加えたときに、フローチューブに作用するコリオリの力が質量流量に比例することを利用した質量流量計である。コリオリ流量計を構成するフローチューブの形状は、直管式と湾曲管式とに大別され、一般的に知られている。
【0015】
フローチューブが直管式の場合は、両端が支持された直管の中央部直管軸に垂直な方向の振動を加えたとき、直管の支持部と中央部との間でコリオリの力による直管の変位差、すなわち振動位相差が得られ、この振動位相差に基づいて流量信号を生成し出力するように構成されている。直管式の場合は、シンプル、コンパクトで堅牢な構造になっている。
【0016】
一方、フローチューブが湾曲管式の場合は、コリオリの力を有効に取り出すための形状を選択できる面で直管式の場合よりも優れている。実際、高感度の質量流量を検出することができるという実績が得られている。尚、湾曲管式の場合としては、フローチューブが一本のものや、並列二本のもの、或いは一本をループさせた状態のものなどがある。本形態においては、特に限定するものでないが、並列二本の門型のフローチューブ31で対応するようになっている。並列二本のフローチューブ31は、充填液の流入口及び流出口を有しており、これら流入口及び流出口はそれぞれ給液管23に接続されている。
【0017】
コリオリ流量計24は、流量信号を制御手段27へ出力するようになっている。制御手段27は、コリオリ流量計24からの流量信号をプロセス値(制御の対象値)として取り込むようになっている。コリオリ流量計24は、信号線32を介して制御手段27に接続されている。
【0018】
ポンプ25は、給液管23に接続されている。具体的には、コリオリ流量計24よりも上流側となる位置に接続されている(ポンプ25はコリオリ流量計24に直結するようにしてもよいものとする)。ポンプ25は、給液管23を流れる充填液をコリオリ流量計24側へ輸送するものであって、このようなポンプ25には、特に図示しないが、回転数制御手段が設けられている。回転数制御手段は、信号線33を介して制御手段27に接続されている。ポンプ25は、制御手段27からの制御信号に基づき回転数が制御されるようになっている。
【0019】
差圧計測手段26は、給液管23を流れる充填液の圧力を検出する上流測定部34及び下流測定部35を有している。上流測定部34は、ポンプ25よりも上流側となる位置の給液管23に接続されている(ポンプ25の流入口近傍に接続してもよいものとする)。下流測定部35は、コリオリ流量計24よりも下流側となる位置の給液管23に接続されている(コリオリ流量計24の流出口近傍に接続してもよいものとする)。差圧計測手段26は、上流測定部34及び下流測定部35により得られた圧力差(ΔP:差圧)を差圧信号(流量計の測定差圧)として制御手段27へ出力するように構成されている。差圧計測手段26は、信号線36を介して制御手段27に接続されている。
【0020】
制御手段27は、マイクロコンピュータの機能を有している。すなわち、CPUや記憶部等の一般的な構成を有している。制御手段27は、差圧計測手段26からの差圧信号に基づいて所定の処理を行い、そして、制御信号を生成してポンプ25を制御するように構成されている。制御手段27は、ポンプ25を制御してポンプ25及びコリオリ流量計24の上流下流の圧力差をゼロ若しくはゼロに近づけるように構成及びプログラミングされている。
【0021】
制御手段27は、下流測定部35よりも下流側となる位置の給液管23に接続される流量調節弁28の開閉度合いを自動制御するようにもなっている(引用符号37は信号線を示している)。
【0022】
上記構成において、流量計測・流量制御装置21の作動中、ポンプ25の吐出量が制御されてポンプ25及びコリオリ流量計24の上流下流の圧力差がゼロ、若しくはゼロに近づくようになる。これにより、見かけ上差圧(圧力損失)の生じないコリオリ流量計24にすることができるようになる。コリオリ流量計24は、見かけ上圧力損失がない状態になることから、この下流側の流量調節弁28へ充填液(流体)が所定の流量で流れるようになる。
【0023】
流量計測・流量制御装置21は、高粘性流体でしかも十分な揚程(送液力)のない設備への設置が有用であることが分かる。
【0024】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のコリオリ流量計による圧力損失の影響を与えない流量計測と流量制御装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】従来例の流量計測装置の構成図である。
【符号の説明】
【0026】
21 コリオリ流量計による圧力損失の影響を与えない流量計測と流量制御装置(流量計測・流量制御装置)
22 貯蔵タンク
23 給液管
24 コリオリ流量計
25 ポンプ
26 差圧計測手段
27 制御手段
28 流量調節弁
29 給液管
30 開閉弁
31 フローチューブ
32、33、36、37 信号線
34 上流測定部
35 下流測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリオリ流量計と,
該コリオリ流量計の上流位置に配置され該コリオリ流量計へ流体を輸送するポンプと,
該ポンプの上流側近傍位置と前記コリオリ流量計の下流側近傍位置との差圧を計測する差圧計測手段とを備え,
前記コリオリ流量計、前記ポンプ及び前記差圧計測手段を電気的に接続するとともに、前記差圧をゼロ若しくはゼロに近づくように前記ポンプの吐出量を制御する制御手段を設ける
ことを特徴とするコリオリ流量計による圧力損失の影響を与えない流量計測と流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−89374(P2008−89374A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269298(P2006−269298)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】