説明

コリオリ流量計による流量計測と流量制御装置

【課題】被制御流体の流量値を設定値(制御目標流量)に短時間に制御することが可能な、コリオリ流量計による流量計測と流量制御装置を提供する。
【解決手段】制御手段27には、コリオリ流量計24の流量−差圧特性が予め記憶されている。制御手段27は、流量制御の開始時或いは流量制御目標値を変更した場合に、差圧計測手段26からの差圧信号と上記流量−差圧特性に基づき所望の流量に相当する差圧を制御目標値としてポンプ25の吐出量を制御するようになっている。また、制御手段27は、流量が所望の流量、若しくはこの近傍に制御された時点でコリオリ流量計24からの流量信号を制御目標値に移行させてポンプ25の吐出量を制御するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリオリ流量計による流量計測と流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、貯蔵タンクに貯蔵された液体を給液管を介して充填容器に充填するような設備では(例えば下記特許文献1参照)、充填容器に充填する液体を所望の流量で流すために、次のような流量計測装置が設置されている。図2において、給液管1には、コリオリ流量計2が接続されている。また、コリオリ流量計2の下流側の給液管1には、流量調節弁3が接続されている。コリオリ流量計2は、制御手段4に接続されている。制御手段4には、コリオリ流量計2からの後述する流量信号が入力されるようになっている。
【0003】
コリオリ流量計2は、例えば門型のフローチューブと、加振装置と、一対の振動検出器と、トランスミッターとを備えて構成されている。フローチューブには、被測定流体が流れるようになっている。フローチューブは、加振装置によって、フローチューブの固有振動数で振動するようになっている。フローチューブは、この両端が固定されており、フローチューブの振動先端に行くほど振幅が大きくなるようになっている。
【0004】
振動している門型のフローチューブの中を被測定流体が流れると、この被測定流体は振動方向の加速度を受けることになる。フローチューブの形状が門型であるため、被測定流体は固定端から振動先端へ向かって流れる時と、振動先端から固定端へ向かって流れる時とで反対方向のコリオリの力が発生する。この結果、門型のフローチューブは、振動の半サイクル間でねじれ、次の半サイクル間では逆方向にねじれが生じる。この時のねじれ角は質量流量に比例し、門型のフローチューブの左右(流入、流出)に取り付けられた振動検出器によって得られる、門型のフローチューブの左右の振動信号から振動位相差が検出される。この振動位相差は質量流量に比例するので、振動位相差をもとに周波数信号やアナログ信号などの流量信号が生成されて出力される。
【特許文献1】特開平7−96904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、コリオリ流量計2の上流側に、制御手段4により制御されるポンプを設け、このポンプによって給液管1を流れる液体(被測定流体)をコリオリ流量計2へ向けて輸送し、これにより所望の流量に早く到達させるような流量制御を行える装置を考えている。しかしながら、例えば流量制御開始時等の如く流れが大きく変化する過渡的な状態において、制御手段4に入力されたコリオリ流量計2からの流量信号をプロセス値(制御の対象値)として制御する場合を考えると、コリオリ流量計の特性から時定数の関係で制御時間が長くなってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、被制御流体の流量値を設定値(制御目標流量)に短時間に制御することが可能な、コリオリ流量計による流量計測と流量制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置は、コリオリ流量計と,該コリオリ流量計へ流体を輸送するポンプと,前記コリオリ流量計の差圧を計測する差圧計測手段とを備え,前記コリオリ流量計、前記ポンプ及び前記差圧計測手段を電気的に接続するとともに、予め流量値に対する差圧を一又は複数記憶する或いは流量値に相当する差圧を演算する演算手段を記憶する第一の記憶部、予め設定する流量制御目標値を記憶する第二の記憶部、及び前記ポンプの吐出量を制御する制御値を切り替える切り替え手段を有する制御手段を設けることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の本発明のコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置は、請求項1に記載のコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置において、前記制御手段は、流量制御の開始時或いは前記流量制御目標値を変更した場合に前記差圧計測手段からの差圧信号と前記第一の記憶部に記憶した前記流量値に対応する差圧とに基づき所望の流量に相当する差圧を制御目標値として前記ポンプの吐出量を制御し、且つ流量が所望の流量若しくはこの近傍に制御された時点で前記コリオリ流量計からの流量信号を制御目標値に移行させて前記ポンプの吐出量を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流量制御開始時などの如く流れが大きく変化する過渡的な状態においても、被制御流体の流量値を短時間に設定値(制御目標流量)に制御することができる。すなわち、流体を素早く所望の流量に到達させることができる。従って、下流側へ流す流量を、より正確に安定して流すことができる。本発明によれば、俊敏で(制御時定数の短い)正確な流量制御をすることができる。また、本発明によれば、所望の流量に到達させた後も良好な状態で流すことができる。この他、本発明によれば、被制御流体の流量値を設定値(制御目標流量)に制御することで、本発明の装置を設置する前の設備状態、すなわち設備に圧力損失が生じてない状態にすることができる。つまり、本発明の装置を設置しても設備に負荷を掛けることのない状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置の一実施の形態を示す構成図である。
【0011】
図1において、引用符号21は本発明のコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置(以下、流量計測・流量制御装置と略記する)を示している。流量計測・流量制御装置21は、上流に貯蔵タンク22を有する給液管(流体が流れる管)23を有する設備に設置されている。流量計測・流量制御装置21は、コリオリ流量計24を含んで構成されている。具体的には、コリオリ流量計24と、ポンプ25と、差圧計測手段26と、制御手段27とを備えて構成されている。尚、本形態の設備は一例であるものとする。給液管23の下流には、流量調節弁28が設けられている。
【0012】
貯蔵タンク22には、目的に応じた充填液が貯蔵されている(貯蔵タンク22の数は複数であってもよいものとする)。貯蔵タンク22の底部には、給液管29が取り付けられている。この給液管29には、開閉弁30が取り付けられている。開閉弁30は、給液管23の最上流位置に接続されている。
【0013】
給液管23は、貯蔵タンク22に貯蔵される充填液(流体であり本発明では被制御流体でもある)を例えば充填容器まで流す管であり、従来例の給液管1(図2参照)と同様に設計製造されている。
【0014】
コリオリ流量計24は、被測定流体(被制御流体)が流れるフローチューブの一端又は両端を支持し、この支持点回りにフローチューブ内の被測定流体の流れ方向と直角な方向に振動を加えたときに、フローチューブに作用するコリオリの力が質量流量に比例することを利用した質量流量計である。コリオリ流量計を構成するフローチューブの形状は、直管式と湾曲管式とに大別され、一般的に知られている。
【0015】
フローチューブが直管式の場合は、両端が支持された直管の中央部直管軸に垂直な方向の振動を加えたとき、直管の支持部と中央部との間でコリオリの力による直管の変位差、すなわち振動位相差が得られ、この振動位相差に基づいて流量信号を生成し出力するように構成されている。直管式の場合は、シンプル、コンパクトで堅牢な構造になっている。
【0016】
一方、フローチューブが湾曲管式の場合は、コリオリの力を有効に取り出すための形状を選択できる面で直管式の場合よりも優れている。実際、高感度の質量流量を検出することができるという実績が得られている。尚、湾曲管式の場合としては、フローチューブが一本のものや、並列二本のもの、或いは一本をループさせた状態のものなどがある。本形態においては、特に限定するものでないが、並列二本の門型のフローチューブ31で対応するようになっている。並列二本のフローチューブ31は、充填液の流入口及び流出口を有しており、これら流入口及び流出口はそれぞれ給液管23に接続されている。
【0017】
コリオリ流量計24は、流量信号を制御手段27へ出力するようになっている。制御手段27は、コリオリ流量計24からの流量信号をプロセス値(制御の対象値)として取り込むようになっている。コリオリ流量計24は、信号線32を介して制御手段27に接続されている。
【0018】
ポンプ25は、給液管23に接続されている。具体的には、コリオリ流量計24よりも上流側となる位置に接続されている(ポンプ25はコリオリ流量計24に直結するようにしてもよいものとする)。ポンプ25は、給液管23を流れる充填液をコリオリ流量計24側へ輸送するものであって、このようなポンプ25には、特に図示しないが、回転数制御手段が設けられている。回転数制御手段は、信号線33を介して制御手段27に接続されている。ポンプ25は、制御手段27からの制御信号に基づき回転数が制御されるようになっている。
【0019】
差圧計測手段26は、給液管23を流れる充填液の圧力を検出する上流測定部34及び下流測定部35を有している。上流測定部34は、ポンプ25とコリオリ流量計24との間となる位置の給液管23に接続されている(ポンプ25とコリオリ流量計24とが直結する場合はこの間に接続されるものとする)。下流測定部35は、コリオリ流量計24よりも下流側となる位置の給液管23に接続されている(コリオリ流量計24の流出口近傍に接続してもよいものとする)。差圧計測手段26は、上流測定部34及び下流測定部35により得られた圧力差(ΔP:差圧)を差圧信号(流量計の測定差圧)として制御手段27へ出力するように構成されている。差圧計測手段26は、信号線36を介して制御手段27に接続されている。
【0020】
制御手段27は、マイクロコンピュータの機能を有している。すなわち、CPUや記憶部等の構成を有している。具体的には、第一の記憶部と第二の記憶部と切り替え手段とを含んでいる(これらの図示は省略)。第一の記憶部は、予め流量値に対する差圧を一又は複数記憶する或いは流量値に相当する差圧を演算する演算手段を記憶するようになっている。第二の記憶部は、予め設定する流量制御目標値を記憶するようになっている。切り替え手段は、第二の記憶部、及びポンプの吐出量を制御する制御値を切り替えるようになっている。
【0021】
もう少し詳しく説明すると、制御手段27には、コリオリ流量計24の流量−差圧特性が予め記憶されている(例えばある流量値に対応する差圧を一又は複数有するテーブルを第一の記憶部に持つ)。制御手段27は、流量制御の開始時或いは流量制御目標値を変更した場合に、差圧計測手段26からの差圧信号と上記流量−差圧特性に基づき所望の流量に相当する差圧を制御目標値としてポンプ25の吐出量を制御するようになっている。また、制御手段27は、流量が所望の流量、若しくはこの近傍に制御された時点でコリオリ流量計24からの流量信号を制御目標値に移行させてポンプ25の吐出量を制御するようになっている。
【0022】
制御手段27は、下流測定部35よりも下流側となる位置の給液管23に接続される流量調節弁28の開閉度合いを自動制御するようにもなっている(引用符号37は信号線を示している)。
【0023】
上記構成において、流量計測・流量制御装置21は、流量制御開始時などの如く流れが大きく変化する過渡的な状態においても、充填液(被制御流体)の流量値を短時間に設定値(制御目標流量)に制御することができる。すなわち、充填液を素早く所望の流量に到達させることができる。従って、下流側へ流す流量を、より正確に安定して流すことができる。流量計測・流量制御装置21は、所望の流量に到達させた後も良好な状態で充填液を流すことができる。流量計測・流量制御装置21は、俊敏で(制御時定数の短い)正確な流量制御をすることができる。
【0024】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0025】
流量計測・流量制御装置21は、ポンプ25の回転数を制御することにより、見かけ上差圧(圧力損失)の生じないコリオリ流量計を含む装置として提供することができる。このことにより、流量計測・流量制御装置21は、高粘性流体でしかも十分な揚程(送液力)のない設備への設置が有用であることが分かる。
【0026】
流量計測・流量制御装置21は、流量をコントロールすることが可能な装置でもある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置の一実施の形態を示す図である。
【図2】従来例の流量計測装置の構成図である。
【符号の説明】
【0028】
21 コリオリ流量計による流量計測と流量制御装置(流量計測・流量制御装置)
22 貯蔵タンク
23 給液管
24 コリオリ流量計
25 ポンプ
26 差圧計測手段
27 制御手段
28 流量調節弁
29 給液管
30 開閉弁
31 フローチューブ
32、33、36、37 信号線
34 上流測定部
35 下流測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリオリ流量計と,
該コリオリ流量計へ流体を輸送するポンプと,
前記コリオリ流量計の差圧を計測する差圧計測手段とを備え,
前記コリオリ流量計、前記ポンプ及び前記差圧計測手段を電気的に接続するとともに、予め流量値に対する差圧を一又は複数記憶する或いは流量値に相当する差圧を演算する演算手段を記憶する第一の記憶部、予め設定する流量制御目標値を記憶する第二の記憶部、及び前記ポンプの吐出量を制御する制御値を切り替える切り替え手段を有する制御手段を設ける
ことを特徴とするコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置において、
前記制御手段は、流量制御の開始時或いは前記流量制御目標値を変更した場合に前記差圧計測手段からの差圧信号と前記第一の記憶部に記憶した前記流量値に対応する差圧とに基づき所望の流量に相当する差圧を制御目標値として前記ポンプの吐出量を制御し、且つ流量が所望の流量若しくはこの近傍に制御された時点で前記コリオリ流量計からの流量信号を制御目標値に移行させて前記ポンプの吐出量を制御する
ことを特徴とするコリオリ流量計による流量計測と流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−89373(P2008−89373A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269293(P2006−269293)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】