説明

コリオリ質量流量計

【課題】フローチューブに欠損が生じた場合に、即時にそれを認識できるように構成したコリオリ流量計を提供する。
【解決手段】
主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、該枠体の一部に前記フローチューブから漏洩する流体を検知する検知器が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコリオリ質量流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ流量計は、主流管(継手)に流れる流体を交番振動するフローチューブを通して流すと、このフローチューブ内を通過する液体の質量、その移動速度、およびフローチューブの振動角速度の積で表すことができるコリオリの力が生成されることに鑑み、該コリオリの力に基づくたとえばたわみの量を検出することにより前記質量流量を測定することを基本原理としている。該コリオリの力に基づくたわみの量は前記フローチューブ内の質量流量と一定の関係にあることが確認されているからである。
【0003】
そして、前記フローチューブはたとえば平行に配置された一方側U字管と他方側U字管で構成され、その振動は各U字管の自由端の間に設けた電磁駆動機構等によってなされているとともに、該フローチューブのたわみの量は該電磁駆動機構と固定端との間に設けられた電磁センサ等によってなされるようになっている。
【0004】
このようなコリオリ流量計の計測原理から、精度良い計測を達成するため、前記フローチューブは、その肉厚が薄く構成させているのが通常となっている。該フローチューブの振動を起こさせ易く、たわみの量を検出し易くさせるためである。
【0005】
また、前記フローチューブ、電磁駆動機構、および電磁センサ等は枠体で被われ、この枠体から主流管(継手)が突出する外観を有する。枠体内にはたとえばアルゴンガスからなる不活性ガスが充満され、これにより、前記フローチューブ、電磁駆動機構、および電磁センサ等に計測に弊害となる結露や酸化が生じるのを回避する構成となっている。
【0006】
なお、このようなコリオリ流量計の詳細な構成はたとえば下記特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開閉6−26905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このように構成されるコリオリ流量計は、上述したように、そのフローチューブが薄肉で構成されているため、その欠損が生じ易い状況にあることを否めなかった。
【0008】
たとえば、計測流体が水素である場合はそれによるぜい化、腐食性流体である場合はそれによる欠損、スラリを含む場合はそれによる摩耗等が、該フローチューブの欠損を生じせしめる原因となっていた。
【0009】
このことから、フローチューブに欠損が生じた場合には、それを即時に認識して善処策を講じることが必要となる。
【0010】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、フローチューブに欠損が生じた場合に、即時にそれを認識できるように構成したコリオリ流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0012】
(1)本発明によるコリオリ質量流量計は、主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、該枠体の一部に前記フローチューブから漏洩する流体を検知する検知器が備えられていることを特徴とする。
【0013】
(2)本発明によるコリオリ質量流量計は、(1)の構成を前提とし、前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が小さいものを対象とし、前記検知器は枠体の重力方向と反対側の部分に備えられていることを特徴とする。
【0014】
(3)本発明によるコリオリ質量流量計は、(1)の構成を前提とし、前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が大きいものを対象とし、前記検知器は枠体の重力方向に備えられていることを特徴とする。
【0015】
(4)本発明によるコリオリ質量流量計は、(1)の構成を前提とし、前記枠体の前記検知器が備えられる部分の近傍において、該枠体の径が前記検知器に近づくにつれ小さくなっていることを特徴とする。
【0016】
(5)本発明によるコリオリ質量流量計は、(1)の構成を前提とし、前記枠体の内側面にほぼ水平に取り付けられた板材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
(6)本発明によるコリオリ質量流量計は、(1)の構成を前提とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺とこの辺に対向する他の辺とで水平に対する高さに差を設け、傾斜された面を有することを特徴とする。
【0018】
(7)本発明によるコリオリ質量流量計は、(6)の構成を前提とし、前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が小さいものを対象とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺に対してこの辺に対向する他の辺が低く形成され、かつ、枠体側にて孔が形成されていることを特徴とする。
【0019】
(8)本発明によるコリオリ質量流量計は、(6)の構成を前提とし、前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が小さいものを対象とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺に対してこの辺に対向する他の辺が高く形成されていることを特徴とする。
【0020】
(9)本発明によるコリオリ質量流量計は、(6)の構成を前提とし、前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が大きいものを対象とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺に対してこの辺に対向する他の辺が高く形成され、かつ、枠体側にて孔が形成されていることを特徴とする。
【0021】
(10)本発明によるコリオリ質量流量計は、(6)の構成を前提とし、前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が大きいものを対象とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺に対してこの辺に対向する他の辺が低く形成されていることを特徴とする。
【0022】
(11)本発明によるコリオリ質量流量計は、主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを交番振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、該枠体の一部に導管を介在させて前記フローチューブから漏洩する流体を検知する検知器が備えられていることを特徴とする。
【0023】
(12)本発明によるコリオリ質量流量計は、(11)の構成を前提とし、コリオリ質量流量計は複数個備えてなり、各コリオリ質量流量計の枠体に設けられたそれぞれの前記導管は一個の検知器に導かれるように構成されていることを特徴とする。
【0024】
(13)本発明によるコリオリ質量流量計は、主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを交番振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、
該枠体の外側に該枠体内の流体を循環させる管が設けられ、該管の一部において該管内に流れる流体中に混在する漏洩流体を検知する検知器が設けられていることを特徴とする。
【0025】
(14)本発明によるコリオリ質量流量計は、主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを交番振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、
該枠体の一部に不活性ガスを供給する供給手段と、該枠体の前記一部と異なる個所であって前記不活性ガスを排出させる部分に備えられた検知器とを備え、
前記検知器は漏洩流体を検知する検知器であることを特徴とする。
【0026】
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明によるコリオリ質量流量計の実施例を図面を用いて説明をする。
【0028】
まず、図12は本発明によるコリオリ質量流量計の一実施例を示す斜視図を示し、その計測部の外表面における結露の発生を防止するため不活性ガスを充填させる枠体(後の説明では符号7で示す)を取り外した態様で示している。
【0029】
図12において、まず、主流管1があり、この主流管1には流体2が流れ、その質量流量が以下の構成により計測されるようになっている。主流管1には流体が上流側にて分流され下流側にて合流されるべく第1のフローチューブ3aと第2のフローチューブ3bとが形成されている。第1のフローチューブ3aと第2のフローチューブ3bは、いずれもU字形状の同形、および同じ大きさを有している。しかも、それらのフローチューブ3a、3bを含むそれぞれの平面は平行となるように、第1のフローチューブ3aと第2のフローチューブ3bは配置されている。これら第1のフローチューブ3aと第2のフローチューブ3bはベリリウム、銅、チタン、アルミニウム、鋼、これらの材料の合金、プラスチック等の通常認められる弾性を有する管状のものから作られる。
【0030】
このため、第1のフローチューブ3aはその主流管1への固着点を結ぶ軸Xa−Xaを中心に回転可能となるとともに、第2のフローチューブ3bもその主流管1への固着点を結ぶ軸Xb−Xbを中心に回転可能となる。
【0031】
第1のフローチューブ3aにあってその主流管1から一定距離に離れた部分において第2のフローチューブ3bとの間に電磁駆動機構4が設けられている。この電磁駆動機構4は、たとえば第1のフローチューブ3a側において磁石が、第2のフローチューブ3b側において電磁コイルが設けられ、電磁コイルの一方向への電流の供給によって前記磁石を吸引させ、他方向への電流の供給によって前記磁石を反発させるようにして構成されている。
【0032】
よって、第1のフローチューブ3aは軸Xa−Xaに対してωの回転をした場合に第2のフローチューブ3bは軸Xb−Xbに対して反対方向のωの回転をするように振動する。この振動によるコリオリの力は、第1のフローチューブ3aにおいてZ方向及び−Z方向、第2のフローチューブ3bにおいて−Z方向及びZ方向の変位によりお互いが離間し、反対側の場合は吸引する関係となる。この変位は軸Xa−Xa及び軸Xb−Xb周りの回転振動による変位に加算されるので、振幅検出器5a、5bにより検出された信号により質量流量を得ることができる。なお、図中符号20は主流管1内の流体2を第1のフローチューブ3aと第2のフローチューブ3b側へ、また第1のフローチューブ3aと第2のフローチューブ3b内の流体を2を主流管1側へ導く仕切り板を示している。
【0033】
上述したコリオリ質量流量計は、その計測部(フローチューブ3a、3b、電磁駆動機構4、振幅検出器5a、5b)を被い、主流管1を突出させる枠体が設けられ、この枠体の内部にたとえばアルゴンガス等の不活性ガスを充填させることにより前記計測部の外表面における結露が生じるのを回避させている。
【0034】
図1は、このように枠体7が設けられたコリオリ質量流量計の外観を示す図で、該枠体7の内部に配置される計測部6および主流管1の一部を点線で示して表している。
【0035】
ここで、図1に示す計測部6の占める空間領域は前述の図12の計測部の占める空間領域とは異なったものとして描いている。計測部6は、上述したように、基本的にフローチューブ、駆動機構、検出器を少なくとも備えるが、前記フローチューブを、図12に示したものと別個のものであって、種々の形状で空間的配置させたものが知られていることに基づくものであり、以下に示す各実施例では、このように種々の形状で空間的配置させたフローチューブを有するものにも適用できることを意味している。すなわち、図12に示したフローチューブはU字型のものとして示したものであるが、このフローチューブは主流管1を間にしてその左右に配置されるS字型あるいはループ状のものであってもよいことを意味している。。
【0036】
このことから、図1に示すコリオリ質量流量計の計測部6の大まかな外輪郭は、主流管1の軸方向と直交する方向であって、該軸を間にして各方向に延在する円柱体状をなし、これに伴い、枠体7も該計測部6を被う円筒体状をなして構成されている。枠体7の占める容積を必要以上に大きくさせないためである。そして、図1に示すコリオリ質量流量計は、その計測すべく流体としてたとえば水素が対象となっており、該枠体7の上部には水素の存在を検知する水素検知器8が取り付けられている。すなわち、該水素検知器8はその水素を検知する部分が枠体7の内部に露呈されるようにして枠体7に取り付けられ、枠体7内に発生した水素が、枠体7に充填されている不活性ガスとの密度差によって上昇し水素検知器8に到達した際に、該水素検知器8がこれを感知し、これをたとえば警報器を通して知らしめるようになっている。これにより、主流管1からフローチューブに流れる水素が、該フローチューブにおいて、それが薄肉で形成されているがために予期なく生じた欠損部分から漏洩し枠体7内に侵入した際に、そのことが即認識できるように構成されることになる。
【0037】
漏洩した計測流体の密度が、枠体7内に充填されている不活性ガスの密度より軽い場合には、枠体7に対する前記流体の検知器8の取り付け個所は、重力方向と逆の方向、すなわち上部に相当する個所とすることにより、該検知器8における漏洩流体の検知が迅速に行い得るという効果を奏する。ほぼ円筒形状をなして形成される枠体7はその両端部において前記円筒とほぼ同径の半球殻で閉塞されて構成され、該半球殻の頂部に前記検知器8が形成されているため、流体の経路において障害物がなく、迅速な漏れ流体の検知ができるようになる。
【0038】
なお、漏洩した計測流体の密度が、枠体7内に充填されている不活性ガスの密度より大きい場合には、図2に示すように、枠体7に対する該流体の検知器8の取り付け個所は、重力方向、すなわち、下部に相当する個所とすることにより、該検知器8における漏洩流体の検知が迅速に行い得るようになる。図2は図1に対応する図であり、計測部6(正確にはフローチューブ)に生じた欠損部分6fから漏洩した流体が重力方向に下降し、枠体7の下部に取り付けられた検知器8に至っていることを示している。
【0039】
図3(a)は、本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す斜視図である。このコリオリ質量流量計は、計測すべく流体としてたとえば水素等のように密度が比較的小さいものを対象とし、その枠体7の形状はほぼ立方体をなし、その一側面とこの一側面と対向する他の一側面とを貫通するようにして主流管1が突出するように構成されている。枠体7がこのような形状をなすのは、この枠体7によって被われる計測部6も同様の形状をなしているためで、たとえば主流管1に対しその左右側および下側にフローチューブが配置される構成となっている。そして、該枠体7の上面には、たとえば四角錐状の枠体7aが該枠体7の一部として形成され、該四角錐状の枠体7aの頂部には流体の検知器8が取り付けられている。
【0040】
図3(a)のb−b線における断面図である図3(b)に示すように、四角錐状の前記枠体7aは枠体7内に生じた漏洩流体(たとえば水素)を検知器8側に集積させて導くためのガイドとして機能させるものである。図3(b)において、枠体7内には計測部6が配置され、この計測部6(フローチューブ)の欠損部分6fからの漏洩流体が枠体7内を上昇し、他の部材によって遮られることなく四角錐状の前記枠体7a側に導かれるようになっている。
【0041】
なお、図3においては、漏洩流体としてたとえば水素等の密度の小さいものを対象としたコリオリ質量流量計を示したものであるが、図3に示す構成を上下逆にして構成することによって、漏洩流体として密度の大きなものを対象としたコリオリ質量流量計に適用させることができ、したがって、このようにしてもよいことはいうまでもない。
【0042】
図4ないし図5は、それぞれ本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す構成図である。なお、これら実施例は、たとえば図1に示したコリオリ質量流量計に適用させた場合を示すものであるが、図3に示したコリオリ質量流量計に適用させてもよいことはもちろんである。そして、漏洩流体はたとえば水素のように密度が小さいものを対象としたものとなっている。
【0043】
まず、図4は、ほぼ円筒形状からなる枠体7の筒状部の内側面に、軸方向に並設された複数(図では2個)の板材9が形成されている。各板材9は、枠体7の軸方向側から見ると、円環状をなしており、その外周の全域において該枠体7の内側面に取り付けられ(たとえば溶接)、しかも、その内周は外周よりも下側に位置づけられることによって、該板材9は傾斜されて該枠体7に取り付けられている。また、板材9の外周に近い部分において孔10が設けられ、この孔10は外周の周りにたとえば等間隔に複数設けられている。
【0044】
このような構成からなる円環状の板材9は、枠体7の中心部に配置される計測部6を囲むように取り付けられ、該計測部6の欠損部分6fから漏洩流体が生じた場合には、該漏洩流体は、その上昇によって、板材9の裏面を這って枠体7の内側面側に至り、該板材9に形成された前記孔10を通過して枠体7の内側面に近接する部分を上昇して検知器8に至るようになる。すなわち、計測部6からの漏洩流体において検知器8まで至る経路がほぼ特定されることになり、該漏洩流体のほとんどが枠体7内に留まることなく集積されて検知器8に至るようにすることができるようになる。このため、より早い段階での漏洩流体の検出ができるように構成することができる。
【0045】
図5も、図4と同様の効果を得るためになされたものであり、枠体7に取り付けられる円環状の板材9は、その外周が枠体の内側面に取り付けられていることは図4の場合と同様であるが、その内周が外周よりも高くなるように傾斜されて枠体7に取り付けられていることに相違を有する。また、板材9には孔が形成されていないことにおいて図4の場合とも異なっている。すなわち、該板材9は、計測部6からの漏洩流体を枠体7の内側面側に近接して導かれるのを阻止する機能を有するように構成される。このように構成した場合、計測部6からの漏洩流体は、板材9によって枠体7の内側面に近づく経路をとるよりは計測部6に近接する経路をとることが容易となり、該漏洩流体の検知器8までに至る経路が上記経路に特定されることになる。このため、図4に示したと同様に、該漏洩流体のほとんどが枠体7内に留まることなく集積されて検知器8に至るようにすることができ、より早い段階での漏洩流体の検出ができるように構成することができる。図4、図5は、いずれも漏洩流体が不活性ガスよりも密度が小さいものを対象としたものである。しかし、漏洩流体が不活性ガスよりも密度が大きい場合にも適用でき、この場合、図4、図5に示した構成を上下逆にすればよい。
【0046】
なお、上記実施例において備えられる板材9は、枠体7内における不活性ガスの広範囲な領域における熱対流の発生を防ぐ効果を有するように機能する。図6は板材9が備えられていないコリオリ質量流量計を示しており、枠体7内の不活性ガスの熱対流は、枠体7内の上方から下方の全域にわたって生じるようになる。このため、該不活性ガスと異なる他の流体(漏洩流体)において上述の実施例に示したような特定の経路を形成しようとすることは極めて困難となる。しかし、枠体7内に板材9を設けることにより、図7に示すように枠体7内において対流がなされる空間を複数に分割させることができる。このことは、枠体7内において不活性ガスが熱によって撹拌されることを回避できることを意味し、該不活性ガスと異なる他の流体(漏洩流体)において該不活性ガスに影響されることなく特定の経路を形成しやすいことを意味する。
【0047】
図8は、本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す構成図である。計測流体としてたとえば水素等のように密度が小さなものを対象としたものである。そして、本実施例では、漏れ流体の検知器8をコリオリ質量流量計から離間させて配置させる場合、すなわち、該検知器8を枠体7に直接に取り付けることを回避した構成とする場合を示している。
【0048】
コリオリ質量流量計に対して検知器8は上方に配置され、かつ、該検知器8はコリオリ質量流量計の枠体7と導管11を介して接続されている。枠体7内に発生した漏洩流体は前記導管11内を上昇して検知器8に導かれる構成となっている。また、図8では、検知器8はコリオリ質量流量計に対しその径方向に遠ざかる位置に配置された構成となっているため、前記導管11の検知器8に接続される近傍部と枠体7に接続される近傍部において屈曲部を有し、これらの各屈曲部の間の導管11は水平面に対して角度θを有して傾斜された構成となっている。
【0049】
また、図9は、図8の構成をさらに応用させたもので、一の検知器8によって複数のコリオリ質量流量計における漏洩流体の検出を可能な構成としている。各コリオリ質量流量計の枠体7から延在する各導管11は該枠体7の近傍で屈曲された後に傾斜(水平面に対して正の角度を有する傾斜)を有して検知器8側へ指向するように延在されている。そして、各導管11は検出器8の近傍で合流されて該検知器8に導かれるようになっている。複数のコリオリ質量流量計において、それぞれの流体の漏洩の発生確率の低いことに鑑み、検知器8を一個として構成し、各コリオリ質量流量計のうちいずれかのコリオリ質量流量計に流体の漏洩が生じた場合に、該検知器8によりそれを検知できるようにしたものである。
【0050】
なお、図8および図9の各構成は、いずれも漏洩流体としてたとえば水素等の密度が小さいものを対象としたものである。しかし、図8および図9に示す構成において、その上下を逆にして構成することにより、漏洩流体として密度が大きなものを対象とする場合において適用させることができる。したがって、このように構成するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0051】
図10は、本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す構成図である。図10は、枠体7内の流体を枠体7の外側に設けた管13を通して循環させる構成とするとともに、該管13の一部において該管13内に流れる漏洩流体の存在を検知する検知器8を設けた構成としたものである。前記管13内の流体を循環させる手段としてはたとえば循環ポンプ14を該管13の中途部に設けた構成としている。しかし、これに限定されることはなく、たとえば熱交換器等を代わりに適用させることができる。
【0052】
枠体7内の流体は、前記管13内を通して循環されるため、枠体7内に滞ることなく検知器8側に確実に導かれ、該流体に漏洩流体が含まれる場合にはそれを確実に検出することができるようになる。
【0053】
ここで、循環ポンプ14の駆動は、たとえば定期的に定められた漏洩流体の検出時に合わせて間欠的に自動的になされるようにして、その省力化を図るようにしてもよい。
【0054】
図11は、図10の場合と同様の効果を得るための他の実施例を示すものである。図11の場合、枠体7内の流体に強制的な流れを形成するため、該枠体7の一端側に接続させたガスボンベ15からの不活性ガス(たとえばアルゴンガス等)の流入によって行っている。該枠体7の他端側には検知器8が備えられ、枠体7内の流体は該検知器8に導かれた後にたとえば大気放出されるようになっている。
【0055】
ここで、不活性ガスの枠体7への供給は、たとえば定期的に定められた漏洩流体の検出時に合わせて間欠的に自動的になされるようにして、その節減化を図るようにしてもよい。
【0056】
なお、図10および図11に示した構成は、その計測流体としてその密度に関係することなくいずれの場合にも適用させることができる。枠体7内の流体に強制的に流れを形成し検知器8側に導くように構成しているからである。
【0057】
上述した実施例では、そのいずれも主流管に曲管からなるフローチューブが備えられたコリオリ質量流量計について説明したものである。しかし、本発明は、直管からなるフローチューブを備える、いわゆる直管型と称されるコリオリ質量流量計についても適用できることはいうまでもない。直管型においてもその直管であるフローチューブをその長手方向に節と腹に分けられる振動を生じさせ、方向が異なるコリオリ力が加わった該直管の変位差を検出する構成に関し上記実施例のコリオリ質量流量計の場合と同じであり、該直管も肉薄で構成され、この直管における流体の漏洩に対する対策が必要であることに変わりがないからである。
【0058】
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明によるコリオリ質量流量計の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す斜視図である。
【図3】(a)は本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す斜視図、(b)は(a)のb−b線における断面図である。
【図4】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す断面図である。
【図5】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す断面図である。
【図6】コリオリ質量流量計の枠体の内壁面に板材を設けない場合における該枠体内の流体の対流の模様を示した説明図である。
【図7】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す断面図であって、枠体の内壁面に板材を設けた場合における該枠体内の流体の対流の模様を示した説明図である。
【図8】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す斜視図である。
【図9】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す斜視図である。
【図10】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す斜視図である。
【図11】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す斜視図である。
【図12】本発明によるコリオリ質量流量計の他の実施例を示す斜視図で、枠体を取り除いた状態での構成を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1……主流管、2……流体(計測流体)、3……フローチューブ、4……電磁駆動機構、5……振幅検出器、6……計測部、6f……欠損部分、7……枠体、8……検知器、9……板材、10……孔、11……導管、13……管、14……循環ポンプ、15……ガスボンベ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、該枠体の一部に前記フローチューブから漏洩する流体を検知する検知器が備えられていることを特徴とするコリオリ質量流量計。
【請求項2】
前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が小さいものを対象とし、前記検知器は枠体の重力方向と反対側の部分に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項3】
前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が大きいものを対象とし、前記検知器は枠体の重力方向に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項4】
前記枠体の前記検知器が備えられる部分の近傍において、該枠体の径が前記検知器に近づくにつれ小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項5】
前記枠体の内側面にほぼ水平に取り付けられた板材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項6】
前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺とこの辺に対向する他の辺とで水平に対する高さに差を設け、傾斜された面を有することを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項7】
前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が小さいものを対象とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺に対してこの辺に対向する他の辺が低く形成され、かつ、枠体側にて孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項8】
前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が小さいものを対象とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺に対してこの辺に対向する他の辺が高く形成されていることを特徴とする請求項6に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項9】
前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が大きいものを対象とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺に対してこの辺に対向する他の辺が高く形成され、かつ、枠体側にて孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項10】
前記枠体内に不活性ガスが充填され、漏洩流体は前記不活性ガスよりも密度が大きいものを対象とし、前記板材は、その枠体の内側面に取り付けられた側の辺に対してこの辺に対向する他の辺が低く形成されていることを特徴とする請求項6に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項11】
主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを交番振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、該枠体の一部に導管を介在させて前記フローチューブから漏洩する流体を検知する検知器が備えられていることを特徴とするコリオリ質量流量計。
【請求項12】
コリオリ質量流量計は複数個備えてなり、各コリオリ質量流量計の枠体に設けられたそれぞれの前記導管は一個の検知器に導かれるように構成されていることを特徴とする請求項11に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項13】
主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを交番振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、
該枠体の外側に該枠体内の流体を循環させる管が設けられ、該管の一部において該管内に流れる流体中に混在する漏洩流体を検知する検知器が設けられていることを特徴とするコリオリ質量流量計。
【請求項14】
主流管に接続されて計測流体が流れるフローチューブと、このフローチューブを交番振動させ該フローチューブにおいて方向の異なるコリオリ力を発生させる駆動機構と、前記各コリオリ力に基づくフローチューブの変位差を検出する検出器を備え、
前記フローチューブ、駆動機構、および検出器を被い、前記主流管を突出させる枠体が設けられているとともに、
該枠体の一部に不活性ガスを供給する供給手段と、該枠体の前記一部と異なる個所であって前記不活性ガスを排出させる部分に備えられた検知器とを備え、
前記検知器は漏洩流体を検知する検知器であることを特徴とするコリオリ質量流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−78437(P2007−78437A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264620(P2005−264620)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】