説明

コンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法

【課題】床材層とコンクリートの上面とが高い接着強度で接着されたコンクリート製床部を、安価且つ短工期で構築可能にする。
【解決手段】コンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法である。コンクリートを打設して床部を形成するコンクリート打設工程と、前記コンクリートの上面上に浮き出すブリージング水を攪拌するとともに、前記ブリージング水と共に前記上面上に生じたレイタンスを前記上面へ押さえる第1直押さえ工程と、前記第1直押さえ工程が施された前記上面が硬化する前に、前記上面を目荒らし鏝で押さえながら目荒らしする第2直押さえ工程と、前記目荒らし鏝で目荒らしされた前記上面に対して、床材を塗工する床材塗工工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や倉庫等のコンクリート製床部1の上面1caには、当該上面1caの保護目的やスリップ防止目的で、床材層の一例として塗床材層10Lが設けられている(図1F)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−262789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる塗床材層10Lを有した床部1は、一般に次のようにして構築される。
先ず、図1Aの概略側面図に示すように床部1を形成すべき場所にコンクリートを打設する(コンクリート打設工程)。
そして、打設されたコンクリート1cの上面1caを、図1Bに示すように床定規20で均す(定規均し工程)。
次に、図1Cに示すように、同上面1caに対して土間プロペラ30により直押さえをする(第1直押さえ工程)。すなわち、コンクリート1cの上面1ca上に浮き出すブリージング水を攪拌するとともに、ブリージング水と共に同上面1ca上に生じたレイタンスという泥分を上面1caへ押さえ、これにより上面1caを強固にする。
そうしたら、図1Dに示すように金鏝40で直押さえをし(金鏝直押さえ工程)、これにより上面1caを平滑に仕上げる。
そして、約1ヶ月の乾燥養生工程を経て、コンクリート1cの上面1caの硬化後に、図1Eに示すように同上面1caに流動状態の塗床材を塗工し、以上をもって、図1Fに示すような上面1caに塗床材層10Lが設けられたコンクリート製床部1が構築される。
【0005】
ここで、上述のように金鏝40で直押さえをしてコンクリート1cの上面1caを仕上げると、同上面1caが平滑になり過ぎてしまい、塗床材層10Lとコンクリート1cの上面1caとの接着強度が低くなって、塗床材層10Lが剥離し易くなってしまう。
そのため、接着性向上目的で、塗床材の塗工前にコンクリート1cの上面1caの目荒らし処理を行うことが推奨されている。
【0006】
但し、この塗工前の時点というのは、乾燥養生工程の後であり、この時点のコンクリート1cの上面1caは硬化している。そのため、目荒らし処理としては、高硬度の上面1caを目荒らし可能なショットブラスト処理が行われる。
ここで、このショットブラスト処理というのは、目荒らし対象の上面1caに多数の小鋼球を打ち付けることにより同上面1caを目荒らしするものである。そのため、専用の大掛かりな装置を用いざるを得ず、コスト高となる。また、小鋼球を打ち付けることから、その作業エリアは立ち入り禁止になって他の作業を履行不能になる等工程制約を生じ、工期の長期化を招く。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、床材層とコンクリートの上面とが高い接着強度で接着されたコンクリート製床部を、安価且つ短工期で構築可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
コンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法であって、
コンクリートを打設して床部を形成するコンクリート打設工程と、
前記コンクリートの上面上に浮き出すブリージング水を攪拌するとともに、前記ブリージング水と共に前記上面上に生じたレイタンスを前記上面へ押さえる第1直押さえ工程と、
前記第1直押さえ工程が施された前記上面が硬化する前に、前記上面を目荒らし鏝で押さえながら目荒らしする第2直押さえ工程と、
前記目荒らし鏝で目荒らしされた前記上面に対して、床材を塗工する床材塗工工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に示す発明によれば、コンクリートの上面の硬化前に目荒らし鏝で同上面を目荒らしする。よって、ショットブラスト等の大掛かりな装置を用いずに、床材を塗工するための下地面をコンクリートの上面に形成することができて、その結果、床材層とコンクリートの上面とが高い接着強度で接着されたコンクリート製床部を、安価且つ短工期で構築可能となる。
【0010】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載のコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法であって、
前記第2直押さえ工程と前記床材塗工工程との間に、
前記上面の凸部を研磨する研磨工程を有することを特徴とする。
【0011】
上記請求項2に示す発明によれば、上記研磨によって上面の凸部の脆弱部や同凸部に強固に付着した埃等の異物を除去することができる。よって、これら脆弱部や異物起因で生じうる床材とコンクリートの上面との間の接着界面近傍部分の強度低下を有効に抑制可能となり、その結果、床材層の接着性を高めることができる。
【0012】
請求項3に示す発明は、請求項2に記載のコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法であって、
前記第2直押さえ工程と前記研磨工程との間に、
前記コンクリートの含水率を下げる乾燥養生工程を有することを特徴とする。
【0013】
上記請求項3に示す発明によれば、上記乾燥養生工程を経た後、つまりコンクリートの硬化後に、上面の凸部の研磨を行うので、当該研磨を円滑且つ正確に行うことができる。
また、乾燥養生工程の前に第2直押さえ工程が位置しているので、この第2直押さえ工程においてなされる鏝押さえによる目荒らしを、コンクリートの上面の硬化前に確実に行うことができて、その結果、目荒らしを容易に行うことができる。
【0014】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法であって、
前記目荒らし鏝は、前記上面に当接して押さえる押さえ板がプラスチック製のプラスチック鏝であることを特徴とする。
【0015】
上記請求項4に示す発明によれば、押さえ板がプラスチック製のプラスチック鏝である。ここで、コンクリートの上面を押さえ板で押さえる際のコンクリートの押さえ板への付着性にあっては、金鏝に係る金属製押さえ板よりもプラスチック製の押さえ板の方が高い。よって、このプラスチック鏝によって鏝押さえをするだけで、コンクリートの上面を容易に目荒らしすることができて、目荒らしの作業負荷の軽減を図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、床材層とコンクリートの上面とが高い接着強度で接着されたコンクリート製床部を、安価且つ短工期で構築可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1A乃至図1Eは、比較例(比較例1、比較例2)の構築方法を説明するための概略側面図である。
【図2】本実施形態に係るコンクリート1cの上面1caに塗床材層10Lが設けられたコンクリート製床部1の概略縦断面図である。
【図3】図3A乃至図3Eは、本実施形態に係るコンクリート1cの上面1caに塗床材層10Lが設けられたコンクリート製床部1の構築手順の説明図である。
【図4】図4A及び図4Bは、建研式接着試験方法の説明図である。
【図5】図5A及び図5Bは、引き倒し試験方法の説明図である。
【図6】表1は建研式接着試験結果であり、表2は引き倒し試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
===本実施形態===
図2は、本実施形態に係るコンクリート製床部1の概略縦断面図である。
このコンクリート製床部1のコンクリート1cの上面1caには、上面1caの保護目的やスリップ防止目的で、厚膜型の塗床材層10L(床材層に相当)が設けられている。塗床材層10Lは、塗床材(床材に相当)が、その流動下で塗工されることにより形成される。塗床材としては、合成樹脂系の樹脂モルタルが一般的である。例えば、エポキシ樹脂系としてはケミクリートE(商品名:株式会社エービーシー商会製)が挙げられ、ウレタン樹脂系としてはタフクリートFL(商品名:株式会社エービーシー商会製)やコンダクトハード(商品名:株式会社エービーシー商会製)等が挙げられる。但し、何等上述に限るものではなく、つまり、モルタルの範疇に含まれて、コンクリート1cの上面1caに塗工可能な材料であれば適用可能であり、例えば、防水モルタルや、モルタル含有のペンキ等でも良い。
【0019】
図3A乃至図3Eは、かかるコンクリート1cの上面1caに塗床材層10Lが設けられたコンクリート製床部1の構築手順の説明図である。なお、何れの図も側面視で示している。
【0020】
先ず、施工現場において、形成すべき床部1の外形形状に対応させて不図示の型枠を組む。そして、型枠で囲まれた空間に適宜鉄筋等を配置した後、同空間にコンクリートを打設する(コンクリート打設工程、図3A)。
【0021】
次に、図3Bに示すように、打設したコンクリート1cの上面1caを、床定規20などによって平坦に均す(定規均し工程)。これにより、上面1caのレベル精度が確保される。
【0022】
次に、図3Cに示すように、土間プロペラ30(機械鏝あるいはトロウェルとも言う)を用いてコンクリート1cの上面1caを直押さえする(第1直押さえ工程)。詳しくは、土間プロペラ30は、下部に水平回転する三枚の金鏝32,32…をプロペラ状に有する。そして、これら金鏝32,32…を水平回転させながら、これら金鏝32,32…の下面の各押さえ面32aでコンクリート1cの上面1caを押さえる。これにより、コンクリート1cの上面1ca上に浮き出すブリージング水を攪拌するとともに、同ブリージング水と共に上面1ca上に生じたレイタンスを、コンクリート1cの上面1caへ押さえて上面1caを強固にする。
【0023】
そうしたら、図3Dに示すように、この土間プロペラ30による直押さえに連続させて、第2直押さえ工程を行う。この第2直押さえ工程では、上面1caを目荒らし鏝45で押さえながら目荒らしする(第2直押さえ工程)。すなわち、この時点では、未だコンクリート1cは硬化前であって柔らかいため、目荒らし鏝45で直押さえすることにより、当該上面1caは容易に目荒らしされる。そして、この目荒らしされた上面1caが、この後に塗工される塗床材の下地面となるので、塗床材とコンクリート1cの上面1caとを高い接着強度で接着することができる。
【0024】
ここで、望ましくは、目荒らし鏝45として、プラスチック鏝や木鏝を使用すると良く、そうすれば、上面1caの目荒らしを容易に行うことができる。この理由は、金属製の金鏝と比べて、プラスチック製のプラスチック鏝や木製の木鏝の方が、押さえ板46(鏝板)の押さえ面46aのコンクリート1cとの付着性が高く、押さえ面46aに上面1caのコンクリート1cが部分的に持って行かれ易いためである。ちなみに、プラスチック鏝や木鏝の押さえ面46aは、その素材たるプラスチックや木材が露出状態になっていて、つまり別の被覆部材で覆われていない未被覆状態となっているのは言うまでもない。
【0025】
次に、コンクリート1cの含水率を低下すべく乾燥養生する(乾燥養生工程)。これにより、コンクリート1cの上面1caは硬化される。この乾燥養生期間は、約1ヶ月である。
【0026】
そうしたら、コンクリート1cの上面1caに塗床材を塗工する(床材塗工工程)。この塗工は、基本的には、流動状態の塗床材をコンクリート1cの上面1caに流下後に、鏝押さえをすることでなされるが、ローラーで行っても良いし、更にはスプレー塗工でも良い。そして、この塗工の際には、塗床材が塗工されるべきコンクリート1cの上面1caは目荒らし状態にあるので、塗床材とコンクリート1cの上面1caとは、高い接着強度で接着される。
【0027】
なお、この塗工の直前に、コンクリート1cの上面1caの清掃を行って上面1caの埃等の異物を除去しても良く、そうすれば、塗床材とコンクリート1cの上面1caとの接着強度をより高めることができる。
【0028】
以上、本実施形態の構築方法の手順について説明したが、当該構築方法によれば、塗床材とコンクリート1cの上面1caとの高い接着強度の発現に必要な上面1caの目荒らしを、ショットブラスト処理によらずに、プラスチック鏝や木鏝を用いた鏝押さえで行う。よって、ショットブラスト処理に伴うコスト増や工期の長期化を有効に回避しながら、塗床材とコンクリート1cの上面1caとが高い接着強度で接着されたコンクリート製床部1を構築可能となる。
【0029】
なお、望ましくは、上述の乾燥養生工程と床材塗工工程との間に、コンクリート1cの上面1caの凸部を研磨する上面研磨工程(研磨工程に相当)を追加すると良い。そして、かかる上面1caの凸部の研磨によれば、上面1caの目荒らし状態を概ね維持しながら、上面1caの凸部の脆弱部や、清掃などで除去不能な程度に上面1caの凸部に強固に付着した異物を有効に取り除くことができる。これにより、塗床材と上面1caとの接着界面近傍部分の強度向上を図れ、その結果、塗床材の接着性を更に高めることができる。ちなみに、除去した脆弱部や異物は、適宜な集塵装置によって上面1caから取り去られ、これにより、最終的に、上面1caは、上述の清掃後と同レベルの清浄度になっている。
【0030】
かかる研磨を行う研磨機としては、例えば床研削機K−30(株式会社ライナックス製)や、業務用床ポリッシャーの下部の回転部に研磨紙を取り付けたもの等を例示できる。
【0031】
ところで、上述の構築方法で構築されたコンクリート製床部1について、その塗床材層10Lとコンクリート1cの上面1caとの接着性を、試験により実際に確認しているので、以下、それについて説明する。
【0032】
先ず試験方法について説明する。この試験は、実際の施工現場に隣接して用意された試験用敷地で行われた。
【0033】
試験体としては、三種類を準備した。そのうちの一つは、本実施形態の構築方法を模擬した試験体である。すなわち、この試験体は、コンクリート打設工程(図3A)、定規均し工程(図3B)、第1直押さえ工程(図3C)、第2直押さえ工程(図3D)、乾燥養生工程、上面研磨工程、床材塗工工程(図3E)を経て作製されている。なお、上面研磨工程では、床研削機K−30(株式会社ライナックス製)を用いている。また、第2直押さえ工程では、木鏝を用いた手押さえで直押さえを行っている。
【0034】
一方、残りの二種類の試験体は、それぞれ、冒頭の「発明が解決しようとする課題」のところで説明した構築方法を模擬した試験体である。すなわち、一方の試験体は、冒頭の「発明が解決しようとする課題」のところで説明した「上面1caの金鏝直押さえ後に目荒らしをしない構築方法」を模擬した試験体である。つまり、この試験体は、コンクリート打設工程、定規均し工程、第1直押さえ工程、金鏝直押さえ工程、乾燥養生工程、床材塗工工程を経て作製されている。以下、これを第1比較例の試験体と言う。また、もう一方の試験体は、同「発明が解決しようとする課題」のところで説明した「ショットブラスト処理で目荒らしを行う構築方法」を模擬した試験体である。つまり、この試験体は、コンクリート打設工程、定規均し工程、第1直押さえ工程、金鏝直押さえ工程、乾燥養生工程、ショットブラスト工程、床材塗工工程を経て作製されている。以下、これを第2比較例の試験体と言う。なお、本実施形態、第1比較例、及び第2比較例の何れの試験体も、塗床材にはタフクリートFLを用いている。
【0035】
そして、これら各試験体に対して、それぞれ建研式接着試験及び引き倒し試験の両者を行い、これら各試験にて、それぞれ、剥離時の荷重や歪み量等に基づいて剥離強度を評価し、また剥離面を観察して剥離形態の評価も行った。
【0036】
図4A及び図4Bは、建研式接着試験方法の説明図である。図4Aは概略側面図であり、図4Bは概略平面図である。この試験方法では、先ず、試験体の上面たる塗床材層10Lの表面10Laに、接着面が45mm四方の鋼製の引っ張り用治具50を接着剤で固定する。また、引っ張り用治具50の四辺に沿って切り込みを、コンクリート1cには達しないように塗床材層10Lのみに入れる。そして、上面10Laの法線方向に引っ張り用治具50を引っ張り、試験体のうちで引っ張り治具50が固定された上記45mm四方の部分が、引っ張り用治具50とともに剥離した時の最大荷重(N)を計測し、その最大荷重を45mm四方の面積で除算した値を剥離強度(N/mm)とした。
また、その剥離面を観察し、剥離形態を、コンクリート1cの内部又は塗床材層10Lの内部で破断剥離(所謂凝集破断)した第1剥離形態、コンクリート1cの上面1caと塗床材層10Lとの接着界面で剥離した第2剥離形態、及びコンクリート1cの表層部で破断剥離した第3剥離形態の三つに分類し、そして、剥離面の全面積を各剥離形態に割り振って百分率で評価した。
そして、かかる試験を、第1比較例、第2比較例、及び本実施形態の各試験体につきそれぞれ3回ずつ行い、上記剥離強度の平均値及び上記百分率の平均値を算出した。
【0037】
図5A及び図5Bは、引き倒し試験方法の説明図である。図5Aは概略側面図であり、図5Bは概略平面図である。この試験方法では、先ず、試験体の上面たる塗床材層10Lの表面10Laに、第1平板部60aと第2平板部60bとからなる鋼製アングル材60を、第1平板部60aの片面にて接着剤で固定する。これにより、第2平板部60bは、塗床材層10Lの表面10Laの法線方向に沿って立設された状態になる。なお、第1平板部60a及び第2平板部60bの平面形状は、それぞれ20mm×20mmの正方形及び20mm×約80mmの長方形である。
【0038】
次に、第1平板部60aの四辺に沿った切り込みを、コンクリート1cには達しないように塗床材層10Lのみに入れる。
【0039】
そうしたら、アングル部材60の角部が浮き上がるように、第2平板部60bに引き倒し荷重を付与する。詳しくは、第2平板部60bが第1平板部60a上に倒れるように、第2平板部60bにおいて塗床材層10Lの上面10Laから80cmだけ離れた部位を荷重付与点として、第2平板部60bの片面の法線方向に平行に引き渡し荷重を付与する。そして、第2平板部60bが引き倒されてアングル部材60の角部がコンクリート1cから分離した際の最大引き倒し荷重(N)を計測し、この最大引き倒し荷重を20mm×20mmの面積で除算した値を剥離強度(N/mm)とした。
【0040】
また、当該引き倒しによって、試験体のうちで第1平板部60aが固定された部分が剥離して生じた剥離面を観察し、建研式接着試験方法と同様に、その剥離形態を、コンクリート1cの内部又は塗床材層10Lの内部で破断剥離(所謂凝集破断)した第1剥離形態、コンクリート1cの上面1caと塗床材層10Lとの接着界面で剥離した第2剥離形態、及びコンクリート1cの表層部で破断剥離した第3剥離形態の三つに分類し、そして、剥離面の全面積を各剥離形態に割り振って百分率で評価した。
そして、かかる試験を、第1比較例、第2比較例、及び本実施形態の各試験体につきそれぞれ3回ずつ行い、上記剥離強度の平均値及び上記百分率の平均値を算出した。
【0041】
図6の表1及び表2に、それぞれ、建研式接着試験結果及び引き倒し試験結果を示す。これらの試験結果を見ると、建研式接着試験及び引き倒し試験のどちらについても、本実施形態の試験体は、第2比較例のショットブラスト処理で目荒らしした試験体と同等の高い接着性を有していることがわかる。すなわち、建研式接着試験における本実施形態の試験体の剥離形態は、第2比較例たるショットブラストの試験体と同様に、第1剥離形態たる凝集破断が支配的であり、第2剥離形態たる接着界面での剥離は殆ど生じていない。また、その剥離強度にあっても、凝集破断が支配的なものではあるが、本実施形態の試験体は、ショットブラストの試験体と概ね同レベルになっている。そして、この傾向は、引き倒し試験の試験結果でも同様である。よって、本実施形態の構築方法によってもショットブラストで目荒らしした場合と同等の接着性を塗床材層10Lとコンクリート1cの上面1caとの間に発現可能であることが定量的に確認された。
【0042】
ちなみに、図6の表1及び表2を参照すると、目荒らし処理を一切行わない第1比較例の試験体にあっては、剥離形態は第2剥離形態たる接着界面での剥離が支配的であり、また、その剥離強度も、本実施形態の試験体及び第2比較例の試験体と比べて格段に低いものであることがわかる。よって、目荒らしを行わない場合には塗床材層10Lとコンクリート1cの上面1caとの接着性が悪くなることを示す定量的裏付けが得られた。
【0043】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0044】
上述の実施形態では、第1直押さえ工程の直押さえを、土間プロパラ30たる機械鏝30で行っていたが、機械鏝30を用いずに、金鏝等による手押さえでも良い。
【0045】
上述の実施形態では、第2直押さえ工程の直押さえを、プラスチック鏝又は木鏝などの目荒らし鏝45を用いた手押さえで行っていたが、何等これに限るものではない。例えば、手押さえに代えて、機械鏝(トロウェル)で行っても良い。その場合には、機械鏝がその下部に具備する水平回転する三枚の鏝には、プラスチック鏝又は木鏝などの目荒らし鏝45が使用されるのは言うまでもない。
【0046】
上述の実施形態では、床材層10Lを形成するための床材の一例として塗床材を例示したが、何等これに限るものではない。例えば、タイル張り付けに用いる張り付けモルタルでも良い。つまり、床材層10Lの上面がタイル張り仕上げされても良い。なお、タイルの概念には石板なども含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 床部、1c コンクリート、1ca 上面、
10L 塗床材層(床材層)、10La 表面、
20 床定規、
30 土間プロペラ、32 金鏝、32a 押さえ面、
40 金鏝、
45 目荒らし鏝、46 押さえ板、46a 押さえ面、
50 引っ張り用治具、
60 アングル材、60a 第1平板部、60b 第2平板部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法であって、
コンクリートを打設して床部を形成するコンクリート打設工程と、
前記コンクリートの上面上に浮き出すブリージング水を攪拌するとともに、前記ブリージング水と共に前記上面上に生じたレイタンスを前記上面へ押さえる第1直押さえ工程と、
前記第1直押さえ工程が施された前記上面が硬化する前に、前記上面を目荒らし鏝で押さえながら目荒らしする第2直押さえ工程と、
前記目荒らし鏝で目荒らしされた前記上面に対して、床材を塗工する床材塗工工程と、を有することを特徴とするコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法であって、
前記第2直押さえ工程と前記床材塗工工程との間に、
前記上面の凸部を研磨する研磨工程を有することを特徴とするコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法。
【請求項3】
請求項2に記載のコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法であって、
前記第2直押さえ工程と前記研磨工程との間に、
前記コンクリートの含水率を下げる乾燥養生工程を有することを特徴とするコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法であって、
前記目荒らし鏝は、前記上面に当接して押さえる押さえ板がプラスチック製のプラスチック鏝であることを特徴とするコンクリートの上面に床材層が設けられたコンクリート製床部の構築方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate