説明

コンクリート打設に使用する目地材

【課題】 パネル支保材として使用時には荷重に対抗して原形を保持し、取り外し時には収縮状態となって簡単に取り外せるようにする。
【解決手段】 コンクリートを打設するときに、パネルを所定の位置に固定するために、パネルとそれに近接した位置にある物体との隙間に配置する目地材であって、中空な内部を有しかつ直線状に形成された目地材本体11と、目地材本体11の内部に加圧、注入する液体12と、液体12を注入した状態で注入口13を密閉する密閉手段14とを具備
し、目地材本体11の内部に液体を加圧注入することにより使用時には荷重に対抗して原形を保持し、コンクリートの打設後、内圧を抜くことにより収縮状態となるようにする。また原形から収縮可能であり、かつ収縮の前後で直線状を保持するケース18を具備し、このケース18の中に目地材本体11を収めることにより、ケース18を介して目地材本体11の原形保持作用と収縮作用をパネルに対して及ぼすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを打設するときに、パネルを所定の位置に固定するために、パネルとそれに接近した位置にある物体との隙間に配置する目地材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート打設箇所を仕切る部分には、表面を化粧ベニヤ板などで仕上げた、コンパネ或いはコンクリートパネルなどと通称されているパネルが使用される。従来、このパネルは図5、図6に示すように、外側に桟木a、バタ角bなどの支保材と呼ばれる部材を重ね合わせて、目地に相当するスペース幅dを確保して来た。作業は、この場合、コンクリート打設→養生→硬化→支保材取り外し→型枠取り外し、という流れで行われるが、支保材を外す上で、打設コンクリートの荷重による締め付けがきつく、取り外し作業に大変な労力と時間が必要であった。支保材を取り外す手間を軽減するために、くさび状のキャンバと呼ばれる部材cを使用することも行われているが、手のとどく範囲は容易であっても奥まった場所では取り外しが困難であり、十分とはいえない。
【0003】
上記の事項は作業上の困難さであるが、問題は、経済性という側面にもある。例えば従来の方式では、脱型時にハンマーで支保材等を叩いたりするため、殆どの部材が破壊状態となり、そうでないと取り外すことができず、再利用を望むことは全くできなかったといって良い。コンクリート打設に使用する目地材に関する技術的提案もない訳ではないが、特開2004−316330号のように目地そのものの形成に関する例が見られる程度であり、従来の支保材を再検討し、それに伴う無駄を解消ないし低減しようという提案は見当たらない。
【0004】
【特許文献1】特開2004−316330号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、パネル支保材として使用時には荷重に対抗して所定の形状を保持し、取り外し時には収縮状態となって簡単に取り外せるようにすることである。また本発明の他の課題は、脱型に伴う手間を著しく軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、コンクリートを打設するときに、パネルを所定の位置に固定するために、パネルとそれに接近した位置にある物体との隙間に配置する目地材について、中空な内部を有しかつ直線状に形成された目地材本体と、目地材本体の内部に加圧、注入する液体と、液体を注入した状態で注入口を密閉する密閉手段とを具備
し、目地材本体の内部に液体を加圧注入することにより使用時には荷重に対抗し、コンクリートの打設後、内圧を抜くことにより収縮状態となるようにするという手段を講じたものである。
【0007】
本発明の目地材は、例えば、コンクリートを打設する箇所を仕切るパネルを所定位置に固定するために、いわゆる支保材として使用するものであり、例えば、パネルと、これに接近した位置にある他のパネルや既設物等との隙間に配置される。従って隙間は、パネルによって仕切られ新たに打設形成される新設物と新設物との間、或いは新設物と既設物及びその他の物体との間に形成される。故にこの隙間は新設物と接近した位置にある物体との間の目地となるので、隙間を形成するのに等しい本発明のものを目地材と呼ぶものである。
【0008】
この目地材は、目地材本体と、その中に注入される液体、及び注入口を密閉する密閉手段とから成る。目地材本体は中空な内部を有しかつ直線状に形成されており、いわゆるチューブ状の形態に近い。また、目地材本体は、使用時には荷重に対抗し、所定の形状を保持し、取り外し時には収縮状態となる必要があるので、弾性体から成るものでなければならない。目地材本体は、液体の注入圧力によって所定の形状を保持すれば良く、内圧を抜くと所定の形状を保持できなくなり収縮するものである。この形態変化は、コンクリート打設時の荷重に耐えるために目地材本体として所定の形状を保持することは必要である
が、取り外す場合には僅かでも収縮可能であれば著しく容易となるという事実に基いている。このことは本発明の開発過程において明らかになった事項であり、内圧を抜くまではびくともしなかった目地材が内圧を抜くと、外観上、殆ど形態変化が見られないにも拘らず、ゆるみを生じ、容易に取り外し可能となる。
【0009】
目地材本体には直線性も要求される。パネルと位置にある物体との隙間として、直線状であることが望まれるためである。要求される直線性は、個々の現場において異なるともいえるが、多くの場合には直線性が高いほど良く、そのために本発明においても直線状とするのである。直線状を有し、内部に液体を加圧注入しても所定の形状を保持し、かつ内圧を容易に抜くことができる性能を具備するために、目地材本体は、一定の横断面形状を有するチューブ状構造を持ち、強靭な材料により形成される必要がある。適用し得る材料としては、合成樹脂が適するが、またアルミニウム、マグネシウムなどを含む金属も対象となる。合成樹脂製パイプを目地材本体とする場合、チューブ構造に補強網構造を組み合わせたものを使用することにより柔軟性と強靭性を併有可能である。
【0010】
目地材本体内には、液体を加圧注入する。液体は、目地材本体に非圧縮性を付与する。注入圧力はコンクリート打設時の荷重に耐えるように設定され、実験により1.0〜2.0Mpaを実施可能な範囲とし、1.5Mpaが実施し易さの面から好適であった。液体に要求されるのは温度変化に対する安定性であり、従って知られている限りでは温度変化に対して最も安定性の高い水に不凍性を具備させたものが最適となる。
【0011】
目地材本体の注入口は、液体注入後に密閉手段によって密閉する。注入口は目地材本体の形態によって異なる。目地材をパイプ状構造のものとした場合、チューブの一方の端部が注入口となるので、チューブの他方の端部は、溶着或いは金具をかしめる固着等の端部処理によって密閉しておく。液体加圧注入後における目地材本体の一方の端部に対する密閉にも上記の溶着或いは金具をかしめる固着等の端部処理技術を適用することができる。しかし、端部処理及び密閉手段として、液体の加圧注入と放出の両方の操作が可能な開閉弁を有する装置を使用することもできる。
【0012】
目地材本体単独では直線性を保持し続けることが困難な場合もあり、そのために直線性を保持する専用のケースを用意し、ケースの中に目地材本体を収める構成を取ることができる。ケースは、収縮可能であり、かつ収縮の前後で直線性を保持する必要があり、目地材本体の荷重に対抗する作用と収縮の作用をケースを介してパネルに及ぼす。ケースは、直線性を保持する剛体部分と、目地材本体の収縮とともに収縮可能な収縮部分とを有しているものであることが望ましく、このようなケースは強靭な材料によってパイプ状に形成したものが適当である。パイプ状のケースでは両端の開口をキャップで閉じておくことが望ましい。しかし、ケース内に目地材本体が嵌まり込んで動かないようになっている場合などにおいてはキャップも不必要である。
【0013】
本発明の目地材は、内部に液体を加圧注入した状態にあり、そのままコンクリートパネル(略してコンパネ)と通称されるパネルと位置にある物体との間の隙間に差し込むか、或いは押し込むように必要数配置する(図3、図4参照)。必要数とは、パネルの平面性を維持して型枠の一部として機能する上で必要な数というほどの意味である。また、パネルの平面性が維持されることにより目地の直線性も保証される。このために目地材本体の直線性が求められているものである。コンクリート打設後、内圧を抜くときには、目地材本体に穿孔するか、或いは開閉弁を開放する。穿孔方式のものは使い捨て型であり、開閉弁方式のものは反復使用できるタイプである。内圧を抜くことにより目地材及びケースは荷重に耐えられない状態即ち収縮状態となり、ゆるみを生じパネルと位置にある物体との間から容易に取り外し可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、パネル支保材として使用時には荷重に対抗して原形を保持し、取り外し時には収縮状態となって簡単に取り外すことができ、脱型に伴う手間を著しく軽減することができるとともに、これまでのように破壊しなくても良く、また無駄をなくすことができるので経済性も良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図示の実施形態を参照して本発明を説明する。図1は本発明の目地材10の1実施例を示すものであり、中空な内部を有しかつ直線状に形成された目地材本体11と、目地材本体11の内部に加圧注入した液体12と、液体12を注入した状態で注入口13を密閉した密閉手段14とを具備している。従って、図1Aに示されているものはそのまま本発明の目地材10として使用可能なものである。
【0016】
図1Aに示されている目地材10は、図2により詳細に説明されている。例示の目地材10はプラスチックを材料とし、かつ強靭な補強網15をサンドイッチして、円形断面を有するチューブ状に型成形したものである。なお、横断面は、円形でなくても良く、例えば楕円形、或いは角形を使用可能である。目地材本体11はチューブ材を所定長さに切断したもので、切断チューブの両方の端部16、17を密閉手段14によって端部処理している。例示してあるのは金具のかしめ固着による端部処理である。液体注入の際には目地材本体11の一方の端部(例えば17)を密閉手段14により密閉しておき、他方の端部(例えば16)を液体注入用ポンプと接続し、液体12を、1例として1.5Mpaまで昇圧した状態で注入口13から加圧注入する。
【0017】
このように構成された目地材本体単独のものから成る目地材10と同じように形成した目地材本体10′をケース18に収めて、直線性を高めた目地材20を構成することの1例が図1B〜Dに示されている。ケース18は、直線性を保持する剛体部分19と、原形から収縮可能なように蛇腹状に形成した収縮部分21とを有している(図1B)、パイプ状のものから形成されている強靭な部材である。パイプ状のケース18の両端は切断端として開口22になっているので、目地材本体10′を内部に収めたのち、キャップ23を用いて閉じておく。図1Dの目地材本体10′は、図1Aに示している目地材10と外形上同じように示されているが、図1Dの目地材本体10′はケース18によって補強されて所期の直線性を発揮するものであり、これに対して図1Aの目地材10はケース18による補強がなくても直線性を発揮するものである。
【0018】
図3、図4は本発明の目地材の使用例を示しており、図3の例では、図5に示した従来のキャンバcに代えて本発明の目地材10をパネル25と接近した位置にある他の物体(この場合、キャンバcや目地材を配置した面、或いはその他の既設物)との間に介在させている。この状態でパネル25上にコンクリート構造物27を打設し、その荷重が加わっても目地材10は所定の形状を保ち続ける。コンクリートが硬化したのち目地材本体11にドリル等を用いて穿孔し、内圧を抜くと、ゆるみを生じて目地材10を抜き取ることができるようになる。図4は、図6に示した従来のバタ角bに代えて本発明の目地材20をパネル26と既設コンクリート構造物27′との間に介在させている。パネル26は隣接コンパネ28とともに型枠を構成し、コンクリート打設時の荷重に耐え続ける。コンクリートが硬化したのちには目地材20に穿孔し、内圧を抜くことでゆるみを生じるので、目地材20を容易に抜き取ることができる。
【0019】
このように本発明の目地材10、20は、従来の支保材と全く同様にコンクリートパネル25、26を支えてコンクリート打設時の荷重に耐えるものであり、取り外すときには内圧を抜くだけで収縮状態となり、その結果ゆるみを生じるものである。このゆるみは、目地材の内圧が取り去られた結果生じるものであり、例示のものは収縮を目視可能な訳ではなく、またその必要もない。内圧の消失により極く僅かな変形を生じ、その結果ゆるんで取り外し可能となるもので、外形上の変化は殆ど伴わない。その意味では、目地材本体内に液体を加圧注入した後において目視できるか或いはできない程度の膨張を生じているというものであっても良い。
【0020】
本発明の実施形態では、目地材本体10を構成する目地材本体11は柔軟なプラスチック材料を用いて、強靭な補強網15と組み合わせ、強靭で柔軟性のあるものを形成する。また第2実施例に適用するケース18は硬質のプラスチック材料を用いて、直線性を保持し得るように形成する。材料としては、目地材本体11について軟質塩化ビニル樹脂、ケース18について硬質塩化ビニル樹脂が適し、また補強網15についてはナイロン系の強靭な繊維を使用したものが適当であった。しかしこれらは例示であり、本発明の目的に合致する他の公知の適材を使用することは全く自由である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るコンクリート打設に使用する目地材を示すもので、Aは例1の斜視図、Bは例2におけるパイプの、Cは同じく組立中の、Dは完成した目地材の斜視図である。
【図2】Aは例1の目地材の正面図、Bは側面図、Cは端面図、Dは図2Aのd−d線断面図、Eは図2Aのe−e線断面図である。
【図3】例1の使用例を示す斜視図である。
【図4】例2の使用例を示す斜視図である。
【図5】従来の使用例を示す斜視図である。
【図6】従来の使用例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
10、20 目地材
11 目地材本体
13 注入口
14 密閉手段
15 補強網
16、17 端部
18 ケース
19 剛性部分
21 収縮部分
23 キャップ
25、26 パネル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設するときに、パネルを所定の位置に固定するために、パネルとそれに接近した位置にある物体との隙間に配置する目地材であって、
中空な内部を有しかつ直線状に形成された目地材本体と、目地材本体の内部に加圧、注入する液体と、液体を注入した状態で注入口を密閉する密閉手段とを具備し、目地材本体の内部に液体を加圧注入することにより使用時には荷重に対抗し、コンクリートの打設後、内圧を抜くことにより収縮状態となることを特徴とするコンクリート打設に使用する目地材。
【請求項2】
収縮可能であり、かつ収縮の前後で直線状を保持するケースを有し、このケースの中に目地材本体を収めることにより、ケースを介して目地材本体の荷重に対抗する作用と収縮の作用をパネルに対して及ぼすようにした請求項1記載のコンクリート打設に使用する目地材。
【請求項3】
ケースは、直線性を保持する剛体部分と、目地材本体の収縮とともに収縮可能な収縮部分とを有しているものであり、このようなケースは強靭な材料によってパイプ状に形成されている請求項1記載のコンクリート打設に使用する目地材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−233515(P2006−233515A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47741(P2005−47741)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(398004688)株式会社アイ・アイ・ピー (7)
【Fターム(参考)】