コンクリート構造物の分割方法
【課題】 コンクリート構造物を、低騒音、低振動で、かつ効率良く複数のブロックに分割する。
【解決手段】 コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割するコンクリート構造物1の分割方法であって、コンクリート構造物1の表面に、各ブロック2の外形線に沿うように、複数本の溝4を形成する溝形成工程と、各溝4の少なくとも1箇所にそれぞれ孔14を形成する孔形成工程と、各孔14を拡大させることにより、各溝4に沿った割れを生じさせる分割工程とを備える。ウォータージェット装置により各溝4を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリルにより各孔14を形成し、拡張手段により、各溝4に沿った割れを生じさせるので、コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割する作業を、低騒音、低振動で、かつ効率良く行うことができる。
【解決手段】 コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割するコンクリート構造物1の分割方法であって、コンクリート構造物1の表面に、各ブロック2の外形線に沿うように、複数本の溝4を形成する溝形成工程と、各溝4の少なくとも1箇所にそれぞれ孔14を形成する孔形成工程と、各孔14を拡大させることにより、各溝4に沿った割れを生じさせる分割工程とを備える。ウォータージェット装置により各溝4を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリルにより各孔14を形成し、拡張手段により、各溝4に沿った割れを生じさせるので、コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割する作業を、低騒音、低振動で、かつ効率良く行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の分割方法に関し、特に、低騒音、低振動のコンクリート構造物の分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等のコンクリート構造物を解体する方法として、重機を用いてコンクリートを潰すことによって解体する方法が知られているが、このような方法は、高騒音、高振動が発生するため、市街地、病院、学校、福祉施設等のように、騒音、振動の発生が制限される地域では適用可能な時間帯等が制限される。
【0003】
このため、ウォールソーやワイヤーソー等を用いて、コンクリート構造物をブロック状に分割して解体する方法が注目されているが、ウォールソーを用いる解体方法は、騒音、振動を十分に抑制することができない。また、ワイヤーソーを用いる解体方法は、騒音、振動を十分に抑制することができるが、複数の工程を要するために、作業効率が悪い。
【0004】
上記のような騒音、振動、作業効率の問題に対処するため、本願発明者らは、先に、既設のコンクリート構造物に対して耐震補強等のリニューアル工事を行う場合に、躯体の基層部の上部に積層されている表面層部(仕上げモルタル層等)を、低騒音、低振動で除去する除去方法を提案している(特許文献1参照。)
【0005】
この除去方法は、コンクリート構造物の除去対象部分を囲むように溝又は孔を形成し、この溝又は孔によって囲まれる除去対象部分の少なくとも1箇所に荷重付与孔を形成し、この荷重付与孔を利用して除去対象部分にコンクリート構造物から引き剥がす方向への荷重を付与することにより、除去対象部分をコンクリート構造物から除去するように構成したものである。このような構成の除去方法によれば、低騒音、低振動で除去対象部分をコンクリート構造物から除去することができる。
【0006】
しかし、除去対象部分を平面的に除去する方法であるため、対象が水道等の配管を固定しているコンクリートブロック、各種の機械を支持しているコンクリート基礎、基礎梁等のように、体積の大きいコンクリート構造物を複数のブロックに分割して解体するような場合には適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−216160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、コンクリート構造物を低騒音、低振動で、かつ、効率良く、複数のブロックに分割することができるコンクリート構造物の分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、コンクリート構造物を複数のブロックに分割するコンクリート構造物の分割方法であって、前記コンクリート構造物の表面に、前記各ブロックの外形線に沿うように、複数本の溝を形成する溝形成工程と、該各溝の少なくとも1箇所にそれぞれ孔を形成する孔形成工程と、該各孔を拡大させることにより、前記各溝に沿った割れを生じさせる分割工程とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、コンクリート構造物を複数のブロックに分割する場合に、コンクリート構造物の表面に各ブロックの外形線に沿うように溝を形成し、各溝の少なくとも1箇所にそれぞれ孔を形成し、各孔を拡大させて各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。
【0011】
さらに、本発明において、前記複数本の溝の交差部の各々に前記孔が形成されていることとしてもよい。
【0012】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、複数本の溝の交差部の各々に形成した孔を拡大させて各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記複数本の溝の各々の中央部に前記孔が形成されていることとしてもよい。
【0014】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、複数本の溝の各々の中央部に形成した孔を拡大させて各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記複数本の溝に、異なる3方向を向く3つの前記孔が形成されていることとしてもよい。
【0016】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、複数本の溝に形成した3つの孔を拡大させて、各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。
【0017】
さらに、本発明において、ウォータージェット装置により前記各溝を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリルにより前記各孔を形成し、拡張手段により前記各溝に沿った割れを生じさせることとしてもよい。
【0018】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、各溝を形成するのにウォータージェット装置を用い、各孔を形成するのに低騒音型のコンクリートコアドリルを用い、各溝に沿った割れを生じさせるのに拡張手段を用いているので、コンクリート構造物を複数のブロックに分割する作業を低騒音、低振動で行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、コンクリート構造物の表面に各ブロックの外形線に沿うように複数本の溝を形成し、各溝の少なくとも1箇所に孔を形成し、各孔を拡大して各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。従って、コンクリート構造物を複数のブロックに分割する作業を効率良く行うことができる。
また、ウォータージェット装置で各溝を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリルで各孔を形成し、拡張手段で各孔を拡大させて各溝に沿った割れを生じさせているので、コンクリート構造物を複数のブロックに分割する作業を低騒音、低振動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるコンクリート構造物の分割方法の一実施の形態を示した概略図であって、溝形成工程の概略図である。
【図2】孔形成工程の概略図である。
【図3】分割工程の概略図であって、上段のブロックに対応して形成した各孔内に先端拡張型ジャッキを挿入した状態を示した概略図である。
【図4】図3の部分拡大図であって、先端拡張型ジャッキを作動させた状態を示した概略図である。
【図5】コンクリート構造物から上段のブロックを切り離した状態を示した概略図である。
【図6】分割工程の概略図であって、中段のブロックに対応して形成した各孔内に先端拡張型ジャッキを挿入した状態を示した概略図である。
【図7】コンクリート構造物から中段のブロックを切り離した状態を示した概略図である。
【図8】分割工程の概略図であって、下段のブロックに対応して形成した各孔内に先端拡張型ジャッキを挿入した状態を示した概略図である。
【図9】コンクリート構造物から下段のブロックを切り離した状態を示した概略図である。
【図10】コンクリート構造物から複数のブロックを切り離した状態を示した概略図である。
【図11】配管を切断している状態を示した概略図である。
【図12】切断した配管を示した概略図である。
【図13】拡張手段の系統図である。
【図14】先端拡張型ジャッキの概略図である。
【図15】ブロックの拘束面と先端拡張型ジャッキの配置位置との関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図13には、本発明によるコンクリート構造物の分割方法の一実施の形態が示されている。本実施の形態のコンクリート構造物の分割方法は、水道管等の配管を固定しているコンクリートブロック、各種の機械を支持するコンクリート基礎、基礎梁等のコンクリート構造物に適用可能なものである。
【0022】
本実施の形態のコンクリート構造物の分割方法は、図1に示すように、コンクリート構造物1を作業者が運搬可能な大きさのブロック2(例えば、1辺が約200mm、重量が約20kg程度の立方体形状のブロック)に分割するのに有効なものであって、溝形成工程と、孔形成工程と、分割工程とを備えている。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0023】
(1)溝形成工程
溝形成工程は、図1に示すように、コンクリート構造物1の表面に、複数のブロック2の各々の外形線に沿うように、溝形成手段6によって複数本の溝4を形成する工程であって、溝形成手段6には、例えば、ウォータージェット装置、高速回転カッター装置等の低騒音、低振動の各種の装置が用いられる。本実施の形態においては、溝形成手段6にウォータージェット装置6を用いている。なお、図中3は、コンクリート構造物1に埋設されている水道管等の配管である。
【0024】
ウォータージェット装置6は、図1に示すように、例えば、高圧水を発生させるポンプを有するポンプユニット7、ポンプユニットのポンプ7を回転させるモータを有するモータユニット8、ポンプユニットのポンプ7で発生させた高圧水を噴射させるノズル10を有するノズルユニット9、ノズルユニット9のノズル10に研磨剤を供給する研磨剤供給ユニット11、高圧水及び研磨剤を回収する回収ユニッ12ト等から構成されている。
【0025】
上記のような構成のウォータージェット装置6によってコンクリート構造物1の表面に複数本の溝4を形成するには、ポンプユニット7、モータユニット8、研磨剤供給ユニット11、及び回収ユニット12を作動させ、ポンプユニット7からノズル10に高圧水を供給し、研磨剤供給ユニット11からノズル10に研磨剤を供給し、ノズル10の噴射口からコンクリート構造物1の表面に向けて高圧水及び研磨剤を噴射させる。
【0026】
そして、コンクリート構造物1の表面上において、各ブロック2の外形線に沿うように、ノズル10を縦方向及び横方向に移動させることにより、コンクリート構造物1の表面に所定の幅、深さの複数本の溝4を所定のピッチ(例えば、約200mm)で格子状に形成し、各溝4を各ブロック2の外形線上にそれぞれ対応させる。
【0027】
この場合、溝4の深さは、対象のコンクリート構造物1の強度、鉄筋の配筋状況等に応じて適宜の値に調整する。
また、各種のガイド手段13(例えば、x−y軸ガイド、ロボットハンド等)を用い、ガイド手段13によってノズル10を案内しながら、ノズル10を縦方向及び横方向に移動させることにより、各溝4の加工精度を一定に保つようにしてもよい。
【0028】
なお、溝4を形成するために使用した高圧水、研磨剤等は、回収ユニット12に回収されて処分される。
【0029】
(2)孔形成工程
孔形成工程は、図2に示すように、溝形成工程において、コンクリート構造物1の表面に、複数のブロック2の各々の外形線に沿うように形成した複数本の溝4の各々の少なくとも1箇所に、孔形成手段15によって孔14を形成する工程であって、本実施の形態においては、孔形成手段15に低騒音型のコンクリートコアドリル15を用いている。
【0030】
本実施の形態においては、格子状に形成した複数本の溝4の各交差部5(各ブロック2の角部に対応する部分)に、各ブロック2の各辺に沿って鉛直方向又は水平方向に延びるように、所定の大きさ(後述する拡張手段16の拡縮部19を挿入可能な大きさ)、深さの孔14(各ブロック2の1辺に対応する深さ、約200mm)をそれぞれ形成している。
【0031】
なお、各孔14は、交差部5に限らず、各溝4の中央部等の任意の箇所に形成してもよいし、交差部5と各溝4の任意の箇所の両方に形成してもよい。
【0032】
(3)分割工程
分割工程は、図3に示すように、孔形成工程で形成した各孔14に拡張手段16を挿入し、拡張手段16によって各孔14を拡大させて、各溝4に沿った割れを生じさせることにより、各ブロック2をコンクリート構造物1から分割して切り離す工程である。
【0033】
拡張手段16は、例えば、図13に示すように、先端拡張型ジャッキ16と、先端拡張型ジャッキ16に油圧を供給する油圧供給装置21と、油圧供給装置21からの油圧を分配する油圧分配器20と、油圧供給装置21及び油圧分配器20を制御する制御部22とから構成されている。
【0034】
先端拡張型ジャッキ16は、図14に示すように、シリンダ17、シリンダ17に進退可能に設けられるロッド18、ロッド18の進退に追従してロッド18の軸線と直交する方向に拡縮可能な拡縮部19等から構成され、シリンダ17に配管を介して油圧分配器20が接続され、油圧分配器20に配管を介して油圧供給装置21が接続されている。
【0035】
コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して解体するには、例えば、最初に図1の右手前の第1列の上段のブロック2aを分割して切り離し、次に、その下方の中段のブロック2bを分割して切り離し、次に、その下方の下段のブロック2bを分割して切り離す。
【0036】
次に、同様に、図1の中央手前の第2列の各ブロック2a〜2cを順次分割して切り離し、次に、同様に、図1の左手前の第3列の各ブロック2a〜2cを順次分割して切り離す。
【0037】
次に、同様に、図1の右奥の第1列の各ブロックを順次分割して切り離し、同様に、図1の中央奥の第2列の各ブロックを順次分割して切り離し、同様に、図1の左奥の第3列の各ブロックを順次分割して切り離す。
【0038】
具体的には、まず、図3に示すように、図中右手前の第1列の最上段のブロック2aの角部に対応するように形成した3つの孔14a〜14c内に、鉛直方向及び水平方向の2方向の3方向から先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19をそれぞれ挿入する。
【0039】
そして、図13に示すように、油圧供給装置21から油圧分配器20を介して3つの先端拡張型ジャッキ16に同時に油圧を供給し、3つの先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を同時に拡張させて各孔14a〜14cを拡大させることにより、図4に示すように、コンクリート構造物1側に反力をとって、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4に図4中A方向、B方向、及びC方向への荷重を加え、この荷重によって各溝4に沿って割れを生じさせ、この割れを各溝4に沿って成長させることにより、図5に示すように、上段のブロック2aをコンクリート構造物1から分割して切り離す。
【0040】
この場合、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19の荷重をフィードバックし、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19の荷重が均等になるように、制御部22により油圧供給装置21及び油圧分配器20を制御(同調制御)する。なお、コンクリート構造物1の一部に弱い面がある場合には、偏り制御などで対応する。
【0041】
なお、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4に荷重を付与する場合、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4を一定の力で加圧してもよいし、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4をファジー加圧(例えば、最初に弱く、徐々に強くする等の強弱をつけた加圧等)してもよいし、複数の先端拡張型ジャッキ16を順次作動させて、各溝4を順次連続的に加圧するようにしてもよい(揺動加圧)。
【0042】
次に、図6に示すように、中段のブロック2bの角部に対応するように形成した2つの孔14d、14e内に、水平方向の2方向から先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19をそれぞれ挿入し、2つの先端拡張型ジャッキ16に同時に油圧を供給し、2つの先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を同時に拡張させて、各孔14d、14eを拡大させることにより、コンクリート構造物1側に反力をとって、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4に図中D方向及びE方向への荷重を加え、この荷重によって各溝4に沿って割れを生じさせ、この割れを各溝4に沿って成長させることにより、図7に示すように、中段のブロック2bをコンクリート構造物1から分割して切り離す。
【0043】
次に、図8に示すように、下段のブロック2cの角部に対応するように形成した2つの孔14f、14g内に、水平方向の2方向から先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19をそれぞれ挿入し、2つの先端拡張型ジャッキ16に同時に油圧を供給し、2つの先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を同時に拡張させて、各孔14f、14gを拡大させることにより、コンクリート構造物1側に反力をとって、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4に図中F方向及びG方向への荷重を加え、この荷重によって各溝4に沿って割れを生じさせ、この割れを各澪4に沿って成長させることにより、図9に示すように、下段のブロック2cをコンクリート構造物1から分割して切り離す。
【0044】
同様に、図1の手前中央の第2列の各ブロック2a〜2c、手前左側の第3列の各ブロック2a〜2c、奥右側の第1列の各ブロック、奥中央の第2列の各ブロック、奥左側の第3列の各ブロックの角部に対応するように形成した各孔14(図3参照)内に先端拡張型ジャッキ16の拡張部19をそれぞれ挿入し、各先端拡張型ジャッキ16の拡張部19を拡張させて、各孔14を拡大させて、各溝4に沿って割れを生じさせることにより、各列の各ブロック2a〜2cをコンクリート構造物1から分割して切り離す。
【0045】
このようにして、図10に示すように、コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して切り離すことにより、コンクリート構造物1を解体することができる。
【0046】
なお、コンクリート構造物1の内部に埋設されている水道管等の配管3は、コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して切り離した後、或いは複数のブロック2に分割して切り離す作業に伴って、例えば、図11、12に示すように、配管3をウォータージェット装置6を用いて所定の長さ(作業者が運搬可能な長さ、重量)に切断することにより、作業者が手作業で搬出させることができる。
【0047】
この場合、配管3の周囲を囲むようにガイドレール等のガイド手段13を設け、ガイド手段13に沿ってウォータージェット装置6のノズル10を移動させるように構成してもよい。
【0048】
上記のように構成した本実施の形態のコンクリート構造物の分割方法にあっては、ウォータージェット装置6で対象のコンクリート構造物1の各ブロック2の外形線に対応するように複数本の溝4を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリル15で各溝4の少なくとも一箇所(本実施の形態では交差部5)に孔14を形成し、各孔14に先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を挿入して、拡縮部19を拡張させて各孔14を拡大させて各溝4に割れを生じさせることにより、コンクリート構造物1から各ブロック2を分割して切り離すことができる。
【0049】
従って、ワイヤーソーを用いた分割方法のように、工程数が多くなるようなことはないので、コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して解体する作業を効率良く行うことができる。
【0050】
また、溝形成手段にウォータージェット装置を用い、孔形成手段に低騒音型のコンクリートコアドリルを用い、拡張手段に先端型拡張型ジャッキを用いているので、低騒音、低振動でコンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して解体することができ、騒音、振動が制限される地域においても、作業可能な時間帯が制限されるようなことはない。
【0051】
なお、前記の説明においては、各溝4の交差部5に孔14を形成して、各孔14を介して各溝4に割れを生じさせるように構成したが、各溝4の中央等の任意の1箇所又は複数箇所に孔を形成し、この孔を利用して各溝4に割れを生じさせるように構成してもよい。
【0052】
さらに、前記の説明においては、自由面が3の上段のブロック2aに対しては、鉛直方向及び水平方向の直交する2方向の3方向から均等な荷重を加え、自由面が2の中段のブロック2b、及び下段のブロック2cに対しては、水平方向の直交する2方向から均等な荷重を加えたが、自由面が1のブロックに対しては、図示はしないが、面に対して垂直となるように複数の先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を挿入して、自由面を増加させることにより、対象のブロックをコンクリート構造物から切り離すことができる。
【0053】
さらに、前記の説明においては、拡張手段に先端拡張型ジャッキを用いたが、これに限定することなく、他の各種の加圧方法を用いてもよい。例えば、セリ矢のような隙間材を孔に挿入して孔を加圧する方法、膨張材のような化学薬剤を孔に充填して孔を加圧する方法、火薬類等の爆破膨張によって孔を加圧する方法、高電圧による金属昇華に伴う金属蒸気の膨張によって孔を加圧する方法等、各種の加圧方法を用いることができる。要は、低騒音、低振動で孔を加圧することができる方法であればよい。
【0054】
さらに、前記の説明においては、コンクリート構造物1を立方体形状の複数のブロック2に分割したが、直方体形状のブロックや、その他の多面体形状のブロック等、各種の立体形状のブロックに分割してもよい。
【0055】
さらに、複数のブロック2に分割する順番は、上記の順番に限らず、上段の各ブロック2を分割した後に、中段の各ブロック2を分割し、その後に下段の各ブロック2を分割する等、他の各種の順番を採用してもよい。
【0056】
さらに、前記の説明においては、コンクリート構造物1の全体を複数のブロック2に分割する場合に本発明を適用したが、コンクリート構造物1の表面の一部を分割して切り離する場合、コンクリート構造物1の内部を部分的に分割して切り離す場合等に本発明を適用してもよい。
【0057】
図15に、ブロック2の拘束面と先端拡張型ジャッキ16の配置位置との関係を示す。コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割する場合、各ブロック2の拘束面に対して1つの先端拡張型ジャッキ16が必要になるため、各拘束面にそれぞれ1つの孔を形成し、各拘束面の孔14にそれぞれ先端拡張型ジャッキ16を挿入する。
【0058】
例えば、ブロック2の拘束面の数が4の場合には、図15(a)に示すように、各拘束面に対応する各溝4の中央部にそれぞれ孔14を形成し、各孔14内に先端拡張型ジャッキ16を挿入する。或いは、図15(b)に示すように、各拘束面に対応する溝4の交差部にそれぞれ孔14を形成し、各孔14内に先端拡張型ジャッキ16を挿入する。
【0059】
また、ブロック2の拘束面の数が3の場合には、図15(c)、(d)に示すように、各拘束面に対応する各溝4の中央部にそれぞれ孔14を形成し、各孔14内に先端拡張型ジャッキ16を挿入する。
【0060】
さらに、ブロック2の拘束面の数が2の場合には、図15(e)に示すように、各拘束面に対応する各溝4の中央部にそれぞれ孔14を形成し、各孔14内に先端拡張型ジャッキ16を挿入する。
【0061】
さらに、ブロック2の拘束面の数が1の場合には、図15(f)に示すように、拘束面に対応する溝4の中央部に孔14を形成し、この孔14内に先端拡張型ジャッキを挿入する。
【符号の説明】
【0062】
1 コンクリート構造物
2、2a〜2c ブロック
3 配管
4 溝
5 交差部
6 溝形成手段(ウォータージェット装置)
7 ポンプユニット
8 モータユニット
9 ノズルユニット
10 ノズル
11 研磨剤供給ユニット
12 回収ユニット
13 ガイド手段
14、14a〜14g 孔
15 孔形成手段(低騒音型のコンクリートコアドリル)
16 拡張手段(先端拡張型ジャッキ)
17 シリンダ
18 ロッド
19 拡縮部
20 油圧分配器
21 油圧供給装置
22 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の分割方法に関し、特に、低騒音、低振動のコンクリート構造物の分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等のコンクリート構造物を解体する方法として、重機を用いてコンクリートを潰すことによって解体する方法が知られているが、このような方法は、高騒音、高振動が発生するため、市街地、病院、学校、福祉施設等のように、騒音、振動の発生が制限される地域では適用可能な時間帯等が制限される。
【0003】
このため、ウォールソーやワイヤーソー等を用いて、コンクリート構造物をブロック状に分割して解体する方法が注目されているが、ウォールソーを用いる解体方法は、騒音、振動を十分に抑制することができない。また、ワイヤーソーを用いる解体方法は、騒音、振動を十分に抑制することができるが、複数の工程を要するために、作業効率が悪い。
【0004】
上記のような騒音、振動、作業効率の問題に対処するため、本願発明者らは、先に、既設のコンクリート構造物に対して耐震補強等のリニューアル工事を行う場合に、躯体の基層部の上部に積層されている表面層部(仕上げモルタル層等)を、低騒音、低振動で除去する除去方法を提案している(特許文献1参照。)
【0005】
この除去方法は、コンクリート構造物の除去対象部分を囲むように溝又は孔を形成し、この溝又は孔によって囲まれる除去対象部分の少なくとも1箇所に荷重付与孔を形成し、この荷重付与孔を利用して除去対象部分にコンクリート構造物から引き剥がす方向への荷重を付与することにより、除去対象部分をコンクリート構造物から除去するように構成したものである。このような構成の除去方法によれば、低騒音、低振動で除去対象部分をコンクリート構造物から除去することができる。
【0006】
しかし、除去対象部分を平面的に除去する方法であるため、対象が水道等の配管を固定しているコンクリートブロック、各種の機械を支持しているコンクリート基礎、基礎梁等のように、体積の大きいコンクリート構造物を複数のブロックに分割して解体するような場合には適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−216160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、コンクリート構造物を低騒音、低振動で、かつ、効率良く、複数のブロックに分割することができるコンクリート構造物の分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、コンクリート構造物を複数のブロックに分割するコンクリート構造物の分割方法であって、前記コンクリート構造物の表面に、前記各ブロックの外形線に沿うように、複数本の溝を形成する溝形成工程と、該各溝の少なくとも1箇所にそれぞれ孔を形成する孔形成工程と、該各孔を拡大させることにより、前記各溝に沿った割れを生じさせる分割工程とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、コンクリート構造物を複数のブロックに分割する場合に、コンクリート構造物の表面に各ブロックの外形線に沿うように溝を形成し、各溝の少なくとも1箇所にそれぞれ孔を形成し、各孔を拡大させて各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。
【0011】
さらに、本発明において、前記複数本の溝の交差部の各々に前記孔が形成されていることとしてもよい。
【0012】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、複数本の溝の交差部の各々に形成した孔を拡大させて各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記複数本の溝の各々の中央部に前記孔が形成されていることとしてもよい。
【0014】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、複数本の溝の各々の中央部に形成した孔を拡大させて各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記複数本の溝に、異なる3方向を向く3つの前記孔が形成されていることとしてもよい。
【0016】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、複数本の溝に形成した3つの孔を拡大させて、各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。
【0017】
さらに、本発明において、ウォータージェット装置により前記各溝を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリルにより前記各孔を形成し、拡張手段により前記各溝に沿った割れを生じさせることとしてもよい。
【0018】
本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、各溝を形成するのにウォータージェット装置を用い、各孔を形成するのに低騒音型のコンクリートコアドリルを用い、各溝に沿った割れを生じさせるのに拡張手段を用いているので、コンクリート構造物を複数のブロックに分割する作業を低騒音、低振動で行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明のコンクリート構造物の分割方法によれば、コンクリート構造物の表面に各ブロックの外形線に沿うように複数本の溝を形成し、各溝の少なくとも1箇所に孔を形成し、各孔を拡大して各溝に沿った割れを生じさせることにより、コンクリート構造物を複数のブロックに分割することができる。従って、コンクリート構造物を複数のブロックに分割する作業を効率良く行うことができる。
また、ウォータージェット装置で各溝を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリルで各孔を形成し、拡張手段で各孔を拡大させて各溝に沿った割れを生じさせているので、コンクリート構造物を複数のブロックに分割する作業を低騒音、低振動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるコンクリート構造物の分割方法の一実施の形態を示した概略図であって、溝形成工程の概略図である。
【図2】孔形成工程の概略図である。
【図3】分割工程の概略図であって、上段のブロックに対応して形成した各孔内に先端拡張型ジャッキを挿入した状態を示した概略図である。
【図4】図3の部分拡大図であって、先端拡張型ジャッキを作動させた状態を示した概略図である。
【図5】コンクリート構造物から上段のブロックを切り離した状態を示した概略図である。
【図6】分割工程の概略図であって、中段のブロックに対応して形成した各孔内に先端拡張型ジャッキを挿入した状態を示した概略図である。
【図7】コンクリート構造物から中段のブロックを切り離した状態を示した概略図である。
【図8】分割工程の概略図であって、下段のブロックに対応して形成した各孔内に先端拡張型ジャッキを挿入した状態を示した概略図である。
【図9】コンクリート構造物から下段のブロックを切り離した状態を示した概略図である。
【図10】コンクリート構造物から複数のブロックを切り離した状態を示した概略図である。
【図11】配管を切断している状態を示した概略図である。
【図12】切断した配管を示した概略図である。
【図13】拡張手段の系統図である。
【図14】先端拡張型ジャッキの概略図である。
【図15】ブロックの拘束面と先端拡張型ジャッキの配置位置との関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図13には、本発明によるコンクリート構造物の分割方法の一実施の形態が示されている。本実施の形態のコンクリート構造物の分割方法は、水道管等の配管を固定しているコンクリートブロック、各種の機械を支持するコンクリート基礎、基礎梁等のコンクリート構造物に適用可能なものである。
【0022】
本実施の形態のコンクリート構造物の分割方法は、図1に示すように、コンクリート構造物1を作業者が運搬可能な大きさのブロック2(例えば、1辺が約200mm、重量が約20kg程度の立方体形状のブロック)に分割するのに有効なものであって、溝形成工程と、孔形成工程と、分割工程とを備えている。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0023】
(1)溝形成工程
溝形成工程は、図1に示すように、コンクリート構造物1の表面に、複数のブロック2の各々の外形線に沿うように、溝形成手段6によって複数本の溝4を形成する工程であって、溝形成手段6には、例えば、ウォータージェット装置、高速回転カッター装置等の低騒音、低振動の各種の装置が用いられる。本実施の形態においては、溝形成手段6にウォータージェット装置6を用いている。なお、図中3は、コンクリート構造物1に埋設されている水道管等の配管である。
【0024】
ウォータージェット装置6は、図1に示すように、例えば、高圧水を発生させるポンプを有するポンプユニット7、ポンプユニットのポンプ7を回転させるモータを有するモータユニット8、ポンプユニットのポンプ7で発生させた高圧水を噴射させるノズル10を有するノズルユニット9、ノズルユニット9のノズル10に研磨剤を供給する研磨剤供給ユニット11、高圧水及び研磨剤を回収する回収ユニッ12ト等から構成されている。
【0025】
上記のような構成のウォータージェット装置6によってコンクリート構造物1の表面に複数本の溝4を形成するには、ポンプユニット7、モータユニット8、研磨剤供給ユニット11、及び回収ユニット12を作動させ、ポンプユニット7からノズル10に高圧水を供給し、研磨剤供給ユニット11からノズル10に研磨剤を供給し、ノズル10の噴射口からコンクリート構造物1の表面に向けて高圧水及び研磨剤を噴射させる。
【0026】
そして、コンクリート構造物1の表面上において、各ブロック2の外形線に沿うように、ノズル10を縦方向及び横方向に移動させることにより、コンクリート構造物1の表面に所定の幅、深さの複数本の溝4を所定のピッチ(例えば、約200mm)で格子状に形成し、各溝4を各ブロック2の外形線上にそれぞれ対応させる。
【0027】
この場合、溝4の深さは、対象のコンクリート構造物1の強度、鉄筋の配筋状況等に応じて適宜の値に調整する。
また、各種のガイド手段13(例えば、x−y軸ガイド、ロボットハンド等)を用い、ガイド手段13によってノズル10を案内しながら、ノズル10を縦方向及び横方向に移動させることにより、各溝4の加工精度を一定に保つようにしてもよい。
【0028】
なお、溝4を形成するために使用した高圧水、研磨剤等は、回収ユニット12に回収されて処分される。
【0029】
(2)孔形成工程
孔形成工程は、図2に示すように、溝形成工程において、コンクリート構造物1の表面に、複数のブロック2の各々の外形線に沿うように形成した複数本の溝4の各々の少なくとも1箇所に、孔形成手段15によって孔14を形成する工程であって、本実施の形態においては、孔形成手段15に低騒音型のコンクリートコアドリル15を用いている。
【0030】
本実施の形態においては、格子状に形成した複数本の溝4の各交差部5(各ブロック2の角部に対応する部分)に、各ブロック2の各辺に沿って鉛直方向又は水平方向に延びるように、所定の大きさ(後述する拡張手段16の拡縮部19を挿入可能な大きさ)、深さの孔14(各ブロック2の1辺に対応する深さ、約200mm)をそれぞれ形成している。
【0031】
なお、各孔14は、交差部5に限らず、各溝4の中央部等の任意の箇所に形成してもよいし、交差部5と各溝4の任意の箇所の両方に形成してもよい。
【0032】
(3)分割工程
分割工程は、図3に示すように、孔形成工程で形成した各孔14に拡張手段16を挿入し、拡張手段16によって各孔14を拡大させて、各溝4に沿った割れを生じさせることにより、各ブロック2をコンクリート構造物1から分割して切り離す工程である。
【0033】
拡張手段16は、例えば、図13に示すように、先端拡張型ジャッキ16と、先端拡張型ジャッキ16に油圧を供給する油圧供給装置21と、油圧供給装置21からの油圧を分配する油圧分配器20と、油圧供給装置21及び油圧分配器20を制御する制御部22とから構成されている。
【0034】
先端拡張型ジャッキ16は、図14に示すように、シリンダ17、シリンダ17に進退可能に設けられるロッド18、ロッド18の進退に追従してロッド18の軸線と直交する方向に拡縮可能な拡縮部19等から構成され、シリンダ17に配管を介して油圧分配器20が接続され、油圧分配器20に配管を介して油圧供給装置21が接続されている。
【0035】
コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して解体するには、例えば、最初に図1の右手前の第1列の上段のブロック2aを分割して切り離し、次に、その下方の中段のブロック2bを分割して切り離し、次に、その下方の下段のブロック2bを分割して切り離す。
【0036】
次に、同様に、図1の中央手前の第2列の各ブロック2a〜2cを順次分割して切り離し、次に、同様に、図1の左手前の第3列の各ブロック2a〜2cを順次分割して切り離す。
【0037】
次に、同様に、図1の右奥の第1列の各ブロックを順次分割して切り離し、同様に、図1の中央奥の第2列の各ブロックを順次分割して切り離し、同様に、図1の左奥の第3列の各ブロックを順次分割して切り離す。
【0038】
具体的には、まず、図3に示すように、図中右手前の第1列の最上段のブロック2aの角部に対応するように形成した3つの孔14a〜14c内に、鉛直方向及び水平方向の2方向の3方向から先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19をそれぞれ挿入する。
【0039】
そして、図13に示すように、油圧供給装置21から油圧分配器20を介して3つの先端拡張型ジャッキ16に同時に油圧を供給し、3つの先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を同時に拡張させて各孔14a〜14cを拡大させることにより、図4に示すように、コンクリート構造物1側に反力をとって、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4に図4中A方向、B方向、及びC方向への荷重を加え、この荷重によって各溝4に沿って割れを生じさせ、この割れを各溝4に沿って成長させることにより、図5に示すように、上段のブロック2aをコンクリート構造物1から分割して切り離す。
【0040】
この場合、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19の荷重をフィードバックし、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19の荷重が均等になるように、制御部22により油圧供給装置21及び油圧分配器20を制御(同調制御)する。なお、コンクリート構造物1の一部に弱い面がある場合には、偏り制御などで対応する。
【0041】
なお、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4に荷重を付与する場合、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4を一定の力で加圧してもよいし、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4をファジー加圧(例えば、最初に弱く、徐々に強くする等の強弱をつけた加圧等)してもよいし、複数の先端拡張型ジャッキ16を順次作動させて、各溝4を順次連続的に加圧するようにしてもよい(揺動加圧)。
【0042】
次に、図6に示すように、中段のブロック2bの角部に対応するように形成した2つの孔14d、14e内に、水平方向の2方向から先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19をそれぞれ挿入し、2つの先端拡張型ジャッキ16に同時に油圧を供給し、2つの先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を同時に拡張させて、各孔14d、14eを拡大させることにより、コンクリート構造物1側に反力をとって、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4に図中D方向及びE方向への荷重を加え、この荷重によって各溝4に沿って割れを生じさせ、この割れを各溝4に沿って成長させることにより、図7に示すように、中段のブロック2bをコンクリート構造物1から分割して切り離す。
【0043】
次に、図8に示すように、下段のブロック2cの角部に対応するように形成した2つの孔14f、14g内に、水平方向の2方向から先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19をそれぞれ挿入し、2つの先端拡張型ジャッキ16に同時に油圧を供給し、2つの先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を同時に拡張させて、各孔14f、14gを拡大させることにより、コンクリート構造物1側に反力をとって、各先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19で各溝4に図中F方向及びG方向への荷重を加え、この荷重によって各溝4に沿って割れを生じさせ、この割れを各澪4に沿って成長させることにより、図9に示すように、下段のブロック2cをコンクリート構造物1から分割して切り離す。
【0044】
同様に、図1の手前中央の第2列の各ブロック2a〜2c、手前左側の第3列の各ブロック2a〜2c、奥右側の第1列の各ブロック、奥中央の第2列の各ブロック、奥左側の第3列の各ブロックの角部に対応するように形成した各孔14(図3参照)内に先端拡張型ジャッキ16の拡張部19をそれぞれ挿入し、各先端拡張型ジャッキ16の拡張部19を拡張させて、各孔14を拡大させて、各溝4に沿って割れを生じさせることにより、各列の各ブロック2a〜2cをコンクリート構造物1から分割して切り離す。
【0045】
このようにして、図10に示すように、コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して切り離すことにより、コンクリート構造物1を解体することができる。
【0046】
なお、コンクリート構造物1の内部に埋設されている水道管等の配管3は、コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して切り離した後、或いは複数のブロック2に分割して切り離す作業に伴って、例えば、図11、12に示すように、配管3をウォータージェット装置6を用いて所定の長さ(作業者が運搬可能な長さ、重量)に切断することにより、作業者が手作業で搬出させることができる。
【0047】
この場合、配管3の周囲を囲むようにガイドレール等のガイド手段13を設け、ガイド手段13に沿ってウォータージェット装置6のノズル10を移動させるように構成してもよい。
【0048】
上記のように構成した本実施の形態のコンクリート構造物の分割方法にあっては、ウォータージェット装置6で対象のコンクリート構造物1の各ブロック2の外形線に対応するように複数本の溝4を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリル15で各溝4の少なくとも一箇所(本実施の形態では交差部5)に孔14を形成し、各孔14に先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を挿入して、拡縮部19を拡張させて各孔14を拡大させて各溝4に割れを生じさせることにより、コンクリート構造物1から各ブロック2を分割して切り離すことができる。
【0049】
従って、ワイヤーソーを用いた分割方法のように、工程数が多くなるようなことはないので、コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して解体する作業を効率良く行うことができる。
【0050】
また、溝形成手段にウォータージェット装置を用い、孔形成手段に低騒音型のコンクリートコアドリルを用い、拡張手段に先端型拡張型ジャッキを用いているので、低騒音、低振動でコンクリート構造物1を複数のブロック2に分割して解体することができ、騒音、振動が制限される地域においても、作業可能な時間帯が制限されるようなことはない。
【0051】
なお、前記の説明においては、各溝4の交差部5に孔14を形成して、各孔14を介して各溝4に割れを生じさせるように構成したが、各溝4の中央等の任意の1箇所又は複数箇所に孔を形成し、この孔を利用して各溝4に割れを生じさせるように構成してもよい。
【0052】
さらに、前記の説明においては、自由面が3の上段のブロック2aに対しては、鉛直方向及び水平方向の直交する2方向の3方向から均等な荷重を加え、自由面が2の中段のブロック2b、及び下段のブロック2cに対しては、水平方向の直交する2方向から均等な荷重を加えたが、自由面が1のブロックに対しては、図示はしないが、面に対して垂直となるように複数の先端拡張型ジャッキ16の拡縮部19を挿入して、自由面を増加させることにより、対象のブロックをコンクリート構造物から切り離すことができる。
【0053】
さらに、前記の説明においては、拡張手段に先端拡張型ジャッキを用いたが、これに限定することなく、他の各種の加圧方法を用いてもよい。例えば、セリ矢のような隙間材を孔に挿入して孔を加圧する方法、膨張材のような化学薬剤を孔に充填して孔を加圧する方法、火薬類等の爆破膨張によって孔を加圧する方法、高電圧による金属昇華に伴う金属蒸気の膨張によって孔を加圧する方法等、各種の加圧方法を用いることができる。要は、低騒音、低振動で孔を加圧することができる方法であればよい。
【0054】
さらに、前記の説明においては、コンクリート構造物1を立方体形状の複数のブロック2に分割したが、直方体形状のブロックや、その他の多面体形状のブロック等、各種の立体形状のブロックに分割してもよい。
【0055】
さらに、複数のブロック2に分割する順番は、上記の順番に限らず、上段の各ブロック2を分割した後に、中段の各ブロック2を分割し、その後に下段の各ブロック2を分割する等、他の各種の順番を採用してもよい。
【0056】
さらに、前記の説明においては、コンクリート構造物1の全体を複数のブロック2に分割する場合に本発明を適用したが、コンクリート構造物1の表面の一部を分割して切り離する場合、コンクリート構造物1の内部を部分的に分割して切り離す場合等に本発明を適用してもよい。
【0057】
図15に、ブロック2の拘束面と先端拡張型ジャッキ16の配置位置との関係を示す。コンクリート構造物1を複数のブロック2に分割する場合、各ブロック2の拘束面に対して1つの先端拡張型ジャッキ16が必要になるため、各拘束面にそれぞれ1つの孔を形成し、各拘束面の孔14にそれぞれ先端拡張型ジャッキ16を挿入する。
【0058】
例えば、ブロック2の拘束面の数が4の場合には、図15(a)に示すように、各拘束面に対応する各溝4の中央部にそれぞれ孔14を形成し、各孔14内に先端拡張型ジャッキ16を挿入する。或いは、図15(b)に示すように、各拘束面に対応する溝4の交差部にそれぞれ孔14を形成し、各孔14内に先端拡張型ジャッキ16を挿入する。
【0059】
また、ブロック2の拘束面の数が3の場合には、図15(c)、(d)に示すように、各拘束面に対応する各溝4の中央部にそれぞれ孔14を形成し、各孔14内に先端拡張型ジャッキ16を挿入する。
【0060】
さらに、ブロック2の拘束面の数が2の場合には、図15(e)に示すように、各拘束面に対応する各溝4の中央部にそれぞれ孔14を形成し、各孔14内に先端拡張型ジャッキ16を挿入する。
【0061】
さらに、ブロック2の拘束面の数が1の場合には、図15(f)に示すように、拘束面に対応する溝4の中央部に孔14を形成し、この孔14内に先端拡張型ジャッキを挿入する。
【符号の説明】
【0062】
1 コンクリート構造物
2、2a〜2c ブロック
3 配管
4 溝
5 交差部
6 溝形成手段(ウォータージェット装置)
7 ポンプユニット
8 モータユニット
9 ノズルユニット
10 ノズル
11 研磨剤供給ユニット
12 回収ユニット
13 ガイド手段
14、14a〜14g 孔
15 孔形成手段(低騒音型のコンクリートコアドリル)
16 拡張手段(先端拡張型ジャッキ)
17 シリンダ
18 ロッド
19 拡縮部
20 油圧分配器
21 油圧供給装置
22 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物を複数のブロックに分割するコンクリート構造物の分割方法であって、
前記コンクリート構造物の表面に、前記各ブロックの外形線に沿うように、複数本の溝を形成する溝形成工程と、該各溝の少なくとも1箇所にそれぞれ孔を形成する孔形成工程と、該各孔を拡大させることにより、前記各溝に沿った割れを生じさせる分割工程とを備えていることを特徴とするコンクリート構造物の分割方法。
【請求項2】
前記複数本の溝の交差部の各々に前記孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の分割方法。
【請求項3】
前記複数本の溝の各々の中央部に前記孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の分割方法。
【請求項4】
前記複数本の溝に、異なる3方向を向く3つの前記孔が形成されていることを特徴とする請求項請求項1に記載のコンクリート構造物の分割方法。
【請求項5】
ウォータージェット装置により前記各溝を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリルにより前記各孔を形成し、拡張手段により前記各溝に沿った割れを生じさせることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のコンクリート構造物の分割方法。
【請求項1】
コンクリート構造物を複数のブロックに分割するコンクリート構造物の分割方法であって、
前記コンクリート構造物の表面に、前記各ブロックの外形線に沿うように、複数本の溝を形成する溝形成工程と、該各溝の少なくとも1箇所にそれぞれ孔を形成する孔形成工程と、該各孔を拡大させることにより、前記各溝に沿った割れを生じさせる分割工程とを備えていることを特徴とするコンクリート構造物の分割方法。
【請求項2】
前記複数本の溝の交差部の各々に前記孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の分割方法。
【請求項3】
前記複数本の溝の各々の中央部に前記孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の分割方法。
【請求項4】
前記複数本の溝に、異なる3方向を向く3つの前記孔が形成されていることを特徴とする請求項請求項1に記載のコンクリート構造物の分割方法。
【請求項5】
ウォータージェット装置により前記各溝を形成し、低騒音型のコンクリートコアドリルにより前記各孔を形成し、拡張手段により前記各溝に沿った割れを生じさせることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のコンクリート構造物の分割方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−23921(P2013−23921A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160202(P2011−160202)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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