説明

コンタクトプローブ及びソケット

【課題】組立性が良好で電気的性能に優れ、かつ中心軸とコンタクト位置とのオフセット量を調整可能なコンタクトプローブ及びそれを備えたソケットを提供する。
【解決手段】先端側円柱部29は、基端側円柱部21が絞り部402と係合しているときに、基端側円柱部21を基点として揺動可能である。先端側円柱部29の振れ量Bは、先端側円柱部29の長さとチューブ4の内径(開口径)によって決定される。すなわち、先端側円柱部29の揺動範囲は、側面がチューブ4の内側端縁405に接するまでの範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体集積回路等の被測定デバイスの検査に使用するコンタクトプローブ及びソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路等の検査対象物の検査を行う場合において、検査対象物と測定器側の検査用基板とを電気的に接続するために、コンタクトプローブが一般的に使用される。以下、コンタクトプローブに関する公知技術について説明する。
【0003】
下記特許文献1は、基板検査治具に関し、一方端部が検査点に圧接される「接触子2は、図2で示す如く、棒状部材21とコイルばね22を有してなる」構造である(段落[0012])。棒状部材21の基端は、「コイルばね22の密巻部221に所定長さ挿入して、溶接等にて接合し接合部23が形成され」る(同段落)。そして、「複数の検査点に対応する各々の電極部41の位置は、接触子2を傾斜させることで、横方向にずれた位置に移動させることができる」としている(段落[0017])。
【0004】
下記特許文献2は、電気接触子を備えた電気部品用ソケットに関し、「電気接触子13は、電気部品1の端子1aに接触する端子側接触部材14と、配線基板2に接触する基板側接触部材15と、両方の接触部材14,15を互いに離間する方向に付勢するコイルバネ16とを有し、コイルバネ16は、端子側接触部材14に当接する第1密着巻き部16aと、基板側接触部材15に当接する通常巻き包含部16mと、第1密着巻き部16a及び通常巻き包含部16mの間に設けられる粗巻き部16bとからなり、端子1aが端子側接触軸部14aと接触すると、粗巻き部16bが縮まって通常巻き包含部16mの軸心に対する第1密着巻き部16aの軸心が傾斜し、端子側接触部材14が傾倒する構成」としている([要約])。
【0005】
下記特許文献3は、ケルビン検査用治具に関し、コンタクトプローブのプランジャー先端をコンタクトプローブの中心軸からオフセットした形状にすることで、コンタクトプローブの中心軸とコンタクト位置をオフセットさせる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−25665号公報
【特許文献2】特開2008−70178号公報
【特許文献3】特開2008−45986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の基板検査治具では、コイルばね22によって棒状部材21を傾斜可能に保持しているが、コイルばね22の形状は容易に変形するため、組立性が悪く扱いづらい。また、棒状部材21とコイルばね22との溶接作業も手間がかかり、組立性が悪い。さらに、コイルばね22及び棒状部材21のみで電気的接続を成しており、導体抵抗が高く電気的性能が劣る。特許文献2の電気部品用ソケットも、コイルバネ16によって端子側接触部材14を傾斜可能に保持し、また端子側接触部材14と基板側接触部材15との間をコイルバネ16のみで電気的に接続しており、組立性が悪く電気的性能が劣るという特許文献1と同様の欠点を有する。また、端子側接触部材14とコイルバネ16とがバラバラであると扱いづらく、溶接で接合すると特許文献1と同様に溶接作業の手間がかかり、組立性が悪い。特許文献3のケルビン検査用治具は、コンタクトプローブの中心軸とコンタクト位置とのオフセット量がプランジャーの形状で決定されてしまい、汎用性が低い。
【0008】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、組立性が良好で電気的性能に優れ、かつ中心軸とコンタクト位置とのオフセット量を調整可能なコンタクトプローブ及びそれを備えたソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、コンタクトプローブである。このコンタクトプローブは、
一方が検査対象物との接続用であり、他方が検査用基板との接続用である第1及び第2プランジャーと、
前記第1及び第2プランジャーを互いに離れる方向に付勢するように前記第1及び第2プランジャーに対して設けられたスプリングと、
前記第1及び第2プランジャーの基端側から所定長の範囲、及び前記スプリングが内側に位置する導電性チューブとを備え、
前記導電性チューブは、一部が小径部となっており、
前記第1及び第2プランジャーの少なくとも一方は、前記小径部よりも大径で且つ前記小径部と係合して抜止めとなる基端側大径部と、前記基端側大径部から前記小径部の内側を通って先端側に延びる先端側棒状部とを有し、前記先端側棒状部は、前記基端側大径部が前記小径部と係合しているときに、前記基端側大径部を基点として揺動可能である。
【0010】
前記コンタクトプローブにおいて、
前記小径部は、前記導電性チューブの端部から軸方向中央側に所定距離だけ離れて位置し、
前記先端側棒状部の側面が前記導電性チューブの端部に接触することで、前記先端側棒状部の揺動範囲が規制されるとよい。
【0011】
本発明の別の態様は、ソケットである。このソケットは、
前記コンタクトプローブを絶縁支持体で支持してなるソケットであって、
前記絶縁支持体は、中間空洞部と、前記中間空洞部よりも小径で、一端が前記中間空洞部と連通し他端が前記絶縁支持体の表面に開口する開口側空洞部とを有し、
前記開口側空洞部の中心軸は、前記中間空洞部の中心軸と略平行かつ当該中心軸から所定距離だけずれていて、
前記導電性チューブは、前記中間空洞部内に保持され、
前記先端側棒状部は、前記開口側空洞部を通って前記絶縁支持体の表面から外側に突出し、かつ、側面が前記開口側空洞部の前記一端の縁の一部と接触することで軸が所定角度だけ傾いている。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1及び第2プランジャーの基端側から所定長の範囲、及びスプリングが導電性チューブの内側に位置し、前記第1及び第2プランジャーの少なくとも一方の先端側棒状部は、基端側大径部が前記導電性チューブの小径部と係合しているときに、前記基端側大径部を基点として揺動可能であるため、組立性が良好で電気的性能に優れ、かつ中心軸とコンタクト位置とのオフセット量を調整可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は、本発明の第1の実施の形態に係るコンタクトプローブの正断面図。(B)は、同コンタクトプローブを絶縁支持体で支持したソケットのスプリング開放状態の正断面図。(C)は、同ソケットのスプリング圧縮状態(コンタクト状態)の正断面図。
【図2】(A)は、図1に示す絶縁支持体の第2層を軸方向に上から見た平面図。(B)は、(A)のB-B'断面図。
【図3】(A)は、本発明の第2の実施の形態に係るコンタクトプローブの正断面図。(B)は、同コンタクトプローブを絶縁支持体で支持したソケットのスプリング開放状態の正断面図。(C)は、同ソケットのスプリング圧縮状態(コンタクト状態)の正断面図。
【図4】(A)は、変形例に係るコンタクトプローブの正断面図。(B)は、同コンタクトプローブを絶縁支持体で支持したソケットのスプリング開放状態の正断面図。(C)は、同ソケットのスプリング圧縮状態(コンタクト状態)の正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1(A)は、本発明の第1の実施の形態に係るコンタクトプローブ100の正断面図である。図1(B)は、コンタクトプローブ100を絶縁支持体31で支持したソケット30のスプリング開放状態の正断面図である。図1(C)は、同ソケット30のスプリング圧縮状態(コンタクト状態)の正断面図である。なお、図1(A),(B),(C)において、コンタクトプローブ100の第1及び第2プランジャー1,2は、非断面で示している。また、ソケット30においてコンタクトプローブ100は複数個支持されるが、ここではコンタクトプローブ100を1つのみ図示している。
【0017】
コンタクトプローブ100は、第1プランジャー1と、第2プランジャー2と、スプリングとしてのコイルスプリング3と、チューブ4とを備える。第1プランジャー1は、検査対象物5との接続部品である。第2プランジャー2は、検査用基板6との接続部品である。銅又は銅合金等の導電性金属体であるチューブ4は、第1及び第2プランジャー1,2を摺動自在に保持するものであり、第1及び第2プランジャー1,2の基端側とコイルスプリング3とを内部に収容する。例えばピアノ線やステンレス線等の一般的な導体金属材質で形成されたコイルスプリング3は、第1及び第2プランジャー1,2を互いに離れる方向に付勢するように第1及び第2プランジャー1,2に対して設けられ、第1及び第2プランジャー1,2に検査対象物5及び検査用基板6との接触力を与える。検査対象物5は、例えば電極が所定間隔で配列された半導体集積回路であり、図示の場合、電極バンプ5aが所定間隔で配列されたものである。検査用基板6は、測定器側に接続される電極パッド7を電極バンプ5aに対応して所定間隔で有するものである。
【0018】
銅又は銅合金等の導電性金属体である第1プランジャー1は、基端側から順に、基端側円柱部11と、第1小径部12と、第2小径部13と、フランジ部14と、先端側円柱部19とを同軸に有する。同じく銅又は銅合金等の導電性金属体である第2プランジャー2は、基端側から順に、基端側大径部としての基端側円柱部21と、先端側棒状部としての先端側円柱部29とを有する。コイルスプリング3は、第1及び第2プランジャー1,2の基端側円柱部11,21の端面間に設けられ、各端面に離間方向の付勢力を与える。円筒状のチューブ4は、軸方向の異なる2箇所の中間部側面に、リング状に内側に凹んだ小径部としての絞り部401,402を第1及び第2プランジャー1,2の抜止めのために有する。なお、軸方向とは、コンタクトプローブ100の長手方向を意味する。
【0019】
第1プランジャー1において、基端側円柱部11は、絞り部401の内径よりも大径である。円柱状の第1小径部12は、絞り部401の内径よりも小径である。軸方向について第1小径部12の存在範囲内に絞り部401が位置する。したがって、基端側円柱部11が絞り部401に引っ掛かり、第1プランジャー1はチューブ4からの抜けが防止される。円柱状の第2小径部13は、絞り部401の内径よりも大径であり、基端側が部分的にチューブ4内部に位置する。フランジ部14は、チューブ4の内径よりも大径の円板形状である。先端側円柱部19は、フランジ部14よりも小径であり、先端が検査対象物5の電極バンプ5aと接触する接触部19aとなっている。接触部19aは、分割山形状(ここでは8分割)であり、外周に中心から等角度間隔で山の頂点が存在する。
【0020】
第2プランジャー2において、基端側円柱部21は、絞り部402の内径よりも大径である。先端側円柱部29は、絞り部402の内径よりも小径で、基端側が部分的にチューブ4内部に位置する。軸方向について先端側円柱部29の存在範囲内に絞り部402が位置する。したがって、基端側円柱部21が絞り部402に引っ掛かり、第2プランジャー2はチューブ4からの抜けが防止される。先端側円柱部29の先端は、検査用基板6の電極パッド7と接触する接触部29aとなっている。接触部29aは、例えば円錐形状である。
【0021】
図1(A)に示すように、先端側円柱部29は、基端側円柱部21が絞り部402と係合しているときに、基端側円柱部21を基点として揺動可能である。揺動は、基端側円柱部21の側面とチューブ4の内面との間に隙間が存在する(基端側円柱部21の外径がチューブ4の内径よりも僅かに小さい)こと、及び先端側円柱部29の径がチューブ4の内径よりも小さいことで実現される。先端側円柱部29の振れ量Bは、先端側円柱部29の長さとチューブ4の内径(開口径)と、チューブ4の絞り部402から端部(符号405で示す端部)までの長さとによって決定される。すなわち、先端側円柱部29の揺動範囲は、先端側円柱部29の側面が図1(A)に示すチューブ4の内側端縁405に接するまでの範囲である。あるいは、基端側円柱部21の上端縁もしくは下端縁がチューブ4の内面に接することで揺動範囲が規制されてもよい。先端側円柱部29が長いほど、より小さい振れ角で振れ量Bを大きくできる、すなわち先端側円柱部29のコンタクト可能エリアを拡大することができる。振れ量Bの最大値は、先端側円柱部29の接触部29a(テーパー状)の先端(頂点)が、軸方向から見てチューブ4の外側面を越えないことが好ましい。すなわち、振れ量Bは、チューブ4の外半径以内であるとよい。理由は後述する。上記の最大値の範囲内において、振れ量Bの設計条件としては、例えば、
B≧A
とする。但し、
B:コンタクトプローブ100の単品時(ソケット組込み前)の第2プランジャー2の振れ量(片側)。
A:コンタクトプローブ100のセンター(=検査対象物5の電極バンプ5aのセンター)と検査用基板6の電極パッド7のセンターとのずれ量(図1(B)参照)。
【0022】
図1(B),(C)に示すように、ソケット30は、コンタクトプローブ100を複数本平行に配置するための空洞部32を所定間隔で有する絶縁支持体31(空洞部32は1つのみ図示)を備え、それらの各空洞部32にコンタクトプローブ100を挿入配置したものである。具体的には、第1プランジャー1、第2プランジャー2、コイルスプリング3及びチューブ4を一体的に組み立ててコンタクトプローブ100を構成したものを、絶縁支持体31の空洞部32に挿入配置する。なお、絶縁支持体31は、コンタクトプローブ100を空洞部32内に組み込むために、第1層31a及び第2層31bに分割された構造となっている。
【0023】
空洞部32は、中間空洞部35と、開口側空洞部33,34とを含む。中間空洞部35は、チューブ4を収納するために、第1層31a及び第2層31bの両者に渡って(跨って)形成される。開口側空洞部33,34は、中間空洞部35の両側(上下)に位置する。開口側空洞部33は、中間空洞部35と同軸かつ中間空洞部35よりも小径で、一端が中間空洞部35と連通し他端が絶縁支持体31の表面に開口する。開口側空洞部34は、中間空洞部35よりも小径で、一端が中間空洞部35と連通し他端が絶縁支持体31の表面に開口する。開口側空洞部34の中心軸は、中間空洞部35の中心軸と略平行かつ当該中心軸から所定距離だけずれている。すなわち、開口側空洞部34は、中間空洞部35に対して偏心している。
【0024】
第1プランジャー1のフランジ部14は、中間空洞部35内に位置し、開口側空洞部33よりも大径であるため絶縁支持体31からの抜けが防止される。すなわち、開口側空洞部33は、フランジ部14に係合して第1プランジャー1の抜け出しを規制する。先端側円柱部19は、開口側空洞部33に摺動自在に支持される。チューブ4は、中間空洞部35内に保持される。中間空洞部35と開口側空洞部34の段差部分にチューブ4の端部が当接し、チューブ4の抜けが防止される。開口側空洞部34は、チューブ4よりも小径であり、チューブ4の一端に係合してチューブ4の抜け出しを規制する。先端側円柱部29は、開口側空洞部34を通って絶縁支持体31の表面から外側に(下方に)突出し、かつ、側面が開口側空洞部34の一端(中間空洞部35側の端)の縁の一部(図1(B)等に符号345で示す)と接触することで軸が所定角度だけ傾いている。なお、設計条件としては、先端側円柱部29が前記所定角度だけ傾いた状態で、軸方向から見て、先端側円柱部29の先端が開口側空洞部34からはみ出さないようにする。図1(B)のスプリング開放状態から図1(C)に示すスプリング圧縮状態に移行するときに、先端側円柱部29の先端が開口側空洞部34に引っ掛からないようにするためである。
【0025】
図2(A)は、図1に示す絶縁支持体31の第2層31bを軸方向に上方から見た平面図である。図2(B)は、図2(A)のB-B'断面図である。中間空洞部35の一部を成す大径孔部311に、開口側空洞部34が連通している。加工順序としては、まず開口側空洞部34の加工後に、大径孔部311を加工する。加工には一般的な汎用ドリルを使用可能である。
【0026】
ソケット30を使用して検査を行う場合、ソケット30は検査用基板6上に位置決め載置され、この結果、コイルスプリング3が所定長だけ縮んで第2プランジャー2の先端側円柱部29の接触部29aが検査用基板6の電極パッド7に弾接する。半導体集積回路等の検査対象物5が無い状態では、第1プランジャー1はフランジ部14が開口側空洞部33と中間空洞部35との段差で規制されるまで突出方向に移動しており、先端側円柱部19の突出量は最大となっている。検査対象物5がソケット30の絶縁支持体31に対して所定の間隔で対向配置されることにより、先端側円柱部19は後退してコイルスプリング3はさらに圧縮され、その結果、先端側円柱部19は検査対象物5の電極バンプ5aに弾接する。この状態で検査対象物5の検査が実行される。
【0027】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0028】
(1) チューブ4が第1及び第2プランジャー1,2の基端側とコイルスプリング3とを内部に収容しているため、各部品を一体に扱うことができ、組立性がよい。
【0029】
(2) チューブ4の中間部の絞り部402で先端側円柱部29を係止している状態で先端側円柱部29を基端側円柱部21を基点として揺動可能としているため、コンタクトプローブ100の単品状態(ソケットへの組込み前)では、チューブ4の内側端縁405と先端側円柱部29の側面との当接により、先端側円柱部29の揺動範囲(図1(A)に示す振れ量B)が適度に規制される。したがって、揺動範囲に規制が無い場合と比較して、ソケットへの組込み時の組立性がよい。ここで、上述のとおり振れ量Bがチューブ4の外半径以内であるものとすれば、多数個のコンタクトプローブ100を絶縁支持体31へ組み込む時(特に、第1層31aに組み込んだ後、第2層31bを被せる時)に、いずれの先端側円柱部29も接触部29aの先端が軸方向から見てチューブ4の存在範囲内にあるため、組込み作業性が顕著に良い。すなわち、振れ量Bがチューブ4の外半径を超える場合、多数個のコンタクトプローブ100を絶縁支持体31へ組み込む際には、全ての先端側円柱部29を同時にある程度まっすぐに保持しなければならないところ、上記の条件を満たすことで、そうした煩雑な作業をせずに組込み可能となる。
【0030】
(3) コイルスプリング3だけでなく、チューブ4も第1及び第2プランジャー1,2間を電気的に接続する経路を成すため、特許文献1及び2の構成と比較して低抵抗であり、電気的性能が優れている。
【0031】
(4) コンタクトプローブの中心軸とコンタクト位置とのオフセット量は、先端側円柱部29の揺動可能範囲内において、絶縁支持体31の第2層31bの開口側空洞部34の配置によって任意に決定できるため、特許文献3のようにオフセット量がプランジャーの形状で決定される場合と比較して汎用性が高い。つまり、検査用基板6の電極パッド7に対して所定範囲内の任意の量だけオフセットした電極を有する検査対象物の測定が可能となる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図3(A)は、本発明の第2の実施の形態に係るコンタクトプローブ200の正断面図である。図3(B)は、コンタクトプローブ200を絶縁支持体31で支持したソケット30のスプリング開放状態の正断面図である。図3(C)は、同ソケット30のスプリング圧縮状態(コンタクト状態)の正断面図である。なお、図3(A),(B),(C)において、コンタクトプローブ100の第1及び第2プランジャー1,2は、非断面で示している。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0033】
本実施の形態のコンタクトプローブ200は、第1の実施の形態のコンタクトプローブ100のチューブ4の絞り部401,402を無くし、代わりにチューブ4の両端を例えばかしめ加工で小径化した小径部としてのかしめ部407,408(内径は絞り部401,402と同じ)を形成している。また、コンタクトプローブ100の第1プランジャー1の第1小径部12及び第2小径部13を無くし、基端側円柱部11及びそれより小径の先端側円柱部19が相互に直結している。第2プランジャー2の先端側円柱部29は、基端側円柱部21がかしめ部408と係合しているときに、基端側円柱部21を基点として揺動する。このため、コンタクトプローブ200の単品時の先端側円柱部29の揺動範囲は、第1の実施の形態のコンタクトプローブ100よりも広い。
【0034】
本実施の形態は、第1の実施の形態と比較して先端側円柱部29の揺動範囲の規制が小さいためソケットへの組込み時の組立性はよくないものの、その他の点では第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0035】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0036】
第1の実施の形態において、第2プランジャー2の先端側円柱部29を揺動可能とすることに替えて、図4(A)〜(C)に示すように第1プランジャー1の先端側円柱部19を同様の構成で揺動可能としてもよい。第2の実施の形態に関しても同様である。なお、図4(B),(C)では、2つのコンタクトプローブ300を用いたケルビン測定用のソケットを示している。ケルビン測定とは、電流供給用のコンタクトプローブ及び電圧監視用のコンタクトプローブを検査対象物5の電極5bに当接させて電気的特性を測定するものである。図4(B)に示すように中間空洞部35に対して偏心した開口側空洞部33で2つの先端側円柱部19を先端同士が互いに近づくように傾けることで、狭ピッチのケルビン測定が実現可能である。
【0037】
先端側円柱部19の端面は、分割山形状に限らず、軸方向と垂直な平面であってもよいし、特許文献3の図2に示されるプランジャー24のような先端形状であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 第1プランジャー
2 第2プランジャー
3 コイルスプリング
4 チューブ
5 検査対象物
5a 電極バンプ
6 検査用基板
14 フランジ部
19,29 先端側円柱部
30 ソケット
31 絶縁支持体
100,200,300 コンタクトプローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が検査対象物との接続用であり、他方が検査用基板との接続用である第1及び第2プランジャーと、
前記第1及び第2プランジャーを互いに離れる方向に付勢するように前記第1及び第2プランジャーに対して設けられたスプリングと、
前記第1及び第2プランジャーの基端側から所定長の範囲、及び前記スプリングが内側に位置する導電性チューブとを備え、
前記導電性チューブは、一部が小径部となっており、
前記第1及び第2プランジャーの少なくとも一方は、前記小径部よりも大径で且つ前記小径部と係合して抜止めとなる基端側大径部と、前記基端側大径部から前記小径部の内側を通って先端側に延びる先端側棒状部とを有し、前記先端側棒状部は、前記基端側大径部が前記小径部と係合しているときに、前記基端側大径部を基点として揺動可能である、コンタクトプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンタクトプローブにおいて、
前記小径部は、前記導電性チューブの端部から軸方向中央側に所定距離だけ離れて位置し、
前記先端側棒状部の側面が前記導電性チューブの端部に接触することで、前記先端側棒状部の揺動範囲が規制される、コンタクトプローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンタクトプローブを絶縁支持体で支持してなるソケットであって、
前記絶縁支持体は、中間空洞部と、前記中間空洞部よりも小径で、一端が前記中間空洞部と連通し他端が前記絶縁支持体の表面に開口する開口側空洞部とを有し、
前記開口側空洞部の中心軸は、前記中間空洞部の中心軸と略平行かつ当該中心軸から所定距離だけずれていて、
前記導電性チューブは、前記中間空洞部内に保持され、
前記先端側棒状部は、前記開口側空洞部を通って前記絶縁支持体の表面から外側に突出し、かつ、側面が前記開口側空洞部の前記一端の縁の一部と接触することで軸が所定角度だけ傾いている、ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149962(P2012−149962A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8094(P2011−8094)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】