説明

コンテナクレーンの荷役方法およびコンテナクレーン

【課題】コンテナの積み付けゾーンを変更するレイアウト変更を、トレーラを使用することなく、迅速に行う。
【解決手段】シルビーム13の前後に立設された前後のコラム14の間隔を、スプレッダ18に保持された大型コンテナ10Aが通過可能に形成したコンテナクレーンを使用し、既設積み付けゾーンの大型コンテナ10Aを、スプレッダ18により吊り上げてシルビーム13上に設置されたコンテナ受け台24に仮置きし、コンテナクレーンを既設積み付けゾーンから新規積み付けゾーンまで走行させて停止させ、コンテナ受け台24に仮置きされた大型コンテナ10Aを新規積み付けゾーンの所定位置に積み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾などのコンテナヤードでコンテナの荷役を行うコンテナクレーンの荷役方法およびコンテナクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
門形の大型コンテナクレーン(ガントリクレーン、トランスファクレーンなどという)は、走行レーン(走行レール)上に走行装置(ボギー台車)を介して走行可能な左右一対のシルビームを配置し、これら左右のシルビーム上に前後一対のコラムをそれぞれ立設し、前部の左右コラムの上端部および後部の左右コラムの上端部にそれぞれガーダを掛け渡し、ガーダに沿って走行自在な横行台車(クラブ台車)を配置し、この横行台車に搭載されたクレーン装置から昇降自在に吊り下げられたスプレッダにより、コンテナを保持するものである。
【0003】
コンテナを積み付ける場合、コンテナクレーンを目的の積み付けゾーンに停止させ、積み付けゾーンに停止されたトレーラ上の縦向き(前後)のコンテナを吊り上げて、シルビーム間の積み付けゾーンの所定位置に、たとえば横8〜16列、縦4〜6段程度に積み付ける。反対にコンテナを積み出す場合、積み付けゾーンに積み付けられた所定のコンテナを吊り上げて、積み付けゾーンに停止されたトレーラに積み込む。
【0004】
ところで、大型の門形コンテナクレーンには、前後のコラムの間隔を、コンテナの長さより広くして通過可能に形成するとともに、ガーダをコラムより外側に張り出したものがあり、このような大型の門形コンテナクレーンでは、シルビームの外側に、積み付けスペースやトレーラスペースを設けることができる。
【0005】
このようなコンテナクレーンによる荷役作業中は、コンテナを吊り上げた状態で走行すると、コンテナが前後に振れて危険なため、インチング走行によるコンテナの位置合わせのための僅かな前後移動しか実施していない。よく見られるコンテナの振れ止め装置は、コンテナの段積みの位置合わせのために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−26388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このコンテナクレーンを使用して、コンテナを前後方向に変位した新規積み付けスペースにレイアウトの変更を行う場合がある。この場合、コンテナを吊り上げた状態で走行すると、コンテナが前後に振れて危険なため、コンテナを一旦トレーラに積み込んで新規積み付けスペースまで搬送し、コンテナクレーンを新規積み付けスペースまで走行させて、トレーラからコンテナを吊り上げて新規積み付けスペースの所定位置に積み付ける必要があり、トレーラも必要で極めて手間の係る荷役作業となっていた。
【0008】
本発明は上記問題点を解決して、トレーラも不要で、コンテナのレイアウトの変更を容易に行うことができるコンテナクレーンの荷役方法およびコンテナクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のコンテナクレーンの荷役方法は、
コンテナヤード上を、走行装置を介して前後方向に走行自在な左右一対のシルビームに、前後一対のコラムをそれぞれ立設し、左右のコラムの上端部間に幅方向に沿うガーダをそれぞれ掛け渡して門形形状とし、前記ガーダに沿って走行自在な横行台車を配置し、この横行台車のクレーン装置から索体を介して昇降自在に吊り下げられたスプレッダに、コンテナを保持可能なコンテナクレーンを使用し、幅方向にコンテナが積み付けられる既存積み付けゾーンのコンテナを、前後方向に変位した新規積み付けゾーンに積み替えてコンテナのレイアウトを変更するに際し、
既設積み付けゾーンに停止されたコンテナクレーンにより、既存積み付けゾーンのコンテナをスプレッダにより吊り上げて、前後の前記コラム間に設置されたコンテナ受け台に移載し、
コンテナクレーンを既設積み付けゾーンから前後方向に走行移動して新規積み付けゾーンに停止させ、
前記コンテナ受け台のコンテナを新規積み付けゾーンの所定位置に積み付け、
コンテナクレーンを既設積み付けゾーンに戻し、これを繰り返してコンテナのレイアウトを変更するものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のコンテナクレーンの荷役方法を実施するためのコンテナクレーンであって、
左右のシルビーム上にコンテナ受け台をそれぞれ設置し、
前記コンテナ受け台は、大型コンテナ受け部内に、小型コンテナ受け部が一体に設けられたものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の構成において、
コンテナクレーンは、コンテナヤードに敷設された走行レールに沿って移動する移動装置と、駆動原となる電力が供給される受電装置とを具備し、
前記受電装置は、シルビームに設けられたケーブルドラムにより繰り出し・巻き取りされる給電ケーブル、またはコンテナヤードに敷設された給電レールから集電する集電具を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、レイアウトを変更するコンテナを、既設積み付けゾーンから、コラム間に設けられたコンテナ受け台に仮置きした後、コンテナクレーンを既設積み付けゾーンから新規積み付けゾーンまで走行移動させて、コンテナ受け台から新規積み付けゾーンの所定位置に積み付けるので、従来必要であったトレーラによる積み替え作業が不要となり、安全かつ迅速にコンテナのレイアウト変更を行うことができる。またコンテナクレーンでは、コンテナ受け台に安定してコンテナを仮置きできることから、高速走行が可能となり、コンテナのレイアウトの変更に要する作業時間を短縮することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、左右のシルビーム上に設置したコンテナ受け台に、それぞれコンテナを仮置きすることで、効率よく荷役作業を実施することができる。また大型、小型のコンテナをコンテナ受け台にそれぞれ仮置きすることができ、作業範囲を拡大することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、レールマウント式のクレーンにおいて、給電ケーブルまたは集電具を介して給電される受電装置を具備することにより、シルビーム上に駆動源を確保するためのエンジンや発電機を搭載する必要がなくなるので、シルビーム上の空間を広く確保できて、容易にコンテナ受け台を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るコンテナクレーンの実施例を示す斜視図である。
【図2】コンテナクレーンの正面図である。
【図3】コンテナクレーンの平面図である。
【図4】コンテナクレーンの側面図である。
【図5】コンテナクレーンのシルビームを示す正面図である。
【図6】コンテナクレーンのスプレッダを説明する斜視図である。
【図7】コンテナクレーンの荷役作業を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施例1]
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、コンテナヤードに敷設された単数または複数本の走行レール11に案内されるレールマウント式の門形のコンテナクレーン(トランスファクレーン、ガントリクレーンともいう)に関するもので、クレーン本体12は、走行レール11に沿う左右一対のシルビーム13と、これらシルビーム13の前後に立設された一対のコラム14と、前部の左右コラム14,14の上端部および後部の左右コラム14,14の上端部にそれぞれ掛け渡された前後一対のガーダ15,15と、前後のガーダ15,15上にそれぞれ敷設された横行レール15aに案内されて移動自在な横行台車(クラブ台車,トロリーともいう)16と、この横行台車16からクレーン装置17を介して大型コンテナ10A(40フィート)または小型コンテナ10B(20フィート)をそれぞれ保持可能なスプレッダ18とを具備している。
【0017】
図4に示すように、シルビーム13に立設されたコラム14,14の前後間隔Lmは、大型コンテナ10Aの全長Lcより十分に長く、スプレッダ18に保持された大型コンテナ10Aが横行移動により通過可能に形成されている。またガーダ15,15は、コラム14,14から外側に所定距離それぞれ突出され、横行台車16が横行移動して荷役可能に構成されている。また前後のガーダ15,15の先端部間に連結ビーム19が連結されている。
【0018】
シルビーム13には、走行レール11に案内される複数の走行車輪を有する電動式のボギー台車(走行装置)21が配置されている。また一方のシルビーム13の前部に、横行台車16やクレーン装置17、ボギー台車21などの全駆動電源を給電する給電ケーブル(図示せず)を巻き取り、繰り出しするためのケーブルドラム22が配置されている。そして図4,図5に示すように、一方のシルビーム13中間底部に、コンテナヤードに敷設されたケーブル案内レール28に対して給電ケーブル27を出し入れするケーブル案内装置23を具備した受電装置が設けられている。29はシルビーム13の中間底部に設けられて走行レール11からの走行車輪の逸脱を防止するレール案内保持具である。
【0019】
横行台車16には、横行駆動装置(図示せず)とクレーン装置17と操作室20とが設けられており、クレーン装置17には複数の索体17aを介してスプレッダ18が昇降自在に吊り下げられている。このスプレッダ18は、図6に示すように、メインビーム31に、前後の左右一対の吊下シーブ32を有するシーブブロック33が前後位置に取り付けられ、このメインビーム31に、コンテナ10A,10Bの全長に合わせて前後に出退調整可能なスライドビーム34が取付けられている。そして、前後のスライドビーム34先端で左右コーナ部に、コンテナ10A,10Bの四隅に着脱自在なツイストロック装置35がそれぞれ設けられている。
【0020】
このコンテナクレーンは、ケーブルドラム22やケーブル案内装置23を有する受電装置を具備しているため、駆動源を得るためのエンジンや発電機が不要になり、左右のシルビーム13上に余剰空間を作ることができる。そして、これら左右のシルビーム13上の余剰空間に、コンテナ10A,10Bを仮置きするコンテナ受け台24が架台24aを介して長さ方向に沿って設置されている。
【0021】
このコンテナ受け台24は、大型コンテナ10Aの四隅が係合されるコーナガイド具25aを有する大型コンテナ受け部25と、この大型コンテナ受け部25内で、小型コンテナ10Bの四隅が係合されるコーナガイド具26aを有する小型コンテナ受け部26とが一体に設けられている。そして大型コンテナ受け部25は、大型コンテナ受け部25に仮置きされた大型コンテナ10Aが、小型コンテナ10Bのコーナ保持具26aに干渉しないように所定距離だけ低い位置に配置される。またコンテナ受け台24およびコンテナ受け台24に仮置きされたコンテナ10A,10Bは、シルビーム13の外側にそれぞれはみ出すことになるが、走行レール11の外側は、コンテナクレーンの移動空間として所定幅が空けられているので、積み付けられたコンテナ10A,10Bに干渉することはない。
【0022】
(荷役作業1)
通常、1つの積み付けゾーンには、前後方向に長い大型コンテナ10Aが幅方向にたとえば図では16個(シルビーム13間に12個、図右のシルビーム13外側に3個、図左のシルビーム13外側に1個とトレーラスペース)が、縦6段に積み付けられる。
【0023】
ところで、図2に示すように、たとえば下から4段目の大型コンテナ10A4を取り出したい場合、従来では、仮想線で示すように、スプレッダ18により6段目の大型コンテナ10A6を吊り上げ、他の6段目の大型コンテナ10A上に高積みし、さらに5段目の大型コンテナ10A6を吊り上げて他の6段目の大型コンテナ10A上に高積みした後、4段目の大型コンテナ10A4を取り出していた。しかし、従来方法では、2つの大型コンテナ10A6,10A5を、必要以上の高さに段積みすることは危険が大きい。
【0024】
本発明では、6段目と5段目の大型コンテナ10A6,10A5をそれぞれ左右のコンテナ受け台24に仮置きし、4段目の大型コンテナ10A4を取り出すことができる。このように、コンテナ受け台24に上段側のコンテナ10A,10Bを仮置きすることにより、上段側のコンテナ10A,10Bを必要な高さ以上に高積みすることなく、下段側のコンテナ10A,10Bを安全に取り出すことができる。
【0025】
(荷役作業2)
図8に示す幅方向の既設積み付けゾーンZ1の大型コンテナ10Aを、前後方向に変位した新設積み付けゾーンZnに積み替えするコンテナのレイアウト変更を行う荷役作業について説明する。
【0026】
まず既設積み付けゾーンZ1に停止されたコンテナクレーンにより、既存積み付けゾーンZ1の目的の大型コンテナ10Aをスプレッダ18により吊り上げて左右一方のコンテナ受け台24に仮置きする。さらに次の大型コンテナ10Aをスプレッダ18により吊り上げて他方のコンテナ受け台24に仮置きする。
【0027】
そして、コンテナクレーンを既設積み付けゾーンZ1から新規積み付けゾーンZnまで高速で走行移動して停止させ、コンテナ受け台24の大型コンテナ10Aを新規積み付けゾーンZnの所定位置に積み付け、さらに残りのコンテナ受け台24の大型コンテナ10Aを積み付ける。
【0028】
さらに、コンテナクレーンを新規積み付けゾーンZnから既設積み付けゾーンZ1に戻し、これらの荷役作業を繰り返してコンテナのレイアウトの変更を実施する。
上記実施例によれば、左右のシルビーム13上にコンテナ受け台24をそれぞれ設置したので、コンテナ10A,10Bをそれぞれ仮置きすることができ、安全にかつ効率よく荷役作業を実施することができる。またコンテナ受け台24は、大型コンテナ10Aを仮置きする大型コンテナ受け部25と、小型コンテナ10Bを仮置きする小型コンテナ受け部26とを具備しているので、作業範囲を拡大することができる。
【0029】
このコンテナクレーンは、レールマウント式として、ケーブル案内装置23を介してケーブルドラム22に巻き取られる給電ケーブルにより、駆動装置のすべての電源が給電されるように構成されたので、駆動源を得るためのエンジンや発電機の搭載が不要となり、シルビーム13上の余剰空間を広く確保できて、容易にコンテナ受け台24を設置することができる。
【0030】
コンテナレイアウトを変更する荷役作業において、既設積み付けゾーンZ1の2個のコンテナ10Aをコラム14間のコンテナ受け台24にそれぞれ仮置きした後、コンテナクレーンを新規積み付けゾーンZnまで高速で走行移動させ、コンテナ受け台24の2個のコンテナ10Aをそれぞれ新規積み付けゾーンZnに積み付けることができる。したがって、従来必要であったトレーラによる積み替え作業が不要となり、安全かつ迅速にレイアウトの変更作業を行うことができる。
【0031】
なお、受電装置として、給電ケーブルをケーブルドラムに巻き取る構造としたが、走行方向に沿って複数の給電レールを設置するとともに、コンテナクレーンに追従して移動し前記給電レールに摺接する集電子を有する集電トロリー(充電具)を有する構造としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
Z1 既設積み付けゾーン
Zn 新設積み付けゾーン
10A,10B コンテナ
11 走行レール
12 クレーン本体
13 シルビーム
14 コラム
15 ガーダ
15a 横行レール
16 横行台車
17 クレーン装置
17a 索体
18 スプレッダ
21 ボギー台車
22 ケーブルドラム
24 コンテナ受け台
25 大型コンテナ受け部
26 小型コンテナ受け部
27 給電ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナヤード上を、走行装置を介して前後方向に走行自在な左右一対のシルビームに、前後一対のコラムをそれぞれ立設し、左右のコラムの上端部間に幅方向に沿うガーダをそれぞれ掛け渡して門形形状とし、前記ガーダに沿って走行自在な横行台車を配置し、この横行台車のクレーン装置から索体を介して昇降自在に吊り下げられたスプレッダに、コンテナを保持可能なコンテナクレーンを使用し、幅方向にコンテナが積み付けられる既存積み付けゾーンのコンテナを、前後方向に変位した新規積み付けゾーンに積み替えてコンテナのレイアウトを変更するに際し、
既設積み付けゾーンに停止されたコンテナクレーンにより、既存積み付けゾーンのコンテナをスプレッダにより吊り上げて、前後の前記コラム間に設置されたコンテナ受け台に移載し、
コンテナクレーンを既設積み付けゾーンから前後方向に走行移動して新規積み付けゾーンに停止させ、
前記コンテナ受け台のコンテナを新規積み付けゾーンの所定位置に積み付け、
コンテナクレーンを既設積み付けゾーンに戻し、これを繰り返してコンテナのレイアウトを変更する
ことを特徴とするコンテナクレーンの荷役方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテナクレーンの荷役方法を実施するためのコンテナクレーンであって、
左右のシルビーム上にコンテナ受け台をそれぞれ設置し、
前記コンテナ受け台は、大型コンテナ受け部内に、小型コンテナ受け部が一体に設けられた
ことを特徴とするコンテナクレーン。
【請求項3】
コンテナクレーンは、コンテナヤードに敷設された走行レールに沿って移動する移動装置と、駆動原となる電力が供給される受電装置とを具備し、
前記受電装置は、シルビームに設けられたケーブルドラムにより繰り出し・巻き取りされる給電ケーブル、またはコンテナヤードに敷設された給電レールから集電する集電具を有する
ことを特徴とする請求項2記載のコンテナクレーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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