説明

コンドーム

【課題】 従来のコンドームでは、射精後のペニス萎縮時に該ペニスとコンドームとの間に隙間ができて、膣内に精液漏出の危険があるとともに、萎縮したペニスを膣内から抜き出す際にコンドームが膣内に残る虞れがある。
【解決手段】 先端部に精液溜め部2と中間部にペニスの大部分の長さを被覆し得る筒状部3と基端部に挿入用の開口部4とを有したコンドームにおいて、コンドームの筒状部3の内面適所にペニス10の外周面に粘着する粘着剤層5を付着させていることにより、ペニスが萎縮してもコンドームをペニスに対して確実に位置保持させ得るとともに、ペニスとコンドーム間の隙間を粘着剤層6部分で確実に封止し得るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、性交時に男性のペニスに装着して使用するコンドームに関し、特にペニスに装着した状態で該ペニスから脱落(抜け落ちる)を防止し得るように改良したコンドームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンドームは、性交時の避妊用や性病感染症予防用として最もポピュラーな用具である。又、この種のコンドームは数種のサイズが市販されており、ペニス勃起時の大きさ(太さ)によって適当なサイズのコンドームを選択することができるようになっている。尚、コンドームのサイズ選択は、当人のペニス勃起時の大きさ(太さ)を基準にしてなされ、ペニス勃起状態ではコンドームを比較的フィットした状態で装着できる。
【0003】
ところで、ペニスは勃起状態から射精後には急速に萎縮して小さく(細く)なってしまい、勃起時にフイットしていたコンドームがペニス萎縮時には該ペニスに対してダブつくようになる。このようにコンドーム装着状態でペニスが萎縮してコンドームがダブつくと、ペニスとコンドームとの間に隙間ができて、その隙間から射精した精液が女性の膣内に漏出する虞れがある(女性側に不慮の妊娠の危険や性病感染の危険がある)一方、膣内に病原体がある場合には該膣側からペニスに性病感染する虞れもある。
【0004】
又、膣内挿入状態でコンドーム内に射精した後、ペニスが萎縮してコンドームがダブついていると、ペニスを膣内から抜き出す際にコンドームがペニスから外れて膣内に残ることが多々ある。その場合は、膣内に残ったコンドームの取り出しが面倒であるとともに、コンドーム内の精液が膣内に漏出する虞れがある。
【0005】
ところで、このように射精後のペニスからコンドームが脱落(膣内に残る)のを防止するために、従来からコンドームに種々の脱落防止手段を施したものが知られている。
【0006】
例えば、特開2000−83984号公報(特許文献1)には、コンドーム筒状部の開口部寄り外周面を帯状の締付具で締め付け得るようにしたコンドームが開示されている。又、特開2006−280622号公報(特許文献2)には、ペニスの亀頭部付近のみを被覆し得る大きさの袋状で、その開口周縁部を紐で縛るようにしたコンドームが開示されている。さらに、特開2005−312849号公報(特許文献3)には、コンドームの開口縁部に、コンドームをペニスに装着した状態で睾丸に係留する(引っ掛ける)ための伸縮自在な係留紐を取付けたコンドームが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−83984号公報
【特許文献2】特開2006−280622号公報
【特許文献3】特開2005−312849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記した各特許文献のコンドームには、それぞれ次のような問題があった。
【0009】
まず、特許文献1及び特許文献2の各コンドームでは、コンドームをペニスに装着した後、締付具又は紐でコンドーム外周部を縛る必要があるので、その縛り作業が面倒であるとともに、装着感覚が非常に悪くなる。又、装着状態で射精後にペニスが萎縮すると、上記締付具又は紐が十分に機能しなくなる(縛り機能がなくなる)虞れがあって、ペニスを膣内から抜き出す際にコンドームが外れて膣内に残る虞れがある。
【0010】
又、上記特許文献3のコンドームでは、装着状態で伸縮自在な係留紐を睾丸に引っ掛けて使用するので、該係留紐によって睾丸が引っ張られて装着感覚が非常に悪くなり、さらに射精後にペニスが萎縮したときには該係留紐が睾丸から外れることがあるとともに、コンドームがダブつく(ペニスとコンドーム間に隙間ができる)ことによる弊害は何ら解消できない。
【0011】
そこで、本願発明は、構成が簡単で、且つ装着が簡単に行え、さらに装着感覚に違和感がないとともに、射精後にペニスが萎縮しても精液漏れや脱落(抜け出し)を確実に防止し得るようにしたコンドームを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0013】
本願発明は、先端部に精液溜め部と中間部にペニスの大部分の長さを被覆し得る筒状部と基端部に挿入用の開口部とを有したコンドームを対象にしてる。
【0014】
本願のコンドームは、ラテックスやシリコンやポリウレタン樹脂等の伸縮性のある一般的な材料で薄膜袋状に成形されている。尚、コンドームの開口部には、小径太さのリング部が設けられている。
【0015】
そして、本願のコンドームは、その筒状部の内面適所に、ペニスの外周面に粘着し得る粘着剤層を付着させていることを特徴としている。
【0016】
粘着剤層は、筒状部内面における開口部寄りの適所に設けるのが好ましい。この粘着剤層は、筒状部内周面の全周に亘って所定幅(限定するものではないが、例えば5〜20mm幅)の環状に付着させるのが好ましいが、筒状部内周面の全周に小間隔をもってスポット状に付着させてもよい。この粘着剤層の形成箇所は、筒状部長さ方向の1箇所でも複数箇所でもよい。又、この粘着剤層は、筒状部先端寄りのペニス亀頭部外周面が対応する位置の内面にも環状に塗布してもよい。
【0017】
粘着剤層の材質としては、例えばゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤やシリコン系粘着剤等で皮膚に悪影響を及ぼさないものが採用される。又、該粘着剤層の粘着力は、ペニス皮膚面に対して適度に接着される程度のものである。尚、この粘着剤層の厚さは、皮膜状の極薄でよい。
【0018】
又、コンドームは、開口部周縁部から外向き環状に巻き込んで扁平状態で包装されるが、そのとき上記粘着剤層がコンドームの筒状部の外面に接触する関係で、該粘着剤層が対面する付近の筒状部外面には該粘着剤層が接着しにくい皮膜(例えばシリコン系樹脂やフッソ系樹脂等の剥離処理剤)を塗布(又は貼付けも可)しておくとよい。
【0019】
本願のコンドームは、次のように機能する。まず、このコンドームを勃起状態のペニスに正常に被せると、筒状部内面の粘着剤層がペニスの外周面に粘着し、コンドーム全体がペニスに対して正常位置で確実に位置保持される(移動しない)。従って、コンドームを装着したペニスを膣内に挿入して前後運動しても、コンドームがペニスの正常位置に被された状態で位置ずれすることがなく、しかもペニスとコンドームとは粘着剤層部分で確実に封止されている。
【0020】
そして、射精後には、ペニスが急速に萎縮する(小さく且つ細くなる)が、粘着剤層部分がペニス外周面に対して粘着したままであるので、ペニスが細くなってもコンドームの粘着剤層部分が追随して縮径される。従って、該粘着剤層部分での封止機能が減衰することはないので、コンドーム内に射精した精液が外部(膣内)に漏出することがない。又、萎縮したペニスを膣内から抜き出すときにも、粘着剤層がペニス外周面に粘着したままであるので、ペニスとともにコンドームも確実に抜き出すことができる。尚、使用済みのコンドームは、ペニスとともに膣から抜き出した後に、ペニスから抜き外せばよい。
【発明の効果】
【0021】
上記のように本願発明のコンドームによれば、筒状部内周面の適所に粘着剤層を付着させているので、このコンドームをペニスに装着すると、粘着剤層部分がペニス外周面に粘着して、コンドームをペニスの正常位置に被せた状態で確実に位置保持させることができるとともに、該粘着剤層部分でペニスとコンドーム間を封止できる。又、射精後にペニスが萎縮しても、その萎縮したペニスの外周面に粘着剤層部分が粘着したままであるので、コンドーム内に射精した精液が粘着剤層部分より先側に封入されたままとなる。
【0022】
従って、本願のコンドームでは、筒状部内周面への粘着剤層の付着という簡単な構成で、装着作業が面倒にならず(一般的にコンドームと同様に装着できる)、使用感覚(性感)が低下せず、しかもコンドームとしての機能(ペニスと膣内との遮断機能、及び精液漏出防止機能)を確実に達成できるという効果がある。
【実施例】
【0023】
以下、図1〜図3を参照して本願実施例のコンドームを説明すると、図1にはペニス10が勃起状態でのコンドーム装着状態を示し、図2にはペニス10が萎縮状態でのコンドーム装着状態を示し、図3にはコンドーム1の包装時の形態を示している。
【0024】
この実施例のコンドーム1は、先端部に精液溜め部2と中間部にペニスの大部分の長さを被覆し得る筒状部3と基端部に挿入用の開口部4とを有した細長の薄膜袋状に成形されたものである。このコンドーム1の開口部4には、小径太さのリング部5が設けられている。
【0025】
このコンドーム1の材料としては、例えばラテックスやシリコンやポリウレタン樹脂等の伸縮性のある汎用材料が使用できる。
【0026】
又、このコンドーム1は、その筒状部3の内面適所に、ペニス10の外周面に粘着し得る粘着剤層6を付着させている。この粘着剤層6は、筒状部3内面における開口部4に近い位置において、筒状部3の内周面の全周に亘って所定幅W(例えばW=5〜20mm幅)の環状に付着させている。この粘着剤層6の形成箇所は、筒状部3の長さ方向の1箇所でも複数箇所でもよい。又、この粘着剤層は、筒状部3の先端寄りのペニス亀頭部外周面が対応する位置の内面にも環状に塗布してもよい(この理由については後述する)。
【0027】
粘着剤層6の材質としては、例えばゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤やシリコン系粘着剤等で皮膚に悪影響を及ぼさないものが採用されている。又、該粘着剤層6の粘着力は、ペニス皮膚面に対して適度に接着される程度のものであればよい。尚、図1、図2の図示例では、粘着剤層6の厚さを作図上、かなりの厚さに表示しているが、実際には該粘着剤層6の厚さは皮膜状の極薄である。
【0028】
ところで、このコンドーム1は、包装形態では図3に示すように開口部周縁部のリング部5から外向き環状に巻き込んで扁平状態に成形されるが、そのとき粘着剤層6がコンドーム筒状部3の外面に接触する関係で、該粘着剤層6が対面する付近の筒状部外面(図1の符号Lの範囲)に粘着剤層6が接着しにくい皮膜を塗布しておくとよい。この皮膜としては、例えばシリコン系樹脂やフッソ系樹脂等の剥離処理剤が使用可能である。
【0029】
この実施例のコンドーム1は、次のように機能する。尚、このコンドーム1は、図3に示す巻き込み状態でその中心部をペニス亀頭部先端をあてがった後、巻き込み部分をペニス外面に沿って巻き戻しながら装着するが、巻き込み状態における粘着剤層6が対応する部分の筒状部外面に剥離処理剤を塗布しておけば、該粘着剤層6部分も難無く巻き戻すことができる。
【0030】
そして、図1に示すように、このコンドーム1を勃起状態のペニス10に正常に被せると、筒状部3の内面の粘着剤層6がペニス10の外周面に粘着し、コンドーム1全体がペニス10に対して正常位置で確実に位置保持される。従って、コンドーム1を装着したペニス10を膣内に挿入して前後運動しても、コンドーム1がペニス10の正常位置に被された状態で位置ずれすることがなく、しかもペニス10とコンドーム1とは粘着剤層6部分で確実に封止されている。
【0031】
又、筒状部3の先端寄り部分(ペニス亀頭部の外周面が対応する部分)にも粘着剤層を塗布した場合には、装着状態において筒状部3の先端寄り部分がそこに塗布した粘着剤層によりペニス亀頭部の外周面に接着される。従って、膣内に挿入した状態で前後運動させても、コンドーム1の先端寄り部分がペニス亀頭部に対して擦れなくなる。又、このように筒状部3の先端寄り内面にも粘着剤層を環状に塗布しておくと、射精前に尿道口から分泌する前立腺液(潤滑性がある)がペニスとコンドーム間に回り込むのを防止でき、その結果、分泌された前立腺液によるペニスとコンドームとの滑りを防止できる。尚、ペニスとコンドームとが滑らなくなると、該ペニスとコンドームとの擦れによるコンドームの破れを防止することが期待できる。
【0032】
そして、射精後には、図2に示すようにペニス10が急速に萎縮する(小さく且つ細くなる)が、粘着剤層6部分がペニス外周面に対して粘着したままであるので、ペニス10が小さく(細く)なっても粘着剤層6部分が追随して縮径される。従って、該粘着剤層6部分での封止機能が減衰することはないので、コンドーム1内に射精した精液7が外部(膣内)に漏出することがない。又、萎縮したペニス10を膣内から抜き出すときにも、粘着剤層6がペニス外周面に粘着したままであるので、ペニス10とともにコンドーム1も確実に抜き出すことができる。尚、使用済みのコンドーム1は、ペニス10とともに膣から抜き出した後に、ペニス10から抜き外せばよい。
【0033】
このように、この実施例のコンドーム1では、図1に示すようにペニス10に装着すると、粘着剤層6部分がペニス外周面に粘着して、コンドーム1をペニス10の正常位置に被せた状態で確実に位置保持させることができるとともに、該粘着剤層6部分でペニス10とコンドーム1間を封止できる。又、図2に示すように、射精後にペニス10が萎縮しても、その萎縮したペニス10の外周面に粘着剤層6部分が粘着したままであるので、コンドーム1内に射精した精液7が粘着剤層6部分より先側に封入されたままとなる。
【0034】
従って、このコンドーム1では、筒状部内周面への粘着剤層6の付着という簡単な構成で、装着作業が面倒にならず(一般的にコンドームと同様に装着できる)、使用感覚(性感)が低下せず、しかもコンドームとしての機能(ペニスと膣内との遮断機能、及び精液漏出防止機能)を確実に達成できるという機能がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願実施例のコンドームにおけるペニス勃起状態での装着図である。
【図2】図1の状態からの変化図(ペニス萎縮状態での装着図)である。
【図3】図1のコンドームの包装時の形態図である。
【符号の説明】
【0036】
1はコンドーム、2は精液溜め部、3は筒状部、4は開口部、5はリング部、6は粘着剤層、10はペニスである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に精液溜め部(2)と中間部にペニスの大部分の長さを被覆し得る筒状部(3)と基端部に挿入用の開口部(4)とを有したコンドームであって、
コンドーム(1)の前記筒状部(3)の内面適所に、ペニス(10)の外周面に粘着し得る粘着剤層(5)を付着させている、
ことを特徴とするコンドーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−228979(P2008−228979A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72591(P2007−72591)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(507091509)
【Fターム(参考)】