コンバインの操作装置
【課題】電動モータで駆動される操作機構を利用して、刈取脱穀系のクラッチの入り切り制御に加え、刈取変速機構や穀粒搬出用クラッチの操作をも簡単に、かつ軽快に行えるようにするとともに、極力構造の簡素化も図る。
【解決手段】第1電動モータで駆動される第1操作機構8では、前記刈取クラッチ30及び脱穀クラッチ40が切り状態となる中立位置から一方向側の操作域に、脱穀クラッチ40がクラッチ入りで刈取クラッチ30がクラッチ切りである脱穀操作位置と、脱穀クラッチ40と刈取クラッチ30が共にクラッチ入りとなる刈取脱穀操作位置を設定してあり、第2電動モータで駆動される第2操作機構9では、刈取変速装置15を操作する操作域とは中立位置を挟んで反対側の操作域に、穀粒搬出用クラッチ50を入り操作する穀粒搬出位置を設定してある。
【解決手段】第1電動モータで駆動される第1操作機構8では、前記刈取クラッチ30及び脱穀クラッチ40が切り状態となる中立位置から一方向側の操作域に、脱穀クラッチ40がクラッチ入りで刈取クラッチ30がクラッチ切りである脱穀操作位置と、脱穀クラッチ40と刈取クラッチ30が共にクラッチ入りとなる刈取脱穀操作位置を設定してあり、第2電動モータで駆動される第2操作機構9では、刈取変速装置15を操作する操作域とは中立位置を挟んで反対側の操作域に、穀粒搬出用クラッチ50を入り操作する穀粒搬出位置を設定してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置を備えた走行機体に、刈取搬送装置や脱穀装置などを装備してあるコンバインにおいて、それらの各装置を操作するために用いられるコンバインの操作装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインの操作装置においては、従来より下記[1]に示す構造を備えたものが知られている。
[1] 電動モータでカム機構を駆動して、刈取クラッチ、脱穀クラッチ、及びフィードチェーンクラッチを操作し、刈取変速装置における変速操作や穀粒貯留装置の穀粒搬出用クラッチの操作は、それぞれ、前記カム機構や他の操作機構とは別のアクチュエータで操作するように構成したもの(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−97052号公報(段落〔0029〕、〔0046〕、〔0047〕、図3、図6、図12、図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示されるように、刈取クラッチ、脱穀クラッチ、及びフィードチェーンクラッチを、電動モータで駆動されるカム機構を利用して入り切り制御する構造のものでは、電動モータの駆動力を利用して、複数のクラッチを軽快に操作することが可能であるとともに、各クラッチの動作タイミングを、カム機構のカム板とカムフォロワとの連係操作によって任意に設定して、作業形態に即した状態で用いることができる点で有利なものである。
【0004】
しかしながら、刈取作業中における走行速度に対する刈取速度の変更操作や、穀粒貯留装置に貯留された穀粒を機外へ排出する操作は、前記刈取脱穀系の各種クラッチの操作とは無関係な動作タイミングで任意に行われる傾向がある。
【0005】
このため、従来では、特許文献1に示されているように、脱穀クラッチや刈取クラッチを操作する機構やその操作具とは関係なく、別個に設けた操作具や操作機構によって、独立して刈取速度の変更操作や穀粒搬出クラッチの入り切り操作を行うようにしていた。
【0006】
ところが、上記従来技術のように、脱穀クラッチや刈取クラッチを操作する機構やその操作具とは別個の操作具や操作機構として、刈取変速用のものと、穀粒搬出用のものとを個別に構成すると、それだけ部品点数の増加による構造の複雑化やコスト増につながる可能性があって好ましくない。
【0007】
しかしながら、刈取変速用の操作機構や穀粒搬出用の操作機構を、例えば、脱穀クラッチや刈取クラッチを操作する機構とともに単一の操作具を用いて、カム機構などの採用によって順次的に操作するように構成すると、上述のように、脱穀クラッチや刈取クラッチの操作とは関係なく刈取変速用の操作機構や穀粒搬出用の操作機構を個別的に操作する、ということができなくなって、操作性の面で不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、電動モータで駆動される操作機構を利用して、刈取脱穀系のクラッチの入り切り制御に加え、刈取変速機構や穀粒搬出用クラッチの操作をも簡単に、かつ軽快に行えるようにするとともに、極力構造の簡素化も図り得たコンバインの操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために本発明で講じた技術手段は、請求項1に記載のように、刈取搬送装置の駆動を入り切りする刈取クラッチと、脱穀装置の駆動を入り切りする脱穀クラッチと、穀粒貯留装置の駆動を入り切りする穀粒搬出用クラッチと、機体走行速度に対する前記刈取搬送装置の駆動速度を高低に変速する刈取変速装置とを操作するコンバインの操作装置であって、
前記刈取クラッチ及び脱穀クラッチを入り切り操作する第1操作機構と、その第1操作機構を駆動する第1電動モータとを備えるとともに、前記第1操作機構及び第1電動モータとは別に、前記穀粒搬出用クラッチ及び刈取変速装置を操作する第2操作機構と、その第2操作機構を駆動する第2電動モータとを備え、
前記各操作機構は、前記各電動モータによって各別に正転方向と逆転方向とに回転方向を変更操作可能に構成され、
前記第1操作機構では、前記刈取クラッチ及び脱穀クラッチが切り状態となる中立位置から一方向側の操作域に、脱穀クラッチがクラッチ入りで刈取クラッチがクラッチ切りである脱穀操作位置と、脱穀クラッチと刈取クラッチが共にクラッチ入りとなる刈取脱穀操作位置を設定してあり、
前記第2操作機構では、刈取変速装置を操作する操作域とは中立位置を挟んで反対側の操作域に、穀粒搬出用クラッチを入り操作する穀粒搬出位置を設定してあることを特徴とする。
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のコンバインの操作装置では、第1操作機構を駆動する第1電動モータと、第2操作機構を駆動する第2電動モータとの対を備え、第1操作機構側で脱穀クラッチと刈取クラッチとを入り切り操作し、第2操作機構側で刈取変速装置の操作機構と穀粒搬出用クラッチとを操作するように構成してある。したがって、これらの各クラッチや操作機構を各別に設けた駆動装置で操作する場合に比べて、第1操作機構と第1電動モータ、及び第2操作機構と第2電動モータとの2種にまとめて、比較的少ない数の電動モータや操作機構の使用で済み、この点で構造の簡素化を図り得たものである。
【0010】
また、解決手段1にかかる本発明では、刈取クラッチや脱穀クラッチの操作とは直接的には関連性なく操作されるものである刈取変速装置の操作と穀粒搬出用クラッチの操作とを、刈取クラッチや脱穀クラッチを操作する第1操作機構及び第1電動モータとは別に設けられた第2電動モータと第2操作機構とによって操作されるようにしている。このため、刈取クラッチや脱穀クラッチを作動させる際には、刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチの作動を伴うことなく操作することができ、逆に、刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチを操作する際には、刈取クラッチや脱穀クラッチの作動を伴うことなく独立して操作することができる。
【0011】
したがって、刈取クラッチや脱穀クラッチを作動させる際に、無用な刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチの操作が行われることがなく、また、逆に刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチを操作したときに刈取クラッチや脱穀クラッチを作動させてしまうことを回避できる。
【0012】
尚、第1操作機構の操作領域において、例えば、脱穀クラッチ入り後に脱穀フィードチェーンや刈取クラッチが入り操作され、その後に刈取変速装置が低速から高速に切り換えられるように刈取変速の操作位置を設定し、第2操作機構によって穀粒搬出用クラッチの入り切り操作を行うように構成することも考えられる。このように構成しても、上述のような、無用な刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチの操作、あるいは、無用な刈取クラッチや脱穀クラッチの操作を回避することは可能である。
【0013】
しかしながら、このような構成とした場合、例えば、刈取高速走行状態から刈取クラッチやフィードチェーンクラッチを切り操作した作業状態にして、かつ機体を旋回させるなどの操作を行う場合に、刈取変速が高速状態から低速状態に切り換える操作を経て、刈取クラッチの切りやフィードチェーンの切り操作や行われるため、どうしても前記刈取高速走行状態から刈取クラッチやフィードチェーンの切り操作が行われるまでの操作が遅れ気味になる傾向がある。
【0014】
これに比べて、前記本発明の構成によれば、前述のように第1操作機構側で脱穀クラッチと刈取クラッチとを入り切り操作し、第2操作機構側で刈取変速装置の操作機構と穀粒搬出用クラッチとを操作するように構成してあるので、個々の操作機構側において、変速操作系の操作と刈取クラッチやフィードチェーンの操作を同時的に行うことにより、上述のような操作遅れのない状態での操作を行える点で有利である。
【0015】
さらに、解決手段1にかかる本発明では、刈取変速装置の高低変速操作域と穀粒搬出用クラッチの入り切り操作域とは、中立位置を挟んで振り分けられた反対側の操作域で各別に操作できるようにしているので、共通の操作機構や電動モータを用いながらも、操作は各別に行なうことができる利点がある。
〔解決手段2〕
本発明におけるコンバインの操作装置の第2の解決手段は、請求項2の記載のように、第1操作機構には、脱穀操作位置と刈取脱穀操作位置との中間の操作域に、脱穀クラッチと、フィードチェーンの入り切り操作を行うフィードチェーンクラッチとが入り状態で、刈取クラッチが切り状態であるフィードチェーン操作位置を設定してあることを特徴とする。
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段2にかかる本発明のコンバインの操作装置では、脱穀操作位置と刈取脱穀操作位置との中間の操作域に、脱穀クラッチと、フィードチェーンの入り切り操作を行うフィードチェーンクラッチとが入り状態で、刈取クラッチが切り状態であるフィードチェーン操作位置を設定してあるので、前記刈取りクラッチ、及び前記フィードチェーンクラッチを切り操作して、走行機体を停止させた状態での枕扱き操作を行える。
〔解決手段3〕
本発明のコンバインの操作装置における第3の解決手段では、請求項3の記載のように、第1操作機構と第1電動モータとを、機体後部側の縦軸心周りで横外方へ揺動可能に搭載された穀粒貯留装置と脱穀装置との隣接間隔内で機体フレーム上に配置し、前記第2操作機構と第2電動モータとを、前記脱穀装置の機体前方側で機体フレーム上に配設してある点に特徴がある。
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段3にかかる本発明のコンバインの操作装置では、穀粒貯留装置と脱穀装置との隣接間隔内で機体フレーム上に配置した第1操作機構と第1電動モータとは、機体後部側の縦軸心周りで横外方へ揺動可能に搭載された穀粒貯留装置を横外方へ揺動させることにより外部へ大きく露出させてメンテナンスを行うことができ、第2操作機構と第2電動モータとは、脱穀装置の機体前方側で機体フレーム上に配設することにより、外部からのメンテナンスを行い易く配設されている。
【0016】
したがって、メンテナンスが必要な際には、両操作機構及び両電動モータの何れも外部へ露出させた状態として、外部からのメンテナンス作業が容易となる利点がある。
〔解決手段4〕
本発明のコンバインの操作装置における第4の解決手段では、請求項4の記載のように、第2操作機構と穀粒搬出用クラッチとを連係する連係機構中に、第2操作機構の非操作時に人為操作によって穀粒搬出用クラッチを入り操作するための被操作部を設けてある点に特徴がある。
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段4にかかる本発明のコンバインの操作装置では、第2操作機構と穀粒搬出用クラッチとを連係する連係機構中に、第2操作機構の非操作時に人為操作によって穀粒搬出用クラッチを切り操作するための被操作部を設けたものであるから、第2操作機構を操作する第2電動モータが故障した場合などでも、人為操作によって穀粒搬出用クラッチを入り操作し、グレンタンク内の穀粒を取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1には本発明を適用した自脱型コンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が示されている。このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成した機体フレーム1を備え、機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式走行装置2を装備している。機体フレーム1の前方及び左前部には昇降揺動可能に連結した刈取搬送装置3が設けられ、機体フレーム1の左後部に脱穀装置4を搭載し、機体フレーム1の右後部に穀粒貯留装置5を搭載し、さらに、機体フレーム1の右前部に設けた原動部6、原動部6の上方側に形成した搭乗運転部11などを備えている。
【0018】
機体フレーム1は、前後方向に長い角パイプ状の左右一対のメインフレーム10,10を備え、図3に示すように、左右のメインフレーム10,10の両側に振り分けた状態で、前記脱穀装置4が左後部に、穀粒貯留装置5が右後部に搭載されている。
【0019】
左右のメインフレーム10,10同士の間で、左側の脱穀装置4が存在する箇所よりも右側の位置には、刈取搬送装置3の駆動を断続する刈取クラッチ30、及び脱穀装置4の駆動を断続する脱穀クラッチ40を、共通の第1電動モータ70aの動力を用いて入り切り制御するための第1系統操作装置Aが配備されている。この第1系統操作装置Aの存在箇所は、前記穀粒貯留装置5を後部側の縦軸心y周りで揺動させて開放姿勢としたとき、機体の右横側方から覗き込んでメンテナンス作業などを行うことが可能な位置であるように配備されている。
【0020】
前記脱穀装置4の前面側には、穀粒貯留装置5の駆動を断続する穀粒搬出用クラッチ50と、刈取搬送装置3の駆動速度を高低に変速制御するための刈取変速装置15とを、共通の第2電動モータ70bの動力を用いて制御するための第2系統操作装置Bが配備されている。この第2系統操作装置Bは、脱穀装置4の前側で機体の左横側方から覗き込みながらメンテナンス作業等を行うことが可能な位置に配備されている。
【0021】
図4に示すように、前記機体フレーム1の前部には、刈取搬送装置3の刈取主フレーム31の後端側の左右向きの横筒部分31aを支持して、横軸心x2回りで前後向きの縦筒部分31bを上下揺動可能に支持する刈取フレーム支持台17を設けてある。前記刈取主フレーム31には、刈取搬送装置3の引起し装置32や刈取装置33に動力を伝達するための動力伝達軸(図外)を内装してある。
〔原動部の構成〕
原動部6では、図1及び図3に示すように、機体フレーム1に搭載したエンジン60と、冷却用のラジエータ61と、そのラジエータ61に対する送風方向を正逆に切り換えて送風可能な送風ファンの一例である送風ファン62とを備えるとともに、図1に示すように、前記送風ファン62に対向する箇所の機体右外側部には、外部からの塵埃の吸入を抑制するための防塵網付きの外気導入用の開口部63が設けられている。
【0022】
前記送風ファン62は、詳細は図示しないが、前記右側のエンジン出力軸60a上でスライド操作自在な操作体64を備え、その操作体64のスライド操作で送風ファン62の羽根の角度を変更して送風方向を正方向と逆方向とに切換操作自在に構成されている周知のものである。
上記原動部6では、油圧ポンプ65,オイルクーラー66,エンジンマフラー67が配設され、さらに前記エンジンマフラー67が存在する原動部空間の上部付近から、原動部6の横側部に位置するミッションケース14やバルブユニット68、作動油タンク69の上部を越えて、前記原動部6側とは反対の機体他側に向けて、原動部6側から離れるほど低くなるように傾斜した遮蔽案内板28を設けてあり、この遮遮案内板28によって、原動部6側の廃熱がその上方位置の搭乗運転部11に流れ込み難いように工夫されている。
〔搭乗運転部の構成〕
図2に示すように、前記搭乗運転部11では、機体の前後進変速操作を行う変速レバー11A、ならびに機体の操向操作を行う操向操作レバー11Bを備えるとともに、各種作業装置の駆動の入り切りや作動順を指令するための操作盤11Cを備えている。
【0023】
この操作盤11Cには、制御開始ボタンB0、脱穀装置駆動ボタンB1、枕扱き脱穀開始ボタンB2、低速刈取脱穀開始ボタンB3、高速刈取脱穀開始ボタンB4、穀粒搬出用ボタンB5がそれぞれ装備されている。
【0024】
これらの各ボタンB0,B1,B2,B3,B4,B5は、後述する第1系統操作装置A、及び第2系統操作装置Bの作動を制御して、各種作業装置の駆動の有無ならびに駆動開始順を制御する。
【0025】
すなわち、脱穀装置駆動ボタンB1を操作すると、脱穀装置4のみが駆動され、他の刈取脱穀関連の作業装置は停止状態である。前記枕扱き脱穀開始ボタンB2を操作すると、脱穀装置4と、フィードチェーン42とが駆動され、他の作業装置は停止状態であって、機体を停止させた状態での手扱き脱穀作業が可能な状態となる。そして、前記低速刈取脱穀開始ボタンB3が操作されると、上記の脱穀装置4及びフィードチェーン42の他に、刈取搬送装置3が低速で駆動される状態となる。
【0026】
また、高速刈取脱穀開始ボタンB4を操作すると、刈取変速装置15が高速側に切り換えられて、上記の刈取脱穀作業を高速で行うことができる。
【0027】
さらに、穀粒搬出用ボタンB5を操作すると、上記の刈取脱穀作業関連機器の作動状態とは関係なく、穀粒貯留装置6が駆動され、穀粒を排出する作業状態となる。
【0028】
制御開始ボタンB0を再度押すと、前記第1系統操作装置A、及び第2系統操作装置Bで駆動を制御されていた全ての作業装置の駆動を停止して作業状態が終了する。
〔伝動系の構成〕
図3に示すように、エンジン60は、その出力軸60aの軸心方向が左右向きになる姿勢で機体フレーム1に搭載されている。そのエンジン6から左右の各クローラ式走行装置2への伝動は、図5に示すように、機体の左右中央部に向けて突出するエンジン60の出力軸60aの左端部から、左右の各クローラ式走行装置2の駆動輪2aにわたる走行用の伝動系を介して行われる。走行用の伝動系は、ベルト式の伝動装置12、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置13、及び、ミッションケース14に副変速装置として内装したギヤ式変速装置(図示せず)、などによって構成されている。
【0029】
左右の各クローラ式走行装置2は、搭乗運転部11に装備した変速レバー11Aを前後方向に揺動操作することで、静油圧式無段変速装置13による無段階の変速操作と前後進の切り換え操作とを行うことができ、又、搭乗運転部11に装備した操向操作レバー11Bを左右方向に揺動操作することで、ミッションケース14内のギヤ式変速装置による直進状態、左右の緩旋回状態、及び左右の急旋回状態の切り換えを行えるように構成されている。
【0030】
刈取搬送装置3は、静油圧式無段変速装置13による変速後の動力がワンウェイクラッチ13aやベルトテンション式の刈取クラッチ30などを介して伝達されることで、複数の引起し装置32、バリカン形の刈取搬送装置33、及び穀稈搬送装置34などが駆動されるように構成してある。そして、機体の走行に伴って、その前端に装備された複数の分草具35が倒伏した植立穀稈を分草し、各引起し装置32が分草後の植立穀稈を引き起こし、刈取装置33が引き起こされた植立穀稈の株元側を切断し、穀稈搬送装置34が刈取穀稈を起立姿勢から横倒し姿勢に切り換えながら後方の脱穀装置4に向けて搬送するように構成されている。又、操向操作レバー11Bを前後方向に揺動操作することで、リフトシリンダ16の作動により刈取搬送装置3の昇降操作を行えるようになっている。
【0031】
刈取搬送装置3への動力伝達構造について詳述する。
【0032】
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置13による変速後の動力がミッションケース14の上部横側部に設けてある刈取用出力プーリ36aから出力され、図4に示すように、その刈取用出力プーリ36aと、刈取主フレーム31に支持される刈取用入力プーリ36bと、前記刈取用出力プーリ36aと刈取用入力プーリ36bとの間に巻回した伝動ベルト37と、テンション輪38とで構成される刈取クラッチ30を介して、刈取主フレーム31内の動力伝達軸(図外)に伝達される。
【0033】
前記刈取クラッチ30の前記テンション輪38を伝動ベルト37側へ押圧付勢するためのテンションアーム39は、長さ方向の中間部が刈取フレーム支持台17に対して、揺動支点となる横軸17a回りで揺動自在に枢支されていて、伝動ベルト37に対して遠近移動するテンション輪38が一端側に装着され、他端側に操作ワイヤー30aが連結されている。したがって、前記操作ワイヤー30aが後述する第1系統操作装置Aのカム機構8で引っ張られるとテンション輪38が伝動ベルト37の外周面へ下方側から押しつけられてクラッチ入り状態となる。操作ワイヤー30aが緩められると、テンション輪38が伝動ベルト37の外周面から離れる下方側へ移行してクラッチ切りとなる。
【0034】
前記刈取搬送装置3における刈取速度は、前記静油圧式無段変速装置13による、走行速度と連動しての無段階での変速のみならず、ミッションケース14内に装備させた高低2段の刈取変速装置15によって、走行速度の変化とは別に変速することもできる。
【0035】
この刈取変速装置15の具体構成については詳述しないが、例えば、ミッションケース14の上部横側部に設けた刈取用出力プーリ36aの支軸にスプライン嵌合させたシフトギヤを、ミッションケース14内で高速側出力ギヤに係合させる状態と、低速側出力ギヤに係合させる状態とにシフト操作自在に構成するなど、周知のギヤ変速機構などを採用することができる。
【0036】
脱穀装置4は、図5に示すように、ベルトテンション式の脱穀クラッチ40を介して伝達されるエンジン60からの動力で、扱胴41などが駆動され、後述のフィードチェーン42で株元側を挟持搬送される穀稈の穂先側を扱き処理し、かつ選別処理して得られた穀粒を、一番回収スクリュー(図外)などを介して穀粒貯留装置5のグレンタンク51に供給搬送する周知の構造によって構成されている。
【0037】
フィードチェーン42は、前記脱穀装置4への伝動系から伝動ベルト43で分岐された伝動系によって、かつテンションクラッチ式のフィードチェーンクラッチ44を介してエンジン60からの動力が伝達されるように構成してある。そして、前記フィードチェーンクラッチ44を任意に操作することにより、脱穀装置4の駆動開始あるいは終了時点とタイミングをずらして駆動できるように構成されている。
【0038】
穀粒貯留装置5は、グレンタンク51と穀粒搬出用オーガ52とを備え、この穀粒搬出用オーガ52に対してエンジン60の動力が伝達されるように構成してある。つまり、前記エンジン60の出力軸60aのうち、右側横側方から機体外側に向けて突出させた部分から穀粒貯留装置5の入力部53にわたって伝動ベルト54を掛張し、その伝動ベルト54による動力伝達を入り切り操作するベルトテンション式の穀粒搬出用クラッチ50を備えたものである。
【0039】
図1,2,3に示すように、前記穀粒搬出用オーガ52は、機体フレーム1側に固定されている電動アクチュエータの一例である駆動モータ5Mを備え、この駆動モータ5Mによって縦筒部分52Aが、前記穀粒貯留装置5の揺動中心である縦軸心y回りで旋回自在に、かつ、その穀粒貯留装置5のグレンタンク51に対しては相対回動自在に構成されている。また、前記縦筒部分52Aの上端側に接続される横筒部分52Bは、横軸心x回りで起伏揺動自在に構成してあり、その起伏動作は、前記縦筒部分52Aと横筒部分52Bとの間にわたって設けた油圧アクチュエータとしての油圧駆動式の伸縮シリンダ5Sによって行われる。
【0040】
前記グレンタンク51は、その後部に備えた縦軸心y周りに、その全体がエンジン60の後方に位置する作業位置と、その前部側が機体フレーム1の右外方に張り出してエンジン60の後方を開放するメンテナンス位置とにわたって揺動変位可能に、かつ、図外のロック機構によって作業位置及びメンテナンス位置での位置保持が可能となるように構成されている。
【0041】
このように揺動変位するグレンタンク51の底部に備えられたスクリューコンベヤ55や前記穀粒搬出用オーガ52に対する入力部53は、グレンタンク51の前記縦軸心y周りでの揺動を許容するための係脱構造を備えている。
【0042】
すなわち、図5に示すように、伝動ベルト54が掛張される入力プーリ56、及びその入力プーリ56に対して一体回転可能に、かつ相対摺動可能にスプライン嵌合される伝動軸57は機体フレーム1側に設けた軸受けブラケット10bに支持されている。
【0043】
前記伝動軸57に伝えられた動力は、その伝動軸57に対して軸端側を係脱される入力伝動軸58に伝えられ、かつ、その入力伝動軸58のベベルギヤ58aと前記スクリューコンベヤ55の軸端側に設けられたベベルギヤ55aを介して前記スクリューコンベヤ55や前記穀粒搬出用オーガ52伝達されるように構成されている。
【0044】
前記入力伝動軸58は、グレンタンク51側に支持されていて、前記伝動軸57に対して抜き差し可能な凹入係合部58bを備えていて、伝動軸57からの回転動力は伝達されながら、軸線方向での抜き差しは可能に構成されているので、前記縦軸心y周りでのグレンタンク51の揺動に伴なう係脱を許容することができる。
【0045】
図中の符号59は、伝動軸57を入力伝動軸58側へ押しつけ付勢するための押圧用スプリングである。
〔操作装置の構成〕
図6乃至図17に示すように、本発明では、上記の各種作業装置が備えるクラッチを入り切り操作するためのコンバインの操作装置としてカム駆動式の第1系統操作装置Aと、操作アームを駆動する第2系統操作装置Bとを採用している。
【0046】
前記第1系統操作装置Aは、駆動力を発生する駆動装置7Aと、その駆動装置7Aによって駆動される第1操作機構としてのカム機構8とによって構成されている。前記第2系統操作装置Bは、駆動力を発生する駆動装置7Bと、その駆動装置7Bによって駆動される第2操作機構としてのアーム操作機構9とによって構成されている。
<第1系統操作装置>
図6乃至図8に示すように、前記第1系統操作装置Aの駆動装置7Aは、動力源としての第1電動モータ70aと、その第1電動モータ70aの動力をカム機構8に伝える第1ギヤ機構72Aと、第1電動モータ70aで駆動されたカム機構8の作動状態を検出する検出機構としての第1ポテンショメータ73aとを備えるとともに、第1電動モータ70aの作動を制御する手段として、後述するマイクロコンピュータからなる制御装置100に制御プログラムとして備えられた第1モータ制御回路101とで構成されている。
【0047】
前記第1電動モータ70aは、前記操縦盤11Cに備えられた各種操作ボタンB0、及びB1〜B3の操作信号が制御装置100に入力されると、その操作信号に基づく制御指令が制御装置100から出力され、第1電動モータ70aが正転方向、もしくは逆転方向に駆動操作される。第1電動モータ70aの駆動力は、モータ出力軸71aに装着された出力ギヤ74aの回転動力として出力される。この出力ギヤ74aと、後述するカム機構8のカム板の外周の一部に形成されたギヤ部75aとで前記第1ギヤ機構72Aが構成されている。
【0048】
出力ギヤ74aによるカム機構8の駆動状態は、カム軸80の軸端に装備された第1ポテンショメータ73aで検出され、その検出結果に基づくフィードバック信号が前記制御装置100に伝達される。
【0049】
前記カム機構8は、共通のカム軸80に対して一体回動するように装着された第1カム板81、第2カム板82、及び第3カム板83の組み合わせで構成されるカム板群と、それらの各カム板81,82,83のそれぞれに対して接触するカムフォロワ群又は伝動用のギヤ機構との組み合わせで構成されている。
【0050】
つまり、カムフォロワ群のうち、第1カム板81に対しては、カム軸80よりも機体後方側で接触して案内される脱穀クラッチ40を操作する脱穀系カムフォロワ85が備えられている。
【0051】
第2カム板82に対しては、カム軸80よりも機体前方側で接触して案内されるフィードチェーンクラッチ44を操作するフィード系カムフォロワ86と、カム軸80よりも機体後方側で接触して案内される刈取クラッチ30を操作する刈取系カムフォロワ87とが備えられている。
【0052】
第3カム板83に対しては、カムフォロワはなく、前記第1電動モータ70aの出力ギヤ74aと共に第1ギヤ機構72Aを構成するギヤ部75aが、この第3カム板83の外周縁の一部に形成されている。
【0053】
前記カム軸80よりも機体前方側に存在するカムフォロワ86は、それぞれ断面U字状に折り曲げ形成された揺動片86aの長手方向の中間部を、クラッチケース76に対して機体の右横外方側から挿抜可能に装着された枢支軸77によって、その枢支軸77周りで揺動自在に取り付けられている。また、揺動片86aの長手方向での上端側には、折り曲げられたU字状部分に入り込んだ状態で、前記カム板82の外周縁側に接触するローラ86bが設けてあり、揺動片86aの長手方向での下端側には、それぞれ、フィードチェーンクラッチ44を入り切り操作するための操作ワイヤー44aを連結してある。
【0054】
前記カム軸80よりも機体後方側に存在するカムフォロワ85,87は、それぞれ断面U字状に折り曲げ形成された揺動片85a,87aの長手方向での下端部を、外装ボックス76に対して機体の右横外方側から挿抜可能に装着された枢支軸78によって、その枢支軸78周りで揺動自在に取り付けられている。また、各揺動片85a,87aの長手方向での中間部には、折り曲げられたU字状部分に入り込んだ状態で、前記カム板81,82、83の外周縁側に接触するローラ85b,87bが設けてあり、各揺動片85a,87aの長手方向での上端側には、それぞれ、脱穀クラッチ40、及び刈取クラッチ30を入り切り操作するための操作ワイヤー40a,30aを連結してある。
【0055】
前記第1カム板81には、その外周縁に、脱穀系カムフォロワ85を操作するための脱穀系カム面81bが、カム軸80を挟んでほぼ対向する箇所に形成してある。
【0056】
前記第2カム板82には、その外周縁に、フィード系カムフォロワ86を操作するためのフィード系カム面82aと、刈取系カムフォロワ87を操作するための刈取系カム面82bとが、カム軸80を挟んでほぼ対向する箇所に形成してある。
【0057】
前記第3カム板83には、その外周縁に、この第3カム板83、及び前記第1カム板81、第2カム板82に駆動力を伝達するためのギヤ部75aを形成してある。
<第2系統操作装置>
図9乃至図11に示すように、前記第2系統操作装置Bは、その駆動力を発生する駆動装置7Bとしての第2電動モータ70bと、その第2電動モータ70bの動力を第2操作機構としてのアーム操作機構9に伝える第2ギヤ機構72Bとを備え、これらが脱穀装置4の機体前方側において、脱穀装置4の前壁とほぼ平行な姿勢で機体フレーム1に対して固定された取付板18に装着されている。
【0058】
そして、第2電動モータ70bで駆動されたアーム操作機構9の作動状態を検出する検出機構としての第2ポテンショメータ73bを備えるとともに、第2電動モータ70bの作動を制御する手段として、後述するマイクロコンピュータからなる制御装置100に制御プログラムとして備えられた第2モータ制御回路102を設けて構成されている。
【0059】
前記第2電動モータ70bは、前記操縦盤11Cに備えられた各種操作ボタンB0、B4、及びB5の操作信号が制御装置100に入力されると、その操作信号に基づく制御指令が制御装置100の第2モータ制御回路102から出力され、第2電動モータ70bが正転方向、もしくは逆転方向に駆動操作される。第2電動モータ70bの駆動力は、モータ出力軸71bに装着された出力ギヤ74bの回転動力として出力される。この出力ギヤ74bと、後述するアーム操作機構9の部分円弧状板91の外周の一部に形成されたギヤ部75bとで前記第2ギヤ機構72Bが構成されている。
【0060】
前記アーム操作機構9は、アーム操作軸90と、そのアーム操作軸90に対して一体回動するように装着された部分円弧状板91と、前記アーム操作軸90に対して相対回動自在に枢着された第1操作アーム93と第2操作アーム94とから構成されている。
【0061】
前記アーム操作軸90は、その一端側が前記機体フレーム1に固定された前記取付板18に枢支され、その取付板18に固定されている門形の支え板部材19に対して他端側が枢支されて、両端支持状態で装着されている。そして、このアーム操作軸90の軸端に第2ポテンショメータ73bが装着されている。これによって、出力ギヤ74bによるアーム操作機構9の駆動状態が、アーム操作軸90の軸端に装備された第2ポテンショメータ73bで検出され、その検出結果に基づくフィードバック信号が前記制御装置100に伝達されるように構成してある。
【0062】
前記部分円弧状板91には、前記ギヤ部75が形成された円弧状部分とは反対側に延出された支持片部分に操作用ピン92が突設してあり、この操作用ピン92が、前記出力ギヤ74bで駆動される部分円弧状板91の正逆転に伴って前記第1,第2操作アーム93,94を揺動操作するように構成されている。
【0063】
前記第1操作アーム93は、アーム操作軸90に対して外嵌するボス部93aを中央箇所に備え、アーム操作軸90に枢支されて互いに相反する半径方向の外側に向けて延出された腕部分93bのうちの一方に、刈取変速装置15のシフト操作手段に対する操作ワイヤー15aを連結してあり、他方の腕部分93bに前記操作用ピン92と接当する凹入受け面93cを形成してある。
【0064】
前記第2操作アーム94は、アーム操作軸90に対して外嵌するボス部94aを中央箇所に備え、アーム操作軸90に枢支されて互いに相反する半径方向の外側に向けて延出された腕部分94bのうちの一方に、穀粒搬出用クラッチ50を入り切り操作するための操作ワイヤー50aを連結してあり、他方の腕部分94bに前記操作用ピン92と接当する凹入受け面94cを形成してある。
【0065】
したがって、前記出力ギヤ74bで駆動される部分円弧状板91の正転(図9中、反時計回り)に伴って前記操作用ピン92が第1操作アーム93の凹入受け面93cと接当し、第1操作アーム93を反時計回りに回動させるように押圧し、他端側の腕部分93bに連結されている操作ワイヤー15aを引き操作して、刈取変速装置15を高速側へ切換操作する。
【0066】
逆に、前記出力ギヤ74bで駆動される部分円弧状板91の逆転(図9中、時計回り)に伴って前記操作用ピン92が第2操作アーム94の凹入受け面94cと接当し、第2操作アーム94を時計回りに回動させるように押圧し、他端側の腕部分94bに連結されている操作ワイヤー50aを引き操作して、穀粒搬出用クラッチ50を入り側へ切換操作する。
【0067】
このとき、前記刈取変速装置15側では、刈取変速装置15のシフト操作手段が刈取低速側へ付勢されているので、前記第1操作アーム93に連結された操作ワイヤー15aは常時刈取低速側へ、つまり、第1操作アーム93を反時計回りに回動させるように、図示しない弾性付勢手段によって付勢された状態で連結してある。
【0068】
また、穀粒搬出用クラッチ50側では、穀粒搬出用クラッチ50がクラッチ切り側へ付勢されているので、前記第2操作アーム94に連結された操作ワイヤー50aは常時クラッチ切り側へ、つまり、第2操作アーム94を時計回りに回動させるように、図示しない弾性付勢手段によって付勢された状態で連結してある。
【0069】
したがって、前記第2電動モータ70bの動力で駆動される部分円弧状板91によって回動操作される第1操作アーム93の高速側への切換操作、及び第2操作アーム94による穀粒搬出用クラッチ50のクラッチ入り側への操作は、前記刈取変速装置15側、及び穀粒搬出用クラッチ50側の弾性付勢手段の付勢力に抗して行われ、逆に、第1操作アーム93による低速側への切換操作、及び第2操作アーム94による穀粒搬出用クラッチ50のクラッチ切り側への操作は、前記刈取変速装置15側、及穀粒搬出用クラッチ50側の弾性付勢手段の付勢力によって行われる。
【0070】
図9及び図10に示す符号19aは、取付板18に固定された支え板部材19に固定されたストッパーであり、前記第1,第2操作アーム93,94の、前記操作用ピン92による引き操作方向とは逆方向の移動を制限するためのものである。すなわち、前記第1,第2操作アーム93,94のうちの一方を入り側へ引き操作したときに、操作用ピン92による引き操作を受けていない他方の操作アーム93(又は94)が同方向へ連れ回り状態で回動すると、その連れ回りにともなって操作ワイヤー15aまたは50aが緩み、屈曲される虞があるが、上記のように構成されたストッパー19aによって連れ回りを制限することによって、そのような不具合がない。
【0071】
上記第1,第2操作アーム93,94のうち、第2操作アーム94に連結されている操作ワイヤー50aは、図11に示されているように、機体の左横外方から操作杆95を挿入して人為的にクラッチ入り側へ操作可能に構成されている。
【0072】
すなわち、前記第2操作アーム94の前記凹入受け面94cが形成された側とは反対側の腕部分94b、前記操作ワイヤー50aを連結するための連結ピン94dが設けられており、前記操作ワイヤー50aは、前記連結ピン94dに対して着脱可能に構成されている。
【0073】
したがって、例えば前記第2電動モータ70bや電気系統の故障などによって、アーム操作軸90の駆動ができない場合には、前記操作ワイヤー50aを連結ピン94dから外し、仮想線で示すように先端側にフック部分95aを備えた前記操作杆95を用いて、前記操作ワイヤー50aの先端側における被操作部96としての鉤状部分を引っ掛け、前記操作杆95の握り部95bを把持して機体横外方から引き操作することにより、第2操作アーム94を図9における時計回りに回動させる方向と同方向に、前記操作ワイヤー50aを人為操作で引っ張り、穀粒搬出用クラッチ50を入り状態に切換操作することができる。
【0074】
前記操作杆95は、非使用時には、図3に示すように、原動部6の左横側部から上方側への熱気の上昇を制限するとともに、刈取搬送装置3から脱穀装置4に至る搬送途中の落下ワラ屑を機体横外方へ流下案内するように傾斜させて設けた遮蔽案内板28の上側に格納できるようにしてある。つまり、遮蔽案内板28の立ち上がりリブ29に形成した係止孔29a,29bに、前記操作杆95のフック部分95a及び握り部95bを係入させて支持できるように構成してある。
〔各系統の操作装置による動作〕
次に、上記第1系統操作装置A、及び第2系統操作装置Bによる作動形態を図12乃至図17に基づいて説明する。
<第1系統操作装置の動作>
まず、第1系統操作装置Aの動作について説明する。
【0075】
図12は、前記第3カム板83に形成されたギヤ部75aの付設範囲によって設定されるカム軸80の回転角度範囲内における各カム板81,82,83の各カム面81b,82a,82bと、各カムフォロワ85,86,87とで現出される機能が発揮される範囲を、前記回転角度範囲内での角度分布図で表したものである。
【0076】
図13は、作業装置の種別を縦軸に、操作タイミングを横軸にとったタイムチャートである。また、図14は、各カム板とカムフォロワとの関連動作状態を、横軸に作業装置の種類を、縦軸に時間軸をとって図示したグラフである。
【0077】
図12に示す符号Nの位置は、この第1系統操作装置Aによって操作される全てのクラッチ等が作動側には操作されていず、何れの作業装置も駆動されていない状態である中立位置を示している。同様の中立位置Nは、図13、及び図14にも同じ符号Nで示している。
【0078】
図12における符号aは、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して脱穀クラッチ40が入りとなった位置である。
【0079】
図13においても同じ符号aで示す位置が同じ状態に相当する。また、図14においては、上から2段目に図示されている符号aの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で示されている。
【0080】
このとき、第2カム板82は、図13及び図14に示すように、フィードチェーンクラッチ44も刈取クラッチ30もクラッチ切りの状態に維持している。
【0081】
図12における符号bの位置では、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40の入り状態を引き続いて維持している。
【0082】
そして、このとき、時計回りに回動する第2カム板82では、フィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作状態を解除し、フィードチェーンクラッチ44をクラッチ入りの状態に切換操作する。
【0083】
このとき、第2カム板82の刈取系カム面82bは、刈取系カムフォロワ87を作用する状態には至っておらず、刈取系カムフォロワ87は刈取クラッチ30の切り状態を維持している。
【0084】
図13においても同じ符号bで示す位置が同じ状態に、つまり、脱穀クラッチ40とフィードチェーンクラッチ44がクラッチ入りの状態で、かつ刈取クラッチ30が切りの状態を示している。
【0085】
図14においては、符号bの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で脱穀クラッチ40の入りが維持されている状態が示されている。これとともに第2カム板82のフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェーンクラッチ44をクラッチ入りの状態に切換操作している状態が示されている。そして、第2カム板82の刈取系カム面82bは、刈取系カムフォロワ87を作用する状態には至っておらず、刈取系カムフォロワ87は刈取クラッチ30の切り状態を維持している。
【0086】
図12における符号cの位置では、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40の入り状態を引き続いて維持している。
【0087】
時計回りに回動する第2カム板82のフィード系カム面82aはフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除した状態であり、フィードチェーンクラッチ44をクラッチ入りに切換操作した状態を維持している。
【0088】
そして、このとき、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、刈取クラッチ30を、クラッチ入りの状態に切換操作する。
【0089】
図13においても同じ符号cで示す位置が同じ状態に、つまり、脱穀クラッチ40に加えて、フィードチェーンクラッチ44と刈取クラッチ30とが、共にクラッチ入りの状態に切換操作された状態を示している。
【0090】
図14においては、符号cの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で脱穀クラッチ40の入りが維持されている状態が示されている。これとともに第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェーンクラッチ44と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している状態が示されている。
<第2系統操作装置の動作>
次に、第2系統操作装置Bの動作について説明する。
【0091】
図15は、前記部分円弧状板91に形成されたギヤ部75bの付設範囲によって設定されるアーム操作軸90の回転角度範囲内における各操作アーム93,94による切換操作が行われる範囲を、前記回転角度範囲内での角度分布図で表したものである。
【0092】
図16は、作業装置の種別を縦軸に、操作タイミングを横軸にとったタイムチャートである。
【0093】
図15に示す符号N2の位置は、この第2系統操作装置Bによって操作される穀粒搬出用クラッチ50がクラッチ切り側に操作され、刈取変速装置15が低速側に操作されている状態を示している。同様の中立位置N2は、図16にも同じ符号N2で示している。
【0094】
図15における符号dの位置では、第2操作アーム94を、前記中立位置N2から時計回りに回動させて、刈取変速装置15の操作用シフタに連結された操作ワイヤー15aを引き操作し、刈取変速装置15を高速側へ切換えた位置を示している。
【0095】
図16においても同じ符号dで示す位置が同じ状態に、つまり、刈取変速装置15が高速側に操作されている状態を示している。
【0096】
図15における符号eは、第1操作アーム93を前記中立位置N2から反時計回りに回動させて、穀粒搬出用クラッチ50に連結してある操作ワイヤー50aを引き操作し、穀粒搬出用クラッチ50が入り状態に切り換えられた位置を示すものであり、図16においても同じ符号eで示す位置に相当する。
【0097】
このとき、この図16に示すように、前記dの位置では、穀粒搬出用クラッチ50のみが「入」で、刈取変速装置15は低速状態である。
〔制御系の構成〕
図17に示すように、刈取クラッチ30、脱穀クラッチ40、及びフィードチェーンクラッチ44を操作するカム機構8の動力源である第1電動モータ70aの作動を制御する第1モータ制御回路101、ならびに穀粒搬出用クラッチ50、及び刈取変速装置15を操作するアーム操作機構9の動力源である第2電動モータ70bの作動を制御する第2モータ制御回路102を備えた制御装置100は次のように構成されている。
【0098】
搭乗運転部11の操作盤11Cに備えられる制御開始ボタンB0、脱穀装置駆動ボタンB1、枕扱き脱穀開始ボタンB2、低速刈取脱穀ボタンB3、高速刈取脱穀ボタンB4、穀粒搬出用ボタンB5のそれぞれは操作スイッチによって構成されており、その操作信号が制御装置100に入力されるように構成されている。
【0099】
制御装置100では、前記各ボタンB0,B1,B2,B3,B4,B5の何れが操作されたかの判断に基づいて、また、第1ポテンショメータ73a及び第2ポテンショメータ73bでの検出結果に基づいて、第1モータ制御回路101、ならびに第2モータ制御回路102が、第1系統操作装置Aの第1電動モータ70a、及び第2系統操作装置Bの第2電動モータ70bに対して次のように制御指令を出力する。
【0100】
制御開始ボタンB0が最初に操作されたことを検出した場合には、この制御装置100によって制御される各装置を総て初期設定状態にする。このとき、前記脱穀装置4の脱穀クラッチ40、フィードチェーンクラッチ44は切り状態にあり、刈取搬送装置3の刈取クラッチ30も切り状態にあり、刈取変速装置15は低速状態にあり、穀粒貯留装置5の穀粒搬出用クラッチ50は切り状態にある。
【0101】
この制御装置100によって制御される各装置の何れかが既に駆動されている状態で前記制御開始ボタンB0が操作されたことを検出した場合には、その駆動中の各装置を総て初期設定状態に戻して作動を終了する。
【0102】
脱穀装置駆動ボタンB1が操作されたことを検出した場合には、第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、図12における符号aの位置(便宜上、脱穀装置駆動位置aという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第1電動モータ70aが第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、脱穀装置駆動位置aに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。
【0103】
前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、脱穀装置駆動位置aよりも時計回りで中立位置から離れている位置である場合には、第1電動モータ70aが逆回転で第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を反時計回りに回転させる。そして、脱穀装置駆動位置aに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。
【0104】
また、前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、脱穀装置駆動位置aである場合には、第2電動モータ70bに対する駆動指令は出力されない。尚、第2電動モータ70bには駆動指令が出力されず、中立位置Nに維持されている。
【0105】
枕扱き脱穀開始ボタンB2が操作されたことを検出した場合には、第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、図12における符号bの位置(便宜上、枕扱き脱穀開始位置bという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第1電動モータ70aが第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、枕扱き脱穀開始位置bに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。
【0106】
前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、枕扱き脱穀開始位置bよりも時計回りで中立位置から離れている位置である場合には、第1電動モータ70aが逆回転で第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を反時計回りに回転させる。そして、枕扱き脱穀開始位置bに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。また、前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、枕扱き脱穀開始位置bである場合には、第1電動モータ70aに対する駆動指令は出力されない。尚、第2電動モータ70bには駆動指令が出力されず、中立位置Nに維持されている。
【0107】
低速刈取脱穀ボタンB3が操作されたことを検出した場合には、第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、図12における符号cの位置(便宜上、刈取脱穀開始位置cという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第2電動モータ70bが第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、刈取脱穀開始位置cに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。
【0108】
前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、刈取脱穀開始位置c、もしくは刈取脱穀開始位置cよりも時計回りで中立位置から離れている位置である場合には、第1電動モータ70bに対する駆動指令は出力されない。
【0109】
この状態では、第1カム板81の脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40が入り操作された状態を維持しているとともに、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェーンクラッチ44と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している。
【0110】
その後、作業開始ボタンB0が再度操作されたことを検出すると、第1電動モータ70aを駆動してカム軸80を反時計回りに回転させ、中立位置Nに達したことが検出されると、その位置で停止するように指令する。尚、第2電動モータ70bには駆動指令が出力されず、中立位置Nに維持されている。
【0111】
高速刈取脱穀ボタンB4が操作されたことを検出した場合には、第2ポテンショメータ73bで検出されるアーム操作軸90の検出位置が、図15における符号dの位置(便宜上、高速刈取脱穀位置dという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第2電動モータ70bが第2ギヤ機構72Bを駆動し、アーム操作機構9のアーム操作軸90を時計回りに回転させる。そして、高速刈取脱穀位置dに達したことが第2ポテンショメータ73bで検出されると第2電動モータ70bに停止指令を出力する。
【0112】
この状態では、第2ギヤ機構72Bで駆動される部分円弧状板91に備えられた操作用ピン92がアーム操作軸90の回転軸心まわりで時計回りに回動し、刈取け変速系の第1操作アーム93を時計回りに回動操作して操作ワイヤー15aを引き操作し、刈取変速装置15のシフト操作手段を高速側へ切換操作する。
【0113】
上記第2ギヤ機構72Bで駆動される部分円弧状板91に備えられた操作用ピン92の時計回りの回動は、第2操作アーム94の作動には何らの影響を与えないので、穀粒搬出用クラッチ50は切り状態に維持されたままである。
【0114】
このとき、第1系統操作装置Aの第1モータ制御回路101では、第1カム板81の脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40が入り操作された状態を維持しているとともに、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェーンクラッチ44と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している。
【0115】
この高速刈取脱穀ボタンB4の操作に伴う高速刈取作業状態は、その後に前記制御開始ボタンB0が操作されたことを検出した場合には、その駆動中の各装置を総て初期設定状態に戻して作動を終了する。また、前記枕扱き脱穀開始ボタンB2、又は低速刈取脱穀開始ボタンB3、あるいは、後述する穀粒搬出用ボタンB5が選択された場合には、高速刈取作業状態を停止し、そのボタンB1,B2,B3,B5が選択された制御状態に切換られる。
【0116】
穀粒搬出用ボタンB5が操作されたことを検出した場合には、第2ポテンショメータ73bで検出されるアーム操作軸90の検出位置が、図16における符号eの位置(便宜上、穀粒搬出位置eという)よりも反時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第2電動モータ70bが第2ギヤ機構72Bを駆動し、アーム操作機構9のアーム操作軸90を反時計回りに回転させる。この状態では、第2ギヤ機構72Bで駆動される部分円弧状板91に備えられた操作用ピン92がアーム操作軸90の回転軸心まわりで反時計回りに回動し、穀粒搬出用の第2操作アーム94を反時計回りに回動操作して操作ワイヤー50aを引き操作し、穀粒搬出用クラッチ50を入り操作する。
【0117】
そして、穀粒搬出位置eに達したことが第2ポテンショメータ73bで検出されると第2電動モータ70bに停止指令を出力する。前記第2ポテンショメータ73bで検出されるアーム操作軸90の検出位置が、穀粒搬出位置eである場合には、第2電動モータ70bに対する駆動指令は出力されない。
【0118】
上記第2ギヤ機構72Bで駆動される部分円弧状板91に備えられた操作用ピン92の反時計回りの回動は、第1操作アーム93の作動には何らの影響を与えないので、刈取変速装置15のシフト操作手段は刈取低速状態に維持されたままである。
【0119】
上記の穀粒搬出用ボタンB5の操作は、その穀粒搬出用ボタンB5の再度の押し操作、もしくは前記制御開始ボタンB0が再度操作されたことの検出に伴って穀粒搬出用クラッチ50を切り操作状態に切り換えられるが、前記第1系統操作装置Aの第1モータ制御回路101による制御とは切り離して制御されるものであり、前記第1モータ制御回路101で制御される脱穀クラッチ40、フィードチェーンクラッチ44、及び刈取クラッチ30の作動状態には影響を与えたり、与えられたりすることなく、第1モータ制御回路101による制御状態のままに維持する。
〔その他〕
図1及び図18に示すように、前記穀粒搬出用オーガ52を格納姿勢で支持するために運転座席20の横側部位置に設けられた支持ポスト21には、機体前方側を照射する照射灯22が設けられている。
【0120】
この照明灯22は、図18に示すように上下軸心y1と水平軸心x1周りで向き変更自在に装着されているので、運転部側、もしくは機体前方の茎稈分草箇所などを的確に照射できるように調整することができる。また、穀粒搬出用オーガ52の動作とは関係なく照射方向を設定できる。
【0121】
図3及び図19に示すように、燃料タンク23の給油口24部分には、網筒状のフィルター25が装着されている。前記フィルター25は給油口24の蓋26付きの開口箇所に装着されるものであるが、そのフィルター25の筒軸心P1と給油口24の導入筒部分27の筒軸心P2とが、図19(b)に示すように上下方向で偏心した状態で設けてある。これによって、フィルター25と導入筒部分27の内周面との間隔が、上側よりも下側で広くなり、給油口24の開口から注入される燃料の流れをスムースにし易くなる利点がある。
〔別実施形態の1〕
操作機構としては、最良の実施形態で示したようなカム機構8やアーム操作機構9によらず、他の各種の操作機構を採用してもよい。
〔別実施形態の2〕
カム機構8のカム板の枚数やカムフォロワの個数は、カム機構8が操作対象とする装置の数などに応じて適宜変更するとよい。
【0122】
同様に、アーム操作機構9の操作アームの数は、アーム操作機構9が操作対象とする装置の数などに応じて適宜変更するとよい。
〔別実施形態の3〕
機体の左横外方から操作杆95を挿入して人為的にクラッチ入り側へ操作可能にする構成としては、上述のように第2操作アーム94から外した操作ワイヤー50aを操作杆95によって直接的に引っ掛けて人為操作する構造のものに限らず、第2操作アーム94自体を操作杆95で操作するようにしてもよい。
【0123】
すなわち、前記第2操作アーム94の凹入受け面94cが形成された側とは反対側の腕部分94bで、前記操作ワイヤー50aを連結するための連結ピン94dを、前記操作杆95のフック部分95aによって引っ掛け可能な構造として、この連結ピン94dを被係合部96として前記フック部分95aを引っ掛け、操作杆95の握り部95bを把持して機体横外方から引き操作することにより、第2操作アーム94を図9における反時計回りに回動させ、操作ワイヤー50aを引っ張って、穀粒搬出用クラッチ50のテンションアーム50bをクラッチ入り側へ操作可能に構成してもよい。
〔別実施形態の4〕
各種作業装置の駆動の入り切りや作動順を指令するための操作盤11Cに備える操作具としては、前述の各実施形態で示した押しボタンB0,B1,B2,B3,B4,B5に限らず、ダイヤルスイッチや、操作レバーの操作位置の検出によって指令作業を検出するなど、適宜の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】自脱形コンバインの全体側面図
【図2】自脱形コンバインの全体平面図
【図3】機体フレーム上での操作装置の配置を示す平面図
【図4】刈取クラッチ部分を示す側面図
【図5】伝動系を示す概略図
【図6】第1系統操作装置を示す平面図
【図7】第1系統操作装置を示す側面図
【図8】第1系統操作装置を示す断面図
【図9】第2系統操作装置を示す正面図
【図10】第2系統操作装置を示す断面図
【図11】第2系統操作装置と穀粒搬出用クラッチとの連係関係を示し、(a)が展開図、(b)が平面図
【図12】第1系統操作装置の作動形態を示す線図
【図13】第1系統操作装置の作動形態を示すタイムチャート
【図14】第1系統操作装置の作動形態を示す説明図
【図15】第2系統操作装置の作動形態を示す線図
【図16】第2系統操作装置の作動形態を示すタイムチャート
【図17】制御構成を示すブロック図
【図18】穀粒搬出用オーガの支持ポスト箇所を示し、(a)は格納姿勢の断面図、(b)は側面図
【図19】燃料タンクの燃料供給口箇所を示し、(a)は導入筒部分の断面図、(b)はXIXb-XIXb線断面図
【符号の説明】
【0125】
1 機体フレーム
3 刈取搬送装置
4 脱穀装置
5 穀粒貯留装置
8 カム機構(第1操作機構)
9 アーム操作機構(第2操作機構)
15 刈取変速装置
30 刈取クラッチ
40 脱穀クラッチ
42 フィードチェーン
44 フィードチェーンクラッチ
50 穀粒搬出用クラッチ
70a 第1電動モータ
70b 第2電動モータ
a 脱穀操作位置
b フィードチェーン操作位置
c 刈取脱穀操作位置
e 穀粒搬出位置
N2 中立位置
y 縦軸心
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置を備えた走行機体に、刈取搬送装置や脱穀装置などを装備してあるコンバインにおいて、それらの各装置を操作するために用いられるコンバインの操作装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインの操作装置においては、従来より下記[1]に示す構造を備えたものが知られている。
[1] 電動モータでカム機構を駆動して、刈取クラッチ、脱穀クラッチ、及びフィードチェーンクラッチを操作し、刈取変速装置における変速操作や穀粒貯留装置の穀粒搬出用クラッチの操作は、それぞれ、前記カム機構や他の操作機構とは別のアクチュエータで操作するように構成したもの(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−97052号公報(段落〔0029〕、〔0046〕、〔0047〕、図3、図6、図12、図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示されるように、刈取クラッチ、脱穀クラッチ、及びフィードチェーンクラッチを、電動モータで駆動されるカム機構を利用して入り切り制御する構造のものでは、電動モータの駆動力を利用して、複数のクラッチを軽快に操作することが可能であるとともに、各クラッチの動作タイミングを、カム機構のカム板とカムフォロワとの連係操作によって任意に設定して、作業形態に即した状態で用いることができる点で有利なものである。
【0004】
しかしながら、刈取作業中における走行速度に対する刈取速度の変更操作や、穀粒貯留装置に貯留された穀粒を機外へ排出する操作は、前記刈取脱穀系の各種クラッチの操作とは無関係な動作タイミングで任意に行われる傾向がある。
【0005】
このため、従来では、特許文献1に示されているように、脱穀クラッチや刈取クラッチを操作する機構やその操作具とは関係なく、別個に設けた操作具や操作機構によって、独立して刈取速度の変更操作や穀粒搬出クラッチの入り切り操作を行うようにしていた。
【0006】
ところが、上記従来技術のように、脱穀クラッチや刈取クラッチを操作する機構やその操作具とは別個の操作具や操作機構として、刈取変速用のものと、穀粒搬出用のものとを個別に構成すると、それだけ部品点数の増加による構造の複雑化やコスト増につながる可能性があって好ましくない。
【0007】
しかしながら、刈取変速用の操作機構や穀粒搬出用の操作機構を、例えば、脱穀クラッチや刈取クラッチを操作する機構とともに単一の操作具を用いて、カム機構などの採用によって順次的に操作するように構成すると、上述のように、脱穀クラッチや刈取クラッチの操作とは関係なく刈取変速用の操作機構や穀粒搬出用の操作機構を個別的に操作する、ということができなくなって、操作性の面で不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、電動モータで駆動される操作機構を利用して、刈取脱穀系のクラッチの入り切り制御に加え、刈取変速機構や穀粒搬出用クラッチの操作をも簡単に、かつ軽快に行えるようにするとともに、極力構造の簡素化も図り得たコンバインの操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために本発明で講じた技術手段は、請求項1に記載のように、刈取搬送装置の駆動を入り切りする刈取クラッチと、脱穀装置の駆動を入り切りする脱穀クラッチと、穀粒貯留装置の駆動を入り切りする穀粒搬出用クラッチと、機体走行速度に対する前記刈取搬送装置の駆動速度を高低に変速する刈取変速装置とを操作するコンバインの操作装置であって、
前記刈取クラッチ及び脱穀クラッチを入り切り操作する第1操作機構と、その第1操作機構を駆動する第1電動モータとを備えるとともに、前記第1操作機構及び第1電動モータとは別に、前記穀粒搬出用クラッチ及び刈取変速装置を操作する第2操作機構と、その第2操作機構を駆動する第2電動モータとを備え、
前記各操作機構は、前記各電動モータによって各別に正転方向と逆転方向とに回転方向を変更操作可能に構成され、
前記第1操作機構では、前記刈取クラッチ及び脱穀クラッチが切り状態となる中立位置から一方向側の操作域に、脱穀クラッチがクラッチ入りで刈取クラッチがクラッチ切りである脱穀操作位置と、脱穀クラッチと刈取クラッチが共にクラッチ入りとなる刈取脱穀操作位置を設定してあり、
前記第2操作機構では、刈取変速装置を操作する操作域とは中立位置を挟んで反対側の操作域に、穀粒搬出用クラッチを入り操作する穀粒搬出位置を設定してあることを特徴とする。
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のコンバインの操作装置では、第1操作機構を駆動する第1電動モータと、第2操作機構を駆動する第2電動モータとの対を備え、第1操作機構側で脱穀クラッチと刈取クラッチとを入り切り操作し、第2操作機構側で刈取変速装置の操作機構と穀粒搬出用クラッチとを操作するように構成してある。したがって、これらの各クラッチや操作機構を各別に設けた駆動装置で操作する場合に比べて、第1操作機構と第1電動モータ、及び第2操作機構と第2電動モータとの2種にまとめて、比較的少ない数の電動モータや操作機構の使用で済み、この点で構造の簡素化を図り得たものである。
【0010】
また、解決手段1にかかる本発明では、刈取クラッチや脱穀クラッチの操作とは直接的には関連性なく操作されるものである刈取変速装置の操作と穀粒搬出用クラッチの操作とを、刈取クラッチや脱穀クラッチを操作する第1操作機構及び第1電動モータとは別に設けられた第2電動モータと第2操作機構とによって操作されるようにしている。このため、刈取クラッチや脱穀クラッチを作動させる際には、刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチの作動を伴うことなく操作することができ、逆に、刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチを操作する際には、刈取クラッチや脱穀クラッチの作動を伴うことなく独立して操作することができる。
【0011】
したがって、刈取クラッチや脱穀クラッチを作動させる際に、無用な刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチの操作が行われることがなく、また、逆に刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチを操作したときに刈取クラッチや脱穀クラッチを作動させてしまうことを回避できる。
【0012】
尚、第1操作機構の操作領域において、例えば、脱穀クラッチ入り後に脱穀フィードチェーンや刈取クラッチが入り操作され、その後に刈取変速装置が低速から高速に切り換えられるように刈取変速の操作位置を設定し、第2操作機構によって穀粒搬出用クラッチの入り切り操作を行うように構成することも考えられる。このように構成しても、上述のような、無用な刈取変速装置や穀粒搬出用クラッチの操作、あるいは、無用な刈取クラッチや脱穀クラッチの操作を回避することは可能である。
【0013】
しかしながら、このような構成とした場合、例えば、刈取高速走行状態から刈取クラッチやフィードチェーンクラッチを切り操作した作業状態にして、かつ機体を旋回させるなどの操作を行う場合に、刈取変速が高速状態から低速状態に切り換える操作を経て、刈取クラッチの切りやフィードチェーンの切り操作や行われるため、どうしても前記刈取高速走行状態から刈取クラッチやフィードチェーンの切り操作が行われるまでの操作が遅れ気味になる傾向がある。
【0014】
これに比べて、前記本発明の構成によれば、前述のように第1操作機構側で脱穀クラッチと刈取クラッチとを入り切り操作し、第2操作機構側で刈取変速装置の操作機構と穀粒搬出用クラッチとを操作するように構成してあるので、個々の操作機構側において、変速操作系の操作と刈取クラッチやフィードチェーンの操作を同時的に行うことにより、上述のような操作遅れのない状態での操作を行える点で有利である。
【0015】
さらに、解決手段1にかかる本発明では、刈取変速装置の高低変速操作域と穀粒搬出用クラッチの入り切り操作域とは、中立位置を挟んで振り分けられた反対側の操作域で各別に操作できるようにしているので、共通の操作機構や電動モータを用いながらも、操作は各別に行なうことができる利点がある。
〔解決手段2〕
本発明におけるコンバインの操作装置の第2の解決手段は、請求項2の記載のように、第1操作機構には、脱穀操作位置と刈取脱穀操作位置との中間の操作域に、脱穀クラッチと、フィードチェーンの入り切り操作を行うフィードチェーンクラッチとが入り状態で、刈取クラッチが切り状態であるフィードチェーン操作位置を設定してあることを特徴とする。
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段2にかかる本発明のコンバインの操作装置では、脱穀操作位置と刈取脱穀操作位置との中間の操作域に、脱穀クラッチと、フィードチェーンの入り切り操作を行うフィードチェーンクラッチとが入り状態で、刈取クラッチが切り状態であるフィードチェーン操作位置を設定してあるので、前記刈取りクラッチ、及び前記フィードチェーンクラッチを切り操作して、走行機体を停止させた状態での枕扱き操作を行える。
〔解決手段3〕
本発明のコンバインの操作装置における第3の解決手段では、請求項3の記載のように、第1操作機構と第1電動モータとを、機体後部側の縦軸心周りで横外方へ揺動可能に搭載された穀粒貯留装置と脱穀装置との隣接間隔内で機体フレーム上に配置し、前記第2操作機構と第2電動モータとを、前記脱穀装置の機体前方側で機体フレーム上に配設してある点に特徴がある。
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段3にかかる本発明のコンバインの操作装置では、穀粒貯留装置と脱穀装置との隣接間隔内で機体フレーム上に配置した第1操作機構と第1電動モータとは、機体後部側の縦軸心周りで横外方へ揺動可能に搭載された穀粒貯留装置を横外方へ揺動させることにより外部へ大きく露出させてメンテナンスを行うことができ、第2操作機構と第2電動モータとは、脱穀装置の機体前方側で機体フレーム上に配設することにより、外部からのメンテナンスを行い易く配設されている。
【0016】
したがって、メンテナンスが必要な際には、両操作機構及び両電動モータの何れも外部へ露出させた状態として、外部からのメンテナンス作業が容易となる利点がある。
〔解決手段4〕
本発明のコンバインの操作装置における第4の解決手段では、請求項4の記載のように、第2操作機構と穀粒搬出用クラッチとを連係する連係機構中に、第2操作機構の非操作時に人為操作によって穀粒搬出用クラッチを入り操作するための被操作部を設けてある点に特徴がある。
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段4にかかる本発明のコンバインの操作装置では、第2操作機構と穀粒搬出用クラッチとを連係する連係機構中に、第2操作機構の非操作時に人為操作によって穀粒搬出用クラッチを切り操作するための被操作部を設けたものであるから、第2操作機構を操作する第2電動モータが故障した場合などでも、人為操作によって穀粒搬出用クラッチを入り操作し、グレンタンク内の穀粒を取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1には本発明を適用した自脱型コンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が示されている。このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成した機体フレーム1を備え、機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式走行装置2を装備している。機体フレーム1の前方及び左前部には昇降揺動可能に連結した刈取搬送装置3が設けられ、機体フレーム1の左後部に脱穀装置4を搭載し、機体フレーム1の右後部に穀粒貯留装置5を搭載し、さらに、機体フレーム1の右前部に設けた原動部6、原動部6の上方側に形成した搭乗運転部11などを備えている。
【0018】
機体フレーム1は、前後方向に長い角パイプ状の左右一対のメインフレーム10,10を備え、図3に示すように、左右のメインフレーム10,10の両側に振り分けた状態で、前記脱穀装置4が左後部に、穀粒貯留装置5が右後部に搭載されている。
【0019】
左右のメインフレーム10,10同士の間で、左側の脱穀装置4が存在する箇所よりも右側の位置には、刈取搬送装置3の駆動を断続する刈取クラッチ30、及び脱穀装置4の駆動を断続する脱穀クラッチ40を、共通の第1電動モータ70aの動力を用いて入り切り制御するための第1系統操作装置Aが配備されている。この第1系統操作装置Aの存在箇所は、前記穀粒貯留装置5を後部側の縦軸心y周りで揺動させて開放姿勢としたとき、機体の右横側方から覗き込んでメンテナンス作業などを行うことが可能な位置であるように配備されている。
【0020】
前記脱穀装置4の前面側には、穀粒貯留装置5の駆動を断続する穀粒搬出用クラッチ50と、刈取搬送装置3の駆動速度を高低に変速制御するための刈取変速装置15とを、共通の第2電動モータ70bの動力を用いて制御するための第2系統操作装置Bが配備されている。この第2系統操作装置Bは、脱穀装置4の前側で機体の左横側方から覗き込みながらメンテナンス作業等を行うことが可能な位置に配備されている。
【0021】
図4に示すように、前記機体フレーム1の前部には、刈取搬送装置3の刈取主フレーム31の後端側の左右向きの横筒部分31aを支持して、横軸心x2回りで前後向きの縦筒部分31bを上下揺動可能に支持する刈取フレーム支持台17を設けてある。前記刈取主フレーム31には、刈取搬送装置3の引起し装置32や刈取装置33に動力を伝達するための動力伝達軸(図外)を内装してある。
〔原動部の構成〕
原動部6では、図1及び図3に示すように、機体フレーム1に搭載したエンジン60と、冷却用のラジエータ61と、そのラジエータ61に対する送風方向を正逆に切り換えて送風可能な送風ファンの一例である送風ファン62とを備えるとともに、図1に示すように、前記送風ファン62に対向する箇所の機体右外側部には、外部からの塵埃の吸入を抑制するための防塵網付きの外気導入用の開口部63が設けられている。
【0022】
前記送風ファン62は、詳細は図示しないが、前記右側のエンジン出力軸60a上でスライド操作自在な操作体64を備え、その操作体64のスライド操作で送風ファン62の羽根の角度を変更して送風方向を正方向と逆方向とに切換操作自在に構成されている周知のものである。
上記原動部6では、油圧ポンプ65,オイルクーラー66,エンジンマフラー67が配設され、さらに前記エンジンマフラー67が存在する原動部空間の上部付近から、原動部6の横側部に位置するミッションケース14やバルブユニット68、作動油タンク69の上部を越えて、前記原動部6側とは反対の機体他側に向けて、原動部6側から離れるほど低くなるように傾斜した遮蔽案内板28を設けてあり、この遮遮案内板28によって、原動部6側の廃熱がその上方位置の搭乗運転部11に流れ込み難いように工夫されている。
〔搭乗運転部の構成〕
図2に示すように、前記搭乗運転部11では、機体の前後進変速操作を行う変速レバー11A、ならびに機体の操向操作を行う操向操作レバー11Bを備えるとともに、各種作業装置の駆動の入り切りや作動順を指令するための操作盤11Cを備えている。
【0023】
この操作盤11Cには、制御開始ボタンB0、脱穀装置駆動ボタンB1、枕扱き脱穀開始ボタンB2、低速刈取脱穀開始ボタンB3、高速刈取脱穀開始ボタンB4、穀粒搬出用ボタンB5がそれぞれ装備されている。
【0024】
これらの各ボタンB0,B1,B2,B3,B4,B5は、後述する第1系統操作装置A、及び第2系統操作装置Bの作動を制御して、各種作業装置の駆動の有無ならびに駆動開始順を制御する。
【0025】
すなわち、脱穀装置駆動ボタンB1を操作すると、脱穀装置4のみが駆動され、他の刈取脱穀関連の作業装置は停止状態である。前記枕扱き脱穀開始ボタンB2を操作すると、脱穀装置4と、フィードチェーン42とが駆動され、他の作業装置は停止状態であって、機体を停止させた状態での手扱き脱穀作業が可能な状態となる。そして、前記低速刈取脱穀開始ボタンB3が操作されると、上記の脱穀装置4及びフィードチェーン42の他に、刈取搬送装置3が低速で駆動される状態となる。
【0026】
また、高速刈取脱穀開始ボタンB4を操作すると、刈取変速装置15が高速側に切り換えられて、上記の刈取脱穀作業を高速で行うことができる。
【0027】
さらに、穀粒搬出用ボタンB5を操作すると、上記の刈取脱穀作業関連機器の作動状態とは関係なく、穀粒貯留装置6が駆動され、穀粒を排出する作業状態となる。
【0028】
制御開始ボタンB0を再度押すと、前記第1系統操作装置A、及び第2系統操作装置Bで駆動を制御されていた全ての作業装置の駆動を停止して作業状態が終了する。
〔伝動系の構成〕
図3に示すように、エンジン60は、その出力軸60aの軸心方向が左右向きになる姿勢で機体フレーム1に搭載されている。そのエンジン6から左右の各クローラ式走行装置2への伝動は、図5に示すように、機体の左右中央部に向けて突出するエンジン60の出力軸60aの左端部から、左右の各クローラ式走行装置2の駆動輪2aにわたる走行用の伝動系を介して行われる。走行用の伝動系は、ベルト式の伝動装置12、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置13、及び、ミッションケース14に副変速装置として内装したギヤ式変速装置(図示せず)、などによって構成されている。
【0029】
左右の各クローラ式走行装置2は、搭乗運転部11に装備した変速レバー11Aを前後方向に揺動操作することで、静油圧式無段変速装置13による無段階の変速操作と前後進の切り換え操作とを行うことができ、又、搭乗運転部11に装備した操向操作レバー11Bを左右方向に揺動操作することで、ミッションケース14内のギヤ式変速装置による直進状態、左右の緩旋回状態、及び左右の急旋回状態の切り換えを行えるように構成されている。
【0030】
刈取搬送装置3は、静油圧式無段変速装置13による変速後の動力がワンウェイクラッチ13aやベルトテンション式の刈取クラッチ30などを介して伝達されることで、複数の引起し装置32、バリカン形の刈取搬送装置33、及び穀稈搬送装置34などが駆動されるように構成してある。そして、機体の走行に伴って、その前端に装備された複数の分草具35が倒伏した植立穀稈を分草し、各引起し装置32が分草後の植立穀稈を引き起こし、刈取装置33が引き起こされた植立穀稈の株元側を切断し、穀稈搬送装置34が刈取穀稈を起立姿勢から横倒し姿勢に切り換えながら後方の脱穀装置4に向けて搬送するように構成されている。又、操向操作レバー11Bを前後方向に揺動操作することで、リフトシリンダ16の作動により刈取搬送装置3の昇降操作を行えるようになっている。
【0031】
刈取搬送装置3への動力伝達構造について詳述する。
【0032】
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置13による変速後の動力がミッションケース14の上部横側部に設けてある刈取用出力プーリ36aから出力され、図4に示すように、その刈取用出力プーリ36aと、刈取主フレーム31に支持される刈取用入力プーリ36bと、前記刈取用出力プーリ36aと刈取用入力プーリ36bとの間に巻回した伝動ベルト37と、テンション輪38とで構成される刈取クラッチ30を介して、刈取主フレーム31内の動力伝達軸(図外)に伝達される。
【0033】
前記刈取クラッチ30の前記テンション輪38を伝動ベルト37側へ押圧付勢するためのテンションアーム39は、長さ方向の中間部が刈取フレーム支持台17に対して、揺動支点となる横軸17a回りで揺動自在に枢支されていて、伝動ベルト37に対して遠近移動するテンション輪38が一端側に装着され、他端側に操作ワイヤー30aが連結されている。したがって、前記操作ワイヤー30aが後述する第1系統操作装置Aのカム機構8で引っ張られるとテンション輪38が伝動ベルト37の外周面へ下方側から押しつけられてクラッチ入り状態となる。操作ワイヤー30aが緩められると、テンション輪38が伝動ベルト37の外周面から離れる下方側へ移行してクラッチ切りとなる。
【0034】
前記刈取搬送装置3における刈取速度は、前記静油圧式無段変速装置13による、走行速度と連動しての無段階での変速のみならず、ミッションケース14内に装備させた高低2段の刈取変速装置15によって、走行速度の変化とは別に変速することもできる。
【0035】
この刈取変速装置15の具体構成については詳述しないが、例えば、ミッションケース14の上部横側部に設けた刈取用出力プーリ36aの支軸にスプライン嵌合させたシフトギヤを、ミッションケース14内で高速側出力ギヤに係合させる状態と、低速側出力ギヤに係合させる状態とにシフト操作自在に構成するなど、周知のギヤ変速機構などを採用することができる。
【0036】
脱穀装置4は、図5に示すように、ベルトテンション式の脱穀クラッチ40を介して伝達されるエンジン60からの動力で、扱胴41などが駆動され、後述のフィードチェーン42で株元側を挟持搬送される穀稈の穂先側を扱き処理し、かつ選別処理して得られた穀粒を、一番回収スクリュー(図外)などを介して穀粒貯留装置5のグレンタンク51に供給搬送する周知の構造によって構成されている。
【0037】
フィードチェーン42は、前記脱穀装置4への伝動系から伝動ベルト43で分岐された伝動系によって、かつテンションクラッチ式のフィードチェーンクラッチ44を介してエンジン60からの動力が伝達されるように構成してある。そして、前記フィードチェーンクラッチ44を任意に操作することにより、脱穀装置4の駆動開始あるいは終了時点とタイミングをずらして駆動できるように構成されている。
【0038】
穀粒貯留装置5は、グレンタンク51と穀粒搬出用オーガ52とを備え、この穀粒搬出用オーガ52に対してエンジン60の動力が伝達されるように構成してある。つまり、前記エンジン60の出力軸60aのうち、右側横側方から機体外側に向けて突出させた部分から穀粒貯留装置5の入力部53にわたって伝動ベルト54を掛張し、その伝動ベルト54による動力伝達を入り切り操作するベルトテンション式の穀粒搬出用クラッチ50を備えたものである。
【0039】
図1,2,3に示すように、前記穀粒搬出用オーガ52は、機体フレーム1側に固定されている電動アクチュエータの一例である駆動モータ5Mを備え、この駆動モータ5Mによって縦筒部分52Aが、前記穀粒貯留装置5の揺動中心である縦軸心y回りで旋回自在に、かつ、その穀粒貯留装置5のグレンタンク51に対しては相対回動自在に構成されている。また、前記縦筒部分52Aの上端側に接続される横筒部分52Bは、横軸心x回りで起伏揺動自在に構成してあり、その起伏動作は、前記縦筒部分52Aと横筒部分52Bとの間にわたって設けた油圧アクチュエータとしての油圧駆動式の伸縮シリンダ5Sによって行われる。
【0040】
前記グレンタンク51は、その後部に備えた縦軸心y周りに、その全体がエンジン60の後方に位置する作業位置と、その前部側が機体フレーム1の右外方に張り出してエンジン60の後方を開放するメンテナンス位置とにわたって揺動変位可能に、かつ、図外のロック機構によって作業位置及びメンテナンス位置での位置保持が可能となるように構成されている。
【0041】
このように揺動変位するグレンタンク51の底部に備えられたスクリューコンベヤ55や前記穀粒搬出用オーガ52に対する入力部53は、グレンタンク51の前記縦軸心y周りでの揺動を許容するための係脱構造を備えている。
【0042】
すなわち、図5に示すように、伝動ベルト54が掛張される入力プーリ56、及びその入力プーリ56に対して一体回転可能に、かつ相対摺動可能にスプライン嵌合される伝動軸57は機体フレーム1側に設けた軸受けブラケット10bに支持されている。
【0043】
前記伝動軸57に伝えられた動力は、その伝動軸57に対して軸端側を係脱される入力伝動軸58に伝えられ、かつ、その入力伝動軸58のベベルギヤ58aと前記スクリューコンベヤ55の軸端側に設けられたベベルギヤ55aを介して前記スクリューコンベヤ55や前記穀粒搬出用オーガ52伝達されるように構成されている。
【0044】
前記入力伝動軸58は、グレンタンク51側に支持されていて、前記伝動軸57に対して抜き差し可能な凹入係合部58bを備えていて、伝動軸57からの回転動力は伝達されながら、軸線方向での抜き差しは可能に構成されているので、前記縦軸心y周りでのグレンタンク51の揺動に伴なう係脱を許容することができる。
【0045】
図中の符号59は、伝動軸57を入力伝動軸58側へ押しつけ付勢するための押圧用スプリングである。
〔操作装置の構成〕
図6乃至図17に示すように、本発明では、上記の各種作業装置が備えるクラッチを入り切り操作するためのコンバインの操作装置としてカム駆動式の第1系統操作装置Aと、操作アームを駆動する第2系統操作装置Bとを採用している。
【0046】
前記第1系統操作装置Aは、駆動力を発生する駆動装置7Aと、その駆動装置7Aによって駆動される第1操作機構としてのカム機構8とによって構成されている。前記第2系統操作装置Bは、駆動力を発生する駆動装置7Bと、その駆動装置7Bによって駆動される第2操作機構としてのアーム操作機構9とによって構成されている。
<第1系統操作装置>
図6乃至図8に示すように、前記第1系統操作装置Aの駆動装置7Aは、動力源としての第1電動モータ70aと、その第1電動モータ70aの動力をカム機構8に伝える第1ギヤ機構72Aと、第1電動モータ70aで駆動されたカム機構8の作動状態を検出する検出機構としての第1ポテンショメータ73aとを備えるとともに、第1電動モータ70aの作動を制御する手段として、後述するマイクロコンピュータからなる制御装置100に制御プログラムとして備えられた第1モータ制御回路101とで構成されている。
【0047】
前記第1電動モータ70aは、前記操縦盤11Cに備えられた各種操作ボタンB0、及びB1〜B3の操作信号が制御装置100に入力されると、その操作信号に基づく制御指令が制御装置100から出力され、第1電動モータ70aが正転方向、もしくは逆転方向に駆動操作される。第1電動モータ70aの駆動力は、モータ出力軸71aに装着された出力ギヤ74aの回転動力として出力される。この出力ギヤ74aと、後述するカム機構8のカム板の外周の一部に形成されたギヤ部75aとで前記第1ギヤ機構72Aが構成されている。
【0048】
出力ギヤ74aによるカム機構8の駆動状態は、カム軸80の軸端に装備された第1ポテンショメータ73aで検出され、その検出結果に基づくフィードバック信号が前記制御装置100に伝達される。
【0049】
前記カム機構8は、共通のカム軸80に対して一体回動するように装着された第1カム板81、第2カム板82、及び第3カム板83の組み合わせで構成されるカム板群と、それらの各カム板81,82,83のそれぞれに対して接触するカムフォロワ群又は伝動用のギヤ機構との組み合わせで構成されている。
【0050】
つまり、カムフォロワ群のうち、第1カム板81に対しては、カム軸80よりも機体後方側で接触して案内される脱穀クラッチ40を操作する脱穀系カムフォロワ85が備えられている。
【0051】
第2カム板82に対しては、カム軸80よりも機体前方側で接触して案内されるフィードチェーンクラッチ44を操作するフィード系カムフォロワ86と、カム軸80よりも機体後方側で接触して案内される刈取クラッチ30を操作する刈取系カムフォロワ87とが備えられている。
【0052】
第3カム板83に対しては、カムフォロワはなく、前記第1電動モータ70aの出力ギヤ74aと共に第1ギヤ機構72Aを構成するギヤ部75aが、この第3カム板83の外周縁の一部に形成されている。
【0053】
前記カム軸80よりも機体前方側に存在するカムフォロワ86は、それぞれ断面U字状に折り曲げ形成された揺動片86aの長手方向の中間部を、クラッチケース76に対して機体の右横外方側から挿抜可能に装着された枢支軸77によって、その枢支軸77周りで揺動自在に取り付けられている。また、揺動片86aの長手方向での上端側には、折り曲げられたU字状部分に入り込んだ状態で、前記カム板82の外周縁側に接触するローラ86bが設けてあり、揺動片86aの長手方向での下端側には、それぞれ、フィードチェーンクラッチ44を入り切り操作するための操作ワイヤー44aを連結してある。
【0054】
前記カム軸80よりも機体後方側に存在するカムフォロワ85,87は、それぞれ断面U字状に折り曲げ形成された揺動片85a,87aの長手方向での下端部を、外装ボックス76に対して機体の右横外方側から挿抜可能に装着された枢支軸78によって、その枢支軸78周りで揺動自在に取り付けられている。また、各揺動片85a,87aの長手方向での中間部には、折り曲げられたU字状部分に入り込んだ状態で、前記カム板81,82、83の外周縁側に接触するローラ85b,87bが設けてあり、各揺動片85a,87aの長手方向での上端側には、それぞれ、脱穀クラッチ40、及び刈取クラッチ30を入り切り操作するための操作ワイヤー40a,30aを連結してある。
【0055】
前記第1カム板81には、その外周縁に、脱穀系カムフォロワ85を操作するための脱穀系カム面81bが、カム軸80を挟んでほぼ対向する箇所に形成してある。
【0056】
前記第2カム板82には、その外周縁に、フィード系カムフォロワ86を操作するためのフィード系カム面82aと、刈取系カムフォロワ87を操作するための刈取系カム面82bとが、カム軸80を挟んでほぼ対向する箇所に形成してある。
【0057】
前記第3カム板83には、その外周縁に、この第3カム板83、及び前記第1カム板81、第2カム板82に駆動力を伝達するためのギヤ部75aを形成してある。
<第2系統操作装置>
図9乃至図11に示すように、前記第2系統操作装置Bは、その駆動力を発生する駆動装置7Bとしての第2電動モータ70bと、その第2電動モータ70bの動力を第2操作機構としてのアーム操作機構9に伝える第2ギヤ機構72Bとを備え、これらが脱穀装置4の機体前方側において、脱穀装置4の前壁とほぼ平行な姿勢で機体フレーム1に対して固定された取付板18に装着されている。
【0058】
そして、第2電動モータ70bで駆動されたアーム操作機構9の作動状態を検出する検出機構としての第2ポテンショメータ73bを備えるとともに、第2電動モータ70bの作動を制御する手段として、後述するマイクロコンピュータからなる制御装置100に制御プログラムとして備えられた第2モータ制御回路102を設けて構成されている。
【0059】
前記第2電動モータ70bは、前記操縦盤11Cに備えられた各種操作ボタンB0、B4、及びB5の操作信号が制御装置100に入力されると、その操作信号に基づく制御指令が制御装置100の第2モータ制御回路102から出力され、第2電動モータ70bが正転方向、もしくは逆転方向に駆動操作される。第2電動モータ70bの駆動力は、モータ出力軸71bに装着された出力ギヤ74bの回転動力として出力される。この出力ギヤ74bと、後述するアーム操作機構9の部分円弧状板91の外周の一部に形成されたギヤ部75bとで前記第2ギヤ機構72Bが構成されている。
【0060】
前記アーム操作機構9は、アーム操作軸90と、そのアーム操作軸90に対して一体回動するように装着された部分円弧状板91と、前記アーム操作軸90に対して相対回動自在に枢着された第1操作アーム93と第2操作アーム94とから構成されている。
【0061】
前記アーム操作軸90は、その一端側が前記機体フレーム1に固定された前記取付板18に枢支され、その取付板18に固定されている門形の支え板部材19に対して他端側が枢支されて、両端支持状態で装着されている。そして、このアーム操作軸90の軸端に第2ポテンショメータ73bが装着されている。これによって、出力ギヤ74bによるアーム操作機構9の駆動状態が、アーム操作軸90の軸端に装備された第2ポテンショメータ73bで検出され、その検出結果に基づくフィードバック信号が前記制御装置100に伝達されるように構成してある。
【0062】
前記部分円弧状板91には、前記ギヤ部75が形成された円弧状部分とは反対側に延出された支持片部分に操作用ピン92が突設してあり、この操作用ピン92が、前記出力ギヤ74bで駆動される部分円弧状板91の正逆転に伴って前記第1,第2操作アーム93,94を揺動操作するように構成されている。
【0063】
前記第1操作アーム93は、アーム操作軸90に対して外嵌するボス部93aを中央箇所に備え、アーム操作軸90に枢支されて互いに相反する半径方向の外側に向けて延出された腕部分93bのうちの一方に、刈取変速装置15のシフト操作手段に対する操作ワイヤー15aを連結してあり、他方の腕部分93bに前記操作用ピン92と接当する凹入受け面93cを形成してある。
【0064】
前記第2操作アーム94は、アーム操作軸90に対して外嵌するボス部94aを中央箇所に備え、アーム操作軸90に枢支されて互いに相反する半径方向の外側に向けて延出された腕部分94bのうちの一方に、穀粒搬出用クラッチ50を入り切り操作するための操作ワイヤー50aを連結してあり、他方の腕部分94bに前記操作用ピン92と接当する凹入受け面94cを形成してある。
【0065】
したがって、前記出力ギヤ74bで駆動される部分円弧状板91の正転(図9中、反時計回り)に伴って前記操作用ピン92が第1操作アーム93の凹入受け面93cと接当し、第1操作アーム93を反時計回りに回動させるように押圧し、他端側の腕部分93bに連結されている操作ワイヤー15aを引き操作して、刈取変速装置15を高速側へ切換操作する。
【0066】
逆に、前記出力ギヤ74bで駆動される部分円弧状板91の逆転(図9中、時計回り)に伴って前記操作用ピン92が第2操作アーム94の凹入受け面94cと接当し、第2操作アーム94を時計回りに回動させるように押圧し、他端側の腕部分94bに連結されている操作ワイヤー50aを引き操作して、穀粒搬出用クラッチ50を入り側へ切換操作する。
【0067】
このとき、前記刈取変速装置15側では、刈取変速装置15のシフト操作手段が刈取低速側へ付勢されているので、前記第1操作アーム93に連結された操作ワイヤー15aは常時刈取低速側へ、つまり、第1操作アーム93を反時計回りに回動させるように、図示しない弾性付勢手段によって付勢された状態で連結してある。
【0068】
また、穀粒搬出用クラッチ50側では、穀粒搬出用クラッチ50がクラッチ切り側へ付勢されているので、前記第2操作アーム94に連結された操作ワイヤー50aは常時クラッチ切り側へ、つまり、第2操作アーム94を時計回りに回動させるように、図示しない弾性付勢手段によって付勢された状態で連結してある。
【0069】
したがって、前記第2電動モータ70bの動力で駆動される部分円弧状板91によって回動操作される第1操作アーム93の高速側への切換操作、及び第2操作アーム94による穀粒搬出用クラッチ50のクラッチ入り側への操作は、前記刈取変速装置15側、及び穀粒搬出用クラッチ50側の弾性付勢手段の付勢力に抗して行われ、逆に、第1操作アーム93による低速側への切換操作、及び第2操作アーム94による穀粒搬出用クラッチ50のクラッチ切り側への操作は、前記刈取変速装置15側、及穀粒搬出用クラッチ50側の弾性付勢手段の付勢力によって行われる。
【0070】
図9及び図10に示す符号19aは、取付板18に固定された支え板部材19に固定されたストッパーであり、前記第1,第2操作アーム93,94の、前記操作用ピン92による引き操作方向とは逆方向の移動を制限するためのものである。すなわち、前記第1,第2操作アーム93,94のうちの一方を入り側へ引き操作したときに、操作用ピン92による引き操作を受けていない他方の操作アーム93(又は94)が同方向へ連れ回り状態で回動すると、その連れ回りにともなって操作ワイヤー15aまたは50aが緩み、屈曲される虞があるが、上記のように構成されたストッパー19aによって連れ回りを制限することによって、そのような不具合がない。
【0071】
上記第1,第2操作アーム93,94のうち、第2操作アーム94に連結されている操作ワイヤー50aは、図11に示されているように、機体の左横外方から操作杆95を挿入して人為的にクラッチ入り側へ操作可能に構成されている。
【0072】
すなわち、前記第2操作アーム94の前記凹入受け面94cが形成された側とは反対側の腕部分94b、前記操作ワイヤー50aを連結するための連結ピン94dが設けられており、前記操作ワイヤー50aは、前記連結ピン94dに対して着脱可能に構成されている。
【0073】
したがって、例えば前記第2電動モータ70bや電気系統の故障などによって、アーム操作軸90の駆動ができない場合には、前記操作ワイヤー50aを連結ピン94dから外し、仮想線で示すように先端側にフック部分95aを備えた前記操作杆95を用いて、前記操作ワイヤー50aの先端側における被操作部96としての鉤状部分を引っ掛け、前記操作杆95の握り部95bを把持して機体横外方から引き操作することにより、第2操作アーム94を図9における時計回りに回動させる方向と同方向に、前記操作ワイヤー50aを人為操作で引っ張り、穀粒搬出用クラッチ50を入り状態に切換操作することができる。
【0074】
前記操作杆95は、非使用時には、図3に示すように、原動部6の左横側部から上方側への熱気の上昇を制限するとともに、刈取搬送装置3から脱穀装置4に至る搬送途中の落下ワラ屑を機体横外方へ流下案内するように傾斜させて設けた遮蔽案内板28の上側に格納できるようにしてある。つまり、遮蔽案内板28の立ち上がりリブ29に形成した係止孔29a,29bに、前記操作杆95のフック部分95a及び握り部95bを係入させて支持できるように構成してある。
〔各系統の操作装置による動作〕
次に、上記第1系統操作装置A、及び第2系統操作装置Bによる作動形態を図12乃至図17に基づいて説明する。
<第1系統操作装置の動作>
まず、第1系統操作装置Aの動作について説明する。
【0075】
図12は、前記第3カム板83に形成されたギヤ部75aの付設範囲によって設定されるカム軸80の回転角度範囲内における各カム板81,82,83の各カム面81b,82a,82bと、各カムフォロワ85,86,87とで現出される機能が発揮される範囲を、前記回転角度範囲内での角度分布図で表したものである。
【0076】
図13は、作業装置の種別を縦軸に、操作タイミングを横軸にとったタイムチャートである。また、図14は、各カム板とカムフォロワとの関連動作状態を、横軸に作業装置の種類を、縦軸に時間軸をとって図示したグラフである。
【0077】
図12に示す符号Nの位置は、この第1系統操作装置Aによって操作される全てのクラッチ等が作動側には操作されていず、何れの作業装置も駆動されていない状態である中立位置を示している。同様の中立位置Nは、図13、及び図14にも同じ符号Nで示している。
【0078】
図12における符号aは、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して脱穀クラッチ40が入りとなった位置である。
【0079】
図13においても同じ符号aで示す位置が同じ状態に相当する。また、図14においては、上から2段目に図示されている符号aの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で示されている。
【0080】
このとき、第2カム板82は、図13及び図14に示すように、フィードチェーンクラッチ44も刈取クラッチ30もクラッチ切りの状態に維持している。
【0081】
図12における符号bの位置では、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40の入り状態を引き続いて維持している。
【0082】
そして、このとき、時計回りに回動する第2カム板82では、フィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作状態を解除し、フィードチェーンクラッチ44をクラッチ入りの状態に切換操作する。
【0083】
このとき、第2カム板82の刈取系カム面82bは、刈取系カムフォロワ87を作用する状態には至っておらず、刈取系カムフォロワ87は刈取クラッチ30の切り状態を維持している。
【0084】
図13においても同じ符号bで示す位置が同じ状態に、つまり、脱穀クラッチ40とフィードチェーンクラッチ44がクラッチ入りの状態で、かつ刈取クラッチ30が切りの状態を示している。
【0085】
図14においては、符号bの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で脱穀クラッチ40の入りが維持されている状態が示されている。これとともに第2カム板82のフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェーンクラッチ44をクラッチ入りの状態に切換操作している状態が示されている。そして、第2カム板82の刈取系カム面82bは、刈取系カムフォロワ87を作用する状態には至っておらず、刈取系カムフォロワ87は刈取クラッチ30の切り状態を維持している。
【0086】
図12における符号cの位置では、第1カム板81を、前記中立位置Nから時計回りに回動させて、脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40の入り状態を引き続いて維持している。
【0087】
時計回りに回動する第2カム板82のフィード系カム面82aはフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除した状態であり、フィードチェーンクラッチ44をクラッチ入りに切換操作した状態を維持している。
【0088】
そして、このとき、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、刈取クラッチ30を、クラッチ入りの状態に切換操作する。
【0089】
図13においても同じ符号cで示す位置が同じ状態に、つまり、脱穀クラッチ40に加えて、フィードチェーンクラッチ44と刈取クラッチ30とが、共にクラッチ入りの状態に切換操作された状態を示している。
【0090】
図14においては、符号cの段における第1カム板81と脱穀系カムフォロワ85との接触状態で脱穀クラッチ40の入りが維持されている状態が示されている。これとともに第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェーンクラッチ44と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している状態が示されている。
<第2系統操作装置の動作>
次に、第2系統操作装置Bの動作について説明する。
【0091】
図15は、前記部分円弧状板91に形成されたギヤ部75bの付設範囲によって設定されるアーム操作軸90の回転角度範囲内における各操作アーム93,94による切換操作が行われる範囲を、前記回転角度範囲内での角度分布図で表したものである。
【0092】
図16は、作業装置の種別を縦軸に、操作タイミングを横軸にとったタイムチャートである。
【0093】
図15に示す符号N2の位置は、この第2系統操作装置Bによって操作される穀粒搬出用クラッチ50がクラッチ切り側に操作され、刈取変速装置15が低速側に操作されている状態を示している。同様の中立位置N2は、図16にも同じ符号N2で示している。
【0094】
図15における符号dの位置では、第2操作アーム94を、前記中立位置N2から時計回りに回動させて、刈取変速装置15の操作用シフタに連結された操作ワイヤー15aを引き操作し、刈取変速装置15を高速側へ切換えた位置を示している。
【0095】
図16においても同じ符号dで示す位置が同じ状態に、つまり、刈取変速装置15が高速側に操作されている状態を示している。
【0096】
図15における符号eは、第1操作アーム93を前記中立位置N2から反時計回りに回動させて、穀粒搬出用クラッチ50に連結してある操作ワイヤー50aを引き操作し、穀粒搬出用クラッチ50が入り状態に切り換えられた位置を示すものであり、図16においても同じ符号eで示す位置に相当する。
【0097】
このとき、この図16に示すように、前記dの位置では、穀粒搬出用クラッチ50のみが「入」で、刈取変速装置15は低速状態である。
〔制御系の構成〕
図17に示すように、刈取クラッチ30、脱穀クラッチ40、及びフィードチェーンクラッチ44を操作するカム機構8の動力源である第1電動モータ70aの作動を制御する第1モータ制御回路101、ならびに穀粒搬出用クラッチ50、及び刈取変速装置15を操作するアーム操作機構9の動力源である第2電動モータ70bの作動を制御する第2モータ制御回路102を備えた制御装置100は次のように構成されている。
【0098】
搭乗運転部11の操作盤11Cに備えられる制御開始ボタンB0、脱穀装置駆動ボタンB1、枕扱き脱穀開始ボタンB2、低速刈取脱穀ボタンB3、高速刈取脱穀ボタンB4、穀粒搬出用ボタンB5のそれぞれは操作スイッチによって構成されており、その操作信号が制御装置100に入力されるように構成されている。
【0099】
制御装置100では、前記各ボタンB0,B1,B2,B3,B4,B5の何れが操作されたかの判断に基づいて、また、第1ポテンショメータ73a及び第2ポテンショメータ73bでの検出結果に基づいて、第1モータ制御回路101、ならびに第2モータ制御回路102が、第1系統操作装置Aの第1電動モータ70a、及び第2系統操作装置Bの第2電動モータ70bに対して次のように制御指令を出力する。
【0100】
制御開始ボタンB0が最初に操作されたことを検出した場合には、この制御装置100によって制御される各装置を総て初期設定状態にする。このとき、前記脱穀装置4の脱穀クラッチ40、フィードチェーンクラッチ44は切り状態にあり、刈取搬送装置3の刈取クラッチ30も切り状態にあり、刈取変速装置15は低速状態にあり、穀粒貯留装置5の穀粒搬出用クラッチ50は切り状態にある。
【0101】
この制御装置100によって制御される各装置の何れかが既に駆動されている状態で前記制御開始ボタンB0が操作されたことを検出した場合には、その駆動中の各装置を総て初期設定状態に戻して作動を終了する。
【0102】
脱穀装置駆動ボタンB1が操作されたことを検出した場合には、第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、図12における符号aの位置(便宜上、脱穀装置駆動位置aという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第1電動モータ70aが第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、脱穀装置駆動位置aに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。
【0103】
前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、脱穀装置駆動位置aよりも時計回りで中立位置から離れている位置である場合には、第1電動モータ70aが逆回転で第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を反時計回りに回転させる。そして、脱穀装置駆動位置aに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。
【0104】
また、前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、脱穀装置駆動位置aである場合には、第2電動モータ70bに対する駆動指令は出力されない。尚、第2電動モータ70bには駆動指令が出力されず、中立位置Nに維持されている。
【0105】
枕扱き脱穀開始ボタンB2が操作されたことを検出した場合には、第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、図12における符号bの位置(便宜上、枕扱き脱穀開始位置bという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第1電動モータ70aが第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、枕扱き脱穀開始位置bに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。
【0106】
前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、枕扱き脱穀開始位置bよりも時計回りで中立位置から離れている位置である場合には、第1電動モータ70aが逆回転で第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を反時計回りに回転させる。そして、枕扱き脱穀開始位置bに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。また、前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、枕扱き脱穀開始位置bである場合には、第1電動モータ70aに対する駆動指令は出力されない。尚、第2電動モータ70bには駆動指令が出力されず、中立位置Nに維持されている。
【0107】
低速刈取脱穀ボタンB3が操作されたことを検出した場合には、第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、図12における符号cの位置(便宜上、刈取脱穀開始位置cという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第2電動モータ70bが第1ギヤ機構72Aを駆動し、カム機構8のカム軸80を時計回りに回転させる。そして、刈取脱穀開始位置cに達したことが第1ポテンショメータ73aで検出されると第1電動モータ70aに停止指令を出力する。
【0108】
前記第1ポテンショメータ73aで検出されるカム軸80の検出位置が、刈取脱穀開始位置c、もしくは刈取脱穀開始位置cよりも時計回りで中立位置から離れている位置である場合には、第1電動モータ70bに対する駆動指令は出力されない。
【0109】
この状態では、第1カム板81の脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40が入り操作された状態を維持しているとともに、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェーンクラッチ44と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している。
【0110】
その後、作業開始ボタンB0が再度操作されたことを検出すると、第1電動モータ70aを駆動してカム軸80を反時計回りに回転させ、中立位置Nに達したことが検出されると、その位置で停止するように指令する。尚、第2電動モータ70bには駆動指令が出力されず、中立位置Nに維持されている。
【0111】
高速刈取脱穀ボタンB4が操作されたことを検出した場合には、第2ポテンショメータ73bで検出されるアーム操作軸90の検出位置が、図15における符号dの位置(便宜上、高速刈取脱穀位置dという)よりも時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第2電動モータ70bが第2ギヤ機構72Bを駆動し、アーム操作機構9のアーム操作軸90を時計回りに回転させる。そして、高速刈取脱穀位置dに達したことが第2ポテンショメータ73bで検出されると第2電動モータ70bに停止指令を出力する。
【0112】
この状態では、第2ギヤ機構72Bで駆動される部分円弧状板91に備えられた操作用ピン92がアーム操作軸90の回転軸心まわりで時計回りに回動し、刈取け変速系の第1操作アーム93を時計回りに回動操作して操作ワイヤー15aを引き操作し、刈取変速装置15のシフト操作手段を高速側へ切換操作する。
【0113】
上記第2ギヤ機構72Bで駆動される部分円弧状板91に備えられた操作用ピン92の時計回りの回動は、第2操作アーム94の作動には何らの影響を与えないので、穀粒搬出用クラッチ50は切り状態に維持されたままである。
【0114】
このとき、第1系統操作装置Aの第1モータ制御回路101では、第1カム板81の脱穀系カム面81bが脱穀系カムフォロワ85を操作して、脱穀クラッチ40が入り操作された状態を維持しているとともに、第2カム板82の刈取系カム面82bが、刈取系カムフォロワ87を操作し、同時にフィード系カム面82aがフィード系カムフォロワ86の切り操作を解除し、フィードチェーンクラッチ44と刈取クラッチ30とを、共にクラッチ入りの状態に切換操作している。
【0115】
この高速刈取脱穀ボタンB4の操作に伴う高速刈取作業状態は、その後に前記制御開始ボタンB0が操作されたことを検出した場合には、その駆動中の各装置を総て初期設定状態に戻して作動を終了する。また、前記枕扱き脱穀開始ボタンB2、又は低速刈取脱穀開始ボタンB3、あるいは、後述する穀粒搬出用ボタンB5が選択された場合には、高速刈取作業状態を停止し、そのボタンB1,B2,B3,B5が選択された制御状態に切換られる。
【0116】
穀粒搬出用ボタンB5が操作されたことを検出した場合には、第2ポテンショメータ73bで検出されるアーム操作軸90の検出位置が、図16における符号eの位置(便宜上、穀粒搬出位置eという)よりも反時計回りで中立位置から離れている位置でない場合には、第2電動モータ70bが第2ギヤ機構72Bを駆動し、アーム操作機構9のアーム操作軸90を反時計回りに回転させる。この状態では、第2ギヤ機構72Bで駆動される部分円弧状板91に備えられた操作用ピン92がアーム操作軸90の回転軸心まわりで反時計回りに回動し、穀粒搬出用の第2操作アーム94を反時計回りに回動操作して操作ワイヤー50aを引き操作し、穀粒搬出用クラッチ50を入り操作する。
【0117】
そして、穀粒搬出位置eに達したことが第2ポテンショメータ73bで検出されると第2電動モータ70bに停止指令を出力する。前記第2ポテンショメータ73bで検出されるアーム操作軸90の検出位置が、穀粒搬出位置eである場合には、第2電動モータ70bに対する駆動指令は出力されない。
【0118】
上記第2ギヤ機構72Bで駆動される部分円弧状板91に備えられた操作用ピン92の反時計回りの回動は、第1操作アーム93の作動には何らの影響を与えないので、刈取変速装置15のシフト操作手段は刈取低速状態に維持されたままである。
【0119】
上記の穀粒搬出用ボタンB5の操作は、その穀粒搬出用ボタンB5の再度の押し操作、もしくは前記制御開始ボタンB0が再度操作されたことの検出に伴って穀粒搬出用クラッチ50を切り操作状態に切り換えられるが、前記第1系統操作装置Aの第1モータ制御回路101による制御とは切り離して制御されるものであり、前記第1モータ制御回路101で制御される脱穀クラッチ40、フィードチェーンクラッチ44、及び刈取クラッチ30の作動状態には影響を与えたり、与えられたりすることなく、第1モータ制御回路101による制御状態のままに維持する。
〔その他〕
図1及び図18に示すように、前記穀粒搬出用オーガ52を格納姿勢で支持するために運転座席20の横側部位置に設けられた支持ポスト21には、機体前方側を照射する照射灯22が設けられている。
【0120】
この照明灯22は、図18に示すように上下軸心y1と水平軸心x1周りで向き変更自在に装着されているので、運転部側、もしくは機体前方の茎稈分草箇所などを的確に照射できるように調整することができる。また、穀粒搬出用オーガ52の動作とは関係なく照射方向を設定できる。
【0121】
図3及び図19に示すように、燃料タンク23の給油口24部分には、網筒状のフィルター25が装着されている。前記フィルター25は給油口24の蓋26付きの開口箇所に装着されるものであるが、そのフィルター25の筒軸心P1と給油口24の導入筒部分27の筒軸心P2とが、図19(b)に示すように上下方向で偏心した状態で設けてある。これによって、フィルター25と導入筒部分27の内周面との間隔が、上側よりも下側で広くなり、給油口24の開口から注入される燃料の流れをスムースにし易くなる利点がある。
〔別実施形態の1〕
操作機構としては、最良の実施形態で示したようなカム機構8やアーム操作機構9によらず、他の各種の操作機構を採用してもよい。
〔別実施形態の2〕
カム機構8のカム板の枚数やカムフォロワの個数は、カム機構8が操作対象とする装置の数などに応じて適宜変更するとよい。
【0122】
同様に、アーム操作機構9の操作アームの数は、アーム操作機構9が操作対象とする装置の数などに応じて適宜変更するとよい。
〔別実施形態の3〕
機体の左横外方から操作杆95を挿入して人為的にクラッチ入り側へ操作可能にする構成としては、上述のように第2操作アーム94から外した操作ワイヤー50aを操作杆95によって直接的に引っ掛けて人為操作する構造のものに限らず、第2操作アーム94自体を操作杆95で操作するようにしてもよい。
【0123】
すなわち、前記第2操作アーム94の凹入受け面94cが形成された側とは反対側の腕部分94bで、前記操作ワイヤー50aを連結するための連結ピン94dを、前記操作杆95のフック部分95aによって引っ掛け可能な構造として、この連結ピン94dを被係合部96として前記フック部分95aを引っ掛け、操作杆95の握り部95bを把持して機体横外方から引き操作することにより、第2操作アーム94を図9における反時計回りに回動させ、操作ワイヤー50aを引っ張って、穀粒搬出用クラッチ50のテンションアーム50bをクラッチ入り側へ操作可能に構成してもよい。
〔別実施形態の4〕
各種作業装置の駆動の入り切りや作動順を指令するための操作盤11Cに備える操作具としては、前述の各実施形態で示した押しボタンB0,B1,B2,B3,B4,B5に限らず、ダイヤルスイッチや、操作レバーの操作位置の検出によって指令作業を検出するなど、適宜の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】自脱形コンバインの全体側面図
【図2】自脱形コンバインの全体平面図
【図3】機体フレーム上での操作装置の配置を示す平面図
【図4】刈取クラッチ部分を示す側面図
【図5】伝動系を示す概略図
【図6】第1系統操作装置を示す平面図
【図7】第1系統操作装置を示す側面図
【図8】第1系統操作装置を示す断面図
【図9】第2系統操作装置を示す正面図
【図10】第2系統操作装置を示す断面図
【図11】第2系統操作装置と穀粒搬出用クラッチとの連係関係を示し、(a)が展開図、(b)が平面図
【図12】第1系統操作装置の作動形態を示す線図
【図13】第1系統操作装置の作動形態を示すタイムチャート
【図14】第1系統操作装置の作動形態を示す説明図
【図15】第2系統操作装置の作動形態を示す線図
【図16】第2系統操作装置の作動形態を示すタイムチャート
【図17】制御構成を示すブロック図
【図18】穀粒搬出用オーガの支持ポスト箇所を示し、(a)は格納姿勢の断面図、(b)は側面図
【図19】燃料タンクの燃料供給口箇所を示し、(a)は導入筒部分の断面図、(b)はXIXb-XIXb線断面図
【符号の説明】
【0125】
1 機体フレーム
3 刈取搬送装置
4 脱穀装置
5 穀粒貯留装置
8 カム機構(第1操作機構)
9 アーム操作機構(第2操作機構)
15 刈取変速装置
30 刈取クラッチ
40 脱穀クラッチ
42 フィードチェーン
44 フィードチェーンクラッチ
50 穀粒搬出用クラッチ
70a 第1電動モータ
70b 第2電動モータ
a 脱穀操作位置
b フィードチェーン操作位置
c 刈取脱穀操作位置
e 穀粒搬出位置
N2 中立位置
y 縦軸心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取搬送装置の駆動を入り切りする刈取クラッチと、脱穀装置の駆動を入り切りする脱穀クラッチと、穀粒貯留装置の駆動を入り切りする穀粒搬出用クラッチと、機体走行速度に対する前記刈取搬送装置の駆動速度を高低に変速する刈取変速装置とを操作するコンバインの操作装置であって、
前記刈取クラッチ及び脱穀クラッチを入り切り操作する第1操作機構と、その第1操作機構を駆動する第1電動モータとを備えるとともに、前記第1操作機構及び第1電動モータとは別に、前記穀粒搬出用クラッチ及び刈取変速装置を操作する第2操作機構と、その第2操作機構を駆動する第2電動モータとを備え、
前記各操作機構は、前記各電動モータによって各別に正転方向と逆転方向とに回転方向を変更操作可能に構成され、
前記第1操作機構では、前記刈取クラッチ及び脱穀クラッチが切り状態となる中立位置から一方向側の操作域に、脱穀クラッチがクラッチ入りで刈取クラッチがクラッチ切りである脱穀操作位置と、脱穀クラッチと刈取クラッチが共にクラッチ入りとなる刈取脱穀操作位置を設定してあり、
前記第2操作機構では、刈取変速装置を操作する操作域とは中立位置を挟んで反対側の操作域に、穀粒搬出用クラッチを入り操作する穀粒搬出位置を設定してあることを特徴とするコンバインの操作装置。
【請求項2】
第1操作機構には、脱穀操作位置と刈取脱穀操作位置との中間の操作域に、脱穀クラッチと、フィードチェーンの入り切り操作を行うフィードチェーンクラッチとが入り状態で、刈取クラッチが切り状態であるフィードチェーン操作位置を設定してある請求項1記載のコンバインの操作装置。
【請求項3】
第1操作機構と第1電動モータとを、機体後部側の縦軸心周りで横外方へ揺動可能に搭載された穀粒貯留装置と脱穀装置との隣接間隔内で機体フレーム上に配置し、前記第2操作機構と第2電動モータとを、前記脱穀装置の機体前方側で機体フレーム上に配設してある請求項1又は2記載のコンバインの操作装置。
【請求項4】
第2操作機構と穀粒搬出用クラッチとを連係する連係機構中に、第2操作機構の非操作時に人為操作によって穀粒搬出用クラッチを入り操作するための被操作部を設けてある請求項1〜3のいずれか1項記載のコンバインの操作装置。
【請求項1】
刈取搬送装置の駆動を入り切りする刈取クラッチと、脱穀装置の駆動を入り切りする脱穀クラッチと、穀粒貯留装置の駆動を入り切りする穀粒搬出用クラッチと、機体走行速度に対する前記刈取搬送装置の駆動速度を高低に変速する刈取変速装置とを操作するコンバインの操作装置であって、
前記刈取クラッチ及び脱穀クラッチを入り切り操作する第1操作機構と、その第1操作機構を駆動する第1電動モータとを備えるとともに、前記第1操作機構及び第1電動モータとは別に、前記穀粒搬出用クラッチ及び刈取変速装置を操作する第2操作機構と、その第2操作機構を駆動する第2電動モータとを備え、
前記各操作機構は、前記各電動モータによって各別に正転方向と逆転方向とに回転方向を変更操作可能に構成され、
前記第1操作機構では、前記刈取クラッチ及び脱穀クラッチが切り状態となる中立位置から一方向側の操作域に、脱穀クラッチがクラッチ入りで刈取クラッチがクラッチ切りである脱穀操作位置と、脱穀クラッチと刈取クラッチが共にクラッチ入りとなる刈取脱穀操作位置を設定してあり、
前記第2操作機構では、刈取変速装置を操作する操作域とは中立位置を挟んで反対側の操作域に、穀粒搬出用クラッチを入り操作する穀粒搬出位置を設定してあることを特徴とするコンバインの操作装置。
【請求項2】
第1操作機構には、脱穀操作位置と刈取脱穀操作位置との中間の操作域に、脱穀クラッチと、フィードチェーンの入り切り操作を行うフィードチェーンクラッチとが入り状態で、刈取クラッチが切り状態であるフィードチェーン操作位置を設定してある請求項1記載のコンバインの操作装置。
【請求項3】
第1操作機構と第1電動モータとを、機体後部側の縦軸心周りで横外方へ揺動可能に搭載された穀粒貯留装置と脱穀装置との隣接間隔内で機体フレーム上に配置し、前記第2操作機構と第2電動モータとを、前記脱穀装置の機体前方側で機体フレーム上に配設してある請求項1又は2記載のコンバインの操作装置。
【請求項4】
第2操作機構と穀粒搬出用クラッチとを連係する連係機構中に、第2操作機構の非操作時に人為操作によって穀粒搬出用クラッチを入り操作するための被操作部を設けてある請求項1〜3のいずれか1項記載のコンバインの操作装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−130916(P2010−130916A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307646(P2008−307646)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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