説明

コンバイン

【課題】機体の全高を低く抑えながらも、運転部を機体左右略中央に配設することを可能とし、コンパクトな機体と良好な操縦性を実現するコンバインの構造を提案する。
【解決手段】走行機体前後方向の軸芯回りに回転する扱胴及び該扱胴の下部に張設した受網を備えた脱穀装置18と、穀粒を貯留するグレンタン30とを走行機体上に左右に並設し、刈取穀稈供給用のコンベア11及び該コンベアを内装するコンベアケース10を備えた搬送装置9を脱穀装置前部に配設し、掻き込み用のリール5、刈刃4及び掻き送り用のオーガ3を備えるとともに、脱穀装置とグレンタンクとに亘る左右幅を有する刈取装置を搬送装置の前部に配設し、脱穀装置と刈取装置の間であって、平面視において搬送装置と重複する位置に運転部を配設し、前記運転部を機体の略中央位置に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用コンバインにおいて、刈取装置で刈り取った穀稈を脱穀装置へ搬送するための搬送装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汎用コンバインでは、走行する機体に、掻き込み用のリールや刈刃や掻き送り用のオーガを備えた刈取装置と、扱胴を備えた脱穀装置と、穀粒を貯溜するグレンタンクと、刈取装置で刈り取った穀稈を脱穀装置まで搬送するための搬送装置が備えられている。
【0003】
そして、特許文献1に記載の技術では、刈取装置の作業幅を確保するとともに、機体の上下高さをコンパクトに構成するために、走行機体上に脱穀装置とグレンタンクとを左右に並設し、脱穀装置とグレンタンクとに亘る左右幅を有する刈取装置を、脱穀装置の前部に配設し、刈取装置と脱穀装置の間に無端コンベア及びコンベアケースから成る搬送装置を配設し、搬送装置の側方であってグレンタンク側に運転席を配設している。
【特許文献1】特公平5−49246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の汎用コンバインのように、運転部を左右一側に偏って配置すると、左右他側の前端が見にくくなるという不具合がある。
【0005】
一方、搬送装置を刈取装置の左右略中央部後方に連結して、搬送効率を上げるとともに、運転部を搬送装置の上方であって走行機体の左右略中央に配置して左右の視界を向上させようとすると、汎用コンバインの全高が高くなり、トラック等の荷台に載置して搬送や移動を行おうとしても、地上高制限を受けてしまうため、自走させたり、運転部を分解したりする必要があった。
【0006】
上記従来技術に鑑み、本発明では、機体の全高を低く抑えながらも、運転部を機体左右略中央に配設することを可能とし、コンパクトな機体と、良好な操縦性を実現するためのコンバインの構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、走行機体前後方向の軸芯回りに回転する扱胴、及び該扱胴の下部に張設した受網を備えた脱穀装置と、穀粒を貯留するグレンタンとを、走行機体上に左右に並設し、刈取穀稈供給用のコンベア及び該コンベアを内装するコンベアケースを備えた搬送装置を脱穀装置前部に配設し、掻き込み用のリール、刈刃及び掻き送り用のオーガを備えるとともに、脱穀装置とグレンタンクとに亘る左右幅を有する刈取装置を搬送装置の前部に配設し、脱穀装置と刈取装置の間であって、平面視において搬送装置と重複する位置に運転部を配設し、前記運転部を機体の略中央位置に配設したものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1記載のコンバインにおいて、前記運転部の支持部材を搬送装置の左右に跨設したものである。
【0010】
請求項3においては、運転部を構成するキャビン(17)は、機体フレームの前部に固設された支持部材である第一キャビンフレーム(102)と第二キャビンフレーム(104)に、第一固定板(101)と第二固定板(103)を介して固定し、該第一キャビンフレーム(102)には、側板が取り付けられ、前記コンベアケース(10)の後部を覆う形状とし、また該第一キャビンフレーム(102)及び第一固定板(101)が、脱穀装置を内装する筐体の前突出部分を形成し、また、該第二キャビンフレーム(104)は、略水平方向に伸延する部材(104a)と斜め方向に伸延する部材(104b)とで略三角形に構成し、前記第一キャビンフレーム(102)と第二キャビンフレーム(104)と第一固定板(101)と第二固定板(103)で構成するキャビンの支持部材は、搬送装置(9)のコンベアケース(10)の上方を左右に跨ぐように構成し、コンベアケース(10)とキャビン(17)及びキャビンフレーム(102・104)とが干渉しない構成としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、走行機体前後方向の軸芯回りに回転する扱胴、及び該扱胴の下部に張設した受網を備えた脱穀装置と、穀粒を貯留するグレンタンとを走行機体上に左右に並設し、刈取穀稈供給用のコンベア及び該コンベアを内装するコンベアケースを備えた搬送装置を脱穀装置前部に配設し、掻き込み用のリール、刈刃及び掻き送り用のオーガを備えるとともに、脱穀装置とグレンタンクとに亘る左右幅を有する刈取装置を搬送装置の前部に配設し、脱穀装置と刈取装置の間であって、平面視において搬送装置と重複する位置に運転部を配設し、前記運転部を機体の略中央位置に配設したので、機体の全高を抑えながらも運転部を機体左右略中央に配設することができ、運転性が良好となる。
また、前記運転部を機体の略中央位置に配設したので、機体の全高を抑えた運転部の機体左右略中央への配置が実現でき、運転性が良好となる。
【0012】
請求項2においては、請求項1記載のコンバインにおいて、前記運転部の支持部材を搬送装置の左右に跨設したので、運転部と搬送装置が干渉しない配置を実現することができ、運転部の配置の自由度が高まるのである。
【0013】
請求項3においては、運転部を構成するキャビンは、機体フレームの前部に固設された支持部材である第一キャビンフレームと第二キャビンフレームに、第一固定板と第二固定板を介して固定し、該第一キャビンフレームには、側板が取り付けられ、前記コンベアケースの後部を覆う形状とし、また該第一キャビンフレーム及び第一固定板が、脱穀装置を内装する筐体の前突出部分を形成し、また、該第二キャビンフレームは、略水平方向に伸延する部材と斜め方向に伸延する部材とで略三角形に構成し、前記第一キャビンフレームと第二キャビンフレームと第一固定板と第二固定板で構成するキャビンの支持部材は、搬送装置のコンベアケースの上方を左右に跨ぐように構成し、コンベアケースとキャビン及びキャビンフレームとが干渉しない構成としたので、機体の全高を抑えながらも運転部を機体左右略中央に配設することができ、運転性が良好となる。
【0014】
また、前記運転部を機体の略中央位置に配設したので、機体の全高を抑えた運転部の機体左右略中央への配置が実現でき、運転性が良好となる。
また、刈取装置の昇降用回動支点を搬送装置後端より前方且つ下方に配設することができるようになり、運転部の配置の自由度が高まる。
また、コンベアの後端を、脱穀装置を内装する筐体内部に設けられた脱穀装置への投入口近傍に配置したので、搬送装置から脱穀装置の間に配設するビータを廃止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は搬送装置とキャビンを示す背面図、図4はキャビンの支持を示す斜視図、図5は脱穀・選別部を示す側面図である。
【0017】
図6は搬送装置を示す側面図、図7は同じく平面図、図8はコンベアを示す平面図、図9は搬送装置の後部を示す側面図、図10はガイド部材を示す平面図、図11は図10におけるX矢視端面図である。
【0018】
図12はガイド部材の別実施例を示す側面図、図13は刈取装置を昇降させる様子を示す側面図である。図14はコンバインの別実施例を示す平面図である。
【0019】
本発明に係るコンバインでは、図1及び図13に示す如く、刈取装置8で刈り取った穀稈を脱穀装置18へ搬送するための搬送装置9において、該搬送装置9が穀稈の搬送経路中途部に設けた中間屈曲点89において屈曲可能に構成され、そして、中間屈曲点89、若しくは、該中間屈曲点89の近傍に刈取装置8の昇降用回動支点が設けられていることを特徴としている。
【0020】
前記搬送装置9には、無端式のコンベア11と該コンベア11を内装するコンベアケース10とが備えられている。該コンベアケース10は、機体側に固定された後ケース71と、該後ケース71前端に上下回動可能に連結した前ケース70とで構成されている。
【0021】
そして、前記前ケース70の前方に刈取装置8が連結されるとともに、前ケース70と本機との間にアクチュエータとしての油圧シリンダ32が介装され、該刈取装置8は、搬送装置9の中間屈曲点89、若しくは、該中間屈曲点89の近傍に設けた回動支点を中心として回動駆動可能とされている。
【0022】
また、前記コンベア11は、前ケース70の前部に設けられたガイドローラ74と、後ケース71の後部に設けられたスプロケット90に巻回されている。
【0023】
そして、ガイドローラ74とスプロケット90との間に位置する中間屈曲点89において、コンベア11の内周側にガイドローラ76が設けられるとともに、該ガイドローラ76にコンベア11を沿わせるためのガイド部材97を設けられることによって、ガイドローラ76からスプロケット90間のコンベア11の軌道が固定され、ガイドローラ76からガイドローラ74までのコンベア11の軌道が前ケース11の回動に伴って移動するように構成されている。
【0024】
上述の如く屈曲可能に構成された搬送装置9の上方には、運転部であるキャビン17が配設されている。
【0025】
搬送装置9が屈曲可能に構成されることによって、その屈曲部を刈取装置8の回動支点とすることができ、従来のコンバインと比較して、機体の全長及び全高を変更することなく、刈取装置8の回動支点を低位置とすることが可能とされている。
【0026】
また、搬送装置9の前後中途部に設けられた中間屈曲点89において該搬送装置9が屈曲するため、中間屈曲点89若しくは該中間屈曲点89近傍を刈取装置8の回動支点とすることによって、従来は搬送装置9の後部に設けられていた刈取装置8の回動支点を、前方に位置させることが可能となり、従って、刈取装置8の回動支点から刈取装置8までの長さを短くすることができる。
【0027】
よって、従来のコンバインと比較して、刈取装置8の回動半径が短縮され、刈取装置8を上下昇降させるために必要となるスペースが低減され、コンパクトに構成することが可能となる。
【0028】
また、搬送装置とキャビンを左右に並設した従来のコンバインと同様の高さ位置にキャビン17を配設しても、本発明に係る搬送装置9の構造によって、キャビン17の下方に該キャビン17と干渉することなく搬送装置9が配設される。
【0029】
すなわち、従来のコンバインに対して、機体の全長・全高を変更することなく、刈取装置8で刈り取られた穀稈が、キャビン17の下を通過し、脱穀装置18の投入口12に供給されるよう構成することができるのである。
従って、コンバインにおけるキャビン17の配置を容易にし、キャビン17等を広範囲に設けることができる効果を有している。
【0030】
さらに、機体左右略中央に搬送装置とキャビンを上下に並設した従来のコンバインよりも、キャビン17を低く配設することが可能とされ、機体の全高を低く構成することが可能とされている。
従って、運転部であるキャビンを機体の左右略中央に配置することによって、左右両側の視界が良好になるため、運転性の向上が図られる。
また、刈取装置8の左右に極端に偏位した位置よりも、やや左右略中央寄りの後方に搬送装置9を連結することができるので、刈取装置8から搬送装置9への穀稈の受け渡しがスムーズになり、受け渡し部での詰まりの低減が期待される。
さらに、機体の全高を低く構成することによって機体の重心が低くなり、バランスを安定させることができ、また、トラックの荷台に載せての搬送時や収納時に必要なスペースを低減させることができる。さらに、キャビン17から圃場までの距離が近くなるために、機体の操縦性の向上も期待される。
【0031】
そして、搬送装置9の前後中途部の中間屈曲点89おいて、該搬送装置9の前部を屈曲(回動)可能とし、該中間屈曲点89を刈取装置8の回動支点とすることで、該中間屈曲点89より後方のコンベア11の軌道は固定されることとなり、また、該中間屈曲点89より後方のコンベア11の軌道を刈取装置8の回動半径を考慮することなく決定することが可能となって、搬送装置9の後端位置の自由度が高められている。
本実施例においては、搬送装置9の後端は脱穀装置18への投入口12近傍に配設され、穀稈は該投入口12まで搬送装置9のコンベア11によって搬送される。従来のコンバインでは、搬送装置の後端位置が、刈取装置の回動支点であったため、搬送装置の後端と刈取装置との間にビータ等の補助的な搬送機構が備えられていたが、これを廃止することができて、部品点数の削減によるコストダウンに寄与している。
【0032】
ここで、本発明の実施例に係るコンバインの全体構成について図1乃至図5を用いて説明する。
【0033】
コンバインでは、クローラ式走行装置1上に機体フレーム13が配設され、該機体フレーム13上に脱穀装置18や選別装置19から成る脱穀・選別部を内装する筐体33が配置され、該筐体33の後部にエンジン48等が配設されている。筐体33の上には、穀粒を一時的に貯溜するグレンタンク30が配設され、該グレンタンク30よりその内部に貯留された穀粒を排出するための排出オーガ40が機体後部から前方にかけて備えられている。
【0034】
前記筐体33の前方には刈取装置8が配置され、該刈取装置8の後端と筐体33前上部に設けられた、脱穀装置18の前部入口が搬送装置9によって連通されている。搬送装置9は機体左右略中央より左右一側に偏った状態に配設されている。なお、図2示す例においては、搬送装置9は機体の左側に偏った状態に配設されているが、搬送装置9を右側に偏った状態に配設することもできる。
【0035】
さらに、前記搬送装置9の上方には運転席15や操向ハンドル16等を収納したキャビン17が配設されている。操向ハンドル16近傍には、操作パネル16aや主変速レバー等の操作レバー16b等が配置されている。キャビン17は、図3及び図4に示す如く、機体フレーム13の前部に固設された支持部材である第一キャビンフレーム102と第二キャビンフレーム104に第一固定板101と第二固定板103を介して固定されている。第一キャビンフレーム102には、側板が取り付けられてコンベアケース10の後部を覆う形状とされ、第一キャビンフレーム102及び固定板101が脱穀装置18を内装する筐体33の前突出部分を形成している。
また、第二キャビンフレーム104は、略水平方向に伸延する部材104aと斜め方向に伸延する部材104bとで略三角形に組まれている。第一キャビンフレーム102と第二キャビンフレーム104に第一固定板101と第二固定板103で構成されるキャビン17の支持部材は、搬送装置9のコンベアケース10の上方を左右に跨ぐように設けられており、コンベアケース10とキャビン17及び支持部材とが干渉しないように配置されている。
【0036】
また、キャビン17は機体左右中央前方の上方位置に配置して視界を良好として、刈取作業を確認し易くし、左右両側より乗降可能とされている。但し、図14に示す如く、キャビン17を機体左右一側に偏った状態に配置して、機体左右一側より乗降可能とすることもできる。前記搬送装置9のコンベアケース10の左端10Lはキャビン17の下方に位置し、同じく右端10Rはキャビン17の右側下方に位置している。すなわち、搬送装置9のコンベアケース10は、平面視においてキャビン17と上下に少なくとも一部重複した状態に配置されている。
【0037】
前記刈取装置8は、搬送装置9の構成部材であるコンベアケース10の前部に連結されたプラットホーム2内部に横架され支承された掻き送り用の横送りオーガ3と、該横送りオーガ3の前下部に備えられた刈刃4と、プラットホーム2上方に設けられた掻き込み用のリール5等で構成されている。前記横送りオーガ3は、進行方向と直交する方向に回転軸を有し、その回転によってプラットホーム2の左右略中央後部に連結されたコンベアケース10へ刈り取った穀稈が送られるように螺旋が形成されている。
また、プラットホーム2の左右両側の前端には、分草板7・7が設けられ、プラットホーム2の後部の左右両端にはリール5を横架した支持アーム6の後部が枢支され、該支持アーム6の左右一側にはリール5回転駆動用のベルトやプーリ等からなる動力伝達機構が設けられている。リール5は、支持アーム6とプラットホーム2との間に介装されたアクチュエータとしての油圧シリンダ29によって昇降される。
【0038】
前記搬送装置9は、コンベアケース10と、該コンベアケース10内に配設された無端状のコンベア11で構成されている。前記コンベアケース10の前端は、前記プラットホーム2の後部に、横送りオーガ3のスクリューの送り終端位置に合わせて連通されている。また、コンベアケース10の後端は、脱穀装置18への投入口12に連通されており、該投入口12の後方には進行方向に対し略平行に回転軸心を有する扱胴37が配設されており、コンベア11により、穀稈は強制的に脱穀装置18の扱胴37へ搬送される。
【0039】
前記コンベアケース10の後部は、脱穀・選別部を内装する筐体33の前部に挿入され、該筐体33に昇降回動自在に支持されており、コンベアケース10の下面と機体フレーム13との間に油圧シリンダ32を介装して、刈取装置8が昇降可能とされている。
【0040】
前記脱穀・選別部は筐体33内部に配設され、刈取装置8により刈り取られ、搬送装置9により搬送されてきた穀稈を脱穀する脱穀装置18と、該脱穀装置18により脱穀された穀粒を選別する選別装置19とで構成されている。
【0041】
脱穀装置18内には、前後方向にスクリュー型のインペラを周面に付設した扱胴37が配され、また、扱胴37の下方に受網38を介して選別装置19が配設されている。
このような構成において、コンベアケース10から投入口12へ穀稈が搬送されると、扱胴37の回転によって、穀稈は後方へ搬送されながら脱粒され、穀粒は受網38を通過して落下し選別装置19へ送られ、排稈は機体後部へ送られる。
【0042】
選別装置19は、チャフシーブ39を有する揺動本体50や、該揺動本体50の下方で流穀板25上に前側から順に配される、選別風を発生させる唐箕27、選別された一番物を左右方向に搬送する一番コンベア28、二番物を搬送する二番コンベア31等より構成され等で構成され、前記受網38から漏下する穀粒の選別を行うようにしている。
また、前記扱胴37の後部下方には、回転軸に複数の切断刃を植設したチョッパー式のスプレッダー62が配設され、該スプレッダー62により扱胴37により扱ぎ室後部へ移送される排稈が細かく切断され、機体外部へ排出される。
【0043】
次に、前記搬送装置9の構造について詳細に説明する。
【0044】
図3、図6及び図7に示す如く、コンベアケース10は、前部の前ケース70と後部の後ケース71で構成されている。前ケース70と後ケース71は、回動可能に連結されている。前記前ケース70の前部には刈取装置8の構成部材であるプラットホーム2が連結され、前ケース70内部とプラットホーム2出口が連通されている。そして、前ケース70内の前部に左右水平方向に回動可能に横架された前カウンタ軸73に、コンベア11をガイドするガイドローラ74が外嵌されている。
【0045】
また、前ケース70の後部には支軸75が左右水平方向に回動可能に横架され、該支軸75にガイドローラ76・76が外嵌されている。さらに、支軸75は前ケース70より左右両外側に延出され、延出部分にスプロケット77・78が外嵌されている。そして、前ケース70に固定された支軸75を支承している支承部材79・79が、筐体33に固設されたステー80・80に回動可能に支承されている。
【0046】
一方、後ケース71は、その前部が前ケース70の後部に挿入され、その後部が筐体33に挿入された状態に配置されており、後ケース71の底部は、供給板81で構成されている。供給板81は、筐体33内部に固定され、前ケース70の後端から、扱胴37の前下方に亘って連続する板状部材であって、コンベア11によって搬送される穀稈は該供給板81の上方を通過するうちに整流されて扱胴37に導かれる。
【0047】
後ケース71の後部において、後カウンタ軸82が回動可能に左右水平方向に横架され、後ケース71内の該後カウンタ軸82両側にスプロケット90・90が外嵌固定されている。そして、該後カウンタ軸82の左右一側が後ケース71よりも外側に延出されて、この延出部分にスプロケット83とプーリ84が外嵌されている。
従って、エンジン48からの動力が、プーリ84に巻回された伝動ベルト(図示せず)により後カウンタ軸82に伝達され、さらに、後カウンタ軸82のスプロケット83と支軸75のスプロケット78に巻回されたチェン85によって、後カウンタ軸82の回動が支軸75に伝達される。そして、支軸75のスプロケット77と、前ケース70の前側部に回動可能に支承された伝動軸86に外嵌されたスプロケット87とに、巻回されたチェン88によって、支軸75へ伝達された動力が、刈取装置8へと伝達され、刈刃4や横送りオーガ3等が駆動される。
【0048】
前記後カウンタ軸82は、筐体33内部であって脱穀装置18の投入口12近傍に配置されている。従って、刈取装置8により刈り取られた穀稈は、脱穀装置18の投入口12まで、搬送装置9のコンベア11により直接搬送されることとなる。
【0049】
上述の如く構成されたコンベアケース10は、後ケース71は固定され、前ケース70が軸75を中心として回動可能であり、すなわち、支軸75の位置においてコンベアケース10全体として前後中途部において屈曲することが可能である。この支軸75の位置を中間屈曲点89とする。
そして、前ケース70の下面に設けられたステー70aには、アクチュエータとしての油圧シリンダ32の伸縮アーム32aの端部が支承されており、その基部を機体フレーム13に支承された油圧シリンダ32による伸縮アーム32aの伸縮によって、前ケース70が回動駆動される。なお、後ケース71と略一直線上になる位置から、コンベアケース10の上方に配置されたキャビン17に当接する手前の上方位置まで回動することができる。
【0050】
そして、前記後カウンタ軸82に外嵌されたスプロケット90・90と、支軸75のガイドローラ76・76と、前カウンタ軸73に外嵌されたガイドローラ74には、コンベア11が巻回されている。該コンベア11の下方と箱状に形成されたコンベアケース10の下面との間が穀稈の搬送経路となる。
【0051】
図8にも示す如く、コンベア11は、前記後カウンタ軸82に外嵌されたスプロケット90・90と、支軸75のガイドローラ76・76と、前カウンタ軸73に外嵌されたガイドローラ74に亘って、巻回された左右のチェン11a・11aと、左右のチェン11a・11a間に架設されたスラット11bで構成されている。
【0052】
なお、中間屈曲点89に位置する支軸75に外嵌されたガイドローラ76・76を、スプロケットではなくローラとしているのは、コンベアケース10の下面である搬送面とコンベア11の間隙の小さい中間屈曲点89において、搬送される穀稈が噛み合うことを防止するためである。
また、コンベア11のチェン11a・11aを巻回する、スプロケット90・90とガイドローラ76・76のピッチ径を合わせるように構成している。ガイドローラ76・76は、刈取装置8を駆動するための支軸75に外嵌されているため、相対速度を小さくし、また、ガイドローラ76・76のブッシュの耐久性を向上させるためである。
【0053】
そして、前記コンベア11の軌道を常にガイドローラ76・76に沿わせるために、図9乃至図11にも示す如く、中間屈曲点89において、コンベア11を該コンベア11の外周側からガイドローラ76・76側に押圧するためのガイド部材97が設けられている。前記ガイド部材97は、コンベア11の左右のチェン11a・11aを押圧するために左右に一つずつ設けられた押圧体91・91と、該押圧体91・91をコンベア11側へ付勢する付勢部材で構成されている。本実施例では、付勢部材として板バネ体95を採用している。
【0054】
上述の如く、中間屈曲点89において、コンベア11の内周側にガイドローラ76・76を、外周側にガイド部材97としての押圧体91・91を設けることによって、前ケース70が支軸75を中心として回動し、コンベアケース10が中間屈曲点89において屈曲した状態となっても、コンベア11は常にガイドローラ76・76の外周に沿うこととなり、ガイドローラ76からスプロケット90までのコンベア11の軌道が固定される。

このようにして、搬送装置9が屈曲しても、コンベア11のチェン11a・11aの周長は殆ど変化せず、コンベア11は弛緩すること無く、前記後カウンタ軸82に外嵌されたスプロケット90・90と、支軸75のガイドローラ76・76と、前カウンタ軸73に外嵌されたガイドローラ74に緊張して巻回された状態を保持することが可能とされている。
【0055】
ガイド部材97の構成部材である押圧体91は、固定された側のケースである後ケース71の前部を構成する上面板94に固定されたステー92に支承されている。ステー92には筒状部材92aが固設されており、該筒状部材92aに、軸93が回動可能に挿入され、該軸93には、押圧体91の支持部91aが固設されている。支持部91aはチェン11aに沿って前後方向に配設されており、該支持部91aの下辺は船底状に形成されて、この下辺に支持部91aと略直交する方向に押圧部91bが形成されている。押圧部91bはチェン11aの幅に合わせた左右幅を持ち、該押圧部91bの前端はガイドローラ76上部に位置し、後端はガイドローラ76とスプロケット90の間に位置している。
なお、前記押圧体91の支持部91aの上辺部に、穀稈の刺さり込みを防止するための刺さり込み防止部材を設けることもできる。
【0056】
そして、前記支持部91aの後端は、上面板94の上方に延出するように凸部が一体的に形成されて、規制部91cが設けられている。規制部91cは、上面板94の上面に固定された付勢部材としての板バネ体95の下面に当接している。板バネ体95は、上面板94の左右幅と略同様の幅を有し、上面板94の左右略中央において調節ボルト96・96によって、上面板94との離間距離を調節可能であるように該上面板94に固定されている。板バネ体95はその左右端部において下方より押圧体91・91の規制部91c・91cにより上方へ突き上げられ、その左右略中央において調節ボルト96・96により上方への動きが規制されて、該板バネ体95により押圧体91・91がコンベア11側へ付勢されている。そして、調節ボルト96・96により板バネ体95の規制位置を調節することにより、押圧体91・91のチェン11a・11aの押圧具合を調節することができる。
【0057】
上述の構成によれば、後ケース71の上面に設けられた調節ボルト96・96により、押圧体91・91のチェン11a・11aへの押圧具合、すなわち、コンベア11の緊張具合を調節することができる。
そして、板バネ体95を用いることにより、左右略中央に一箇所に設けられた調節ボルト96・96を調節することで、左右の押圧体91・91のチェン11a・11aへの押圧具合を均等とすることができ、コンベア11の左右においてテンション力を均等とすることができるため、コンベア11の調整が簡易になる。
【0058】
また、板バネ体95の弾性により、板バネ体95の左右略中央の位置が固定されていても、押圧体91・91は軸93・93を中心として幾分回動可能である。従って、ガイド部材97は、コンベア11のテンションの自動微調整を行う機能も果たしている。すなわち、ガイド部材97はコンベア11のチェン11aがガイドローラ76・76に沿うようにガイドする機能と、コンベア11のテンションの自動微調整を行う機能を併せ持っており、これらを別体に構成するときと比較して、部品点数の低減に寄与している。
【0059】
なお、図12に示す如く、ガイド部材97の押圧体91(91’)を、ローラ状部材91e・91eとすることもできる。ローラ状部材91e・91eは後ケース71の構成部材である上面板94に固定されたステー92に支承されており、コンベア11を構成する左右のチェン11a・11aのそれぞれを中間屈曲点89において、コンベア11の外周側から押圧するように左右に一つずつ配設されている。ローラ状部材・91eはその上部を後ケース71の上方に延出した状態として、後ケース71の大きさを変更することなく取り付けることができるようにしている。
【0060】
また、上記コンベア11においては、該コンベア11を無端状であって一輪のコンベアで構成しているが、無端状のコンベアを二輪用いて前後に配置することもできる。この場合、中間屈曲点89に位置する支軸75を前のコンベアの後カウンタ軸且つ後のコンベアの前カウンタ軸として用いることができる。
【0061】
上述の如く構成された搬送装置9では、該搬送装置9の中間屈曲点89より後方は固定され、図13に示す如く、該搬送装置9の中間屈曲点89より前方は該中間屈曲点89に設けられた支軸75を中心として回動する。従って、搬送装置9のコンベアケース10下部面上方とコンベア11下方に形成される搬送経路は中間屈曲点89近傍で屈曲可能に構成されていることとなる。本実施例においては、中間屈曲点89が搬送経路において一箇所設けられているので、搬送経路は中間屈曲点89近傍で折れ曲がって、側面視において「く」字状となる。
【0062】
なお、本実施例では、中間屈曲点89で搬送装置9が屈曲可能とされているが、搬送装置9の搬送経路を下方に撓んだ状態に湾曲させたり、円曲させたりするように搬送経路を変形することもできる。
また、本実施例では、中間屈曲点89を搬送装置9の搬送経路の中途部に一箇所設けているが、中間屈曲点89を搬送経路中途部に複数設けることもできる。これにより、搬送経路の形状の自由度が高まり、搬送経路を湾曲させたり、円曲させたりすることも可能となり、搬送経路を自在に変形することができる。
【0063】
そして、中間屈曲点89に位置する支軸75は刈取装置8の昇降用回動支点でもあり、刈取装置8の回動支点が、搬送装置9を屈曲可能に構成しないときと比較して前方に位置することとなる。
【0064】
そして、中間屈曲点89の上方にはキャビン17が配置されている。すなわち、刈取装置の昇降用回動支点の上方にキャビン17が配置されていることとなる。なお、本実施例においては、支軸75に前ケース70と後ケース71の連結軸としての機能と、コンベア11の方向転換軸としての機能とを兼用させているため、刈取装置8の昇降用回動支点は中間屈曲点89となるが、コンベア11の方向転換軸と前ケース70と後ケース71の連結軸を別部材に構成し、刈取装置8の昇降用回動支点を中間屈曲点89近傍に配置することもできる。
【0065】
このようにして、搬送装置9を搬送経路の中途部に位置する中間屈曲点89において屈曲可能とし、該中間屈曲点89若しくは該中間屈曲点89の近傍に刈取装置8の昇降用回動支点を配設することによって、刈取装置8の昇降用回動支点の高さ位置を従来の構造と比較して、前方且つ下方に配設することが可能となり、キャビン17の下方に刈取装置8の昇降用回動支点を配置することが可能となる。
【0066】
また、搬送装置9の後端位置と刈取装置8の昇降用回動支点が必ずしも等しい位置にある必要はないので、搬送装置9の後端位置の自由度が高まり、脱穀装置18を内装する筐体33内部であって脱穀装置18への投入口12寸前に搬送装置9の後端を配置することが可能とされている。
【0067】
また、刈取装置8の左右一側に偏った状態に搬送装置9を連結し、左右反対側にキャビン17を配設することも可能である。本実施例では、左側に搬送装置9が、右側にキャビン17が配設されている。
この構成においても、搬送装置9を搬送経路の前後中途部に位置する中間屈曲点89において屈曲可能に構成され、該中間屈曲点89若しくは該中間屈曲点89の近傍に刈取装置8の昇降用回動支点が配設されることによって、搬送装置9の後端位置の自由度が高まり、脱穀装置18の扱胴37への投入口12の直ぐ手前までコンベア11で穀稈を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】搬送装置とキャビンを示す背面図。
【図4】キャビンの支持を示す斜視図。
【図5】脱穀・選別部を示す側面図。
【図6】搬送装置を示す側面図。
【図7】同じく平面図。
【図8】コンベアを示す平面図。
【図9】搬送装置の後部を示す側面図。
【図10】ガイド部材を示す平面図。
【図11】図10におけるX矢視端面図。
【図12】ガイド部材の別実施例を示す側面図。
【図13】刈取装置を昇降させる様子を示す側面図。
【図14】コンバインの別実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0069】
1 クローラ式走行装置
8 刈取装置
9 搬送装置
10 コンベアケース
11 コンベア
12 投入口
17 キャビン
18 脱穀装置
19 選別装置
33 筐体
70 前ケース
71 後ケース
73 前カウンタ軸
74 ガイドローラ
75 支軸
76 ガイドローラ
81 供給板
82 後カウンタ軸
89 中間屈曲点
90 スプロケット
91 押圧体
95 板バネ体
97 ガイド部材
102 第一キャビンフレーム(支持部材)
104 第二キャビンフレーム(支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体前後方向の軸芯回りに回転する扱胴、及び該扱胴の下部に張設した受網を備えた脱穀装置と、穀粒を貯留するグレンタンとを、走行機体上に左右に並設し、刈取穀稈供給用のコンベア及び該コンベアを内装するコンベアケースを備えた搬送装置を脱穀装置前部に配設し、掻き込み用のリール、刈刃及び掻き送り用のオーガを備えるとともに、脱穀装置とグレンタンクとに亘る左右幅を有する刈取装置を、搬送装置の前部に配設し、脱穀装置と刈取装置の間であって、平面視において搬送装置と重複する位置に運転部を配設し、前記運転部を機体の略中央位置に配設したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1記載のコンバインにおいて、前記運転部の支持部材を搬送装置の左右に跨設したことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項2記載のコンバインにおいて、運転部を構成するキャビンは、機体フレームの前部に固設された支持部材である第一キャビンフレームと第二キャビンフレームに、第一固定板と第二固定板を介して固定し、該第一キャビンフレームには、側板が取り付けられ、前記コンベアケースの後部を覆う形状とし、また該第一キャビンフレーム及び第一固定板が、脱穀装置を内装する筐体の前突出部分を形成し、また、該第二キャビンフレームは、略水平方向に伸延する部材と斜め方向に伸延する部材とで略三角形に構成し、前記第一キャビンフレームと第二キャビンフレームと第一固定板と第二固定板で構成するキャビンの支持部材は、搬送装置のコンベアケースの上方を左右に跨ぐように構成し、コンベアケースとキャビン及びキャビンフレームとが干渉しない構成としたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−204312(P2006−204312A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128286(P2006−128286)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【分割の表示】特願2002−355103(P2002−355103)の分割
【原出願日】平成14年12月6日(2002.12.6)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】