説明

コンバイン

【課題】低コストに構成できる脱穀駆動構造で、メンテナンス作業性を向上できるものでありながら、脱穀装置5が無駄に作動するのを防止できるようにしたコンバインを提供するものである。
【解決手段】走行部2を有する走行機体1と、走行機体1に搭載したエンジン20と、刈取装置3と、扱胴226を有する脱穀装置5を備え、エンジン20の動力を扱胴226に伝達する駆動経路中に扱胴調速手段74を設けたコンバインにおいて、脱穀装置5から排出される排藁を検出する排藁センサ106を備える構造であって、前記排藁がなくなったことを排藁センサ106が検出したときに、排藁センサ106の検出結果に基づき扱胴調速手段74を制御して、扱胴226を低速作動又は停止制御するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンによって、走行クローラ、刈取装置、脱穀装置等を駆動するコンバインに係り、より詳しくは、脱穀装置の扱胴等の回転速度を制御するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの駆動装置に、刈取装置又は脱穀装置又は排藁チェン等を各別に駆動する複数のモータを配置することによって、コンバインの各部の伝動機構を簡単に構成でき、穀稈又は排藁がなくなったときに刈取装置又は脱穀装置を停止させる一方、藁が多いときに唐箕の回転速度を増速させる等の各種の制御を効果的に実行できるようにした技術がある(特許文献1)。また、移動速度を変化させたときに脱穀装置の扱胴の回転数を変更して扱き残しを低減する技術も公知である(特許文献2参照)。また、穀稈の供給量を検出して扱胴の回転数を制御して脱穀処理能力を向上させる技術も公知である(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−255250号公報
【特許文献2】特開平6−14639号公報
【特許文献3】特開平5−22号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、エンジンに代えて電動モータを搭載した構造(特許文献1)では、脱穀装置や走行クローラ等のように、大きな動力を要する駆動部を機動的に作動できない。一般的な電動モータを駆動源とした構造では、脱穀装置の処理能力に限界があり、湿田での走破力が不足し、適用機種又は作業内容等が著しく限定されるから、一般的な量産機種に簡単に適用できない等の問題がある。また、エンジンを駆動源として、Vベルト及びテンションクラッチを介して扱胴を駆動する構造では、低コストの駆動構造によって脱穀装置を作動できるが、テンションクラッチの入り操作によって扱胴を始動させるときに、テンションクラッチの半クラッチ動作によってVベルトが損傷しやすいから、面倒なVベルトの交換作業を定期的に行う必要がある等の問題がある。さらに、運転座席から作業者が離れて行う穀稈の手扱ぎ作業において、作業者の手作業によって脱穀装置に穀稈が間欠的に投入されるが、脱穀装置に投入される穀稈の有無に関係なく、エンジンによって脱穀装置の扱胴等が連続して定速回転され、脱穀装置の扱胴等が無駄に駆動される等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、低コストに構成できる脱穀駆動構造で、メンテナンス作業性を向上できるものでありながら、脱穀装置が無駄に作動するのを防止できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、走行部を有する走行機体と、前記走行機体に搭載したエンジンと、刈取装置と、扱胴を有する脱穀装置を備え、前記エンジンの動力を前記扱胴に伝達する駆動経路中に扱胴調速手段を設けたコンバインにおいて、前記脱穀装置から排出される排藁を検出する排藁センサを備える構造であって、前記排藁がなくなったことを前記排藁センサが検出したときに、前記排藁センサの検出結果に基づき前記扱胴調速手段を制御して、前記扱胴を低速作動又は停止制御するように構成したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記扱胴調速手段として遊星ギヤ機構を設け、前記遊星ギヤ機構を逆転出力させる変速アクチュエータを備え、前記変速アクチュエータによって前記遊星ギヤ機構を逆転出力させて、前記扱胴を停止させるように構成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコンバインにおいて、前記脱穀装置に前記エンジンの出力を伝達するVベルトを備えた構造であって、前記Vベルトと前記扱胴の連結途中に前記遊星ギヤ機構を配置して、前記エンジンの出力によって、前記Vベルト及び前記遊星ギヤ機構を介して、前記扱胴を回転させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、走行部を有する走行機体と、前記走行機体に搭載したエンジンと、刈取装置と、扱胴を有する脱穀装置を備え、前記エンジンの動力を前記扱胴に伝達する駆動経路中に扱胴調速手段を設けたコンバインにおいて、前記脱穀装置から排出される排藁を検出する排藁センサを備える構造であって、前記排藁がなくなったことを前記排藁センサが検出したときに、前記排藁センサの検出結果に基づき前記扱胴調速手段を制御して、前記扱胴を低速作動又は停止制御するように構成したものであるから、圃場の枕地で走行機体を次行程作業位置に回行させる方向転換作業のときに、湿田等において旋回走行負荷が過大に発生しても、前記排藁センサの検出結果に基づき、前記扱胴を低速作動又は停止させることによって、前記エンジンから前記走行部に伝達する動力不足を回避できる。また、前記走行機体に搭載した穀粒タンクの穀粒を排出させる場所(農道に隣接した畦際)に移動して、トラックの荷台等に穀粒タンク内の穀粒を排出させる等の軽負荷作業において、前記排藁センサの検出結果に基づき、前記軽負荷作業に必要な出力を確保できる範囲で、前記エンジンの回転数を低下させることができる。即ち、穀粒タンクから穀粒を排出させる軽負荷作業のときには、穀稈を刈取り脱穀する収穫作業中よりも前記エンジンの出力を軽減でき、燃費を向上できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記扱胴調速手段として遊星ギヤ機構を設け、前記遊星ギヤ機構を逆転出力させる変速アクチュエータを備え、前記変速アクチュエータによって前記遊星ギヤ機構を逆転出力させて、前記扱胴を停止させるように構成したものであるから、前記エンジンの回転数の変動に関連させて、前記遊星ギヤ機構の変速操作によって前記扱胴の回転数を簡単に制御できる。脱穀性能を維持しながら、前記エンジンを効率よく運転できる。なお、前記エンジンの負荷が著しく変動しても、前記扱胴等の伝動構造の損傷を未然に防止でき、前記エンジンの出力不足(エンジン停止)によって生じる脱穀トラブル等も未然に防止できる。例えば、前記脱穀装置の回転数が作業許容回転数以下に低下する状態にまで、前記エンジンの負荷が大幅に増大しても、前記脱穀装置に伝達する前記エンジンの出力を確保でき、前記脱穀装置を適正に駆動でき、脱穀性能等を簡単に維持できる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記脱穀装置に前記エンジンの出力を伝達するVベルトを備えた構造であって、前記Vベルトと前記扱胴の連結途中に前記遊星ギヤ機構を配置して、前記エンジンの出力によって、前記Vベルト及び前記遊星ギヤ機構を介して、前記扱胴を回転させるように構成したものであるから、ベルトテンションローラ構造の脱穀クラッチを入り切り操作するときに、前記扱胴の回転を低下させることによって、前記脱穀クラッチの入り切りに伴う前記Vベルトの損傷を低減できる。前記Vベルトの点検交換等のメンテナンス作業を軽減できる。前記遊星ギヤ機構の変速制御によって前記扱胴の駆動と停止を繰返し行っても、前記Vベルトを緊張させた状態で、前記扱胴を停止できるから、前記Vベルトの損傷を低減して耐久性を向上できる。例えば、手扱ぎ作業時、前記脱穀クラッチを継続状態に保持していても、排藁不在の検出によって前記遊星ギヤ機構を変速制御して、前記扱胴を停止できるから、作業者が前記脱穀装置に穀稈を供給する手扱ぎ作業を、作業者のペースで実行でき、手扱ぎ作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの右側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの駆動系統図である。
【図4】脱穀回転制御回路図である。
【図5】脱穀回転制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの右側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの駆動系統図である。図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0014】
本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む2条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の左側に、穀粒タンク7が走行機体1の右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な穀粒排出オーガ8が設けられている。穀粒タンク7の内部の穀粒が、穀粒排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転台10が設けられている。
【0015】
運転台10には、オペレータが搭乗するステップ11と、操縦ハンドル13を設けたハンドルコラム12と、運転座席14の左側方のレバーコラム15に設けた走行主変速レバー16、及び走行副変速レバー17、刈取クラッチ及び脱穀クラッチ等の作業クラッチ(図示省略)を入り切り操作する作業クラッチレバー18とが、配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのディーゼルエンジン20が配置されている。
【0016】
図1及び図2、図8乃至図11に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。ディーゼルエンジン20の出力がミッションケース19に伝達され、ミッションケース19によってディーゼルエンジン20の出力が変速され、ミッションケース19の変速出力によって走行クローラ2が駆動される。
【0017】
図1及び図2に示されるように、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する2条分の分草体225が突設されている。ディーゼルエンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0018】
図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の前進方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
【0019】
図1及び図2に示されるように、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。なお、揺動駆動軸240によって、略一定速度で前後及び上下方向に揺動選別盤227を往復揺動させる(図3参照)。その結果、扱胴226の下方に張設された受網(図示省略)から漏下した脱穀物が、揺動選別盤227のフィードパン及びチャフシーブ(図示省略)によって搖動選別(比重選別)される。
【0020】
前記揺動選別盤227によって脱穀物が搖動選別されることによって、脱穀物中の穀粒が、揺動選別盤227のグレンシーブ(図示省略)から下方に落下する。前記グレンシーブから落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下する。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。
【0021】
また、図1及び図2に示されるように、揺動選別盤227は、搖動選別(比重選別)によってチャフシーブ(図示省略)から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。揺動選別盤227のチャフシーブから落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下する。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀コンベヤ233と交差して前後方向に延びる還元コンベヤ236を介して、揺動選別盤227前部の上面側に連通接続され、前記二番物を揺動選別盤227前部の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0022】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0023】
次に、図3を参照しながら、コンバインの動力伝達系統について説明する。図3に示す如く、エンジン20の動力は、該エンジン20に突設された出力軸41から、左右両走行クローラ2を駆動させる走行ミッションケース19、脱穀装置5及び刈取装置3、並びに排出オーガ8という3つの方向に分岐して伝達される。走行ミッションケース19は、油圧ポンプ及び油圧モータからなる走行用HST式油圧無段変速機42と、同じく油圧ポンプ及び油圧モータからなる旋回用HST式油圧無段変速機43とを備えている。エンジン11の出力軸41から走行ミッションケース19に向かう分岐動力は、走行用HST式油圧無段変速機42の走行用ポンプの入力側に伝達され、この走行用ポンプの入力側から旋回用HST式油圧無段変速機43の旋回用ポンプの入力側に動力伝達される。
【0024】
なお、運転台10に設けられた操縦ハンドル13の操作量に応じて、油圧無段変速機42,43の各油圧ポンプにおける回転斜板の傾斜角度が調節されることにより、油圧無段変速機42,43の各油圧モータへの圧油の吐出方向及び吐出量が変更され、走行用又は旋回用油圧モータの出力側の回転方向及び回転数(左右の走行クローラ2の駆動速度及び駆動方向)が任意に調節される。
【0025】
図3に示す如く、エンジン20の出力軸41から排出オーガ8への分岐動力は、穀粒排出Vベルト44、テンションローラ形穀粒排出クラッチ45、タンク入力軸46を介して、穀粒タンク7内の底部搬送コンベヤ47、及び排出オーガ8における縦搬送コンベヤ48に動力伝達され、次いで、受け継ぎスクリュー(図示省略)を介して、排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベヤ49に動力伝達される。各コンベヤ47,48,49によって穀粒タンク7内の穀粒がトラックの荷台またはコンテナ等に搬出される。
【0026】
図3に示す如く、エンジン20の出力軸41から脱穀装置5及び刈取装置3に向かう分岐動力は、脱穀駆動Vベルト71、テンションローラ形脱穀クラッチ72を介して脱穀駆動軸73に伝達される。脱穀駆動軸73からの動力は、無段変速用遊星ギヤ機構74を介して脱穀入力軸75に伝達され、次いで、脱穀入力軸75を介して刈取装置3、扱胴226、及び処理胴229の方向に分岐して伝達される。
【0027】
脱穀入力軸75から刈取装置3への分岐動力は、刈取変速機構76に伝達され、その一部がフィードチェン駆動軸77を経て、フィードチェン6の前端に動力伝達される。刈取変速機構76に伝達された分岐動力は、テンションローラ形刈取クラッチ51を介して刈取入力1軸52に伝達され、刈取入力1軸52から刈取装置3の各部に動力伝達される。
【0028】
図3に示す如く、刈取入力1軸52に伝達された動力は、縦伝動用の刈取入力2軸53を介して横伝動用の刈取入力3軸54に伝達され、刈刃装置222と左側穀稈引起装置223とが刈取入力3軸54によって駆動される。右側穀稈引起装置223が刈取入力2軸53によって駆動される。また、刈取入力1軸52に伝達された動力は、縦搬送支点軸55を経由して、穀稈搬送装置224の縦搬送チェン56、及び穂先搬送タイン57に伝達される。脱穀入力軸75からの動力によって刈取装置3の各部がそれぞれ駆動される。
【0029】
一方、脱穀入力軸75から扱胴226に向かう分岐動力は、扱胴226を軸支した扱胴軸58に伝達される。扱胴軸58の後端側の動力は、排藁駆動軸59を介して排藁チェン234に伝達される。脱穀入力軸75からの動力によって扱胴226及び排藁チェン234が駆動される。
【0030】
図3に示す如く、無段変速用遊星ギヤ機構74は、サンギヤ80と、複数のプラネタリギヤ81と、リングギヤ82と、キャリヤ83とを有する。脱穀駆動軸73にサンギヤ93を一体的に軸支させる。脱穀入力軸75上に設けたキャリヤ83に複数のプラネタリギヤ81を遊転可能に配置させる。脱穀駆動軸73上にリングギヤ82を遊転可能に軸支させる。リングギヤ82の内側ギヤとサンギヤ80とにプラネタリギヤ81を噛合させる。リングギヤ82の外側ギヤに変速入力ギヤ84を噛合させる。エンジン20からの回転は、脱穀クラッチ72及び脱穀駆動軸73等を介してサンギヤ93に伝達され、次いで、キャリヤ83を介して脱穀入力軸75から刈取入力1軸52と扱胴軸58に伝達される。即ち、脱穀入力軸75からの動力によって刈取装置3の各部と扱胴226がそれぞれ駆動される。
【0031】
図3に示す如く、変速入力ギヤ84を作動させて前記遊星ギヤ機構74の出力回転数を変更させる脱穀変速機構85を備える。脱穀変速機構85によって変速入力ギヤ84を正転又は停止又は逆転させて、サンギヤ80の一定回転数の回転に対して、リングギヤ82を正転又は停止又は逆転させることによって、キャリヤ83及び脱穀入力軸75の回転数を増速又は減速させる。例えば、エンジン20の出力によって脱穀駆動軸73が一定回転している場合、変速入力ギヤ84によってリングギヤ82を介して回転させるプラネタリギヤ81の回転数と、サンギヤ80によって回転させるプラネタリギヤ81の回転数とを等しくしたときに、キャリヤ83の回転数が零になって、脱穀入力軸75が停止する。
【0032】
即ち、変速入力ギヤ84によってリングギヤ82を介して回転させるプラネタリギヤ81の回転数と、サンギヤ80によって回転させるプラネタリギヤ81の回転数との差が、脱穀入力軸75の回転数になる。脱穀入力軸75が停止した状態で、変速入力ギヤ84を減速させることによって、脱穀入力軸75が正転方向に増速する。なお、脱穀入力軸75が停止した状態で、変速入力ギヤ84を増速させることによって、脱穀入力軸75が逆転する。
【0033】
脱穀変速機構85は、エンジン20の一定回転出力によって定速回転駆動する脱穀変速用アクチュエータとしての出力可変式の脱穀変速用油圧ポンプ86と、脱穀変速用油圧ポンプ86に閉ループ形油圧回路を介して接続する脱穀変速用アクチュエータとしての脱穀変速用油圧モータ87とを有する。また、脱穀変速用油圧ポンプ86の斜板86aの角度を変更する脱穀変速用油圧シリンダ88を設けている。脱穀変速用油圧シリンダ88が作動して脱穀変速用油圧ポンプ86の斜板86aの角度が変更されることによって、脱穀変速用油圧モータ87の出力回転数が変化するように構成している。
【0034】
即ち、脱穀変速用油圧シリンダ88によって脱穀変速用油圧ポンプ86の斜板86aの角度が調節され、脱穀変速用油圧モータ87を作動させた場合、脱穀変速用油圧モータ87の出力回転によってリングギヤ82を介してプラネタリギヤ81が回転する。脱穀変速用油圧モータ87によってプラネタリギヤ81が回転すると、サンギヤ80によって回転していたキャリヤ83の回転数が、リングギヤ82の回転数に反比例して変化する。したがって、脱穀変速用油圧ポンプ86の斜板86aの角度調節によって、脱穀変速用油圧モータ87を作動して、リングギヤ82を回転させることによって、サンギヤ80の一定回転に対して、キャリヤ83の回転が減速される。
【0035】
その結果、エンジン20の出力によって脱穀駆動軸73が略一定回転数で回転しているときに、脱穀変速用油圧モータ87を増速又は減速制御し、キャリヤ83の回転数を変化させることによって、脱穀入力軸75を介して扱胴226の回転数を変更できる。なお、変速入力ギヤ84によってリングギヤ82を介して回転させるプラネタリギヤ81の回転数と、サンギヤ80によって回転させるプラネタリギヤ81の回転数との差が、脱穀入力軸75の回転数になる。
【0036】
また、脱穀変速用油圧ポンプ86の斜板86aの傾斜角度を大きくする角度調節によって、脱穀変速用油圧モータ87の回転数を増速して、リングギヤ82を高速回転させた場合、サンギヤ80の一定回転数の回転に対して、キャリヤ83の回転数が零になって、キャリヤ83が停止するように構成している。その結果、サンギヤ80が一定回転数で回転していても、脱穀入力軸75の回転数が零になって、扱胴226が停止維持される。
【0037】
また、脱穀変速用油圧ポンプ86の斜板86aの最大角度調節によって、脱穀変速用油圧モータ87の出力を最大にして、リングギヤ82を最高速回転させることによって、サンギヤ80の一定回転数の回転に対して、サンギヤ80によるキャリヤ83の回転方向と逆の方向に、キャリヤ83が低速で回転するように構成している。その結果、扱胴226及び排藁チェン234を低速で逆回転させて、排藁チェン234等を収穫作業のときとは逆の方向に作動でき、排藁チェン234の交換作業、又は排藁チェン234の搬送始端側に詰った排藁の除去作業等を簡単に実行できる。
【0038】
図3に示す如く、扱胴調速手段として、遊星ギヤ機構74と、遊星ギヤ機構74の出力回転数を変更させる脱穀変速用油圧モータ87及び脱穀変速用油圧シリンダ88(作業調速アクチュエータ)とを有し、扱胴226に遊星ギヤ機構74を介してエンジン20の出力を伝達するように構成している。したがって、エンジン20の回転数の変動に比例させて、扱胴226の回転数をスムーズに増減制御できる。また、遊星ギヤ機構74を設けた場合、従来のベルト変速機構等に比べて、扱胴226の回転変速幅を大きく設定できるから、エンジン20の動力を扱胴226に伝達する駆動経路中に脱穀駆動ベルト71を設けた構造において、脱穀クラッチ72を入り切り操作するときに、扱胴226の回転を低下させることによって、脱穀クラッチ72の入り切りに伴う脱穀駆動ベルト71の損傷を低減できる。脱穀駆動ベルト71の点検交換等のメンテナンス作業を軽減できる。
【0039】
図3に示す如く、扱胴調速手段としての遊星ギヤ機構74の出力側に、フィードチェン6又は刈取装置3を連結し、フィードチェン6又は刈取装置3に、遊星ギヤ機構74の変速出力をそれぞれ伝達するように構成している。したがって、扱胴226の回転速度に同調させて、刈取装置3又はフィードチェン6を作動できる。例えば、エンジン20の負荷の増大によって、エンジン20の回転が著しく低下した場合であっても、刈取装置3又はフィードチェン6の穀稈搬送速度を簡単に維持でき、刈取装置3又はフィードチェン6等の穀稈搬送装置224に、刈取穀稈が詰まるのを未然に防止できる。穀稈搬送装置224の稈詰りによって収穫作業が中断するのを低減でき、収穫作業性を向上できる。
【0040】
図3に示す如く、唐箕ファン228を駆動する選別駆動用電動モータ91備える。唐箕ファン228が軸支された唐箕軸90に選別駆動用電動モータ91の駆動力が伝達され、選別駆動用電動モータ91によって唐箕ファン228が駆動される。また、選別駆動用電動モータ91の駆動力は、唐箕軸90から2つの方向に分岐して動力伝達される。唐箕軸90からの動力の一方は、一番コンベヤ231、及び二番コンベヤ232、及び排塵ファン230、並びに排藁カッタ235に動力伝達される。唐箕軸90からの動力の他方は、還元コンベヤ236の送り終端側に配置された枝梗処理胴93に動力伝達される。
【0041】
一方、揺動選別盤227を駆動する揺動駆動用電動モータ92を備える。揺動駆動用電動モータ92に揺動駆動軸94が連結され、揺動駆動軸94にはクランク軸95を介して揺動選別盤227の前端側が連結され、揺動駆動軸94によって揺動選別盤227が前後方向に揺動されて、扱胴226にて脱粒された穀粒が比重選別される。前記選別駆動用電動モータ91と、揺動駆動用電動モータ92は、エンジン20を始動させるバッテリ(図示省略)に電気接続される。即ち、前記バッテリを駆動源として、選別駆動用電動モータ91が作動して唐箕ファン228が駆動され、揺動駆動用電動モータ92が作動して揺動選別盤227が駆動されるように構成している。
【0042】
次に、図3及び図4を参照しながら、扱胴226又は揺動選別盤227又は唐箕ファン228の各駆動速度を制御する脱穀回転制御について説明する。図3及び図4に示す如く、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを備えたマイクロコンピュータ等の脱穀回転コントローラ100を備える。脱穀回転コントローラ100の入力側には、入力系の各種センサ及びスイッチ類、即ち、エンジン5の回転数を検出するエンジン回転センサ101と、扱胴226の回転数に基づき穀稈の扱き負荷を検出する扱胴回転センサ102と、脱穀クラッチ72の入り切り動作を検出する作業クラッチセンサ103と、扱胴226の脱穀負荷基準値を初期設定する作業負荷設定器104と、走行クローラ2の回転数を検出する車速センサ105と、排藁チェン234が搬送する排藁の有無を検出する排藁センサ106と、刈取装置3の穀稈搬送装置224のうち穀稈掻込み機構237が搬送する刈取り穀稈の有無を検出する穀稈センサ107が接続されている。なお、扱胴回転センサ102は、扱胴226の回転数を検出する回転センサに代えて、扱胴226の回転トルクを検出するトルクセンサによって形成してもよい。
【0043】
また、図3及び図4に示す如く、脱穀回転コントローラ100の出力側には、出力系の各種アクチュエータとしての電磁シリンダ又は電動モータ類、即ち、エンジン20の燃料を調節するスロットルレバー108に連結するエンジン調速用電動モータ109と、走行用HST式油圧無段変速機42及び旋回用HST式油圧無段変速機43の変速出力を調節する変速アーム110に連結する走行変速用油圧シリンダ111と、脱穀クラッチ72を入り切り作動する作業クラッチ用油圧シリンダ112と、上述した脱穀変速用油圧シリンダ(作業調速アクチュエータ)88と、上述した選別駆動用電動モータ91と、上述した揺動駆動用電動モータ92が接続されている。
【0044】
次に、図5のフローチャートを参照して、脱穀回転制御態様を説明する。図5に示す如く、収穫作業が開始された場合、穀稈センサ107の刈取穀稈の有無検出値と、排藁センサ106の排藁の有無検出値と、作業クラッチセンサ103の脱穀駆動停止検出値を読み込む(S1)。そして、刈取穀稈又は排藁があるときには(S2;yes)、エンジン回転センサ101のエンジン回転数検出値と、扱胴回転センサの扱胴回転数検出値と、車速センサ127の車速検出値(走行クローラ2の回転速度)と、作業負荷設定器104の作業負荷基準値を読み込む(S3)。
【0045】
エンジン回転センサ101のエンジン回転数検出値と、扱胴回転センサの扱胴回転数検出値と、車速センサ127の車速検出値(走行クローラ2の回転速度)と、作業負荷設定器104の作業負荷基準値に基づき、目標脱穀速度(適正扱胴回転数)が演算される(S4)。現在の扱胴226の回転速度(回転数)が目標脱穀速度(適正扱胴回転数)であるか否かが判断される(S5)。
【0046】
現在の扱胴226の回転速度(回転数)が目標脱穀速度(適正扱胴回転数)よりも早い(大きい)ときには(S6;yes)、脱穀速度(扱胴226の回転速度)を減速する脱穀速度減速制御が実行される(S7)。一方、現在の扱胴226の回転速度(回転数)が目標脱穀速度(適正扱胴回転数)よりも遅い(小さい)ときに(S6;no)、現在の扱胴226の回転速度(エンジン20の回転数)が脱穀作業許容範囲内で過負荷ではないと判断されたときには(S8;no)、脱穀速度(扱胴226の回転速度)を増速する脱穀速度増速制御が実行される(S9)。
【0047】
即ち、前記ステップ7及びステップ9において、エンジン20の回転数の検出結果に基づき、走行変速機としての無段変速機42,43の変速出力を変更することなく、扱胴調速手段としての無段変速用遊星ギヤ機構74を増減速制御して扱胴226の回転数を維持するように制御するから、エンジン20の回転低下によって、収穫作業能率が著しく低下するのを防止できる。また、扱胴226の回転数が低下するのを防止できる。その結果、エンジン20の回転数が大きく低下しやすい過負荷作業(湿田での収穫作業又は圃場の枕地での方向転換等)においても、車速が著しく低下するのを防止しながら、扱胴226の脱穀性能を簡単に維持できる。
【0048】
また、一方、現在の扱胴226の回転速度(回転数)が目標脱穀速度(適正扱胴回転数)よりも遅い(小さい)ときに(S6;no)、現在の扱胴226の回転速度(エンジン20の回転数)が脱穀作業許容範囲外で過負荷であると判断されたときには(S8;yes)、走行機体1の移動速度を低下させる走行変速減速制御が実行される(S10)。次いで、脱穀速度(扱胴226の回転速度)を減速する脱穀速度減速制御が実行される(S11)。
【0049】
即ち、エンジン20の出力負荷が所定以上に増大した過負荷作業状態に移行したときに、前記ステップ10において、走行変速機としての走行用HST式油圧無段変速機42を減速制御して走行機体1の移動速度を低下させる走行変速(車速)減速制御が実行され、且つ前記ステップ11において、扱胴調速手段としての無段変速用遊星ギヤ機構74を減速制御して扱胴226の回転数を低下させる脱穀速度(扱胴回転)減速制御が実行される。
【0050】
したがって、エンジン20の負荷が著しく増大しても、扱胴226等の伝動構造の損傷を未然に防止でき、エンジン20の出力不足(エンジン20の停止)によって生じる刈取穀稈搬送トラブル等も未然に防止できる。例えば、刈取装置3の穀稈搬送装置224の回転数、又は脱穀装置5のフィードチェン6の回転数が作業許容回転数以下に低下する状態にまで、エンジン20の負荷が大幅に増大しても、穀稈搬送装置224又はフィードチェン6に伝達するエンジン20の出力を確保でき、穀稈搬送装置224又はフィードチェン6を適正に駆動できる。穀稈搬送装置224又はフィードチェン6の穀稈搬送性能等を簡単に維持できる。
【0051】
さらに、収穫作業中に穀稈の刈取作業が中断された場合、例えば圃場の枕地で方向転換させる場合、又は穀粒タンク7の穀粒を排出する場合、又は脱穀装置5を作動させて手扱ぎ作業を実行する場合等において、刈取穀稈又は排藁がなくなったときには(S2;no)、排藁センサ106又は穀稈センサ107の検出結果に基づき、一定時間経過後に(S12;yes)、脱穀変速用油圧シリンダ88が作動して、脱穀変速用油圧モータ87によって無段変速用遊星ギヤ機構74が逆転制御され、無段変速用遊星ギヤ機構74の出力回転数がほぼ零に変更され、扱胴226を停止させる扱胴停止制御が実行される(S13)。
【0052】
ステップ13において、扱胴226と、刈取装置3と、フィードチェン6が停止した場合、揺動選別盤227と唐箕ファン228の駆動が継続されて、揺動選別盤227部の脱粒物の比重選別及び風選別が続行され、選別精度が低下するのを防止している。なお、刈取穀稈又は排藁がなくなったときに(S2;no)、排藁センサ106又は穀稈センサ107の検出結果に基づき、一定時間経過後に(S12;yes)、作業クラッチ用油圧シリンダ112を作動させて、脱穀クラッチ72を切り作動させ、扱胴226を停止させることもできる。
【0053】
次いで、前記ステップ13の扱胴停止制御から一定時間経過後に(S14;yes)、揺動駆動用電動モータ92を停止させる揺動選別停止制御が実行され(S15)、揺動選別盤227が停止して、揺動選別盤227の比重選別作業が中断される。さらに、前記ステップ15の揺動選別停止制御から一定時間経過後に(S16;yes)、選別駆動用電動モータ91を停止させる唐箕停止制御が実行され(S17)、唐箕ファン228が停止して、唐箕ファン228の風選別作業が中断される。
【0054】
例えば、圃場の枕地で方向転換させる場合、又は穀粒タンク7の穀粒を排出する場合、又は脱穀装置5を作動させて手扱ぎ作業を実行する場合等において、収穫作業(手扱ぎ作業)中、穀稈の刈取作業が一定時間以上中断され、又はフィードチェン6の送り始端側への手扱ぎ用の穀稈の供給作業が一定時間以上中断され、又は排藁チェン234の排藁搬送が一定時間以上中断されることによって、扱胴226と、刈取装置3と、フィードチェン6が停止し、一定時間経過した後、揺動選別盤227が停止し、次いで、一定時間経過した後、唐箕ファン228が停止する。その結果、揺動選別盤227又は唐箕ファン228が停止するときに、一番コンベヤ231又は二番コンベヤ232に落下する藁屑量又は塵量を低減でき、穀粒の選別精度を高精度に維持できる。
【0055】
したがって、エンジン20の出力負荷を軽減して、又は脱穀装置5の駆動騒音を低減して、圃場の枕地での方向転換等において、走行機体1を移動できる。一方、エンジン20の無駄な出力をなくし、且つ刈取装置3又は脱穀装置5又はエンジン20等の駆動騒音を低減できる。例えば、走行機体1を所定位置に停止させて、穀粒タンク7から穀粒を排出できる。また、走行機体1を所定位置に停止させて、手扱ぎ作業を作業者ペースで実行することができる。なお、手扱ぎ作業状態を検出する手扱ぎ検出手段を設け、作業者が手作業でフィードチェン6の送り始端側に刈取穀稈を供給する手扱ぎ作業において、手扱ぎ検出手段の検出結果に基づき、前記ステップ12乃至17の自動制御を実行させることもできる。
【0056】
図1、図4及び図5に示す如く、走行部としての走行クローラ2を有する走行機体1と、走行機体1に搭載したエンジン20と、刈取装置3と、扱胴226を有する脱穀装置5を備え、エンジン20の動力を扱胴226に伝達する駆動経路中に扱胴調速手段としての無段変速用遊星ギヤ機構74を設けたコンバインにおいて、脱穀装置5から排出される排藁を検出する排藁センサ106を備える構造であって、前記排藁がなくなったことを排藁センサ106が検出したときに、排藁センサ106の検出結果に基づき無段変速用遊星ギヤ機構74を制御して、扱胴226を低速作動又は停止制御するように構成している。
【0057】
したがって、圃場の枕地で走行機体1を次行程作業位置に回行させる方向転換作業のときに、湿田等において旋回走行負荷が過大に発生しても、排藁センサ106の検出結果に基づき、扱胴226を低速作動又は停止させることによって、エンジン20から走行クローラ2に伝達する動力不足を回避できる。また、走行機体1に搭載した穀粒タンク7の穀粒を排出させる場所(農道に隣接した畦際)に移動して、トラックの荷台等に穀粒タンク7内の穀粒を排出させる等の軽負荷作業において、排藁センサ106の検出結果に基づき、前記軽負荷作業に必要な出力を確保できる範囲で、エンジン20の回転数を低下させることができる。即ち、穀粒タンク7から穀粒を排出させる軽負荷作業のときには、穀稈を刈取り脱穀する収穫作業中よりもエンジン20の出力を軽減でき、燃費を向上できる。
【0058】
図4及び図5に示す如く、扱胴調速手段として遊星ギヤ機構74を設け、遊星ギヤ機構74を逆転出力させる変速アクチュエータとしての脱穀変速用油圧シリンダ88を備え、脱穀変速用油圧シリンダ88によって遊星ギヤ機構74を逆転出力させて、扱胴226を停止させるように構成している。したがって、エンジン20の回転数の変動に関連させて、遊星ギヤ機構74の変速操作によって扱胴226の回転数を簡単に制御できる。脱穀性能を維持しながら、エンジン20を効率よく運転できる。なお、エンジン20の負荷が著しく変動しても、扱胴226等の伝動構造の損傷を未然に防止でき、エンジン20の出力不足(エンジン停止)によって生じる脱穀トラブル等も未然に防止できる。例えば、脱穀装置5の回転数が作業許容回転数以下に低下する状態にまで、エンジン20の負荷が大幅に増大しても、脱穀装置5に伝達するエンジン20の出力を確保でき、脱穀装置5を適正に駆動でき、脱穀性能等を簡単に維持できる。
【0059】
図4及び図5に示す如く、脱穀装置5にエンジン20の出力を伝達するVベルト71を備えた構造であって、Vベルト71と扱胴226の連結途中に遊星ギヤ機構74を配置して、エンジン20の出力によって、Vベルト71及び遊星ギヤ機構74を介して、扱胴226を回転させるように構成している。したがって、ベルトテンションローラ構造の脱穀クラッチ72を入り切り操作するときに、扱胴226の回転を低下させることによって、脱穀クラッチ72の入り切りに伴うVベルト71の損傷を低減できる。Vベルト71の点検交換等のメンテナンス作業を軽減できる。遊星ギヤ機構74の変速制御によって扱胴226の駆動と停止を繰返し行っても、Vベルト71を緊張させた状態で、扱胴226を停止できるから、Vベルト71の損傷を低減して耐久性を向上できる。例えば、手扱ぎ作業時、脱穀クラッチ72を継続状態に保持していても、排藁不在の検出によって遊星ギヤ機構74を変速制御して、扱胴226を停止できるから、作業者が脱穀装置5に穀稈を供給する手扱ぎ作業を、作業者のペースで実行でき、手扱ぎ作業性を向上できる。
【符号の説明】
【0060】
1 走行機体
2 走行クローラ(走行部)
3 刈取装置
5 脱穀装置
6 フィードチェン
20ディーゼルエンジン
71脱穀駆動Vベルト
74無段変速用遊星ギヤ機構(扱胴調速手段)
88脱穀変速用油圧シリンダ(変速アクチュエータ)
106排藁センサ
226扱胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部を有する走行機体と、前記走行機体に搭載したエンジンと、刈取装置と、扱胴を有する脱穀装置を備え、前記エンジンの動力を前記扱胴に伝達する駆動経路中に扱胴調速手段を設けたコンバインにおいて、
前記脱穀装置から排出される排藁を検出する排藁センサを備える構造であって、前記排藁がなくなったことを前記排藁センサが検出したときに、前記排藁センサの検出結果に基づき前記扱胴調速手段を制御して、前記扱胴を低速作動又は停止制御するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記扱胴調速手段として遊星ギヤ機構を設け、前記遊星ギヤ機構を逆転出力させる変速アクチュエータを備え、前記変速アクチュエータによって前記遊星ギヤ機構を逆転出力させて、前記扱胴を停止させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記脱穀装置に前記エンジンの出力を伝達するVベルトを備えた構造であって、前記Vベルトと前記扱胴の連結途中に前記遊星ギヤ機構を配置して、前記エンジンの出力によって、前記Vベルト及び前記遊星ギヤ機構を介して、前記扱胴を回転させるように構成したことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−187575(P2010−187575A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33611(P2009−33611)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】