説明

コンバイン

【課題】フィードチェンガイドの戻し忘れによる脱穀部のカバー損傷を防止する。
【解決手段】刈取部(5)で刈り取った穀稈の株元側を供給チェン(22)からシンクロチェン(69)とフィードチェン(21)先端部に供給するコンバインの刈取穀稈搬送装置において、シンクロチェン(69)に上から対向して穀稈を挟持するシンクロ挟持杆(84)とフィードチェン(21)先端部に上から対向して穀稈の株元を挟持搬送するフィードチェンガイド(83)を設け、シンクロ挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)を夫々穀稈保持姿勢と、フィードチェン(83)及びシンクロチェン(69)から離間する非保持姿勢とに切替可能に構成し、シンクロ挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)のうち何れか一方の姿勢切替に伴って他方の姿勢も切替る構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの機体前部には、穀稈を引き起こす引起装置と穀稈の根元を刈る刈刃及び刈り取った穀稈を後方の脱穀装置のフィードチェンへ送る搬送装置からなる刈取搬送装置を設けている。また、この搬送装置は右側で刈り取る穀稈を左側後方のフィードチェン側へ送る右側の搬送装置と左右中央で刈り取る穀稈を該右側の搬送装置へ合流させる中央搬送装置と左側で刈り取る穀稈を前記右側の搬送装置へ合流させる左側の搬送装置とから構成している。
【0003】
前記右側の搬送装置へ合流した穀稈は供給チェンに引き継がれ、供給チェンから、走行速度に同調して変速駆動されるシンクロチェンを介して、一定速度で駆動されるフィードチェンに引き継がれて脱穀装置で脱穀されるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−40144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインは、脱穀装置のメンテナンスのために、脱穀装置の側部に設けるフィードチェンを側方へ移動可能にしている。また、刈取部の内側のメンテナンスのために刈取部を左側を中心に側方へ回動して内側を開放可能にしている。
【0006】
これらのメンテナンス時に、フィードチェン先端部の上に設けるフィードチェンガイドとシンクロチェンの上側に設ける挟持杆を上方へ回動起立して、フィードチェンの側方移動や刈取部の側方回動が支障なく行えるようにしている。
【0007】
このフィードチェン先端部のフィードチェンガイドとシンクロチェン上の挟持杆は、コンバインを走行させて収穫作業を行う際には起立位置から両チェン上に倒した状態に戻すが、この戻し作業を怠ると、刈取部を上昇させた際にフィードチェンガイドが脱穀部のカバーに干渉して破損する問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明では、刈取部で刈り取った穀稈を刈取部の供給チェンからシンクロチェンを介してフィードチェンに引き継いで脱穀装置で脱穀するコンバインにおいて、フィードチェン先端部に設けるフィードチェンガイドとシンクロチェンに設ける挟持杆を、上方に起立させて脱穀装置や刈取部のメンテナンスを行った後に、再度収穫作業を行うに当たって挟持杆とフィードチェンガイドの戻し忘れを防ぎ、戻し忘れても脱穀部のカバーを破損する虞の無いコンバインの刈取穀稈搬送装置とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
即ち、請求項1に記載の発明は、脱穀装置(24)の外側部に設けたフィードチェン(21)の先端部に隣接する部位に、走行速度に同調して変速駆動するシンクロチェン(69)を設け、刈取部(5)で刈り取った穀稈の株元側を刈取部(5)側の供給チェン(22)からシンクロチェン(69)を介してフィードチェン(21)の先端部に引き継ぐコンバインの刈取穀稈搬送装置において、前記シンクロチェン(69)に上側から対向して穀稈を挟持する挟持杆(84)とフィードチェン(21)の先端部に上側から対向して穀稈の株元を挟持搬送するフィードチェンガイド(83)を設け、該挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)の夫々を、シンクロチェン(69)及びフィードチェン(21)に近接する穀稈保持姿勢と、フィードチェン(83)及びシンクロチェン(69)から離間する非保持姿勢とに姿勢切替可能な構成とし、該挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)のうちの何れか一方の姿勢切替に連動して他方の姿勢が切替る構成としたことを特徴とするコンバインとする。
【0010】
この構成で、収穫作業中は、供給チェン(22)まで搬送された穀稈が、シンクロチェン(69)と挟持杆(84)で挟持されながらフィードチェン(21)上をフィードチェンガイド(83)で受けてフィードチェン(21)先端部の送り作用を受けて、脱穀装置に供給されて脱穀される。そして、挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)を起立させて戻す際には、挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)のどちらか一方を倒伏操作するだけで他方も連動して起伏するので、倒伏操作が簡単である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記挟持杆(84)の基端部を枢支軸(84a)で刈取部(5)側に回動自在に取付け、該挟持杆(84)を引張バネ(87)の死点越えにより穀稈保持姿勢と非保持姿勢とに姿勢切替可能な構成とし、前記枢支軸(84a)にフィードチェンガイド(83)の基端部を軸支し、挟持杆(84)の非保持姿勢への姿勢切替に連動して、該挟持杆(84)と一体の連動体(85a)がフィードチェンガイド(83)に係合し、該フィードチェンガイド(83)を、その先端部が枢支軸(84a)よりも後側となる後上がり傾斜の非保持姿勢に切替わる構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとする。
【0012】
この構成で、収穫作業中にはフィードチェンガイド(83)が挟持杆(84)と関係なく上下動を行い、挟持杆(84)を引張バネ(87)の張力に抗して起立させるだけでフィードチェンガイド(83)も連動体(85a)の係合により引き連れて起立させる。倒伏させる場合には挟持杆(84)を支点越えさせて倒すだけで、後上がり傾斜姿勢で保持されていたフィードチェンガイド(83)が、連動体の係脱によって自重で倒伏する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記挟持杆(84)及びフィードチェンガイド(83)のうちのいずれか一方或いは両方の起立姿勢を検出する起立センサ(89)を設け、この起立センサ(89)の検出信号に基づいて、警報の吹鳴、又は警告の表示、又は刈取部(5)の上昇位置規制、又は脱穀装置(24)の駆動規制をする構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとする。
【0014】
この構成で、挟持杆(84)かフィードチェンガイド(83)のどちら或いは両方が起立姿勢の場合には、警報或いは警告表示がなされるか、刈取部(5)の上昇位置規制或いは脱穀装置(24)の駆動規制がなされ、挟持杆(84)又はフィードチェンガイド(83)を戻し忘れた状態で、刈取部(5)の上昇操作や脱穀装置(24)を駆動しての刈取収穫作業を行い脱穀装置(24)のカバーが破損するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によると、挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)の倒伏操作が簡単で、一方のみを倒伏して他方を起立させたままにして刈取部(5)を上昇してそのカバーに挟持杆(84)が当たったりフィードチェンガイド(83)が倒れて脱穀装置(24)のカバーに当たったりして破損するようなことが無い。
【0016】
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加えて、挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)を起立させる操作も簡単になる。
請求項3に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえに、挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)を起立したままで収穫作業を開始した場合の不都合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】コンバインの刈取部側面図である。
【図4】コンバインの刈取部側面図である。
【図5】コンバインの刈取部平面図である。
【図6】一部の拡大側断面図である。
【図7】一部の拡大側面図である。
【図8】一部の拡大側面図である。
【図9】動力伝動系統線図である。
【図10】コンバインの刈取部側面図である。
【図11】一部の拡大側面図である。
【図12】一部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1に示すのは、本発明実施例のコンバインであり、機体フレーム59、該機体フレーム59の下方位置に設けた走行装置60、前記機体フレーム59の上方位置に設けた脱穀装置24、該脱穀装置24の前右側位置に設けた操縦台6、機体フレーム59の前方位置に設けた刈取部5を備える。
【0019】
刈取部5は、基部を前記機体フレーム59側に回動自在に取付けた縦支持筒7の先端に取付け、この縦支持筒7を上下に回動する刈取上下シリンダ(図示省略)の伸縮で上下動自在に構成している。前記縦支持筒7の下部には左右方向の下部伝動筒8を固定し、該下部伝動筒8の左側に上方に起立する側部伝動筒9を、前記下部伝動筒8の右側に上方に起立する伝動機構を有しない側部フレーム10をそれぞれ設け、前記側部伝動筒9と前記側部フレーム10の上部を左右方向の上部伝動筒11により連結している。前記下部伝動筒8の左右両側位置には前後方向の取付杆12,12の基部を固定し、該取付杆12,12の先端には左右方向の刈刃フレーム13を固定し、該刈刃フレーム13には複数設ける前後方向の分草杆14の基部を左右に所定間隔を置いて固定する。
【0020】
前記各分草杆14の先端に分草体15をそれぞれ固定し、各分草体15の後方に分草した穀稈を引起す引起装置16をそれぞれ設け、前記各引起装置16の後方にはラグ式掻込装置17および株元掻込スターホイル18をそれぞれ設け、該株元掻込スターホイル18の下で横方向には穀稈の根部を切断する刈刃19を設ける。この刈刃19の上方には、切断された穀稈を左後方の引継点Aにまで搬送する株元側搬送装置20と穂先側搬送装置2を設ける。
【0021】
株元側搬送装置20は、図5に示すごとく、左株元側搬送装置20bと右株元側搬送装置20aとの間に中間株元側搬送装置20cを設け、前記右株元側搬送装置20aを緩やかな横傾きで左後方の引継点Aまで延設し、この引継点Aに至る前の中間位置で前記中間株元側搬送装置20cからの刈取穀稈を受け継いで合流させて搬送し、更に左側の左株元側搬送装置20bからの刈取穀稈と引継点Aで合流するようにしている。なお、株元側搬送装置20は、チェンと挟扼杆で穀稈を挟み込んで搬送する構成であるが、挟扼杆を図示省略している。
【0022】
穂先側搬送装置2は、各左株元側搬送装置20bと右株元側搬送装置20aと中間株元側搬送装置20cの上側において搬送方向を略平行にして設けている。右株元側搬送装置20aの上方に設ける穂先側搬送装置2は、引継点Aへ直線状に緩やかに傾斜させた前搬送部2aと引継点Aからフィードチェン21に沿う方向の後搬送部2bとで構成し、左株元側搬送装置20bの上方には左穂先側搬送装置3を、中間株元側搬送装置20cの上方には中間穂先側搬送装置4をそれぞれ設けている。
【0023】
穂先側搬送装置2の前搬送部2aと右株元側搬送装置20aとの搬送方向は側面視で平行にして穀稈を安定して横送りするようにしている。なお、穂先側搬送装置2の前搬送部2aと右株元側搬送装置20aとを平面視および側面視で少し傾けて非平行姿勢にして搬送中に穀稈を引き伸ばすようにしても良い。
【0024】
各穂先側搬送装置2は、チェンに搬送ラグRa,Rc,Rdを作用側で突出するようにしているが、各搬送ラグRa,Rc,Rdの移動軌跡の前端部が機体前側では刈刃19の上方で横一列に並ぶようにして穀稈を同時に掻き込むよう作用する。
【0025】
そして、穂先側搬送装置2の後搬送部2bの下方には供給チェン22を設け、この供給チェン22の下で引継点Aから穀稈の株元を挟持して送る調節チェン23を設けている。この調節チェン23は供給チェン22へ受け渡す穀稈の株元挟持位置を調整することによって、脱穀装置24の扱室への穀稈の穂先側の供給深さを調節するもので、始端側を中心に終端側を上下に移動調整出来るようにしている。
【0026】
穂先側搬送装置2の後搬送部2bと供給チェン22及び最上げ時における調節チェン23は側面視で斜め上方へ向けて平行に張設し、かつ、平面視においても後搬送部2bと供給チェン22及び最上げ時における調節チェン23の斜め後方へ向かう搬送方向が平行である。(図5参照)
図7は、フィードチェン21の前端引継部を側面視で示しているが、供給チェン22の終端搬送軌跡22cとシンクロチェン69の先端搬送軌跡69c及びフィードチェン21の先端搬送軌跡21cを平行にして供給チェン22からシンクロチェン69を介してフィードチェン21への穀稈の引継を円滑に行うようにしている。シンクリチェン69は、刈取部5側から動力の供給を受け、該刈取部5と共に走行速度に同調して変速駆動される構成としている。
【0027】
フィードチェン21及びシンクロチェン69には図10〜図12に示す如く、シンクロチェン69の上側に穀稈を挟持する挟持杆84を設け、フィードチェン21の先端部に穀稈を受けるフィードチェンガイド83を設けている。
【0028】
側部伝動筒9から斜め後方へ延ばした支持アーム91の先端にブラケット92を取り付け、このブラケット92に軸取付体93を取り付け、この軸取付体93のボス部に枢支軸84aを枢支し、枢支軸84aにフィードチェンガイド83の取付体83aを外嵌している。図示の実施例では枢支軸84aを直角に曲げて挟持杆84としているが、枢支軸84aと挟持杆84を別部材で構成し一体に溶接しても良い。
【0029】
枢支軸84aの端部には第一バネ取付体85をピン86で取り付け、ブラケット92に取り付けた第二バネ取付体88との間に引張バネ87を張設し、この引張バネ87の張力で挟持杆84をシンクロチェン69上に押圧した姿勢と起立した姿勢に支点越えして切換保持する。挟持杆84の起立姿勢はブラケット92に設けるストップ体90に挟持杆84が当接して保持される。なお、ストップ体90に代えて、供給ホルダをフィードチェンガイド83の取付体83aにあてて起立姿勢に保持するようにしても良い。刈取収穫作業状態においては、挟持杆84は引張バネ87によって、フィードチェンガイド83はフィードチェン21の上側に設けたフィード挟持杆21aによって下向き付勢状態で穀稈を保持するようにしている。
【0030】
また、第一バネ取付体85にはフィードチェンガイド83の取付体83aに連動体85aを設けて挟持杆84を起立させる際に連動体85aが取付体83aを下から押し上げてフィードチェンガイド83を起立姿勢にする。連動体85aはフィードチェンガイド83を倒した作業姿勢では取付体83aに作用しない位置に設けている。
【0031】
フィードチェンガイド83は、脱穀カバー24aを上方へ開放した状態で起伏回動を支障なく行え、起立状態で脱穀カバー24aよりも前に位置するようになる。また、フィードチェンガイド83の起立姿勢は後倒れの姿勢で挟持杆84を倒すと連動体85aの支持が無くなって自重でフィードチェン21上に倒れた状態となる。フィードチェンガイド83を前倒れ姿勢まで起立させても良いが、その際には挟持杆84の倒し動作に連動する係合部を設ける必要がある。
【0032】
ブラケット92には、挟持杆84が起立したことを検出する起立センサ89を設け、この起立センサ89が起立を検出すると、操縦台6に設けるモニタパネルに挟持杆84が起立であることを表示して警告したり、刈取部5の上昇を行えなくしたり脱穀装置24を駆動出来なくしたりして、挟持杆84及びフィードチェンガイド83が起立状態のまま刈取作業を行えないように構成している。
【0033】
穂先側搬送装置2は、前搬送部2aと後搬送部2bを別々のチェンで駆動すべく別構成体として、前搬送部2aのラグRaが描く軌跡と後搬送部2bのラグRbが描く軌跡が引継点Aで接近し同じ高さで移動するようにして穀稈の搬送引継ぎを円滑に行うようにしているが、前搬送部2aのラグRaに対して後搬送部2bのラグRbが若干下側或いは上側を移動するようにしても良い。また、後搬送部2bのラグRbが平面視で前搬送部2aの前搬送部ケース2acに接近して移動して前搬送部2aから後搬送部2bへの穀稈引継が良好に行われる。
【0034】
後搬送部2bは、図8に示す如く、上下に配置する板状の後搬送部ケース2bcに駆動スプロケット77とローラ76を軸支してラグRbを取り付けたチェン80を巻き掛けた構成で、チェン80を圧縮スプリングSPで回動付勢したテンションスプロケット78で張っている。引継側を固定のローラ76にすることで穀稈の巻き込みを少なくしラグRbの移動位置が一定になる。また、後搬送部ケース2bcの引継側には突出部75を形成し、穀稈をガイドしている。79はラグガイドである。尚、Uaは前搬送部2aの上側に設けた最上段の上右穂先側搬送装置、Ubは中間穂先側搬送装置4の上側に設けた最上段の上中穂先側搬送装置、Ucは左穂先側搬送装置3の上側に設けた最上段の上左穂先側搬送装置である。
【0035】
引継点Aには、左穂先側搬送装置3も接近して左側の刈取穀稈を合流しているが、その左穂先側搬送装置3の引継側回動中心と前搬送部2aの引継側回動中心が前後方向で横並びで横方向で後搬送部2bの引継側回動中心を挟むような位置関係にすることで穀稈引継が良好に行われる。この位置関係で、後搬送部2bの引継側回動中心は前搬送部2aの引継側回動中心と左穂先側搬送装置3の引継側回動中心よりも後側になる。
【0036】
前記上部伝動筒11には、下向き伝動筒25の上部を取付け、該下向き伝動筒25には前記各引起装置16の上部を取付け、該引起装置16の下部は分草杆14に取付ける。
刈取部5の左側に位置する側部伝動筒9の下側位置には内側に突出する側部横伝動筒26の基部を取付け、側部横伝動筒26の先側には上下方向の縦取付筒27を取付け、該取付筒27の上部には左穂先側搬送装置3のケースを取付け、その下側には前記左株元側搬送装置20bの駆動スプロケット81を設けている。
【0037】
前記側部伝動筒9に取り付けた支持フレーム28の先端部に従動軸29を軸支し、該従動軸29の上側にラグ式掻込装置17を装着し、該従動軸29の下側に株元掻込用のスターホイル18を装着し、該従動軸29の中間部に中間株元側搬送装置20bの従動スプロケットSPを装着している。
【0038】
横方向へ複数配列するラグ式穂先掻込装置17および株元掻込スターホイル18のうち中央側ものは前記下向き伝動筒25側から伝動するようにそれぞれ取付ける。
縦支持筒7の中間部に中央伝動筒30を立設し、この中央伝動筒30に後述する第二駆動軸44を内装している。
【0039】
刈取部5の右後側に作業者が搭乗する操縦台6を設けているが、その位置は、図5に示す如く、穂先側搬送装置2に接近して機体中央に寄せるようにコーナー部62を穂先側搬送装置2の傾斜方向に沿わせて切り欠いている。この操縦台6の後部には作業者が座る座席66を設け、その前側にコンバインの作動状態を示す表示パネル61を設け、中央側に走行装置60の変速を行うHST35の変速レバー63や脱穀装置24の駆動を断続する脱穀レバー65や刈取部5の駆動断続を行う刈取レバー67等を設ける操作パネル64を配置してコーナー部62には何も設けず、操縦台6が機体の前に近く中央になるようにしている。このような操縦台6の位置によって、作業者が穀稈の刈取位置を目視によって確認出来るようになり、刈り残しが無く操縦が容易になる。なお、操縦台6の周囲はキャビン68で覆い作業者が快適に操縦できるようにしている。PLは操向レバーである。
【0040】
次に、図9の動力伝動線図でエンジン34からの動力伝動状態を説明する。
エンジン34から静油圧式無段変速装置(HST)35へベルト伝動で伝動し、このHST35から走行装置60のトランスミッション36を駆動すると共に刈取部5側の入力軸である第一駆動軸37へベルト38を有する刈取クラッチを介して伝動する。第一駆動軸37はベベルギア組により縦支持筒7に内装する前駆動軸39を駆動し、さらに別のベベルギア組で供給駆動軸40を駆動している。供給駆動軸40には穂先側搬送装置2の後搬送部2bを駆動するスプロケット41と株元引継搬送装置22の駆動スプロケット42を装着している。
【0041】
前記前駆動軸39は、下部伝動筒8に内装する下部伝動軸43へとベベルギア組で動力を伝動するのであるが、その軸途中にベベルギア組で伝動する第二駆動軸44と第三駆動軸45を設けている。
【0042】
図6に断面図を示しているが、第二駆動軸44は前記中央伝動筒30に内装し、穂先側搬送装置2の前搬送部2aを駆動するスプロケット32を装着し、右株元側集束搬送装置20aを駆動するスプロケット33を装着し、カップリング74で前搬送部2aを取り外し可能にしている。また、第二駆動軸44は別のベベルギア組で調整チェン23を駆動するスプロケット46に伝動している。右株元側搬送装置20aの上下には、ラグ式掻込装置17と株元掻込スターホイル18を駆動するように装着している。この穂先側搬送装置2を駆動するスプロケット32と右株元側搬送装置20aを駆動するスプロケット33を第二駆動軸44に装着することで、搬送速度を同期する構成が簡単になる。
【0043】
第三駆動軸45には、ユニバーサルジョイントとチェン伝動47を介して別のラグ式掻込装置17と株元掻込スターホイル18を駆動すると共に中間穂先側搬送装置4を駆動するスプロケット48を装着している。
【0044】
下部伝動軸43は、両端で左右の上側の刈刃19を相対的に左右逆方向に摺動駆動し、側部伝動筒9に内装した第四駆動軸49にベベルギア組で動力を伝動し、この第四駆動軸49から変速入力軸50にベベルギア組で動力を伝動し、さらにベルト変速54を介して変速出力軸55へ伝動し、さらにギア伝動で上部伝動筒11に内装する第五駆動軸56へ動力を伝動する。第四駆動軸49には側部横伝動筒26内の駆動軸57と縦取付筒27内の駆動軸51のスプロケット81で左株元側搬送装置20bを駆動し、さらにラグ式掻込装置17と株元掻込スターホイル18を駆動し、左穂先側搬送装置3の駆動スプロケット53と左穂先側搬送装置3のさらに上に設ける上左穂先側搬送装置Ucの駆動スプロケット52を駆動軸51に装着している。
【0045】
第五駆動軸56は、下向き伝動筒25内の駆動軸58や別の下向き伝動筒内の駆動軸57,70,71にベベルギア組で動力を伝動して引起装置16の引起チェンを駆動する。
中央左の駆動軸57はさらにベベルギア組で中間穂先側搬送装置4のさらに上に設ける上中穂先側搬送装置Ubを駆動するスプロケット72を設け、中央右の駆動軸70はさらにベベルギア組で穂先側搬送装置2の前搬送部2aのさらに上に設ける上右穂先側搬送装置Uaを駆動するスプロケット73を設けている。
【0046】
次に上記コンバインでの収穫作業を説明する。機体を前進走行させると、各分草体15により分草し、分草された穀稈は引起装置16により引起され、引起された穀稈は根元が刈刃19により切断される際に、ラグ式掻込装置17および株元掻込スターホイル18により後方に掻込まれ、左右株元側搬送装置20a,20b及び中間株元側搬送装置20cにより株元が挾持され、穂先側搬送装置2と左穂先側搬送装置3及び中間穂先側搬送装置4により穂先側が搬送されて搬送通路を通って一箇所の引継点Aに搬送されて調整チェン23で供給チェン22への株元挟持位置を調整して供給チェン22へ引継がれ、さらにシンクロチェン69を介して脱穀室の側部のフィードチェン21の先端部に引継がれ、該フィードチェン21とフィード挟把杆21aにより株元側を挟持して搬送されて穂先側が脱穀装置24内部で脱穀される。
【符号の説明】
【0047】
5 刈取部
21 フィードチェン
22 供給チェン
24 脱穀装置
69 シンクロチェン
83 フィードチェンガイド
84 挟持杆
84a 枢支軸
85a 連動体
87 引張バネ
89 起立センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置(24)の外側部に設けたフィードチェン(21)の先端部に隣接する部位に、走行速度に同調して変速駆動するシンクロチェン(69)を設け、刈取部(5)で刈り取った穀稈の株元側を刈取部(5)側の供給チェン(22)からシンクロチェン(69)を介してフィードチェン(21)の先端部に引き継ぐコンバインの刈取穀稈搬送装置において、前記シンクロチェン(69)に上側から対向して穀稈を挟持する挟持杆(84)とフィードチェン(21)の先端部に上側から対向して穀稈の株元を挟持搬送するフィードチェンガイド(83)を設け、該挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)の夫々を、シンクロチェン(69)及びフィードチェン(21)に近接する穀稈保持姿勢と、フィードチェン(83)及びシンクロチェン(69)から離間する非保持姿勢とに姿勢切替可能な構成とし、該挟持杆(84)とフィードチェンガイド(83)のうちの何れか一方の姿勢切替に連動して他方の姿勢が切替る構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記挟持杆(84)の基端部を枢支軸(84a)で刈取部(5)側に回動自在に取付け、該挟持杆(84)を引張バネ(87)の死点越えにより穀稈保持姿勢と非保持姿勢とに姿勢切替可能な構成とし、前記枢支軸(84a)にフィードチェンガイド(83)の基端部を軸支し、挟持杆(84)の非保持姿勢への姿勢切替に連動して、該挟持杆(84)と一体の連動体(85a)がフィードチェンガイド(83)に係合し、該フィードチェンガイド(83)を、その先端部が枢支軸(84a)よりも後側となる後上がり傾斜の非保持姿勢に切替わる構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記挟持杆(84)及びフィードチェンガイド(83)のうちのいずれか一方或いは両方の起立姿勢を検出する起立センサ(89)を設け、この起立センサ(89)の検出信号に基づいて、警報の吹鳴、又は警告の表示、又は刈取部(5)の上昇位置規制、又は脱穀装置(24)の駆動規制をする構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−10634(P2012−10634A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149201(P2010−149201)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】