説明

コンバイン

【課題】簡単な構造で、穀粒回収タンクの突出部分の下面側と脱穀装置の上面側との間におけるデッドスペースを少なくして穀粒回収タンクの収容量を増大させることのできるコンバインを提供する。
【解決手段】脱穀装置5と穀粒回収タンク60とを機体左右方向に並設し、穀粒回収タンク60の上部に、脱穀装置5の上部側へ延出されて脱穀装置5の上側に重複する部分を設け、脱穀装置5の扱室上面側に位置する天板55を、扱室50の上面に沿う水平方向にスライド移動させることによって扱室50の上面側を開放可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前後方向に沿って扱胴を軸支した脱穀装置と、脱穀処理された穀粒を貯留する穀粒回収タンクとを、機体左右方向に並設し、前記穀粒回収タンクの上部に、前記脱穀装置の上部側へ延出されて脱穀装置の上側に重複する部分を設けてあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、穀粒回収タンクの上部を脱穀装置の上部側へ延出して部分的に重複するように構成したコンバインとして、従来では下記[1]及び[2]に示す技術が知られている。
[1]穀粒回収タンクの上部側に、脱穀装置側へ向けて突出形成された突出部分を設け、その突出部分の下面側を、穀粒回収タンクから離れる側ほど斜め上方に向かう傾斜面に形成することによって、脱穀装置の上面側を揺動開閉可能に構成したコンバイン(例えば、特許文献1参照)。
[2]穀粒回収タンクの上部側に、脱穀装置側へ向けて突出形成された突出部分を設け、その突出部分を、穀粒回収タンクの内奥側へ引き込み可能に構成して、突出部分の引き込み状態で脱穀装置の上面側を揺動開閉可能に構成したコンバイン(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−59号公報(段落〔0019〕、〔0020〕、図3、図4)
【特許文献1】特開2006−333784号公報(段落〔0019〕、〔0020〕、図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載の従来の構成によれば、穀粒回収タンクの突出部分の下面側を傾斜面に形成しているので、脱穀装置の上面側を揺動開閉することが可能であるが、この上面側の揺動開閉を許容するために比較的大きな空間部を残すように前記傾斜面を形成しなければならず、その傾斜面と脱穀装置の上面側との間に形成される空間部が大きい分だけ穀粒回収タンク側の収容量を増大することができない点で改善の余地がある。
【0005】
上記[2]に記載の従来の構成によれば、穀粒回収タンクの突出部分の下面側と脱穀装置の上面側とを接近させた状態に構成することができるので、空間の利用効率の面で優れているが、前記突出部分を出退移動させるための構造上の複雑さを招くという点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、簡単な構造で、穀粒回収タンクの突出部分の下面側と脱穀装置の上面側との間におけるデッドスペースを少なくして穀粒回収タンクの収容量を増大させることのできるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、機体前後方向に沿って扱胴を軸支した脱穀装置と、脱穀処理された穀粒を貯留する穀粒回収タンクとを、機体左右方向に並設し、前記穀粒回収タンクの上部に、前記脱穀装置の上部側へ延出されて脱穀装置の上側に重複する部分を設けてあるコンバインであって、
前記脱穀装置の扱室上面側に位置する天板を、扱室の上面に沿う水平方向にスライド移動させることによって前記扱室の上面側を開放可能に構成してあることを特徴とする。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のコンバインでは、扱室上面側に位置する天板を水平方向にスライド移動させることによって扱室の上面側を開放させるように構成したものであるから、扱室上面側の天板を上下方向に移動させるための空間を必要とせず、扱室上面側の天板とその上側に位置する穀粒回収タンクの重複部分との間における空間を極力小さなものに設定することができる。
これによって、穀粒回収タンク自体を扱室上面に位置する箇所から移動させるような構造の複雑化を招くことなく、穀粒回収タンクの容量を極力増大することができる利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
本発明のコンバインにおける第2の解決手段は、前記扱室の上面側と前記天板との間に、前後方向に沿うレールガイドを設けてあり、前記天板は、前記レールガイドに案内されて機体後方側へスライド移動自在に構成されていることを特徴とする。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明のコンバインでは、扱室上面側の天板をレールガイドに案内させて機体後方側へスライド移動させることができるので、スライド移動させる際の天板の姿勢を安定させて、扱室上面と穀粒回収タンクの重複部分との間における狭い空間での天板のスライド移動を、穀粒回収タンクや扱胴などとの接触を避けながら、楽に行ない易いという利点がある。
また、天板は機体後方側へ移動させるものであるから、前方側に存在する刈取部と干渉して操作し難くなることや、横側方へ移動させる場合のように機体幅からはみ出して邪魔になる虞も少ない。
【0011】
〔解決手段3〕
本発明のコンバインにおける第3の解決手段は、前記扱室内に設けられる受網は、前記扱胴の軸芯に沿って機体後方側へ抜き出し可能に構成してあることを特徴とする。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明のコンバインは、受網を扱胴の軸芯に沿って機体後方側へ抜き出し可能に構成してあるので、扱室からの受網の取り出しを、扱室の径方向外側周辺に受網取り出し用の大きな作業用スペースを必要とせずに行うことができる。
つまり、扱胴の軸芯周りにおける受網の面積は比較的大きいものであり、扱胴の径方向で受網を扱室の外方側へ取り出すには、その受網の出し入れのための大きな開口を扱室に形成したり、扱室周辺に大きな作業用スペースを確保する必要がある。そこでこの発明では、扱胴の軸芯方向視では面積の小さい形状であるという受網の形状の特性を利用して、その扱胴軸芯に沿って後方側へ抜き出すことができるように構成している。これにより、扱室に受網取り出し用の大きな開口を形成したり、扱室周辺に大きな作業用スペースを必要とせずに受網を扱室の外側へ抜き出して、受網のメンテナンス作業を行い易くなるという利点がある。
また、受網は機体後方側へ移動させるものであるから、前方側に存在する刈取部と干渉して抜き出し操作が行い難くなる虞も少ない。
【0013】
〔解決手段4〕
本発明のコンバインにおける第4の解決手段は、前記天板の扱室内面側に、扱室内で脱穀処理される被処理物の流動方向を案内する送塵弁を備え、この送塵弁を、被処理物の流動方向を変更調節可能な可動送塵弁と、その可動送塵弁よりも回転方向での上流側に設けられた固定送塵弁とで構成してあることを特徴とする。
【0014】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段4にかかる本発明のコンバインでは、固定送塵弁と可動送塵弁との組み合わせで送塵弁を構成したことにより、固定送塵弁での被処理物案内範囲と、可動送塵弁での被処理物案内範囲との総和で送塵弁全体の案内範囲を設定している。そのため、可動送塵弁だけの被処理物案内範囲としては、固定送塵弁を備えずに可動送塵弁のみで送塵弁を構成した構造のものに比べて狭く設定することができ、可動送塵弁と扱胴の回転軌跡との間隔を比較的狭く設定することが可能となる。
つまり、可動送塵弁は、円弧状の扱胴外周に沿って湾曲した形状の天板の扱室内面側で、上下軸芯周りで揺動して被処理物の案内方向を設定するものであるが、この可動送塵弁も扱室内面形状に沿って円弧状に形成されているので、可動送塵弁の周方向長さが長くなると、可動送塵弁の上下軸芯から遠い側の端部が大きく揺動したときに扱胴の回転軌跡と干渉してしまう虞がある。
このため、可動送塵弁の周方向長さが長いものでは、可動送塵弁の揺動作動範囲の全体が扱胴の回転軌跡と干渉しないように、可動送塵弁と扱胴外周との上下間隔を比較的大きく設定する必要があるが、この発明のように、可動送塵弁の他に固定送塵弁を併用することによって、可動送塵弁の上下軸芯からの周方向長さが短いものを採用しても、送塵弁としての所要の被処理物案内機構を発揮させることができる。
【0015】
したがって、可動送塵弁の上下軸芯からの周方向長さが短いものを採用し得ることによって、その可動送塵弁を極力扱胴の回転軌跡に近づけて配設することが可能となり、これに伴って扱室上面の天板の上下方向高さ位置を、より一層低く設定することができ、これに関連して穀粒回収タンクのより一層の容量増大にも役立つことになる。
また、可動送塵弁の上流側に固定送塵弁が位置していることで、扱室内で流動する被処理物を、可動送塵弁による処理物の案内方向側へ予め方向付けるように案内するので、可動送塵弁による処理物の案内をスムーズに行わせ易い点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】普通型コンバインの左側面図である。
【図2】普通型コンバインの平面図である。
【図3】普通型コンバインの背面図である。
【図4】脱穀装置の扱胴軸芯に直交する方向での断面図である。
【図5】脱穀装置を示す平面図である。
【図6】脱穀装置と穀粒回収タンクとの位置関係を示す斜視図である。
【図7】脱穀装置における受網の脱着構造を示す斜視図である。
【図8】原動部のラジエータカバーの取付構造を示す斜視図である。
【図9】原動部のラジエータカバーの取付構造を示し、(a)は閉塞状態を示し、(b)は開放状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1は、本発明に係る普通型コンバインの全体側面図、図2は全体平面図である。これらの図に示すように、本発明に係る普通型コンバインは、機体フレーム1の下側に左右一対のクローラ走行装置10,10を備えて自走機体を構成している。
この自走機体は、図2に示すように、機体フレーム1の前部に、エンジン20を装備した原動部2、及び原動部2の上側に運転座席30を備え、その前方側に操縦搭31を備えた運転部3を設けてある。
前記運転部3の後方側に脱穀装置5と穀粒回収部6とが機体横方向に並べて配設してあり、前記脱穀装置5の前部にフィーダ4Aが連結された刈取部4を備えている。
【0018】
〔刈取部の構成〕
前記刈取部4は、図1及び図2に示すように、搬送ケース40の内部にフィーダコンベヤ41を内装した前記フィーダ4Aを備えるとともに、このフィーダ4Aの前端部に連結されている前処理フレーム42に前処理装置4Bを支持させて構成してある。
前記フィーダ4Aの脱穀装置5に対する上下揺動操作により、前処理フレーム42の下部に位置するプラットホーム42aが地面付近に下降した下降作業状態と、前記プラットホーム42aが地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降作動可能に構成されている。
【0019】
前記前処理装置4Bは、前処理フレーム42の前部に位置して刈取り対象の植立穀稈を分草する左右一対のデバイダ43,43と、刈取り対象の植立穀稈の穂先側を掻き込む回転リール45と、刈取り対象の植立穀稈を刈り取るバリカン型の刈取装置44と、刈り取られた穀稈の全体をフィーダ4Aの前側に寄せてフィーダ4Aの搬送ケース40の入り口40aに送り込むように搬送するオーガ46とを備えて構成されている。
前記フィーダ4Aは、内部にスラット型のフィーダコンベヤ41を備え、前記オーガ46側から送り込まれた刈取り穀稈をフィーダ4Aの後端部に搬送し、この後端部に位置する排出口40bから脱穀装置5の扱室50に、刈り取られた穀稈の株元から穂先までの全体を供給するように構成されている。
【0020】
〔脱穀部の構成〕
前記脱穀装置5は、扱室50の内部に、機体前後向きの軸芯xを有した扱胴軸51を介して扱胴52、及び選別装置(図示せず)を配設してあり、扱胴軸51に伝達される脱穀駆動系の駆動力によって扱胴52を回転駆動して脱穀し、脱穀処理物を脱穀粒と排ワラ屑とに選別処理して、排ワラ屑を扱室50の終端下部の排塵口50aから機外に放出し、選別処理後の脱穀粒を前記穀粒回収部6の穀粒回収タンク60に供給するように構成してある。
【0021】
図3乃至図5に示すように前記扱室50は、、扱室50の前後両端側で、機体フレーム1上に立設された前後一対の縦枠部分12,12と、その縦枠部分12,12同士の上端側に連なる上部枠部分13とで、門形に形成された側部枠11を左右両側に備え、その左右の側部枠11の前端側に前壁(図外)を固定してあり、前記左右の側部枠11の後端側に後壁53を止めボルト53aで着脱可能に装着してある。
【0022】
また、前記左右の側部枠11のうち、左側の側部枠11の外側には、図1及び2に示すように、後方側の上下方向の軸芯y周りで左右揺動可能に設けられた上部横側壁54aと、その上部横側壁54aの前方側で左側の側部枠11に形成された図示しない係合部に嵌め込み状態に連結される前横側壁54bと、前記上部横側壁54a及び前横側壁54bの下方側で側部枠11に形成された図示しない係合部に対して嵌め込み状態に連結される下部横側壁54c,54cとが装着されている。
【0023】
尚、前記左側の側部枠11には、前記上部横側壁54a及び前横側壁54bと下部横側壁54c,54cとの間、及び、前記上部横側壁54aと前横側壁54bとの間、ならびに、下部横側壁54c,54c同士の間に相当する箇所に、図示しないが、側部枠11の前後の縦枠部分12,12同士に亘って、あるいは、側部枠11の上部枠部分13や機体フレーム1に対して連結される連結枠部材が設けてあり、その連結枠部材に、前記上部横側壁54aや前横側壁54b、及び下部横側壁54c,54cを嵌め込み状態に連結するための前記係合部が形成されている。
【0024】
前記上部横側壁54aは、扱胴52の横側部に形成された開口を開閉して扱胴52の周辺部分におけるメンテナンスを行えるように設けられたものであり、扱室50の横側部に形成された開口は、開放状態で扱胴52の横側方の全部、もしくは大部分が横側方に開放されるように前後及び上下の開口範囲を設定してある。
前記前横側壁54bは、フィーダ4Aの後端側の横側方に形成された開口を開閉して点検し易くするものであり、そのフィーダ4Aの後端側の横側方に形成された開口は、フィーダ4Aの後端側箇所の点検を行うに適当な大きさに設定してある。また、下部横側壁54c,54cは、選別装置の横側方に形成された開口を開閉して点検し易くするものであり、その選別装置の横側方に形成された開口は、選別装置部分の点検を行うに適当な大きさに開口範囲を設定されたものである。
前記左右の側部枠11のうち、右側の側部枠11の外側には、扱室50の右側面のほぼ全体を覆うように、平板状の右横側壁54dを溶接して固定してある。
【0025】
左右の側部枠11の上部に位置する上部枠部分13には、扱室50の上面側を構成する天板55が装着されている。
この天板55は、図3、4、及び図6に示すように、扱胴52の上部に相当する部分を、扱胴52の前後向きの軸芯xに沿う方向視で、扱胴52の回転軌跡Rの外周に沿って、円弧状に近い湾曲面状に膨出させた形状に形成してある。
【0026】
前記天板55の扱室内面側には、図4及び図5に示すように、扱室50内を流動する被処理物の流動方向を案内するための送塵弁56を設けてある。
この送塵弁56は、扱室50の天板55の固定位置に設けてある枢支軸56aの上下方向の枢支軸芯p1周りで揺動作動するように設けられた可動送塵弁56Aと、その可動送塵弁56Aよりも、被処理物の流動方向での上流側(図4における時計方向側)に位置して、天板55にボルト止めされた固定送塵弁56Bとの組み合わせで構成されている。
【0027】
これらの可動送塵弁56Aと固定送塵弁56Bとのうち、固定送塵弁56Bは、その内周縁56Baが図4に示すように扱胴52の軸芯xと同一軸芯周りの円弧であり、かつ扱胴52の回転軌跡Rとほぼ同一の曲率を有している。
これに対して可動送塵弁56Aの内周縁56Aaは、前記固定送塵弁56Bの内周縁56Baよりも大きな曲率半径を有した曲率の小さい円弧によって形成されている。これは、可動送塵弁56Aを前記枢支軸芯p1周りで回動させた際に、扱胴52の回転軌跡R内に入り込むことを避けるためである。これらの可動送塵弁56Aの内周縁56Aa及び前記固定送塵弁56Bの内周縁56Baは、何れも常に、扱胴52の回転軌跡Rの外側に位置して扱胴52と干渉しないように構成されている。
【0028】
そして、図5に示すように、前記固定送塵弁56Bは、扱胴52の外周における被処理物の移動方向(扱胴52の回転方向と同じ)で下流側ほど機体前後方向での後方側に位置する案内面56Bbを備えて、扱胴52の軸芯xに直交する面fに対して、前記案内面56Bbが上流側ほど機体前後方向での前方側に位置するように、比較的緩やかな傾斜角度θ1を有した傾斜姿勢で配設されている。
【0029】
前記可動送塵弁56Aは、固定送塵弁56Bの下流側に配設されるものであり、枢支軸56aに一体に連結された操作レバー56bの上下方向の枢支軸芯p1周りでの揺動操作に伴って、前記操作レバー56bに連結された一つの可動送塵弁56Aが前記枢支軸芯p1周りで揺動作動するように構成してある。そして、その一つの可動送塵弁56Aの上流側の端部近くと、他の可動送塵弁56Aの上流側の端部近くとを連結軸芯p2部分でピン連結する連結ロッド56Cを介して、他の可動送塵弁56Aも前記操作レバー56bの操作に伴って、夫々の枢支軸芯p1周りで揺動作動するように構成してある。
【0030】
扱胴52の軸芯xに直交する面fに対する可動送塵弁56Aの案内面56Abの傾斜角度θ2は、前記操作レバー56bが図5に示すように最も緩傾斜側に操作された状態でも、前記固定送塵弁56Bの案内面56Bbの傾斜角度θ1よりも大きな角度を有している。前記操作レバー56bを図5に示す状態から図中反時計回りに揺動操作するほど、傾斜角度θ2が大きくなり、最大で、図5に実線で示す位置での操作レバー56bによる可動送塵弁56Aの案内面56Abの傾斜角度θ2に、操作レバー56bの最大操作角度量αを加えた角度の傾斜となる。
【0031】
前記操作レバー56bは、その握り部が運転座席30の左側後方の近くに位置するように設けてあり、運転座席30に搭座する操縦者が座ったままで後を振り返って把持し操作することが可能であるように構成されている。操作レバー56bの調節操作位置は、図5に示すように、所定間隔毎に設けてある複数の係止孔56dに対して、操作レバー56bに装着されている連結ピン56cを択一的に抜き差し操作することによって、各調節操作位置で位置決めされるように構成してある。
【0032】
扱室50の内部に装備される扱胴52は、円筒状の直胴部分52Aの前側に先細りのテーパー胴部分52Bを連設してあり、このテーパー胴部分52Bに2条の螺旋状の掻込み羽根52Baが設けられている。
前記テーパー胴部分52Bの後方側に続く直胴部分52Aは、前記テーパー胴部分52Bと後端側の円板状部分52Cとの間で、前後方向に沿う6本のバー部材52Aaを周方向での所定間隔毎に架設することによってほぼ円筒状に構成されている。
そして、前記直胴部分52Aを構成する各バー部材52Aaには、夫々、扱胴52の半径方向での外方側へ向けて多数の扱歯52Abを立設してあり、各扱歯52Abの先端部の軌跡が前記扱胴52の回転軌跡Rとなるものである。この扱胴52は、その全体が、扱室50の後壁53を取り外すことによって、扱室50の後方側へ取り出し可能に構成されている。
【0033】
前記扱室50内で、前記扱胴52の下半側には、脱穀処理された被処理物中のワラ屑の漏下を抑制しながら穀粒が漏下することを許すように、選別用の多数の小孔が形成された受網57を設けてある。
この受網57は、図4及び図7に示すように、左右の側部枠11に支持され、扱胴52の軸芯xに沿う方向視でU字状に形成された保形枠58に対して、部分円弧状に湾曲した左右一対の受網57を前記軸芯xに沿う方向で抜き差しすることで着脱可能に構成されている。
前記受網57の着脱は、扱室50の後壁53を取り外すことによって、扱室50の後方側から着脱操作することが可能であるように構成されている。
【0034】
〔天板の開放構造〕
前記扱室50の上面側を構成する天板55は、前述したように、扱胴52の上部に相当する部分を、扱胴52の前後向きの軸芯xに沿う方向視で、扱胴52の回転軌跡Rの外周に沿って、円弧状に近い湾曲面状に膨出させてあるとともに、その膨出した部分の周辺に、左右の側部枠11の上部に位置する上部枠部分13に対して取り付けられる取付台座部分としての、後述するレールガイド55Aと立ち上がり段部55Bとを備えている。
【0035】
前記天板55のレールガイド55Aは、図4に示すように、左右の側部枠11における上部枠部分13の上面に接当する平坦ガイド面55Aaと前記上部枠部分13の横外側面に接当する横向きガイド面55Abとを、天板55の左右両側で、天板5の前後方向の全長に亘って形成してある。
天板55の前後両端部では、前記レールガイド55Aの平坦ガイド面55Aaと面一の平面部分が形成されているだけで、その平面部分よりも下方側には、前記横向きガイド面55Abに相当するような上下方向に沿う面は形成されていない。
【0036】
同図4に示すように、レールガイド55Aの左右方向で扱室50の中央側寄りの箇所には、平坦ガイド面55Aaの内端側から上方へ少し立ち上がった後、左右方向で扱室50の中央側へ向かう平面部分を有することにより、扱室50の内方側に空間部sを形成する立ち上がり段部55Bが形成されている。
この立ち上がり段部55Bは、その内方側の空間部sに、受網57の上部取付板57a、及び、保形枠58の上部止め板58a、ならびに、それらの上部取付板57a及び上部止め板58aを側部枠11の上部枠部分13に共締めする固定ボルト57cを位置させられるように構成してある。
また、前記受網57の上部取付板57aの横外側端縁には、立ち上がり突片57bが形成されていて、この立ち上がり突片57bが、前記立ち上がり段部55Bの扱室50の内方側に向く面に接当することで、前記レールガイド55Aによる天板55の案内作用の補助的な役割をも果たすことができる。
【0037】
前記天板55のレールガイド55Aは、そのレールガイド55Aの後端近くに設けた止め孔55Acと、側部枠11の上部枠部分13に形成してあるネジ止め用の固定孔13aとに挿通して螺合される固定用操作ボルト59を用いて連結固定してある。
【0038】
このように構成された天板55は、前記固定用操作ボルト59を操作して、側部枠11の上部枠部分13に形成してあるネジ止め用の固定孔13aから固定用操作ボルト59を取り外すことにより、図6に仮想線で示すように、天板55の全体を扱室50の後方側へ引き出すようにスライド移動させることができる。
この天板5のスライド移動の際に、前記レールガイド55Aの平坦ガイド面55Aaが左右の側部枠11における上部枠部分13の上面に接当し、前記レールガイド55Aの横向きガイド面55Abが前記上部枠部分13の横外側面に接当することによって、その天板55を扱室50の上面に沿う水平方向で機体後方側へ安定良くスライド移動させ易いものである。
【0039】
図4及び図7に示すように、受網57の下端側には、上下方向に沿うフランジ状板片57dが形成されており、このフランジ状板片57dを差し込み可能なレール状溝部58bが保形枠58の下部中央箇所で前後方向に沿って形成されている。
したがって、前記上部取付板57a及び上部止め板58aを側部枠11の上部枠部分13に共締めする固定ボルト57cを取り外すことにより、受網57を保形枠58のレール状溝部58bに案内させながら扱室50の後方側へ引き出すように操作することができる。
【0040】
〔穀粒回収部の構成〕
脱穀装置5の機体横方向に並べて配設される穀粒回収部6は、選別処理後の脱穀粒を貯留するための穀粒回収タンク60と、その穀粒回収タンク60内の穀粒を機外へ搬出するための搬送用オーガ61を備えている。
図2、3、及び図6に示されるように、前記穀粒回収タンク60には、その上部に、脱穀装置5の上部側へ延出されて、脱穀装置5の上側に重複するように設けられた突出部分62を設けてある。
【0041】
この突出部分62は、その下面側に、扱室50の天板55との間に、扱室50の天板55を水平方向の軸芯まわりで上下揺動させて扱室50の上面側を開放させることができるほどの上下方向の間隔を有していないが、前述したように天板55を前後方向にスライド移動させるには十分な間隙を有している。そして、天板55を扱室50の後方側へスライド移動させることによって開放された扱室50の上面側を覗き込むことが可能な空間的余裕を有している。
【0042】
〔その他〕
図2、及び図8、9に示すように、原動部2では、エンジン20を覆うエンジンボンネット21の上に運転座席30を搭載してあり、エンジンボンネット21の横外側部にはラジエータカバー22を設けてある。このラジエータカバー22は、エンジンボンネット21の前端部近くで、エンジンボンネット21部分に対して、ヒンジ金具23により上下方向の軸芯p3周りで左右揺動可能に装着されている。
そして、このラジエータカバー22の前端部には、エンジンボンネット21側に取り付けた姿勢維持用のバネ板材25と、ラジエータカバー22の端部側に、ヒンジ金具23の上下方向の軸芯p3と平行な軸芯p4回りで回動自在に取り付けた棒状の姿勢規制体24とにより、ラジエータカバー22を、閉塞した姿勢と、開放した姿勢との何れの側の姿勢位置でも姿勢維持されるように構成してある。
【0043】
つまり、バネ板材25には、バネ板材25を山形状に屈曲させて形成した2カ所の姿勢規制位置a,bが設けてあり、図8及び図9(a)に示すように、姿勢規制体24のラジエータカバー22側の軸芯p4から遠い側の端部が、姿勢規制体24のラジエータカバー22側の軸芯p4に近い側の姿勢規制位置aに係合している状態では、ラジエータカバー22は図示のようにエンジンボンネット21の横外側部を閉塞した状態に維持されている。
【0044】
図9(b)に示すように、ラジエータカバー22をヒンジ金具23の上下方向の軸芯p3回りで開放姿勢に姿勢変更すると、姿勢規制体24の端部は、ラジエータカバー22側の軸芯p4に近い側の姿勢規制位置aに係合していた状態から、バネ板材25を押し上げてラジエータカバー22側の軸芯p4から遠い側の姿勢規制位置bに移動し、その位置に係合保持されることで開放状態に姿勢維持されるように構成してある。
ラジエータカバー22を閉塞側へ操作すれば、再び図8及び図9(a)に示すようにエンジンボンネット21の横外側部を閉塞した状態に姿勢変更されて、その状態が維持される。
【0045】
[別実施形態の1]
上述の実施形態では、天板55を前後方向で扱室50の後方側へ移動させる構造のものを示したが、これに限らず、例えば、天板55を機体水平方向で横外側へスライド移動させたり、少し前後方向に動かした後に左右方向に動かすとか、逆に少し左右方向に動かしてから前後方向に動かすなど、水平方向での適宜の移動方向を採用してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0046】
[別実施形態の2]
上述の実施形態では、天板55の一部を利用してレールガイド55Aを構成したものを示したが、これに限らず、例えば、天板55とは別個のレールガイド55Aを設けたり、レールガイド55Aを扱室50側に固定して設けるなど、適宜の構造を採用しても良い。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0047】
[別実施形態の3]
上述の実施形態では、天板55として扱室50の上面側を全体的に覆う板材を示したが、これに限らず、例えば、天板55として扱室50の上面側と扱室50の横側面の一部を覆うように横側面部分の一部を兼ねる構造のものであってもよい。
また、天板55として扱室50の上面側を複数の部材で覆うように、複数の部材で構成された天板55を採用してもよい。この場合、各天板55毎に移動方向を前方側と後方側とか、横側方と後方側とかの別々の方向に移動させるように構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0048】
[別実施形態の4]
上述の実施形態では、扱胴52を、直胴部分52Aがバー部材52Aaで構成された構造のものを示したが、これに限らず、直胴部分52Aが円筒状に構成されたドラム状のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のコンバインとしては、前述した普通型のコンバインに限らず、自脱型のコンバインにも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
5 脱穀装置
50 扱室
52 扱胴
55 天板
55A レールガイド
56 送塵弁
56A 可動送塵弁
56B 固定送塵弁
57 受網
60 穀粒回収タンク
x 軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前後方向に沿って扱胴を軸支した脱穀装置と、脱穀処理された穀粒を貯留する穀粒回収タンクとを、機体左右方向に並設し、前記穀粒回収タンクの上部に、前記脱穀装置の上部側へ延出されて脱穀装置の上側に重複する部分を設けてあるコンバインであって、
前記脱穀装置の扱室上面側に位置する天板を、扱室の上面に沿う水平方向にスライド移動させることによって前記扱室の上面側を開放可能に構成してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記扱室の上面側と前記天板との間に、前後方向に沿うレールガイドを設けてあり、前記天板は、前記レールガイドに案内されて機体後方側へスライド移動自在に構成されている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記扱室内に設けられる受網は、前記扱胴の軸芯に沿って機体後方側へ抜き出し可能に構成してある請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記天板の扱室内面側に、扱室内で脱穀処理される被処理物の流動方向を案内する送塵弁を備え、この送塵弁を、被処理物の流動方向を変更調節可能な可動送塵弁と、その可動送塵弁よりも回転方向での上流側に設けられた固定送塵弁とで構成してある請求項1〜3のいずれか一項記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−63022(P2013−63022A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202176(P2011−202176)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】