説明

コンバイン

【課題】エアクリーナの頻繁なメンテナンスを抑えつつ、簡易な構成でエンジンへの清浄給気を確保することができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、原動部であるエンジン(21)およびその外側配置のラジエタ(22)を収容したエンジンルーム(7)の上に作業者が着座して操縦器具を操作するための操縦座席(11)を配置して構成され、上記操縦座席(11)の後方でエンジンルーム(7)の上部に中空フレーム(23)を設けてエンジン(21)の給気用のエアクリーナ(14)を取付け、このエアクリーナ(14)および上記ラジエタ(22)の機体外側部を覆いつつ外気を導入する防塵開口部(25a)を備えるラジエタカバー(25)を設け、その防塵開口部(25a)に面して上記中空フレーム(23)の一端を開口するとともに、同中空フレーム(23)を外気案内用ダクトとして上記エアクリーナ(14)に連通したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン吸気用のエアクリーナを備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(図4)に示されるように、エンジン吸気用のエアクリーナを備えるコンバインが知られている。このコンバインのエアクリーナは、エンジンルームの上で操縦座席の後ろ側に配置され、エンジンルームの外側面を覆うラジエータカバーの防塵網付き開口部に面して開口する吸気ダクトを備えることにより、圃場から機体外側に沿って舞い上がる塵埃を受けることなく、外気を導入することができるので、フィルタの目詰まりに対する煩わしいメンテナンス作業の頻度を低く抑えることができる。
【0003】
しかしながら、上記エアクリーナと下方のエンジンルームとの間には、外気を案内する吸気ダクトと、清浄処理した外気をエンジンに供給する給気ダクトとによる複雑なダクト貫通構造が必要となることから、部品点数および組付け工数の増加によるコスト増およびメンテナンス負荷を招くという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−161996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、エアクリーナの頻繁なメンテナンスを抑えつつ、簡易な構成でエンジンへの清浄給気を確保することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、作業者が着座して操縦器具を操作するための操縦座席(11)と、原動部であるエンジン(21)およびその外側に配置のラジエータ(22)を収容するエンジンルーム(7)とを上下に配置したコンバインにおいて、前記エンジンルーム(7)の上部における操縦座席(11)後方の部位に中空フレーム(23)を設け、該中空フレーム(23)にエンジン(21)の給気用のエアクリーナ(14)を取付け、このエアクリーナ(14)および上記ラジエータ(22)の機体外側部を覆いつつ外気を導入する防塵開口部(25a)を備えたラジエータカバー(25)を設け、上記中空フレーム(23)における防塵開口部(25a)に臨んだ一部位を開口するとともに、この中空フレーム(23)を外気案内用ダクトとして上記エアクリーナ(14)に連通したことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記中空フレーム(23)には、エアクリーナ(14)とエンジン(21)を連通する給気ホース(14a)挿通用の貫通孔(23c)を形成した請求項1に記載のコンバインとする。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記中空フレーム(23)の下面を上方へ窪ませて取付座(23d)を形成し、この取付座(23d)にエアクリーナ(14)取付用の取付ステー(14b)を装着した請求項1または請求項2に記載のコンバインとする。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記エンジンルーム(7)の上部を画成するエンジンカバー(24)の後縁部と前記中空フレーム(23)の前縁部を互いに重ねて接続した請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンバインとする。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記操縦座席(11)を機体の左右一側に配置し、この操縦座席(11)の機体内側位置に操作パネル(13)を支持するクラッチフレーム(15)を設け、前記ラジエータ(22)を支持するラジエータ支持フレーム(35)を設け、これらクラッチフレーム(15)とラジエータ支持フレーム(35)とにより前記中空フレーム(23)の両端を橋渡し状に支持した請求項1から請求項4のいずれかに記載のコンバインとする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明により、エアクリーナ(14)は、エンジンルーム(7)の上部における操縦座席(11)の後方の部位に設けた中空フレーム(23)によって支持され、この中空フレーム(23)におけるラジエータカバー(25)の防塵開口部(25a)に臨んだ部位を開口するとともに、この中空フレーム(23)が外気案内用ダクトとしてエアクリーナ(14)と連通することから、この中空フレーム(23)を介してラジエータカバー(25)の防塵開口部(25a)からエアクリーナ(14)に外気が導入される。したがって、上記構成のコンバインは、エンジンルーム(7)内に外気案内用の特別のダクト部材を要しない簡易な構成により、機体外側部に沿って舞い上がる塵埃の吸入が抑えられる結果、エンジン(21)に清浄な外気を供給できると共に、エアクリーナ(14)のメンテナンスのための作業負荷の軽減を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明により、請求項1に係る発明の効果に加え、エアクリーナ(14)からの給気ホース(14a)が中空フレーム(23)の貫通孔(23c)を通過して下方のエンジン(21)に接続されることから、従来の他のダクトやフレームを迂回する複雑な配管構造を簡素化することができる。
【0013】
請求項3に係る発明により、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、中空フレーム(23)の下面を上方へ窪ませて取付座(23d)を形成することで、この取付座(23d)の剛性が確保され、取付ステー(14b)を介してエアクリーナ(14)を強固に支持することができる。
【0014】
請求項4に係る発明により、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、エンジンルーム(7)の上に配置した中空フレーム(23)とエンジンカバー(24)の各前後端縁部が重ねられて接続されることから、エンジンカバー(24)の支持剛性を確保することができる。
【0015】
請求項5に係る発明により、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、前記中空フレーム(23)の一端がラジエータ支持フレーム(35)に、他端がクラッチフレーム(15)に支持されることから、その支持剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】操縦部の要部平面図
【図2】図1のA矢視図
【図3】エンジンルームの内部構成の側面図
【図4】図3の要部拡大図
【図5】中空フレームの内部構造を示す平断面図
【図6】ラジエータ部の正面図
【図7】シュラウドの平面図(a)、正面図(b)および側面図(c)
【図8】エンジンルームの上面図
【図9】エンジンルームの縦断面図
【図10】コンバインの側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図10に示すように、本発明に係るコンバインは、走行装置30を有した機体の前部に刈取装置34を備え、機体後部に左右配置の脱穀装置32および穀粒貯留装置33を備え、この穀粒貯留装置33の前側に上下構成の操縦部6およびエンジンルーム7等を備えて構成される。
【0018】
前記操縦部6およびエンジンルーム7周りについて詳細に説明すると、操縦部6は、その要部平面図を図1に示すように、機体の片側(図例は右側)に寄せて操縦座席11、フロントパネル12、サイドパネル13を配置し、また、操縦座席11の後側にエンジン給気用のエアクリーナ14を配置し、これら操縦座席11とエアクリーナ14の下側にエンジンルーム7を構成する。操縦座席11の機体内側には、クラッチフレーム15を設けてサイドパネル13を支持する。
【0019】
エンジンルーム7は、図1のA矢視図を図2に、および内部構成の側面図を図3にそれぞれ示すように、走行フレーム31に搭載したエンジン21と、その外側に配置したラジエータ22を収容し、エアクリーナ14を支持する中空フレーム23とエンジンカバー24とによって上部の操縦座席11側との間を仕切ってエンジンルーム7の上部を区画し、ラジエータ22に面する機体外側をラジエータカバー25によって覆う。また、必要により、プレクリーナ27を中空フレーム23に連通して脱穀装置の上方に設ける。
【0020】
図2に示すように、中空フレーム23は、軽量化とともにエンジンルーム7から操縦座席11に伝わる熱と音を低減するために樹脂材のブロー成型によって中空構造とし、その一端をラジエータ22を走行フレーム31上に支持するラジエータ支持フレーム35に、他端をクラッチフレーム15に支持して支持剛性を確保する。尚、上記ラジエータ支持フレーム35には、エンジン21で駆動される冷却風吸入用のファンの外周を囲うシュラウド28を支持する。
【0021】
ラジエータカバー25は、ラジエータ22の冷却のための外気導入用の第1防塵網25bを備えた防塵開口部25aを備えて機体外側部に沿って舞い上がる塵埃の進入を抑え、この防塵開口部25aの内側に間隔をおいて配置した第2防塵網36によって、吸入する外気を2重に濾過する構成としている。そして、中空フレーム23の機体外側端部(一端)に形成した開口23aを第2防塵網36の内側面に当接させて配置する。この中空フレーム23の機体外側端部近傍の上面には、エアクリーナ14の吸気口に連通する接続口23bを形成して吸気ダクトを兼ねることにより、部品点数削減による低コスト化が可能な複合部材として中空フレーム23を構成する。
【0022】
また、中空フレーム23には、エアクリーナ14からエンジン21に連通する給気ホース14aを挿通する貫通孔23cを形成することにより、給気ホース14aは、他のダクトやフレームを迂回する煩雑なホースレイアウトを要することなくエンジン21に給気することができる。
【0023】
また、中空フレーム23には、エアクリーナ14を強固に固定するために、図3の要部拡大図を図4に示すように、エアクリーナ14の取付ステー14bを固定する位置に、下面を上方へ窪ませることで剛性を確保しうる取付座23dを形成する。取付ステー14bは、中空フレーム23の上方に設けてエアクリーナ14を事前に中空フレーム23に取付けておくことにより、事後の部分構成部材としての組立てが容易となる。
【0024】
また、図4に示すように、中空フレーム23の前端縁には、その前面に機体左右方向の溝部37を形成し、この溝部37にエンジンカバー24の後端縁を嵌合してその前後両縁部を重ねて接続することにより、エンジンカバー24の剛性を確保し、かつ、操縦座席11に伝わるエンジンルーム7の熱気を遮断するためにシール部材24aを接続部に介設する。
【0025】
尚、図5に詳細構造を示すように、上記中空フレーム23の内部には、外気通過経路となる所定の機体前後幅および所定の機体左右幅を有する空間38が形成され、前記取付ステー14bを形成する下面から上方への窪みは、機体側面視において、この空間38を前後に区画するように配置される。
【0026】
すなわち、前記窪みの機体前側に第1通気経路38aを形成し、窪みの機体後側には第2通気経路38bが形成され、開口23aより中空フレーム内に導入された外気は、両経路38a,38bの何れかを通過して前記接続口23bよりエアクリーナ14に流入する。
第2通気経路38bよりも流路の断面積が大きい第1通気経路38aには、レゾネータとしての機能を有する仕切板39を複数配置する。この仕切板39により、中空フレーム23内に導入される外気の脈動を抑制し、操縦部6における騒音を低減することができる。
【0027】
図6に示すように、シュラウド28は、走行フレーム31からエンジンカバー24の上面まで一体成型し、同シュラウド28の上面28aと中空フレーム23とを接続することにより、特段の固定部材が不要となる。
【0028】
また、シュラウド28は、その上面図(a)、正面図(b)および側面図(c)を図7に示すように、ラジエータ22の幅位置でシュラウド28の両側端を前後に折り曲げて形成した側縁部28b,28cにより、ラジエータ22のフレームを要することなく剛性を確保できるとともに、エンジンルームの上面図を図8に示すように、ラジエータ22の正面側を機体側面方向に露出して構成できるので、機体外側からラジエータカバー25を開くだけで容易にメンテナンスすることができ、さらに、シュラウド28の一方の側縁部28cとクラッチフレーム15との間に連結部材32を設けることによってラジエータ22の倒れを防止することができる。
【0029】
また、ラジエータカバー25の内側には、エンジンルームの縦断面図を図9に示すように、シュラウド28によって画成される分離空間Sを形成することにより、エンジン21からの熱がラジエータカバー25に伝わりにくくなるので冷却効果を向上することができる。この分離空間Sは、燃料配管33、油圧配管34を配置することにより、燃料、作動油の温度上昇を抑え、また、バッテリーケーブル35を配置することにより、エンジン21の振動などによる被覆の破れに伴う火災を防止することができる。
【符号の説明】
【0030】
6 操縦部
7 エンジンルーム
11 操縦座席
13 サイドパネル
14 エアクリーナ
14a 給気ホース
14b 取付ステー
15 クラッチフレーム
21 エンジン
22 ラジエータ
23 中空フレーム
23a 開口
23b 接続口
23c 貫通孔
23d 取付座
24 エンジンカバー
24a シール部材
25 ラジエータカバー
25a 防塵開口部
36 ラジエータ支持フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が着座して操縦器具を操作するための操縦座席(11)と、原動部であるエンジン(21)およびその外側に配置のラジエータ(22)を収容するエンジンルーム(7)とを上下に配置したコンバインにおいて、
前記エンジンルーム(7)の上部における操縦座席(11)後方の部位に中空フレーム(23)を設け、該中空フレーム(23)にエンジン(21)の給気用のエアクリーナ(14)を取付け、このエアクリーナ(14)および上記ラジエータ(22)の機体外側部を覆いつつ外気を導入する防塵開口部(25a)を備えたラジエータカバー(25)を設け、上記中空フレーム(23)における防塵開口部(25a)に臨んだ一部位を開口するとともに、この中空フレーム(23)を外気案内用ダクトとして上記エアクリーナ(14)に連通したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記中空フレーム(23)には、エアクリーナ(14)とエンジン(21)を連通する給気ホース(14a)挿通用の貫通孔(23c)を形成した請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記中空フレーム(23)の下面を上方へ窪ませて取付座(23d)を形成し、この取付座(23d)にエアクリーナ(14)取付用の取付ステー(14b)を装着した請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記エンジンルーム(7)の上部を画成するエンジンカバー(24)の後縁部と前記中空フレーム(23)の前縁部を互いに重ねて接続した請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンバイン。
【請求項5】
前記操縦座席(11)を機体の左右一側に配置し、この操縦座席(11)の機体内側位置に操作パネル(13)を支持するクラッチフレーム(15)を設け、前記ラジエータ(22)を支持するラジエータ支持フレーム(35)を設け、これらクラッチフレーム(15)とラジエータ支持フレーム(35)とにより前記中空フレーム(23)の両端を橋渡し状に支持した請求項1から請求項4のいずれかに記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−70629(P2013−70629A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209787(P2011−209787)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】