説明

コンピュータリソース提供装置、コンピュータリソース提供方法

【課題】ユーザの要求に応じたコンピュータリソースを提供する。
【解決手段】ネットワークを介して接続された複数の物理マシンのコンピュータリソースをユーザ端末に利用させるコンピュータリソース提供装置が、ユーザ端末から、物理マシンと仮想マシンとのいずれかの提供要求を受信する提供要求受付部と、提供要求受付部が仮想マシンの提供要求を受信すると、物理マシンに仮想マシンを起動させ、起動させた仮想マシンをユーザ端末に利用させる仮想マシン管理部と、提供要求受付部が物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシンをユーザ端末に利用させる物理マシン管理部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、提供要求に応じてコンピュータリソースを提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザ端末から提供要求を受けて、予め用意した物理マシンにより構成される仮想環境に仮想マシンを起動させ、起動した仮想マシンをユーザ端末に利用させるコンピュータリソース提供サービスが存在する。クラウドサービスなどともよばれるこのようなサービスによれば、ユーザは自身で物理マシン等を用意しなくとも、コンピュータリソースを利用することができる。例えば、ユーザが何らかの新たなウェブサービスを行いたい場合、提供された仮想マシンにウェブサーバ、AP(アプリケーション)サーバ、DB(データベース)サーバ等を起動し、ウェブサービスを実行させることができる。特許文献1、2には、仮想化技術により物理マシンに起動した仮想マシンを管理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146161号公報
【特許文献2】特開2009−244999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仮想化技術では、例えばOS(Operating System)からハードウェアへの処理要求をエミュレートするオーバーヘッドがあるため、物理マシンの性能を十分に発揮することができない。このようなオーバーヘッドは、一般的にコンピュータリソースを利用する際には支障がない場合があるが、例えば高度の性能が要求されるような場合には無視できないことがある。このような場合、ユーザは自身で物理マシンを用意する必要があった。そこで、状況に応じてユーザが望む要求に応じて、適切なコンピュータリソースを提供できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、ユーザの要求に応じたコンピュータリソースを提供するコンピュータリソース提供装置、コンピュータリソース提供方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、ネットワークを介して接続された複数の物理マシンのコンピュータリソースをユーザ端末に利用させるコンピュータリソース提供装置であって、ユーザ端末から、物理マシンと仮想マシンとのいずれかの提供要求を受信する提供要求受付部と、提供要求受付部が仮想マシンの提供要求を受信すると、物理マシンに仮想マシンを起動させ、起動させた仮想マシンをユーザ端末に利用させる仮想マシン管理部と、提供要求受付部が物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシンをユーザ端末に利用させる物理マシン管理部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、複数の物理マシン毎に、物理マシンがユーザ端末に利用されているか否かを示す物理マシン情報が記憶されている物理マシン情報記憶部を備え、物理マシン管理部は、提供要求受付部が物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシン情報記憶部に記憶されている物理マシン情報に基づいて、複数の物理マシンのうち、ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在すると判定すると、物理マシンをユーザ端末に利用させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、ネットワークを介して接続された複数の物理マシンのうち、仮想マシンを起動することが定められた物理マシン毎に、物理マシンに起動させた仮想マシンがユーザ端末に利用されているか否かを示す仮想マシン情報が記憶されている仮想マシン情報記憶部を備え、仮想マシン管理部は、提供要求受付部が仮想マシンの提供要求を受信すると、仮想マシン情報記憶部に記憶されている仮想マシン情報に基づいて、物理マシンに起動された仮想マシンのうち、ユーザ端末に利用されていない仮想マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末に利用されていない仮想マシンが存在すると判定すると、仮想マシンをユーザ端末に利用させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、物理マシン管理部は、提供要求受付部が物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシン情報記憶部に記憶されている物理マシン情報に基づいて、複数の物理マシンのうち、ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在しないと判定すると、仮想マシン管理部に物理マシンの返却要求を送信し、仮想マシン管理部は、物理マシン管理部から物理マシンの返却要求を受信すると、仮想マシン情報記憶部に記憶されている仮想マシン情報に基づいて、仮想マシンがユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在すると判定すると、物理マシンを物理マシン管理部に返却することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、仮想マシン管理部は、提供要求受付部が仮想マシンの提供要求を受信すると、仮想マシン情報記憶部に記憶されている仮想マシン情報に基づいて、複数の仮想マシンのうち、ユーザ端末に利用されていない仮想マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末に利用されていない仮想マシンが存在しないと判定すると、物理マシン管理部に物理マシンの払い出し要求を送信し、物理マシン管理部は、仮想マシン管理部から物理マシンの払い出し要求を受信すると、物理マシン情報記憶部に記憶されている物理マシン情報に基づいて、ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在すると判定すると、物理マシンを仮想マシン管理部に払い出すことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、ネットワークを介して接続された複数の物理マシンのコンピュータリソースをユーザ端末に利用させるコンピュータリソース提供装置が、ユーザ端末から、物理マシンと仮想マシンとのいずれかの提供要求を受信するステップと、仮想マシンの提供要求を受信すると、物理マシンに仮想マシンを起動させ、起動させた仮想マシンをユーザ端末に利用させるステップと、物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシンをユーザ端末に利用させるステップと、を備えることを特徴とするコンピュータリソース提供方法である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、ネットワークを介して接続された複数の物理マシンのコンピュータリソースをユーザ端末に利用させるコンピュータリソース提供装置が、ユーザ端末から、物理マシンと仮想マシンとのいずれかの提供要求を受信する提供要求受付部と、提供要求受付部が仮想マシンの提供要求を受信すると、物理マシンに仮想マシンを起動させ、起動させた仮想マシンをユーザ端末に利用させる仮想マシン管理部と、提供要求受付部が物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシンをユーザ端末に利用させる物理マシン管理部と、を備えるようにしたので、ユーザの要求に応じたコンピュータリソースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるコンピュータリソース提供システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による提供要求入力画面の例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による物理マシン情報のデータ例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による払い出し物理マシン情報のデータ例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による仮想マシン情報のデータ例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態によるコンピュータリソース提供装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるコンピュータリソース提供システム1の構成を示すブロック図である。コンピュータリソース提供システム1は、ユーザ端末10と、複数の物理マシン20(物理マシン20−1、物理マシン20−2、物理マシン20−3、物理マシン20−4、物理マシン20−5、・・・)と、コンピュータリソース提供装置30と、ストレージ管理装置40と、ストレージ管理装置40に接続された複数のストレージ装置42(ストレージ装置42−1、ストレージ装置42−2、・・・)と、マシンイメージ管理装置50と、仮想ネットワーク管理装置60とのコンピュータ装置を備えており、これらのコンピュータ装置はネットワークを介して接続されている。複数の物理マシン20は同様の構成であり、特に区別しない場合には「−1」、「−2」等を省略して物理マシン20として説明する。複数のストレージ装置42は同様の構成であり、特に区別しない場合には「−1」、「−2」等を省略してストレージ装置42として説明する。
【0015】
ユーザ端末10は、コンピュータリソース提供装置30と、物理マシン20と、ストレージ管理装置40とにネットワークを介して接続されたコンピュータ端末であり、コンピュータリソース提供システム1によって提供されるコンピュータリソースを利用する。ユーザ端末10は、キーボードやマウス等である入力部、ディスプレイである表示部、出力部、制御部、記憶部等を備えている。ユーザ端末10は、ユーザからの操作入力に応じて、コンピュータリソース提供装置30にコンピュータリソースの提供要求を送信する。ユーザ端末10は、送信した提供要求に応じてコンピュータリソース提供装置30から送信されるコンピュータリソースの識別情報(例えば、IP(Internet Protocol)アドレス)に基づいて、自身に提供されたコンピュータリソースである物理マシン20にネットワークを介して接続し、利用することができる。ここでは、1台のユーザ端末10を示して説明するが、コンピュータリソース提供システム1には複数のユーザの複数のユーザ端末10が接続されていて良い。
【0016】
物理マシン20は、ユーザ端末10やコンピュータリソース提供装置30にネットワークを介して接続され、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ディスク等のコンピュータリソースを備えたコンピュータ装置である。物理マシン20のコンピュータリソースは、ユーザ端末10によって利用される。ここで、複数の物理マシン20のうち、定められた物理マシン20には仮想マシンが起動され、起動された仮想マシンがユーザ端末10によって利用される。他の物理マシン20には、仮想マシンが起動されずにユーザ端末10に利用される。本実施形態では、物理マシン20−1と、物理マシン20−2と、物理マシン20−3とには仮想マシンが起動されてユーザ端末10に利用され、物理マシン20−4と、物理マシン20−5とには仮想マシンが起動されずにユーザ端末10に利用される。
【0017】
コンピュータリソース提供装置30は、ネットワークを介して接続された複数の物理マ物理マシン20のコンピュータリソースをユーザ端末10に利用させるコンピュータ装置である。コンピュータリソース提供装置30は、提供要求受付部31と、物理マシン情報記憶部32と、物理マシン管理部33と、仮想マシン情報記憶部34と、仮想マシン管理部35とを備えている。
【0018】
提供要求受付部31は、ユーザ端末10から、物理マシンと仮想マシンとのいずれかの提供要求を受信する。具体的には、例えば提供要求受付部31はウェブサーバの機能を備えており、ユーザ端末10からの接続に応じて、コンピュータリソースの提供要求を受け付けるウェブページである入力画面をユーザ端末10に送信する。図2は、提供要求受付部31がユーザ端末10に送信する提供要求入力画面の例を示す図である。入力画面には、OS(符号a)、ソフトウェア(符号b)、コンピュータリソースのサイズ(符号c)、マシン種別(符号d)等の選択項目が表示される。
【0019】
OSは、提供されるコンピュータリソースにおいて動作させるOSを示し、複数のOSから選択可能である。ソフトウェアは、OS上で動作させるアプリケーションソフトウェア、サーバソフトウェア等のソフトウェアを示す。ここで、コンピュータリソース上で動作させるソフトウェアによっては、ライセンスの契約上、仮想マシンにおいて動作させることが禁止されている場合や、仮想マシン上で動作の保証がされていない場合がある。このようなソフトウェアが選択された場合には、マシン種別において仮想マシンが選択できず、物理マシンのみが選択できるように制御される。これにより、仮想マシンにおいて動作させることが禁止されているソフトウェアであっても、ネットワークを介して提供されるコンピュータリソースにおいて、ライセンス上の問題なく動作させることができる。
【0020】
コンピュータリソースのサイズは、提供されるコンピュータリソースであるCPU性能(動作周波数やコア数など)、メモリ容量、ディスク容量の大小に応じて定められたサイズの種別を示す。マシン種別は、仮想マシン、物理マシンとのいずれのコンピュータリソースの提供を要求するかを示す。ユーザは、例えば、提供されたコンピュータリソースにおいてウェブサーバやAPサーバ等を動作させて利用したい場合は、仮想マシンを選択することができる。一方、例えば、提供されるコンピュータリソース上において、ライセンス上、仮想マシンにおいて動作することが禁止されている、もしくは動作の保証がされていないソフトウェアを利用したい場合や、自身が利用する物理マシンと同一の物理マシン上に他のユーザが利用する仮想マシンが動作していることを避けたい場合等には、物理マシンを選択することができる。ユーザ端末10において、これらの選択項目が入力された後、符号eに示される提供要求送信ボタンが押下されると、入力された情報が含まれる提供要求が提供要求受付部31に送信される。
【0021】
物理マシン情報記憶部32には、複数の物理マシン20の識別情報毎に、その物理マシン20がユーザ端末10に利用されているか否かを示す情報が対応付けられた物理マシン情報が記憶されている。図3は、物理マシン情報記憶部32に記憶されている物理マシン情報のデータ例を示す図である。物理マシン情報には、物理マシン20を識別する物理マシンID毎に、提供先、CPU(動作周波数とコア数)、メモリ容量、ディスク容量が対応付けられた情報が含まれる。提供先は、対応する物理マシン20がユーザ端末10によって利用されているか否かを示す情報であり、仮想マシン管理部35によって仮想マシンが起動されてユーザ端末10に利用されている場合には「仮想マシン管理部」が対応付けられ、物理マシンとしてユーザ端末10に利用されている場合にはユーザIDが対応付けられ、利用されていない場合には「空き」であることを示す情報が対応付けられる。
【0022】
物理マシン管理部33は、提供要求受付部31が物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシン20をユーザ端末10に利用させる。ここで、利用させるとは、提供要求の送信元であるユーザ端末10に対して物理マシン20の識別情報(例えば、IPアドレス)を送信し、その物理マシン20において、そのユーザ端末10からの接続を許可し、管理者権限による操作を許可するように設定されていることをいう。例えば、物理マシン管理部33は、提供要求受付部31が物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシン情報記憶部32に記憶されている物理マシン情報に基づいて、複数の物理マシン20のうち、ユーザ端末10に利用されていない物理マシン20が存在するか否かを判定し、ユーザ端末10に利用されていない物理マシンが存在すると判定すると、その物理マシン20をユーザ端末10に利用させる。ここで、ユーザ端末10に利用されていない物理マシン20が存在するか否かは、提供先に「空き」が対応付けられている物理マシン情報が存在するか否かによって判定できる。
【0023】
また、物理マシン管理部33は、ユーザ端末10に利用されていない物理マシン20が存在しないと判定すると、仮想マシン管理部35に物理マシンの返却要求を送信する。すなわち、物理マシン管理部33が管理している物理マシン20のうちに空きがない場合でも、仮想マシン管理部35に払い出した物理マシン20のうちに空きがある場合がある。この場合、仮想マシン管理部35に払い出した物理マシン20を物理マシン管理部33に返却することによって、返却された物理マシン20をユーザ端末10に提供できる。
【0024】
また、物理マシン管理部33は、仮想マシン管理部35から物理マシンの提供要求を受信すると、物理マシン情報記憶部32に記憶されている物理マシン情報に基づいて、ユーザ端末10に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末10に利用されていない物理マシン20が存在すると判定すると、その物理マシン20を仮想マシン管理部35に払い出す。ここで、物理マシン20を払い出すとは、その物理マシン20の提供先に仮想マシン管理部35を対応付けて物理マシン情報記憶部32に記憶させ、その物理マシン20の管理を仮想マシン管理部35に行わせることをいう。物理マシン管理部33が払い出した物理マシン20は、仮想マシン管理部35から返却されるまで、物理マシンとしてユーザ端末10に利用させることはできない。
【0025】
仮想マシン情報記憶部34には、ネットワークを介して接続された複数の物理マシン20のうち、仮想マシンを起動することが定められた物理マシンを識別する物理マシンID毎に、その物理マシンに起動させた仮想マシンがユーザ端末10に利用されているか否かを示す仮想マシン情報が記憶されている。また、仮想マシン情報記憶部34には、物理マシン管理部33から仮想マシン管理部35に払い出された物理マシンを示す払い出し物理マシン情報が記憶される。図4は、払い出し物理マシン情報のデータ例を示す図である。払い出し物理マシン情報には、仮想マシン管理部35に払い出された物理マシン20を識別する物理マシンID毎に、その物理マシンの性能を示すCPU(動作周波数とコア数)と、メモリ容量と、ディスク容量との情報が対応付けられる。
【0026】
図5は、仮想マシン情報記憶部34に記憶される仮想マシン情報のデータ例を示す図である。仮想マシン情報には、物理マシン管理部33から払い出された物理マシン20を識別する物理マシンIDと、その物理マシンに起動された仮想マシンを識別する仮想マシンIDと、その仮想マシンに割り当てられたCPU(動作周波数とコア数)と、メモリ容量と、ディスク容量との情報が対応付けられる。
【0027】
仮想マシン管理部35は、提供要求受付部31が仮想マシンの提供要求を受信すると、物理マシン管理部33から払い出されている物理マシン20に仮想マシンを起動させ、起動させた仮想マシンをユーザ端末10に利用させる。ここで、利用させるとは、提供要求の送信元であるユーザ端末10に対して仮想マシンの識別情報(例えば、IPアドレス)を送信し、その仮想マシンにおいて、そのユーザ端末10からの接続を許可し、管理者権限による操作を許可するように設定されていることをいう。ここで、仮想マシン管理部35は、物理マシン管理部33から物理マシン20が払い出されると、その物理マシン20に、仮想化ソフトウェアをインストールさせ、仮想化ソフトウェアによって仮想化されたコンピュータリソース上に、仮想マシンを起動させる。
【0028】
例えば、仮想マシン管理部35は、提供要求受付部31が仮想マシンの提供要求を受信すると、仮想マシン情報記憶部34に記憶されている仮想マシン情報に基づいて、物理マシン20に起動された仮想マシンのうち、ユーザ端末10に利用されていない仮想マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末10に利用されていない仮想マシンが存在すると判定すると、その仮想マシンをユーザ端末10に利用させる。ここで、ユーザ端末10に利用されていない仮想マシンが存在するか否かは、仮想マシンの提供出に「空き」が対応付けられている仮想マシン情報が存在するか否かによって判定できる。また、提供要求にサイズが含まれる場合には、仮想マシン管理部35は、サイズに応じたコンピュータリソースに空きがあるか否かを判定する。
【0029】
また、仮想マシン管理部35は、ユーザ端末10に利用されていない仮想マシンが存在しないと判定すると、物理マシン管理部33に物理マシンの払い出し要求を送信する。すなわち、仮想マシン管理部35が管理している物理マシン20のうちに空きがない場合でも、物理マシン管理部33が管理する物理マシン20のうちに空きがある場合がある。この場合、物理マシン管理部33から新たな物理マシン20の払い出しを受けることによって、その物理マシン20に仮想マシンを起動させてユーザ端末10に提供できる。
【0030】
また、仮想マシン管理部35は、物理マシン管理部33から物理マシンの返却要求を受信すると、仮想マシン情報記憶部34に記憶されている仮想マシン情報に基づいて、仮想マシンがユーザ端末10に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、ユーザ端末10に利用されていない物理マシンが存在すると判定すると、その物理マシン20を物理マシン管理部33に返却する。ここで、仮想マシンがユーザ端末10に利用されていない物理マシンが存在するか否かは、同一の物理マシン上の仮想マシンの全てが「空き」であるか否かによって判定できる。またこの際、仮想マシン管理部35は、複数の物理マシン20に起動されている仮想マシンを移動(マイグレーション)させることによって物理マシンの空きができる場合、仮想マシンを移動させ、空きの状態になった物理マシンを、物理マシン管理部33に返却することもできる。ここで、物理マシン20を物理マシン管理部33に返却するとは、その物理マシン20を仮想マシン情報記憶部34に記憶されている払い出し仮想マシン情報から削除し、その物理マシン20の管理を物理マシン管理部33に行わせることをいう。仮想マシン管理部35が返却した物理マシン20は、物理マシン管理部33から払い出されるまで、仮想マシンとしてユーザ端末10に利用させることはできない。
【0031】
ストレージ管理装置40は、複数のストレージ装置42に接続されたコンピュータ装置であり、ストレージ管理部41を備えている。ストレージ管理部41は、コンピュータリソース提供装置30がユーザ端末10から受信した提供要求にストレージ要求が含まれる場合に、その提供要求に応じた容量のストレージ装置42を、ユーザに利用させる。
【0032】
マシンイメージ管理装置50は、コンピュータリソース提供装置30に接続されたコンピュータ装置であり、マシンイメージ管理部51を備えている。マシンイメージ管理部51の記憶領域には、予め定められたOS、ソフトウェア毎のマシンイメージが記憶されている。マシンイメージ管理装置50は、コンピュータリソース提供装置30からの要求に応じて、仮想ネットワーク管理部61に記憶されているマシンイメージを読み出し、送信する。
【0033】
仮想ネットワーク管理装置60は、コンピュータリソース提供装置30、物理マシン20に接続されたコンピュータ装置であり、仮想ネットワーク管理部61を備えている。仮想ネットワーク管理部61は、ユーザ端末10に提供されるマシン群の仮想ネットワークを構成する。すなわち、仮想ネットワーク管理装置60は、スイッチ等の設定により、ユーザ向けの閉域仮想ネットワーク(VLAN(Virtual Local Area Network))を設定する。
【0034】
次に、本実施形態によるコンピュータリソース提供システム1の動作例を説明する。図6は、コンピュータリソース提供装置30の動作例を示すフローチャートである。
コンピュータリソース提供装置30の提供要求受付部31は、ユーザ端末10から接続されると、提供要求の入力画面をユーザ端末10に送信する。ユーザ端末10は、コンピュータリソース提供装置30から送信された入力画面を表示し、ユーザから選択項目が入力されて提供要求送信ボタンが押下されると、入力された情報が含まれる提供要求をコンピュータリソース提供装置30に送信する。
【0035】
コンピュータリソース提供装置30の提供要求受付部31は、ユーザ端末10から送信された提供要求を受信する(ステップS1)。コンピュータリソース提供装置30の提供要求受付部31は、受信した提供要求に含まれるマシン種別が「物理マシン」であるか否かを判定する(ステップS2)。提供要求受付部31が、提供要求に含まれるマシン種別が「物理マシン」であると判定すると(ステップS2:YES)、物理マシン管理部33は、提供要求に含まれるサイズに応じた物理マシンの空きがあるか否かを判定する(ステップS3)。物理マシン管理部33が、提供要求に含まれるサイズに応じた物理マシン20の空きがあると判定すると(ステップS3:YES)、提供要求に含まれるOS、ソフトウェアに応じたマシンイメージをマシンイメージ管理装置50から読み出し、読み出したマシンイメージを、空きであると判定した物理マシン20にインストールし、その物理マシン20を起動させる。そして、その物理マシン20のIPアドレスをユーザ端末10に送信することにより、コンピュータリソースを提供する(ステップS6)。
【0036】
ステップS3において、物理マシン管理部33が、提供要求に含まれるサイズに応じた物理マシン20の空きがないと判定すると(ステップS3:NO)、仮想マシン管理部35に、仮想マシン管理部35が管理する物理マシンに空きがあるか否かを問い合わせる(ステップS4)。仮想マシン管理部35が、物理マシンの空きがないと判定すると(ステップS4:NO)、提供できるコンピュータリソースがないため、エラーとして処理を終了する(ステップS11)。仮想マシン管理部35が、物理マシンの空きがあると判定すると(ステップS4:YES)、物理マシン管理部33は、仮想マシン管理部35に物理マシンの返却要求を送信する(ステップS5)。物理マシンの返却要求に応じて、仮想マシン管理部35から物理マシン管理部33に物理マシンが返却されると、物理マシン管理部33は、返却された物理マシン20の提供先に「空き」を対応付けて物理マシン情報記憶部32に記憶させ、ステップS6に進む。
【0037】
提供要求受付部31が、提供要求に含まれるマシン種別が「物理マシン」でない(「仮想マシン」である)と判定すると(ステップS2:NO)、仮想マシン管理部35は、提供要求に含まれるサイズに応じた仮想マシンの空きがあるか否かを判定する(ステップS7)。仮想マシン管理部35が、提供要求に含まれるサイズに応じた仮想マシンの空きがあると判定すると(ステップS7:YES)、提供要求に含まれるOS、ソフトウェアに応じたマシンイメージをマシンイメージ管理装置50から読み出し、読み出したマシンイメージを、空きであると判定した仮想マシンにインストールし、その仮想マシンを起動させる。そして、その仮想マシンのIPアドレスをユーザ端末10に送信することにより、コンピュータリソースを提供する(ステップS10)。
【0038】
ステップS7において、仮想マシン管理部35が、提供要求に含まれるサイズに応じた仮想マシンの空きがないと判定すると(ステップS7:NO)、物理マシン管理部33に、物理マシン管理部33が管理する物理マシンに空きがあるか否かを問い合わせる(ステップS8)。物理マシン管理部33が、物理マシンの空きがないと判定すると(ステップS8:NO)、ステップS11に進み、エラーとして処理を終了する。物理マシン管理部33が、物理マシンの空きがあると判定すると(ステップS8:YES)、仮想マシン管理部35は、物理マシン管理部33に物理マシンの払い出し要求を送信する(ステップS9)。物理マシンの払い出し要求に応じて、物理マシン管理部33から仮想マシン管理部35に物理マシンが払い出されると、仮想マシン管理部35は、払い出された物理マシン20に仮想化ソフトウェアをインストールして、ステップS10に進む。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、コンピュータリソース提供装置30が仮想マシンと物理マシンとを同時に管理し、ユーザ端末10からの提供要求に応じて、仮想マシンまたは物理マシンのいずれかをユーザ端末10に提供することができる。すなわち、ユーザ端末10からの提供要求に応じて仮想マシンを起動して提供するとともに、場合によっては仮想マシンでなく、物理マシンをそのまま提供することができる。例えば、ライセンスの契約上、仮想マシンにおいて動作させることが禁止されている、もしくは仮想マシン上で動作の保証がされていないソフトウェアをユーザが利用したい場合には、物理マシンを提供し、その物理マシン上においてソフトウェアを動作させることができる。あるいは、例えば一台の物理マシンにおいて複数の仮想マシンが動作しているような場合、その仮想マシンのOSが管理するクロックが正確でない場合がある。このような場合、その仮想マシン上でベンチマークテストを行うような場合には性能測定の精度が悪くなる。このため、厳密な性能測定を行いたい場合には、仮想マシンよりも物理マシン上において行った方が精度の良い結果となる。このような場合、物理マシンを利用し、性能測定を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、例えば複数台の物理マシンの全てを物理マシンとしてユーザに提供するホスティングサービスのようなものに比べて、物理マシンに空きがある場合には仮想マシンを提供し、仮想マシンに空きがある場合には物理マシンを提供するといったように、仮想マシンと物理マシンとを融通し合うことにより、コンピュータリソースの利用効率を向上することができる。また、物理マシンを利用すれば、同一の物理マシン上で異なるユーザの仮想マシンが動作することがないため、その仮想マシンから攻撃される可能性をなくすことができる。また、同一の物理マシン上で動作する異なるユーザの仮想マシンがリソースを大量に消費した影響を受けることもない。
【0041】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりコンピュータリソースの提供を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0042】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 コンピュータリソース提供システム
10 ユーザ端末
20 物理マシン
30 コンピュータリソース提供装置
31 提供要求受付部
32 物理マシン情報記憶部
33 物理マシン管理部
34 仮想マシン情報記憶部
35 仮想マシン管理部
40 ストレージ管理装置
41 ストレージ管理部
42 ストレージ装置
50 マシンイメージ管理装置
51 マシンイメージ管理部
60 仮想ネットワーク管理装置
61 仮想ネットワーク管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された複数の物理マシンのコンピュータリソースをユーザ端末に利用させるコンピュータリソース提供装置であって、
前記ユーザ端末から、物理マシンと仮想マシンとのいずれかの提供要求を受信する提供要求受付部と、
前記提供要求受付部が仮想マシンの提供要求を受信すると、前記物理マシンに仮想マシンを起動させ、起動させた当該仮想マシンを前記ユーザ端末に利用させる仮想マシン管理部と、
前記提供要求受付部が物理マシンの提供要求を受信すると、前記物理マシンを前記ユーザ端末に利用させる物理マシン管理部と、
を備えることを特徴とするコンピュータリソース提供装置。
【請求項2】
前記複数の物理マシン毎に、当該物理マシンが前記ユーザ端末に利用されているか否かを示す物理マシン情報が記憶されている物理マシン情報記憶部を備え、
前記物理マシン管理部は、前記提供要求受付部が物理マシンの提供要求を受信すると、前記物理マシン情報記憶部に記憶されている前記物理マシン情報に基づいて、前記複数の物理マシンのうち、前記ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、前記ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在すると判定すると、当該物理マシンを前記ユーザ端末に利用させる
ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータリソース提供装置。
【請求項3】
前記ネットワークを介して接続された複数の物理マシンのうち、仮想マシンを起動することが定められた物理マシン毎に、当該物理マシンに起動させた仮想マシンが前記ユーザ端末に利用されているか否かを示す仮想マシン情報が記憶されている仮想マシン情報記憶部を備え、
前記仮想マシン管理部は、前記提供要求受付部が仮想マシンの提供要求を受信すると、前記仮想マシン情報記憶部に記憶されている前記仮想マシン情報に基づいて、前記物理マシンに起動された仮想マシンのうち、前記ユーザ端末に利用されていない仮想マシンが存在するか否かを判定し、前記ユーザ端末に利用されていない仮想マシンが存在すると判定すると、当該仮想マシンを前記ユーザ端末に利用させる
ことを特徴とする請求項2に記載のコンピュータリソース提供装置。
【請求項4】
前記物理マシン管理部は、前記提供要求受付部が物理マシンの提供要求を受信すると、前記物理マシン情報記憶部に記憶されている前記物理マシン情報に基づいて、前記複数の物理マシンのうち、前記ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、前記ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在しないと判定すると、前記仮想マシン管理部に物理マシンの返却要求を送信し、
前記仮想マシン管理部は、前記物理マシン管理部から物理マシンの返却要求を受信すると、前記仮想マシン情報記憶部に記憶されている前記仮想マシン情報に基づいて、仮想マシンが前記ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、前記ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在すると判定すると、当該物理マシンを前記物理マシン管理部に返却する
ことを特徴とする請求項3に記載のコンピュータリソース提供装置。
【請求項5】
前記仮想マシン管理部は、前記提供要求受付部が仮想マシンの提供要求を受信すると、前記仮想マシン情報記憶部に記憶されている前記仮想マシン情報に基づいて、前記複数の仮想マシンのうち、前記ユーザ端末に利用されていない仮想マシンが存在するか否かを判定し、前記ユーザ端末に利用されていない仮想マシンが存在しないと判定すると、前記物理マシン管理部に物理マシンの払い出し要求を送信し、
前記物理マシン管理部は、前記仮想マシン管理部から物理マシンの払い出し要求を受信すると、前記物理マシン情報記憶部に記憶されている前記物理マシン情報に基づいて、前記ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在するか否かを判定し、前記ユーザ端末に利用されていない物理マシンが存在すると判定すると、当該物理マシンを前記仮想マシン管理部に払い出す
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のコンピュータリソース提供装置。
【請求項6】
ネットワークを介して接続された複数の物理マシンのコンピュータリソースをユーザ端末に利用させるコンピュータリソース提供装置が、
前記ユーザ端末から、物理マシンと仮想マシンとのいずれかの提供要求を受信するステップと、
仮想マシンの提供要求を受信すると、前記物理マシンに仮想マシンを起動させ、起動させた当該仮想マシンを前記ユーザ端末に利用させるステップと、
物理マシンの提供要求を受信すると、前記物理マシンを前記ユーザ端末に利用させるステップと、
を備えることを特徴とするコンピュータリソース提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109640(P2013−109640A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255189(P2011−255189)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)