説明

コークス炉ドアのためのシール及びシールの使用法

コークス炉ドアのためのシールであって、炉チャンバに、ヘッド側で閉じられた環状の、外側にシール面を有するドアフレームと、該ドアフレームに固定可能なドアボディと、該ドアボディに固定された、ドア閉鎖時にドアフレームに位置する環状のシール面とが設けられており、この場合に、ドアボディに、シールエッジ(2)とスリット(3)とを有するコーム状のシール条片(1)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載のコークス炉ドアのためのシール及びシールの使用法に関する。
【0002】
コークス炉ドアにはシール性に関して特別な要請が課されており、この場合に信頼性良いシールが比較的長い運転時間後にも要求される。しかしながら、このような要求を満たしているのは数多くの公知のドア構造のうちわずかなものだけである。このことの主な理由は、ドアの著しい汚染、特にコークス炉ガスより、ドアフレームに設けられたシールエレメント及びシール面に堆積するタール状の構成成分によるシールエレメントの汚染にある。このような油脂性の残留物は通常は著しい作業手間に結びついている周期的に実施すべき洗浄手段を必要にし、シールエレメントを、公知のドア構造では比較的長い運転時間後には十分なシールがもはや保証されていないという困った状態に陥れる。この場合に、運転時にはじめて生じる、コークス炉ドアのたわみ線にシールエレメントを調整しなければならないということがさらに加わる。このようなたわみ線は、特にコークス炉ドアを比較的長く開放した場合、又は比較的長い運転時間後に変化するので、この形式のシールエレメントは後調節可能になっていなければならない。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許公開第3016165号明細書につきコークス炉ドアが公知である。このコークス炉ドアでは、金属のシール条片がハンマ打撃を介しておおまかに調節され、同時にばね圧着装置によりシールのための自動的な微調節が行われる。
【0004】
この金属のシール条片(ハンマ打撃条片)では、シール条片が望ましいたわみ方向に高い抵抗モーメント有している、すなわち、シール条片をドアフレームのシール面の起伏に十分に適合させることができず、このことがシール条片の突っ張り(Brueckenbildung)、ひいては非シール性をもたらすという問題が生じる。さらにハンマ打撃条片を起伏に適合させる場合にばね弾性的戻り(Rueckfederung)が生じる。付加的にシール面に隆起がある場合にはさらにシール条片に「上下振動」の形成がもたらされる。ハンマ打撃条片はフックボルトにより保持される。これらのフックボルトは最適に調節することができない。一方ではフックボルトは堅固に締め付けられなければならず、これにより、高い摩擦力によりハンマ打撃条片が対応した位置に保持される。他方では、摩擦力は、ハンマ打撃条片の押しやりが阻止されるほど大きくてはならない。
【0005】
同じことが、ばね圧着装置のばね力の調節についてもいえる。これらのばね力は、フックボルトの摩擦力が克服され、ハンマ打撃条片の抵抗モーメントが望ましいたわみ方向に克服されるように調節されなければならない。すなわち、全体として大きい力が必要であり、この力はまた高いドアロック力を要求する。高いドアロック力に基づき、ドアロックエレメント及びドアフレームの大きい負荷が生じる。ドアシールをあとから挿入する(後装着する)場合には、ドアロック装置は、必要な高い力に基づき新たに設計されなければならない。
【0006】
ハンマ打撃条片及び別のシールエレメントもまた一般に角隅で溶接される。シールエレメントを修繕する場合にも同様に溶接結合部が作製される。このような溶接結合では、溶接のために必要な温度に基づき、構造及び寸法変化が生じる。このような構造及び寸法変化はシールエレメントの手間のかかる後加工を必要にする。
【0007】
本発明の課題は、コークス炉ドアのためのシールにおいて、わずかなロック力でドアフレームの全ての起伏に適合することができるようになっており、これにより、後装着した場合にも公知のドアロック装置を使用することができるようなものを提供することである。さらにシールにおいて溶接結合を省略することが望ましい。
【0008】
この課題は、本発明の請求項1及び請求項13に記載の特徴により解決される。
【0009】
本発明の発展形が従属請求項に記載の特徴により得られる。
【0010】
シールエッジとスリットとを有する本発明によるコーム状のシール条片により、抵抗モーメントを望ましいたわみ方向に著しく減衰させることができる。このような減衰は、スリット深さ、スリット幅並びにスリット数に関係している。スリット深さ、スリット幅、スリット数並びに材料厚さの対応した設計により、コーム状のシール条片のシールエッジは簡単に変形可能であり、ひいてはドアフレームのシール面に場合によっては起こり得る起伏に極めて良好に適合させることができる。コーム状のシール条片のこのような適合能力に基づきシール作用が決定的に改善される。
【0011】
前記スリットは、あらゆる幾何学的な形状に構成されていてよい。スリットの、シールエッジに向かい合った端部をウェブにより閉じられた形に構成することも可能である。この構成の場合にも抵抗モーメントが望ましいたわみ方向に減衰される。スリット幅が、シールエッジに向かい合った端部で減じられた形で構成されていてもよく、これにより、よりわずかなスリット幅によりコーム状のシール条片がたわんだ場合にスリットの向かい合った側部が接触するやいなや抵抗モーメントが変更される。
【0012】
コーム状のシール条片を、ねじ、圧着ディスク又はばね、若しくは圧着条片により点状に固定することができる。圧着条片により、点状の圧着力が圧着条片長さにわたって一様に分配される。
【0013】
コーム状のシール条片の「コーム歯」を打撃することにより、シールエッジがドアフレームのシール面に対して次のように押しやられる、すなわち、シールエッジがシールするようにドアフレームに載置されるように押しやられる。圧着ディスク若しくは圧着条片により形成される摩擦力が、コーム状のシール条片のシールエッジが、比較的わずかな抵抗モーメントに基づきばね弾性的に戻ることができないことがもたらされる。
【0014】
本発明によるコーム状のシール条片は、新しいコークス炉ドアのためにも既存のコークス炉ドアのためにも使用することができる。ハンマ打撃条片を有するコークス炉ドアでは、提供されているハンマ打撃条片がコーム状のシール条片に対して交換されるだけでよい。後装着若しくは修繕時には、提供されているハンマ打撃条片を必ずしも交換する必要はない。コーム状のシール条片をハンマ打撃条片に対して付加的に取り付けることも可能である。この場合にはコーム状のシール条片に固有の固定装置を設けるか、又はハンマ打撃条片に提供されている固定装置を使用することができる。
【0015】
本発明によるコーム状のシール条片は、シールエレメントを修繕するためによく適している。修繕時には、例えば提供されているシール条片のシールエッジ又はドアフレームのシール面が損傷されているか若しくは摩耗している場合には、コーム状のシール条片を損傷箇所に取り付けることにより、完全なシール機能を再び形成することができる。この場合、コーム状のシール条片が正確に摩耗箇所に適合される。コーム状のシール条片を損傷箇所の領域にオーバラップするように、提供されたシールエレメントに取り付けることも可能である。
【0016】
修繕のために設けられたコーム状のシール条片と、提供されたシール条片との間のシールが形状接続により得られ、これまでのように溶接によって得られるのではない。このようなシールは、溶接結合の場合には不可欠な、シールエッジの手間のかかる後加工を省略することができるという利点を有する。
【0017】
形状接続によるこのようなシールは、従来技術により公知のコークス炉ドアのためのシールエレメント全てにも使用することができる。この場合に、斜面突合せ接合又は面と面との突合せ接合又は段状の突合せ接合、並びに対角面突合せ接合による形状接続を行う可能性がある。シール手段の使用により、コークス炉ガスの吹出しが始めから阻止される。後には付加的にタールがシールする。
【0018】
形状接続によるこのようなシールを角隅結合部の領域にも設けることができる。この場合に付加的にフレキシブルなシールによる突合せ接合部を設けることができる。特に良好な、比較的長い運転時間後にも有効なシールが、角隅結合部の斜面区分にフレキシブルなシールが組み込まれた場合に得られる。このようなシールは付加的に弾性的なシール手段により被覆することができる。
【0019】
本発明の発展形によれば、前記フレキシブルなシールはシール薄板より成っており、このシール薄板の、突合せ接合部から突出した端部は円形ヘッドの形で形成されている。これにより、ばね作用が生じ、このばね作用は、シール薄板を、場合によっては生じるギャップにばね作用に基づきシールするように当て付けることができる。このシール薄板の中空室は、材料、例えばテフロン、ガラスウールまたはこれに類するものにより充填されていてよい。シール薄板は外側で、同様に弾性的なシール手段により被覆されていてよい。
【0020】
互いに突き合わされるシール条片のシールが、T字形部材によっても可能である。国際公開第0130939号パンフレットにつき公知のガス通路のシールのためには、有利には二重T字形シールを設けることかできる。
【0021】
この二重T字形シールは、前記ガス通路では特に有利にはシール薄板と円形ヘッドとを有するフレキシブルなシールより形成することができる。すなわち、シール薄板が二重T字形シールの形で、これらのシール薄板がガス通路の壁に位置するまで簡単にフランジ状に取り囲まれる(umgeboerdelt)。
【0022】
シールは別の任意のあらゆる差込み結合によっても行うことができる。これらの差込み結合は、特に国際公開第0130939号パンフレットにつき公知のガス通路において結合部として使用される場合に適している。
【0023】
上に述べた、並びに請求され、実施例に記載の本発明により使用しようとする構成部材は、サイズ、形状構成、材料選択及び技術的なコンセプトに関して特別な例外条件の影響下にはなく、従って使用分野で公知の選択基準において制限されることなしに使用することができる。
【0024】
本発明の対称のさらなる詳細、特徴及び利点が以下の図面に基づく説明に明らかであり、この説明には例として、コークス炉ドアのための本発明によるシールの有利な構成が示されている。
【0025】
図1にはコーム状のシール条片1が示されている。このシール条片1はシールエッジ2を有している。スリット3により、コーム状のシール条片1の抵抗モーメントが望ましいたわみ方向に減衰される。この抵抗モーメントは所定の材料厚さ14ではスリット幅4及びスリット深さ5の構成により意図的に制御することができる。
【0026】
図2からは、コーム状のシール条片1がねじ6と圧着ディスク7とにより点状にドアボディ(図示していない)に固定されていることが判る。
【0027】
図3によれば、コーム状のシール条片1はねじ8及び圧着条片9によりドアボディ(図示していない)に固定されている。前記圧着条片9により、ねじ8の点状の圧着力が圧着条片9の条片長さをにわたって一様に分配される。
【0028】
図4には、圧着条片9を有するコーム状のシール条片1が示されている。このシール条片1は、ドアフレーム11の起伏12及び13に最適に適合されている。ハンマによるコーム歯10への打撃により、コーム状のシール条片1のシールエッジ2が圧着条片9の摩擦力に抗してドアフレーム11のシール面の方向に押しやられ、これにより、コーム状のシール条片1のシールエッジ2はシールするようにドアフレーム11に載着される。
【0029】
図5は、フレキシブルなシールエレメントを示している。このシールエレメントは2つのシール薄板15及び16より成っており、これらのシール薄板15,16は端部で円形ヘッド17及び18により結合されている。フレキシブルなシールエレメントは、2つのシール条片の間の突合せ接合部に次のように取り付けられる、すなわち、円形ヘッド17及び18がシール条片の外部に配置されているように取り付けられる。円形ヘッド17及び18によりばね応力が突合せ接合部に生ぜしめられる。シール薄板15及び16は、ばね弾性的に、突合せ接合により結合されたシール条片に対して押圧する。シール薄板15及び16並びに円形ヘッド17及び18の間には充填物19が設けられていてよい。この充填物19はパッキン材料より成っているか、又はばね作用を高める弾性的な材料より成っていてもよい。フレキシブルなシールエレメントのシール作用をさらに付加的に高めるためには、シール薄板15及び16の外側に弾性的であってもよいシール手段がさらに付加的に設けられていてよい。
【0030】
図6a、図6b、図6c及び図6dには、フレキシブルなシールエレメントを有する、形状接続(Formscluess)による突合せシール及びフレキシブルなシールエレメントを有していない、形状接続による突合せシールの種々異なった形式が示されている。シール条片20及び21は斜面突合せ接合部22,突合せ接合部23、段部突合せ接合部24並びに対角面突合せ接合部25によりシールされていてよい。シール作用を改善するためには突合せ接合部にフレキシブルなシールエレメント26,27,28及び29が配置されていてよい。
【0031】
図7は、2つのシール条片20及び21がT字形部材30若しくは二重T字形部材31により結合されているところを示している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】コーム状のシール条片の概略的斜視図である。
【図2】ねじと圧着ディスクを有するコーム状のシール条片を示す図である。
【図3】ねじ及び圧着条片を有するコーム状のシール条片を示す図である。
【図4】ドアフレームの起伏に適合されたコーム状のシール条片を示す図である。
【図5】ばね作用を有するフレキシブルなシールエレメントの概略図である。
【図6】溶接結合なしのシール条片の種々異なったシール可能性を示す図である。
【図7】T字形部材及び二重T字形部材によるシール条片のシール部を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 コーム状のシール条片、 2 シールエッジ、 3 スリット、 4 スリット幅、 5 シール深さ、 6 ねじ、 7 圧着ディスク、 8 ねじ、 9 圧着条片、 10 コーム歯、 11 ドアフレーム、 12,13 起伏、 14 材料厚さ、 15,16 シール薄板、 17,18 円形ヘッド、 19 充填物、 20,21 シール条片、 22 斜面突合せ接合部、 23 突合せ部、 24 段状突合せ接合部、 25 対角面突合せ接合部、 26,27,28,29 フレキシブルなシールエレメント、 30 T字形部材、 31 二重T字形部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉ドアのためのシールであって、前記コークス炉ドアに、炉チャンバにヘッド側で閉じられた環状の、外側に平坦なシール面を有するドアフレームと、該ドアフレームに固定可能なドアボディと、該ドアボディに固定された、ドア閉鎖時に前記ドアフレームに位置する環状のシールエレメントとが設けられており、該シールエレメントに、間隔をおいて配置されたスリットが設けられている形式のものにおいて、ドアボディに、シールエッジ(2)とスリット(3)とコーム歯(10)とを有するコーム状のシール条片(1)が固定されていることを特徴とする、コークス炉ドアのためのシール。
【請求項2】
コーム状のシール条片(1)が、ねじ(6)と圧着ディスク(7)とによりドアボディに固定されている、請求項1記載のシール。
【請求項3】
コーム状のシール条片(1)が、ねじ(8)と圧着条片(9)とによりドアボディに固定されている、請求項1記載のシール。
【請求項4】
請求項1記載のコークス炉ドアのためのシールであって、前記コークス炉ドアに、炉チャンバにヘッド側で閉じられた環状の、外側に平坦なシール面を有するドアフレームと、該ドアフレームに固定可能なドアボディと、該ドアボディに固定された、ドア閉鎖時に前記ドアフレームに位置する環状のシールエレメントとが設けられており、該シールエレメントに、間隔をおいて配置されたスリットが設けられている形式のものにおいて、シールエレメントが、互いに形状接続によりシールされることを特徴とする、コークス炉ドアのためのシール。
【請求項5】
形状接続部に対して付加的に、シールが設けられている、請求項4記載のシール。
【請求項6】
接続部に、フレキシブルなシールエレメントが設けられている、請求項4記載のシール。
【請求項7】
フレキシブルなシールエレメントが、2つのシール薄板(15)及び(16)から成っており、これらのシール薄板(15)及び(16)が、端部で円形ヘッド(17)及び(18)により結合されている、請求項6記載のシール。
【請求項8】
シール薄板(15)及び(16)並びに円形ヘッド(17)及び(18)の間の中間室に充填物(19)が設けられている、請求項7記載のシール。
【請求項9】
充填物(19)が、弾性的な材料より成っている、請求項8記載のシール。
【請求項10】
フレキシブルなシールエレメントが、シール手段により被覆されて構成されている、請求項6から8までのいずれか1項記載のシール。
【請求項11】
形状接続部に、T字形部材が配置されている、請求項4記載のシール。
【請求項12】
形状接続部に、二重T字形部材が配置されている、請求項4記載のシール。
【請求項13】
請求項1から3までに記載のコーム状のシール条片(1)の使用法において、現存のコークス炉ドアの後装着及び修繕のために用いることを特徴とする、請求項1から3までの記載のコーム状のシール条片(1)の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−518399(P2006−518399A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501567(P2006−501567)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000440
【国際公開番号】WO2004/067680
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(300083169)ドイチェ モンタン テヒノロギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Deutsche Montan Technologie GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Technologiepark 1,D−45307 Essen,Germany
【Fターム(参考)】