説明

コーティング組成物及びその塗布方法

【課題】貯蔵安定性が良く、微小液滴を安定噴射でき、受理層を必要せずさまざまな被塗物へハジキやにじみがなく、密着性等が良好で、色発現に優れたコーティング組成物の提供。
【解決手段】ワニス、顔料分散液、有機溶剤、水を混合した粘度30mPa・s以下、表面張力21〜34mN/mであり、
ワニス中には水に分散された平均粒子径が20〜130nmのウレタン又はアクリル樹脂粒子を含み、該樹脂の全重量が組成物中1〜20重量%で、
顔料分散液は平均粒子径が50〜300nmで、酸価10〜40であるポリカーボネート基含有ウレタン樹脂を含み、
有機溶剤が組成物中5〜40重量%であり、有機溶剤中に下記式(1)の化合物、
O−(CH−CH(R)−O)n−H (1)
(RはC1〜7のアルキル基等、RはH又はメチル基、nは1〜3の整数)
複素環化合物、あるいは両化合物を1種類以上含む配合物であるコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系のコーティング組成物及びその塗布方法に関する。より詳しくは、貯蔵安定性に優れ、電気駆動により加圧し微小液滴を噴射し塗布する際に不安定な噴射が生じることがなく、ハジキやにじみがなく、さまざまな被塗物への密着が良好である塗装物が得られ、また色の発現に優れている水系のコーティング組成物及びその塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤、溶媒及び水からなるコーティング組成物で、種々の溶媒を用いたコーティング組成物が多数提案されている。
【0003】
従来のコーティング組成物を用いて微小液滴で塗装物を作製した場合に、貯蔵安定性が悪く、不安定な噴射が生じ被塗物への密着が悪い塗装物が得られたり、またそのようなコーティング組成物を用いて塗装物を作製しても色の発現が必ずしも充分でなかったりすることがある。また、ハジキやにじみが生じず、良好な密着を発現するために被塗物によっては受理層を形成する必要があった。
【0004】
上記、不安定な噴射が生じる原因として、一般的に、組成物中の溶剤の選択によって微小液滴の乾燥が速くなり過ぎてしまい、噴射以前に乾燥が進むことにより吐出機に固着するためであり、これを防ぐために高沸点溶剤を添加する方法がとられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、ハジキやにじみが生じる原因として、一般的に、被塗物との界面張力差の調整が不十分であることが知られており、表面調整剤を添加する方法がとられている。
【0006】
一方、特許文献2には、ハジキやにじみを改善する方法としてシリコーンアクリル樹脂を添加する方法がとられているが、水系の組成物について提供されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3050049号明細書
【特許文献2】特開平10−251573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記のような課題を解決することであり、コーティング組成物の貯蔵安定性が良く、電気駆動により加圧し微小液滴を噴射する際に不安定な噴射が生じることがなく、受理層を必要せずさまざまな被塗物へハジキやにじみがなく、密着性、耐水性、耐アルコールが良好である塗装物が得られ、また色の発現に優れている水系のコーティング組成物及びその塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、組成物中の有機溶剤、ワニス中の樹脂成分を特定し、顔料分散液とワニス中の樹脂の粒子径、顔料分散液に含まれる樹脂の酸価が、特定の範囲内にあることによって、貯蔵安定性と噴射の安定性を調整でき、更には塗膜性能が向上することを見出した。
【0010】
本発明に従って、少なくともワニス、顔料分散液、有機溶剤、水を混合した20℃における粘度が30mPa・s以下、表面張力が21〜34mN/mであるコーティング組成物において、
該ワニス中には水に分散された平均粒子径(d50)が20〜130nmのウレタン樹脂粒子もしくはアクリル樹脂粒子を含み、それら樹脂の全重量がコーティング組成物中1〜20重量%であり、
該顔料分散液は平均粒子径(d50)が50〜300nmであり、かつ、分散用樹脂として酸価が10〜40であるカーボネート基含有ウレタン樹脂を含み、
該有機溶剤がコーティング組成物中5〜40重量%であり、有機溶剤中に下記一般式(1)で示される化合物を1種類以上、
O−(CH−CH(R)−O)n−H・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。)
もしくは複素環化合物を1種類以上、あるいは両方の化合物を1種類以上含む配合物であることを特徴とするコーティング組成物が提供される。
【0011】
また、本発明に従って、上記コーティング組成物を用いて、被塗物を35℃以上なるように加温する工程、該コーティング組成物塗布し1秒以内に風速1m/秒以上の風を当て乾燥させる工程、のいずれか一方又は両工程を有することを特徴とするコーティング組成物の塗布方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコーティング組成物を用いることにより、貯蔵安定性が良く、微小液滴を塗布する際に不安定な噴射が生じることがなく、ハジキやにじみのない、耐水性、耐アルコールが良好な品質上好ましい塗装物が得られ、また優れた色の発現が得られる。更に、本発明のコーティング組成物を用いることにより、受理層を必要せずに金属板及びその塗装物、窯業系塗装物、プラスチック類、紙、ガラス等のさまざまな被塗物にも塗装でき、良好な密着性、光沢が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のコーティング組成物について具体的に説明する。
【0014】
本発明のワニス、顔料分散液、有機溶剤、水を混合したコーティング組成物において、20℃における粘度が30mPa・s以下、表面張力が21〜34mN/mであり、ワニス中の樹脂が上記コーティング組成物中1〜20重量%であることが必須である。コーティング組成物の粘度が30mPa・sを超えると、コーティング組成物の塗布時に液滴の吐出不良が発生する。また、表面張力が21mN/m未満又は34mN/mを超えると塗布時に液滴の吐出不良が発生する。コーティング組成物中の樹脂成分が1重量%未満では密着不良となり、一方、20重量%を超えると、貯蔵安定性が悪くなる。
【0015】
本発明のコーティング組成物に用いられる顔料分散液として特に制限はなく、通常のコーティング組成物に用いられている顔料の分散液であればいずれも使用することができる。例えば、
ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213、
ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、
ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254、
ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50、
ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、30、60、64、80、
ピグメントグリーン7、36、
ピグメントブラウン23、25、26、
ピグメントブラック1、7、26、27、28、
酸化チタン、酸化鉄、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の分散体を挙げることができる。
【0016】
顔料分散液の配合量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、好ましくはコーティング組成物の5〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。一方で、顔料分散液は、平均粒子径(d50)が50〜300nmであることが必須である。平均粒子径が300nmより大きくなると、顔料が沈降し易くなるので、貯蔵安定性が低下する。一方、平均粒子径が50nm未満となると着色力が不足し、再凝集もし易くなる。更に、顔料分散液の比重は1.4〜5.2であることが好ましい。比重が1.4未満ではコーティング組成物を吐出させた場合に直進性が得られ難くなるので好ましくない。一方、比重が5.2を超えると顔料が沈降し易くなるので、貯蔵安定性が低下する傾向がある。
【0017】
本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、必要とする体質顔料を配合することも可能であり、これらの代表的なものとしては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、結晶シリカ、溶融シリカ、無定形シリカ、アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、タルク、マイカ、クレー、硅砂、硅酸塩、カオリン、ガラス等の無機物質の粉末やポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピエン樹脂等の有機物質の粉末又はビーズ等が挙げられる。体質顔料は、単独で、又はこれらの2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0018】
顔料分散液には分散用樹脂として酸価が10〜40であるポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂を含むことが必須である。酸価が10未満あるいは40を超えると、顔料分散体の安定性が悪くなり、凝集や吐出不良を起こす。それ以外の樹脂として、通常のコーティング組成物に用いられている分散用樹脂のいずれも使用することができ、2種類以上の分散樹脂を組み合わせて使用することもできる。
【0019】
分散用樹脂としては、例えば、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミド、ポリアリールアミン、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等を水に溶解又は分散した状態のものを挙げることができる。本発明のコーティング組成物に用いられるワニスは、水に分散された平均粒子径(d50)が20〜130nmのウレタン樹脂粒子もしくはアクリル樹脂粒子を含み、それら樹脂の全重量がコーティング組成物中において1〜20重量%であることが必須である。平均粒子径が20nm未満では塗膜の堅牢性が悪くなり、130nmを超えると貯蔵安定性が悪くなる。また、樹脂が1重量%未満では密着不良となり、20重量%を超えると貯蔵安定性が悪くなる。
【0020】
ウレタン樹脂粒子としては特に制限はないが、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖伸長剤を反応させて得られるウレタン樹脂粒子であることが好ましい。ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖伸長剤を反応させてブロック構造にすることでウレタン樹脂粒子の水への分散性安定性が向上する。
【0021】
ポリイソシアネート成分は、その化合物中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等からなるポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート成分中、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネートである。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
ポリオール成分は、その化合物中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオール化合物であり、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリルポリオール等が挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオールには特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオール又はポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)等を用いることができる。ポリエーテルポリオールには特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を用いることができる。ポリカーボネートポリオールにも特に制限はなく、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール又はポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を用いることができる。アクリルポリオールにも特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルやこれらのε−カプロラクトン付加物等のアクリル系単量体を必須成分とするものを用いることができる。これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのポリオール化合物の内、耐加水分解性、耐候性の面から、好ましくは、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール又はポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネートポリオールが用いられる。
【0024】
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコールや低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノールや、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0025】
アクリル樹脂粒子を構成するモノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)、アクリルアミド、マレインアミド、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等が挙げられる。これらの中でスチレン、メチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸を含むアクリル樹脂粒子が好ましい。
【0026】
ワニスとしては、ウレタン樹脂粒子もしくはアクリル樹脂粒子をそれぞれ単独で使用することもできるが、この2種類の樹脂粒子を組み合わせて使用することもできる、また、通常のコーティング組成物に用いられている樹脂粒子を含んだものも使用することもできる。例えば、その樹脂粒子としてポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル共重合体等を微粒子化したものが挙げられる。
【0027】
本発明におけるワニス中の樹脂の酸価が5〜35であることが好ましい。酸価が5未満あるいは35を超えると、コーティング組成物中の顔料や樹脂粒子の分散安定性が悪くなる傾向があり、凝集や吐出不良を起こし易くなるため好ましくない。
【0028】
また更に、ワニス中の樹脂のガラス転移温度(Tg)が40℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度40℃未満では塗膜の堅牢性が悪くなる傾向があるため好ましくない。
【0029】
また、上記有機溶剤としては、コーティング組成物中の有機溶剤比率として5〜40重量%含有することが必須である。上記有機溶剤比率が5重量%未満では、コーティング組成物が被塗物上でハジキ、また40重量%を超えるとにじむことがある。本発明の有機溶剤中には下記一般式(1)で示される化合物を1種類以上、
O−(CH−CH(R)−O)n−H・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。)
もしくは複素環化合物を1種類以上、あるいは両方の化合物を含むことが必須である。
【0030】
上記一般式(1)で示される化合物として、
エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールペンチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールペンチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールペンチルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;
プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールペンチルエーテル、プロピレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールペンチルエーテル、トリプロピレングリコールヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;
及びR1の置換基が異なる構造異性体等を挙げることができる。中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0031】
複素環化合物としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等が挙げられる。中でも、γ−ブチロラクトン及びN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0032】
これ以外の有機溶剤としては、通常のコーティング組成物に用いられる溶剤が使用でき、例えば、1,2−ヘキサンジオール等のアルカンジオール類、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0033】
本発明の水系コーティング組成物は水系であるので当然に水を含有する。水としてイオン交換水、蒸留水等の純水、超純水を用いることができる。また、水系コーティング組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止するために、紫外線照射等により滅菌した水を用いることもできる。水を水系コーティング組成物の全量を基準にして20〜90質量%の量で配合することが好ましい。
【0034】
本発明の水系コーティング組成物には、必要に応じて、表面張力調整剤、アミン類等のpH調整剤、尿素及びその誘導体等のヒドロトロピー剤、防カビ・防腐剤、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、防錆剤、酸化防止剤又はアルカリ増粘タイプ・ウレタン会合タイプの増粘剤等を添加することも可能である。
【0035】
本発明のコーティング組成物中における顔料分散液中に含まれる分散用樹脂の酸価(AVp)、顔料の比重(Dp)が
2<(AVp/Dp)<30
であり、ワニス中の樹脂の酸価(AVr)、樹脂の比重(Dr)が
5<(AVr/Dr)<28
であり、更に、
0.1<((AVp/Dp)/(AVr/Dr))<8
の関係にあることが好ましい。上記範囲以外では、コーティング組成物の吐出不良や貯蔵安定性が不良となり、良好な被塗物を得ることが困難である。顔料の比重は、メーカーカタログやMSDS(化学物質等安全データシート)に記載の数値を用いた。また、ワニス中の樹脂の比重については、使用する樹脂をフィルム状に成膜し、乾燥後の体積と重量を測定し、樹脂の比重として計算した。
【0036】
本発明のコーティング組成物の塗布方法としては、スプレー塗装、ディップコート、スピンコート、ディスペンサー等の一般的な塗布方法が適応できるが、電気駆動により加圧し、非接触で液滴を吐出させる塗布方法を用いることが、塗布性の点から好ましい。
【0037】
本発明のコーティング組成物は、被塗物として塗装に適した大きさ、厚さ、形状であれば一般的な材料が使用でき、予め表面処理や塗装が行われていてもよい。コーティング組成物を吸収することがほとんど無い材質である、鉄板、アルミニウム板、ステンレス板又はこれらの塗装物、窯業系塗装板や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル等の樹脂を主成分とする樹脂シートもしくはその成形体で良好な密着性ならびに光沢が得られ、また、コーティング組成物に対し吸収を有する紙や布にも滲むことなく塗布することができる。
【0038】
本発明のコーティング組成物を塩化ビニル板に塗布した場合に、0.5〜1.5nlの液滴の体積が、2秒以内に60%以下になることが好ましく、より好ましくは55%以下になることである。2秒以内に液滴の体積が60%を超えると、乾燥が遅く、ハジキやにじみの原因となり、平滑性のある均一塗膜が得られ難くなる。
【0039】
更に、本発明のコーティング組成物を塩化ビニル板に塗布した場合に、0.5〜1.5nlの液滴径が、2秒以内に1.2倍以上になることが好ましく、より好ましは1.25倍以上1.5倍以下になることである。2秒以内に液滴径が1.2倍未満では、乾燥が遅く、ハジキやにじみの原因となり、平滑性のある均一塗膜が得られ難くなる。
【0040】
更に、本発明のコーティング組成物を塩化ビニル板に塗布した場合に、0.5〜1.5nlの液滴の(高さ)/(液滴径)が0.15以下であることが好ましく、より好ましは0.05以下になることである。0.15を超えると、色むらの原因となり発色性の良い塗膜が得られ難くなる。
【0041】
更に、本発明のコーティング組成物を塩化ビニル板に塗布した場合に、0.5〜1.5nlの液滴の表面積が、2秒以内に1.4倍以上になることが好ましく、より好ましは1.5倍以上2倍以下になることである。2秒以内に液滴の表面積が1.5倍未満では、乾燥が遅く、ハジキやにじみの原因となり、平滑性のある均一塗膜が得られ難くなる。
【0042】
また、本発明のコーティング組成物は、被塗物を35℃以上になるよう加温することが好ましい。被塗物の温度が35℃未満でも乾燥はするものの完全にブロッキングが生じなくなるまでの塗膜の乾燥時間が長くなる傾向になる。逆に、加温し過ぎるとコーティング組成物が熱により劣化したり、加温により被塗物の形状が歪むことがあるので、好ましくは37℃〜45℃である。
【0043】
更に、本発明のコーティング組成物を塗布し1秒以内に風速1m/秒以上の風を当て乾燥させることが好ましい。コーティング組成物を塗布して1秒を超えた時間から風を与えると乾燥度合いの差により塗膜表面に皺が生じ均一な塗面が得られないことがある。また、被塗物に風を当てないかあるいは1m/秒未満の風を当てる場合、完全にブロッキングが生じなくなるまでの塗膜の乾燥時間が長くなる傾向にあり好ましくない。好ましくは2m/秒〜7m/秒である。
【0044】
更に、本発明のコーティング組成物を塩化ビニル板に塗布し乾燥させて得られた膜の表面自由エネルギーの極性成分(γSp)が2.0〜9.0mN/mであることが好ましい。2.0mN/m未満では、被塗物に対する塗膜の密着力が悪くなる傾向にあり、また、9.0mN/m超過では塗膜同士を重ね合わせ圧力が加わった場合に塗膜同士が密着しブロッキングを起こし易くなる。より好ましくは3.0〜8.0mN/mである。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明する。なお、実施例及び比較例の記載について「部」及び「%」は質量基準に基づくものである。
【0046】
<ワニス1(ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子1の水分散体)の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)105.0部、ネオペンチルグリコール4.0部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4−シクロヘキサンジメタノール11.0部、ジメチロールプロピオン酸7.5部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン5.7部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0047】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水430.0部を徐々に加えてポリカーボネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散し分散液を得た。そして、ジエチレントリアミン1.35部を水20.0部に溶解したアミン水溶液を前記分散液に滴下し更に50%ヒドラジン水溶液5.0部を加え、2時間反応させた後、30℃で減圧し脱溶剤を行い、ポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂1の固形分35%、粘度45mPa・s、酸価=15、平均粒子径(d50)=120nm、Tg=61℃の安定なワニス1を得た。
【0048】
<ワニス2(ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子2の水分散体)の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)105.0部、ネオペンチルグリコール1.0部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4−シクロヘキサンジメタノール8.0部、ジメチロールプロピオン酸14.0部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン10.5部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0049】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水450.0部を徐々に加えてポリカーボネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、ジエチレントリアミン1.35部を水20.0部に溶解したアミン水溶液を前記分散液に滴下し更に50%ヒドラジン水溶液5.0部を加え、2時間反応させた後、30℃で減圧し脱溶剤を行い、ポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂2の固形分35%、粘度52mPa・s、酸価=28、平均粒子径(d50)=41nm、Tg=60℃の安定なワニス2を得た。
【0050】
<ワニス3(ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子3の水分散体)の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)105.0部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4−シクロヘキサンジメタノール5.5部、プロピオン酸17.5部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン13.2部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0051】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水450.0部を徐々に加えてポリカーボネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、ジエチレントリアミン1.35部を水20.0部に溶解したアミン水溶液を前記分散液に滴下し更に50%ヒドラジン水溶液5.0部を加え、2時間反応させた後、30℃で減圧し脱溶剤を行い、ポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂3の固形分35%、粘度62mPa・s、酸価=35、平均粒子径(d50)=39nm、Tg=62℃の安定なワニス3を得た。
【0052】
<ワニス4(非ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子の水分散体)の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール16.4部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4−シクロヘキサンジメタノール5.5部、プロピオン酸10.6部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、ヘキサメチレンジイソシアネート部12.0部及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン8.0部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0053】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水270.0部を徐々に加えてイソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、ジエチレントリアミン1.35部を水20.0部に溶解したアミン水溶液を前記分散液に滴下し更に50%ヒドラジン水溶液5.0部を加え、2時間反応させた後、30℃で減圧し脱溶剤を行い、ポリカーボネート基非含有ポリウレタン樹脂固形分35%、粘度61mPa・s、酸価=35、平均粒子径(d50)=38nm、Tg=30℃の安定なワニス4を得た。
【0054】
<ワニス5(アクリル樹脂粒子の水分散体)の合成>
撹拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水60部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.6部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.2部を加えた後、アクリル酸ブチル7.0部、アクリル酸0.8部、スチレン24.0部、メタクリル酸メチル48.2部を混合したものを滴下し、その後、水60部を加え、アンモニア水でpH=9になるように調製した。固形分(NV)=41%、平均粒子径(d50)=75nm、Tg=81℃、酸価=8、の良好なワニス5を得た。
【0055】
<ワニス6(アクリル樹脂粒子の水分散体)の合成>
撹拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水60部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.6部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.2部を加えた後、アクリル酸ブチル26.8部、アクリル酸0.8部、スチレン24.0部、メタクリル酸メチル28.4部を混合したものを滴下し、その後、水60部を加え、アンモニア水でpH=9になるように調製した。固形分(NV)=41%、平均粒子径(d50)=70nm、Tg=30℃、酸価=8、の良好なワニス6を得た。
【0056】
<顔料分散液K−1〜K−7、W−1〜W−5、Y−1〜Y−3、M−1〜M−3>
表1〜表2に示す通り、顔料、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子の水分散体、表面調整剤、溶剤、イオン交換水を、0.5mm径ジルコニアビーズを25%充填したガラス瓶に配合し、ペイントシェーカーにて15時間処理して水性顔料分散液K−1〜K−7、W−1〜W−5、Y−1〜Y−3、M−1〜M−3を得た。
【0057】
<顔料分散液F−1〜F−4>
表1に示す通り、顔料、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子の水分散体、表面調整剤、溶剤、イオン交換水を、0.5mm径ジルコニアビーズを25%充填したガラス瓶に配合し、ペイントシェーカーにて6時間処理して水性顔料分散液F−1〜F−4を得た。
【0058】
<顔料分散液C−1〜C−3>
表2に示す通り、顔料、ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子の水分散体、表面調整剤、溶剤、イオン交換水を、0.5mm径ジルコニアビーズを25%充填したガラス瓶に配合し、ペイントシェーカーにて25時間処理して水性顔料分散液C−1〜C−3を得た。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
顔料として、下記のものを用いた:
カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック550、エボニックデグサ社製)
銅フタロシアニン(商品名:イルガライトブルー8700、チバ社製)、
キノキサリンジオン(商品名:ホスタパームイエローH5G、クラリアント社製)、
ジメチルキナクリドン(商品名:スーパーマゼンタRG、DIC社製)、
二酸化チタン(商品名:TR92、ハンツマン社製)、
酸化鉄(商品名:FR03、堺化学社製)。
消泡剤として、シリコーン系消泡剤(商品名:SNデフォーマー1312、サンノプコ(株)製)を用いた。
【0062】
<平均粒子径>
コーティング組成物の顔料の平均粒子径(d50)をMicrotrac社製 粒度分布測定器UPAを用いて測定した。
【0063】
(実施例1〜153及び比較例1〜7)
表3〜表17に示す通り、上記顔料分散液、ワニス、表面調整剤(商品名:TSF4446、モメンティブ社製)、溶剤、イオン交換水を配合し、マグネチックスターラーにて30分撹拌し、各種コーティング組成物を得た。
【0064】
<粘度>
20℃におけるコーティング組成物の粘度をTAインスツルメンツ社製 レオメーター ARESを用いて測定した。
【0065】
<表面張力>
20℃におけるコーティング組成物の表面張力を協和界面科学社製 自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定した。
【0066】
<ワニスの酸価測定>
ワニスの酸価は、JIS−K−5601−2−1に準じて測定した。
【0067】
<ワニス中の樹脂の比重>
ワニスをフィルム状に成膜し、乾燥後の体積と重量を測定し、ワニス中の樹脂の比重として計算した。
【0068】
<塩化ビニル板上に塗布した0.5〜1.5nl液滴の測定>
栄光電子社製 3軸マーキング装置を用いてコーティング組成物を塩化ビニル板の表面上に1滴塗布し、協和界面化学社製 微小接触角測定装置 MCA−3を用い、25℃における液滴が被塗物に塗布された直後と2秒後の画像を撮影し、画像解析により液滴の体積、液滴径、液滴の高さ、液滴の表面積の変化を求めた。
【0069】
<塗装装置>
コーティング組成物の各被塗物への塗装は、武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いた。
【0070】
<表面自由エネルギーの測定>
本発明で記載される表面自由エネルギーの極性成分(γSp)とは、塗膜の表面自由エネルギーγSを極性成分、分散成分に分割した際の極性成分を表し、武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いてコーティング組成物を塩化ビニル板に塗装、乾燥し、協和界面科学社製接触角計DM500を用いて、その塗膜の表面と表面自由エネルギー既知の液体試料水及び流動パラフィンの接触角を測定し、それらの値及びFowkes式を拡張したOwens式、及びYoung式から得られる連立方程式を解くことで表面自由エネルギーの極性成分(γSp)を求めた。
【0071】
<ノズル詰まり性>
塩化ビニルシート表面にラミレスPJ−1304NXを用いてコーティング組成物を塗装し、塗装の最中にヘッドを15分間その場で放置させ、その後、再度塗装を開始した際に、コーティング組成物が吐出されていないノズル数をカウントし、下記の基準で評価した。
◎:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の1以下、
○:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の1超過60分の2以下、
×:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の2より多い。
【0072】
<連続吐出性>
塩化ビニルシート表面にラミレスPJ−1304NXを用いてコーティング組成物を1m×4mの塗装を行い、飛行曲がり及び抜けの本数に基づいて下記基準で評価した。
◎:飛行曲がり及び抜けなし、
○:飛行曲がり及び抜けの合計本数が1〜3本、
△:飛行曲がり及び抜けの合計本数が4〜6本、
×:飛行曲がり及び抜けの合計本数が7本以上。
【0073】
<貯蔵安定性>
50℃で28日間静置保管し、目視にて下記基準で評価した。
◎:変化なし、
○:僅かに浮遊物あり、
×:沈殿・分離を生じる。
【0074】
<ハジキ>
塩化ビニルシート表面に武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いてコーティング組成物を塗装し、塗装直後の塗装面を目視にて下記基準で評価した。
◎:コーティング組成物にハジキがない、
○:僅かにコーティング組成物にハジキがあるが、実用上問題ないレベル、
×:コーティング組成物にハジキがある。
【0075】
<にじみ>
塩化ビニルシート表面に武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いてコーティング組成物を塗装し、塗装直後の塗装面を目視にて下記基準で評価した。
◎:コーティング組成物ににじみがない、
○:僅かにコーティング組成物ににじみがあるが、実用上問題ないレベル、
×:コーティング組成物ににじみがある。
【0076】
<密着性>
塩化ビニルシート表面に武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いてコーティング組成物を塗装し十分乾燥した後、その塗膜部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN製)を密着させた後にテープを剥がし、剥離部分の状態を目視にて下記基準で評価した。
◎:剥離なし、
○:僅かに剥離の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:剥離あり。
【0077】
<耐水性>
塩化ビニルシート表面に武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いてコーティング組成物を塗装し十分乾燥した後、イオン交換水をしみ込ませたガーゼで塗面を10回擦り、塗面の外観を目視で評価した。
◎:擦り傷の痕跡なし、
○:僅かに擦り傷の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:擦り傷の痕跡あり。
【0078】
<耐エタノール性>
塩化ビニルシート表面に武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いてコーティング組成物を塗装し十分乾燥した後、75%エタノール水溶液をしみ込ませたガーゼで塗面を10回擦り、塗面の外観を目視で評価した。
◎:擦り傷の痕跡なし、
○:僅かに擦り傷の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:擦り傷の痕跡あり。
【0079】
<光沢>
塩化ビニルシート表面に武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXで塗装し十分乾燥した塗面の光沢を日本電色工業社製 光沢計VG 2000を用いて測定した。
◎:光沢あり、
○:僅かに光沢が劣るが実用上問題ないレベル、
×:光沢なし。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
【表9】

【0087】
【表10】

【0088】
【表11】

【0089】
【表12】

【0090】
【表13】

【0091】
【表14】

【0092】
【表15】

【0093】
【表16】

【0094】
【表17】

【0095】
(実施例154〜179)
実施例154〜166は、実施例121のコーティング組成物を、実施例167〜179は実施例122のコーティング組成物を用い、被塗物として塩化ビニル、亜鉛めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板の塗装物、アルミニウム板、ステンレス板、窯業建材、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アート紙、コート紙、上質紙、新聞用紙、ガラスを用い、風を当てず、室温(23℃)にて武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXで塗装を行い、各被塗物上の塗膜の特性・性能評価を行った。
【0096】
<色ムラ>
塗膜を目視にて下記基準で評価した。
◎:色ムラなし、
○:僅かに色ムラがあるが実用上問題ないレベル、
×:色ムラあり。
【0097】
<発色性>
塗膜をマクベス社製 分光光度計COLOR−EYE3100を用いて色差ΔEを測定した。
◎:ΔEが1以内、
○:ΔEが1超過3以内、
×:ΔEが3を超える。
【0098】
<ブロッキング性>
塗面同士が重なるように2枚を重ね、更に1kgf/cmの荷重をかけた状態で1時間放置し接着度合いを判定した。
◎:全く接着部分がない、
○:一部接着部分があるが実用上問題ないレベル、
×:多くの部分が密着し、塗膜の一部が剥離する。
【0099】
<密着性>
塗面部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN製)を密着させた後にテープを剥がし、剥離部分の状態を目視にて下記基準で評価した。
◎:剥離なし、
○:僅かに剥離の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:剥離あり。
【0100】
【表18】

【0101】
なお、上質紙及び新聞用紙の密着性において、密着させたテープを剥がした際に紙が破れてしまい評価を行えなかった。
【0102】
(実施例180〜205)
実施例180〜192は、実施例121のコーティング組成物を、実施例193〜205は実施例122のコーティング組成物を用い、被塗物として塩化ビニル、亜鉛めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板の塗装物、アルミニウム板、ステンレス板、窯業建材、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アート紙、コート紙、上質紙、新聞用紙、ガラスを用い、風を当てず40℃に被塗物を加熱した状態で武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いて被塗物表面に塗装し、上記と同様に各種特性・性能評価を行った。
【0103】
【表19】

【0104】
なお、上質紙及び新聞用紙の密着性において、密着させたテープを剥がした際に紙が破れてしまい評価を行えなかった。
【0105】
(実施例206〜231)
実施例206〜218は、実施例121のコーティング組成物を、実施例219〜231は実施例122のコーティング組成物を用い、被塗物として塩化ビニル、亜鉛めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板の塗装物、アルミニウム板、ステンレス板、窯業建材、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アート紙、コート紙、上質紙、新聞用紙、ガラスを用い、室温(23℃)にて武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いて被塗物表面に塗装しながらドライヤーで風速3m/秒の風を当て、コーティング組成物の乾燥を行った。上記方法により得られた塗膜の各種特性・性能評価を行った。
【0106】
【表20】

【0107】
なお、上質紙及び新聞用紙の密着性において、密着させたテープを剥がした際に紙が破れてしまい評価を行えなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともワニス、顔料分散液、有機溶剤、水を混合した20℃における粘度が30mPa・s以下、表面張力が21〜34mN/mであるコーティング組成物において、
該ワニス中には水に分散された平均粒子径(d50)が20〜130nmのウレタン樹脂粒子もしくはアクリル樹脂粒子を含み、それら樹脂の全重量がコーティング組成物中1〜20重量%であり、
該顔料分散液は平均粒子径(d50)が50〜300nmであり、かつ、分散用樹脂として酸価が10〜40であるポリカーボネート基含有ウレタン樹脂を含み、
該有機溶剤がコーティング組成物中5〜40重量%であり、有機溶剤中に下記一般式(1)で示される化合物を1種類以上、
O−(CH−CH(R)−O)n−H・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。)
もしくは複素環化合物を1種類以上、あるいは両方の化合物を1種類以上含む配合物であることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
上記ワニスの樹脂のガラス転移温度(Tg)が40℃以上であり、かつ該樹脂の酸価が5〜35である請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
上記顔料分散液に含まれる分散用樹脂の酸価(AVp)、顔料の比重(Dp)が
2<(AVp/Dp)<30
であり、上記ワニス中の樹脂の酸価(AVr)、樹脂の比重(Dr)が
5<(AVr/Dr)<28
であり、更に、
0.1<((AVp/Dp)/(AVr/Dr))<5
の関係にある請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
上記コーティング組成物を塩化ビニル板に塗布した場合に、0.5〜1.5nlの液滴の体積が、2秒以内に60%以下になる請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項5】
上記コーティング組成物を塩化ビニル板に塗布した場合に、0.5〜1.5nlの液滴径が、2秒以内に1.2倍以上になる請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項6】
上記コーティング組成物を塩化ビニル板に塗布した場合に、0.5〜1.5nlの液滴の(高さ)/(液滴径)が、2秒以内に0.15以下である請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項7】
上記コーティング組成物を塩化ビニル板に塗布した場合にし、0.5〜1.5nlの液滴の表面積が、2秒以内に1.4倍以上になる請求項1〜6のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項8】
上記コーティング組成物を塩化ビニル板に塗布し、乾燥させて得られた膜の表面自由エネルギーの極性成分(γSp)が2.0〜9.0mN/mである請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のコーティング組成物を用いて、
被塗物を35℃以上になるように加温する工程、
該コーティング組成物塗布し1秒以内に風速1m/秒以上の風を当て乾燥させる工程、
のいずれか一方又は両工程を有することを特徴とするコーティング組成物の塗布方法。

【公開番号】特開2012−116896(P2012−116896A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265651(P2010−265651)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】