コーマ準備機
【課題】スプール上にラップを膨らみが生じることなく均質に巻回することができるコーマ準備機を提供する。
【解決手段】回転可能なドラム12,13上にスプール15を設置し、ドラム12,13の回転にともなうスプール15の回転によりそのスプール15上にラップ14を巻回するようにする。スプール15上のラップ14の外周面に接触されるように、スプール15を挟んだ2箇所のローラ21A,21B間にベルト20を掛け渡す。そのベルト20をメインモータにより、ラップ14の回転とともに走行させる。
【解決手段】回転可能なドラム12,13上にスプール15を設置し、ドラム12,13の回転にともなうスプール15の回転によりそのスプール15上にラップ14を巻回するようにする。スプール15上のラップ14の外周面に接触されるように、スプール15を挟んだ2箇所のローラ21A,21B間にベルト20を掛け渡す。そのベルト20をメインモータにより、ラップ14の回転とともに走行させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラップをスプール上に巻回してラップロールを形成するためのコーマ準備機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコーマ準備機としては、例えば図10に示すような構成が知られている。この従来構成においては、一対の平行な軸線上において回転可能に並設されたバックドラム51及びフロントドラム52上に、スプール53が設置されている。このスプール53は、図示しない加圧手段によりドラム51,52側に向かって付勢され、ドラム51,52上に加圧状態で載置されている。そして、ドラム51,52の回転にともなってスプール53が追従回転されることにより、図示しないドローパートから供給されるラップ54が、ボトムカレンダローラ56を経由してバックドラム51上に移送されて、スプール53の外周に張力の付与状態で巻回される。そして、スプール53上に巻回されたラップ54は次第に大径となり、所要量巻回された状態で満巻ラップ53Aとなる。
【0003】
このような構成のコーマ準備機では、スプール53上に巻回されるラップ54は外周下部の2箇所の接触点P1,P2のみでドラム51,52の外周面に対して加圧状態で接触されている。このため、スプール53上のラップ54がフロントドラム52に対する接触点P2を超えたところに位置されると、そのラップ54に対する加圧が解放されて、図10に鎖線で示すように、ラップ54の外周上部に遠心方向への膨らみ54aが生じる。その後、スプール53上のラップ54がバックドラム51に対する接触点P1の直前付近に小さな曲率の膨らみ54bが生じる。
【0004】
このように、スプール53上に巻回されたラップ54に膨らみ54a,54bが生じて、変形したラップロールが作られると、次工程のコーマ機で巻き戻される際に、ラップ54の単位時間当たりの巻き戻し量が部分的に変動したり、リッキング(ラップの巻回位置からの分離不良)が発生したり、あるいはゲレン変動(重さの変動,すなわちラップの単位長さ当たりの重さや厚さの変動)が生じたりする。特に、生産の効率化のためにラップの巻回を高速で実行した場合には、遠心力等により、前記の膨らみが大きくなって、前記のゲレン変動等の問題が大きくなるばかりでなく、ラップをスプールに対して固く巻回することができず、1本のスプールに対するラップの巻回量を増やすことができなかった。このため、次工程において適切なコーミングが行われないで、コーミングされた製品の品質不良を招いたり、生産の効率化が阻害されたりするおそれがあった。
【0005】
そして、近年要求される高速稼働化に対応するために、コーマ準備機の運転速度が高められると、スプール53上のラップ54の変形量が増大して、品質不良のおそれがさらに高くなる結果を招いた。
【0006】
このような従来構成における問題点に対処するため、例えば特許文献1〜特許文献3に開示されるような構成が従来から提案されている。
特許文献1に記載の従来構成においては、図11に示すように、ラップ54が、エンドレスのベルト61によって回転されるコア62に巻き取られるようになっている。前記ベルト61はローラ63〜67上を周回される。前記コア62は固定の軸線を中心にして回転されるとともに、一対のローラ63,67間においてほぼU形状をなすベルト61によって巻回されている。そして、ベルト61は、コア62上のラップ54の巻径が増大するにつれて張力が減少するように、ローラ65を移動させる張力調整装置68により張力が調整される。
【0007】
また、特許文献2に記載の従来構成においては、図12に示すように、ラップ54を巻き取るためのスプール71が、バックドラム72及びフロントドラム73上に設置されている。バックドラム72の外側にはエンドレスのベルト74がスプール71上のラップ54に外接するように張設され、バックドラム72の回転にともなって周回されるようになっている。そして、ドローパートから供給されるラップ54が、カレンダローラ75を経由して、ベルト74の案内によりスプール71上に巻き取られるようになっている。この場合、スプール71は、図示しない牽引装置によりフロントドラム73側に向かって下方に押圧されるが、スプール71に対するラップ54の巻径の増大にともなって、上方へ移動されるようになっている。
【0008】
さらに、特許文献3に記載の従来構成においては、図13に示すように、ラップ54を巻き取るためのスプール81が一対のドラム82,83上に設置され、図示しない圧力シリンダによりドラム82,83側に向かって付勢されている。スプール81の上方には加圧ローラ84が配置されており、この加圧ローラ84が図示しない加圧シリンダによりスプール81上のラップ54の外周面に対して上方から圧接されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4210329号公報
【特許文献2】国際公開第WO2010/070608A1号
【特許文献3】特開平6−280119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、これらの特許文献1〜3に記載の従来構成においては、次のような問題があった。
図11に示す特許文献1に記載の従来構成では、ドラムが設けられることなく、ベルト61のみによってラップ54がコア62に巻き取られるようになっている。このため、ベルト61の強度を高くする必要がある。このようにベルト61の強度を高くすると、ベルトの剛性もアップするため、張力調整装置68を調整力の強い大型のものとする必要がある。さらに、コア62上のラップ54がベルト61のみにより回転駆動されるため、ベルト61とラップ54との間にスリップが生じやすくて、ラップ54のゲレン変動のおそれもある。特に、前記のようにベルト61の強度を高くして、ベルト61の剛性もアップすると、ベルト61は変形し難くなって、そのベルト61がコア62上の巻回状態のラップ54の曲率に沿わないおそれがある。このような場合は、前記のゲレン変動のおそれがさらに高くなる。
【0011】
図12に示す特許文献2に記載の従来構成では、スプール71上のラップ54に対するベルト74の接触領域が、バックドラム72と対応するラップ54の外周後部に限られている。このため、ラップ54がフロントドラム73との接触による加圧から解放されると、前述した図10に示す従来構成の場合と同様に、ラップ54の外周上部に遠心方向への膨らみが生じるとともに、ベルト74に対する接触加圧の直前においても膨らみが生じるおそれがある。
【0012】
図13に示す特許文献3に記載の従来構成では、スプール81上のラップ54の上方にも加圧ローラ84による加圧点が設けられているが、ラップ54の巻径が増大するにともなって、加圧ローラ84によるラップ54の上方の加圧点と、一対のドラムによるラップ54の下方の加圧点との間の距離が長くなる。このため、1つの加圧点から解放されたラップ54はその時点で膨らみを生じるとともに、次の加圧点の直前でさらに膨らみを生じるおそれがある。また、上部に配置される加圧ローラ84は下部に配置されるドラム82,83とほぼ同径であるため、装置全体が大型になるという問題もあった。
【0013】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、スプール上にラップを膨らみが生じることなく均質に巻回することができるコーマ準備機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、この発明は、回転可能なドラム上にスプールを設置し、ドラムの回転にともなうスプールの回転によりそのスプール上にラップを巻回するようにしたコーマ準備機において、前記スプールを挟んだ2箇所のローラ間に掛け渡され、スプール上のラップの外周面に接触されるベルトと、そのベルトをラップの回転とともに走行させる駆動手段とを備えたことを特徴としている。
【0015】
従って、この発明のコーマ準備機においては、ドラムの回転にともなうスプールの回転により、スプール上にラップが巻回される際に、そのラップの外周の広い範囲がベルトによって押さえられる。このため、スプール上のラップがドラムによる下方の加圧点から解放された後に、ラップの外周上部に膨らみが生じるおそれを抑制することができて、スプール上に膨らみのない均質なラップを巻回形成することができる。
【0016】
前記の構成において、前記一方のローラと、そのローラに対応する一方のドラムとの少なくとも一方を定位置から移動させて、ローラとドラムとの間に開放部を形成し、その開放部から満巻ラップを排出させることが望ましい。
【0017】
前記の構成において、前記スプール上のラップの巻径の増加にともないラップの外周上部におけるベルトの接触領域が拡張されるようにするための接触領域拡張手段を設けることが望ましい。
【0018】
前記の構成において、スプール上のラップの巻径の変化に従い、ドラムに対するラップの接触圧を調整するための接触圧調整手段を設けることが望ましい。
前記の構成において、前記ラップに対するベルトの接触圧力を調整するための接触圧力調整手段を設けることが望ましい。
【0019】
前記の構成において、前記スプールを単独で回転させるための駆動手段と、前記ドラムの周速度にあわせてスプールの回転速度を調節するための速度調節手段とを設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、スプール上にラップを膨らみが生じることなく均質に巻回することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態のコーマ準備機を示す構成図。
【図2】スプールの支持部を示す側面図。
【図3】ローラを移動させるための構成を示す側面図。
【図4】図1のコーマ準備機の一部を拡大して示す断面図。
【図5】同コーマ準備機の駆動構成を示す線図。
【図6】同コーマ準備機の回路構成を示すブロック図。
【図7】(a)〜(c)は同コーマ準備機のラップ巻回動作を順に示す構成図。
【図8】(a)及び(b)は満巻ラップの排出動作及び空スプールの供給動作を示す構成図。
【図9】第2実施形態のコーマ準備機を示す構成図。
【図10】従来のコーマ準備機を示す構成図。
【図11】特許文献1の従来技術を示す構成図。
【図12】特許文献2の従来技術を示す構成図。
【図13】特許文献3の従来技術を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したコーマ準備機の第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0023】
図1に示すように、コーマ準備機のフレーム11の両側の側壁11a間には、バックドラム12及びフロントドラム13が一対の平行な軸線上において回転可能に支持されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、フレーム11の両側壁11aに形成された開口43にはそれぞれ斜め上方に延びる一対のレール44が固定されており、それらのレール44間には左右一対の移動体47が案内されている。図4に示すように、両移動体47には円筒状のシリンダ48が固定され、その軸線位置には内筒49が支持されるとともに、シリンダ48のピストン50が内筒49の外周に固定されている。そして、ピストン50の移動に従って内筒49がシリンダ48の軸線方向に移動される。内筒49の軸心部には支軸57がベアリングを介して回転可能に支持されており、フレーム11内に位置する支軸57の端部にはラッププレート16が固定されている。ラッププレート16間にはラップ14を巻回するための円筒状のスプール15が着脱可能に挟持される。このスプール15は前記両ドラム12,13上に載置される。
【0025】
フレーム11には接触圧調整手段としての加圧用シリンダ17が回動可能に配置され、そのピストンロッド17aが複数のレバーやリンク18a等を含む連結機構18を介して前記移動体47に連結されている(図2参照)。そして、この加圧用シリンダ17により、連結機構18及びラッププレート16介して、スプール15及びスプール15上のラップ14が両ドラム12,13に向かって付勢される。この加圧用シリンダ17の加圧力は、図2及び図6に示す位置センサ40の検出作用による電空レギュレータ17bの作動によって調整される。位置センサ40は前記移動体47の高さを検出する。この移動体47の高さはスプール15上のラップ14の巻径に対応する。
【0026】
図1に示すように、前記バックドラム12の上方においてフレーム11には、トップカレンダローラ19a及びボトムカレンダローラ19bを含む複数のカレンダローラ19が並設状態で回転可能に支持されている。そして、図示しないドローパートから供給されるラップ14が、各カレンダローラ19を経由してバックドラム12上に移送されて、スプール15の外周に張力の付与状態で巻回される。
【0027】
前記スプール15の上方においてフレーム11には、エンドレスのベルト20が複数のローラ21A,21B,21C,21E,21F及びローラ21Dに掛け渡された状態で配置されている。ローラ21A,21B,21C,21E,21F及びローラ21Dのうちで、ローラ21A,21Eを除き、ローラ21B,21C,21F及びローラ21Dはフレーム11に対して定位置で回転可能に支持されている。ここで、ローラ21Cはベルト20を走行させるための駆動用となっている。そして、図7(a)及び(b)に示すように、スプール15上に所定量のラップ14が巻回された後は、ベルト20の外側面がラップ14の外周面に圧接しながら接触される。
【0028】
前記スプール15を挟んでローラ21Bと反対側に位置するフロント側のローラ21Aは、図示しないガイド手段によってガイドされて、フレーム11に対して上下方向へ直線移動可能に支持されている。ローラ21Aの側方においてフレーム11には、ローラ移動用モータ22と、一対の歯付きローラ23a及び歯付きベルト23bよりなる開閉駆動機構23とが配置されている。そして、前記スプール15上に所要量のラップ14が巻回されて満巻ラップ15Aとなったとき、ローラ移動用モータ22の回転により、歯付きベルト23bが周回されて、ローラ21Aが図1に実線で示す下方の作用位置から鎖線で示す上方の退避位置に移動される。この移動により、図7(c)に示すように、ローラ21Aとフロントドラム13との間に、満巻ラップ15Aを排出するための開放部24が形成される。
【0029】
図1及び図3に示すように、フレーム11の上部には支持リング60が軸60aを介して回動可能に支持されており、この支持リング60にはローラ移動用シリンダ25が固定されている。前記ローラ21Cの軸59には作動レバー26が一端において回動可能に支持され、他端には前記ローラ21Eが支持されている。そして、前記ローラ移動用シリンダ25のピストンロッド25aの先端が作動レバー26の中間部に回動可能に連結されている。このため、ピストンロッド25aの出入りにより、作動レバー26がローラ21Cの軸を中心に回動されて、ローラ21Eが2位置間を上下方向に円弧移動される。そして、ローラ移動用シリンダ25の引き込み力により、ローラ21Eを介してベルト20に張力が付与される。このため、図7(a)及び(b)に示すように、ベルト20がスプール15上のラップ14の外周に圧接した状態で接触される。
【0030】
また、前記スプール15上のラップ14の巻径が増加するにつれて、ローラ21Eがローラ移動用シリンダ25の引き込み力に抗して下方に移動される。このため、ベルト20の緊張状態が維持されるとともに、前記巻径の増加にともないラップ14の外周上部におけるベルト20の接触領域が拡張されるようになっている。従って、この実施形態では、ローラ移動用シリンダ25により、ラップ14上のベルト20の接触領域を調整するとともに、ラップ14に対するベルト20の接触圧力を調整するための接触領域拡張手段及び接触圧力調整手段が構成されている。さらに、図7(c)に示すように、前記ローラ21Aが上方の退避位置に移動されて、満巻ラップ15Aを排出するための開放部24が形成されたとき、ローラ移動用シリンダ25の引き込み動作により、ローラ21Eが上限位置まで移動されて、ベルト20の弛みが吸収される。
【0031】
次に、前記ドラム12,13等を回転させるための駆動及び動力伝達構成について説明する。
図5に示すように、コーマ準備機のフレーム11には、メインモータ28が装備されている。そして、このメインモータ28の回転が一対のプーリ28a,28c及びそのプーリ28a,28c間のVベルトにより歯付きローラ29aに伝達される。そして、一対の歯付きローラ29a及び歯付きベルト29bよりなる伝達機構29と、複数の歯車30aよりなる減速機構30を介して、バックドラム12が回転される。それとともに、メインモータ28の回転により、一対の歯付きローラ31a及び歯付きベルト31bよりなる伝達機構31と、複数の歯車32aよりなる歯車機構32を介して、複数のカレンダローラ19が連動回転される。
【0032】
また、前記バックドラム12の回転にともなって、一対の歯付きローラ33a及び歯付きベルト33bよりなる伝達機構33を介して、フロントドラム13がバックドラム12と同一の周速度で同期回転される。それとともに、バックドラム12の回転にともなって、一対の歯付きローラ34a及び歯付きベルト34bよりなる伝達機構34と、複数の歯車35aよりなる減速機構35を介して、ベルト20用の駆動のローラ21Cが回転される。すなわち、この実施形態では、メインモータ28によって、ベルト20を走行させるための駆動手段が構成されている。このベルト20は前記両ドラム12,13の周速度よりわずかに速い速度で走行される。
【0033】
図4及び図5に示すように、前記両移動体47の外側部には、一対のプレート回転用モータ36がステー36aを介して支持されている。そして、このモータ36の回転により、一対の歯車37aよりなる歯車機構37を介して、両ラッププレート16が回転されて、そのラッププレート16間のスプール15が前記ドラム12,13やカレンダローラ19と独立して回転されるようになっている。従って、この実施形態では、プレート回転用モータ36によって、スプール15を単独で回転させるための駆動手段が構成されている。
【0034】
図5に示すように、両ラッププレート16の回転駆動部には、ラッププレート16つまりスプール15の回転を検出するためのプレート用エンコーダ41が配置されている。両ドラム12,13の回転軸部には、ドラム12,13の回転を検出するためのドラム用エンコーダ42が配置されている。
【0035】
次に、前記のように構成されたコーマ準備機の電気回路構成について説明する。
図6に示すように、制御装置45はコーマ準備機全体の動作を制御するための制御手段を構成している。制御装置45には、位置センサ40、プレート用エンコーダ41及びドラム用エンコーダ42から検出信号が入力されるとともに、操作部46から操作入力信号等が入力される。制御装置45からは、前記メインモータ28、プレート回転用モータ36、ローラ移動用モータ22、加圧用シリンダ17による付勢力を調整するための電空レギュレータ17b及びローラ移動用シリンダ25を切り換えるための電磁弁25bに対して作動信号が出力される。
【0036】
そして、前記制御装置45は、プレート用エンコーダ41からスプール15の回転数の検出信号を入力するごとに、スプール15上のラップ14の巻径増大に対応する係数で、プレート回転用モータ36の回転速度を制御して、スプール15上のラップ14の周速度をドラム12,13の周速度に対して所要の関係を有するように調整する。この調整により、常にラップ14を張力の付与状態でスプール15上に巻回させるように、ラップ14の巻回速度がドラム12,13の周速度よりわずかに速く、前記ベルト20の走行速度よりわずかに遅くなるようにしている。つまり、この実施形態では、制御装置45によって、スプール15の回転速度を調節するための速度調節手段が構成されている。ここで、制御装置45は、位置センサ40からの移動体47の高さ信号、すなわちラップ14の巻径を示す検出信号を入力し、その加圧用シリンダ17による加圧力、すなわちドラム12,13に対するスプール15上のラップ14の接触圧力が所定値を維持するように、電空レギュレータ17bの作動を制御する。
【0037】
次に、前記のように構成されたコーマ準備機の作用を説明する。
図1に示すように、両ドラム12,13上にスプール15が設置された状態で、コーマ準備機が運転されると、メインモータ28により、両ドラム12,13及び各カレンダローラ19が回転されるとともに、ベルト20が走行される。また、プレート回転用モータ36により、スプール15が単独で回転される。この回転により、図7(a)に示すように、ドローパートから供給されるラップ14が、各カレンダローラ19を経由してバックドラム12上に移送されて、スプール15の外周に巻回される。この場合、ラップ14の巻回速度がドラム12,13の周速度よりわずかに速いが、ラップ14とドラム12,13との間には滑りが生じる。従って、ラップ14はスプール上に適度の緊張状態で巻回される。
【0038】
そして、図7(a)に示すように、スプール15上に所定量のラップ14が巻回された後は、ベルト20がラップ14の外周面に圧接して接触されるようになる。この場合、図7(b)に示すように、ローラ21A,21Bが定位置であるため、スプール15上のラップ14の巻径が増加するにつれて、ラップ14の外周上部におけるベルト20の接触領域が次第に拡張される。このため、スプール15上のラップ14の巻径が増加するにつれて、ベルト20の接触領域の比率が高くなる。言い換えれば、スプール15上のラップ14が厚くなって変形しやすくなるにつれて、それ以前よりもベルト20の接触領域の比率が高くなる。そして、スプール15上のラップ14は、フロントドラム13による下方の加圧点から解放された後に、長い距離をおくことなくベルト20の接触部によって加圧される。よって、ラップ14の外周上部に膨らみが生じるおそれはなく、ラップ14が均質な状態で巻回形成される。また、ベルト20は、ラップ14の巻回速度よりわずかに速い速度で走行される。このため、ラップ14は常に緊張状態で巻回され、ラップ14の巻径が増加するにつれて、ラップ14の巻回状態が次第に柔らかくなるおそれはなく、均質な密度のラップ14が巻回形成される。なお、スプール15に対するラップ14の巻回量が少ない状態(小玉ラップ状態)では、ラップ14の巻回径が小さいため、ラップ14の膨らみはほとんど生じない。従って、この状態においては、ベルト20によりラップ14に対する接触は必要ない。
【0039】
また、前記スプール15上へのラップ14の巻回時には、プレート用エンコーダ41によりスプール15の積算回転数が検出される。そして、この積算回転数の検出信号に基づいてスプール15の回転ごとに、ラップ14の巻径増大に対応する係数で、プレート回転用モータ36の回転速度が調整される。これによって、常にラップ14が所定の張力の付与状態でスプール15上に巻回される。それとともに、位置センサ40により移動体47の高さが検出される。そして、制御装置45は、電空レギュレータ17bの作動を制御して、加圧用シリンダ17の加圧力を調整し、スプール15上のラップ14によるドラム12,13に対する接触圧が漸減され、またはほぼ一定を維持される。
【0040】
そして、図7(b)に示すように、スプール15上に所要量のラップ14が巻回されて、満巻ラップ15Aになると、加圧用シリンダ17によるスプール15の下方への加圧力(接触圧)付与が解放される。その後、メインモータ28が停止されて、両ドラム12,13及び各カレンダローラ19の回転が停止されるとともに、ベルト20の走行が停止される。この状態で、プレート回転用モータ36により、スプール15が単独で低速回転されて、満巻ラップ15Aに連なるラップ14の上流側の部分が引きちぎられるようにして切断される。
【0041】
続いて、図7(c)に示すように、ローラ移動用モータ22の回転により、ベルト20用のローラ21Aが下方の作用位置から上方の退避位置に移動されて、ローラ21Aとフロントドラム13との間に、満巻ラップ15Aを排出するための開放部24が形成される。このとき、ローラ移動用シリンダ25の引き込み動作により、ローラ21Eが上限位置まで移動されて、ベルト20の弛みが吸収される。そして、図8(a)に示すように、ドラム12,13上の満巻ラップ15Aが、ラップガイド38を介して開放部24から前方側に排出される。
【0042】
その後、図8(b)に示すように、ラップガイド38が上方に退避回動されるとともに、スプール供給レバー39が退避位置から供給位置に回動されて、空スプール15Bが両ドラム12,13上の巻回位置に供給される。この状態で、ラップガイド38及び供給レバー39が原位置に復帰回動されるとともに、ローラ21A,21Eが下方に復帰移動されて、図1に示すように、ベルト20がスプール15に近接して張設される。そして、この状態において空スプール15Bがラッププレート16間に挟持されて次のスプール15に対するラップ14の巻回動作が再開される。
【0043】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このコーマ準備機においては、回転可能なドラム12,13上にスプール15が設置され、ドラム12,13の回転にともなうスプール15の回転により、そのスプール15上にラップ14が巻回される。そして、スプール15上のラップ14の外周面に圧接状態で接触されるように、スプール15を挟んだ2箇所のローラ21A,21B間にはベルト20が掛け渡されている。
【0044】
このため、ドラム12,13の回転にともなうスプール15の回転によって、スプール15上にラップ14が巻回される際には、そのラップ14の外周がベルト20によりローラ21A,21B間の広い範囲にわたって押圧される。そして、ラップ14の巻径が増大しても、それに応じてベルト20のローラ21A,21B間の部分が上方へ膨らむようになって、ラップ14との接触領域が広がり、ラップ14とドラム12,13との接触点と、ラップ14とベルト20との接触開始側の接触点P1及び接触終了側の接触点P2との間隔は狭い状態が維持される。よって、スプール15上のラップ14がドラム13との接触点から解放された後に、ラップ14の外周上部に膨らみが生じたり、ドラム12との接触前に小さな曲率の膨らみが生じたりするおそれを抑制することができる。従って、ラップのゲレン変動等を抑制して、スプール15上に膨らみのない均質な巻回状態(硬さ)のラップ14を巻回形成することができる。
【0045】
(2) このコーマ準備機においては、前記一方のローラ21Aが定位置から移動されることにより、そのローラ21Aに対応するドラム13とローラ21Aとの間に開放部24が形成され、その開放部24から満巻ラップ15Aが排出される。このため、ベルト20及びそのベルト20を掛け渡すためのローラ21Aが邪魔になることなく、ドラム13とローラ21Aとの間の開放部24を介して、満巻ラップ15Aをドラム12,13上の巻回位置から容易に排出することができる。
【0046】
(3) このコーマ準備機においては、ローラ移動用シリンダ25とローラ移動用モータ22とにより、前記スプール15上のラップ14の巻径の増加につれて、ラップ14に対するベルト20の接触範囲が広くなるようになっている。このため、結果として、ラップ14の巻径が増大すると、それにともなってラップ14上のベルト20の接触領域が拡大される。よって、ラップ14の巻径が増加しても、ドラム12,13によるラップ14の外周下部の加圧部位と、ベルト20によるラップ14の外周上部の加圧部位との間の距離が離れることを防止することができて、ラップ14の外周上部に膨らみが生じるおそれを一層効果的に抑制することができる。
【0047】
(4) このコーマ準備機においては、スプール15上のラップ14の巻径が変化しても、加圧用シリンダ17による加圧力、すなわちラップ14とドラム12,13との接触圧がほぼ一定になるように調整される。このため、ラップ14はスプール15上に均等な圧力で巻回され、前記のようなゲレン変動やリッキングを防止することができる。
【0048】
(5) このコーマ準備機においては、前記スプール15を単独で回転させるためのプレート回転用モータ36が設けられている。また、スプール15上のラップ14の巻回速度とドラム12,13の周速度との関係を調節するための速度調節手段としての制御装置45が設けられている。このため、スプール15上のラップ14の巻径が増加しても、そのラップ14の周速度を調整することにより、ラップ14を所要の張力の付与状態でスプール15上に巻回することができる。よって、スプール15上のラップ14の巻径が増加しても、ラップ14の厚さや密度が変化することを防止することができる。従って、前記と同様にラップのゲレン変動やリッキング等を防止して、均質なラップ14を巻回形成することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したコーマ準備機の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
この第2実施形態では、図9に示すように、前記第1実施形態におけるフロントドラム13が省略され、スプール15が1つのバックドラム12上に設置されるようになっている。
【0051】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(5)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(6) この実施形態においては、スプール15が1つのドラム12上に設置されるようになっている。このため、一対のドラムを設けた構成に比較して、構造の簡略化及び小型化を図ることができて、安価なコーマ準備機を提供することがでる。
【0052】
(7) この実施形態においては、ドラム12が1つであるため、ローラ21Aの位置を充分に下げることができる。このため、ラップ14に対するベルト20の接触領域を広くすることができて、ラップ14の均質な巻回に寄与できる。
【0053】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ベルト20をメインモータ28とは異なった独立のモータにより走行させるように構成すること。
【0054】
・ ベルト20に対してシリンダ25とは異なったバネや電動モータ等の張力付与手段により、張力を付与するように構成すること。
・ スプール15上のラップ14の巻径増加につれて、ローラ移動用シリンダ25の動作を制御して、ラップ14の外周面に対するベルト20の圧接力を漸減させるように構成すること。このようにすれば、巻き始めから巻き終わりまで均質な張力の巻回が可能となる。
【0055】
・ プレート回転用モータ36を1基とし、一方のラッププレート16に回転を伝達するように構成すること。
・ スプール15上のラップ14の厚みを検出するセンサを設け、そのセンサからの検出結果に応じてスプール15の回転速度を制御すること。
【0056】
・ 前記各実施形態では加圧用シリンダ17及びローラ移動用シリンダ25を空圧シリンダとしたが、油圧シリンダを用いること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握されるが、請求項に記載されていない技術的思想は以下の通りである。
【0057】
(A) 回転可能なドラム上にスプールを設置し、ドラムの回転にともなうスプールの回転によりそのスプール上にラップを巻回するようにしたコーマ準備機において、
前記スプールを単独で回転させるためのスプール駆動手段を設けたことを特徴とするコーマ準備機。
【0058】
このようにすれば、メインモータ28から動力を得る場合とは異なり、スプールまでの動力伝達系が不要になって、装置構成の簡素化及び小型化を達成できる。また、ラップの材質や必要とする硬さ等に応じて、スプールの回転速度を単独で制御できる。
【0059】
(B) スプール上のラップの巻径の変化に応じてスプールの回転数を調整するための調整手段を設けたことを特徴とする前記技術的思想(A)項に記載のコーマ準備機。
このようにすれば、スプール上のラップの巻径が増加しても、スプールの回転速度を調整することにより、ラップを所要の張力の付与状態でスプール上に巻回することができる。
【符号の説明】
【0060】
12…バックドラム、13…フロントドラム、14…ラップ、15…スプール、15A…満巻ラップ、17…加圧用シリンダ、20…ベルト、21A〜21F…ローラ、22…ローラ移動用モータ、24…開放部、25…調整手段としてのローラ移動用シリンダ、28…ベルトの駆動手段としてのメインモータ、36…スプールの駆動手段としてのプレート回転用モータ、45…制御手段及び速度調節手段を構成する制御装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラップをスプール上に巻回してラップロールを形成するためのコーマ準備機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコーマ準備機としては、例えば図10に示すような構成が知られている。この従来構成においては、一対の平行な軸線上において回転可能に並設されたバックドラム51及びフロントドラム52上に、スプール53が設置されている。このスプール53は、図示しない加圧手段によりドラム51,52側に向かって付勢され、ドラム51,52上に加圧状態で載置されている。そして、ドラム51,52の回転にともなってスプール53が追従回転されることにより、図示しないドローパートから供給されるラップ54が、ボトムカレンダローラ56を経由してバックドラム51上に移送されて、スプール53の外周に張力の付与状態で巻回される。そして、スプール53上に巻回されたラップ54は次第に大径となり、所要量巻回された状態で満巻ラップ53Aとなる。
【0003】
このような構成のコーマ準備機では、スプール53上に巻回されるラップ54は外周下部の2箇所の接触点P1,P2のみでドラム51,52の外周面に対して加圧状態で接触されている。このため、スプール53上のラップ54がフロントドラム52に対する接触点P2を超えたところに位置されると、そのラップ54に対する加圧が解放されて、図10に鎖線で示すように、ラップ54の外周上部に遠心方向への膨らみ54aが生じる。その後、スプール53上のラップ54がバックドラム51に対する接触点P1の直前付近に小さな曲率の膨らみ54bが生じる。
【0004】
このように、スプール53上に巻回されたラップ54に膨らみ54a,54bが生じて、変形したラップロールが作られると、次工程のコーマ機で巻き戻される際に、ラップ54の単位時間当たりの巻き戻し量が部分的に変動したり、リッキング(ラップの巻回位置からの分離不良)が発生したり、あるいはゲレン変動(重さの変動,すなわちラップの単位長さ当たりの重さや厚さの変動)が生じたりする。特に、生産の効率化のためにラップの巻回を高速で実行した場合には、遠心力等により、前記の膨らみが大きくなって、前記のゲレン変動等の問題が大きくなるばかりでなく、ラップをスプールに対して固く巻回することができず、1本のスプールに対するラップの巻回量を増やすことができなかった。このため、次工程において適切なコーミングが行われないで、コーミングされた製品の品質不良を招いたり、生産の効率化が阻害されたりするおそれがあった。
【0005】
そして、近年要求される高速稼働化に対応するために、コーマ準備機の運転速度が高められると、スプール53上のラップ54の変形量が増大して、品質不良のおそれがさらに高くなる結果を招いた。
【0006】
このような従来構成における問題点に対処するため、例えば特許文献1〜特許文献3に開示されるような構成が従来から提案されている。
特許文献1に記載の従来構成においては、図11に示すように、ラップ54が、エンドレスのベルト61によって回転されるコア62に巻き取られるようになっている。前記ベルト61はローラ63〜67上を周回される。前記コア62は固定の軸線を中心にして回転されるとともに、一対のローラ63,67間においてほぼU形状をなすベルト61によって巻回されている。そして、ベルト61は、コア62上のラップ54の巻径が増大するにつれて張力が減少するように、ローラ65を移動させる張力調整装置68により張力が調整される。
【0007】
また、特許文献2に記載の従来構成においては、図12に示すように、ラップ54を巻き取るためのスプール71が、バックドラム72及びフロントドラム73上に設置されている。バックドラム72の外側にはエンドレスのベルト74がスプール71上のラップ54に外接するように張設され、バックドラム72の回転にともなって周回されるようになっている。そして、ドローパートから供給されるラップ54が、カレンダローラ75を経由して、ベルト74の案内によりスプール71上に巻き取られるようになっている。この場合、スプール71は、図示しない牽引装置によりフロントドラム73側に向かって下方に押圧されるが、スプール71に対するラップ54の巻径の増大にともなって、上方へ移動されるようになっている。
【0008】
さらに、特許文献3に記載の従来構成においては、図13に示すように、ラップ54を巻き取るためのスプール81が一対のドラム82,83上に設置され、図示しない圧力シリンダによりドラム82,83側に向かって付勢されている。スプール81の上方には加圧ローラ84が配置されており、この加圧ローラ84が図示しない加圧シリンダによりスプール81上のラップ54の外周面に対して上方から圧接されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4210329号公報
【特許文献2】国際公開第WO2010/070608A1号
【特許文献3】特開平6−280119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、これらの特許文献1〜3に記載の従来構成においては、次のような問題があった。
図11に示す特許文献1に記載の従来構成では、ドラムが設けられることなく、ベルト61のみによってラップ54がコア62に巻き取られるようになっている。このため、ベルト61の強度を高くする必要がある。このようにベルト61の強度を高くすると、ベルトの剛性もアップするため、張力調整装置68を調整力の強い大型のものとする必要がある。さらに、コア62上のラップ54がベルト61のみにより回転駆動されるため、ベルト61とラップ54との間にスリップが生じやすくて、ラップ54のゲレン変動のおそれもある。特に、前記のようにベルト61の強度を高くして、ベルト61の剛性もアップすると、ベルト61は変形し難くなって、そのベルト61がコア62上の巻回状態のラップ54の曲率に沿わないおそれがある。このような場合は、前記のゲレン変動のおそれがさらに高くなる。
【0011】
図12に示す特許文献2に記載の従来構成では、スプール71上のラップ54に対するベルト74の接触領域が、バックドラム72と対応するラップ54の外周後部に限られている。このため、ラップ54がフロントドラム73との接触による加圧から解放されると、前述した図10に示す従来構成の場合と同様に、ラップ54の外周上部に遠心方向への膨らみが生じるとともに、ベルト74に対する接触加圧の直前においても膨らみが生じるおそれがある。
【0012】
図13に示す特許文献3に記載の従来構成では、スプール81上のラップ54の上方にも加圧ローラ84による加圧点が設けられているが、ラップ54の巻径が増大するにともなって、加圧ローラ84によるラップ54の上方の加圧点と、一対のドラムによるラップ54の下方の加圧点との間の距離が長くなる。このため、1つの加圧点から解放されたラップ54はその時点で膨らみを生じるとともに、次の加圧点の直前でさらに膨らみを生じるおそれがある。また、上部に配置される加圧ローラ84は下部に配置されるドラム82,83とほぼ同径であるため、装置全体が大型になるという問題もあった。
【0013】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、スプール上にラップを膨らみが生じることなく均質に巻回することができるコーマ準備機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、この発明は、回転可能なドラム上にスプールを設置し、ドラムの回転にともなうスプールの回転によりそのスプール上にラップを巻回するようにしたコーマ準備機において、前記スプールを挟んだ2箇所のローラ間に掛け渡され、スプール上のラップの外周面に接触されるベルトと、そのベルトをラップの回転とともに走行させる駆動手段とを備えたことを特徴としている。
【0015】
従って、この発明のコーマ準備機においては、ドラムの回転にともなうスプールの回転により、スプール上にラップが巻回される際に、そのラップの外周の広い範囲がベルトによって押さえられる。このため、スプール上のラップがドラムによる下方の加圧点から解放された後に、ラップの外周上部に膨らみが生じるおそれを抑制することができて、スプール上に膨らみのない均質なラップを巻回形成することができる。
【0016】
前記の構成において、前記一方のローラと、そのローラに対応する一方のドラムとの少なくとも一方を定位置から移動させて、ローラとドラムとの間に開放部を形成し、その開放部から満巻ラップを排出させることが望ましい。
【0017】
前記の構成において、前記スプール上のラップの巻径の増加にともないラップの外周上部におけるベルトの接触領域が拡張されるようにするための接触領域拡張手段を設けることが望ましい。
【0018】
前記の構成において、スプール上のラップの巻径の変化に従い、ドラムに対するラップの接触圧を調整するための接触圧調整手段を設けることが望ましい。
前記の構成において、前記ラップに対するベルトの接触圧力を調整するための接触圧力調整手段を設けることが望ましい。
【0019】
前記の構成において、前記スプールを単独で回転させるための駆動手段と、前記ドラムの周速度にあわせてスプールの回転速度を調節するための速度調節手段とを設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、スプール上にラップを膨らみが生じることなく均質に巻回することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態のコーマ準備機を示す構成図。
【図2】スプールの支持部を示す側面図。
【図3】ローラを移動させるための構成を示す側面図。
【図4】図1のコーマ準備機の一部を拡大して示す断面図。
【図5】同コーマ準備機の駆動構成を示す線図。
【図6】同コーマ準備機の回路構成を示すブロック図。
【図7】(a)〜(c)は同コーマ準備機のラップ巻回動作を順に示す構成図。
【図8】(a)及び(b)は満巻ラップの排出動作及び空スプールの供給動作を示す構成図。
【図9】第2実施形態のコーマ準備機を示す構成図。
【図10】従来のコーマ準備機を示す構成図。
【図11】特許文献1の従来技術を示す構成図。
【図12】特許文献2の従来技術を示す構成図。
【図13】特許文献3の従来技術を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したコーマ準備機の第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0023】
図1に示すように、コーマ準備機のフレーム11の両側の側壁11a間には、バックドラム12及びフロントドラム13が一対の平行な軸線上において回転可能に支持されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、フレーム11の両側壁11aに形成された開口43にはそれぞれ斜め上方に延びる一対のレール44が固定されており、それらのレール44間には左右一対の移動体47が案内されている。図4に示すように、両移動体47には円筒状のシリンダ48が固定され、その軸線位置には内筒49が支持されるとともに、シリンダ48のピストン50が内筒49の外周に固定されている。そして、ピストン50の移動に従って内筒49がシリンダ48の軸線方向に移動される。内筒49の軸心部には支軸57がベアリングを介して回転可能に支持されており、フレーム11内に位置する支軸57の端部にはラッププレート16が固定されている。ラッププレート16間にはラップ14を巻回するための円筒状のスプール15が着脱可能に挟持される。このスプール15は前記両ドラム12,13上に載置される。
【0025】
フレーム11には接触圧調整手段としての加圧用シリンダ17が回動可能に配置され、そのピストンロッド17aが複数のレバーやリンク18a等を含む連結機構18を介して前記移動体47に連結されている(図2参照)。そして、この加圧用シリンダ17により、連結機構18及びラッププレート16介して、スプール15及びスプール15上のラップ14が両ドラム12,13に向かって付勢される。この加圧用シリンダ17の加圧力は、図2及び図6に示す位置センサ40の検出作用による電空レギュレータ17bの作動によって調整される。位置センサ40は前記移動体47の高さを検出する。この移動体47の高さはスプール15上のラップ14の巻径に対応する。
【0026】
図1に示すように、前記バックドラム12の上方においてフレーム11には、トップカレンダローラ19a及びボトムカレンダローラ19bを含む複数のカレンダローラ19が並設状態で回転可能に支持されている。そして、図示しないドローパートから供給されるラップ14が、各カレンダローラ19を経由してバックドラム12上に移送されて、スプール15の外周に張力の付与状態で巻回される。
【0027】
前記スプール15の上方においてフレーム11には、エンドレスのベルト20が複数のローラ21A,21B,21C,21E,21F及びローラ21Dに掛け渡された状態で配置されている。ローラ21A,21B,21C,21E,21F及びローラ21Dのうちで、ローラ21A,21Eを除き、ローラ21B,21C,21F及びローラ21Dはフレーム11に対して定位置で回転可能に支持されている。ここで、ローラ21Cはベルト20を走行させるための駆動用となっている。そして、図7(a)及び(b)に示すように、スプール15上に所定量のラップ14が巻回された後は、ベルト20の外側面がラップ14の外周面に圧接しながら接触される。
【0028】
前記スプール15を挟んでローラ21Bと反対側に位置するフロント側のローラ21Aは、図示しないガイド手段によってガイドされて、フレーム11に対して上下方向へ直線移動可能に支持されている。ローラ21Aの側方においてフレーム11には、ローラ移動用モータ22と、一対の歯付きローラ23a及び歯付きベルト23bよりなる開閉駆動機構23とが配置されている。そして、前記スプール15上に所要量のラップ14が巻回されて満巻ラップ15Aとなったとき、ローラ移動用モータ22の回転により、歯付きベルト23bが周回されて、ローラ21Aが図1に実線で示す下方の作用位置から鎖線で示す上方の退避位置に移動される。この移動により、図7(c)に示すように、ローラ21Aとフロントドラム13との間に、満巻ラップ15Aを排出するための開放部24が形成される。
【0029】
図1及び図3に示すように、フレーム11の上部には支持リング60が軸60aを介して回動可能に支持されており、この支持リング60にはローラ移動用シリンダ25が固定されている。前記ローラ21Cの軸59には作動レバー26が一端において回動可能に支持され、他端には前記ローラ21Eが支持されている。そして、前記ローラ移動用シリンダ25のピストンロッド25aの先端が作動レバー26の中間部に回動可能に連結されている。このため、ピストンロッド25aの出入りにより、作動レバー26がローラ21Cの軸を中心に回動されて、ローラ21Eが2位置間を上下方向に円弧移動される。そして、ローラ移動用シリンダ25の引き込み力により、ローラ21Eを介してベルト20に張力が付与される。このため、図7(a)及び(b)に示すように、ベルト20がスプール15上のラップ14の外周に圧接した状態で接触される。
【0030】
また、前記スプール15上のラップ14の巻径が増加するにつれて、ローラ21Eがローラ移動用シリンダ25の引き込み力に抗して下方に移動される。このため、ベルト20の緊張状態が維持されるとともに、前記巻径の増加にともないラップ14の外周上部におけるベルト20の接触領域が拡張されるようになっている。従って、この実施形態では、ローラ移動用シリンダ25により、ラップ14上のベルト20の接触領域を調整するとともに、ラップ14に対するベルト20の接触圧力を調整するための接触領域拡張手段及び接触圧力調整手段が構成されている。さらに、図7(c)に示すように、前記ローラ21Aが上方の退避位置に移動されて、満巻ラップ15Aを排出するための開放部24が形成されたとき、ローラ移動用シリンダ25の引き込み動作により、ローラ21Eが上限位置まで移動されて、ベルト20の弛みが吸収される。
【0031】
次に、前記ドラム12,13等を回転させるための駆動及び動力伝達構成について説明する。
図5に示すように、コーマ準備機のフレーム11には、メインモータ28が装備されている。そして、このメインモータ28の回転が一対のプーリ28a,28c及びそのプーリ28a,28c間のVベルトにより歯付きローラ29aに伝達される。そして、一対の歯付きローラ29a及び歯付きベルト29bよりなる伝達機構29と、複数の歯車30aよりなる減速機構30を介して、バックドラム12が回転される。それとともに、メインモータ28の回転により、一対の歯付きローラ31a及び歯付きベルト31bよりなる伝達機構31と、複数の歯車32aよりなる歯車機構32を介して、複数のカレンダローラ19が連動回転される。
【0032】
また、前記バックドラム12の回転にともなって、一対の歯付きローラ33a及び歯付きベルト33bよりなる伝達機構33を介して、フロントドラム13がバックドラム12と同一の周速度で同期回転される。それとともに、バックドラム12の回転にともなって、一対の歯付きローラ34a及び歯付きベルト34bよりなる伝達機構34と、複数の歯車35aよりなる減速機構35を介して、ベルト20用の駆動のローラ21Cが回転される。すなわち、この実施形態では、メインモータ28によって、ベルト20を走行させるための駆動手段が構成されている。このベルト20は前記両ドラム12,13の周速度よりわずかに速い速度で走行される。
【0033】
図4及び図5に示すように、前記両移動体47の外側部には、一対のプレート回転用モータ36がステー36aを介して支持されている。そして、このモータ36の回転により、一対の歯車37aよりなる歯車機構37を介して、両ラッププレート16が回転されて、そのラッププレート16間のスプール15が前記ドラム12,13やカレンダローラ19と独立して回転されるようになっている。従って、この実施形態では、プレート回転用モータ36によって、スプール15を単独で回転させるための駆動手段が構成されている。
【0034】
図5に示すように、両ラッププレート16の回転駆動部には、ラッププレート16つまりスプール15の回転を検出するためのプレート用エンコーダ41が配置されている。両ドラム12,13の回転軸部には、ドラム12,13の回転を検出するためのドラム用エンコーダ42が配置されている。
【0035】
次に、前記のように構成されたコーマ準備機の電気回路構成について説明する。
図6に示すように、制御装置45はコーマ準備機全体の動作を制御するための制御手段を構成している。制御装置45には、位置センサ40、プレート用エンコーダ41及びドラム用エンコーダ42から検出信号が入力されるとともに、操作部46から操作入力信号等が入力される。制御装置45からは、前記メインモータ28、プレート回転用モータ36、ローラ移動用モータ22、加圧用シリンダ17による付勢力を調整するための電空レギュレータ17b及びローラ移動用シリンダ25を切り換えるための電磁弁25bに対して作動信号が出力される。
【0036】
そして、前記制御装置45は、プレート用エンコーダ41からスプール15の回転数の検出信号を入力するごとに、スプール15上のラップ14の巻径増大に対応する係数で、プレート回転用モータ36の回転速度を制御して、スプール15上のラップ14の周速度をドラム12,13の周速度に対して所要の関係を有するように調整する。この調整により、常にラップ14を張力の付与状態でスプール15上に巻回させるように、ラップ14の巻回速度がドラム12,13の周速度よりわずかに速く、前記ベルト20の走行速度よりわずかに遅くなるようにしている。つまり、この実施形態では、制御装置45によって、スプール15の回転速度を調節するための速度調節手段が構成されている。ここで、制御装置45は、位置センサ40からの移動体47の高さ信号、すなわちラップ14の巻径を示す検出信号を入力し、その加圧用シリンダ17による加圧力、すなわちドラム12,13に対するスプール15上のラップ14の接触圧力が所定値を維持するように、電空レギュレータ17bの作動を制御する。
【0037】
次に、前記のように構成されたコーマ準備機の作用を説明する。
図1に示すように、両ドラム12,13上にスプール15が設置された状態で、コーマ準備機が運転されると、メインモータ28により、両ドラム12,13及び各カレンダローラ19が回転されるとともに、ベルト20が走行される。また、プレート回転用モータ36により、スプール15が単独で回転される。この回転により、図7(a)に示すように、ドローパートから供給されるラップ14が、各カレンダローラ19を経由してバックドラム12上に移送されて、スプール15の外周に巻回される。この場合、ラップ14の巻回速度がドラム12,13の周速度よりわずかに速いが、ラップ14とドラム12,13との間には滑りが生じる。従って、ラップ14はスプール上に適度の緊張状態で巻回される。
【0038】
そして、図7(a)に示すように、スプール15上に所定量のラップ14が巻回された後は、ベルト20がラップ14の外周面に圧接して接触されるようになる。この場合、図7(b)に示すように、ローラ21A,21Bが定位置であるため、スプール15上のラップ14の巻径が増加するにつれて、ラップ14の外周上部におけるベルト20の接触領域が次第に拡張される。このため、スプール15上のラップ14の巻径が増加するにつれて、ベルト20の接触領域の比率が高くなる。言い換えれば、スプール15上のラップ14が厚くなって変形しやすくなるにつれて、それ以前よりもベルト20の接触領域の比率が高くなる。そして、スプール15上のラップ14は、フロントドラム13による下方の加圧点から解放された後に、長い距離をおくことなくベルト20の接触部によって加圧される。よって、ラップ14の外周上部に膨らみが生じるおそれはなく、ラップ14が均質な状態で巻回形成される。また、ベルト20は、ラップ14の巻回速度よりわずかに速い速度で走行される。このため、ラップ14は常に緊張状態で巻回され、ラップ14の巻径が増加するにつれて、ラップ14の巻回状態が次第に柔らかくなるおそれはなく、均質な密度のラップ14が巻回形成される。なお、スプール15に対するラップ14の巻回量が少ない状態(小玉ラップ状態)では、ラップ14の巻回径が小さいため、ラップ14の膨らみはほとんど生じない。従って、この状態においては、ベルト20によりラップ14に対する接触は必要ない。
【0039】
また、前記スプール15上へのラップ14の巻回時には、プレート用エンコーダ41によりスプール15の積算回転数が検出される。そして、この積算回転数の検出信号に基づいてスプール15の回転ごとに、ラップ14の巻径増大に対応する係数で、プレート回転用モータ36の回転速度が調整される。これによって、常にラップ14が所定の張力の付与状態でスプール15上に巻回される。それとともに、位置センサ40により移動体47の高さが検出される。そして、制御装置45は、電空レギュレータ17bの作動を制御して、加圧用シリンダ17の加圧力を調整し、スプール15上のラップ14によるドラム12,13に対する接触圧が漸減され、またはほぼ一定を維持される。
【0040】
そして、図7(b)に示すように、スプール15上に所要量のラップ14が巻回されて、満巻ラップ15Aになると、加圧用シリンダ17によるスプール15の下方への加圧力(接触圧)付与が解放される。その後、メインモータ28が停止されて、両ドラム12,13及び各カレンダローラ19の回転が停止されるとともに、ベルト20の走行が停止される。この状態で、プレート回転用モータ36により、スプール15が単独で低速回転されて、満巻ラップ15Aに連なるラップ14の上流側の部分が引きちぎられるようにして切断される。
【0041】
続いて、図7(c)に示すように、ローラ移動用モータ22の回転により、ベルト20用のローラ21Aが下方の作用位置から上方の退避位置に移動されて、ローラ21Aとフロントドラム13との間に、満巻ラップ15Aを排出するための開放部24が形成される。このとき、ローラ移動用シリンダ25の引き込み動作により、ローラ21Eが上限位置まで移動されて、ベルト20の弛みが吸収される。そして、図8(a)に示すように、ドラム12,13上の満巻ラップ15Aが、ラップガイド38を介して開放部24から前方側に排出される。
【0042】
その後、図8(b)に示すように、ラップガイド38が上方に退避回動されるとともに、スプール供給レバー39が退避位置から供給位置に回動されて、空スプール15Bが両ドラム12,13上の巻回位置に供給される。この状態で、ラップガイド38及び供給レバー39が原位置に復帰回動されるとともに、ローラ21A,21Eが下方に復帰移動されて、図1に示すように、ベルト20がスプール15に近接して張設される。そして、この状態において空スプール15Bがラッププレート16間に挟持されて次のスプール15に対するラップ14の巻回動作が再開される。
【0043】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このコーマ準備機においては、回転可能なドラム12,13上にスプール15が設置され、ドラム12,13の回転にともなうスプール15の回転により、そのスプール15上にラップ14が巻回される。そして、スプール15上のラップ14の外周面に圧接状態で接触されるように、スプール15を挟んだ2箇所のローラ21A,21B間にはベルト20が掛け渡されている。
【0044】
このため、ドラム12,13の回転にともなうスプール15の回転によって、スプール15上にラップ14が巻回される際には、そのラップ14の外周がベルト20によりローラ21A,21B間の広い範囲にわたって押圧される。そして、ラップ14の巻径が増大しても、それに応じてベルト20のローラ21A,21B間の部分が上方へ膨らむようになって、ラップ14との接触領域が広がり、ラップ14とドラム12,13との接触点と、ラップ14とベルト20との接触開始側の接触点P1及び接触終了側の接触点P2との間隔は狭い状態が維持される。よって、スプール15上のラップ14がドラム13との接触点から解放された後に、ラップ14の外周上部に膨らみが生じたり、ドラム12との接触前に小さな曲率の膨らみが生じたりするおそれを抑制することができる。従って、ラップのゲレン変動等を抑制して、スプール15上に膨らみのない均質な巻回状態(硬さ)のラップ14を巻回形成することができる。
【0045】
(2) このコーマ準備機においては、前記一方のローラ21Aが定位置から移動されることにより、そのローラ21Aに対応するドラム13とローラ21Aとの間に開放部24が形成され、その開放部24から満巻ラップ15Aが排出される。このため、ベルト20及びそのベルト20を掛け渡すためのローラ21Aが邪魔になることなく、ドラム13とローラ21Aとの間の開放部24を介して、満巻ラップ15Aをドラム12,13上の巻回位置から容易に排出することができる。
【0046】
(3) このコーマ準備機においては、ローラ移動用シリンダ25とローラ移動用モータ22とにより、前記スプール15上のラップ14の巻径の増加につれて、ラップ14に対するベルト20の接触範囲が広くなるようになっている。このため、結果として、ラップ14の巻径が増大すると、それにともなってラップ14上のベルト20の接触領域が拡大される。よって、ラップ14の巻径が増加しても、ドラム12,13によるラップ14の外周下部の加圧部位と、ベルト20によるラップ14の外周上部の加圧部位との間の距離が離れることを防止することができて、ラップ14の外周上部に膨らみが生じるおそれを一層効果的に抑制することができる。
【0047】
(4) このコーマ準備機においては、スプール15上のラップ14の巻径が変化しても、加圧用シリンダ17による加圧力、すなわちラップ14とドラム12,13との接触圧がほぼ一定になるように調整される。このため、ラップ14はスプール15上に均等な圧力で巻回され、前記のようなゲレン変動やリッキングを防止することができる。
【0048】
(5) このコーマ準備機においては、前記スプール15を単独で回転させるためのプレート回転用モータ36が設けられている。また、スプール15上のラップ14の巻回速度とドラム12,13の周速度との関係を調節するための速度調節手段としての制御装置45が設けられている。このため、スプール15上のラップ14の巻径が増加しても、そのラップ14の周速度を調整することにより、ラップ14を所要の張力の付与状態でスプール15上に巻回することができる。よって、スプール15上のラップ14の巻径が増加しても、ラップ14の厚さや密度が変化することを防止することができる。従って、前記と同様にラップのゲレン変動やリッキング等を防止して、均質なラップ14を巻回形成することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したコーマ準備機の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
この第2実施形態では、図9に示すように、前記第1実施形態におけるフロントドラム13が省略され、スプール15が1つのバックドラム12上に設置されるようになっている。
【0051】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(5)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(6) この実施形態においては、スプール15が1つのドラム12上に設置されるようになっている。このため、一対のドラムを設けた構成に比較して、構造の簡略化及び小型化を図ることができて、安価なコーマ準備機を提供することがでる。
【0052】
(7) この実施形態においては、ドラム12が1つであるため、ローラ21Aの位置を充分に下げることができる。このため、ラップ14に対するベルト20の接触領域を広くすることができて、ラップ14の均質な巻回に寄与できる。
【0053】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ ベルト20をメインモータ28とは異なった独立のモータにより走行させるように構成すること。
【0054】
・ ベルト20に対してシリンダ25とは異なったバネや電動モータ等の張力付与手段により、張力を付与するように構成すること。
・ スプール15上のラップ14の巻径増加につれて、ローラ移動用シリンダ25の動作を制御して、ラップ14の外周面に対するベルト20の圧接力を漸減させるように構成すること。このようにすれば、巻き始めから巻き終わりまで均質な張力の巻回が可能となる。
【0055】
・ プレート回転用モータ36を1基とし、一方のラッププレート16に回転を伝達するように構成すること。
・ スプール15上のラップ14の厚みを検出するセンサを設け、そのセンサからの検出結果に応じてスプール15の回転速度を制御すること。
【0056】
・ 前記各実施形態では加圧用シリンダ17及びローラ移動用シリンダ25を空圧シリンダとしたが、油圧シリンダを用いること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握されるが、請求項に記載されていない技術的思想は以下の通りである。
【0057】
(A) 回転可能なドラム上にスプールを設置し、ドラムの回転にともなうスプールの回転によりそのスプール上にラップを巻回するようにしたコーマ準備機において、
前記スプールを単独で回転させるためのスプール駆動手段を設けたことを特徴とするコーマ準備機。
【0058】
このようにすれば、メインモータ28から動力を得る場合とは異なり、スプールまでの動力伝達系が不要になって、装置構成の簡素化及び小型化を達成できる。また、ラップの材質や必要とする硬さ等に応じて、スプールの回転速度を単独で制御できる。
【0059】
(B) スプール上のラップの巻径の変化に応じてスプールの回転数を調整するための調整手段を設けたことを特徴とする前記技術的思想(A)項に記載のコーマ準備機。
このようにすれば、スプール上のラップの巻径が増加しても、スプールの回転速度を調整することにより、ラップを所要の張力の付与状態でスプール上に巻回することができる。
【符号の説明】
【0060】
12…バックドラム、13…フロントドラム、14…ラップ、15…スプール、15A…満巻ラップ、17…加圧用シリンダ、20…ベルト、21A〜21F…ローラ、22…ローラ移動用モータ、24…開放部、25…調整手段としてのローラ移動用シリンダ、28…ベルトの駆動手段としてのメインモータ、36…スプールの駆動手段としてのプレート回転用モータ、45…制御手段及び速度調節手段を構成する制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なドラム上にスプールを設置し、ドラムの回転にともなうスプールの回転によりそのスプール上にラップを巻回するようにしたコーマ準備機において、
前記スプールを挟んだ2箇所のローラ間に掛け渡され、スプール上のラップの外周面上に接触されるベルトと、
そのベルトをラップの回転とともに走行させる駆動手段と
を備えたことを特徴とするコーマ準備機。
【請求項2】
前記一方のローラと、そのローラに対応する一方のドラムとの少なくとも一方を定位置から移動させて、ドラムとローラとの間に開放部を形成し、その開放部から満巻ラップを排出させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のコーマ準備機。
【請求項3】
前記スプール上のラップの巻径の増加にともないラップの外周上部におけるベルトの接触領域が拡張されるようにするための接触領域拡張手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のコーマ準備機。
【請求項4】
スプール上のラップの巻径の変化に従い、ドラムに対するラップの接触圧を調整するための接触圧調整手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のコーマ準備機。
【請求項5】
前記ラップに対するベルトの接触圧力を調整するための接触圧力調整手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のコーマ準備機。
【請求項6】
前記スプールを単独で回転させるための駆動手段と、前記ドラムの周速度にあわせてスプールの回転速度を調節するための速度調節手段とを設けたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のコーマ準備機。
【請求項1】
回転可能なドラム上にスプールを設置し、ドラムの回転にともなうスプールの回転によりそのスプール上にラップを巻回するようにしたコーマ準備機において、
前記スプールを挟んだ2箇所のローラ間に掛け渡され、スプール上のラップの外周面上に接触されるベルトと、
そのベルトをラップの回転とともに走行させる駆動手段と
を備えたことを特徴とするコーマ準備機。
【請求項2】
前記一方のローラと、そのローラに対応する一方のドラムとの少なくとも一方を定位置から移動させて、ドラムとローラとの間に開放部を形成し、その開放部から満巻ラップを排出させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のコーマ準備機。
【請求項3】
前記スプール上のラップの巻径の増加にともないラップの外周上部におけるベルトの接触領域が拡張されるようにするための接触領域拡張手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のコーマ準備機。
【請求項4】
スプール上のラップの巻径の変化に従い、ドラムに対するラップの接触圧を調整するための接触圧調整手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のコーマ準備機。
【請求項5】
前記ラップに対するベルトの接触圧力を調整するための接触圧力調整手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のコーマ準備機。
【請求項6】
前記スプールを単独で回転させるための駆動手段と、前記ドラムの周速度にあわせてスプールの回転速度を調節するための速度調節手段とを設けたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のコーマ準備機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−76172(P2013−76172A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214944(P2011−214944)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000142805)株式会社原織機製作所 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000142805)株式会社原織機製作所 (8)
【Fターム(参考)】
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