説明

コールピックアップシステム及び装置

【課題】多地点会議システムと連携を図り拠点間のコールピックアップを実現する。
【解決手段】本発明のコールピックアップシステムは、拠点毎の多地点会議手段と、拠点内において予め設定された1又は複数のグループに属する電話端末に着信があった場合に、そのグループに属する他の電話端末からのコールピックアップ要求を受け、着信のあった電話端末の着信呼を他の電話端末と接続させるコールピックアップ機能を有する呼処理手段とを備え、呼処理手段が、他の拠点と接続する多地点会議手段の接続状況に応じて、第1の拠点に設置されている電話端末に着信がある場合に、第2の拠点の電話端末からのコールピックアップ要求を受け、第1の拠点の電話端末の着信呼を第2の拠点の電話端末に接続させる拠点間コールピックアップを行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールピックアップシステム及び装置に関し、例えば内線電話のコールピックアップ機能を設定するシステムに適用し得るものであり、特に常時接続ビデオ会議システムとの間で連携処理を行うシステムに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の拠点間を常時接続する形態で運用し、それら拠点間を仮想的に1つの拠点であるかのように見せるビデオ会議システムがある(非特許文献1参照)。
【0003】
ビデオ会議システムは、従来から種々の形態で運用されているが、近年では非特許文献1に記載されているように、拠点間を常時接続して、大型ディスプレイに他の拠点の様子を常時映し出すという形態でも運用されている。このように常時接続を行うことで、相互の拠点における様子を大型ディスプレイに映し出すことで一体感が醸成されるというメリットがある。
【0004】
例えば、図2を用いて常時接続によるビデオ会議システムの運用概念を説明する。各拠点はそれぞれ大部屋であり、その部屋の中を広角に撮像可能なカメラと、例えば「窓」のように、反対拠点の部屋の様子を映し出す大型ディスプレイを設置する。拠点間を常時接続することで、反対拠点の部屋の映像を常時映し出すことができ、映像と音声を用いて常時コミュニケーションがとれるようにする。
【0005】
しかしながら、このような常時接続のビデオ会議システムを導入するようにしても、通常、旧来の内線電話システムを別途利用している。
【0006】
このような運用形態の場合、拠点間を空間として融合するための常時接続ビデオ会議システムと、各人の間で要件を伝達するための内線電話機とを使い分ける必要がある。
【0007】
例えば、図2に示すように、ビデオ会議システムを各拠点に設置して運用していても、従来のように、各担当者の机の上に内線電話機を置いたり、各担当者が内線PHSを所持したりしており、ビデオ会議システムとは異なる伝達手段として、内線電話システムを活用している。なお、常時接続ビデオ会議システムは外線接続しない場合でも、内線電話機は外線とつながるようになっているような運用があり得る。
【0008】
従来、内線電話システムにおいては、コールピックアップ機能というものがある。内線電話におけるコールピックアップとは、他の人の机の上で電話が鳴っているときに、別の電話機で一定の操作(例えば特番ダイアルの押下等)を行うことで、操作を行った電話機から応答できるという機能である。
【0009】
コールピックアップ機能は、従来から広く適用されており、例えば、Internet−Draftとして、SIP(Session Initiation Protocol)を利用してコールピックアップ機能を実現する技術が、非特許文献2に記載されている。また、このInternet−Draftとは異なる方法として、特許文献1に記載の技術がある。
【0010】
このコールピックアップ機能は、コールピックアップグループを設定する必要があり、同一グループ内に属する電話機間で実現される。一般に、コールピックアップ機能は、構内交換機(例えばPBX)の機能として実現されるが、例えばSIPを利用して構築された電話システムにおいては、必ずしも構内交換機の機能に限定されるものではない。例えば、構内交換機の代わりに、SIP Proxyがそれに似たような役割を担うことがある。以下では説明の都合上、主にSIPでどのようになるかについて説明する。
【0011】
図3は、SIPを用いたコールピックアップシステムの構成を示す構成図である。また、図4は、コールピックアップ手順を示すシーケンス図である。
【0012】
図3において、ある拠点のコールピックアップシステムは、内線用SIP Proxy101、内線電話機(SIP UA:User Agent)102−1〜102−N(Nは正の整数)を備える。内線電話機102−1〜102−Nは、いずれも直接対外接続されているわけではなく、内線用SIP Proxy101とLAN接続されており、内線用SIP Proxy101を通して外部と通信する。内線用SIP Proxy101は、対外接続111を通して、直接外部のネットワーク(例えば、WAN、The Internet等)と接続している。
【0013】
図4では、外線の電話機250が、拠点Bの内線電話機102−1宛に発信した場合であって、同じ拠点Bの内線電話機102−2がコールピックアップし、その後切断するまでの手順を示す。
【0014】
図4において、内線用SIP Proxy101は、コールピックアップグループ内でリクエストがフォワードされるSIP URI(Uniform Resource Identifier)を公開している。
【0015】
外部の電話機250が電話機102−1に対して発信すると、SIP Proxy101は内線電話機102−1にINVITEを送信し、内線電話機102−1は呼出音を鳴動する。
【0016】
このとき、例えば内線電話機102−1のユーザが不在であり、呼出音に気づいた他のユーザが、内線電話機102−2の特番ダイアルを押下する。
【0017】
内線電話機102−2は、SIP Proxy101が公開しているところの、コールピックアップグループ内でリクエストがフォワードされるSIP URI宛にSUBSCRIBEを送信する。
【0018】
SIP Proxy101は、それをコールピックアップグループに属する内線電話機102−n(1≦n≦N)に転送する。なお、図4のシーケンス図では内線電話機102−1にしか転送されていないように見えるが、コールピックアップグループに複数台の内線電話機102−nが設定されている場合、当該コールピックアップグループに属する全ての内線電話機102−nに転送される。したがってSUBSCRIBEは、SIP Proxy101からINVITEが与えられた内線電話機102−1にも転送される。
【0019】
そして、外部の電話機205から内線電話機102−1に対して呼び出し中であることを示すNOTIFYが、内線電話機102−1から、SIP Proxy101を介して内線電話機102−2に与えられる。
【0020】
内線電話機102−2は、Replace指定のINVITEを電話機250のSIP URIを指定し、SIP Proxy101を経由して送信する。その後は、内線電話機102−2と電話機250との間のセッション処理により呼が確立される。上記のようにして、コールピックアップの処理が実現される。
【0021】
さらに、内線電話におけるコールピックアップグループを動的に変更する方法・装置として、特許文献2に記載の技術がある。
【0022】
コールピックアップ機能を実現するためには、コープピックアップが可能なグループをPBX設置時に設定する必要があるが、利便性を増大させるために、特許文献2には、時間帯に応じてコールピックアップグループの設定を動的に変更する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2005−244415号公報
【特許文献2】特開平6−284196号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】エスアイアイ・ネットワーク・システム株式会社、業界トレンドWatch、「拠点間のコミュニケーションを加速するテレプレゼンス」、2009年3月12日検索、http://www.sii.co.jp/ns/trend/telepresence/telepresence.html
【非特許文献2】SIP(Session Initiation Protocol) RFC3261 「Call Pickup Example in SIP: http://tools.IETF.org/html/draft-worley-sipping-pickup-03」、 「Group call pickup: http://tools.IETF.org/html/draft-worley-sipping-pickup-03#section-1」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、以下のような場合を想定すると、常時接続によるビデオ会議システムの提供する利便性が損なわれる場合があることがわかる。
【0026】
通常、同一拠点で電話機の着信音が聞こえたら、その電話機をオフフックしたり、上述したようにコールピックアップ機能により自身の電話機を用いてコールピックアップしたりすることができる。
【0027】
しかしながら、図5に示すように、常時接続のビデオ会議システムを利用している場合、相手拠点での電話機の着信音は聞こえるが、その相手拠点の電話機の着信をとることができないという問題がある。このことは、以下の観点から問題となる。
【0028】
(a)相手拠点と自分の拠点との違いを必要以上に強調し、システムによって醸成される、両拠点間の一体感を損なう。
【0029】
(b)相手拠点で忙しく、自分拠点がみな暇そうにしているときに、電話をとる作業を代行できないのは不便である。また、作業を互いに協力しあうことによって信頼関係が醸成されるという点に着目すると、これも一体感の醸成に対する障害となり得るものといえる。
【0030】
上記のような問題に対して、既存の技術を利用することで解決することも考えられる。
【0031】
例えば、図5に示すビデオ会議システムでは、拠点A(又は拠点B)のビデオ会議の接続先が、常時拠点B(又は拠点A)で固定されており、両拠点のビデオ会議システムに常時電源が入っているのであれば、両拠点で利用している内線電話を統括するPBX等の設定で、両拠点を同一のコールピックアップグループに設定することである。
【0032】
しかし、ビデオ会議システムが完全には常時接続ではない場合は、それではうまくいかず、以下のような問題が起こり得る。
【0033】
(1)まず、ビデオ会議システムが時々切断したり、運用を止めたりする場合に対応することができないという問題が考えられる。
【0034】
例えば、拠点Aと拠点Bとの間にビデオ会議システムがあり、コールピックアップグループが固定的に設定されているものとする。省エネルギーのために両拠点のビデオ会議システムの運用を19:00で停止するものとする。拠点Bでは何人かの人が19:00を過ぎても残業しているものとする。このとき、拠点AとBの両方で、外から電話がかかってきたとする。拠点Bでコールピックアップ操作をした場合、拠点Bの電話だけがコールピックアップ可能になっているべきであるが、コールピックアップグループを固定的に設定していると、拠点Aの電話もピックアップすることができてしまう。それは拠点Bのユーザが意図しない動作であり、好ましくない。
【0035】
(2)また、ビデオ会議システムの接続相手の拠点が時々変わる場合に対応できないという問題が考えられる。
【0036】
一般的に、ビデオ会議システム自体も一種の電話端末であり、いろんな場所につながることを想定しなければならない。なお、接続相手の拠点が時々変わる場合というのは、例えば以下のような状況が考えられる。
【0037】
例えば、巨大な企業で、アドホックな仮想チーム(地理的に分散されている;ただしタイムゾーン的には集中しているほうが好ましい)が構築されては消えるような状況が考えられる。例えば、月曜日にはその企業のRoom047とRoom101の人たちが、(物理的には自分たちの元の居場所にいながら)仮想的な大部屋を組んで仕事をするが、木曜日にはRoom047はRoom112の人たちと仮想的な大部屋を組んで仕事をするなどという状況がある。そのような状況が起こり得る環境が、1つの企業に閉じていなければならない理由はない。例えば、複数の企業が組み合わさってバーチャルな企業を形成することも考えられる。このように、接続相手の拠点が変化する場合に充分に対応することができない。
【0038】
(3)さらに、特許文献2の記載技術のように、ユーザ等の操作により、利用するコールピックアップグループを動的に変更する仕組みを利用することで、コールピックアップグループの設定を手動で解決するという方法も考えられる。
【0039】
例えば、ビデオ会議システムを時々切断したり、運用を止めたりする場合には、切断・運用停止の都度、手動でコールピックアップグループを解除することで実現できる。また例えば、設定時刻やビデオ会議システムの接続相手が代わる毎に、コールピックアップグループを変更することが考えられる。
【0040】
しかしながら、コールピックアップグループを動的に変更する場合でも、コールピックアップグループの編成作業は手作業で行う必要がある。そのため、設定時刻やビデオ会議システムの接続相手が代わるたびに、それぞれコールピックアップグループの編成を行う必要がある。
【0041】
また、上記のように、コールピックアップグループの編成作業は手動で行う必要があるため、その管理が煩わしいばかりでなく、誤操作による不具合を招くことにもなる。例えば、運用停止後のコールピックアップグループの解除を忘れると、上述したような問題がやはり発生することとなり、充分な解決策とならない。
【0042】
そのため、常時接続するビデオ会議システムと連携を図りながら内線電話のコールピックアップ機能を実現することができるコールピックアップシステム及び装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0043】
かかる課題を解決するために、第1の本発明のコールピックアップシステムは、(1)少なくとも、拠点内に設けられた1又は複数のマイクが捕捉した音を音信号として他の拠点に送信し、又他の拠点から受信した音信号に基づき当該他の拠点の音を出力する拠点毎の多地点会議手段と、(2)拠点内において予め設定された1又は複数のグループに属する電話端末に着信があった場合に、そのグループに属する他の電話端末からのコールピックアップ要求を受け、着信のあった電話端末の着信呼を他の電話端末と接続させるコールピックアップ機能を有する呼処理手段とを備え、呼処理手段が、他の拠点と接続する多地点会議手段の接続状況に応じて、第1の拠点に設置されている電話端末に着信がある場合に、第2の拠点の電話端末からのコールピックアップ要求を受け、第1の拠点の電話端末の着信呼を第2の拠点の電話端末に接続させる拠点間コールピックアップを行うことを特徴とする。
【0044】
ここで、多地点会議手段は、例えば、複数の拠点間で、音声データ、動画像データ、静止画データ、テキストデータなどのいずれか又はこれらを組み合わせたメディアデータを送受信して会議を実現する手段であり、後述するビデオ会議端末12、22を含む概念である。また、呼処理手段は、電話端末同士の呼処理を行うものであり、後述する内線連携処理手段11、21を含む概念である。
【0045】
第2の本発明のコールピックアップ装置は、1又は複数のグループに属する電話端末からのコールピックアップ要求に応じて、同一グループに属する他の電話端末への着信呼を、電話端末に着信させるコールピックアップ装置であって、(1)多地点会議手段が相手拠点との接続処理の際に取得した、相手拠点に設定されている拠点間のコールピックアップ要求を受け付ける第1の要求先を、多地点会議手段から受け取り、第1の要求先を各グループに設定する設定手段と、(2)電話端末からコールピックアップ要求を受けると、電話端末のグループに属する他の電話端末に対してコールピックアップ要求を送信すると共に、相手拠点の第1の要求先にもコールピックアップ要求を送信するコールピックアップ要求転送手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、多地点会議システムとの連携を図りながら、拠点間のコールピックアップ処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態の拠点におけるコールピックアップシステムの構成を示す構成図である。
【図2】従来のビデオ会議システムの構成を示す構成図である。
【図3】従来のSIPを採用したコールピックアップシステムの構成を示す構成図である。
【図4】従来のSIPを採用したコールピックアップ手順を示すシーケンス図である。
【図5】従来のビデオ会議システムを採用した拠点間での問題点を説明する説明図である。
【図6】第1の実施形態のビデオ会議端末及び内線連携処理手段の内部構成を示す構成図である。
【図7】第1の実施形態のコールピックアップグループの設定を説明する説明図である。
【図8】第1の実施形態のコールピックアップ処理を示すシーケンス図である(その1)。
【図9】第1の実施形態のコールピックアップ処理を示すシーケンス図である(その2)。
【図10】第2の実施形態の拠点におけるコールピックアップシステムの構成を示す構成図である。
【図11】第2の実施形態の個体識別性を有する着信音データの生成の一例を説明する説明図である。
【図12】第2の実施形態のビデオ会議端末、内線連携処理手段及び着信音−内線電話個体番号対応DBの内部構成を示す構成図である。
【図13】第2の実施形態のコールピックアップグループの設定を説明する説明図である。
【図14】第2の実施形態のコールピックアップ処理を示すシーケンス図である(その1)。
【図15】第2の実施形態のコールピックアップ処理を示すシーケンス図である(その2)。
【図16】第2の実施形態のコールピックアップ処理の動作を説明する説明図である。
【図17】変形実施形態のコールピックアップ処理を示すシーケンス図である(その1)。
【図18】変形実施形態のコールピックアップ処理を示すシーケンス図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明のコールピックアップシステム及び装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0049】
第1の実施形態では、拠点Aと拠点Bとの間に設置されるビデオ会議システムの接続状況に連動して、内線電話のコールピックアップグループを設定するシステムを例示して説明する。
【0050】
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)全体構成
図1は、第1の実施形態の各拠点におけるコールピックアップシステム100の構成を示す構成図である。
【0051】
図1において、第1の実施形態に係るコールピックアップシステム100は、内線連携処理手段11、内線電話機102−n(1≦n≦N:Nは正の整数)、ビデオ会議端末12、カメラ132、ディスプレイ133、マイク134、スピーカー135を少なくとも有して構成される。
【0052】
内線連携処理手段11は、例えば、SIPを用いた呼処理を行う呼処理手段であり、例えば、SIP Proxyが該当する。内線連携処理手段11は、ビデオ会議を行うビデオ会議端末12の接続状況に応じて、拠点間のコールピックアップを行うものである。
【0053】
内線連携処理手段11は、予め設定された、第1の要求先であるローカル転送用のコールピックアップSIP URI(以下、ローカル転送用SIP URI)と、第2の要求先であるコールピックアップ用のコールピックアップSIP URI(以下、コールピックアップ用SIP URI)とを有する。
【0054】
また、内線連携処理手段11は、ビデオ会議端末12が相手拠点との間でビデオ会議を開始する際に、ビデオ会議端末12を通じて、相手拠点のローカル転送用SIP URIを取得し、この相手拠点のローカル転送用SIP URIを、コールピックアップ用SIP URIの転送先に追加する。
【0055】
ここで、第1の要求先であるローカル転送用SIP URIとは、内線連携処理手段11が、相手拠点の内線連携処理手段11に対して、コールピックアップ要求を送信する送信先情報をいう。一方、第2の要求先であるコールピックアップ用SIP URIは、コールピックアップを要求する内線電話機が、コールピックアップ要求信号を送信する送信先情報をいう。コールピックアップ用SIP URIは、拠点毎に定義することができる。
【0056】
また、コールピックアップ用SIP URIとローカル転送用SIP URIとの違いは、コールピックアップ用SIP URIは、ビデオ会議中にコールピックアップ要求信号を相手拠点に転送することができるのに対して、ローカル転送用SIP URIは、ビデオ会議中に相手拠点に転送することができない点で異なる。
【0057】
内線電話機102−n(1≦n≦N)は、拠点内に設置されている内線電話機であり、例えば、既存の電話機、内線用PHS端末、PC上でソフトウェアの実行により電話機能を実現するいわゆるソフトフォン等が該当する。
【0058】
内線電話機102−nは、例えばSIP Proxyである内線連携処理手段11に対してSIP UAに相当するものである。従って、内線電話機102−nは、外部(相手拠点側も含む)と通信する場合には、SIP Proxyである内線連携処理手段11を介して行うものである。
【0059】
また、内線電話機102−nは、自身の拠点の内線連携処理手段11が提供するコールピックアップ用SIP URIを保持(設定)しており、例えば、ユーザにより特番ダイアルが押下されると、コールピックアップ用SIP URIに向けて、コールピックアップ要求信号を送信するものである。
【0060】
ビデオ会議端末12は、カメラ132、ディスプレイ133、マイク134、スピーカー135と接続し、自身の拠点と相手拠点との間でビデオ会議を実施する情報処理装置である。ビデオ会議端末12によるビデオ会議処理の方式は、特に限定されるものではなく、広く適用することができる。
【0061】
また、ビデオ会議端末12は、自身の拠点のコールピックアップ用SIP URI及びローカル転送用SIP URIを有している。ビデオ会議端末12は、相手拠点との間でビデオ会議を開始する際、相手拠点のビデオ会議端末12との間で、相手拠点のローカル転送用SIP URIを取得し、取得した相手拠点のローカル転送用SIP URIを内線連携処理手段11に与えるものである。これにより、内線連携処理手段11は、自身の拠点のコールピックアップグループに相手拠点でのコールピックアップグループを連結させることができる。
【0062】
なお、第1の実施形態では、ビデオ会議を行う場合を例示するが、ビデオ会議端末12は、例えば、音データ、映像データ、静止画データ、テキストデータ等のいずれか又はこれらのデータを組み合わせたメディアデータを送受信することができる会議端末を適用することができるものである。
【0063】
また、ビデオ会議端末12と内線連携処理手段11との間は、例えばSIPを用いて情報交換を行うことができるが、情報交換ができるプロトコルであれば特に限定されるものではない。さらに、ビデオ会議端末12と内線連携処理手段11との間は、接続関係を簡略にすることから直接接続する場合を示すが、両者の間にSIP Proxy等を介在させるようにしても良い。
【0064】
カメラ132は、拠点とする室内を撮像する撮像手段であり、撮像した画像データをビデオ会議端末12に与えるものである。カメラ132は、例えば、撮像範囲が広角ないわゆる俯瞰カメラ等を適用することができる。
【0065】
ディスプレイ133は、ビデオ会議端末12から相手拠点の撮像画像データを受け取り、相手拠点の画像を映し出す表示手段である。
【0066】
マイク134は、拠点内の音(環境音)を捕捉し、その音信号をビデオ会議端末12に与えるものである。これにより、拠点内で生じる音を、相手拠点側に伝えることができる。この実施形態では、特に、拠点内の内線電話機102−nに着信があった場合に、その着信音を捕捉し、相手拠点に伝える。これにより、相手拠点側に自身の拠点の着信を認識させることができる。
【0067】
スピーカー135は、相手拠点のマイク134が捕捉した音を出力する音出力手段である。
【0068】
(A−1−2)内線連携処理手段11及びビデオ会議端末12の内部構成
図6は、内線連携処理手段11及びビデオ会議端末12の内部構成を示す構成図である。
【0069】
図6において、ビデオ会議端末12は、ビデオ会議制御部121、ローカル転送用SIP URI授受部122、一時グループ設定依頼部123、一時グループ設定解除部124を少なくとも有する。
【0070】
ビデオ会議制御部121は、ビデオ会議処理を制御するものである。
【0071】
ローカル転送用SIP URI授受部122は、ビデオ会議制御部121による相手拠点との間でビデオ会議を開始する際に、相手拠点のビデオ会議端末12との間で、ローカル転送用SIP URIの授受を行うものである。
【0072】
一時グループ設定依頼部123は、ローカル転送用SIP URI授受部122が取得した相手拠点のローカル転送用SIP URIを、内線連携処理手段11の一時グループ設定部151に与えて、一時的にコールピックアップ用SIP URIの転送先に追加するよう依頼するものである。
【0073】
一時グループ設定解除部124は、ビデオ会議制御部121により相手拠点との間のビデオ会議が終了した場合に、内線連携処理手段11の一時グループ設定部151に対して、一時的に設定した相手拠点のローカル転送用SIP URIの設定解除を依頼するものである。
【0074】
また図6において、内線連携処理手段11は、一時グループ設定部151、コールピックアップ要求転送部152、拠点内コールピックアップ要求転送部153、拠点間コールピックアップ要求転送部154を少なくとも有するものである。
【0075】
一時グループ設定部151は、ビデオ会議端末12の一時グループ設定依頼部123から相手拠点のローカル転送用SIP URIを受け取ると、相手拠点のローカル転送用SIP URIを、一時的にコールピックアップ用SIP URIの転送先に設定するものである。また、一時グループ設定部151は、ビデオ会議端末12の一時グループ設定解除部124から一時グループ解除依頼を受けると、一時的に設定していた相手拠点のローカル転送用SIP URIの設定を解除するものである。
【0076】
ここで、図7は、例えば、拠点Bにおける一時グループ設定部151によるローカル転送用SIP URIのコールピックアップ用SIP URIの転送先への設定を説明する説明図である。
【0077】
図7(A)は、例えば、コールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgと、ローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_b.example.orgとの定義を示す。
【0078】
例えば、図7(A)において、拠点Bのコールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgは、コールピックアップグループに属するコールピックアップ要求転送先の内線電話機102−1〜102−Nと対応付けて設定されている。例えば、コールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgにコールピックアップ要求信号が与えられると、当該コールピックアップグループに属する内線電話機102−1〜102−Nをコールピックアップ要求転送先として、コールピックアップ要求信号を転送することを示している。
【0079】
この場合に、相手拠点のローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgを取得すると、一時グループ設定部151は、図7(B)に示すように、コールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgに対応するコールピックアップ要求転送先に、相手拠点のローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgを追加する。
【0080】
コールピックアップ要求転送部152は、コールピックアップ要求信号を受信すると、コールピックアップグループの設定されたコールピックアップ要求転送先を判断して、コールピックアップ要求信号の転送を行うものである。
【0081】
拠点内コールピックアップ要求転送部153は、ローカル転送用SIP URIに、コールピックアップ要求信号を受信した場合、自身の拠点の全ての内線電話機102−1〜102−Nに対してコールピックアップ要求信号を転送するものである。
【0082】
拠点間コールピックアップ要求転送部154は、コールピックアップ用SIP URIにコールピックアップ要求を受けた場合であって、当該コールピックアップグループに相手拠点のローカル転送用SIP URIが設定されているとき、この相手拠点のローカル転送用SIP URIにコールピックアップ要求信号を転送するものである。なお、図示しないが、例えば、DNSを介して、SIP URIに応じた送信先である内線連携処理手段11を割り出すようにする。
【0083】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態のコールピックアップシステム100におけるコールピックアップ処理の動作を図面を参照しながら説明する。
【0084】
図8及び図9は、第1の実施形態のコールピックアップ処理を示すシーケンス図である。
【0085】
以下では、拠点A及び拠点Bのいずれにも属しない外部の電話機250から、拠点Aの内線電話機102A−1に着信があり、この着信を拠点Bの内線電話機102B−1がコールピックアップする場合を例示して説明する。
【0086】
拠点Aの内線連携処理手段11Aは、拠点Aにおける各コールピックアップグループのコールピックアップ用SIP URIを拠点A内に公開している。同様に、拠点Bの内線連携処理手段11Bも、拠点Bにおける各コールピックアップグループのコールピックアップ用SIP URIを拠点B内に公開している。
【0087】
なお、ここでは、説明便宜上、拠点A及び拠点Bのコールピックアップグループが1個である場合を例示する。
【0088】
例えば、拠点Aの内線連携処理手段11Aには、コールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_a.example.org、ローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgが設定されているものとする。
【0089】
また例えば、拠点Bの内線連携処理手段11Bには、コールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.org、ローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_b.example.orgが設定されているものとする。
【0090】
コールピックアップ用SIP URI(sip:pickup@site_a.example.org及びsip:pickup@site_b.example.org)は、各コールピックアップグループで利用するSIP URIであり、それぞれの拠点A及び拠点Bで定義されている。
【0091】
(A−2−1)ビデオ会議の開始処理(ステップS101)
まず、図8において、拠点Bとのビデオ会議を実施しようとするビデオ会議端末12Aが、ビデオ会議端末12Bに対してINVITEを送信してビデオ会議開始する。
【0092】
ビデオ会議端末12A及び12Bはそれぞれ、少なくとも、自身の拠点の内線連携処理手段11A及び11Bが提供するローカル転送用SIP URIの授受を行い、自身の拠点の内線連携処理手段11A及び11Bに相手拠点のローカル転送用SIP URIの設定・登録を行っている。
【0093】
INVITEトランザクションでは、ローカル転送用SIP URI授受部122が、各メッセージのメッセージボディに、自身の拠点のコールピックアップグループのSIP URIを記載し、相互にメッセージの授受を行う。
【0094】
具体的には、ビデオ会議端末12Aのローカル転送用SIP URI授受部122は、INVITEのメッセージボディに、拠点Aのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgを記載したメッセージを、ビデオ会議端末12Bに送信する。
【0095】
また、ビデオ会議端末12Bのローカル転送用SIP URI授受部122は、200OKレスポンスのメッセージボディに、拠点Bのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_b.example.orgを記載したメッセージを、ビデオ会議端末12Aに返信する。
【0096】
そして、ビデオ会議端末12Aにおいて、ローカル転送用SIP URI授受部122Aは、200OKレスポンスに記載されている拠点Bのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_b.example.orgを抽出し、一時グループ設定依頼部123Aが、一時グループ設定依頼として内線連携処理手段11Aの一時グループ設定部151Aに与えて、拠点Bのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_b.example.orgをコールピック用SIP URIの転送先に追加設定する。
【0097】
一方、ビデオ会議端末12Bでは、ローカル転送用SIP URI授受部122Bが、INVITEメッセージに記載されている拠点Aのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgを抽出し、一時グループ設定依頼部123Bが、一時グループ設定依頼として内線連携処理手段11Bの一時グループ設定部151Bに与えて、拠点Aのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgをコールピックアップ用SIP URIの転送先に追加設定する。
【0098】
これにより、内線連携処理手段11A及び11Bは、相手拠点のローカル転送用SIP URIをコールピックアップ用SIP URIの転送先に追加設定することができる。
【0099】
また、ビデオ会議端末12Aが、200OKレスポンスの提案に対する是認であるACKメッセージを送信することで、拠点Aと拠点Bとの間のビデオ会議が開始する。
【0100】
(A−2−2)コールピックアップ処理(ステップS102、S103)
次に、外部の電話機250が、拠点Aの内線電話機102A宛に発信する。
【0101】
すなわち、電話機250からINVITEを受信した内線連携処理手段11Aは、内線電話機102A−1に対してINVITEを送信する。これにより、内線電話機102A−1は呼出音を鳴動する。
【0102】
このとき、拠点Aのマイク134Aは、内線電話機102A−1の鳴動音を捕捉し、ビデオ会議端末12Aが、この鳴動音を含むビデオ会議情報をビデオ会議端末12Bに送信する。拠点Bでは、スピーカー135Bが鳴動音を出力する。また、ディスプレイ135Bが、ビデオ会議中の拠点Aの室内の様子を映し出す。
【0103】
例えば、拠点Bのユーザが、拠点Aの着信音に気づきコールピックアップを行うため、内線電話機102B−1の特番ダイアルを押下する。
【0104】
内線電話機102B−1は、コールピックアップ要求信号であるSUBSCRIBEを、内線連携処理手段11Bのコールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgに送信する。
【0105】
内線連携処理手段11Bのコールピックアップ要求転送部152は、コールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgへのSUBSCRIBEを受信すると、当該コールピックアップグループに属するコールピックアップ要求転送先を判断する。
【0106】
そして、当該コールピックアップグループに属する自身の拠点の内線電話機102B−1〜102B−Nに対しては、拠点内コールピックアップ要求転送部153が、SUBSCRIBEを転送する。
【0107】
また、コールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgの要求転送先には相手拠点Aのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgが含まれているので、拠点間コールピックアップ要求転送部154がSUBSCRIBEを転送する。
【0108】
拠点Aの内線連携処理手段11Aのコールピックアップ要求転送部152Aは、拠点Bの内線連携処理手段11Bからローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgへのSUBSCRIBEを受信すると、コールピックアップ要求転送先として判断する。
【0109】
このとき、ローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgに対応するコールピックアップ要求転送先は、拠点Aの全ての内線電話機102A−1〜102A−Nが設定されている。従って、拠点内コールピックアップ要求転送部153Aは、SUBSCRIBEを拠点Aの全ての内線電話機102A−1〜102A−Nに転送する。
【0110】
つまり、内線連携処理手段11Aのコールピックアップ要求転送部152Aは、拠点Bから自身のローカル転送用SIP URI宛のSUBSCRIBEを受信するのは、相手拠点からのコールピックアップ要求のときである。
【0111】
このように、相手拠点からのコールピックアップ要求をローカル転送用SIP URIを用いて行うこととした理由は、次の理由からである。
【0112】
例えば、相手拠点のコールピックアップ用SIP URIをそのまま使用した場合、ビデオ会議の開始の際に、内線連携処理手段11A及び11Bは、相手拠点のコールピックアップ用SIP URIを自拠点のコールピックアップ要求転送先に追加設定することとなる。
【0113】
そして、例えば拠点Bにおいて、ユーザがコールピックアップ操作を行うと、拠点Bの内線連携処理手段11BからSUBSCRIBEが、拠点Aのコールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_a.example.orgに送信される。
【0114】
この場合、拠点Aの内線連携処理手段11Aは、拠点Aの全ての内線電話機102A−1〜102A−NにSUBSCRIBEを送信すると共に、拠点Bのコールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgにも再び転送することになるので、無限ループが生じてしまうからである。
【0115】
なお、内線連携処理手段11Bと内線連携処理手段11Aとのやり取りの際、何らかの認証処理を行うようにしても良い。
【0116】
その後、内線連携処理手段11AからSUBSCRIBEを受信した内線電話機102A−1は、送信元の内線電話機102B−1に対して着呼(ベル鳴動)中であることを示すNOTIFYを通知する。
【0117】
その後、図9に示すコールピックアップ処理(ステップS103)は、通常のコールピックアップ処理と同様の手順である。すなわち、内線電話機102B−1が、内線連携処理手段11A及び11Bを介して、電話機250に対して、Replace指定のINVITE(Replace)を送信し、内線電話機102B−1と電話機250との間の呼を確立し、音声通話を行う。
【0118】
また、音声通信を終了する場合も、通常の切断処理と同じである(ステップS104)。すなわち、例えば内線電話機102B−1が、内線連携処理手段11A及び11Bを介して、切断要求を示すBYEを送信して切断する。
【0119】
さらに、ビデオ会議を終了する場合も、通常の切断処理と同じである(ステップS105)。すなわち、例えば、ビデオ会議端末12Bが、ビデオ会議端末12Aに対して切断要求を示すBYEを送信して切断する。
【0120】
このとき、ビデオ会議端末12A及び12Bの一時グループ設定解除部124は、内線連携処理手段11A及び11Bの一時グループ設定部151に対して、一時グループ解除依頼を送信して、内線連携処理手段11A及び11Bの一時グループ設定部151は、コールピックアップグループにおける相手拠点のローカル転送用SIP URIの設定を取り消す。
【0121】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、内線電話/PBX側でのグルーピング設定を、常時接続用ビデオ会議システムのセッション情報と連携させ、グルーピングが動的に切り替わるようにすることができる。
【0122】
例えば、東京営業所と名古屋営業所とが、常時接続用ビデオ会議システムで繋がっている間は、両拠点間で内線電話のコールピックアップが可能になる。
【0123】
また、第1の実施形態によれば、固定的なグルーピングや手作業によるグルーピングに比べて、論理的な(コールピックアップグループが規定する)同室性と、ビデオ会議が演出する同室感とを、余分な手間無く、一致させることができる。
【0124】
(B)第2の実施形態
次に、本発明のコールピックアップシステム及び装置の第2の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0125】
第2の実施形態は、内線電話機102−nの着信音を一意に特定することができる個体識別性を持たせ、鳴動している内線電話機102−nを特定し、この内線電話機102−nに限定してコールピックアップを行うようにする。
【0126】
(B−1)第2の実施形態の構成
(B−1−1)全体構成
図10は、第2の実施形態のコールピックアップシステム200の構成を示す構成図である。
【0127】
図10において、第2の実施形態のコールピックアップシステム200は、内線連携処理手段21、内線電話機102−n(1≦n≦N:Nは正の整数)、ビデオ会議端末22、着信音−内線電話個体番号対応データベース(DB)23、カメラ132、ディスプレイ133、マイク134、スピーカー135を少なくとも有して構成される。
【0128】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、ビデオ会議端末22が接続する構成要素として、着信音−内線電話個体番号対応データベース(DB)23を備える点、内線電話機102−1〜102−Nの着信音が一意に電話機を識別することができるようにする点、ビデオ会議端末22及び内線連携処理手段21の機能の点である。
【0129】
それ以外の構成要素は、第1の実施形態と同じであるから、図1に示す番号と同じ番号を付している。以下では、第2の実施形態の特徴的な構成要素について詳細に説明し、第1の実施形態で既に説明した内容については省略する。
【0130】
着信音−内線電話個体番号対応DB23は、内線電話機102−nの識別情報と、内線電話機102−nを一意に特定する着信音データとを対応付けたデータベースである。着信音−内線電話個体番号対応DB23は、ビデオ会議端末22からマイク134が捕捉した着信音データを受け取り、どの内線電話機102−nの着信音かを検索し、その検索結果を、ビデオ会議端末22に与えるものである。なお、着信音−内線電話個体番号対応DB23は、検索結果を内線連携処理手段21に与えるようにしても良い。
【0131】
ビデオ会議端末22は、第1の実施形態のビデオ会議端末12の機能に加えて、マイク134が捕捉した内線電話機102−nの着信音データを、着信音−内線電話個体番号対応DB23に与えるものである。また、ビデオ会議端末22は、着信音−内線電話個体番号対応DB23から取得した検索結果として特定された内線電話機102−nを内線連携処理手段21に与えるものである。さらに、ビデオ会議端末22は、着信音の鳴動が終わると、内線電話機102−nの設定解除を、内線連携処理手段21に依頼するものである。
【0132】
内線連携処理手段21は、第1の実施形態の内線連携処理手段11の機能に加えて、コールピックアップ要求がローカル転送用SIP URIに与えられた場合に、着信音−内線電話個体番号対応DB23により検索された内線電話機102−nを、コールピックアップ要求転送先として設定するものである。
【0133】
マイク134は、着信のあった内線電話機102−nの着信音を捕捉し、着信音データをビデオ会議端末22に与えるものである。なお、マイク134は、各内線電話機102−nの着信音を集音できるように配置されるようにすることが好ましい。
【0134】
内線電話機102−n(1≦n≦N)は、それぞれ一意に内線電話機(個体)を特定することができる着信音を鳴動するものである。つまり、内線電話機102−nは、一意の個体識別性を持たせた着信音を鳴動する。
【0135】
ここで、内線電話機102−nの着信音による一意の個体識別性を持たせる方法としては、種々の方法を適用することができる。例えば、(ア)不可聴な方法を利用する場合や、(イ)可聴な着信音による方法などを適用することができる。
【0136】
(ア)不可聴な方法を利用する場合としては、例えば、音信号用電子透かし技術を利用した方法を用いることができる。つまり、着信音に、内線電話機102−nを識別する個体識別情報を埋め込む技術を適用できる。具体的な例として、内線電話機102−nの個体識別情報(例えば個体番号等)を電子透かし(不可聴コード)として着信音に含める音信号用電子透かし技術がある。
【0137】
音信号用電子透かし技術は、例えば、信号位相の変調に対して人間の聴覚は鈍感であるという特性を利用して、音信号の位相に周期的変調を加える周期的位相変調法や、複数の音信号によるマスキングを利用した経時マスキング方法など既存の技術を適用できる。例えば、参照文献1(東北大学電気通信研究所,研究紹介,「音信号用電子透かしに関する研究」、2009年3月12日検索,http://www.ais.riec.tohoku.ac.jp/Lab2/watermark/index.html)等に記載される技術を適用できる。
【0138】
(イ)可聴な着信音による方法としては、例えば、内線電話機102−n毎に異なる着信音(例えば、いわゆる着信メロディー(着メロ)など)などを適用することができる。
【0139】
ここで、着信音による内線電話機102−nの個体識別性を実現する手法は、種々の方法を適用することができる。
【0140】
ここでは、例えば、不可聴な方法を利用する場合として音信号用電子透かし技術を用いて、着信音の個体識別性を持たせた着信音データを生成する場合の一例を例示する。
【0141】
図11は、個体識別性を持たせた着信音データを生成し、これを着信音−内線電話個体番号対応DB23に登録する手法の一例を説明する説明図である。
【0142】
図11では、内線電話機102−n、SIPサーバ(Registar)50、着信音−内線電話個体番号対応DB23を少なくとも有する。
【0143】
SIPサーバ50は、内線電話機102−nの起動後、内線電話機102−nとの間でSIPを用いた情報授受を行うものである。
【0144】
SIPサーバ50は、例えば、参照文献1に例示する音信号用電子透かし技術を用いて、音信号用電子透かしを埋め込んだ着信音データを生成する着信音データ生成部51を有する。SIPサーバ50は、着信音データ生成部51が生成した内線電話機102−nの着信音データを、内線電話機102−nに与えるものである。
【0145】
また、SIPサーバ50は、着信音データ生成部51が生成した内線電話機102−nの着信音データを、着信音−内線電話個体番号対応DB23に与えてデータベース化させる。
【0146】
内線電話機102−nの着信音鳴動部52は、SIPサーバ50から受信した着信音データを用いた着信音を鳴動する。
【0147】
なお、着信音の個体識別方法は、上記の例の限定されるものではなく、例えば、内線電話機102−nに着信音や着信音に埋め込む不可聴データを予め設定しておく方法としても良い。また、内線電話機102−nが自身のSIP URIを個体識別として使用して、そこから着信音データを内線電話機102−nが生成するようにしても良い。
【0148】
(B−1−2)内線連携処理手段21、ビデオ会議端末22及び着信音−内線電話個体番号対応DB23の内部構成
図12は、内線連携処理手段21、ビデオ会議端末22及び着信音−内線電話個体番号対応DB23の内部構成を示す構成図である。
【0149】
図12において、ビデオ会議端末22は、ビデオ会議制御部121、ローカル転送用SIP URI授受部122、一時グループ設定依頼部123、一時グループ設定解除部124、通知部221を少なくとも有する。
【0150】
通知部221は、マイク134が捕捉した着信音データを、着信音−内線電話個体番号対応DB23の検索部232に与えるものである。また、通知部221は、着信音−内線電話個体番号対応DB23の検索部232による検索結果を受け取り、その検索結果を内線連携処理手段21の一時グループ設定部155に与えるものである。
【0151】
一時グループ設定解除部124は、着信音の鳴動が終わると、特定された内線電話機102−nの設定解除を、内線連携処理手段21に依頼するものである。
【0152】
なお、通知部221による着信音−内線電話個体番号対応DB23への問い合わせをどのようなプロトコルで行うのかについては、着信音−内線電話個体番号対応DB23で使われている技術などに依存する。
【0153】
例えば、通知部221は、常時流れてきた音を着信音−内線電話個体番号対応DB23に転送しつづけ、着信音が検出されたときにイベント通知的な方法によって着信音−内線電話個体番号対応DB23からビデオ会議端末22に個体情報を通知を受ける方法を適用できる。そのような方法による検出の場合は、着信音が途絶えたときにもイベント通知的な方法で着信音−内線電話個体番号対応DB23からビデオ会議端末22にそのことを通知するようにする。
【0154】
図12において、内線連携処理手段21は、一時グループ設定部155、コールピックアップ要求転送部152、拠点内コールピックアップ要求転送部153、拠点間コールピックアップ要求転送部154を少なくとも有するものである。
【0155】
一時グループ設定部155は、ビデオ会議端末22の通知部221から、着信音−内線電話個体番号対応DB23により着信音を特定することができた内線電話機102−nを、コールピックアップ要求がローカル転送用SIP URIに与えられた場合のコールピックアップ要求転送先として設定するものである。
【0156】
ここで、図13は、例えば、拠点Aにおける一時グループ設定部155によるローカル転送用SIP URIの設定を説明する説明図である。
【0157】
図13(A)は、例えば、コールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgと、ローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_b.example.orgとの定義を示す。
【0158】
例えば、図13(A)において、ローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgに対応するコールピックアップ要求転送先として、全ての内線電話機102−1〜102−Nが設定されている。
【0159】
一時グループ設定部155は、図13(B)に示すように、ビデオ会議端末22の通知部221から着信音−内線電話個体番号対応DB23により着信音を特定することができた内線電話機102−nを受け取ると、この内線電話機102−nをローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgに対応するコールピックアップ要求転送先として設定する。なお、一時グループ設定部155は、内線電話機102−nの設定解除依頼を受けると、もとの全ての内線電話機102−1〜102−Nを設定する。
【0160】
図12において、着信音−内線電話個体番号対応DB23は、データベース本体231、検索部232、通知部232を少なくとも有するものである。
【0161】
データベース本体231は、内線電話機102−nの識別情報と、内線電話機102−nを一意に特定する着信音データとを対応付けて格納するデータベースである。
【0162】
検索部232は、データベース本体231を参照して、ビデオ会議端末22の通知部221から受け取った着信音データに対応する内線電話機102−nを検索するものである。
【0163】
通知部233は、検索部232による検索結果を、ビデオ会議端末22の通知部221に通知するものである。
【0164】
例えば、不可聴な個体識別情報が含まれている着信音を内線電話機102−nが鳴動する場合、着信音−内線電話個体番号対応DB23の検索部232は、拠点内の内線電話機102−nが着信音を鳴動すると、ビデオ会議端末22を通じて着信音データを受け取り、データベース本体231を参照して、着信音データに対応する内線電話機102−nの識別情報を検索し、着信があった内線電話機102−nを特定する。そして、着信音−内線電話個体番号対応DB23の通知部233は、この検索結果をビデオ会議端末22の通知部221、内線連携処理手段21に通知する。
【0165】
これにより、内線連携処理手段21は、着信があった内線電話機102−nを特定することができるので、コールピックアップ要求があった場合に、この内線電話機102−nのみにコールピックアップ要求信号を送信するようにする。
【0166】
ここで、検索部232における着信音データの検索する技術としては、既存の技術を適用できる。例えば、参照文献2(WIRED VISION,NEWS ARCHIVES,2002年9月18日,http://wiredvision.jp/archives/200209/2002091805.html)に記載されるように、テレビ・ラジオ番組が発する音声(あらかじめ番組ごとにユニークな不可聴コードを含むものが放送されている)をマイクで拾い、不可聴コードからどの番組を聞いていたのかを検索するという処理を適用することができる。
【0167】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態のコールピックアップシステム200におけるコールピックアップ処理の動作を図面を参照しながら説明する。
【0168】
(B−2−1)個体識別性を有する着信音データの登録処理
内線電話機102−nの個体識別性を有する着信音データを生成し、着信音−内線電話個体番号対応DB23に着信音データを登録する処理の動作の一例を、図11を参照しながら説明する。
【0169】
図11において、例えば、SIP UAである内線電話機102−nは、内線電話機102−nの起動後、SIPサーバ50との間のやり取りを行う。
【0170】
このとき、SIPサーバ50の着信音データ生成部51は、音信号用電子透かしを埋め込んだ着信音データを生成し、内線電話機102−nを一意に識別する着信音データを内線電話機102−nに送信する。
【0171】
内線電話機102−nは、SIPサーバ50の着信音データ生成部51から受信した着信音データを保持する。
【0172】
また、SIPサーバ50は、生成した着信音データを着信音−内線電話個体番号対応DB23に送信する。
【0173】
着信音−内線電話個体番号対応DB23は、SIPサーバ50から受信した着信音データと、内線電話機102−nの識別番号とを対応付けて、データベース本体231に登録する。
【0174】
その後、着信があった場合、内線電話機102−nの着信音鳴動部52は、SIPサーバ50受信した着信音データに基づいて着信音を鳴動する。
【0175】
(B−2−2)コールピックアップ処理
図14及び図15は、第2の実施形態のコールピックアップ処理を示すシーケンス図である。また、図16は、第2の実施形態のコールピックアップ処理を説明する説明図である。
【0176】
図14及び図15において、第1の実施形態の動作で説明したシーケンス(図8及び図9)と同じ処理の詳細な説明は省略し、特徴的な処理について図16を参照しながら詳細に説明する。なお、図16における処理番号は、図14における処理番号に対応する。
【0177】
ステップS101において、ビデオ会議端末22A及び22Bは、第1の実施形態と同様の処理により、ビデオ会議を開始する。このとき、ビデオ会議端末22A及び22Bは、相手拠点のローカル転送用SIP URIの授受を行い、相手拠点のローカル転送用SIP URIを内線連携処理手段21A及び21Bに設定する。
【0178】
ステップS202において、外部の電話機250が、拠点Aの内線電話機102Aに対してINVITEを送信すると(ステップS21)、内線電話機102Aは着信音を鳴動する。内線電話機102Aが鳴動する着信音は、拠点Aにおいて内線電話機102Aを一意に特定することができる個体識別情報を含んでいる。
【0179】
拠点Aのマイク134は、内線電話機102Aの着信音を集音して、着信音データとしてビデオ会議端末22Aに与える。
【0180】
ここで、マイク134が集音した着信音データは、次の2つの方法で利用される。
【0181】
(a)SIP UA個体を検出する。
【0182】
(b)会議音声としてビデオ会議端末22A及び22Bを通じて、相手拠点に配信する。
【0183】
ビデオ会議端末22Aは、マイク134から着信音データを取得すると、通知部221が、着信音−内線電話個体番号対応DB23の検索部232に対して問い合わせを行う。
【0184】
着信音−内線電話個体番号対応DB23の検索部232は、データベース本体231を参照し、当該着信音データが内線電話機102Aの着信音であることを検索する。そして、通知部233が、当該着信音データが内線電話機102Aのものであることを示す検索結果を、ビデオ会議端末22Aの通知部221に通知する。
【0185】
ビデオ会議端末22Aは、着信音−内線電話個体番号対応DB23の通知部233から検索結果を受け取り、当該着信音データが内線電話機102Aのものであると判断する(ステップS22)。
【0186】
また、ビデオ会議端末22Aの通知部221は、内線連携処理手段21Aの一時グループ設定部155に対して、内線電話機102Aが着信音を鳴動中であることを通知する。
【0187】
内線連携処理手段21Aの一時グループ設定部155は、内線電話機102Aが鳴動中であることを登録する(ステップS23)。一時グループ設定部155は、拠点Aのローカル転送用SIP URIのコールピックアップグループに、内線電話機102Aを設定する。
【0188】
一方、ビデオ会議端末22Aは、接続中である相手拠点Bのビデオ会議端末22Bに会議音声(すなわち、拠点Aにおける環境音)として着信音を配信する。
【0189】
ここで重要なのは、上記(b)に示すように、拠点Bに会議音声(環境音声)として配信される着信音を発している内線電話機102Aだけが、内線連携処理手段21Aの登録の処理を実行されるということである。
【0190】
もし何らかの事情で内線電話機102Aの着信音を集音できない場所に、内線電話機102Aがおかれているのであれば、内線連携処理手段21Aの登録は実行されない。
【0191】
これは着信から登録に至る処理経路の中にマイク134による集音が含まれており(内線電話機102Aの鳴動からマイク134による集音までは、処理経路のほかの部分が電気等による通信であるのと異なり、音響的な結合である)、集音自体は通常のビデオ会議のための配信と共通する処理となっているために得られる効果である。
【0192】
上記のとおり、拠点Aの内線電話機102Aの着信音は、拠点Bのスピーカー135から出力され、拠点Bにいるユーザが拠点Aの着信を聞くことができる。
【0193】
このとき、拠点Bにおいて、ユーザが、拠点Aの内線電話機102Aの着信音が鳴りやまないのに気づいて、自分の内線電話機102Bの特番ダイアルを操作し、コールピックアップ操作を行う。
【0194】
内線電話機102Bは、コールピックアップ要求を示すSUBSCRIBEを、内線連携処理手段21Bのコールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_b.example.orgに与える(ステップS24)。
【0195】
内線連携処理手段21Bでは、第1の実施形態と同様に、拠点内コールピックアップ要求転送部153が、当該コールピックアップグループに属する内線電話機102−nに、SUBSCRIBEを転送する。また、拠点間コールピックアップ要求転送部154は、拠点Aのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgに、SUBSCRIBEを送信する(ステップS25)。
【0196】
ここで、拠点Aにおけるローカル転送用SIP URIの意味ないし役割が第1の実施形態と異なる。
【0197】
第1の実施形態では、このローカル転送用SIP URIにSUBSRCIBEが与えられると、内線連携処理手段21Aが、拠点A内の全ての内線電話機102AにSUBSCRIBEを転送したが、第2の実施形態では、登録されている内線電話機102Aに対してのみ、SUBSCRIBEを転送する。
【0198】
内線連携処理手段21Aには内線電話機102Aが登録されているから、内線連携処理手段21Aのローカル転送用SIP URIにSUBSCRIBEが届くと、拠点内コールピックアップ要求転送部153は、内線電話機102AにのみSUBSCRIBEを転送する(ステップS26)。これにより、内線電話機102Aにコールピックアップを限定することができるので、意図しないコールピックアップを回避することができる。それ以降の処理は、第1の実施形態で説明した処理と同じである。
【0199】
なお、ステップS203において、内線電話機102Bが、内線電話機102Aの着信をコールピックアップすると、拠点Aの内線電話機102Aは着信音の鳴動を終了する。
【0200】
着信音の鳴動が終了すると、マイク134からの着信音データがなくなり、着信音−内線電話個体番号対応DB23の検索部232による検索も終了するから、ビデオ会議端末22Aの一時グループ設定解除部124は、内線連携処理手段21Aの一時グループ設定部155に対して、内線電話機102Aの登録解除の依頼を行う(ステップS27、S28)。
【0201】
なお、ここでは述べなかったが、内線電話機102Aの着信音の鳴動が他の理由(例えば、普通に電話をとった、電話機250があきらめて電話を切った(すなわち、電話機250がCANCELリクエストを発した)などの理由によりコールピックアップ操作を待たずに停止した場合は、ステップS23で行われたような登録は解除される。
【0202】
その後の処理(ステップS104、S105)は、第1の実施形態で説明したと同じである。
【0203】
(B−3)第2の実施形態の効果
第1の実施形態においては、拠点Aと拠点Bとがビデオ会議でつながっている間は、拠点Aで着信している電話は、たとえその着信音が拠点Bで聞こえていないものであっても、拠点Bの操作でコールピックアップできてしまう。しかし、拠点Bで操作している人にとって、それは意図しない挙動であると考えられる。第2の実施形態の方式を用いれば、ビデオ会議で着信音が「聞こえる」範囲の電話機に限定してコールピックアップできるようにする。
【0204】
また、第2の実施形態によれば、着信音を鳴動している内線電話機のみに限定してコールピックアップできるので、意図しないコールピックアップを回避することができる。
【0205】
(C)他の実施形態
(C−1)第1及び第2の実施形態では、ビデオ会議でビデオストリームが拠点間で送出されていることを仮定して説明したが、この過程は一連のシーケンスが成立するために必須であるというわけではない。例えば、音声だけが(環境音共有のような目的で)常時接続会議システムを通して送信されているという場合であっても、適用可能である。
【0206】
(C−2)第1及び第2の実施形態では、拠点A、拠点Bの双方にSIP Proxyである内線連携処理手段11、21が設置されていて、内線電話機を制御するという構成を仮定していたが、例えば拠点Bに内線連携処理手段11B、21Bが存在しないという形態としても良い。
【0207】
シーケンス図(図8、図9、図14、図15)において、内線連携処理手段11B、21Bは、ビデオ会議端末12B、22Bから「一時グループ設定依頼」「一時グループ解除依頼」を受信するのを除いては、拠点Bの内線電話機102Bと拠点Aの内線連携処理手段11A、21Aとの間で、やり取りされるメッセージをほとんど素通しで中継しているだけである。ただし、SUBSCRIBEの転送においては宛先のSIP URIを変更する役割も担っている。従って、直接内線電話機102Bが拠点Aの内線連携処理手段11A、21Aとやり取りするようにすれば、内線連携処理手段11B、21Bは省略可能である。
【0208】
図17及び図18は、例えば、第1の実施形態において内線連携処理手段11Bを除いた場合のシーケンス図を示す。
【0209】
ステップS301において、内線電話機102Bは、ビデオ会議端末12Bから「一時グループ設定依頼」を受ける。これにより、拠点AにおけるSIP URI sip:pickup@site_a.example.orgを記憶しておく。
【0210】
そして、コールピックアップ操作がなされると、内線電話機102Bは、拠点AのSIP URI sip:pickup@site_a.example.orgに対しSUBSCRIBEを発行する。
【0211】
このような利用形態は、例えば、拠点Aがオフィスで、拠点Bが一般家庭(在宅勤務)である場合に有効である。
【0212】
(C−3)第2の実施形態は、内線電話機102−nの個体識別情報を音に(可聴/不可聴の方法で)エンコーディングし、それによりビデオ会議がその端末を(マイクを通して)認識する、という方法であったが、エンコーディング先の媒体は必ずしも音に限定されるものではなく、例えば、光であってもよい。
【0213】
例えば、内線電話機102−nが、着信鳴動時にランプも一緒に点滅させる。そこで、内線電話機102−nが個体識別を可能とする光を点滅し、その点滅の仕方から内線電話機102−nを識別するようにしても良い。
【0214】
点滅の仕方に情報をエンコードする方法としては、例えば、点滅周期に周波数変調をかけるなど、既知の様々な方法がある。この場合、図10において、着信音−内線電話個体番号対応DB23のデータベース本体231は、点滅の仕方と内線電話機102−nの識別情報とを対応付けてデータベース化しておき、検索部232は、ビデオ会議端末22のマイク134からの情報をもとに判断を行うのではなく、例えばカメラ132(俯瞰カメラ)からの情報をもとに、どの内線電話機102−nが着呼しているのかを判断することになる。
【0215】
このようにすれば、「音が聞こえている範囲に限定してコールピックアップを行う」という処理ではなく「見えている範囲に限定してコールピックアップを行う」という機能を提供することができる。
【0216】
(C−4)第1の実施形態において、拠点Aのコールピックアップ用のSIP URI sip:pickup@site_a.example.orgに来たSUBSCRIBE要求は、あらかじめコールピックアップグループに含まれるとした、すべての内線電話機(SIP UA)102−nに転送されることになっていた。それを、図1のカメラ132が撮像する画角に含まれる内線電話機102−nに限定するようにしても良い。
【0217】
例えば、まず、内線電話機102−nの個体識別情報を内線電話機表面に表示しておき、内線電話機102−nを撮像するカメラ132が撮像した撮像データに基づき、この内線電話機表面に表示される幾何学的パターンをエンコードして、内線電話機102−nの個体識別情報を解析する方法がある。
【0218】
内線電話機102−nの表示方式としては、例えば電子的なディスプレイ(例えば液晶など)、固定されたパターンを表面に印刷する方法や、パターンを印刷したステッカーを貼付する方法などを適用することができる。エンコード手段としては、例えば、単にIDを数字で表現したものや、バーコード、2次元コード(例えばQRコードなど)等を適用することができる。あるいは、認識システムには負荷がかかるが、例えば、内線電話機102−nの意匠(例えば、色や形など)によって判別する、という方法も適用することができる。
【0219】
図1において、ビデオ会議システムは、カメラ132からの情報をもとに、画像解析等の手段によって、どの内線電話機102−nのパターンが画面に含まれているかを判断することができ、それを内線連携処理手段11に伝えることができる。このようにすることで、上記(C−3)と同様に、カメラ132の画角に入っている内線電話機102−nに着信した呼のみをコールピックアップすることができるようになる。
【0220】
(C−5)第1の実施形態において、拠点Aのローカル転送用のSIP URI sip:pickup_local@site_a.example.orgに来たSUBSCRIBE要求は、あらかじめコールピックアップグループに含まれるとした、全ての内線電話機(SIP UA)に転送されることになっていた。それを、(C−4)と同様に、カメラ132の画角に含まれる内線電話機102−nに限定するようにする。
【0221】
次のようにしてそれを実現することができる。
【0222】
例えば、拠点Aの空間に3次元のグローバル座標系を設定しておく。そこにある全ての内線電話機(SIP UA)102−nのグローバル座標系における位置情報を、何らかの方法で図1の内線連携処理手段11が取得しているものとする。例えば、超音波によるセンシング技術などを利用して、内線電話機102−nの位置情報を取得する方法等を適用することができる。
【0223】
また例えば、カメラ132の位置・姿勢・画角などのカメラパラメーターも、内線連携処理手段11に伝送されているとする。内線連携処理手段11の側での計算によって、これらの情報から各内線電話機102−nがカメラ132側の画角に入っているかどうかを計算できる。
【0224】
このようにすることで、上記(C−4)と同様に、カメラの画角に入っているSIP UAに着信した呼のみをコールピックアップすることができるようになる。
【0225】
(C−6)上記第1及び第2の実施形態では、あらかじめ何らかの方法でビデオ会議システムに、その拠点におけるコールピックアップ用SIP URIが設定・登録されているものとし、ビデオ会議端末12A、12B(22A、22B)の間にビデオ会議接続が開設される際に、コールピックアップ用SIP URIが交換される、という仕組みであったが、以下のような方法を用いても良い。
【0226】
例えば、ビデオ会議端末12A、12B(22A、22B)が相互に接続する際に、両拠点に設置したCall Stateful Proxy(呼の開始・終了を把握することのできるSIP Proxy)を介在させているならば、コールピックアップ用SIP URIをCall Stateful Proxyに設定しておき、ビデオ会議開設時に発生する両拠点のCall Stateful Proxy間でのやり取りで交換するようにしても良い。
【0227】
さらに例えば、これらCall Stateful Proxyは、内線電話機102−nを統括する内線連携処理手段11と同じものであってもよい。内線電話機102−nを統括する内線連携処理手段11は最初から自拠点でのコールピックアップ用SIP URIを知っているので、この場合は改めてコールピックアップ用SIP URIを設定する必要はない。
【0228】
(C−7)上記第1及び第2の実施形態では、拠点が2つ(拠点Aと拠点B)しかない場合を例に説明していたが、これは容易に3拠点以上に拡張できる。
【0229】
例えば、拠点AとB以外に、拠点Cが付け加えられたものとし、拠点Cにはビデオ会議端末12Cと内線連携処理手段11Cがあるものとする。
【0230】
内線連携処理手段11Cはコールピックアップ用SIP URI sip:pickup@site_c.example.orgと、ローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_c.example.orgとからなるSIP URIを提供する。
【0231】
これらは拠点Aで内線連携処理手段11Aが提供していたコールピックアップ用SIP URIと同様の働きを拠点Cにおいて行うものとする。
【0232】
ビデオ会議端末12Aとビデオ会議端末12Bとビデオ会議端末12Cが、INVITEにより3者会議を確立する際に、INVITEトランザクションにより各ビデオ会議端末12A、12B、12Cが参加拠点のローカル転送用のSIP URIを得ることができるようにする(参加するメッセージボディないしレスポンスボディに記述することで)。
【0233】
その上で、各ビデオ会議端末12A、12B、12Cは自拠点の内線連携処理手段11A、11B、11Cに、他の全拠点のローカル転送用SIP URIを伝える。
【0234】
例えば、ビデオ会議端末12Bは、内線連携処理手段11Bに、拠点A及び拠点Cのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.org及びsip:pickup_local@site_c.example.orgを与えて設定させる。
【0235】
その上で、第1の実施形態のように拠点Bで、内線電話機102Bからsip:pickup@site_b.example.orgにコールピックアップのためのSUBSCRIBE要求が与えられた場合は、内線連携処理手段11Bの拠点間コールピックアップ要求転送部153は、拠点Aのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_a.example.org及び拠点Cのローカル転送用SIP URI sip:pickup_local@site_c.example.orgの両方に、SUBSCRIBE要求を転送することで、第1の実施形態における手順により実現できる。
【0236】
(C−8)上記変形実施形態も含めた実施形態の説明では一貫してSIPにより電話システムを構築した場合を記述しているが、SIPを使わない旧来のPBX(構内交換機)や高機能ビジネスフォンを用いた内線電話システムであっても、同様のものを実現できる。
【0237】
例えば、上記シーケンスの記述の中で、SIP UAとして記述しているものを、PBX内のライン回路と読み替え、SIPトランザクションをPBX内の何らかの動作であると読み替える、などの方法で検討されたシーケンスによって実現できる。
【符号の説明】
【0238】
100、200…コールピックアップシステム、
11及び21…内線連携処理手段(内線用SIP Proxy)、
151及び155…一時グループ設定部、152…コールピックアップ要求転送部、
153…拠点内コールピックアップ要求転送部、
154…拠点間コールピックアップ要求転送部、
12及び22…ビデオ会議端末、
121…ビデオ会議制御部、122…ローカル転送用SIP URI授受部、
123…一時グループ設定依頼部、124…一時グループ設定解除部、
221…通知部、
23…着信音−内線電話個体対応データベース(DB)
231…データベース本体、232…検索部、233…通知部、
102−1〜102−N…内線電話機、
132…カメラ、133…ディスプレイ、134…マイク、135…スピーカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、拠点内に設けられた1又は複数のマイクが捕捉した音を音信号として他の拠点に送信し、又他の拠点から受信した音信号に基づき当該他の拠点の音を出力する拠点毎の多地点会議手段と、
拠点内において予め設定された1又は複数のグループに属する電話端末に着信があった場合に、そのグループに属する他の電話端末からのコールピックアップ要求を受け、上記着信のあった電話端末の着信呼を上記他の電話端末と接続させるコールピックアップ機能を有する呼処理手段と
を備え、
上記呼処理手段が、他の拠点と接続する上記多地点会議手段の接続状況に応じて、第1の拠点に設置されている電話端末に着信がある場合に、第2の拠点の電話端末からの上記コールピックアップ要求を受け、上記第1の拠点の電話端末の着信呼を上記第2の拠点の電話端末に接続させる拠点間コールピックアップを行うことを特徴とするコールピックアップシステム。
【請求項2】
上記多地点会議手段が、複数の拠点間の接続開始処理の際に、各拠点において予め設定されている他の拠点からのコールピックアップ要求を受け付ける第1の要求先を拠点間で交換し、
上記呼処理手段が、上記多地点会議手段により取得した上記各拠点の上記第1の要求先と、各拠点で予め設定された上記グループ毎の上記コールピックアップ要求を拠点内で受け付ける第2の要求先を上記グループに設定する設定手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のコールピックアップシステム。
【請求項3】
上記第1の拠点内の着信呼に対して拠点間コールピックアップを要求する上記第2の拠点の電話端末が、当該第2の拠点の上記第2の要求先に上記コールピックアップ要求を行い、
上記第2の拠点の呼処理手段は、上記第2の拠点の上記電話端末から上記第2の要求先に上記コールピックアップ要求を受信すると、上記グループに設定される上記第1の拠点の上記第1の要求先に向けて、上記コールピックアップ要求を転送する拠点間要求転送部を備え、
上記第1の拠点の上記呼処理手段は、上記第1の要求先に上記コールピックアップ要求を受信すると、当該グループに属する全部又は一部の上記電話端末に対して上記コールピックアップ要求を転送する拠点内要求転送部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のコールピックアップシステム。
【請求項4】
上記第1の拠点内の着信呼に対して拠点間コールピックアップを要求する上記第2の拠点の電話端末が、上記第1の拠点の上記第1の要求先に上記コールピックアップ要求を行い、
上記呼処理手段は、上記第1の要求先に上記コールピックアップ要求を受信すると、当該グループの全部又は一部の上記電話端末に対して上記コールピックアップ要求を転送する拠点内要求転送部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のコールピックアップシステム。
【請求項5】
上記各電話端末が当該電話端末を識別する識別情報を含む着信音を鳴動するものであり、
上記各多地点会議手段が、
上記各電話端末の上記着信音に含まれる識別情報を上記電話端末毎に記憶する識別情報記憶部と、
上記識別情報記憶部を参照して、上記各マイクが捕捉した着信音から上記識別情報を解析し、当該着信音を鳴動する上記電話端末を検索する電話端末検索部と
を備え、
上記呼処理手段の上記拠点内要求転送部が、上記電話端末検索部により検索された上記電話端末にのみ、上記コールピックアップ要求を転送する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のコールピックアップシステム。
【請求項6】
上記各電話端末が、着信時に当該電話端末を識別する識別情報を含む光信号を出力するものであり、
上記各多地点会議手段が、
上記各電話端末が出力する上記光信号に含まれる識別情報を上記電話端末毎に記憶する識別情報記憶部と、
拠点内を撮像する撮像部と、
上記識別情報記憶部を参照して、上記撮像部が撮像した上記電話端末の上記光信号から上記識別情報を解析し、当該光信号を出力する上記電話端末を検索する電話端末検索部と
を備え、
上記呼処理手段の上記拠点内要求転送部が、上記電話端末検索部により検索された上記電話端末にのみ、上記コールピックアップ要求を転送する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のコールピックアップシステム。
【請求項7】
上記各多地点会議手段が、
拠点内を撮像する撮像部と、
上記撮像部により撮像される上記複数の電話端末のそれぞれについて、当該電話端末を識別する識別情報を付与し、この識別情報を上記電話端末毎に記憶する撮像端末記憶部と
を備え、
上記呼処理手段の上記拠点内要求転送部が、上記撮像端末記憶部に記憶される上記電話端末にのみ、上記コールピックアップ要求を転送する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のコールピックアップシステム。
【請求項8】
1又は複数のグループに属する電話端末からのコールピックアップ要求に応じて、同一グループに属する他の電話端末への着信呼を、上記電話端末に着信させるコールピックアップ装置であって、
多地点会議手段が相手拠点との接続処理の際に取得した、相手拠点に設定されている拠点間のコールピックアップ要求を受け付ける第1の要求先を、上記多地点会議手段から受け取り、上記第1の要求先を上記各グループに設定する設定手段と、
上記電話端末からコールピックアップ要求を受けると、上記電話端末の上記グループに属する他の電話端末に対して上記コールピックアップ要求を送信すると共に、相手拠点の上記第1の要求先にも上記コールピックアップ要求を送信するコールピックアップ要求転送手段と
を備えることを特徴とするコールピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−40877(P2011−40877A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184561(P2009−184561)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.着メロ
2.QRコード
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】