説明

ゴム摩擦試験方法及びゴム摩擦試験装置

【課題】ゴム試験片の接触面形状を得るとともに接触面内の歪み分布を算出することで、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を適切に評価できるゴム摩擦試験方法及びゴム摩擦試験装置を提供する。
【解決手段】本発明のゴム摩擦試験方法は、ドーナツ状のゴム試験片1の外周面11に画像解析用パターン13を形成するパターン形成工程と、ゴム試験片1の外周面11を、円筒部21が透明材料で形成された回転式ドラム2に接触させつつ、ゴム試験片1及び回転式ドラム2を回転させる摩擦試験工程と、摩擦試験工程と同時に、外周面11を円筒部21を通して撮影して外周面画像11Pを取得する画像取得工程と、取得した外周面画像11Pからゴム試験片1の接触面形状を得るとともに、外周面画像11Pに含まれる画像解析用パターン13に基いてゴム試験片1の接触面内の歪み分布を算出することにより、ゴム試験片1の摩擦摩耗特性を評価する評価工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価するためのゴム摩擦試験方法及びゴム摩擦試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの摩擦摩耗特性を調べるために、サンプルタイヤを回転式ドラムに接触させる摩擦試験装置及び摩擦試験方法が公知である。タイヤの摩擦摩耗特性には、摩擦試験時のタイヤの変形、具体的にはタイヤの接地面形状、接地面内の歪み分布などが影響する。そのため、タイヤの摩擦摩耗特性の適切な評価には、接地面形状の観察、接地面内の歪み分布の算出などが重要となる。
【0003】
下記特許文献1には、アイス路面に対するタイヤの接地面を撮影するために、氷層を表面に形成した透明板と、その透明板及び/又は前記氷層の内部にこれと略平行な光を照射する光照射手段と、前記氷層の反対側からタイヤ接地面を撮影する撮影手段とを備えるタイヤ接地面計測装置が開示されている。このタイヤ接地面計測装置によれば、タイヤ接地面形状の輪郭を精度良く撮影できるが、接地面内の歪み分布を算出することはできない。
【0004】
また、下記特許文献2には、タイヤのサイド部表面に格子面を設け、タイヤを回転させてストロボ装置によって間欠照明した状態において、2台のカメラでこの格子面の画像を収得し、この画像からタイヤ転動時のサイド部形状を再生するタイヤの形状測定方法が開示されている。しかし、このタイヤ形状測定方法によれば、タイヤのサイド部の形状や歪み分布を得ることが可能であるが、タイヤの接地面は観察できないため接地面形状や接地面内の歪み分布を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−24365号公報
【特許文献2】特開平10−38533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価する際、ゴム試験片の接触面形状を得るとともに接触面内の歪み分布を算出することで、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を適切に評価できるゴム摩擦試験方法及びゴム摩擦試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係るゴム摩擦試験方法は、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価するゴム摩擦試験方法であって、
ドーナツ状のゴム試験片の外周面に画像解析用パターンを形成するパターン形成工程と、
ゴム試験片の前記外周面を、円筒部が透明材料で形成された回転式ドラムに接触させつつ、ゴム試験片及び回転式ドラムを回転させる摩擦試験工程と、
前記摩擦試験工程と同時に、ゴム試験片の前記外周面を回転式ドラムの前記円筒部を通して撮影して外周面画像を取得する画像取得工程と、
取得した前記外周面画像からゴム試験片の接触面形状を得るとともに、前記外周面画像に含まれる前記画像解析用パターンに基いてゴム試験片の接触面内の歪み分布を算出することにより、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価する評価工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、回転式ドラムの円筒部が透明材料で形成されているため、この円筒部に接触した状態のゴム試験片の外周面を、円筒部を通して撮影して外周面画像を取得することができる。外周面画像を取得することで、ゴム試験片の接触面形状を得ることができるとともに、外周面に形成された画像解析用パターンに基いてゴム試験片の接触面内の歪み分布を算出することができるため、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を適切に評価できる。
【0009】
本発明のゴム摩擦試験方法では、前記パターン形成工程において、ゴム試験片の側面に画像解析用パターンを更に形成し、前記画像取得工程において、ゴム試験片の前記側面を撮影して側面画像を取得し、前記評価工程は、前記外周面画像に含まれる画像解析用パターンと前記側面画像に含まれる画像解析用パターンとを対応付けることにより、ゴム試験片の変形を評価する工程を含むことが好ましい。かかる構成によれば、接触状態におけるゴム試験片の外周面の歪み及び側面の歪み、すなわちゴム試験片全体の変形を評価することができるため、ゴム試験片の摩擦摩耗特性をより適切に評価できる。
【0010】
本発明のゴム摩擦試験方法では、前記画像解析用パターンは、点を縦横に規則的に配列した点パターンであることが好ましい。この構成によれば、ゴム試験片に画像解析用パターンを形成することが容易となり、また、取得された外周面画像及び/又は側面画像に含まれる画像解析用パターンを解析することも容易となるため、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を適切に評価できる。
【0011】
一方、本発明に係るゴム摩擦試験装置は、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価するゴム摩擦試験装置であって、
円筒部が透明材料で形成され、回転駆動が可能な回転式ドラムと、
外周面に画像解析用パターンが形成されたドーナツ状のゴム試験片を、回転式ドラムの前記円筒部に回転状態で接触可能な試験片接触手段と、
ゴム試験片の前記外周面を回転式ドラムの前記円筒部を通して撮影して外周面画像を取得する撮影手段と、
取得した前記外周面画像に基いてゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価する評価手段と、を備え、
前記評価手段は、前記外周面画像に含まれる前記画像解析用パターンに基いてゴム試験片の接触面内の歪み分布を算出する歪み分布算出手段を含むことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、回転式ドラムの円筒部が透明材料で形成されているため、この円筒部に接触した状態のゴム試験片の外周面を、円筒部を通して撮影して外周面画像を取得することができる。外周面画像を取得することで、ゴム試験片の接触面形状を得ることができるとともに、外周面に形成された画像解析用パターンに基いてゴム試験片の接触面内の歪み分布を算出することができるため、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を適切に評価できる。
【0013】
本発明のゴム摩擦試験装置では、回転式ドラムの前記円筒部の内面側にミラーを更に備え、前記撮影手段は、前記ミラーを介して、回転式ドラムの前記円筒部の外面側に接触されたゴム試験片の前記外周面を撮影することが好ましい。この構成によれば、回転式ドラムの内側に試験片接触手段及び撮影手段を配置する必要がないため、回転式ドラムのサイズを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ゴム試験片の摩擦試験の概要を示す斜視図
【図2】ゴム摩擦試験装置の側面図
【図3】ゴム摩擦試験装置の平面図
【図4】ゴム試験片の詳細を示す正面図及び側面図
【図5】本発明に係るゴム摩擦試験装置の全体構成を示す概略構成図
【図6】ゴム試験片の外周面を撮影した外周面画像の一例を示す図
【図7】(a)ゴム試験片の接触面での速度分布、(b)ゴム試験片の接触面での歪み分布
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1はゴム試験片の摩擦試験の概要を示す斜視図である。図2はゴム摩擦試験装置の側面図であり、図3はゴム摩擦試験装置の平面図である。図4はゴム試験片の詳細を示す正面図及び側面図である。図5は本発明に係るゴム摩擦試験装置の全体構成を示す概略構成図である。
【0016】
本発明のゴム摩擦試験方法及びゴム摩擦試験装置は、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価するためのものである。図1に示すように、ゴム試験片の摩擦試験は、回転駆動装置によりゴム試験片1及び回転式ドラム2を回転接触させて行われる。
【0017】
本発明のゴム摩擦試験装置は、図に示すように、円筒部21が透明材料で形成され、回転駆動が可能な回転式ドラム2と、外周面11に画像解析用パターン13が形成されたドーナツ状のゴム試験片1を、回転式ドラム2の円筒部21に回転状態で接触可能な試験片接触手段3と、ゴム試験片1の外周面11を回転式ドラム2の円筒部21を通して撮影して外周面画像を取得する撮影手段41と、取得した外周面画像に基いてゴム試験片1の摩擦摩耗特性を評価する評価手段51と、を備える。
【0018】
ゴム試験片1は、ドーナツ状もしくは円筒状をしており、外周面11と側面12を備える。ゴム試験片1は、例えば外径が50mm、内径が23mm、幅が10mmである。本実施形態では、外周面11と側面12にそれぞれ画像解析用パターン13,14が形成されている。
【0019】
外周面11に形成される画像解析用パターン13は、点13aを縦横に規則的に配列した点パターンである。画像解析用パターン13は、外周面11の全面に設けても一部のみに設けてもよい。点13aは例えば直径が0.3〜0.4mmであり、点13aどうしの間隔は1mmである。ゴム試験片1が黒色の場合、点13aは視認性を高めるために白色などで形成される。
【0020】
側面12に形成される画像解析用パターン14は、点14aを縦横に規則的に配列した点パターンである。画像解析用パターン14は、側面12の全面に設けても一部のみに設けてもよく、この例では点列を2列のみ設けている。点14aは例えば直径が0.2mmであり、点14aどうしの間隔は0.5mmである。ゴム試験片1が黒色の場合、点14aは視認性を高めるために白色などで形成される。
【0021】
ゴム試験片1は、試験片接触手段3により回転式ドラム2に回転接触される。試験片接触手段3は、ゴム試験片1が固定される試験片回転軸31と、この試験片回転軸31を回転駆動させる試験片回転駆動装置32を備える。試験片回転駆動装置32としては電動モータ等が例示され、電動モータにより回転軸31を駆動させるとともに、制動トルクをかけて制動させることもできる。また、別途ブレーキ手段を設けて回転軸31を制動させるようにしてもよい。
【0022】
また、試験片接触手段3は、ゴム試験片1に所定の負荷がかかるように回転式ドラム2に対して垂直に力をかける荷重負荷機構を有することが好ましい。この機構としては、油圧装置や弾性復元力を利用した装置などが挙げられる。また、荷重を計測するための計測器を設けてもよい。
【0023】
回転式ドラム2は円筒部21と円板部22とを備え、全体としては有底円筒状をしている。回転式ドラム2の円筒部21の外周面が、ゴム試験片1の外周面と回転接触し、ゴム摩擦試験が行われる。
【0024】
円筒部21は、厚みが一定の円筒状をしている。円筒部21は、例えば外径が250mm、幅が40mm、厚みが10mmである。円筒部21の幅は、少なくともゴム試験片1の幅よりも大きい。円筒部21は、透明材料で形成されている。透明材料は無色透明又は有色透明の何れでもよいが、無色透明のものを使用するのが好ましい。透明材料としては、強化ガラス等の無機ガラス、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル系樹脂、ポリカードネート等のプラスチックなどが例示されるが、強度や加工性等の観点からアクリル系樹脂が好ましい。
【0025】
円板部22は、所定の半径を有する板状であり、円筒部21の端部に固定されている。円板部22には、図に示すように観察用の穴22aが設けられている。円板部22の中心は、支持部23を介してドラム回転軸61に支持される。ドラム回転軸61は、ドラム回転駆動装置62により回転駆動される。これにより、回転式ドラム2は、ゴム試験片1と同様に、回転駆動が可能となる。ドラム回転駆動装置62と試験片回転駆動装置32は、回転制御手段52により始動や停止、回転数などが制御される。
【0026】
撮影手段41は、ゴム試験片1の反対側から回転式ドラム2の円筒部21を通してゴム試験片1の外周面11を撮影することができる位置に配置される。本実施形態では、回転式ドラム2の円筒部21の内面側にミラー7を備えており、撮影手段41はミラー7を介して、ゴム試験片1の外周面11を撮影して外周面画像11Pを取得することができる。ただし、ミラー7を設けず、撮影手段41を回転式ドラム2の円筒部21の内面側に配置して、ゴム試験片1の外周面11を直接撮影するようにしてもよい。
【0027】
本実施形態のゴム摩擦試験装置は、撮影手段41に加えて撮影手段42を備えている。撮影手段42は、ゴム試験片1の側面12を撮影することができる位置に配置される。撮影手段42は、ゴム試験片1の側面12を撮影して側面画像12Pを取得することができる。撮影手段41と撮影手段42は、同期させて同時にゴム試験片1を撮影するのが好ましい。
【0028】
撮影手段41,42としては、CCDカメラ、ビデオカメラ、高速度カメラなどが使用できるが、本発明では、画像解析用パターン13,14を詳細に撮影できるように高速度カメラを使用するのが好ましい。撮影手段41と撮影手段42でそれぞれ撮影した外周面画像11Pと側面画像12Pは、評価手段51に取り込まれ、この外周面画像11Pと側面画像12Pに基いてゴム試験片1の摩擦摩耗特性が評価される。なお、外周面画像11P及び側面画像12Pは、メモリ53に記憶された後、評価手段51により解析される。
【0029】
評価手段51は、外周面画像11Pに含まれる画像解析用パターン13に基いてゴム試験片1の接触面内の歪み分布を算出する歪み分布算出手段54を含む。具体的には、歪み分布算出手段54は、ある時点での画像解析用パターン13と、基準となる画像解析用パターン13とを比較して、対応する各点13aの変位を計測することで、歪み分布を算出することができる。
【0030】
より具体的な歪みの算出方法は以下の通りである。初めに、画像解析用パターン13の1つ1つの点13aについて2値化により重心座標を算出する。これを繰り返し、1つの点13aが回転方向に流れていくときの時系列データを取得する(例として図6の範囲で80フレーム)。次に、それぞれの点13aについて、隣り合う点13aの重心における2点間距離の変動を算出する。そして、基準となる画像解析用パターン13と比較して歪みを算出する。回転方向と幅方向に分けて、2方向の歪みをそれぞれ算出する。
【0031】
また、歪み分布算出手段54は、側面画像12Pに含まれる画像解析用パターン14に基いてゴム試験片1の側面12の歪み分布も算出することができる。ゴム試験片1の外周面11の歪み分布と側面12の歪み分布を対応させる際、各方向での接触面の踏込み、蹴り出し位置と歪みの変動を比較することで、1方向からでは出来なった立体的な評価が可能となる。
【0032】
処理制御装置5は、評価手段51、回転制御手段52、メモリ53、歪み分布算出手段54などを備えており、パソコン等の入出力装置55に接続されている。作業者は、入出力装置55を介して、処理制御装置5を操作するとともに、処理制御装置5内の画像やデータを閲覧、解析することができる。
【0033】
照明8は、回転式ドラム2の側方、特に円筒部21の側方に配置される。照明8は、円筒部21の幅方向と略平行な光を円筒部21の内部に照射することができるように配置される。そのため、光は円筒部21の内部で全反射し、ゴム試験片1の接触面以外では光がほとんど外部に出ない。これにより、ゴム試験片1の接触面が特に明るくなり、それ以外の部分と明確に判別できる。
【0034】
これにより外周面画像11Pから接触面端部の座標を取得することが可能となり、接触面の踏込み位置と蹴り出し位置を決定できる。接触面の内外、踏込み、蹴り出しの位置関係を考慮することで速度および歪みをより詳細に評価できる。
【0035】
次に、以上のようなゴム摩擦試験装置を用いた本発明のゴム摩擦試験方法について説明する。本発明のゴム摩擦試験方法は、ゴム試験片1の摩擦摩耗特性を評価するゴム摩擦試験方法であって、ドーナツ状のゴム試験片1の外周面11に画像解析用パターン13を形成するパターン形成工程と、ゴム試験片1の外周面11を、円筒部21が透明材料で形成された回転式ドラム2に接触させつつ、ゴム試験片1及び回転式ドラム2を回転させる摩擦試験工程と、摩擦試験工程と同時に、ゴム試験片1の外周面11を回転式ドラム2の円筒部21を通して撮影して外周面画像11Pを取得する画像取得工程と、取得した外周面画像11Pからゴム試験片1の接触面形状を得るとともに、外周面画像11Pに含まれる画像解析用パターン13に基いてゴム試験片1の接触面内の歪み分布を算出することにより、ゴム試験片1の摩擦摩耗特性を評価する評価工程と、を備える。
【0036】
また、本発明のゴム摩擦試験方法は、パターン形成工程において、ゴム試験片1の側面12に画像解析用パターン14を更に形成し、画像取得工程において、ゴム試験片1の側面12を撮影して側面画像12Pを取得し、評価工程は、外周面画像11Pに含まれる画像解析用パターン13と側面画像12Pに含まれる画像解析用パターン14とを対応付けることにより、ゴム試験片1の変形を評価する工程を含むことが好ましい。
【0037】
ゴム試験片1の外周面11及び側面12には、画像解析用パターン13,14を予め形成しておく。ゴム試験片1を試験片接触手段3の試験片回転軸31に固定して、ゴム試験片1を回転式ドラム2に接触させつつ、両者を回転させてゴム摩擦試験を行う。この際、撮影手段41,42によりゴム試験片1を撮影して、ゴム試験片1の外周面画像11P及び側面画像12Pを取得する。
【0038】
図6は、外周面画像11Pの一例を示す。ゴム試験片1の外周面11が矢印の方向に回転しているとき、接触面の前半部分では回転式ドラム2に対してすべりの生じていない凝着域Paを形成すると共に、後半部では回転式ドラム2に対してすべりの状態となるすべり域Psを形成する。このように、凝着域Paとすべり域Psとを合わせた領域が接触面であり、外周面画像11Pからゴム試験片1の接触面形状を得ることができる。
【0039】
また、外周面画像11Pには画像解析用パターン13が含まれており、ある時点での画像解析用パターン13と微小時間経過後の画像解析用パターン13を比較することで、各点13aの速度を算出することができる。算出した速度の変動から凝着域Paとすべり域Psの境界点を決定できる。画像解析用パターン13のように幅方向に複数の点が存在していれば、それぞれについて算出した境界点をつなぎ合わせ、接触面の凝着域Paとすべり域Psの境界線BLを決定できる。また、ある時点での画像解析用パターン13と、基準となる画像解析用パターン13とを比較して、対応する各点13aの変位を計測することで、歪み分布を算出することができる。
【0040】
本発明により算出したゴム試験片1の接触面での速度分布を図7の(a)に示し、ゴム試験片1の接触面での歪み分布を図7の(b)に示している。凝着域Paにおいて、ゴム試験片1の速度は、回転式ドラム2と略同じとなっており、ゴム試験片1の歪みは、圧縮(マイナス方向)され、大きな変化はない。すべり域Psにおいて、ゴム試験片1の速度は凝着域Paから離れるほど大きく、すべり域Psの端部では、一時的にゴム試験片1の基準回転速度を越えている。ゴム試験片1の歪みは、引張(プラス方向)に変化しており、踏込み側と蹴り出し側で向きが反転している。
【0041】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、ゴム試験片1の外周面11と側面12を撮影するために撮影手段41と撮影手段42をそれぞれ用いたが、撮影手段は必ずしも2つ設ける必要はない。撮影手段41のみを用いて、外周面11と側面12を別々に撮影してもよい。この場合、ゴム試験片1の外周面11と側面12にそれぞれ目印を付けておいて画像を取得後に、取得した外周面画像11Pと側面画像12Pを対応付けるようにすればよい。
【0042】
(2)前述の実施形態では、比較的小さなサイズのゴム試験片1を用いているが、回転式ドラム2のサイズを大きくすることで、ゴム試験片1としてサンプルタイヤを用いてタイヤの摩擦摩耗特性を直接評価することもできる。
【0043】
(3)ゴム試験片1の外周面11を撮影する際、1つの撮影手段41を用いているが、隣り合うように並べた別の撮影手段を用いて外周面11を更に撮影することで、奥行き方向(ゴム試験片1の厚み方向)の変位も評価可能となり、より詳細なデータが得られる。ゴム試験片1の側面12についても同様である。
【符号の説明】
【0044】
1 ゴム試験片
2 回転式ドラム
3 試験片接触手段
7 ミラー
8 照明
11 外周面
11P 外周面画像
12 側面
12P 側面画像
13 画像解析用パターン
13a 点
14 画像解析用パターン
14a 点
21 円筒部
22 円板部
41 撮影手段
42 撮影手段
51 評価手段
54 歪み分布算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価するゴム摩擦試験方法であって、
ドーナツ状のゴム試験片の外周面に画像解析用パターンを形成するパターン形成工程と、
ゴム試験片の前記外周面を、円筒部が透明材料で形成された回転式ドラムに接触させつつ、ゴム試験片及び回転式ドラムを回転させる摩擦試験工程と、
前記摩擦試験工程と同時に、ゴム試験片の前記外周面を回転式ドラムの前記円筒部を通して撮影して外周面画像を取得する画像取得工程と、
取得した前記外周面画像からゴム試験片の接触面形状を得るとともに、前記外周面画像に含まれる前記画像解析用パターンに基いてゴム試験片の接触面内の歪み分布を算出することにより、ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価する評価工程と、を備えることを特徴とするゴム摩擦試験方法。
【請求項2】
前記パターン形成工程において、ゴム試験片の側面に画像解析用パターンを更に形成し、前記画像取得工程において、ゴム試験片の前記側面を撮影して側面画像を取得し、前記評価工程は、前記外周面画像に含まれる画像解析用パターンと前記側面画像に含まれる画像解析用パターンとを対応付けることにより、ゴム試験片の変形を評価する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム摩擦試験方法。
【請求項3】
前記画像解析用パターンは、点を縦横に規則的に配列した点パターンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム摩擦試験方法。
【請求項4】
ゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価するゴム摩擦試験装置であって、
円筒部が透明材料で形成され、回転駆動が可能な回転式ドラムと、
外周面に画像解析用パターンが形成されたドーナツ状のゴム試験片を、回転式ドラムの前記円筒部に回転状態で接触可能な試験片接触手段と、
ゴム試験片の前記外周面を回転式ドラムの前記円筒部を通して撮影して外周面画像を取得する撮影手段と、
取得した前記外周面画像に基いてゴム試験片の摩擦摩耗特性を評価する評価手段と、を備え、
前記評価手段は、前記外周面画像に含まれる前記画像解析用パターンに基いてゴム試験片の接触面内の歪み分布を算出する歪み分布算出手段を含むことを特徴とするゴム摩擦試験装置。
【請求項5】
回転式ドラムの前記円筒部の内面側にミラーを更に備え、
前記撮影手段は、前記ミラーを介して、回転式ドラムの前記円筒部の外面側に接触されたゴム試験片の前記外周面を撮影することを特徴とする請求項4に記載のゴム摩擦試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113672(P2013−113672A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259114(P2011−259114)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】