説明

ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ

【課題】ゴム組成物へのシリカの分散性を改良し、未加硫ゴムの粘度低減を改良できて加工性も良好となるゴム組成物及びそれを用いたタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、白色充填剤と、下記式(I)で表される化合物の少なくとも一種とを配合してなることを特徴とするゴム組成物。


〔上記式(I)中において、R〜Rのうち少なくとも1つが、RCONHA−で表される基を表し、残余のR〜Rが、下記式(III)で表される基を表す。〕


〔式(III)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは平均付加モル数を意味し、0〜5となる数であり、mは1〜3となる整数である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びそれを用いたタイヤに関し、更に詳しくは、ゴム組成物へのシリカの分散性を改良し、未加硫ゴムの粘度低減を改良できて加工性も良好となるゴム組成物及びそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車の燃料消費節約を目的として、タイヤ用ゴム組成物の低発熱性と湿潤路面でのグリップ性を両立させる充填剤として、シリカの配合が多用されている。
【0003】
用いるシリカは、その表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向にあり、ゴム中へのシリカの分散を良くするためには混練時間を長くする必要がある。また、ゴム中へのシリカの分散が不十分なためゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押出しなどの加工性に劣るなどの欠点を有していた。さらに、シリカ粒子の表面が酸性であることから、加硫促進剤として使用される塩基性物質を吸着し、ゴム組成物の加硫が十分に行われず、貯蔵弾性率が上がらないという欠点を有していた。そのため、従来からシリカ配合ゴム組成物における加工性等の改良が求められている。
【0004】
従来において、シリカ配合ゴム組成物における諸物性等を改良する技術として、例えば、発熱性及び耐摩耗性を向上させたゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供するために、(A)天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム、(B)ケイ酸を主成分とする無機充填剤(シリカ)及び(C)特定のアミン付加塩を含むゴム組成物、並びにそれを用いた空気入りタイヤ(例えば、本願出願人の特許文献1参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、未加硫ゴムの粘度低減効果の実現が切望されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO97/035461号パンフレット(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等について、これを解消しようとするものであり、ゴム組成物へのシリカの分散性を改良し、未加硫ゴムの粘度低減を改良することができるゴム組成物及びそれを用いたタイヤ、並びに、未加硫ゴムの粘度低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の課題等に鑑み、鋭意検討した結果、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、白色充填剤と、特定の化合物の少なくとも一種を配合することにより、上記目的のゴム組成物及びそれを用いたタイヤ、並びに、未加硫ゴムの粘度低減方法が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。
(1) 天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、白色充填剤と、下記式(I)で表される化合物の少なくとも一種とを配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【化1】

〔上記式(I)中において、R〜Rのうち少なくとも1つが、下記式(II)で表される基を表し、残余のR〜Rが、下記式(III)で表される基を表す。〕
【化2】

〔式(II)中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、また、Aは炭素数1〜6のアルキレン基である。〕
【化3】

〔式(III)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは平均付加モル数を意味し、0〜5となる数であり、mは1〜3となる整数である。〕
(2) 前記ゴム成分100質量部に対し、白色充填剤を5〜200質量部、上記式(I)で表される化合物の少なくとも一種を0.5〜15質量部配合してなることを特徴とする上記(1)に記載のゴム組成物。
(3)前記一般式(1)で表される化合物が、N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−ラウロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、N−パルミトイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−パルミトイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、N−ステアロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、及びN−ステアロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミンからなる群から選ばれる1種以上である上記(1)又は(2)に記載のゴム組成物。
(4) 更に、シランカップリング剤を配合することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のゴム組成物。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載のゴム組成物をタイヤ部材に用いてなることを特徴とするタイヤ。
(6) 天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、白色充填剤と、下記式(I)で表される化合物の少なくとも一種とを配合する、未加硫ゴムの粘度低減方法。
【化4】

〔上記式(I)中において、R〜Rのうち少なくとも1つが、下記式(II)で表される基を表し、残余のR〜Rが、下記式(III)で表される基を表す。〕
【化5】

〔式(II)中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、また、Aは炭素数1〜6のアルキレン基である。〕
【化6】

〔式(III)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは平均付加モル数を意味し、0〜5となる数であり、mは1〜3となる整数である。〕
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゴム組成物へのシリカの分散性を改良し、未加硫ゴムの粘度低減を改良できて加工性も良好となるゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ、並びに、未加硫ゴムの粘度低減方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、白色充填剤と、下記式(I)で表される化合物の少なくとも一種とを配合してなることを特徴とするものである。
【化7】

〔上記式(I)中において、R〜Rのうち少なくとも1つが、下記式(II)で表される基を表し、残余のR〜Rが、下記式(III)で表される基を表す。〕
【化8】

〔式(II)中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、また、Aは炭素数1〜6のアルキレン基である。〕
【化9】

〔式(III)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは平均付加モル数を意味し、0〜5となる数であり、mは1〜3となる整数である。〕
【0012】
本発明のゴム組成物に用いるゴム成分は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムからなる。ここで、ジエン系合成ゴムとしては、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。これらのゴム成分は、一種単独で用いても、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0013】
本発明のゴム組成物に用いる白色充填剤としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらの中でも、補強性の観点から、シリカ及び水酸化アルミニウムが好ましく、シリオが特に好ましい。
用いることができるシリカとしては、特に制限はなく、市販のゴム組成物に使用されているものが使用でき、中でも湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等を使用することができ、特に、湿式シリカの使用が好ましい。
【0014】
これらの白色充填剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して5〜200質量部の範囲が好ましく、更に好ましくは、5〜150質量部の範囲とすることが望ましく、より更に好ましくは、5〜120質量部、より更に好ましくは30〜120質量部、より更に好ましくは60〜100質量部の範囲とすることが望ましい。特に、本発明の場合、シリカが上記ゴム成分100質量部に対して60質量部以上の高い配合であっても、本発明の効果を発揮できるものである。
この白色充填剤の配合量が上記ゴム成分100質量部に対してヒステリシスを低下させる効果の観点から、5質量部以上が好ましく、一方、作業性を向上させる観点から200質量部以下が好ましい。
【0015】
用いる白色充填剤としてシリカを用いる場合には、補強性の観点から、シランカップリング剤を用いることが好ましい。
用いることができるシランカップリング剤は、特に制限なく、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−ニトロプロピルトリメトキシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−ニトロプロピルジメトキシメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0016】
これらのシランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量によって変動するものであるが、好ましくは、シリカ100質量部に対し、1〜20質量部、更に好ましくは、発熱性の観点から、6〜12質量部の範囲が望ましい。
シランカップリング剤の配合量がシリカ100質量部に対し、カップリング剤を入れる効果の観点から、1質量部以上が好ましく、一方、補強性、発熱性を維持する観点から、20質量部以下が好ましい。
【0017】
本発明では、上記白色充填剤以外にも補強性充填剤として、カーボンブラックなどを併用できる。
用いることができるカーボンブラックは、特に制限なく、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFなどのグレードを用いることができる。
これらのカーボンブラックの配合量も、特に限定されるものではないが、好ましくは、前記ゴム成分100質量部に対し、0〜60質量部、更に好ましくは、10〜50質量部であることが望ましい。なお、発熱性を維持する観点から、60質量部以下が好ましい。
【0018】
本発明に用いる下記式(I)で表される化合物は、シリカ配合ゴムの未加硫粘度低減と、加硫ゴムの発熱性を改良して本発明の効果を発揮させるために配合するものである。
【化10】

〔上記式(I)中において、R〜Rのうち少なくとも1つが、下記式(II)で表される基を表し、残余のR〜Rが、下記式(III)で表される基を表す。〕
【化11】

〔式(II)中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、また、Aは炭素数1〜6のアルキレン基である。〕
【化12】

〔式(III)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは平均付加モル数を意味し、0〜5となる数であり、mは1〜3となる整数である。〕
【0019】
上記式(I)中において、R〜Rのうち少なくとも1つが、上記式(II)で表される基を表し、残余のR〜Rが、上記式(III)で表される基を表すものであり、好ましくは、Rが、上記式(II)で表される基を表し、R、Rが、上記式(III)で表される基を表すものが望ましい。
また、上記式(II)において、Rは、炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、ドコシル基、テトラコシル基などのアルキル基、アリル基、3−ブテニル基、メタリル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、1,1,−ジメチル−2−プロペニル基、4−ペンテニル基、オレイル基、テトラコシリデン(テトラコセニル)基などのアルケニル基が挙げられ、好ましくは、炭素数6〜18、さらに好ましくは炭素数11〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘプタデセニル基である。
上記式(II)のAとしては、炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられ、中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0020】
更に、上記式(III)において、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられ、エチレン基やプロピレン基が好ましく、また、nは平均付加モル数を意味し、0〜5の数となるものであり、nは0〜3の数となるものが好ましく、0がより好ましい。なお、n個のRは同一でも異なってもよい。
また、mは1〜3の整数であり、1〜2が好ましく、1が更に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基である。
【0021】
具体的に用いることができる上記式(I)で表される化合物としては、例えば、N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−ラウロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジエチルアミン、N−パルミトイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−パルミトイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、N−ステアロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−ステアロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、ジ(N−ラウロイルアミノエチル)−N−メチルアミン、トリ(N−ラウロイルアミノエチル)アミンの少なくとも1種を挙げることができ、中でも、N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−ラウロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、N−パルミトイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−パルミトイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、N−ステアロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、及びN−ステアロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミンから選ばれる1種以上の使用が望ましい。
なお、上記式(I)で表される化合物であるアミドアミン類の合成法は、既知であり、種々の製法により得ることができ、また、市販のものを使用してもよい。
【0022】
これらの化合物の少なくとも一種の配合量は、好ましくは、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜15質量部、更に好ましくは、本発明の更なる効果を発揮せしめる観点から、1.0〜15質量部が好ましく、1.5〜10質量部がより好ましく、2〜8質量部がより更に好ましい。また、このアミドアミン類の配合量は、シリカ100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、2〜12質量部がより更に好ましく、3〜10質量部がより更に好ましい。
この化合物の少なくとも一種の配合量が、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上では、未加硫粘度低減効果が高く、一方、15質量部以下では、ゴムヤケ性への影響が小さく好ましい。
【0023】
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分、白色充填剤、上記式(I)で表される化合物の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
また、本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、シリカと、上記式(I)で表される化合物の少なくとも一種と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とをロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練り、熱入れ、押出等することにより得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部分等の空気入りタイヤのタイヤ部材の用途を始め、防振ゴム、ベルト,ホースその他の工業製品等の用途にも用いることができる。
【0024】
このように構成されるゴム組成物が、何故、ゴム組成物への白色充填剤、特に、シリカの分散性を改良し、未加硫ゴムの粘度低減を改良できて加工性も良好となるかは以下のように推察される。
すなわち、本発明のゴム組成物において、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、シリカを配合した配合系に、上記式(I)で表される化合物の少なくとも一種が配合されると、シリカ表面の疎水化により、シリカ同士の凝集を抑制し、未加硫ゴムの粘度を低減し、また、シリカ表面での促進剤の吸着を抑制するため、加工性も良好となるものと推察される。
【0025】
次に、本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種配合剤を配合させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階でタイヤ部材として、例えば、トレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。このようにして得られた本発明のタイヤは、低発熱性に優れるので、燃費性が良好であると共に、しかも該ゴム組成物の加工性が良好であるので、生産性にも優れたものとなる。
更に、本発明の未加硫粘度低減方法は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、シリカを配合した配合系に、上記式(I)で表される化合物の少なくとも一種を配合することにより、シリカ表面の疎水化により、シリカ同士の凝集を抑制し、未加硫ゴムの粘度を低減するものとなる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
<製造例1〜3>
用いる化合物は、下記各製造法等により得たものを使用した。
(製造例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び圧力計を備えた1リットル容5ツ口フラスコに、ステアリン酸284.5g(分子量284.5、1モル)およびジメチルアミノプロピルアミン71.5g(分子量102.2、0.7モル)を仕込み、窒素ガスをキャピラリー管より 100cc/Hrで吹き込みながら150℃へ昇温した。2時間熟成後、180℃に昇温し、ジメチルアミノプロピルアミン30.7g(分子量102.2、0.3モル)を1時間かけて滴下した。その後、この条件下で2時間保持し、酸価(AV)を測定して10以下であることを確認した後に50℃まで冷却し、N−ステアロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンを355g得た。
【0028】
(製造例2)
上記製造例1において、ジメチルアミノプロピルアミンをジエチルアミノエチルアミン(分子量116.2)に変え、当初仕込みを81.3g(0.7モル)と熟成・昇温後仕込みを34.9g(0.3モル)にした以外は製造例1と同様に行い、N−ステアロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミンを363g得た。
【0029】
(製造例3)
上記製造例1において、ステアリン酸をラウリン酸400g(分子量200、2モル)に変え、ジメチルアミノプロピルアミンをジ(2−アミノエチル)メチルアミン(分子量117.2)変え、それぞれ当初仕込みを82.0g(0.7モル)と熟成・昇温後仕込みを35.2g(0.3モル)にした以外は製造例1と同様に行い、ジ(N−ラウロイルアミノエチル)−N−メチルアミンを451g得た。
【0030】
〔実施例1〜3及び比較例1〜2〕
下記表1に示す配合処方で常法により、ゴム組成物を調製した。表中の数値は質量部である。
得られた各ゴム組成物について、下記測定方法により、未加硫ゴム粘度の測定を行った。また、得られたゴム組成物を160℃で14分間加硫した。得られた加硫ゴムに対し、下記測定方法により粘弾性(tanδ)の測定を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0031】
〔未加硫ゴム粘度の測定方法〕
未加硫ゴム粘度は、JIS K 6300−1:2001(ムーニー粘度)に準拠して行った。
なお、評価は、比較例1の値を100として指数表示した。未加硫ゴム粘度は、値が小さいほど作業性が良好であることを示す。
【0032】
〔粘弾性(tanδ)の測定方法〕
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzでtanδを測定し、比較例1の値を100として指数表示した。この値が小さい程、低発熱性で燃費性が良好であることを示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記表1の*1〜*14は下記のとおりである。
*1)タフデン2830〔旭化成ケミカルズ社製〕(ゴム成分100質量部、油成分37.5質量部)
*2)シースト7HM〔東海カーボン社製〕
*3)東ソーシリカ株式会社製「ニプシールVN3」
*4)ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
*5)マイクロクリスタリンワックス、オゾエース0701〔日本精蝋社製〕
*6)ノクラック6C〔大内新興化学工業社製〕
*7)ノンフレックスRD−S〔精工化学社製〕
*8)ノクセラーD〔大内新興化学工業社製〕
*9)ノクセラーDM〔大内新興化学工業社製〕
*10)サンセラーCM−G〔三新化学工業社製〕
*11)ファーミンDM8098〔ジメチルステアリルアミン、花王社製〕
*12)製造例1〔N−ステアロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン〕
*13)製造例2〔N−ステアロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン〕
*14)製造例3〔ジ(N−ラウロイルアミノエチル)−N−メチルアミン〕
【0035】
上記表1から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜3のゴム組成物は、本発明の範囲外となる比較例1〜2に較べて、未加硫ゴム粘度、粘弾性(tanδ)の評価結果から、未加硫ゴムの粘度低減効果と、低発熱性で燃費性も良好となるゴム組成物となることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部分等の空気入りタイヤのタイヤ部材の用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホースなどのゴム製品に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、白色充填剤と、下記式(I)で表される化合物の少なくとも一種とを配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【化1】

〔上記式(I)中において、R〜Rのうち少なくとも1つが、下記式(II)で表される基を表し、残余のR〜Rが、下記式(III)で表される基を表す。〕
【化2】

〔式(II)中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、また、Aは炭素数1〜6のアルキレン基である。〕
【化3】

〔式(III)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは平均付加モル数を意味し、0〜5となる数であり、mは1〜3となる整数である。〕
【請求項2】
前記ゴム成分100質量部に対し、白色充填剤を5〜200質量部、上記式(I)で表される化合物の少なくとも一種を0.5〜15質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−ラウロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、N−パルミトイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、N−パルミトイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミン、N−ステアロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、及びN−ステアロイルアミノエチル−N,N−ジエチルアミンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
更に、シランカップリング剤を配合することを特徴とする請求項1〜3何れか一つに記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一つに記載のゴム組成物をタイヤ部材に用いてなることを特徴とするタイヤ。
【請求項6】
天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分に対して、白色充填剤と、下記式(I)で表される化合物の少なくとも一種とを配合する、未加硫ゴムの粘度低減方法。
【化4】

〔上記式(I)中において、R〜Rのうち少なくとも1つが、下記式(II)で表される基を表し、残余のR〜Rが、下記式(III)で表される基を表す。〕
【化5】

〔式(II)中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、また、Aは炭素数1〜6のアルキレン基である。〕
【化6】

〔式(III)中、Rは、炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは平均付加モル数を意味し、0〜5となる数であり、mは1〜3となる整数である。〕

【公開番号】特開2013−87185(P2013−87185A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228684(P2011−228684)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】