説明

ゴム組成物添加用フェノール樹脂

【課題】ゴム組成物の耐破壊性低下を防止しながら高弾性化が可能なゴム組成物添加用フェノール樹脂を提供。
【解決手段】下記式(I):


(式中、R0は、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基及びメチロール基から選ばれる官能基;R1及びR2の少なくとも一部は、アリーレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基及びシクロアルカジエニレン基から選ばれる少なくとも一種の架橋基;pは0又は1の整数、mは1〜3の整数、nは0〜10の数)等で表されるゴム組成物添加用フェノール樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物添加用フェノール樹脂、特にタイヤのカーカス部材、コンベヤベルト及びホース等に用いられるゴム組成物に添加される特定構造のフェノール樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムを高弾性化する手段としては、カーボンブラック等の充填剤を増量したり、加硫剤の硫黄を増量して架橋点を増やす等の手法が知られているが、かかる手法を採るとゴム組成物の耐破壊性等の物性が著しく低下するという問題があった。
【0003】
これに対し、ゴムの耐破壊性の低下を抑えながらゴムを高弾性化する手段として、ノボラック型又はレゾール型の未変性フェノール樹脂を添加する方法や、トールオイル又はカシューオィル等の不飽和油、或いはキシレン又はメシチレン等の芳香族炭化水素で変性したフェノール樹脂を添加する方法が提案されており、耐破壊性の低下を抑えながらゴム組成物を高弾性化するために広く用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかしながら、昨今のゴムに対する性能要求は非常に厳しいものがあり、ゴムの耐破壊性の低下を抑えながらゴムを更に高弾性化する必要がある。これに対し、上述の未変性フェノール樹脂や変性フェノール樹脂を添加する方法では、耐破壊性の低下を抑えながらゴムを更に高弾性化するという意味では不充分であり、依然として改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−98081号公報
【特許文献2】特開2001−226528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、ゴム組成物の耐破壊性の低下を防止しながらゴム組成物の高弾性化が可能なゴム組成物添加用フェノール樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定構造のフェノール樹脂をゴム組成物に添加することにより、ゴム組成物の耐破壊性の低下を防止しながら、ゴム組成物を著しく高弾性化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂は、下記式(I):
【化1】

(式中、R0は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基及びメチロール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基であり;R1及びR2は、架橋基で、但し、R1及びR2の少なくとも一部は、アリーレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基及びシクロアルカジエニレン基からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋基であり;pは0又は1の整数で、mは1〜3の整数で、nは0〜10の数である)、下記式(II):
【化2】

(式中、R0、R1、R2、n及びmは、上記と同義であり、但し、R0、R1及びR2は、ナフタレン環のいずれの環に結合していてもよい)、又は下記式(III):
【化3】

(式中、R0、R1、R2、n及びmは、上記と同義であり、R3は炭素数1〜3のアルキレン基で、qは1〜2の整数である)で表される。
【0009】
本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂の好適例においては、前記R1及びR2の少なくとも一部がアラルキレン基である。ここで、該アラルキレン基としては、キシリレン基及びビフェニルジメチレン基が好ましく、p-キシリレン基及び[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基が更に好ましい。前記R1及びR2の少なくとも一部がp-キシリレン基である場合、該p-キシリレン基の含有量は、全R1及びR2の5モル%以上であるのがより一層好ましい。また、前記R1及びR2の少なくとも一部が[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基である場合、該[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基の含有量は、全R1及びR2の5モル%以上であるのがより一層好ましい。
【0010】
本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂の他の好適例においては、前記フェノール樹脂が式(I)で表され、該式(I)中のR0が、水素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、pが0である。ここで、前記式(I)中のR0がメチル基であるのが更に好ましく、前記式(I)中のR0がメチル基で、mが1であるのがより一層好ましく、前記式(I)中のR0がメチル基で、該メチル基がヒドロキシル基に対して3位又は4位に結合しているのが特に好ましい。
【0011】
本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂は、メチレン供与体である硬化剤を前記フェノール樹脂の1〜30質量%含むのが好ましい。ここで、該硬化剤としては、ヘキサメチルメチロールメラミンが好ましい。
【0012】
また、本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂混合物は、前記式(I)のフェノール樹脂とメチレン架橋フェノールノボラック樹脂とを含む混合物であって、式(I)のフェノール樹脂とメチレン架橋フェノールノボラック樹脂との質量比が95:5〜5:95である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定構造で表され、ゴム組成物に添加することで、ゴム組成物の耐破壊性の低下を防止しながらゴム組成物の高弾性化が可能なゴム組成物添加用フェノール樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂は、上記式(I)、式(II)又は式(III)で表される。一方、従来のゴム組成物に用いられている下記式(IV):
【化4】

で表される未変性のフェノール樹脂は、極性の官能基であるフェノール基とフェノール基との距離が短いため、極性の低い天然ゴム及び合成ジエン系ゴム等のゴム成分に対する分散性が低い。このため、フェノール樹脂の偏在した部分がゴム組成物中に存在し、該部分が破壊の基点となりゴム組成物の耐破壊性を低下させていた。
【0015】
また、変性フェノール樹脂は、フェノール樹脂を重合した後、該重合体を変性するので、構造的に分子の未端のみが変性され、中央部は未変性のフェノール樹脂と同じである。そのため、分子末端のゴム成分への相溶性は改善されるものの、中央部の相溶性が低いので、充分なゴム物性が得られない。
【0016】
これに対して、式(I)、式(II)又は式(III)で表されるフェノール樹脂は、複数のフェノール類がメチレン基より大きな2価の基を介して結合した部分を含むため、分子の未端及び中央の双方のゴム成分に対する相溶性が改善されている。一例として、下記式(V):
【化5】

で表されるフェノール樹脂について述べると、フェノールとキシリレンとが分子単位で結合しているため、未端及び中央の双方のゴム成分に対する相溶性が改善されている。
【0017】
より詳しくは、上記フェノール樹脂は、複数のフェノール類がメチレン基より大きな2価の基を介して結合した部分を含むため、ゴム組成物に従来用いられていた未変性又は変性フェノール樹脂よりも、極性の官能基であるフェノール基とフェノール基との距離が長い部分を含む。そのため、上記フェノール樹脂は、上記未変性及び変性フェノール樹脂よりも極性が低く、(1)ゴム成分中での分散性が改善され、ゴム組成物を大幅に高弾性化することができる。また、上記フェノール樹脂は、ゴム成分中での分散性が良好なため、該フェノール樹脂をゴム組成物に添加しても、ゴム組成物の均一性が維持され、ゴム組成物中に破壊の起点となる部分がなく、そのため、(2)該フェノール樹脂が添加されたゴム組成物は、硬化後の形態が応力に対しより強く、耐破壊性の低下が最小限に抑制されている。
【0018】
本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂は、上記式(I)、式(II)及び式(III)のいずれかで表される。式(I)、式(II)及び式(III)において、繰り返し単位数nは、0〜10である。また、式(I)、式(II)及び式(III)においてR0は、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基及びメチロール基からなる群から選ばれる少なくともひとつの官能基であり、好ましくは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。また、炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。なお、R0がメチル基の場合、該メチル基がヒドロキシル基に対して3位又は4位に結合しているのが特に好ましい。
【0019】
式(I)において、pは0又は1の整数で、0であるのが好ましく、式(I)、式(II)及び式(III)において、mは1〜3の整数で、1であるのが好ましく、式(III)において、qは1〜2の整数である。なお、OH、R0、R1及びR2のいずれも結合していない位置には水素が結合している。
【0020】
式(I)、式(II)及び式(III)において、R1及びR2は、架橋基で、但し、R1及びR2の少なくとも一部は、アリーレン基、炭素数2〜l0のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基及びシクロアルカジエニレン基からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋基であり、互いに同一でも異なってもよい。従来、高弾性化を目的としてゴム組成物に添加されていたフェノール樹脂は、R1及びR2の総てがメチレン基であるが、本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂は、R1及びR2としてメチレン基より大きな2価の基を含むため、フェノール基同士の距離が長い部分が存在し、前述のような作用を発揮する。
【0021】
ここで、上記アリーレン基としては、フェニレン基等が挙げられ、炭素数2〜l0のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、アラルキレン基としては、キシリレン基、ビフェニルジメチレン基(−CH2−C64−C64−CH2−)等が挙げられ、シクロアルケニレン基としては、シクロヘキシレン基、ジシクロデシレン基、トリシクロデシレン基等が挙げられ、シクロアルカジエニレン基としては、シクロペンタジエニレン基等が挙げられる。R1及びR2は、その少なくとも一部が、上記架橋基の中でもキシリレン基又はビフェニルジメチレン基であるのが好ましい。なお、キシリレン基には、構造異性体、即ち、o-キシリレン基、m-キシリレン基、p-キシリレン基が存在し、また、ビフェニルジメチレン基にも、構造異性体、即ち、[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基、[1,1'-ビフェニル]-2,2'-ジメチレン基、[1,1'-ビフェニル]-2,3'-ジメチレン基、[1,1'-ビフェニル]-2,4'-ジメチレン基、[1,1'-ビフェニル]-3,3'-ジメチレン基、[1,1'-ビフェニル]-3,4'-ジメチレン基が存在するが、架橋基がこれら構造異性体の一種単独から構成されていてもよいし、架橋基中に複数の構造異性体が混在していてもよい。上記架橋基の中でも、R1及びR2としては、p-キシリレン基及び[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基が好ましく、これら架橋基の割合は、全R1及びR2の5モル%以上(即ち、R1及びR2の総数の5%以上)であるのが好ましく、10モル%以上であるのが更に好ましく、15モル%〜100モル%であるのがより一層好ましい。なお、R1及びR2がp-キシリレン基であるフェノール樹脂としは、上記式(V)で表されるフェノール樹脂が挙げられ、R1及びR2が[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基であるフェノール樹脂としては、下記式(VI):
【化6】

で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0022】
なお、本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂において、R1及びR2の一部がメチレン基で構成される場合、好ましくは全R1及びR2の5モル%以上が、より好ましくは10モル%以上が、さらに好ましくは20モル%以上が、最も好ましくは50モル%以上が、アリーレン基、炭素数2〜l0のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基又はシクロアルカジエニレン基かなら群から選ばれる少なくとも一種の架橋基である。
【0023】
また、本発明で使用できる式(I)、式(II)及び式(III)で示されるフェノール樹脂に対し、メチレン架橋したフェノールノボラック樹脂を混合して使用することもできる。ここで、メチレン架橋したフェノールノボラック樹脂としては、例えば、上記式(IV)で示される構造の樹脂、及び下記式(VII):
【化7】

で示される構造の樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、メチレン架橋したフェノールノボラック樹脂に用いるフェノール類としては、後述する式(I)、式(II)又は式(III)で表されるフェノール樹脂の製造に用いることができるフェノール類(A)を挙げることができ、式(I)のフェノール樹脂の製造に用いることができるフェノール類が好ましい。式(I)、式(II)又は式(III)で表されるフェノール樹脂と、メチレン架橋したフェノールノボラック樹脂との使用割合は、質量比で95:5〜5:95の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲が更に好ましく、20:80〜80:20の範囲がより一層好ましく、35:65〜65:35の範囲が最も好ましい。
【0024】
式(III)中、R3は炭素数1〜3のアルキレン基であり、該炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン基、ジメチルメチレン基等が挙げられる。
【0025】
本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂としては、市販のフェノール樹脂、例えば、明和化成社のMEH-7800、MEH-7851等が使用できる。また、本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂は、以下の方法で合成することもできる。
【0026】
上記式(I)、式(II)又は式(III)で表されるフェノール樹脂は、フェノール類(A)と、例えば、1,4-ジアルコキシメチルベンゼン、4,4'-ビス(アルコキシメチル)ビフェニル等の分子中にアルコキシ基を2つ有する化合物、並びに1,4-ジハロゲン化メチルベンゼン、4,4'-ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニル等の分子中にハロゲンを2つ有する化合物等の上記架橋基を形成する化合物(B)とを、例えば酸触媒の存在下で縮重合させて合成することができる。ここで、架橋基を形成する化合物(B)において、アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基が好ましい。また、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、これらの中でも塩素が好ましい。また、通常、フェノール類(A)の使用量は、架橋基を形成する化合物(B)の8倍モル以上であればよく、好ましくは9〜50倍モルで、より好ましくは10〜30倍モルである。フェノール類(A)の使用量が架橋基を形成する化合物(B)の8倍モルより少ないと、架橋が過度に進み、目的のフェノール樹脂を安定的に得ることができない。また、フェノール類(A)の使用量が多過ぎると、未反応の原料が多くなり経済的でない。
【0027】
上記式(I)のフェノール樹脂の製造に用いることができるフェノール類(A)としては、フェノール、m-クレゾール(3-メチルフェノール)p-クレゾール(4-メチルフェノール)、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、t-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、グアヤコール、グエトール、トリメチルフェノール、4-ヒドロキシビフェニル、メチロールフェノール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等が挙げられる。これらフェノール類には、構造異性体も存在するが、いずれも使用することができる。また、これらフェノール類は、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。上記フェノール類の中でも、フェノール、クレゾール、キシレノール、4-ヒドロキシビフェニル、メチロールフェノールが好ましく、硬化反応の点から、フェノール及びクレゾールが更に好ましい。
【0028】
上記式(II)のフェノール樹脂の製造に用いることができるフェノール類としては、ナフトール、メチルナフトール等のナフトール類が挙げられ、これらの中でも、ナフトールが好ましい。また、上記式(III)のフェノール樹脂の製造に用いることができるフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類が挙げられる。
【0029】
上記フェノール樹脂の製造に使用する酸触媒としては、シュウ酸、ギ酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸、ジメチル硫酸等の有機酸、塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。触媒の使用量は、使用するフェノール類の0.01〜1質量%の範囲が好ましい。触媒の使用量が使用するフェノール類の0.01質量%未満では、反応速度が遅く、1質量%を超えると、反応が急激に進行して反応を制御することが困難となる場合がある。
【0030】
反応温度は、使用するフェノール類及び架橋基を形成する化合物の配合割合にもよるが、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃、より好ましくは80〜180℃である。反応温度が低過ぎると重合が進まず、反応温度が高過ぎると反応の制御が難しくなり、目的のフェノールノボラック樹脂を安定的に得ることが困難となる。
【0031】
また、反応時間は、上記反応温度にもよるが、通常は10時間以内であり、反応圧力に関しては、通常は常圧で行うが、若干の加圧ないし減圧下で反応を行ってもよい。
【0032】
具体的に、上記式(V)のフェノール樹脂は、フェノールと1,4-ジアルコキシメチルベンゼン又は1,4-ジハロゲン化メチルベンゼンとを、上記酸触媒の存在下で縮重合させて合成することができ、上記式(VI)で表されるフェノール樹脂は、フェノールと4,4'-ビス(アルコキシメチル)ビフェニル又は4,4'-ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニルを、上記酸触媒の存在下で縮重合させて合成することができる。
【0033】
本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂の物性については、特に制限はないが、取り扱いの面から、ポリスチレン換算での数平均分子量が800〜5000であるのが好ましく、1000〜3000であるのが更に好ましく、また、軟化点が80℃以上であるのが好ましく、90℃〜140℃であるのが更に好ましい。
【0034】
ゴム成分に対し、上記ゴム組成物添加用フェノール樹脂を配合することで、高弾性なゴム組成物が得られる。ここで、ゴム成分としては、天然ゴム(NR);ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ポリブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の合成ジエン系ゴムが挙げられる。これらゴム成分は、一種単独でも、ブレンドでもよい。上記ゴム組成物における、上記式(I)、式(II)又は式(III)のフェノール樹脂の添加量は、上記ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部であり、1〜10質量部の範囲が好ましい。該フェノール樹脂の添加量がゴム成分100質量部に対して1質量部未満では、硬化性能が不充分となる場合があり、30質量部を超えると、ゴム組成物の柔軟性が損なわれる場合がある。
【0035】
上記ゴム組成物添加用フェノール樹脂をゴム成分に配合する際は、更にメチレン供与体である硬化剤を配合するのが好ましい。但し、前記R0がメチロール基の場合、該フェノール樹脂は自己硬化性なので、硬化剤は不要である。該硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメチルメチロールメラミン等が挙げられる。ここで、硬化剤の配合量は、前述した式(I)、式(II)又は式(III)のフェノール樹脂の1〜30質量%の範囲が好ましい。硬化剤の配合量が1質量%未満では、フェノール樹脂の硬化が充分進まず、30質量%を超えると、ゴムの架橋系に悪影響を与える場合がある。
【0036】
また、上記ゴム成分には、上記ゴム組成物添加用フェノール樹脂及び硬化剤の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、充填剤、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を用途に応じて適宜配合することができる。上記ゴム組成物は、ロール等の開放式混練機、バンバリーミキサー等の密閉式混練機等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後に加硫を行い、各種ゴム製品に適用可能である。例えば、該ゴム組成物は、タイヤ、特にタイヤのカーカス部材、コンベヤベルト及びホース等に用いることができる。
【0037】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
(合成例1:明和化成製、品名BCrF−2−5)
温度計、仕込・留出口、冷却器および撹拌機を備えた容量2000容量部のガラス製4つ口フラスコに、m-クレゾール酸841質量部(7.787モル:m-クレゾール65モル%及びp-クレゾール35モル%含有)、4,4'-ビスメトキシメチルビフェニル63.9質量部(0.264モル)、42%のホルマリン336.3質量部(4.75モル)及びシュウ酸2.8質量部を加え、内温97℃で15時間反応させた。その後、25%の硫酸0.4質量部を添加し、100℃にて脱水し、170℃まで4時間かけて昇温することで脱メタノール反応させ、その後、減圧40torr−スチーミング処理で未反応成分を除去した。得られた樹脂の軟化点は130℃で、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は1237で、重量平均分子量(Mw)は2057であった。
【0039】
(合成例2:明和化成製、品名XCrF−11)
温度計、仕込・留出口、冷却器および撹拌機を備えた容量1000容量部のガラス製4つ口フラスコに、m-クレゾール酸324質量部(3モル)、p-キシレンジメチルエーテル81質量部(0.488モル)、42%のホルマリン118質量部(1.65モル)及び25%の硫酸0.2質量部を加え、内温97℃で13時間反応させた。その後、100℃にて脱水し、内温を170℃まで4時間かけて昇温することで脱メタノール反応させ、その後、減圧40torr−スチーミング処理で未反応成分を除去した。得られた樹脂の軟化点は129℃であった。GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は1041で、重量平均分子量(Mw)は2523であった。
【0040】
(合成例3:明和化成製、品名XBCrF−4)
温度計、仕込・留出口、冷却器および撹拌機を備えた容量2000容量部のガラス製4つ口フラスコに、m-クレゾール酸968質量部(8.962モル)、4,4'-ビスメトキシメチルビフェニル63.9質量部(0.264モル)、p-キシレンジメチルエーテル50.8質量部(0.306モル)、42%のホルマリン339.3質量部(4.75モル)及びシュウ酸2.8質量部を加え、内温97℃で15時間反応させた。その後、50%の硫酸0.6質量部を添加し、100℃にて脱水し、内温を170℃まで6時間かけて昇温することで脱メタノール反応させ、その後、減圧40torr−スチーミング処理で未反応成分を除去した。得られた樹脂の軟化点は130℃であった。GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は1234で、重量平均分子量(Mw)は2005であった。
【0041】
(合成例4:明和化成製、品名XHF−3M)
温度計、仕込・留出口、冷却器および撹拌機を備えた容量1000容量部のガラス製4つ口フラスコに上記式(IV)で表されるノボラック型フェノール樹脂(軟化点94℃、遊離フェノール0.03%)375質量部、4,4'-ビスメトキシメチルビフェニル41.7質量部(0.172モル)を加え、内温120℃で溶解混合させた。その後、10%の硫酸0.4質量部を添加し、内温を175℃まで3時間かけて昇温することで反応させ、その後、減圧下(40torr)で水分を除去した。得られた樹脂の軟化点は124℃であった。GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は2032で、重量平均分子量(Mw)は8861であった。
【0042】
(合成例5:明和化成製、品名BHF−3M)
合成例4において、4,4'-ビスメトキシメチルビフェニルに代えてp-キシレンジメチルエーテル41.7質量部(0.251モル)を使用した以外は同様にして反応を行った。得られた樹脂の軟化点は132℃であった。GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は1648で、重量平均分子量(Mw)は27968であった。
【0043】
(合成例6:明和化成製、品名MEH−7851−4H)
温度計、仕込・留出口、冷却器および撹拌機を備えた容量1000容量部の4つ口ガラス製フラスコに、フェノール188質量部(2モル)、4,4'-ビスメトキシメチルビフェニル331.5質量部(1.37モル)及び50%の硫酸0.23質量部を加え、窒素気流下、内温110℃〜130℃にて3.5時間、さらに165℃にて3時間反応させ、95℃まで冷却した。冷却後、90℃以上の純水500質量部を投入して電気伝導度が50μS/cm以下になるまで水洗した。その後、内温を160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分を除去した。得られた樹脂の軟化点は130℃であった。GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は1400で、重量平均分子量(Mw)は9178であった。
【0044】
(合成例7:明和化成製、品名MEH−7800−3H)
温度計、仕込・留出口、冷却器および撹拌機を備えた容量1000容量部のガラス製4つ口フラスコに、フェノール188質量部(2モル)、p-キシレンジメチルエーテル229.08質量部(1.38モル)、及び50%の硫酸0.16質量部を加え、窒素気流下、内温135℃にて3.5時間、さらに160℃にて1.5時間反応させ、95℃まで冷却した。冷却後、90℃以上の純水500質量部を投入して電気伝導度が30μS/cm以下になるまで水洗した。その後、内温を160℃まで昇温し、減圧−スチーミング処理にて未反応成分を除去した。得られた樹脂の軟化点は95℃であった。GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は2185で、重量平均分子量(Mw)は20746であった。
【0045】
(合成例8:明和化成製、品名MEH−X−5H)
温度計、仕込・留出口、冷却器および撹拌機を備えた容量1000容量部のガラス製4つ口フラスコに、上記式(V)で表されるキシリレン架橋ノボラック樹脂(軟化点87℃、遊離フェノール0.2%)200質量部に対し、上記式(VII)で表されるノボラック型クレゾール樹脂(軟化点155℃、遊離クレゾール1.5%)300質量部を加え、窒素気流下、内温190℃にて溶解混合させた。得られた樹脂の軟化点は133℃であった。GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は1908で、重量平均分子量(Mw)は13782であった。
【0046】
(実施例1)
表1に示す配合処方に従い、天然ゴム100質量部に対し、HAF級カーボンブラック50質量部、アロマオイル5質量部、ステアリン酸3質量部、亜鉛華4質量部、老化防止剤6PPD[N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン]1質量部、加硫促進剤TBBS[N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド]2.2質量部、硫黄5質量部と共に、合成例1で得られたフェノール樹脂を10質量部使用し、更に、ヘキサメチルメチロールメラミン1質量部も併せて混合してゴム組成物を調製した。
【0047】
(実施例2〜8及び比較例1〜2)
実施例1において、合成例1で得られたフェノール樹脂に代えて、合成例2〜8で得られた樹脂を使用する以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。なお、比較例1で用いたフェノール樹脂は、上記式(IV)で表されるノボラック型フェノール樹脂(品名580、軟化点129℃)であり、比較例2で用いたフェノール樹脂は、上記式(VII)で表されるノボラック型クレゾール樹脂(品名MER−130、軟化点129℃)である。
【0048】
次に、実施例1〜8及び比較例1〜2で得られたゴム組成物を145℃で30分間加硫して物性測定用のサンプルを作製し、下記に示す方法で硬度試験、引張試験及び動的粘弾性試験を行った。得られた結果を、比較例1を100として指数表示し、表1に併せて示した。
【0049】
[硬度測定]
上記加硫ゴム組成物について、JIS K6253に準拠してJIS A硬度を測定した。
【0050】
[引張試験]
上記加硫ゴム組成物からなるJISダンベル状3号形サンプルを用意し、JIS K6251に準拠して25℃で引張試験を行い、切断時伸び、引張強さ、50%伸張時の引張応力を測定した。
【0051】
[動的粘弾性試験]
上記加硫ゴム組成物について、東洋精機社製スペクトロメーターを用い、歪1%、測定温度25℃にて動的貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の実施例の結果から明らかなように、本発明のゴム組成物添加用フェノール樹脂をゴム組成物に添加することで、切断時伸び、引張強さ及び50%伸長時の引張応力の低下を抑制してゴム組成物の耐破壊性の低下を防止しつつ、動的貯蔵弾性率を向上させ、ゴム組成物を著しく高弾性化できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

(式中、R0は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基及びメチロール基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基であり;R1及びR2は、架橋基で、但し、R1及びR2の少なくとも一部は、アリーレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基及びシクロアルカジエニレン基からなる群から選ばれる少なくとも一種の架橋基であり;pは0又は1の整数で、mは1〜3の整数で、nは0〜10の数である)、下記式(II):
【化2】

(式中、R0、R1、R2、m及びnは、上記と同義であり、但し、R0、R1及びR2は、ナフタレン環のいずれの環に結合していてもよい)、又は下記式(III):
【化3】

(式中、R0、R1、R2、m及びnは、上記と同義であり、R3は炭素数1〜3のアルキレン基で、qは1〜2の整数である)で表されるゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項2】
前記R1及びR2の少なくとも一部がアラルキレン基であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項3】
前記アラルキレン基が、キシリレン基及び/又はビフェニルジメチレン基であることを特徴とする請求項2記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項4】
前記キシリレン基がp-キシリレン基であることを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項5】
前記p-キシリレン基の含有量が全R1及びR2の5モル%以上であることを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項6】
前記ビフェニルジメチレン基が、[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基であることを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項7】
前記[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基の含有量が全R1及びR2の5モル%以上であることを特徴とする請求項6に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項8】
前記フェノール樹脂が式(I)で表され、式(I)中のR0が、水素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、pが0であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項9】
前記式(I)中のR0がメチル基であることを特徴とする請求項8に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項10】
前記式(I)中のR0がメチル基であり、mが1であることを特徴とする請求項9に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項11】
前記式(I)中のR0がメチル基であり、該メチル基がヒドロキシル基に対して3位又は4位に結合していることを特徴とする請求項10に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項12】
メチレン供与体である硬化剤を前記式(I)のフェノール樹脂の1〜30質量%含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項13】
前記硬化剤がヘキサメチルメチロールメラミンである請求項12に記載のゴム組成物添加用フェノール樹脂。
【請求項14】
前記式(I)のフェノール樹脂とメチレン架橋フェノールノボラック樹脂とを含む混合物であって、式(I)のフェノール樹脂とメチレン架橋フェノールノボラック樹脂との質量比が95:5〜5:95であるゴム組成物添加用フェノール樹脂混合物。

【公開番号】特開2009−173941(P2009−173941A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70081(P2009−70081)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【分割の表示】特願2004−111058(P2004−111058)の分割
【原出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】