ゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブ
【課題】慣性モーメントを大きく向上することができるゴルフクラブヘッドおよびそれを備えたゴルフクラブを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブヘッド10は、クラウン側開口1aを有するクラウン部1と、クラウン部1と対向し、かつソール側開口1aを有するソール部2と、クラウン側開口1aとソール側開口2aとを連通する内部空間ISを規定する壁部3とを備えている。クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、クラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の40%以上90%以下である。
【解決手段】ゴルフクラブヘッド10は、クラウン側開口1aを有するクラウン部1と、クラウン部1と対向し、かつソール側開口1aを有するソール部2と、クラウン側開口1aとソール側開口2aとを連通する内部空間ISを規定する壁部3とを備えている。クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、クラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の40%以上90%以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドおよびそれを備えたゴルフクラブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブでは、スイートスポットで打撃した場合に比べて、スイートスポットを外して打撃した場合にボールの飛距離が低下する。すなわち、スイートスポットを外して打撃した場合、スイートスポットから打点がずれることでゴルフクラブヘッドが重心まわりに回転する。この回転によってボールの飛距離が低下する。
【0003】
この飛距離の低下を抑制するために、ゴルフクラブヘッドの回転を抑制することが提案されている。そして、ゴルフクラブヘッドの回転を抑制するために、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを大きくすることが提案されている。
【0004】
たとえば、特開2005−278800号公報(特許文献1)には、ゴルフクラブヘッドのスイートスポットとフェース中心とを一致させつつ、クラウン・ソール方向の重心まわりの慣性モーメントを大きくすることが開示されている。また、特開2006−296500号公報(特許文献2)には、ゴルフクラブヘッドに繊維強化樹脂材料部材を用いることで質量の増大を抑えつつ中空部の体積を増大させて慣性モーメントを増大させることが開示されている。また、特開2007−7276号公報(特許文献3)には、ゴルフクラブヘッドにカーボン繊維強化材とチタン合金の繊維状物との積層体を用いることで軽量化と慣性モーメントの増大とを実現させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−278800号公報
【特許文献2】特開2006−296500号公報
【特許文献3】特開2007−7276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年においては、ヘッド体積の上限がルールで定められており、ヘッド体積を増大させることで慣性モーメントを増大させることは難しくなってきている。特に、上記の各公報に記載された各ゴルフクラブヘッドは、あくまで従来のゴルフクラブヘッドの延長線上にある形状を有しているため、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを大きく向上することは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、慣性モーメントを大きく向上することができるゴルフクラブヘッドおよびそれを備えたゴルフクラブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴルフクラブヘッドは、クラウン側開口を有するクラウン部と、クラウン部と対向し、かつソール側開口を有するソール部と、クラウン側開口とソール側開口とを連通する内部空間を規定する壁部とを備えている。クラウン部側から見た内部空間の投影面積は、設定されているロフト角およびライ角をなすようにゴルフクラブヘッドを水平面に設置した状態(以下、設置状態という。)において、クラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積の40%以上90%以下である。
【0009】
本発明のゴルフクラブヘッドによれば、クラウン側開口とソール側開口とを連通する内部空間によって、ゴルフクラブヘッドを大幅に軽量化することができる。この軽量化によって生じた余剰質量をヘッド本体のより外側に近い部分に配分することで、ゴルフクラブヘッドの重心から離れた部分に質量を重点的に配分することができる。これにより、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを大きく向上することができる。また、余剰質量を任意の位置に配置することができ、設計の自由度を上げることができる。以上より、所望の性能を有するゴルフクラブヘッドを得ることが可能となる。
【0010】
ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを大きく向上することで、スイートスポットを外して打撃した場合にゴルフクラブヘッドが重心まわりに回転することを抑制することができる。これにより、スイートスポットを外して打撃した場合にボールの飛距離低下の程度を軽減することができる。
【0011】
また、クラウン側開口とソール側開口とを連通する内部空間を規定する壁部によってクラウン側開口とソール側開口とが支持されているため、ゴルフクラブヘッドの剛性を維持することができる。したがって、ゴルフクラブヘッドの剛性を維持しつつ慣性モーメントを大きく向上することができる。
【0012】
そして、クラウン部側から見た内部空間の投影面積をクラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積の40%以上とすることで大きな余剰質量を生じさせることができる。また、クラウン部側から見た内部空間の投影面積をクラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積の90%以下とすることで強度を確保することができる。
【0013】
上記のゴルフクラブヘッドでは、好ましくは、内部空間は仕切り部材で複数の空間部に仕切られている。これにより、仕切り部材が内部空間に支持されているため、ゴルフクラブヘッドの剛性をさらに向上することができる。
【0014】
上記のゴルフクラブヘッドでは、好ましくは、蓋体をさらに備え、蓋体がクラウン側開口を覆うように取り付けられている。蓋体がクラウン側開口を覆うことで、クラウン部を補強することができると同時に、外観の違和感をなくすことができる。
【0015】
上記のゴルフクラブヘッドでは、好ましくは、クラウン部はクラウン側開口の外周端部に設けられた受け部と、受け部を架橋するように設けられた接合部とを含む。受け部および接合部を蓋体と接着することができるため、蓋体の接着面積を増やすことができる。このため、蓋体の接着強度を増すことができる。
【0016】
本発明のゴルフクラブは、シャフトと、シャフトの一方端に取り付けられたグリップと、シャフトのグリップと反対側の他方端に取り付けられた上記のゴルフクラブヘッドとを備えている。これにより、大きな慣性モーメントを有したゴルフクラブを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明のゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブによれば、慣性モーメントを大きく向上することができるゴルフクラブヘッドおよびそれを備えたゴルフクラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの概略上面図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドのヒール側から見た概略側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの概略斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う概略断面図である。
【図5】図1のV−V線に沿う概略断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドおよび内部空間の投影面積を示す概略上面図である。
【図7】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの投影面積を示す概略上面図である。
【図8】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの外側部材の概略斜視図である。
【図9】図8のIX−IXに沿う概略断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの内側部材の概略斜視図である。
【図11】図10のXI−XIに沿う概略断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの変形例1の概略斜視図である。
【図13】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの変形例2の概略斜視図である。
【図14】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの変形例3の概略斜視図である。
【図15】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの変形例4の概略斜視図である。
【図16】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブの概略背面図である。
【図17】本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドの概略斜視図である。
【図18】本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドの概略上面図である。
【図19】本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドの一の例の概略斜視図である。
【図20】本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドの他の例の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に本発明の一実施の形態のゴルフクラブヘッドの構成について説明する。
【0020】
図1から図3を参照して、ゴルフクラブヘッド10は、ウッド型ゴルフクラブヘッドである。ゴルフクラブヘッド10は、クラウン部1と、ソール部2と、壁部3と、ホーゼル部4と、フェース部5と、リーディングエッジ部6と、トウ部7と、ヒール部8と、トップエッジ部9とを主に有している。
【0021】
クラウン部1はゴルフクラブヘッド10の上部を構成する部分である。クラウン部1はソール部2の上面を覆うように配置されている。クラウン部1はクラウン側開口1aを有している。クラウン側開口1aはたとえばクラウン部1側から見て略円形に形成されている。
【0022】
ソール部2はゴルフクラブヘッド10の底部を構成する部分である。ソール部2はソール側開口2aを有している。ソール側開口2aはたとえばソール部2側から見て略円形に形成されている。ソール側開口2aの形状はクラウン部1側に向かって湾曲するアーチ形状を有していてもよい。これにより、打撃の際にソール部2と地面との接触面積を少なくすることができるため、ソール部2と地面との接触による摩擦を低減することができる。このため、ソール部2と地面との接触によって生じるヘッドスピードの低減を抑制することができる。
【0023】
壁部3は、クラウン側開口1aとソール側開口2aとを連通する内部空間ISを規定するように構成されている。内部空間ISは壁部3で囲まれた空間である。内部空間ISにはゴルフクラブヘッド10の構成部材は配置されていない。ゴルフクラブヘッド10の重心は内部空間ISに位置している。壁部3は、クラウン側開口1aの外周端とソール側開口2aの外周端とをつなぐように形成されている。クラウン側開口1aおよびソール側開口2aの全周をつなぐことで壁部3での応力集中を抑制することができる。
【0024】
ホーゼル部4はシャフト(図16)に接続される部分である。フェース部5は打球面を有している。打球面には、図示しない複数のスコアライン(溝)部が形成されていてもよい。リーディングエッジ部6はソール部2とフェース部5とが接する部分である。トウ部7はホーゼル部4から離れた側のトップエッジ部9とソール部2とを接続する部分である。ヒール部8はホーゼル部4の下端からソール部2に至る部分である。トップエッジ部9はホーゼル部4からトウ部7に至るゴルフクラブヘッド10の上端縁部を構成する部分である。
【0025】
図4および図5を参照して、壁部3は、クラウン側開口1aからソール側開口2aまで連続するように形成されている。内部空間ISはクラウン部1側からソール部2側まで略同じ直径を有している。つまり、クラウン側開口1aの直径とソール側開口2aの直径とは略同じ寸法を有している。
【0026】
なお、クラウン側開口1aの直径とソール側開口2aの直径とは略同じ寸法を有していなくてもよい。すなわち、クラウン側開口1aの直径がソール側開口2aの直径より大きくてもよい。この場合、内部空間ISはクラウン側開口1aからソール側開口2aに向かって径が小さくなるテーパ状に形成されている。またソール側開口2aの直径がクラウン側開口1aの直径より大きくてもよい。この場合、内部空間ISはクラウン側開口1aからソール側開口2aに向かって径が大きくなるテーパ状に形成されている。
【0027】
ゴルフクラブヘッド10は、壁部3とフェース部5との間に中空領域を有している。同様に壁部3とトウ部7との間および壁部3とヒール部8との間にも中空領域が形成されている。一方、壁部3とゴルフクラブヘッド10の後端との間にも中空領域が形成されているが、当該領域にはウェイト部11が形成されている。ウェイト部11によってゴルフクラブヘッド10の質量配分を調整することができる。ウェイト部11によってゴルフクラブヘッド10の重心から離れた位置にウェイト部11を位置させることで慣性モーメントを大きくすることができる。
【0028】
図6および図7を参照して、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1およびクラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2について説明する。クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、設置状態でクラウン部1側からソール部2側に見た状態で、クラウン部1側の開口1aを水平面上に投影して得られるクラウン側開口1aの面積と、ソール部2側の開口2aを水平面上に投影して得られるソール側開口2aの面積のうち、いずれか小さいほうの面積である。また、クラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2は、クラウン部1側からソール部2側に見た状態でクラウン部1を水平面上に描いた面積である。
【0029】
図6は、設置状態でゴルフクラブヘッド10をクラウン部1側から見た図であり、クラウン側開口1aとソール側開口2aの面積とが略等しく、かつクラウン側開口1aとソール側開口2aとが水平面上で互いに重なり合う位置関係にある場合を示している。図6においては、クラウン側開口1aとソール側開口2aの面積は略同一であるので、内部空間ISの投影面積PA1は、クラウン側開口1aの面積、もしくはソール部2側開口2aの面積のいずれかに相当する。図6に示すようにクラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、クラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の40%以上90%以下であることが好ましい。なお、図7に説明の便宜のため、ゴルフクラブヘッド10のクラウン部1側から見た投影面積PA2を示す。
【0030】
クラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2は、たとえば12715.6mm2とされ得る。図6に示すように、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、たとえば8459.7mm2とされ得る。この場合、内部空間ISの投影面積PA1はゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の約67%となる。
【0031】
また、内部空間ISが設けられていないゴルフクラブヘッド10の質量と略同等の質量を有する内部空間ISが設けられたゴルフクラブヘッド10では、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、たとえば5222.7mm2となる。この場合、内部空間ISの投影面積PA1はゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の約41%となる。内部空間ISの投影面積PA1のゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2に対する割合はゴルフクラブヘッド10本体形状にも影響されるため、その割合が概ね40%以上で軽量化の効果が奏される。
【0032】
また、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1がクラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の90%を超えるとヘッド本体の耐久性を確保することが難しい。さらにゴルフクラブヘッド10の製造が困難である。
【0033】
なお、クラウン側開口1aの面積と、ソール部側開口2aの面積とが異なる場合は、面積が小さいほうの開口部の投影面積PA1の、ゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2に対する割合を概ね40%以上とし、且つ面積が大きいほうの開口部の投影面積PA1の、ゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2に対する割合を概ね90%以下とすればよく、これにより、軽量化と強度確保の効果を得ることができる。
【0034】
次に、本実施の形態のゴルフクラブヘッドの製造方法について説明する。
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10は様々な方法で製造可能である。たとえば、ゴルフクラブヘッド10の上部部材(クラウン部1側部材)と下部部材(ソール部2側部材)とがそれぞれ鋳造される。上部部材と下部部材との割面において両部材が溶接される。上部部材は全て鋳造で作製されてもよく、またフェース部5が板溶接されてもよい。またウェイト部11は下部部材の作製後に溶接されてもよく、また下部部材と一体的に鋳造で作製されてもよい。
【0035】
また、ゴルフクラブヘッド10のフロント部が鍛造によるカップフェースで作製されてもよい。この場合、ホーゼル部4はフロント部に溶接される。
【0036】
また、クラウン部1、ホーゼル部4、フェース部5、ソール部2及びサイド部は鍛造で作製されてもよい。この場合、クラウン部1およびソール部2にはトリム型で開口が形成されてもよい。壁部3は円筒状の鋳造品が用いられてもよく、もしくは一般的な製法で得られたパイプを用いてもよい。
【0037】
また、図8〜図11を参照して、ゴルフクラブヘッド10は、鋳造で作製された外側部材10aと内側部材10bとが溶接されて作製されてもよい。図8および図9を参照して、外側部材10aは壁部3以外で構成されている。図10および図11を参照して、内側部材10bは壁部3で構成されている。外側部材10aと内側部材10bとがクラウン開口1aを構成する部分およびソール側開口2aを構成する部分で互いに溶接される。フェース部5は板もしくはカップ状のものを後から溶接してもよい。この製造方法によれば、ゴルフクラブヘッド10を容易に製造することができる。
【0038】
続いて、本実施の形態のゴルフクラブヘッドの変形例について説明する。
図12を参照して、本実施の形態のゴルフクラブヘッド10の変形例1は、仕切り部材12を備えている。内部空間ISは仕切り部材12で複数の空間部SPに仕切られている。仕切り部材12が内部空間ISの一方側から他方側に伸びるように設けられているため、ゴルフクラブヘッド10の剛性が向上する。
【0039】
変形例1では、仕切り部材12はフェース部5側から後方側に伸びるように設けられており、かつトウ部7側からヒール部8側に伸びるように設けられている。仕切り部材12がフェース部5側から後方側に伸びているため打撃の際の剛性を高めることができる。仕切り部材12は内部空間ISの中央で交差するように設けられている。その結果、仕切り部材12によって内部空間ISは4つの空間部SPに区切られている。
【0040】
図13を参照して、本実施の形態のゴルフクラブヘッド10の変形例2は、変形例1と比較して仕切り部材12の厚みが大きくなるように形成されている。仕切り部材12の内部も中空状に形成されている。また、クラウン部1と壁部3との接合部分は、内部空間ISの内側に向かってテーパ状に形成されている。
【0041】
図14を参照して、本実施の形態のゴルフクラブヘッド10の変形例3は、蓋体13を備えている。蓋体13はクラウン側開口1aを覆うように取り付けられている。蓋体13の外周部がクラウン側開口1aの外周端部に接着剤で接着されていてもよい。蓋体13は軽量であることが好ましい。
【0042】
図15を参照して、クラウン部1は、受け部14と接合部15とを含んでいる。受け部14はクラウン側開口1aの外周端部に設けられている。受け部14は、クラウン側開口1aの外周端部に沿って一定の幅を有していてよい。接合部15は受け部14を架橋するように設けられている。
【0043】
接合部15はフェース部5側から後方側に伸びるように設けられており、かつトウ部7側からヒール部8側に伸びるように設けられている。接合部15がフェース部5側から後方側に伸びているため打撃の際の剛性を高めることができる。仕切り部材12は平面視において内部空間ISの中央で交差するように設けられている。受け部14および接合部15に蓋体13が接着剤で接着される。このように蓋体13を設けることで、従来のゴルフクラブヘッドと同様の外観とすることができる。
【0044】
次に、本実施の形態のゴルフクラブの構成について説明する。
図16を参照して、ゴルフクラブヘッド10にシャフト21およびグリップ22を組み合わせることでゴルフクラブ20が構成される。ゴルフクラブ20は、シャフト21と、シャフト21の一方端に取り付けられたグリップ22と、シャフト21のグリップ22と反対側の他方端に取り付けられたゴルフクラブヘッド10とを有している。なお、シャフト21およびグリップ22は周知のものを採用可能である。また、ゴルフクラブヘッド10のホーゼル部4に隣接するようにシャフト21にソケット23が取り付けられている。
【0045】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10によれば、クラウン側開口1aとソール側開口2aとを連通する内部空間ISによって、ゴルフクラブヘッド10を大幅に軽量化することができる。この軽量化によって生じた余剰質量をヘッド本体のより外側に近い部分に配分することで、ゴルフクラブヘッド10の重心から離れた部分に質量を重点的に配分することができる。これにより、ゴルフクラブヘッド10の慣性モーメントを大きく向上することができる。また、余剰質量を任意の位置に配置することができ、設計の自由度を上げることができる。以上より、所望の性能を有するゴルフクラブヘッドを得ることが可能となる。
【0046】
ゴルフクラブヘッド10の慣性モーメントを大きく向上することで、スイートスポットを外して打撃した場合にゴルフクラブヘッド10が重心まわりに回転することを抑制することができる。これにより、スイートスポットを外して打撃した場合にボールの飛距離低下の程度を軽減することができる。
【0047】
また、クラウン側開口1aとソール側開口2aとを連通する内部空間ISを規定する壁部3によってクラウン側開口1aとソール側開口2aとが支持されているため、ゴルフクラブヘッド10の剛性を維持することができる。したがって、ゴルフクラブヘッド10の剛性を維持しつつ慣性モーメントを大きく向上することができる。
【0048】
そして、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1をクラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の40%以上とすることで大きな余剰質量を生じさせることができる。また、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1をクラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の90%以下とすることで強度を確保することができる。
【0049】
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10では、内部空間ISは仕切り部材12で複数の空間部SPに仕切られていることが好ましい。これにより、仕切り部材12が内部空間ISに支持されているため、ゴルフクラブヘッド10の剛性をさらに向上することができる。
【0050】
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10では、蓋体13をさらに備え、蓋体13がクラウン側開口1aを覆うように取り付けられていることが好ましい。蓋体13がクラウン側開口1aを覆うことで、クラウン部1を補強することができると同時に、外観の違和感をなくすことができる。また外観を損なうことはない。
【0051】
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10では、クラウン部1はクラウン側開口1aの外周端部に設けられた受け部14と、受け部14を架橋するように設けられた接合部15とを含んでいることが好ましい。受け部14および接合部15を蓋体13と接着することができるため、蓋体13の接着面積を増やすことができる。このため、蓋体の接着強度を増すことができる。また、蓋体13を接着しやすくすることができる。
【0052】
本実施の形態のゴルフクラブ20は、上記のゴルフクラブヘッド10を備えている。これにより、大きな慣性モーメントを有したゴルフクラブ20を得ることができる。
【0053】
本実施の形態のゴルフクラブヘッドの構成は上記の構成に限られない。ゴルフクラブヘッドは本発明の概念が反映された構成であればよい。続いて、本発明の概念について、本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドに基づいて説明する。
【0054】
図17および図18を参照して、本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッド10は、フロント部FPとフロント部FPの後方に取り付けられたリング部RPとを有している。フロント部FPとリング部RPとの上部がクラウン相当部分を構成している。クラウン相当部分がクラウン部1に該当する。クラウン側開口1aはクラウン部1の上端部に形成されている。つまり、クラウン側開口1aはリング部RPの上端部に位置している。
【0055】
フロント部FPの下部、フロント部FPの下部からリング部RPに繋がるバック部BPの一部およびリング部RPの下部がソール相当部分を構成している。ソール相当部分がソール部2に該当する。ソール側開口2aはソール部2の下端部に形成されている。つまり、ソール側開口2aはリング部RPの下端部に位置している。
【0056】
リング部RPの内周部とリング部RPに挟まれたバック部BPの部分が壁相当部分を構成している。壁相当部分が壁部3に該当する。壁部3で規定された空間が内部空間ISに該当する。リング部RPが円柱形状を有しているため、内部空間ISの面積は、クラウン側開口1aおよびソール側開口2aで大きくなり、リング部RPの内径側(クラウン側開口1aおよびソール側開口2aの中間位置)で小さくなる。クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、リング部RPの最も内径側での面積が該当する。
【0057】
ホーゼル部4はフロント部FPに設けられている。フェース部5はフロント部FPの前方に設けられている。フロント部FPにリーディングエッジ部6、トウ部7、ヒール部8およびトップエッジ部9が設けられている。
【0058】
本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッド10は様々な方法で製造可能である。たとえば、フロント部FPが鋳造されてもよい。また、たとえばフェース部5が板溶接されてもよい。曲げ加工されたリング部RPがバック部BPに溶接されてもよい。またリング部RPは予め湾曲した状態に鋳造されてもよい。ウェイト部11がリング部RPに設けられてもよい。
【0059】
また、図19を参照して、仕切り部材12が設けられていてもよい。この一の例では、仕切り部材12はバック部BPからリング部RPの後端に伸びるように設けられている。この結果、2つの空間部SPが設けられている。
【0060】
また、図20を参照して、仕切り部材12は、リング部RPとバック部BPとで規定される空間の中央で交差するように設けられていてもよい。この他の例では、仕切り部材12によって、4つの空間部SPが設けられている。
【0061】
また、上記と同様に蓋体が設けられてもよい。この場合、蓋体は、クラウン側開口1aを覆うように設けられていることが好ましい。
【0062】
このように、本発明の概念が反映されていれば、上記と同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例について説明する。
表1〜表3を参照して、本発明例1〜3は、本発明の実施例である。本発明例1〜3は上記の実施の形態と同様の構成を有しており、クラウン側開口1aの面積と、ソール部側開口2aの面積は略同一である。比較例1〜3は本発明に対する比較例である。比較例1〜3は、クラウン側開口およびソール側開口を有していない。そのため内部空間が形成されていない。
【0064】
表1〜表3に示すように、ゴルフクラブヘッドの全体の質量が180g、190g、200gのそれぞれの場合について、トウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向(上下方向)UDの慣性モーメントを算出した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
表1を参照して、ゴルフクラブヘッドの全体の質量が180gの場合、比較例1のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ4280g・cm2、2680g・cm2となった。一方、本発明例1のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ5050g・cm2、3310g・cm2となった。
【0069】
これより、本発明例1のトウヒール方向の慣性モーメントTHは、比較例1より大きくなった。また、本発明例1のクラウンソール方向の慣性モーメントUDは、比較例1より大きくなった。
【0070】
本発明例1のトウヒール方向の慣性モーメントTHは4500g・cm2以上となり、本発明例1のクラウンソール方向の慣性モーメントUDは3000g・cm2以上となった。
【0071】
表2を参照して、ゴルフクラブヘッドの全体の質量が190gの場合、比較例2のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ4780g・cm2、2720g・cm2となった。一方、本発明例2のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ5500g・cm2、3740g・cm2となった。
【0072】
これより、本発明例2のトウヒール方向の慣性モーメントTHは、比較例2より大きくなった。また、本発明例2のクラウンソール方向の慣性モーメントUDは、比較例2より大きくなった。
【0073】
表3を参照して、ゴルフクラブヘッドの全体の質量が200gの場合、比較例3のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ5160g・cm2、2810g・cm2となった。一方、本発明例3のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ5920g・cm2、4070g・cm2となった。
【0074】
これより、本発明例3のトウヒール方向の慣性モーメントTHは、比較例3より大きくなった。また、本発明例3のクラウンソール方向の慣性モーメントUDは、比較例3より大きくなった。
【0075】
次に、クラウン部側から見た内部空間の投影面積PA1のクラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積PA2に対する比率(投影比率)によるゴルフクラブヘッドの質量について検討した。
【0076】
表4に示すように、ゴルフクラブヘッドのヘッド質量と、内部空間の投影面積PA1の投影面積PA2に対する比率(投影比率)とを測定した。
【0077】
【表4】
【0078】
表4を参照して、本発明例4および5は、本発明の実施例である。本発明例4および5は上記の実施の形態と同様の構成を有している。比較例4〜6は本発明に対する比較例である。比較例4は、クラウン側開口およびソール、側開口を有していない。そのため内部空間が形成されていない。また、比較例5および6は内部空間を有しているが、投影比率が本発明例4および5と比較して小さい点で本発明例4および5と異なっている。
【0079】
内部空間が形成されていない比較例4のヘッド質量は180gである。内部空間が形成されている比較例5および6はヘッド質量はそれぞれ187gと181.8gである。比較例4と比較して比較例5および6のヘッド質量は重くなっている。これは、比較例5および6の壁部の質量が比較例4のクラウン部およびソール部の質量より重くなっているためである。
【0080】
内部空間が形成されていないため、比較例4ではクラウン部側から見た内部空間の投影面積PA1は0(ゼロ)である。比較例4の投影面積PA2は12715.6mm2である。比較例5および6では、投影面積PA1はそれぞれ3769.8mm2および4947.9mm2である。なお比較例5および6でも投影面積PA2は12715.6mm2である。比較例5および6では、投影面積PA1の投影面積PA2に対する比率(投影比率)はそれぞれ30%および39%である。
【0081】
本発明例4のヘッド質量は、比較例4のヘッド質量と同じく180gである。本発明例4では投影面積PA1は5222.7mm2である。なお本発明例4でも投影面積PA2は12715.6mm2である。本発明例4では投影比率は41%である。また、本発明例5のヘッド質量は比較例4のヘッド質量より軽い179gである。本発明例5では投影面積PA1は5387.7mm2である。本発明例5では投影比率は42%となる。
【0082】
以上より、本発明例4では、比較例4と同じヘッド質量とすることができることがわかった。また、本発明例5では、比較例4と比較して軽量化できることがわかった。これにより、投影比率が41%を超えると比較例4と比較して軽量化できることがわかった。投影比率は、ゴルフクラブヘッド本体の形状にも影響されるため、投影比率が概ね40%以上で軽量化できると考えられる。
【0083】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、ゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブに特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0085】
1 クラウン部、1a クラウン側開口、2 ソール部、2a ソール側開口、3 壁部、4 ホーゼル部、5 フェース部、6 リーディングエッジ部、7 トウ部、8 ヒール部、9 トップエッジ部、10 ゴルフクラブヘッド、11 ウェイト部、20 ゴルフクラブ、21 シャフト、22 グリップ、23 ソケット、IS 内部空間、PA1 内部空間の投影面積、PA2 ゴルフクラブヘッドの投影面積。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドおよびそれを備えたゴルフクラブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブでは、スイートスポットで打撃した場合に比べて、スイートスポットを外して打撃した場合にボールの飛距離が低下する。すなわち、スイートスポットを外して打撃した場合、スイートスポットから打点がずれることでゴルフクラブヘッドが重心まわりに回転する。この回転によってボールの飛距離が低下する。
【0003】
この飛距離の低下を抑制するために、ゴルフクラブヘッドの回転を抑制することが提案されている。そして、ゴルフクラブヘッドの回転を抑制するために、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを大きくすることが提案されている。
【0004】
たとえば、特開2005−278800号公報(特許文献1)には、ゴルフクラブヘッドのスイートスポットとフェース中心とを一致させつつ、クラウン・ソール方向の重心まわりの慣性モーメントを大きくすることが開示されている。また、特開2006−296500号公報(特許文献2)には、ゴルフクラブヘッドに繊維強化樹脂材料部材を用いることで質量の増大を抑えつつ中空部の体積を増大させて慣性モーメントを増大させることが開示されている。また、特開2007−7276号公報(特許文献3)には、ゴルフクラブヘッドにカーボン繊維強化材とチタン合金の繊維状物との積層体を用いることで軽量化と慣性モーメントの増大とを実現させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−278800号公報
【特許文献2】特開2006−296500号公報
【特許文献3】特開2007−7276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年においては、ヘッド体積の上限がルールで定められており、ヘッド体積を増大させることで慣性モーメントを増大させることは難しくなってきている。特に、上記の各公報に記載された各ゴルフクラブヘッドは、あくまで従来のゴルフクラブヘッドの延長線上にある形状を有しているため、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを大きく向上することは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、慣性モーメントを大きく向上することができるゴルフクラブヘッドおよびそれを備えたゴルフクラブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴルフクラブヘッドは、クラウン側開口を有するクラウン部と、クラウン部と対向し、かつソール側開口を有するソール部と、クラウン側開口とソール側開口とを連通する内部空間を規定する壁部とを備えている。クラウン部側から見た内部空間の投影面積は、設定されているロフト角およびライ角をなすようにゴルフクラブヘッドを水平面に設置した状態(以下、設置状態という。)において、クラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積の40%以上90%以下である。
【0009】
本発明のゴルフクラブヘッドによれば、クラウン側開口とソール側開口とを連通する内部空間によって、ゴルフクラブヘッドを大幅に軽量化することができる。この軽量化によって生じた余剰質量をヘッド本体のより外側に近い部分に配分することで、ゴルフクラブヘッドの重心から離れた部分に質量を重点的に配分することができる。これにより、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを大きく向上することができる。また、余剰質量を任意の位置に配置することができ、設計の自由度を上げることができる。以上より、所望の性能を有するゴルフクラブヘッドを得ることが可能となる。
【0010】
ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを大きく向上することで、スイートスポットを外して打撃した場合にゴルフクラブヘッドが重心まわりに回転することを抑制することができる。これにより、スイートスポットを外して打撃した場合にボールの飛距離低下の程度を軽減することができる。
【0011】
また、クラウン側開口とソール側開口とを連通する内部空間を規定する壁部によってクラウン側開口とソール側開口とが支持されているため、ゴルフクラブヘッドの剛性を維持することができる。したがって、ゴルフクラブヘッドの剛性を維持しつつ慣性モーメントを大きく向上することができる。
【0012】
そして、クラウン部側から見た内部空間の投影面積をクラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積の40%以上とすることで大きな余剰質量を生じさせることができる。また、クラウン部側から見た内部空間の投影面積をクラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積の90%以下とすることで強度を確保することができる。
【0013】
上記のゴルフクラブヘッドでは、好ましくは、内部空間は仕切り部材で複数の空間部に仕切られている。これにより、仕切り部材が内部空間に支持されているため、ゴルフクラブヘッドの剛性をさらに向上することができる。
【0014】
上記のゴルフクラブヘッドでは、好ましくは、蓋体をさらに備え、蓋体がクラウン側開口を覆うように取り付けられている。蓋体がクラウン側開口を覆うことで、クラウン部を補強することができると同時に、外観の違和感をなくすことができる。
【0015】
上記のゴルフクラブヘッドでは、好ましくは、クラウン部はクラウン側開口の外周端部に設けられた受け部と、受け部を架橋するように設けられた接合部とを含む。受け部および接合部を蓋体と接着することができるため、蓋体の接着面積を増やすことができる。このため、蓋体の接着強度を増すことができる。
【0016】
本発明のゴルフクラブは、シャフトと、シャフトの一方端に取り付けられたグリップと、シャフトのグリップと反対側の他方端に取り付けられた上記のゴルフクラブヘッドとを備えている。これにより、大きな慣性モーメントを有したゴルフクラブを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明のゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブによれば、慣性モーメントを大きく向上することができるゴルフクラブヘッドおよびそれを備えたゴルフクラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの概略上面図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドのヒール側から見た概略側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの概略斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う概略断面図である。
【図5】図1のV−V線に沿う概略断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドおよび内部空間の投影面積を示す概略上面図である。
【図7】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの投影面積を示す概略上面図である。
【図8】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの外側部材の概略斜視図である。
【図9】図8のIX−IXに沿う概略断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの内側部材の概略斜視図である。
【図11】図10のXI−XIに沿う概略断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの変形例1の概略斜視図である。
【図13】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの変形例2の概略斜視図である。
【図14】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの変形例3の概略斜視図である。
【図15】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブヘッドの変形例4の概略斜視図である。
【図16】本発明の一実施の形態におけるゴルフクラブの概略背面図である。
【図17】本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドの概略斜視図である。
【図18】本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドの概略上面図である。
【図19】本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドの一の例の概略斜視図である。
【図20】本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドの他の例の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に本発明の一実施の形態のゴルフクラブヘッドの構成について説明する。
【0020】
図1から図3を参照して、ゴルフクラブヘッド10は、ウッド型ゴルフクラブヘッドである。ゴルフクラブヘッド10は、クラウン部1と、ソール部2と、壁部3と、ホーゼル部4と、フェース部5と、リーディングエッジ部6と、トウ部7と、ヒール部8と、トップエッジ部9とを主に有している。
【0021】
クラウン部1はゴルフクラブヘッド10の上部を構成する部分である。クラウン部1はソール部2の上面を覆うように配置されている。クラウン部1はクラウン側開口1aを有している。クラウン側開口1aはたとえばクラウン部1側から見て略円形に形成されている。
【0022】
ソール部2はゴルフクラブヘッド10の底部を構成する部分である。ソール部2はソール側開口2aを有している。ソール側開口2aはたとえばソール部2側から見て略円形に形成されている。ソール側開口2aの形状はクラウン部1側に向かって湾曲するアーチ形状を有していてもよい。これにより、打撃の際にソール部2と地面との接触面積を少なくすることができるため、ソール部2と地面との接触による摩擦を低減することができる。このため、ソール部2と地面との接触によって生じるヘッドスピードの低減を抑制することができる。
【0023】
壁部3は、クラウン側開口1aとソール側開口2aとを連通する内部空間ISを規定するように構成されている。内部空間ISは壁部3で囲まれた空間である。内部空間ISにはゴルフクラブヘッド10の構成部材は配置されていない。ゴルフクラブヘッド10の重心は内部空間ISに位置している。壁部3は、クラウン側開口1aの外周端とソール側開口2aの外周端とをつなぐように形成されている。クラウン側開口1aおよびソール側開口2aの全周をつなぐことで壁部3での応力集中を抑制することができる。
【0024】
ホーゼル部4はシャフト(図16)に接続される部分である。フェース部5は打球面を有している。打球面には、図示しない複数のスコアライン(溝)部が形成されていてもよい。リーディングエッジ部6はソール部2とフェース部5とが接する部分である。トウ部7はホーゼル部4から離れた側のトップエッジ部9とソール部2とを接続する部分である。ヒール部8はホーゼル部4の下端からソール部2に至る部分である。トップエッジ部9はホーゼル部4からトウ部7に至るゴルフクラブヘッド10の上端縁部を構成する部分である。
【0025】
図4および図5を参照して、壁部3は、クラウン側開口1aからソール側開口2aまで連続するように形成されている。内部空間ISはクラウン部1側からソール部2側まで略同じ直径を有している。つまり、クラウン側開口1aの直径とソール側開口2aの直径とは略同じ寸法を有している。
【0026】
なお、クラウン側開口1aの直径とソール側開口2aの直径とは略同じ寸法を有していなくてもよい。すなわち、クラウン側開口1aの直径がソール側開口2aの直径より大きくてもよい。この場合、内部空間ISはクラウン側開口1aからソール側開口2aに向かって径が小さくなるテーパ状に形成されている。またソール側開口2aの直径がクラウン側開口1aの直径より大きくてもよい。この場合、内部空間ISはクラウン側開口1aからソール側開口2aに向かって径が大きくなるテーパ状に形成されている。
【0027】
ゴルフクラブヘッド10は、壁部3とフェース部5との間に中空領域を有している。同様に壁部3とトウ部7との間および壁部3とヒール部8との間にも中空領域が形成されている。一方、壁部3とゴルフクラブヘッド10の後端との間にも中空領域が形成されているが、当該領域にはウェイト部11が形成されている。ウェイト部11によってゴルフクラブヘッド10の質量配分を調整することができる。ウェイト部11によってゴルフクラブヘッド10の重心から離れた位置にウェイト部11を位置させることで慣性モーメントを大きくすることができる。
【0028】
図6および図7を参照して、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1およびクラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2について説明する。クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、設置状態でクラウン部1側からソール部2側に見た状態で、クラウン部1側の開口1aを水平面上に投影して得られるクラウン側開口1aの面積と、ソール部2側の開口2aを水平面上に投影して得られるソール側開口2aの面積のうち、いずれか小さいほうの面積である。また、クラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2は、クラウン部1側からソール部2側に見た状態でクラウン部1を水平面上に描いた面積である。
【0029】
図6は、設置状態でゴルフクラブヘッド10をクラウン部1側から見た図であり、クラウン側開口1aとソール側開口2aの面積とが略等しく、かつクラウン側開口1aとソール側開口2aとが水平面上で互いに重なり合う位置関係にある場合を示している。図6においては、クラウン側開口1aとソール側開口2aの面積は略同一であるので、内部空間ISの投影面積PA1は、クラウン側開口1aの面積、もしくはソール部2側開口2aの面積のいずれかに相当する。図6に示すようにクラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、クラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の40%以上90%以下であることが好ましい。なお、図7に説明の便宜のため、ゴルフクラブヘッド10のクラウン部1側から見た投影面積PA2を示す。
【0030】
クラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2は、たとえば12715.6mm2とされ得る。図6に示すように、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、たとえば8459.7mm2とされ得る。この場合、内部空間ISの投影面積PA1はゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の約67%となる。
【0031】
また、内部空間ISが設けられていないゴルフクラブヘッド10の質量と略同等の質量を有する内部空間ISが設けられたゴルフクラブヘッド10では、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、たとえば5222.7mm2となる。この場合、内部空間ISの投影面積PA1はゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の約41%となる。内部空間ISの投影面積PA1のゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2に対する割合はゴルフクラブヘッド10本体形状にも影響されるため、その割合が概ね40%以上で軽量化の効果が奏される。
【0032】
また、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1がクラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の90%を超えるとヘッド本体の耐久性を確保することが難しい。さらにゴルフクラブヘッド10の製造が困難である。
【0033】
なお、クラウン側開口1aの面積と、ソール部側開口2aの面積とが異なる場合は、面積が小さいほうの開口部の投影面積PA1の、ゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2に対する割合を概ね40%以上とし、且つ面積が大きいほうの開口部の投影面積PA1の、ゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2に対する割合を概ね90%以下とすればよく、これにより、軽量化と強度確保の効果を得ることができる。
【0034】
次に、本実施の形態のゴルフクラブヘッドの製造方法について説明する。
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10は様々な方法で製造可能である。たとえば、ゴルフクラブヘッド10の上部部材(クラウン部1側部材)と下部部材(ソール部2側部材)とがそれぞれ鋳造される。上部部材と下部部材との割面において両部材が溶接される。上部部材は全て鋳造で作製されてもよく、またフェース部5が板溶接されてもよい。またウェイト部11は下部部材の作製後に溶接されてもよく、また下部部材と一体的に鋳造で作製されてもよい。
【0035】
また、ゴルフクラブヘッド10のフロント部が鍛造によるカップフェースで作製されてもよい。この場合、ホーゼル部4はフロント部に溶接される。
【0036】
また、クラウン部1、ホーゼル部4、フェース部5、ソール部2及びサイド部は鍛造で作製されてもよい。この場合、クラウン部1およびソール部2にはトリム型で開口が形成されてもよい。壁部3は円筒状の鋳造品が用いられてもよく、もしくは一般的な製法で得られたパイプを用いてもよい。
【0037】
また、図8〜図11を参照して、ゴルフクラブヘッド10は、鋳造で作製された外側部材10aと内側部材10bとが溶接されて作製されてもよい。図8および図9を参照して、外側部材10aは壁部3以外で構成されている。図10および図11を参照して、内側部材10bは壁部3で構成されている。外側部材10aと内側部材10bとがクラウン開口1aを構成する部分およびソール側開口2aを構成する部分で互いに溶接される。フェース部5は板もしくはカップ状のものを後から溶接してもよい。この製造方法によれば、ゴルフクラブヘッド10を容易に製造することができる。
【0038】
続いて、本実施の形態のゴルフクラブヘッドの変形例について説明する。
図12を参照して、本実施の形態のゴルフクラブヘッド10の変形例1は、仕切り部材12を備えている。内部空間ISは仕切り部材12で複数の空間部SPに仕切られている。仕切り部材12が内部空間ISの一方側から他方側に伸びるように設けられているため、ゴルフクラブヘッド10の剛性が向上する。
【0039】
変形例1では、仕切り部材12はフェース部5側から後方側に伸びるように設けられており、かつトウ部7側からヒール部8側に伸びるように設けられている。仕切り部材12がフェース部5側から後方側に伸びているため打撃の際の剛性を高めることができる。仕切り部材12は内部空間ISの中央で交差するように設けられている。その結果、仕切り部材12によって内部空間ISは4つの空間部SPに区切られている。
【0040】
図13を参照して、本実施の形態のゴルフクラブヘッド10の変形例2は、変形例1と比較して仕切り部材12の厚みが大きくなるように形成されている。仕切り部材12の内部も中空状に形成されている。また、クラウン部1と壁部3との接合部分は、内部空間ISの内側に向かってテーパ状に形成されている。
【0041】
図14を参照して、本実施の形態のゴルフクラブヘッド10の変形例3は、蓋体13を備えている。蓋体13はクラウン側開口1aを覆うように取り付けられている。蓋体13の外周部がクラウン側開口1aの外周端部に接着剤で接着されていてもよい。蓋体13は軽量であることが好ましい。
【0042】
図15を参照して、クラウン部1は、受け部14と接合部15とを含んでいる。受け部14はクラウン側開口1aの外周端部に設けられている。受け部14は、クラウン側開口1aの外周端部に沿って一定の幅を有していてよい。接合部15は受け部14を架橋するように設けられている。
【0043】
接合部15はフェース部5側から後方側に伸びるように設けられており、かつトウ部7側からヒール部8側に伸びるように設けられている。接合部15がフェース部5側から後方側に伸びているため打撃の際の剛性を高めることができる。仕切り部材12は平面視において内部空間ISの中央で交差するように設けられている。受け部14および接合部15に蓋体13が接着剤で接着される。このように蓋体13を設けることで、従来のゴルフクラブヘッドと同様の外観とすることができる。
【0044】
次に、本実施の形態のゴルフクラブの構成について説明する。
図16を参照して、ゴルフクラブヘッド10にシャフト21およびグリップ22を組み合わせることでゴルフクラブ20が構成される。ゴルフクラブ20は、シャフト21と、シャフト21の一方端に取り付けられたグリップ22と、シャフト21のグリップ22と反対側の他方端に取り付けられたゴルフクラブヘッド10とを有している。なお、シャフト21およびグリップ22は周知のものを採用可能である。また、ゴルフクラブヘッド10のホーゼル部4に隣接するようにシャフト21にソケット23が取り付けられている。
【0045】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10によれば、クラウン側開口1aとソール側開口2aとを連通する内部空間ISによって、ゴルフクラブヘッド10を大幅に軽量化することができる。この軽量化によって生じた余剰質量をヘッド本体のより外側に近い部分に配分することで、ゴルフクラブヘッド10の重心から離れた部分に質量を重点的に配分することができる。これにより、ゴルフクラブヘッド10の慣性モーメントを大きく向上することができる。また、余剰質量を任意の位置に配置することができ、設計の自由度を上げることができる。以上より、所望の性能を有するゴルフクラブヘッドを得ることが可能となる。
【0046】
ゴルフクラブヘッド10の慣性モーメントを大きく向上することで、スイートスポットを外して打撃した場合にゴルフクラブヘッド10が重心まわりに回転することを抑制することができる。これにより、スイートスポットを外して打撃した場合にボールの飛距離低下の程度を軽減することができる。
【0047】
また、クラウン側開口1aとソール側開口2aとを連通する内部空間ISを規定する壁部3によってクラウン側開口1aとソール側開口2aとが支持されているため、ゴルフクラブヘッド10の剛性を維持することができる。したがって、ゴルフクラブヘッド10の剛性を維持しつつ慣性モーメントを大きく向上することができる。
【0048】
そして、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1をクラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の40%以上とすることで大きな余剰質量を生じさせることができる。また、クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1をクラウン部1側から見たゴルフクラブヘッド10の投影面積PA2の90%以下とすることで強度を確保することができる。
【0049】
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10では、内部空間ISは仕切り部材12で複数の空間部SPに仕切られていることが好ましい。これにより、仕切り部材12が内部空間ISに支持されているため、ゴルフクラブヘッド10の剛性をさらに向上することができる。
【0050】
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10では、蓋体13をさらに備え、蓋体13がクラウン側開口1aを覆うように取り付けられていることが好ましい。蓋体13がクラウン側開口1aを覆うことで、クラウン部1を補強することができると同時に、外観の違和感をなくすことができる。また外観を損なうことはない。
【0051】
本実施の形態のゴルフクラブヘッド10では、クラウン部1はクラウン側開口1aの外周端部に設けられた受け部14と、受け部14を架橋するように設けられた接合部15とを含んでいることが好ましい。受け部14および接合部15を蓋体13と接着することができるため、蓋体13の接着面積を増やすことができる。このため、蓋体の接着強度を増すことができる。また、蓋体13を接着しやすくすることができる。
【0052】
本実施の形態のゴルフクラブ20は、上記のゴルフクラブヘッド10を備えている。これにより、大きな慣性モーメントを有したゴルフクラブ20を得ることができる。
【0053】
本実施の形態のゴルフクラブヘッドの構成は上記の構成に限られない。ゴルフクラブヘッドは本発明の概念が反映された構成であればよい。続いて、本発明の概念について、本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッドに基づいて説明する。
【0054】
図17および図18を参照して、本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッド10は、フロント部FPとフロント部FPの後方に取り付けられたリング部RPとを有している。フロント部FPとリング部RPとの上部がクラウン相当部分を構成している。クラウン相当部分がクラウン部1に該当する。クラウン側開口1aはクラウン部1の上端部に形成されている。つまり、クラウン側開口1aはリング部RPの上端部に位置している。
【0055】
フロント部FPの下部、フロント部FPの下部からリング部RPに繋がるバック部BPの一部およびリング部RPの下部がソール相当部分を構成している。ソール相当部分がソール部2に該当する。ソール側開口2aはソール部2の下端部に形成されている。つまり、ソール側開口2aはリング部RPの下端部に位置している。
【0056】
リング部RPの内周部とリング部RPに挟まれたバック部BPの部分が壁相当部分を構成している。壁相当部分が壁部3に該当する。壁部3で規定された空間が内部空間ISに該当する。リング部RPが円柱形状を有しているため、内部空間ISの面積は、クラウン側開口1aおよびソール側開口2aで大きくなり、リング部RPの内径側(クラウン側開口1aおよびソール側開口2aの中間位置)で小さくなる。クラウン部1側から見た内部空間ISの投影面積PA1は、リング部RPの最も内径側での面積が該当する。
【0057】
ホーゼル部4はフロント部FPに設けられている。フェース部5はフロント部FPの前方に設けられている。フロント部FPにリーディングエッジ部6、トウ部7、ヒール部8およびトップエッジ部9が設けられている。
【0058】
本発明の概念が反映されたゴルフクラブヘッド10は様々な方法で製造可能である。たとえば、フロント部FPが鋳造されてもよい。また、たとえばフェース部5が板溶接されてもよい。曲げ加工されたリング部RPがバック部BPに溶接されてもよい。またリング部RPは予め湾曲した状態に鋳造されてもよい。ウェイト部11がリング部RPに設けられてもよい。
【0059】
また、図19を参照して、仕切り部材12が設けられていてもよい。この一の例では、仕切り部材12はバック部BPからリング部RPの後端に伸びるように設けられている。この結果、2つの空間部SPが設けられている。
【0060】
また、図20を参照して、仕切り部材12は、リング部RPとバック部BPとで規定される空間の中央で交差するように設けられていてもよい。この他の例では、仕切り部材12によって、4つの空間部SPが設けられている。
【0061】
また、上記と同様に蓋体が設けられてもよい。この場合、蓋体は、クラウン側開口1aを覆うように設けられていることが好ましい。
【0062】
このように、本発明の概念が反映されていれば、上記と同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例について説明する。
表1〜表3を参照して、本発明例1〜3は、本発明の実施例である。本発明例1〜3は上記の実施の形態と同様の構成を有しており、クラウン側開口1aの面積と、ソール部側開口2aの面積は略同一である。比較例1〜3は本発明に対する比較例である。比較例1〜3は、クラウン側開口およびソール側開口を有していない。そのため内部空間が形成されていない。
【0064】
表1〜表3に示すように、ゴルフクラブヘッドの全体の質量が180g、190g、200gのそれぞれの場合について、トウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向(上下方向)UDの慣性モーメントを算出した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
表1を参照して、ゴルフクラブヘッドの全体の質量が180gの場合、比較例1のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ4280g・cm2、2680g・cm2となった。一方、本発明例1のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ5050g・cm2、3310g・cm2となった。
【0069】
これより、本発明例1のトウヒール方向の慣性モーメントTHは、比較例1より大きくなった。また、本発明例1のクラウンソール方向の慣性モーメントUDは、比較例1より大きくなった。
【0070】
本発明例1のトウヒール方向の慣性モーメントTHは4500g・cm2以上となり、本発明例1のクラウンソール方向の慣性モーメントUDは3000g・cm2以上となった。
【0071】
表2を参照して、ゴルフクラブヘッドの全体の質量が190gの場合、比較例2のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ4780g・cm2、2720g・cm2となった。一方、本発明例2のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ5500g・cm2、3740g・cm2となった。
【0072】
これより、本発明例2のトウヒール方向の慣性モーメントTHは、比較例2より大きくなった。また、本発明例2のクラウンソール方向の慣性モーメントUDは、比較例2より大きくなった。
【0073】
表3を参照して、ゴルフクラブヘッドの全体の質量が200gの場合、比較例3のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ5160g・cm2、2810g・cm2となった。一方、本発明例3のトウヒール方向の慣性モーメントTHおよびクラウンソール方向の慣性モーメントUDはそれぞれ5920g・cm2、4070g・cm2となった。
【0074】
これより、本発明例3のトウヒール方向の慣性モーメントTHは、比較例3より大きくなった。また、本発明例3のクラウンソール方向の慣性モーメントUDは、比較例3より大きくなった。
【0075】
次に、クラウン部側から見た内部空間の投影面積PA1のクラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積PA2に対する比率(投影比率)によるゴルフクラブヘッドの質量について検討した。
【0076】
表4に示すように、ゴルフクラブヘッドのヘッド質量と、内部空間の投影面積PA1の投影面積PA2に対する比率(投影比率)とを測定した。
【0077】
【表4】
【0078】
表4を参照して、本発明例4および5は、本発明の実施例である。本発明例4および5は上記の実施の形態と同様の構成を有している。比較例4〜6は本発明に対する比較例である。比較例4は、クラウン側開口およびソール、側開口を有していない。そのため内部空間が形成されていない。また、比較例5および6は内部空間を有しているが、投影比率が本発明例4および5と比較して小さい点で本発明例4および5と異なっている。
【0079】
内部空間が形成されていない比較例4のヘッド質量は180gである。内部空間が形成されている比較例5および6はヘッド質量はそれぞれ187gと181.8gである。比較例4と比較して比較例5および6のヘッド質量は重くなっている。これは、比較例5および6の壁部の質量が比較例4のクラウン部およびソール部の質量より重くなっているためである。
【0080】
内部空間が形成されていないため、比較例4ではクラウン部側から見た内部空間の投影面積PA1は0(ゼロ)である。比較例4の投影面積PA2は12715.6mm2である。比較例5および6では、投影面積PA1はそれぞれ3769.8mm2および4947.9mm2である。なお比較例5および6でも投影面積PA2は12715.6mm2である。比較例5および6では、投影面積PA1の投影面積PA2に対する比率(投影比率)はそれぞれ30%および39%である。
【0081】
本発明例4のヘッド質量は、比較例4のヘッド質量と同じく180gである。本発明例4では投影面積PA1は5222.7mm2である。なお本発明例4でも投影面積PA2は12715.6mm2である。本発明例4では投影比率は41%である。また、本発明例5のヘッド質量は比較例4のヘッド質量より軽い179gである。本発明例5では投影面積PA1は5387.7mm2である。本発明例5では投影比率は42%となる。
【0082】
以上より、本発明例4では、比較例4と同じヘッド質量とすることができることがわかった。また、本発明例5では、比較例4と比較して軽量化できることがわかった。これにより、投影比率が41%を超えると比較例4と比較して軽量化できることがわかった。投影比率は、ゴルフクラブヘッド本体の形状にも影響されるため、投影比率が概ね40%以上で軽量化できると考えられる。
【0083】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、ゴルフクラブヘッドおよびゴルフクラブに特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0085】
1 クラウン部、1a クラウン側開口、2 ソール部、2a ソール側開口、3 壁部、4 ホーゼル部、5 フェース部、6 リーディングエッジ部、7 トウ部、8 ヒール部、9 トップエッジ部、10 ゴルフクラブヘッド、11 ウェイト部、20 ゴルフクラブ、21 シャフト、22 グリップ、23 ソケット、IS 内部空間、PA1 内部空間の投影面積、PA2 ゴルフクラブヘッドの投影面積。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウン側開口を有するクラウン部と、
前記クラウン部と対向し、かつソール側開口を有するソール部と、
前記クラウン側開口と前記ソール側開口とを連通する内部空間を規定する壁部とを備え、
前記クラウン部側から見た前記内部空間の投影面積は、前記クラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積の40%以上90%以下である、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記内部空間は仕切り部材で複数の空間部に仕切られている、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
蓋体をさらに備え、
前記蓋体が前記クラウン側開口を覆うように取り付けられている、請求項1または2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記クラウン部は
前記クラウン側開口の外周端部に設けられた受け部と、
前記受け部を架橋するように設けられた接合部とを含む、請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
シャフトと、
前記シャフトの一方端に取り付けられたグリップと、
前記シャフトの前記グリップと反対側の他方端に取り付けられた請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドとを備えた、ゴルフクラブ。
【請求項1】
クラウン側開口を有するクラウン部と、
前記クラウン部と対向し、かつソール側開口を有するソール部と、
前記クラウン側開口と前記ソール側開口とを連通する内部空間を規定する壁部とを備え、
前記クラウン部側から見た前記内部空間の投影面積は、前記クラウン部側から見たゴルフクラブヘッドの投影面積の40%以上90%以下である、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記内部空間は仕切り部材で複数の空間部に仕切られている、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
蓋体をさらに備え、
前記蓋体が前記クラウン側開口を覆うように取り付けられている、請求項1または2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記クラウン部は
前記クラウン側開口の外周端部に設けられた受け部と、
前記受け部を架橋するように設けられた接合部とを含む、請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
シャフトと、
前記シャフトの一方端に取り付けられたグリップと、
前記シャフトの前記グリップと反対側の他方端に取り付けられた請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドとを備えた、ゴルフクラブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−34856(P2013−34856A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151553(P2012−151553)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
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