説明

ゴルフシューズ

【課題】 体を捻らずに回転できるゴルフシューズを提供する。
【解決手段】 アドレス状態から体を捻らずに右に回転させつつクラブを持ち上げる。すると、左右のシューズ1,1は足の親指の付け根を中心として回転し右を向く。このとき、実際は靴底2の方が回転しているのであるが相対的には回転機構4を構成する回転体6が回転する。そして回転体6が相対的に90度回転した位置で、右側の弾発部材13が圧縮限界に達し、回転は停止する。この位置がバックスイングの終点であり、フォロースルーの開始点となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体を捻らないゴルフスイングに適したゴルフシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
体を捻らないゴルフスイング理論が非特許文献1に開示されている。この理論は、前のめりになりそうな状態でひざを曲げ、つま先に体重をかけ、不安定な状態つまり体が動き安い状態でアドレスし、右打ちの場合、バックスイングでは右を向いて両手で荷物を持ち上げる姿勢をとり、その状態から体を回転させながら手を下ろし、そのままフォロースイングでは左を向いて再び両手で荷物を持ち上げる姿勢をとるというものである。
【0003】
上記のゴルフスイング理論は体の中心を意識して、腕力や無理な手首の返しを伴わないため、非力な女性や体が硬くなった高齢者でも、十分な飛距離と安定した方向性が得られるとされている。
【0004】
上記のゴルフスイング理論を実践するには、体を捻らずに体全体を回転させるため、回転機能が付加されたシューズが好ましい。斯かる回転機能を備えたシューズとしては特許文献1〜4に開示されるものがある。
【0005】
特許文献1には、靴底に設けたターンテーブルが周囲に設けた弾性ウェブによって靴底に結合され、前記弾性ウェブはターンテーブルの休止位置からいずれかの方向への回転に応じて弾性的に変形可能で、ターンテーブルがその休止位置に向って戻るように弾性バイアスを印加する構造が提案されている。
【0006】
特許文献2には、つま先と踵の靴底に底穴を設け、それぞれの底穴の内部に上板を装着し、上板の中心に靴底と垂直方向に中軸を装着し、この中軸に回転体を装着する構造が開示されている。
【0007】
特許文献3には、シューズの靴底足指の付根部分が厚く形成され、この部分に取付金具を設け、この取付金具に回転アダプタを装着することで、回転運動ができるシューズが提案されている。
【0008】
特許文献4には、サンダルなどの履物として、足置き部材の下側に回転盤を配置し、足置き部材と回転盤との間に回転軸を形成し、該回転軸により足置き部材と回転盤とを接続した構造が提案されている。
【0009】
【特許文献1】特表平11−513286号公報
【特許文献2】特開2005−95283号公報
【特許文献3】特開2005−124688号公報
【特許文献4】特開2006−192226号公報
【非特許文献1】「ネジらないから遠くへ飛ぶ、ピンに寄る」 増田 哲仁著 ゴルフダイジェスト新書 2007年12月16日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されるシューズは、ほんの少しターンテーブルが回転できるだけで、体を捻らないスイングに適用することはできない。また、足の親指の付け根を中心とした回転ができない。
【0011】
特許文献2〜4に開示されるシューズは、どこまで回転したかを感覚的に掴みづらくバックスイングの終了点が判断し難く、スイングの開始のきっかけがつかみにくい。
【0012】
また、体の中心を安定させて且つ捻らずに体全体を回転させるには、足の親指の付け根を中心としなければならないが、いずれの先行技術もそのような構造になっていない。例えば特許文献3では回転アダプタの取付け位置は指の付根部分とはなっているが具体的には靴裏の幅方向の中心に回転アダプタが取り付けられ、足の親指の付け根を中心とした回転ができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため本発明に係るゴルフシューズは、爪先立ちした状態で踵部分が浮くように靴底前面が先端に向かって前上がり傾斜面とされ、この傾斜面のうち足の親指の付け根の直下に対応する部分に回転中心が位置する回転機構が設けられ、この回転機構は靴底に固定される受け部材とこの受け部材に回転自在に支持される回転部材とからなり、前記受け部材がキャップ状をなすか前記回転部材がカップ状をなすことで回転部材と受け部材との間に内部空間が形成され、前記回転部材には前記内部空間を左右の空間に2分割する分割板を設け、前記左右の空間の夫々に回転部材の回転につれて前記分割板によって圧縮される弾発部材が収納される構成とした。
【0014】
前記弾発部材としてはゴムの他にスプリング、皿ばね、ガスなどが考えられ、その設定は、例えば回転部材が中立位置から左右に90度回転した状態で圧縮限界となるようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るゴルフシューズによれば、体を捻らなくても、正確な方向性と十分な飛距離を確保できるので、女性や高齢者に最適である。また、体を捻ることがないため腰に負担がかからず、腰痛の持病をもっているゴルファーにも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るゴルフシューズの側面図、図2は同ゴルフシューズの底面を示す図である。
【0017】
ゴルフシューズ1の靴底2の全体の約1/3〜1/2程の前面部分3は爪先立ちした状態で踵部分が浮くように先端に向かって前上がり傾斜面とされ、この部分に回転機構4が設けられている。
【0018】
回転機構4は靴底に固定される受け部材5と回転部材6から構成される。受け部材5はキャップ状をなし、中心部にはネジ軸7が取り付けられている。回転部材6は円盤状をなし中心部には円筒部8が形成され、下面にはスパイクとなる突起9が形成されている。前記円筒部8を前記ネジ軸7に外嵌した状態で円筒部8とネジ軸7との間には隙間が形成され、この隙間に内周面に雌ネジ部を形成した袋ナット10を羅着することで、回転部材6は受け部材5に回転自在に保持される。
【0019】
前記回転機構4は一部を壁11で閉じたキャップ状をなしているため、回転部材6を保持した状態で回転部材6と受け部材5との間には内部空間が形成され、回転部材6に設けた分割板12によって前記内部空間は左右の空間S1、S2に分割され、夫々の空間S1、S2にゴムなどの弾発部材13が収納されている。
【0020】
尚、回転部材6と受け部材5とはできるだけ密着させて空間S1、S2にゴミなどが侵入しないようにする。また空間を形成するには受け部材5の形状をカップ状にすれば更にゴミなどが侵入しにくくなる。
【0021】
また、前記弾発部材13の選定は、例えば回転部材6が中立位置から左右に90度回転した状態で圧縮限界となるものを選定する。
【0022】
次に、実際のスウィングに合わせた本発明に係るゴルフシューズの作用を図3〜5に沿って説明する。ここで、図3(a)はアドレス時のゴルフシューズの位置を示す図、(b)はアドレス時の回転体と弾発部材との関係を説明した図、図4(a)はバックスウィング時のゴルフシューズの位置を示す図、(b)はバックスウィング時の回転体と弾発部材との関係を説明した図、図5(a)はフォロースルー時のゴルフシューズの位置を示す図、(b)はフォロースルー時の回転体と弾発部材との関係を説明した図である。
【0023】
先ず、アドレス状態では図3(a)に示すように、左右のシューズ1,1の前後方向が目標方向と略直角になっている。この状態から膝を曲げずに体を前傾し爪先立ちする。それから膝を曲げて体の中心が安定した爪先立ち状態とする。この状態は安定しているが爪先立ち状態のため次の動作がスムーズに開始できる。
【0024】
上記のアドレス状態では、図3(b)に示すように、回転体の分割板12は内部空間を左右等しく2分割する位置にあり、この位置では左右の弾発部材13の圧縮状態は等しく、何ら回転力(抵抗)が発生していないニュートラル状態である。
【0025】
上記のアドレス状態から体を捻らずに右に回転させつつクラブを持ち上げる。すると、図4(a)に示すように、左右のシューズ1,1は足の親指の付け根を中心として回転し右を向く。このとき、実際は靴底2の方が回転しているのであるが相対的には回転機構4を構成する回転体6が回転する。そして回転体6が相対的に90度回転した位置で図4(b)に示すように、右側の弾発部材13が圧縮限界に達し、回転は停止する。この位置がバックスイングの終点であり、フォロースルーの開始点となる。
【0026】
バックスイング状態から体を捻らずに左に回転させつつクラブを下げ、スイングを開始する。すると、アドレス状態を通過し、この時点でボールをヒットし、さらにそのまま回転を継続しつつクラブを持ち上げフォロースルーに至る。このフォロースルーの状態では図5(a)に示すように、左右のシューズ1,1は足の親指の付け根を中心として回転し左を向く。そして回転体6が相対的に左に90度回転した位置で図5(b)に示すように、左側の弾発部材13が圧縮限界に達し、回転は停止する。この位置がフォロースルーの終点となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るゴルフシューズ(右側)を斜め下から見た図
【図2】同ゴルフシューズ(右側)を図1とは異なる側の斜め下から見た図
【図3】(a)はアドレス時のゴルフシューズの位置を示す図、(b)はアドレス時の回転体と弾発部材との関係を説明した図
【図4】(a)はバックスウィング時のゴルフシューズの位置を示す図、(b)はバックスウィング時の回転体と弾発部材との関係を説明した図
【図5】(a)はフォロースルー時のゴルフシューズの位置を示す図、(b)はフォロースルー時の回転体と弾発部材との関係を説明した図
【符号の説明】
【0028】
1…ゴルフシューズ、2…靴底、3…靴底の前面部分、4…回転機構、5…受け部材、6…回転部材、7…ネジ軸、8…円筒部、9…突起、10…袋ナット、11…壁、12…分割板、13…弾発部材、S1、S2…左右の空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先立ちした状態で踵部分が浮くように靴底前面が先端に向かって前上がり傾斜面とされ、この傾斜面のうち足の親指の付け根の直下に対応する部分に回転中心が位置する回転機構が設けられ、この回転機構は靴底に固定される受け部材とこの受け部材に回転自在に支持される回転部材とからなり、前記受け部材がキャップ状をなすか前記回転部材がカップ状をなすことで回転部材と受け部材との間に内部空間が形成され、前記回転部材には前記内部空間を左右の空間に2分割する分割板を設け、前記左右の空間の夫々に回転部材の回転につれて前記分割板によって圧縮される弾発部材が収納されることを特徴とするゴルフシューズ。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフシューズにおいて、前記弾発部材は回転部材が中立位置から左右に90度回転した状態で圧縮限界となるように設定することを特徴とするゴルフシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172482(P2010−172482A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18055(P2009−18055)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(509030490)
【出願人】(000124764)
【出願人】(595122763)
【出願人】(509029933)
【Fターム(参考)】