ゴルフボールのディンプルパターン設計方法
【課題】空力的対称性に優れたゴルフボール2の提供。
【解決手段】ゴルフボール2は、その表面にランド10と多数のディンプル8とからなるディンプルパターンを有する。このディンプルパターンの設計方法は、
(1)仮想球の表面の上に多数の点をランダムに配置するステップ、
(2)第一の点と、この第一の点に最も近い点である第二の点との間の距離を、算出するステップ、
(3)上記距離に基づいて、半径を決定するステップ、
(4)上記第一の点を中心とし、かつ上記半径を有する円を想定するステップ、及び
(5)上記円を輪郭とするディンプルを想定するステップ
を含む。ディンプル8は、ランダムに配置されている。
【解決手段】ゴルフボール2は、その表面にランド10と多数のディンプル8とからなるディンプルパターンを有する。このディンプルパターンの設計方法は、
(1)仮想球の表面の上に多数の点をランダムに配置するステップ、
(2)第一の点と、この第一の点に最も近い点である第二の点との間の距離を、算出するステップ、
(3)上記距離に基づいて、半径を決定するステップ、
(4)上記第一の点を中心とし、かつ上記半径を有する円を想定するステップ、及び
(5)上記円を輪郭とするディンプルを想定するステップ
を含む。ディンプル8は、ランダムに配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、ゴルフボールのディンプルパターンの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。乱流剥離によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流剥離によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。抗力の低減及び揚力の向上は、「ディンプル効果」と称される。
【0003】
米国ゴルフ協会(USGA)は、ゴルフボールの対称性に関するルールを定めている。このルールでは、PH回転時の弾道とPOP回転時の弾道とが対比される。両者の差が大きいゴルフボールは、このルールに適合しない。換言すれば、空力的対称性が劣るゴルフボールは、このルールに適合しない。空力的対称性が劣るゴルフボールは、PH回転時の空力特性又はPOP回転時の空力特性が劣ることに起因して、飛距離に劣る。PH回転の回転軸は、ゴルフボールの両極を通過する。POP回転の回転軸は、PH回転の回転軸と直交する。
【0004】
ゴルフボールの仮想球に内接する正多面体が用いられて、ディンプルが配置されることがある。この配置方法では、多面体の辺が球面に投影されて得られる区画線によって仮想球の表面が複数のユニットに区画される。1つのユニットのディンプルパターンが、仮想球の全体に展開される。このディンプルパターンでは、正多面体の頂点を通過する線が回転軸である場合の空力特性が、この正多面体の面中心を通過する線が回転軸である場合の空力特性と異なる。このゴルフボールは、空力的対称性に劣る。
【0005】
特開昭50−8630公報には、改良されたディンプルパターンを有するゴルフボールが開示されている。このゴルフボールの表面は、仮想球に内接する二十面体によって区画されている。この区画に基づき、ゴルフボールの表面にディンプルが配置されている。このディンプルパターンでは、ディンプルと交差しない大円の数は、1である。この大円は、赤道と一致している。赤道の近傍は、特異な領域である。
【0006】
ゴルフボールは、上型及び下型からなるモールドによって成形される。このモールドは、パーティングラインを有する。このモールドによって得られたゴルフボールは、パーティングラインに相当する位置に、シームを有する。成形により、シームにはバリが生じる。バリは、切削され除去される。バリの切削により、シームの近傍のディンプルは変形する。さらに、シームの近傍には、ディンプルが整然と並ぶ傾向がある。シームは、赤道に位置する。赤道の近傍は、特異な領域である。
【0007】
凹凸状のパーティングラインを有するモールドが、用いられている。このモールドで得られたゴルフボールは、赤道上にディンプルを有する。赤道上のディンプルは、赤道の近傍の特異性解消に寄与する。しかし、特異性は、十分には解消されていない。このゴルフボールの空力的対称性は、十分ではない。
【0008】
特開昭61−284264号公報には、シーム近傍のディンプルの容積が極近傍のディンプルの容積よりも大きなゴルフボールが開示されている。容積の相違は、赤道近傍の特異性の解消に寄与する。このゴルフボールでは、ディンプルパターンに起因する不都合が、容積の相違によって解消されている。ディンプルパターンに起因する不都合が、ディンプルパターン自体の工夫で解消されているわけではない。このゴルフボールでは、ディンプルパターンが本来備えるポテンシャルが犠牲にされる。このゴルフボールの飛距離は、十分ではない。
【0009】
特開平9−164223号公報には、多数のディンプルがランダムに配置されたゴルフボールが開示されている。ランダムな配置は、空力的対称性を高める。特開2000−189542公報にも、多数のディンプルがランダムに配置されたゴルフボールが開示されている。
【0010】
特開2010−213741公報には、セル・オートマトン法によって得られた凹凸パターンを有するゴルフボールが開示されている。この凹凸パターンでは、ディンプルがランダムに配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭50−8630公報
【特許文献2】特開昭61−284264号公報
【特許文献3】特開平9−164223号公報
【特許文献4】特開2000−189542公報
【特許文献5】特開2010−213741公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特開平9−164223号公報に開示された方法では、ディンプルパターンを得るのに、試行錯誤が繰り返される。特開2000−189542公報に開示された方法でも、ディンプルパターンを得るのに、試行錯誤が繰り返される。
【0013】
特開2010−213741公報に開示されたゴルフボールでは、ディンプルは非円形である。このディンプルのディンプル効果は、十分ではない。
【0014】
本発明の目的は、円形ディンプルを備えており、かつ空力的対称性に優れたゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るゴルフボールのディンプルパターン設計方法は、
(1)仮想球の表面の上に多数の点をランダムに配置するステップ、
(2)第一の点と、この第一の点に最も近い点である第二の点との間の距離を、算出するステップ、
(3)上記距離に基づいて、半径を決定するステップ、
(4)上記第一の点を中心とし、かつ上記半径を有する円を想定するステップ、
及び
(5)上記円を輪郭とするディンプルを想定するステップ
を含む。
【0016】
好ましくは、ステップ(3)において、距離の半分の値が半径とされる。
【0017】
好ましくは、ステップ(1)において、セル・オートマトン法に基づいて多数の点がランダムに配置される。好ましくは、ステップ(1)において、セル・オートマトン法の反応・拡散モデルに基づいて多数の点がランダムに配置される。
【0018】
好ましくは、ステップ(1)は、
(1.1)複数の状態が想定されるステップ、
(1.2)仮想球の表面の上に多数のセルが想定されるステップ、
(1.3)それぞれのセルに、いずれかの状態が付与されるステップ、
(1.4)上記セルの状態及びこのセルの近傍に位置する複数のセルの状態に基づいて、当該セルの属性として、インサイド、アウトサイド及び境界のいずれかが付与されるステップ、
(1.5)境界のセルが結ばれることによって、ループが想定されるステップ、並びに
(1.6)上記ループ又はこのループに基づいて得られた他のループに基づいて点が決定されるステップ
を含む。
【0019】
ステップ(1)が、
(1.1)乱数を発生させるステップ、
(1.2)この乱数に基づいて、仮想球の表面の上の座標を決定するステップ、
(1.3)この座標を有する点と、仮想球の表面の上に既に存在している点との距離を算出するステップ、
及び
(1.4)この距離が所定範囲内である場合に、この座標を有する点を仮想球の表面の上に存在する点と認定するステップ
を含んでもよい。好ましくは、ステップ(1)は、
(1.5)仮想球の表面の上の1つの点を基準点とみなすステップ、
(1.6)この基準点に隣接する複数の隣接点を決定するステップ、
(1.7)これら複数の隣接点の座標の平均を算出するステップ、
及び
(1.8)基準点の座標を、平均の座標と置換するステップ
をさらに含む。好ましくは、ステップ(1.6)は、
(1.6.1)仮想球の表面の上の全ての点を用いたドロネー三角分割により、多数の三角形が想定されるステップ、
及び
(1.6.2)基準点を頂点とする三角形の他の頂点を、隣接点とみなすステップ
を含む。
【0020】
本発明に係るゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備える。これらのディンプルは、ランダムに配置されている。これらのディンプルのパターンは、前述の方法によって設計される。
【0021】
好ましくは、このゴルフボールでは、下記ステップ(1)から(16)によって得られる変動幅Rh及び変動幅Roは、3.3mm以下である。
(1)ゴルフボールの両極を結ぶ線が、第一回転軸に想定されるステップ
(2)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第一回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(3)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第一回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(4)これらの小円によりゴルフボールが区画され、このゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(5)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(6)それぞれの点から上記第一回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(7)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(8)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Rhが算出されるステップ
(9)上記ステップ(1)で想定された第一回転軸に直交する第二回転軸が想定されるステップ
(10)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第二回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(11)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第二回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(12)これらの小円によりゴルフボールが区画され、ゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(13)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(14)それぞれの点から上記第二回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(15)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(16)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Roが算出されるステップ
【0022】
好ましくは、変動幅Rhと上記変動幅Roとの差dRの絶対値は、1.0mm以下である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る設計方法により、空力的対称性に優れたゴルフボールが容易に得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された模式的断面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフボールが示された拡大正面図である。
【図3】図3は、図2のゴルフボールが示された平面図である。
【図4】図4は、ループのパターンの設計方法が示されたフローチャートである。
【図5】図5は、図4の設計方法に用いられるメッシュが示された正面図である。
【図6】図6は、図4の設計方法の規則が説明されるためのグラフである。
【図7】図7は、図5のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図8】図8は、更新が完了した後のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図9】図9は、第一ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図10】図10は、属性の付与が完了した後のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図11】図11は、第二ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図12】図12は、第三ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図13】図13は、第三ループが示された正面図である。
【図14】図14は、図13の第三ループのセルがスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図15】図15は、3点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図16】図16は、5点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図17】図17には、7点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図18】図18は、5点移動平均で得られた基準点が半分に間引かれて得られたループが示された正面図である。
【図19】図19は、5点移動平均で得られた基準点が1/3に間引かれて得られたループが示された正面図である。
【図20】図20は、図19のループを備えたパターンが示された正面図である。
【図21】図21は、図20のパターンが示された平面図である。
【図22】図22は、多数の点が示された正面図である。
【図23】図23は、図22の点が示された拡大図である。
【図24】図24は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図25】図25は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図26】図26は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図27】図27は、本発明の実施例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図28】図28は、本発明の実施例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図29】図29は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボールが示された正面図である。
【図30】図30は、図29のゴルフボールが示された平面図である。
【図31】図31は、多数の点がランダムに配置された仮想球が示された正面図である。
【図32】図32は、図31の仮想球が示された平面図である。
【図33】図33は、図29及び30のゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図34】図34は、図29及び30のゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図35】図35は、本発明のさらに他の実施形態に係るゴルフボールが示された正面図である。
【図36】図36は、図35のゴルフボールが示された平面図である。
【図37】図37は、図31に示された仮想球がドロネー領域に分割された状態が示された正面図である。
【図38】図38は、図37の仮想球の一部が示された拡大図である。
【図39】図39は、基準点の置換の後の仮想球の一部が示された正面図である。
【図40】図40は、基準点の置換の後の仮想球がドロネー領域に分割された状態が示された正面図である。
【図41】図41は、仮想球が置換後の基準点と共に示された正面図である。
【図42】図42は、図41の仮想球が示された平面図である。
【図43】図43は、本発明の実施例3に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図44】図44は、本発明の実施例3に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図45】図45は、比較例1に係るゴルフボールが示された正面図である。
【図46】図46は、図45のゴルフボールが示された平面図である。
【図47】図47は、比較例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図48】図48は、比較例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0026】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、カバー6とを備えている。カバー6の表面には、多数のディンプル8が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル8以外の部分は、ランド10である。このゴルフボール2は、カバー6の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。コア4とカバー6との間に、中間層が設けられてもよい。
【0027】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0028】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点からポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0029】
コア4の架橋には、共架橋剤が用いられうる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物には、共架橋剤と共に有機過酸化物が配合されるのが好ましい。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
【0030】
コア4のゴム組成物には、硫黄、硫黄化合物、充填剤、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0031】
コア4の直径は30.0mm以上、特には38.0mm以上である。コア4の直径は42.0mm以下、特には41.5mm以下である。コア4が2以上の層から構成されてもよい。コア4がその表面にリブを備えてもよい。
【0032】
カバー6に好適なポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
【0033】
アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性スチレンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。スピン性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0034】
カバー6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、カバー6にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
【0035】
カバー6の厚みは0.1mm以上、特には0.3mm以上である。カバー6の厚みは2.5mm以下、特には2.2mm以下である。カバー6の比重は0.90以上、特には0.95以上である。カバー6の比重は1.10以下、特には1.05以下である。カバー6が2以上の層から構成されてもよい。
【0036】
図2は、図1のゴルフボール2が示された拡大正面図である。図3は、図2のゴルフボール2が示された平面図である。図2及び3から明らかなように、このゴルフボール2は、多数のディンプル8を備えている。それぞれのディンプル8の輪郭は、円である。これらディンプル8とランド10とにより、ゴルフボール2の表面にディンプルパターンが形成されている。
【0037】
このディンプルパターンでは、多数のディンプルがランダムに配置されている。このディンプルパターンの設計では、ゴルフボールの仮想球14の表面に、多数の点が配置される。それぞれの点を中心とする円が、想定される。この円を輪郭とするディンプルが、想定される。点の配置がランダムなので、ディンプルの配置もランダムである。この設計方法は、効率の観点から、コンピュータとソフトウエアとが用いられて実施されることが好ましい。もちろん、手計算でも本発明は実施されうる。本発明の本質がコンピュータソフトウエアにあるわけではない。
【0038】
好ましくは、点の配置には、セル・オートマトン(Cellular Automaton)法が用いられる。セル・オートマトン法により、仮想球14の表面の上に多数のループがランダムに配置されたパターンが得られる。これらループの中心点が、求められる。ループの配置がランダムなので、中心点の配置もランダムである。
【0039】
セル・オートマトン法は、計算可能性理論、数学、理論生物学等の分野で、広く利用されている。セル・オートマトン法のモデルは、多数のセルと単純な規則とからなる。このモデルにより、生命現象、結晶の成長、乱流等の自然現象が模擬されうる。このモデルでは、それぞれのセルが状態を有する。この状態は、ステージの進行に応じ、他の状態に変化しうる。あるセルのステージ(t+1)における状態は、ステージ(t)における当該セルの状態及びこのセルの近傍にある複数のセルの状態によって決定される。決定は、ある規則に従ってなされる。全てのセルに、この規則が等しく適用される。
【0040】
このディンプルパターンの設計には、セル・オートマトン法の反応・拡散モデルが適している。このモデルは、獣、鳥、魚、昆虫等の体表面の模様の模擬に用いられている。このモデルでは、複数の状態が想定される。状態の数は、通常は2以上8以下である。それぞれのセルにおいて、初期の状態が決定される。ステージの進行により、規則に基づいて、状態が更新される。更新により、その状態が変化するセルが存在する。更新により、状態が変化しないセルも存在する。セル・オートマトン法は、「セル・オートマトン法 複雑系の自己組織化と超並列処理(加藤泰義ら著、森北出版株式会社発行)」の第25−28頁に開示されている。
【0041】
本発明に係る設計方法の特徴は、セルの状態が、当該セルの近傍に位置する他のセルの影響下にて更新される点にある。この更新により、多数のループがランダムに配置されたパターンが得られる。この特徴が維持される限り、如何なるモデルも用いられうる。以下、セル・オートマトン法の反応拡散モデルを用いた設計方法が詳説される。
【0042】
図4は、ループのパターンの設計方法が示されたフローチャートである。図5は、図4の設計方法に用いられるメッシュ12が示された正面図である。このメッシュ12の形成には、球14が仮想される(STEP1)。この仮想球14の直径は、ゴルフボール2の直径と同一である。この仮想球14の表面が、多数の三角形に分割される(STEP2)。分割は、前進先端法(advancing front method)に基づいてなされている。前進先端法が、「大学院情報理工学3 計算力学(伊藤耿一編、講談社発行)」の第195−197頁に開示されている。このメッシュ12において、三角形の数は176528個であり、頂点の数は88266個である。それぞれの頂点は、セル(又はセルの中心)と定義される。このメッシュ12では、セルの数は88266個である。他の手法によって仮想球14が分割されてもよい。
【0043】
この設計方法では、分化及び未分化の、2つの状態が想定される。それぞれのセルにおいて、いずれかの状態(初期の状態)が決定される(STEP3)。決定は、好ましくは、無作為になされる。無作為な決定には、乱数と剰余系とが用いられる。状態の数が2なので、基数が2である剰余系が用いられる。具体的には、コンピュータによって0以上1未満であり、下5桁の乱数が発生させられる。この乱数に100000が乗され、この積がさらに2で除される。この商の余りは、「1」又は「0」である。この余りに基づいて、当該セルの状態が決定される。例えば、余りが「1」の場合に分化が選定され、余りが「0」の場合に未分化が選定される。全てのセルについて、決定がなされる。決定の後のメッシュ12は、ステージ1にある。
【0044】
それぞれのセルにおいて、状態の変更の要否が判定される(STEP4)。判定は、規則に従ってなされる。図6は、この規則が説明されるためのグラフである。このグラフにおいて、縦軸は濃度であり、横軸は指数半径である。指数半径は、当該セルからの距離が基準値で除された値である。この基準値は、当該セルに最も近いセルと、当該セルとの距離である。濃度W1は正であり、濃度W2は負である。濃度W1の絶対値は、濃度W2の絶対値よりも大きい。指数半径R2は、指数半径R1よりも大きい。指数半径が0を超えてR1以下のエリアでは、濃度はW1である。指数半径がR1を超えてR2以下のエリアでは、濃度はW2である。
【0045】
図7は、図5のメッシュ12の一部が示された拡大図である。便宜上、図7では、メッシュ12が二次元で画かれている。図7の中心には、判定の対象であるセル16aが示されている。図7にはさらに、第一円18及び第二円20が示されている。第一円18は、セル16aを中心とする、指数半径がR1である円である。第二円20は、セル16aを中心とする、指数半径がR2である円である。塗りつぶされた円で示されているのは、第一円18に含まれる、セル16a以外のセル16である。塗りつぶされた四角形で示されているのは、第二円20に含まれ、第一円18に含まれないセル16である。塗りつぶされた三角形で示されているのは、第二円20に含まれないセル16である。
【0046】
この設計方法では、第一円18に含まれこの第一円18の中心に位置しない、特定の状態にあるセル16の数NR1がカウントされる。好ましい態様によれば、その状態が分化であるセル16の数がカウントされ、合計NR1が算出される。この設計方法ではさらに、第二円20に含まれ第一円18に含まれない、特定の状態にあるセル16の数NR1−R2がカウントされる。好ましい態様によれば、その状態が分化であるセル16の数がカウントされ、合計NR1−R2が算出される。この数NR1及びNR1−R2が下記数式(1)に代入され、値Eが算出される。この値Eに基づいて、セル16aの状態の変更の要否が決定される。
E = W1 * NR1 + W2 * NR1−R2 (1)
【0047】
この判定に基づき、セル16aの状態の更新がなされる(STEP5)。更新において、セル16a状態が変化することも、変化しないことも生じうる。好ましい態様によれば、値Eが正であるとき、セル16aの状態が分化であればこの状態が維持され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が分化に変更される。この値Eがゼロであるとき、セル16aの状態が維持される。この値Eが負であるとき、セル16aの状態が分化であればこの状態が未分化に変更され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が維持される。全てのセル16についての第一回目の更新が完了したメッシュ12は、ステージ2にある。
【0048】
以下に、判定及び更新の計算例が示される。
条件
第一濃度W1:1.00
第二濃度W2:−0.60
第一円に含まれその状態が分化であるセルの数(当該セル16aを除く):8
第二円に含まれ第一円に含まれない、その状態が分化であるセルの数:13
計算例
E = 1.00 * 8 − 0.60 * 13
= 0.2
この場合、値Eが正なので、セル16aの状態が分化であればこの状態が維持され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が分化に変更される。
【0049】
以下に、判定及び更新の他の計算例が示される。
条件
第一濃度W1:1.00
第二濃度W2:−0.60
第一円に含まれその状態が分化であるセルの数(当該セル16aを除く):5
第二円に含まれ第一円に含まれない、その状態が分化であるセル16の数:9
計算例
E = 1.00 * 5 − 0.60 * 9
= −0.4
この場合、値Eが負なので、セル16aの状態が分化であればこの状態が未分化に変更され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が維持される。
【0050】
この判定と更新とが、繰り返される。図4のフローチャートでは、繰り返し数はMである。M回の繰り返しが完了した後のメッシュ12は、ステージ(M+1)にある。ステージの進行に伴い、更新によって状態が変化するセル16の数が減少する。繰り返し数が小さいステージでは、更新によるパーターンの変化が激しい。多数回の更新がなされることで、パターンが収束する。繰り返し数は3以上が好ましく、5以上がより好ましい。繰り返し数が過大であると、コンピュータへの負荷が大きい。この観点から、繰り返し数は30以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0051】
判定と更新とがM回繰り返されることにより、それぞれのセル16の状態が確定する。この確定は、セル16への「状態の付与」である。図8は、状態の付与が完了した後のメッシュ12の一部が示された拡大図である。図8において、円で示されているのは分化のセル16であり、四角形で示されているのは未分化のセル16である。この状態に基づき、セル16にiflagが付与される。まず暫定的に、全てのセル16にiflagとして「0」が付与される。次に、状態が分化であるセル16に関し、iflagが変更される。図8において符号16bで示されたセル16は、6個のセル16c−16hと隣接している。本発明では、一方のセル16を頂点とする三角形の他の頂点に他方のセル16が存在するとき、「一方のセル16が他方のセル16と隣接する」と称される。これらのセル16c−16hの状態は、分化である。隣接する全てのセル16c−16hの状態が分化であるとき、当該セル16bのiflagが「0」から「1」に変更される。図8において符号16nで示されたセル16は、6個のセル16h−16mと隣接している。セル16h、16i、16l、16mの状態は、分化である。セル16j、16kの状態は、未分化である。状態が未分化である1又は2以上のセル16と隣接するとき、当該セル16nのiflagが「0」から「2」に変更される。状態が分化である全てのセル16に関し、そのiflagが変更される。状態が未分化であるセル16のiflagは、変更されない。このiflagに基づき、全てのセル16に属性が付与される(STEP6)。属性の付与は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1 属性:インサイド
iflag:2 属性:境界
属性の付与が完了したメッシュ12は、第一フェーズにある。属性が境界である複数のセル16を結ぶことにより、第一ループ21が完成する。図8において、第一ループ21が太線で示されている。
【0052】
多数の第一ループ21を有するパターンが、図9に示されている。このパターンは、以下のパラメータが用いられて得られたものである。
W1:1.0
W2:−0.6
R1:4.5
R2:8.0
【0053】
このパターンの占有率が算出される(STEP7)。この算出では、第一ループ21で囲まれた面積が算出される。全ての第一ループ21の面積が合計される。この合計の、仮想球14の表面積に対する比率が、占有率である。図5に示された多数の三角形が用いられ、占有率が近似的に算出されてもよい。近似的な算出では、第一ループ21に含まる三角形の合計面積が、全ての三角形の合計面積で除される。
【0054】
得られた占有率に基づき、判定がなされる(STEP8)。このステップでは、占有率が所定値以上であるか否かが判定される。図4に示された実施形態では、占有率Yが65%以上であるか否かが判定される。
【0055】
占有率Yが65%未満である場合、属性の更新がなされる(STEP9)。以下、この更新の方法が詳説される。図10は、属性の付与が完了した後のメッシュ12の一部が示された拡大図である。符号16nで示されたセル16は、第一ループ21の上に存在する。このセル16nには、6個のセル16h−16mが隣接している。セル16hのiflagは「1」であり、その属性はインサイドである。属性がインサイドであるセル16では、iflagの変更はなされない。セル16i、16l、16mのiflagは2であり、その属性は境界である。その属性が境界であり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16では、iflagの変更はなされない。セル16j、16kのiflagは「0」であり、その属性はアウトサイドである。その属性がアウトサイドであり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16では、iflagが「0」から「3」に変更される。第一ループ21の上に存在する全てのセル16に関し、このセル16と隣接するセル16のiflagが決定される。このiflagに基づき、属性の更新(STEP9)がなされる。属性の更新は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1−2 属性:インサイド
iflag:3 属性:境界
属性の更新が1回なされた後のメッシュ12は、第二フェーズにある。
【0056】
属性が境界である複数のセル16を結ぶことにより、第二ループ28が得られる。第二ループ28は、第一ループ21の面積以上の面積を有する。換言すれば、属性の更新(STEP9)により、占有率が大きくなる。
【0057】
多数の第二ループ28を有するパターンが、図11に示されている。図9及び11の対比から明らかなように、図11のパターンの占有率は、図9のそれよりも大きい。このパターンの占有率が算出される(STEP7)。得られた占有率に基づき、判定がなされる(STEP8)。このステップでは、占有率が所定値以上であるか否かが判定される。図4に示された実施形態では、占有率Yが65%以上であるか否かが判定される。以下同様に、占有率Yが65%以上となるまで、属性の更新(STEP9)、占有率の算出(STEP7)及び判定(STEP8)が繰り返される。第N回目の属性更新に先立ち、その属性がアウトサイドであり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16において、iflagが「0」から「N+2」に変更される。第N回目の属性更新は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1からN+1まで 属性:インサイド
iflag:N+2 属性:境界
属性の更新がN回なされた後のメッシュ12は、第(N+1)フェーズにある。
【0058】
2回の属性の更新がなされて得られたパターンが、図12に示されている。このパターンのメッシュ12は、第三フェーズにある。このパターンは、多数の第三ループ29を備えている。第三ループ29は、第二ループ28の面積以上の面積を有する。図9、11及び12の対比から明らかなように、図12に示されたパターンの占有率は大きい。このパターンの占有率は、79%である。
【0059】
図13には、1つの第三ループ29が示されている。この第三ループ29は、属性が境界である25個のセル16を結ぶことにより得られている。この第三ループ29は、多数の頂点を有している。
【0060】
図14では、25個のセル16がスプライン曲線で結ばれている。スプライン曲線は、複数の点を通過するスムースな曲線である。スプライン曲線では、隣り合う2つのセル16の間の線が、多項式で定義される。一般的には、3次多項式が用いられる。図13と14との対比から明らかなように、スプライン曲線が用いられることにより、スムースなループが得られる。
【0061】
好ましくは、ループ上のセル16の座標にスムージングがなされ、このセル16に対応する基準点が得られる(STEP10)。多数の基準点がスプライン曲線で結ばれることにより、新たなループが想定される(STEP11)。
【0062】
典型的なスムージングは、移動平均である。図15には、3点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図16には、5点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図17には、7点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図14から17の対比より明らかなように、移動平均によって輪郭のスムースが達成されうる。
【0063】
3点移動平均では、下記の3つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
【0064】
5点移動平均では、下記の5つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(4)ループの時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(5)ループの反時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
【0065】
7点移動平均では、下記の7つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(4)ループの時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(5)ループの反時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(6)ループの時計回りにおいて当該セル16に3番目に近いセル16
(7)ループの反時計回りにおいて当該セル16に3番目に近いセル16
【0066】
ループの形成のとき、基準点の一部が間引かれてスプライン曲線が画かれてもよい。図18には、5点移動平均で得られた基準点が半分(1点とばし)に間引かれて得られたループが示されている。図19には、5点移動平均で得られた基準点が1/3(2点とばし)に間引かれて得られたループが示されている。図19のループを備えたパターンが、図20及び21に示されている。このパターンは、多数のループ30を備えている。ループ30は、仮想球14の表面の上に、ランダムに配置されている。
【0067】
それぞれのループ30の、中心点が求められる。中心点の座標は、ループ30の輪郭上のセル及び輪郭の内側に存在するセルの座標の平均値を求めることで得られる。中心点の座標が、ループ30の輪郭の内側に存在するセルのみの座標の平均値を求めることで得られてもよい。中心点の座標が、ループ30の輪郭上に存在するセルのみの座標の平均値を求めることで得られてもよい。図22に、中心点32が示されている。ループ30がランダムに配置されているので、中心点32も、仮想球14の表面の上にランダムに配置されている。
【0068】
図9に示された第一ループ21に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。図11に示された第二ループ28に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。図12に示された第三ループ29に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。セル16がスプライン曲線で結ばれて得られるループ(図14参照)に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。スムージングがなされて得られるループ(図15−17参照)に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。
【0069】
図23には、第一点32aと、この第一点32aに隣接する5つの点(32b−32f)が示されている。これらの点32b−32fのうち、第一点32aに最も近いものは、点32bである。以下、この点32bは、第二点と称される。図23において、符号34で示されているのは第一点32aと第二点32bとを結ぶ仮想線であり、矢印Lで示されているのは仮想線34の長さである。長さLは、第一点32aと第二点32bとの距離である。第一点32a及び第二点32bは、球面上に位置しているので、距離Lは円弧長として算出されうる。距離Lが弦長として算出されてもよい。
【0070】
図23において符号36で示されているのは、第一点32aを中心とする円である。この円は、半径Rを有する。半径Rは、距離Lに基づいて決定される。この実施形態では、半径Rは、距離Lの半分である。この円を輪郭とするディンプル8が、想定される。換言すれば、円の内部が、仮想球14の表面から凹陥させられる。ディンプル8の断面形状は、任意である。断面形状がシングルラジアスであるディンプル8が想定されてもよく、断面形状がダブルラジアスであるディンプル8が想定されてもよい。他の断面形状を有するディンプル8が想定されてもよい。
【0071】
それぞれの点32について、この点32を第一点32aとしたときの円36が想定される。さらに、それぞれの円36について、この円36を輪郭とするディンプル8が想定される。こうして、図2及び3に示されたディンプルパターンが得られる。点32がランダムに配置されているので、ディンプル8もランダムに配置される。
【0072】
前述の通り、半径Rが距離Lの半分とされているので、隣接するディンプル8同士が重なることはない。隣接するディンプル8同士は、接しているか、又は離間している。
【0073】
隣接するディンプル8同士を重ねる目的で、半径Rが距離Lの半分よりも大きい値とされてもよい。ランド10の面積を大きくする目的で、半径Rが距離Lの半分よりも小さい値とされてもよい。
【0074】
ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル8の深さは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、この深さは0.60mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。深さは、ディンプル8の最深点と仮想球14の表面との距離である。
【0075】
本発明において「ディンプルの容積」とは、ディンプル8の輪郭を含む平面とディンプル8の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。全てのディンプル8の容積の合計(総容積)は、ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から260mm3以上が好ましく、280mm3以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、この合計は380mm3以下が好ましく、350mm3以下がより好ましく、320mm3以下が特に好ましい。
【0076】
飛行性能の観点から、ディンプル8の面積の合計の、仮想球14の表面積に対する比率(占有率)は、55%以上が好ましく、60%以上が特に好ましい。
【0077】
実質的に球であるというゴルフボール2の本質が損なわれないとの観点から、ディンプル8の総数は250個以上が好ましく、300個以上が特に好ましい。それぞれのディンプル8が十分なディンプル効果を発揮するとの観点から、この総数は450個以下が好ましく、400個以下が特に好ましい。
【0078】
好ましくは、このゴルフボール2の差dRの絶対値は、1.0mm以下である。この絶対値は、ゴルフボール2の空力的対称性と相関するパラメータである。この絶対値が小さいほど、PH回転時の弾道とPOP回転時の弾道との差が小さい。以下、差dRに基づく評価方法が説明される。
【0079】
図24は、この評価方法が説明されるための模式図である。この評価方法では、第一回転軸Ax1が想定される。この第一回転軸Ax1は、ゴルフボール2の2つの極点Poを通過する。それぞれの極点Poは、ゴルフボール2の成形に用いられるモールドの最深点である。一方の極点Poは上型の最深点であり、他方の極点Poは下型の最深点である。ゴルフボール2は、第一回転軸Ax1を中心として回転する。この回転は、PH回転である。
【0080】
このゴルフボール2の仮想球14の表面に存在し、かつ第一回転軸Ax1と直交する大円GCが想定される。ゴルフボール2の回転のとき、この大円GCの周速が最も速い。さらに、ゴルフボール2の仮想球14の表面に存在し、第一回転軸Ax1と直交する2つの小円C1、C2が想定される。図25には、図24のゴルフボール2の一部の断面が模式的に示されている。図25の左右方向は、軸方向である。図25に示されるように、小円C1と大円GCとの中心角の絶対値は、30°である。図示されていないが、小円C2と大円GCとの中心角の絶対値も、30°である。これらの小円C1、C2により上記仮想球14が区画され、ゴルフボール2の表面のうちこれら小円C1、C2に挟まれた領域が特定される。
【0081】
図25における点P(α)は、ゴルフボール2の表面に位置し、かつ大円GCとの中心角がα°(degree)である点である。点F(α)は、点P(α)から第一回転軸Ax1に下ろした垂線Pe(α)の足である。矢印L1(α)で示されているのは、垂線Pe(α)の長さである。換言すれば、長さL1(α)は、点P(α)と第一回転軸Ax1との距離である。1つの断面において、21個の点P(α)に関し、長さL1(α)が算出される。具体的には、−30°、−27°、−24°、−21°、−18°、−15°、−12°、−9°、−6°、−3°、0°、3°、6°、9°、12°、15°、18°、21°、24°、27°及び30°の角度αに関し、長さL1(α)が算出される。21個の長さL1(α)が合計され、総長さL2(mm)が得られる。総長さL2は、図25に示された断面における、表面の形状に依存するパラメータである。
【0082】
図26には、ゴルフボール2の一部の断面が示されている。図26において紙面垂直方向が、軸方向である。図26において符号βで示されているのは、ゴルフボール2の回転角度である。0°以上360°未満の範囲において、0.25°刻みに、回転角度βが設定される。それぞれの回転角度ごとに、総長さL2が算出される。この結果、回転方向に沿って1440の総長さL2が得られる。換言すれば、ゴルフボール2の1回転によって所定箇所に刻々と出現する表面の形状に依存するパラメータに関するデータ群が、算出される。このデータ群は、30240個の長さL1に基づいて算出されたものである。図2及び3に示されたゴルフボール2のデータ群がプロットされたグラフが、図28に示されている。このグラフでは、横軸は回転角度βであり、縦軸は総長さL2である。このグラフから、総長さL2の最大値と最小値とが決定される。この最大値から最小値が減じられ、変動幅Rhが算出される。変動幅Rhは、PH回転における空力特性を表す数値である。
【0083】
さらに、第一回転軸Ax1と直交する第二回転軸Ax2が決定される。第二回転軸Ax2を中心としたゴルフボール2の回転は、POP回転である。PH回転と同様、POP回転についても、大円GCと2つの小円C1、C2が想定される。小円C1と大円GCとの中心角の絶対値は、30°である。小円C2と大円GCとの中心角の絶対値も、30°である。ゴルフボール2の表面のうちこれら小円に挟まれた領域において、1440の総長さL2が算出される。換言すれば、ゴルフボール2の1回転によって所定箇所に刻々と出現する表面の形状に依存するパラメータに関するデータ群が、算出される。図2及び3に示されたゴルフボール2のデータ群がプロットされたグラフが、図27に示されている。このグラフでは、横軸は回転角度βであり、縦軸は総長さL2である。このグラフから、総長さL2の最大値と最小値とが決定される。この最大値から最小値が減じられ、変動幅Roが算出される。変動幅Roは、POP回転における空力特性を表す数値である。
【0084】
第一回転軸Ax1と直交する直線は、無数に存在する。従って、大円GCも無数に存在する。ディンプル8に含まれる部分が最長である大円GCが選択され、変動幅Ro及び差dRが算出される。これに代えて、無作為に抽出された20個の大円GCに基づき、20個の変動幅が算出されてもよい。この場合、20個のデータの中の最大値が、Roとされる。
【0085】
変動幅Rhが小さいほど、PH回転時に大きな飛距離が得られうる。その理由は、変動幅Rhが小さいほど、乱流遷移が円滑に継続されるためであると推測される。この観点から、変動幅Rhは3.3mm以下が好ましい。変動幅Roが小さいほど、POP回転時に大きな飛距離が得られうる。その理由は、変動幅Roが小さいほど、乱流遷移が円滑に継続されるためであると推測される。この観点から、変動幅Roは3.3mm以下が好ましい。PH回転時及びPOP回転時のいずれにおいても大きな飛距離が得られうるとの観点から、変動幅Rh及び変動幅Roの両方が3.3mm以下であることが好ましい。
【0086】
。変動幅Rhから変動幅Roが減じられ、差dRが算出される。差dRは、ゴルフボール2の空力的対称性を表す指標である。本発明者が得た知見によれば、差dRの絶対値が小さいゴルフボール2は、空力的対称性に優れる。その理由は、PH回転時の表面形状とPOP回転時の表面形状との類似性が高いためと推測される。
【0087】
セル・オートマトン法以外の方法により、ディンプルがランダムに配置されてもよい。例えば、仮想球の表面にヒトが無作為に点の位置を定め、この点を中心とする円が想定されてもよい。
【0088】
図29は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボール102が示された正面図である。図30は、図29のゴルフボール102が示された平面図である。図29及び30から明らかなように、このゴルフボール102は、多数のディンプル108を備えている。それぞれのディンプル108の輪郭は、円である。これらディンプル108とランド110とにより、ゴルフボール102の表面にディンプルパターンが形成されている。
【0089】
このディンプルパターンでは、多数のディンプル108がランダムに配置されている。このディンプルパターンの設計では、ゴルフボール102の仮想球の表面に、多数の点が配置される。それぞれの点を中心とする円が、想定される。この円を輪郭とするディンプル108が、想定される。点の配置がランダムなので、ディンプル108の配置もランダムである。この設計方法は、効率の観点から、コンピュータとソフトウエアとが用いられて実施されることが好ましい。もちろん、手計算でも本発明は実施されうる。本発明の本質がコンピュータソフトウエアにあるわけではない。
【0090】
点の配置には、乱数が用いられる。仮想球の表面上の点は、球面座標(θ,φ)で表される。ここで、θは緯度を表し、φは経度を表す。Robin Greenの論文「Spherical Harmonic Lighting : The Gritty Details」によれば、球面座標(θ,φ)は、下記数式によって算出されうる。
(θ,φ)=(2cos−1(1−ξx)1/2,2πξy)
上記数式においてξx及びξyは、それぞれ、0以上1以下の実数の乱数である。
【0091】
乱数ξx及びξyを順次発生させ、球面座標(θ,φ)を算出し、この球面座標(θ,φ)を有する点を仮想球の表面の上に配置する。このとき、無制限に配置を行うと、点が集中するゾーンが生じうる。換言すれば、ディンプル108が集中するゾーンが生じうる。このゾーンの発生を避ける目的で、点の配置に制約が加えられる。具体的には、球面座標(θ,φ)を有する点と、仮想球の表面の上に既に存在している点であって球面座標(θ,φ)を有する点に最も近い点との距離が、算出される。この距離が所定範囲内である場合に、球面座標(θ,φ)を有する点が仮想球の表面の上に存在する点と認定される。球面座標(θ,φ)を有する点と、仮想球の表面の上に既に存在している点との距離が、所定範囲外である場合は、球面座標(θ,φ)を有する点は、仮想球の表面の上に存在する点と認定されない。なお、距離は、点と点とを結ぶ直線の長さでもよく、点と点とを結びかつ仮想球の表面に存在する円弧の長さでもよい。
【0092】
上記距離が直線の長さである場合、球面座標(θ,φ)を有する点が仮想球の表面の上に存在する点と認定される距離の範囲は、2.5mm以上が好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。この範囲は、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下が特に好ましい。
【0093】
仮想球の表面の上の点の数が所定数に達するまで、
(a)乱数ξx及びξyの発生
(b)距離の算出
(c)距離が所定範囲内であるか否かの判定
が繰り返される。
【0094】
図31及び32には、前述の方法によって多数の点112がランダムに配置された仮想球114が示されている。この実施形態では、点112の数は324個である。この実施形態では、仮想球114の表面の上に既に存在している最も近い点112との距離が3.7mm以上4.0mm以下である場合に、当該球面座標(θ,φ)を有する点112が、仮想球114の表面の上に存在する点112と認定されている。これらの点に基づき、図23に示された方法にて、ディンプル108の直径が決定される。この決定により、図29及び30に示されたディンプルパターンが得られる。
【0095】
図35は、本発明のさらに他の実施形態に係るゴルフボール122が示された正面図である。図36は、図35のゴルフボール122が示された平面図である。このゴルフボール122も、その表面に多数のディンプル108を備えている。ディンプル108とランド110とにより、ゴルフボール122の表面にディンプルパターンが形成されている。
【0096】
このディンプルパターンの設計方法でも、図31及び32に示された多数の点112が、仮想球114の表面に想定される。本実施形態では、これらの点112の座標に修正が施される。修正は、ドロネー三角分割(Delaunay triangulation)によって達成されうる。この方法では、仮想球114の表面が多数の三角形(ドロネー領域)に分割される。以下、この分割の方法が説明される。
【0097】
この方法では、多数の点112から、任意の3つの点112が選択される。これら3つの点112を頂点とする三角形が、想定される。この三角形の外接円が、想定される。これら3つの点112以外の点112が、この外接円の中に含まれないとき、この三角形はドロネー領域と判定される。3つの点112の組み合わせの全てについて、判定がなされる。これにより、仮想球114の表面の全体が、多数のドロネー領域に分割される。図37には、図31に示された仮想球114がドロネー領域124に分割された状態が示されている。
【0098】
図38には、図37の仮想球114の一部が示されている。図38には、7個の点112A−112Gが示されている。図38にはさらに、6個のドロネー領域124A−124Fが示されている。それぞれのドロネー領域124は、点112と他の点112とが隣接しているか否かの判定に利用される。ドロネー領域124の1つの頂点112と、このドロネー領域124の他の頂点112とは、隣接しているとみなされる。
【0099】
点112Bはドロネー領域124Bの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Bの頂点である。従って、点112Bは点112Aと隣接している。点112Cはドロネー領域124Cの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Cの頂点である。従って、点112Cは点112Aと隣接している。点112Dはドロネー領域124Dの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Dの頂点である。従って、点112Dは点112Aと隣接している。点112Eはドロネー領域124Eの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Eの頂点である。従って、点112Eは点112Aと隣接している。点112Fはドロネー領域124Fの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Fの頂点である。従って、点112Fは点112Aと隣接している。点112Gはドロネー領域124Aの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Aの頂点である。従って、点112Gは点112Aと隣接している。点112B−112G以外には、点112Aと隣接する点112は存在しない。以下、点112Aは基準点と称され、点112B−112Gは隣接点と称される。
【0100】
これら隣接点112B−112Gの座標が、平均される。基準点112Aの座標は、得られた平均値と置換される。置換後の基準点112A’が、図39に示されている。図38では、点112Dの点112Aまでの距離は、小さい。図39では、点112A’までの距離が小さい点112は存在しない。
【0101】
仮想球114の表面の上の全ての点112について、このような置換がなされる。置換後の仮想球114が、図40−42に示されている。図40には、置換後の点112’に基づくドロネー領域124’が示されている。図41及び42には、置換後の点112’が示されている。これらの点112’に基づき、図23に示された方法により、ディンプル108の直径が決定される。この決定により、図35及び36に示されたディンプルパターンが得られる。図35と図29との対比から明らかなように、座標の修正により、占有率が高められうる。
【0102】
座標の修正が、セル・オートマトン法によって得られた点32(図22参照)に対してなされてもよい。
【実施例】
【0103】
図2及び3に示された、実施例1のパターンを設計した。このパターンは、391個のディンプルを有している。図29及び30に示された、実施例2のパターンを設計した。このパターンは、324個のディンプルを有している。図35及び36に示された、実施例3のパターンを設計した。このパターンは、324個のディンプルを有している。
【0104】
さらに、図45及び46に示された、比較例1のディンプルパターンを設計した。このパターンは、直径が4.00mmであるディンプルAと、直径が3.70mmであるディンプルBと、直径が3.40mmであるディンプルCと、直径が3.20mmであるディンプルDとを備えている。それぞれのディンプルの断面形状は、円弧である。ディンプルの詳細は、下記の通りである。
種類 数 直径(mm) 深さ(mm) 容積(mm3)
A 120 4.00 0.1532 0.964
B 152 3.70 0.1532 0.825
C 60 3.40 0.1532 0.697
D 60 3.20 0.1532 0.618
【0105】
前述の方法により、それぞれのパターンの変動幅Ro及びRhを算出した。この結果が、下記の表1に示されている。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示されるように、実施例1−3のパターンのdRは小さい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明されたディンプルパターンは、ツーピースゴルフボールのみならず、ワンピースゴルフボール、マルチピースゴルフボール及び糸巻きゴルフボールにも適用されうる。
【符号の説明】
【0109】
2、102、122・・・ゴルフボール
8、108・・・ディンプル
10、110・・・ランド
12・・・メッシュ
14、114・・・仮想球
16・・・セル
21・・・第一ループ
28・・・第二ループ
29・・・第三ループ
30・・・ループ
32、112・・・点
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、ゴルフボールのディンプルパターンの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。乱流剥離によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流剥離によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。抗力の低減及び揚力の向上は、「ディンプル効果」と称される。
【0003】
米国ゴルフ協会(USGA)は、ゴルフボールの対称性に関するルールを定めている。このルールでは、PH回転時の弾道とPOP回転時の弾道とが対比される。両者の差が大きいゴルフボールは、このルールに適合しない。換言すれば、空力的対称性が劣るゴルフボールは、このルールに適合しない。空力的対称性が劣るゴルフボールは、PH回転時の空力特性又はPOP回転時の空力特性が劣ることに起因して、飛距離に劣る。PH回転の回転軸は、ゴルフボールの両極を通過する。POP回転の回転軸は、PH回転の回転軸と直交する。
【0004】
ゴルフボールの仮想球に内接する正多面体が用いられて、ディンプルが配置されることがある。この配置方法では、多面体の辺が球面に投影されて得られる区画線によって仮想球の表面が複数のユニットに区画される。1つのユニットのディンプルパターンが、仮想球の全体に展開される。このディンプルパターンでは、正多面体の頂点を通過する線が回転軸である場合の空力特性が、この正多面体の面中心を通過する線が回転軸である場合の空力特性と異なる。このゴルフボールは、空力的対称性に劣る。
【0005】
特開昭50−8630公報には、改良されたディンプルパターンを有するゴルフボールが開示されている。このゴルフボールの表面は、仮想球に内接する二十面体によって区画されている。この区画に基づき、ゴルフボールの表面にディンプルが配置されている。このディンプルパターンでは、ディンプルと交差しない大円の数は、1である。この大円は、赤道と一致している。赤道の近傍は、特異な領域である。
【0006】
ゴルフボールは、上型及び下型からなるモールドによって成形される。このモールドは、パーティングラインを有する。このモールドによって得られたゴルフボールは、パーティングラインに相当する位置に、シームを有する。成形により、シームにはバリが生じる。バリは、切削され除去される。バリの切削により、シームの近傍のディンプルは変形する。さらに、シームの近傍には、ディンプルが整然と並ぶ傾向がある。シームは、赤道に位置する。赤道の近傍は、特異な領域である。
【0007】
凹凸状のパーティングラインを有するモールドが、用いられている。このモールドで得られたゴルフボールは、赤道上にディンプルを有する。赤道上のディンプルは、赤道の近傍の特異性解消に寄与する。しかし、特異性は、十分には解消されていない。このゴルフボールの空力的対称性は、十分ではない。
【0008】
特開昭61−284264号公報には、シーム近傍のディンプルの容積が極近傍のディンプルの容積よりも大きなゴルフボールが開示されている。容積の相違は、赤道近傍の特異性の解消に寄与する。このゴルフボールでは、ディンプルパターンに起因する不都合が、容積の相違によって解消されている。ディンプルパターンに起因する不都合が、ディンプルパターン自体の工夫で解消されているわけではない。このゴルフボールでは、ディンプルパターンが本来備えるポテンシャルが犠牲にされる。このゴルフボールの飛距離は、十分ではない。
【0009】
特開平9−164223号公報には、多数のディンプルがランダムに配置されたゴルフボールが開示されている。ランダムな配置は、空力的対称性を高める。特開2000−189542公報にも、多数のディンプルがランダムに配置されたゴルフボールが開示されている。
【0010】
特開2010−213741公報には、セル・オートマトン法によって得られた凹凸パターンを有するゴルフボールが開示されている。この凹凸パターンでは、ディンプルがランダムに配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭50−8630公報
【特許文献2】特開昭61−284264号公報
【特許文献3】特開平9−164223号公報
【特許文献4】特開2000−189542公報
【特許文献5】特開2010−213741公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特開平9−164223号公報に開示された方法では、ディンプルパターンを得るのに、試行錯誤が繰り返される。特開2000−189542公報に開示された方法でも、ディンプルパターンを得るのに、試行錯誤が繰り返される。
【0013】
特開2010−213741公報に開示されたゴルフボールでは、ディンプルは非円形である。このディンプルのディンプル効果は、十分ではない。
【0014】
本発明の目的は、円形ディンプルを備えており、かつ空力的対称性に優れたゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るゴルフボールのディンプルパターン設計方法は、
(1)仮想球の表面の上に多数の点をランダムに配置するステップ、
(2)第一の点と、この第一の点に最も近い点である第二の点との間の距離を、算出するステップ、
(3)上記距離に基づいて、半径を決定するステップ、
(4)上記第一の点を中心とし、かつ上記半径を有する円を想定するステップ、
及び
(5)上記円を輪郭とするディンプルを想定するステップ
を含む。
【0016】
好ましくは、ステップ(3)において、距離の半分の値が半径とされる。
【0017】
好ましくは、ステップ(1)において、セル・オートマトン法に基づいて多数の点がランダムに配置される。好ましくは、ステップ(1)において、セル・オートマトン法の反応・拡散モデルに基づいて多数の点がランダムに配置される。
【0018】
好ましくは、ステップ(1)は、
(1.1)複数の状態が想定されるステップ、
(1.2)仮想球の表面の上に多数のセルが想定されるステップ、
(1.3)それぞれのセルに、いずれかの状態が付与されるステップ、
(1.4)上記セルの状態及びこのセルの近傍に位置する複数のセルの状態に基づいて、当該セルの属性として、インサイド、アウトサイド及び境界のいずれかが付与されるステップ、
(1.5)境界のセルが結ばれることによって、ループが想定されるステップ、並びに
(1.6)上記ループ又はこのループに基づいて得られた他のループに基づいて点が決定されるステップ
を含む。
【0019】
ステップ(1)が、
(1.1)乱数を発生させるステップ、
(1.2)この乱数に基づいて、仮想球の表面の上の座標を決定するステップ、
(1.3)この座標を有する点と、仮想球の表面の上に既に存在している点との距離を算出するステップ、
及び
(1.4)この距離が所定範囲内である場合に、この座標を有する点を仮想球の表面の上に存在する点と認定するステップ
を含んでもよい。好ましくは、ステップ(1)は、
(1.5)仮想球の表面の上の1つの点を基準点とみなすステップ、
(1.6)この基準点に隣接する複数の隣接点を決定するステップ、
(1.7)これら複数の隣接点の座標の平均を算出するステップ、
及び
(1.8)基準点の座標を、平均の座標と置換するステップ
をさらに含む。好ましくは、ステップ(1.6)は、
(1.6.1)仮想球の表面の上の全ての点を用いたドロネー三角分割により、多数の三角形が想定されるステップ、
及び
(1.6.2)基準点を頂点とする三角形の他の頂点を、隣接点とみなすステップ
を含む。
【0020】
本発明に係るゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備える。これらのディンプルは、ランダムに配置されている。これらのディンプルのパターンは、前述の方法によって設計される。
【0021】
好ましくは、このゴルフボールでは、下記ステップ(1)から(16)によって得られる変動幅Rh及び変動幅Roは、3.3mm以下である。
(1)ゴルフボールの両極を結ぶ線が、第一回転軸に想定されるステップ
(2)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第一回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(3)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第一回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(4)これらの小円によりゴルフボールが区画され、このゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(5)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(6)それぞれの点から上記第一回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(7)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(8)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Rhが算出されるステップ
(9)上記ステップ(1)で想定された第一回転軸に直交する第二回転軸が想定されるステップ
(10)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第二回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(11)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第二回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(12)これらの小円によりゴルフボールが区画され、ゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(13)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(14)それぞれの点から上記第二回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(15)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(16)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Roが算出されるステップ
【0022】
好ましくは、変動幅Rhと上記変動幅Roとの差dRの絶対値は、1.0mm以下である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る設計方法により、空力的対称性に優れたゴルフボールが容易に得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された模式的断面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフボールが示された拡大正面図である。
【図3】図3は、図2のゴルフボールが示された平面図である。
【図4】図4は、ループのパターンの設計方法が示されたフローチャートである。
【図5】図5は、図4の設計方法に用いられるメッシュが示された正面図である。
【図6】図6は、図4の設計方法の規則が説明されるためのグラフである。
【図7】図7は、図5のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図8】図8は、更新が完了した後のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図9】図9は、第一ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図10】図10は、属性の付与が完了した後のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図11】図11は、第二ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図12】図12は、第三ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図13】図13は、第三ループが示された正面図である。
【図14】図14は、図13の第三ループのセルがスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図15】図15は、3点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図16】図16は、5点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図17】図17には、7点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図18】図18は、5点移動平均で得られた基準点が半分に間引かれて得られたループが示された正面図である。
【図19】図19は、5点移動平均で得られた基準点が1/3に間引かれて得られたループが示された正面図である。
【図20】図20は、図19のループを備えたパターンが示された正面図である。
【図21】図21は、図20のパターンが示された平面図である。
【図22】図22は、多数の点が示された正面図である。
【図23】図23は、図22の点が示された拡大図である。
【図24】図24は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図25】図25は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図26】図26は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図27】図27は、本発明の実施例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図28】図28は、本発明の実施例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図29】図29は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボールが示された正面図である。
【図30】図30は、図29のゴルフボールが示された平面図である。
【図31】図31は、多数の点がランダムに配置された仮想球が示された正面図である。
【図32】図32は、図31の仮想球が示された平面図である。
【図33】図33は、図29及び30のゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図34】図34は、図29及び30のゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図35】図35は、本発明のさらに他の実施形態に係るゴルフボールが示された正面図である。
【図36】図36は、図35のゴルフボールが示された平面図である。
【図37】図37は、図31に示された仮想球がドロネー領域に分割された状態が示された正面図である。
【図38】図38は、図37の仮想球の一部が示された拡大図である。
【図39】図39は、基準点の置換の後の仮想球の一部が示された正面図である。
【図40】図40は、基準点の置換の後の仮想球がドロネー領域に分割された状態が示された正面図である。
【図41】図41は、仮想球が置換後の基準点と共に示された正面図である。
【図42】図42は、図41の仮想球が示された平面図である。
【図43】図43は、本発明の実施例3に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図44】図44は、本発明の実施例3に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図45】図45は、比較例1に係るゴルフボールが示された正面図である。
【図46】図46は、図45のゴルフボールが示された平面図である。
【図47】図47は、比較例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図48】図48は、比較例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0026】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、カバー6とを備えている。カバー6の表面には、多数のディンプル8が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル8以外の部分は、ランド10である。このゴルフボール2は、カバー6の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。コア4とカバー6との間に、中間層が設けられてもよい。
【0027】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0028】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点からポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0029】
コア4の架橋には、共架橋剤が用いられうる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物には、共架橋剤と共に有機過酸化物が配合されるのが好ましい。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
【0030】
コア4のゴム組成物には、硫黄、硫黄化合物、充填剤、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0031】
コア4の直径は30.0mm以上、特には38.0mm以上である。コア4の直径は42.0mm以下、特には41.5mm以下である。コア4が2以上の層から構成されてもよい。コア4がその表面にリブを備えてもよい。
【0032】
カバー6に好適なポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
【0033】
アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性スチレンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。スピン性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0034】
カバー6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、カバー6にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
【0035】
カバー6の厚みは0.1mm以上、特には0.3mm以上である。カバー6の厚みは2.5mm以下、特には2.2mm以下である。カバー6の比重は0.90以上、特には0.95以上である。カバー6の比重は1.10以下、特には1.05以下である。カバー6が2以上の層から構成されてもよい。
【0036】
図2は、図1のゴルフボール2が示された拡大正面図である。図3は、図2のゴルフボール2が示された平面図である。図2及び3から明らかなように、このゴルフボール2は、多数のディンプル8を備えている。それぞれのディンプル8の輪郭は、円である。これらディンプル8とランド10とにより、ゴルフボール2の表面にディンプルパターンが形成されている。
【0037】
このディンプルパターンでは、多数のディンプルがランダムに配置されている。このディンプルパターンの設計では、ゴルフボールの仮想球14の表面に、多数の点が配置される。それぞれの点を中心とする円が、想定される。この円を輪郭とするディンプルが、想定される。点の配置がランダムなので、ディンプルの配置もランダムである。この設計方法は、効率の観点から、コンピュータとソフトウエアとが用いられて実施されることが好ましい。もちろん、手計算でも本発明は実施されうる。本発明の本質がコンピュータソフトウエアにあるわけではない。
【0038】
好ましくは、点の配置には、セル・オートマトン(Cellular Automaton)法が用いられる。セル・オートマトン法により、仮想球14の表面の上に多数のループがランダムに配置されたパターンが得られる。これらループの中心点が、求められる。ループの配置がランダムなので、中心点の配置もランダムである。
【0039】
セル・オートマトン法は、計算可能性理論、数学、理論生物学等の分野で、広く利用されている。セル・オートマトン法のモデルは、多数のセルと単純な規則とからなる。このモデルにより、生命現象、結晶の成長、乱流等の自然現象が模擬されうる。このモデルでは、それぞれのセルが状態を有する。この状態は、ステージの進行に応じ、他の状態に変化しうる。あるセルのステージ(t+1)における状態は、ステージ(t)における当該セルの状態及びこのセルの近傍にある複数のセルの状態によって決定される。決定は、ある規則に従ってなされる。全てのセルに、この規則が等しく適用される。
【0040】
このディンプルパターンの設計には、セル・オートマトン法の反応・拡散モデルが適している。このモデルは、獣、鳥、魚、昆虫等の体表面の模様の模擬に用いられている。このモデルでは、複数の状態が想定される。状態の数は、通常は2以上8以下である。それぞれのセルにおいて、初期の状態が決定される。ステージの進行により、規則に基づいて、状態が更新される。更新により、その状態が変化するセルが存在する。更新により、状態が変化しないセルも存在する。セル・オートマトン法は、「セル・オートマトン法 複雑系の自己組織化と超並列処理(加藤泰義ら著、森北出版株式会社発行)」の第25−28頁に開示されている。
【0041】
本発明に係る設計方法の特徴は、セルの状態が、当該セルの近傍に位置する他のセルの影響下にて更新される点にある。この更新により、多数のループがランダムに配置されたパターンが得られる。この特徴が維持される限り、如何なるモデルも用いられうる。以下、セル・オートマトン法の反応拡散モデルを用いた設計方法が詳説される。
【0042】
図4は、ループのパターンの設計方法が示されたフローチャートである。図5は、図4の設計方法に用いられるメッシュ12が示された正面図である。このメッシュ12の形成には、球14が仮想される(STEP1)。この仮想球14の直径は、ゴルフボール2の直径と同一である。この仮想球14の表面が、多数の三角形に分割される(STEP2)。分割は、前進先端法(advancing front method)に基づいてなされている。前進先端法が、「大学院情報理工学3 計算力学(伊藤耿一編、講談社発行)」の第195−197頁に開示されている。このメッシュ12において、三角形の数は176528個であり、頂点の数は88266個である。それぞれの頂点は、セル(又はセルの中心)と定義される。このメッシュ12では、セルの数は88266個である。他の手法によって仮想球14が分割されてもよい。
【0043】
この設計方法では、分化及び未分化の、2つの状態が想定される。それぞれのセルにおいて、いずれかの状態(初期の状態)が決定される(STEP3)。決定は、好ましくは、無作為になされる。無作為な決定には、乱数と剰余系とが用いられる。状態の数が2なので、基数が2である剰余系が用いられる。具体的には、コンピュータによって0以上1未満であり、下5桁の乱数が発生させられる。この乱数に100000が乗され、この積がさらに2で除される。この商の余りは、「1」又は「0」である。この余りに基づいて、当該セルの状態が決定される。例えば、余りが「1」の場合に分化が選定され、余りが「0」の場合に未分化が選定される。全てのセルについて、決定がなされる。決定の後のメッシュ12は、ステージ1にある。
【0044】
それぞれのセルにおいて、状態の変更の要否が判定される(STEP4)。判定は、規則に従ってなされる。図6は、この規則が説明されるためのグラフである。このグラフにおいて、縦軸は濃度であり、横軸は指数半径である。指数半径は、当該セルからの距離が基準値で除された値である。この基準値は、当該セルに最も近いセルと、当該セルとの距離である。濃度W1は正であり、濃度W2は負である。濃度W1の絶対値は、濃度W2の絶対値よりも大きい。指数半径R2は、指数半径R1よりも大きい。指数半径が0を超えてR1以下のエリアでは、濃度はW1である。指数半径がR1を超えてR2以下のエリアでは、濃度はW2である。
【0045】
図7は、図5のメッシュ12の一部が示された拡大図である。便宜上、図7では、メッシュ12が二次元で画かれている。図7の中心には、判定の対象であるセル16aが示されている。図7にはさらに、第一円18及び第二円20が示されている。第一円18は、セル16aを中心とする、指数半径がR1である円である。第二円20は、セル16aを中心とする、指数半径がR2である円である。塗りつぶされた円で示されているのは、第一円18に含まれる、セル16a以外のセル16である。塗りつぶされた四角形で示されているのは、第二円20に含まれ、第一円18に含まれないセル16である。塗りつぶされた三角形で示されているのは、第二円20に含まれないセル16である。
【0046】
この設計方法では、第一円18に含まれこの第一円18の中心に位置しない、特定の状態にあるセル16の数NR1がカウントされる。好ましい態様によれば、その状態が分化であるセル16の数がカウントされ、合計NR1が算出される。この設計方法ではさらに、第二円20に含まれ第一円18に含まれない、特定の状態にあるセル16の数NR1−R2がカウントされる。好ましい態様によれば、その状態が分化であるセル16の数がカウントされ、合計NR1−R2が算出される。この数NR1及びNR1−R2が下記数式(1)に代入され、値Eが算出される。この値Eに基づいて、セル16aの状態の変更の要否が決定される。
E = W1 * NR1 + W2 * NR1−R2 (1)
【0047】
この判定に基づき、セル16aの状態の更新がなされる(STEP5)。更新において、セル16a状態が変化することも、変化しないことも生じうる。好ましい態様によれば、値Eが正であるとき、セル16aの状態が分化であればこの状態が維持され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が分化に変更される。この値Eがゼロであるとき、セル16aの状態が維持される。この値Eが負であるとき、セル16aの状態が分化であればこの状態が未分化に変更され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が維持される。全てのセル16についての第一回目の更新が完了したメッシュ12は、ステージ2にある。
【0048】
以下に、判定及び更新の計算例が示される。
条件
第一濃度W1:1.00
第二濃度W2:−0.60
第一円に含まれその状態が分化であるセルの数(当該セル16aを除く):8
第二円に含まれ第一円に含まれない、その状態が分化であるセルの数:13
計算例
E = 1.00 * 8 − 0.60 * 13
= 0.2
この場合、値Eが正なので、セル16aの状態が分化であればこの状態が維持され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が分化に変更される。
【0049】
以下に、判定及び更新の他の計算例が示される。
条件
第一濃度W1:1.00
第二濃度W2:−0.60
第一円に含まれその状態が分化であるセルの数(当該セル16aを除く):5
第二円に含まれ第一円に含まれない、その状態が分化であるセル16の数:9
計算例
E = 1.00 * 5 − 0.60 * 9
= −0.4
この場合、値Eが負なので、セル16aの状態が分化であればこの状態が未分化に変更され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が維持される。
【0050】
この判定と更新とが、繰り返される。図4のフローチャートでは、繰り返し数はMである。M回の繰り返しが完了した後のメッシュ12は、ステージ(M+1)にある。ステージの進行に伴い、更新によって状態が変化するセル16の数が減少する。繰り返し数が小さいステージでは、更新によるパーターンの変化が激しい。多数回の更新がなされることで、パターンが収束する。繰り返し数は3以上が好ましく、5以上がより好ましい。繰り返し数が過大であると、コンピュータへの負荷が大きい。この観点から、繰り返し数は30以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0051】
判定と更新とがM回繰り返されることにより、それぞれのセル16の状態が確定する。この確定は、セル16への「状態の付与」である。図8は、状態の付与が完了した後のメッシュ12の一部が示された拡大図である。図8において、円で示されているのは分化のセル16であり、四角形で示されているのは未分化のセル16である。この状態に基づき、セル16にiflagが付与される。まず暫定的に、全てのセル16にiflagとして「0」が付与される。次に、状態が分化であるセル16に関し、iflagが変更される。図8において符号16bで示されたセル16は、6個のセル16c−16hと隣接している。本発明では、一方のセル16を頂点とする三角形の他の頂点に他方のセル16が存在するとき、「一方のセル16が他方のセル16と隣接する」と称される。これらのセル16c−16hの状態は、分化である。隣接する全てのセル16c−16hの状態が分化であるとき、当該セル16bのiflagが「0」から「1」に変更される。図8において符号16nで示されたセル16は、6個のセル16h−16mと隣接している。セル16h、16i、16l、16mの状態は、分化である。セル16j、16kの状態は、未分化である。状態が未分化である1又は2以上のセル16と隣接するとき、当該セル16nのiflagが「0」から「2」に変更される。状態が分化である全てのセル16に関し、そのiflagが変更される。状態が未分化であるセル16のiflagは、変更されない。このiflagに基づき、全てのセル16に属性が付与される(STEP6)。属性の付与は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1 属性:インサイド
iflag:2 属性:境界
属性の付与が完了したメッシュ12は、第一フェーズにある。属性が境界である複数のセル16を結ぶことにより、第一ループ21が完成する。図8において、第一ループ21が太線で示されている。
【0052】
多数の第一ループ21を有するパターンが、図9に示されている。このパターンは、以下のパラメータが用いられて得られたものである。
W1:1.0
W2:−0.6
R1:4.5
R2:8.0
【0053】
このパターンの占有率が算出される(STEP7)。この算出では、第一ループ21で囲まれた面積が算出される。全ての第一ループ21の面積が合計される。この合計の、仮想球14の表面積に対する比率が、占有率である。図5に示された多数の三角形が用いられ、占有率が近似的に算出されてもよい。近似的な算出では、第一ループ21に含まる三角形の合計面積が、全ての三角形の合計面積で除される。
【0054】
得られた占有率に基づき、判定がなされる(STEP8)。このステップでは、占有率が所定値以上であるか否かが判定される。図4に示された実施形態では、占有率Yが65%以上であるか否かが判定される。
【0055】
占有率Yが65%未満である場合、属性の更新がなされる(STEP9)。以下、この更新の方法が詳説される。図10は、属性の付与が完了した後のメッシュ12の一部が示された拡大図である。符号16nで示されたセル16は、第一ループ21の上に存在する。このセル16nには、6個のセル16h−16mが隣接している。セル16hのiflagは「1」であり、その属性はインサイドである。属性がインサイドであるセル16では、iflagの変更はなされない。セル16i、16l、16mのiflagは2であり、その属性は境界である。その属性が境界であり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16では、iflagの変更はなされない。セル16j、16kのiflagは「0」であり、その属性はアウトサイドである。その属性がアウトサイドであり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16では、iflagが「0」から「3」に変更される。第一ループ21の上に存在する全てのセル16に関し、このセル16と隣接するセル16のiflagが決定される。このiflagに基づき、属性の更新(STEP9)がなされる。属性の更新は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1−2 属性:インサイド
iflag:3 属性:境界
属性の更新が1回なされた後のメッシュ12は、第二フェーズにある。
【0056】
属性が境界である複数のセル16を結ぶことにより、第二ループ28が得られる。第二ループ28は、第一ループ21の面積以上の面積を有する。換言すれば、属性の更新(STEP9)により、占有率が大きくなる。
【0057】
多数の第二ループ28を有するパターンが、図11に示されている。図9及び11の対比から明らかなように、図11のパターンの占有率は、図9のそれよりも大きい。このパターンの占有率が算出される(STEP7)。得られた占有率に基づき、判定がなされる(STEP8)。このステップでは、占有率が所定値以上であるか否かが判定される。図4に示された実施形態では、占有率Yが65%以上であるか否かが判定される。以下同様に、占有率Yが65%以上となるまで、属性の更新(STEP9)、占有率の算出(STEP7)及び判定(STEP8)が繰り返される。第N回目の属性更新に先立ち、その属性がアウトサイドであり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16において、iflagが「0」から「N+2」に変更される。第N回目の属性更新は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1からN+1まで 属性:インサイド
iflag:N+2 属性:境界
属性の更新がN回なされた後のメッシュ12は、第(N+1)フェーズにある。
【0058】
2回の属性の更新がなされて得られたパターンが、図12に示されている。このパターンのメッシュ12は、第三フェーズにある。このパターンは、多数の第三ループ29を備えている。第三ループ29は、第二ループ28の面積以上の面積を有する。図9、11及び12の対比から明らかなように、図12に示されたパターンの占有率は大きい。このパターンの占有率は、79%である。
【0059】
図13には、1つの第三ループ29が示されている。この第三ループ29は、属性が境界である25個のセル16を結ぶことにより得られている。この第三ループ29は、多数の頂点を有している。
【0060】
図14では、25個のセル16がスプライン曲線で結ばれている。スプライン曲線は、複数の点を通過するスムースな曲線である。スプライン曲線では、隣り合う2つのセル16の間の線が、多項式で定義される。一般的には、3次多項式が用いられる。図13と14との対比から明らかなように、スプライン曲線が用いられることにより、スムースなループが得られる。
【0061】
好ましくは、ループ上のセル16の座標にスムージングがなされ、このセル16に対応する基準点が得られる(STEP10)。多数の基準点がスプライン曲線で結ばれることにより、新たなループが想定される(STEP11)。
【0062】
典型的なスムージングは、移動平均である。図15には、3点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図16には、5点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図17には、7点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図14から17の対比より明らかなように、移動平均によって輪郭のスムースが達成されうる。
【0063】
3点移動平均では、下記の3つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
【0064】
5点移動平均では、下記の5つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(4)ループの時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(5)ループの反時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
【0065】
7点移動平均では、下記の7つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(4)ループの時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(5)ループの反時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(6)ループの時計回りにおいて当該セル16に3番目に近いセル16
(7)ループの反時計回りにおいて当該セル16に3番目に近いセル16
【0066】
ループの形成のとき、基準点の一部が間引かれてスプライン曲線が画かれてもよい。図18には、5点移動平均で得られた基準点が半分(1点とばし)に間引かれて得られたループが示されている。図19には、5点移動平均で得られた基準点が1/3(2点とばし)に間引かれて得られたループが示されている。図19のループを備えたパターンが、図20及び21に示されている。このパターンは、多数のループ30を備えている。ループ30は、仮想球14の表面の上に、ランダムに配置されている。
【0067】
それぞれのループ30の、中心点が求められる。中心点の座標は、ループ30の輪郭上のセル及び輪郭の内側に存在するセルの座標の平均値を求めることで得られる。中心点の座標が、ループ30の輪郭の内側に存在するセルのみの座標の平均値を求めることで得られてもよい。中心点の座標が、ループ30の輪郭上に存在するセルのみの座標の平均値を求めることで得られてもよい。図22に、中心点32が示されている。ループ30がランダムに配置されているので、中心点32も、仮想球14の表面の上にランダムに配置されている。
【0068】
図9に示された第一ループ21に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。図11に示された第二ループ28に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。図12に示された第三ループ29に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。セル16がスプライン曲線で結ばれて得られるループ(図14参照)に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。スムージングがなされて得られるループ(図15−17参照)に基づいて、点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の点32が得られる。
【0069】
図23には、第一点32aと、この第一点32aに隣接する5つの点(32b−32f)が示されている。これらの点32b−32fのうち、第一点32aに最も近いものは、点32bである。以下、この点32bは、第二点と称される。図23において、符号34で示されているのは第一点32aと第二点32bとを結ぶ仮想線であり、矢印Lで示されているのは仮想線34の長さである。長さLは、第一点32aと第二点32bとの距離である。第一点32a及び第二点32bは、球面上に位置しているので、距離Lは円弧長として算出されうる。距離Lが弦長として算出されてもよい。
【0070】
図23において符号36で示されているのは、第一点32aを中心とする円である。この円は、半径Rを有する。半径Rは、距離Lに基づいて決定される。この実施形態では、半径Rは、距離Lの半分である。この円を輪郭とするディンプル8が、想定される。換言すれば、円の内部が、仮想球14の表面から凹陥させられる。ディンプル8の断面形状は、任意である。断面形状がシングルラジアスであるディンプル8が想定されてもよく、断面形状がダブルラジアスであるディンプル8が想定されてもよい。他の断面形状を有するディンプル8が想定されてもよい。
【0071】
それぞれの点32について、この点32を第一点32aとしたときの円36が想定される。さらに、それぞれの円36について、この円36を輪郭とするディンプル8が想定される。こうして、図2及び3に示されたディンプルパターンが得られる。点32がランダムに配置されているので、ディンプル8もランダムに配置される。
【0072】
前述の通り、半径Rが距離Lの半分とされているので、隣接するディンプル8同士が重なることはない。隣接するディンプル8同士は、接しているか、又は離間している。
【0073】
隣接するディンプル8同士を重ねる目的で、半径Rが距離Lの半分よりも大きい値とされてもよい。ランド10の面積を大きくする目的で、半径Rが距離Lの半分よりも小さい値とされてもよい。
【0074】
ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル8の深さは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、この深さは0.60mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。深さは、ディンプル8の最深点と仮想球14の表面との距離である。
【0075】
本発明において「ディンプルの容積」とは、ディンプル8の輪郭を含む平面とディンプル8の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。全てのディンプル8の容積の合計(総容積)は、ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から260mm3以上が好ましく、280mm3以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、この合計は380mm3以下が好ましく、350mm3以下がより好ましく、320mm3以下が特に好ましい。
【0076】
飛行性能の観点から、ディンプル8の面積の合計の、仮想球14の表面積に対する比率(占有率)は、55%以上が好ましく、60%以上が特に好ましい。
【0077】
実質的に球であるというゴルフボール2の本質が損なわれないとの観点から、ディンプル8の総数は250個以上が好ましく、300個以上が特に好ましい。それぞれのディンプル8が十分なディンプル効果を発揮するとの観点から、この総数は450個以下が好ましく、400個以下が特に好ましい。
【0078】
好ましくは、このゴルフボール2の差dRの絶対値は、1.0mm以下である。この絶対値は、ゴルフボール2の空力的対称性と相関するパラメータである。この絶対値が小さいほど、PH回転時の弾道とPOP回転時の弾道との差が小さい。以下、差dRに基づく評価方法が説明される。
【0079】
図24は、この評価方法が説明されるための模式図である。この評価方法では、第一回転軸Ax1が想定される。この第一回転軸Ax1は、ゴルフボール2の2つの極点Poを通過する。それぞれの極点Poは、ゴルフボール2の成形に用いられるモールドの最深点である。一方の極点Poは上型の最深点であり、他方の極点Poは下型の最深点である。ゴルフボール2は、第一回転軸Ax1を中心として回転する。この回転は、PH回転である。
【0080】
このゴルフボール2の仮想球14の表面に存在し、かつ第一回転軸Ax1と直交する大円GCが想定される。ゴルフボール2の回転のとき、この大円GCの周速が最も速い。さらに、ゴルフボール2の仮想球14の表面に存在し、第一回転軸Ax1と直交する2つの小円C1、C2が想定される。図25には、図24のゴルフボール2の一部の断面が模式的に示されている。図25の左右方向は、軸方向である。図25に示されるように、小円C1と大円GCとの中心角の絶対値は、30°である。図示されていないが、小円C2と大円GCとの中心角の絶対値も、30°である。これらの小円C1、C2により上記仮想球14が区画され、ゴルフボール2の表面のうちこれら小円C1、C2に挟まれた領域が特定される。
【0081】
図25における点P(α)は、ゴルフボール2の表面に位置し、かつ大円GCとの中心角がα°(degree)である点である。点F(α)は、点P(α)から第一回転軸Ax1に下ろした垂線Pe(α)の足である。矢印L1(α)で示されているのは、垂線Pe(α)の長さである。換言すれば、長さL1(α)は、点P(α)と第一回転軸Ax1との距離である。1つの断面において、21個の点P(α)に関し、長さL1(α)が算出される。具体的には、−30°、−27°、−24°、−21°、−18°、−15°、−12°、−9°、−6°、−3°、0°、3°、6°、9°、12°、15°、18°、21°、24°、27°及び30°の角度αに関し、長さL1(α)が算出される。21個の長さL1(α)が合計され、総長さL2(mm)が得られる。総長さL2は、図25に示された断面における、表面の形状に依存するパラメータである。
【0082】
図26には、ゴルフボール2の一部の断面が示されている。図26において紙面垂直方向が、軸方向である。図26において符号βで示されているのは、ゴルフボール2の回転角度である。0°以上360°未満の範囲において、0.25°刻みに、回転角度βが設定される。それぞれの回転角度ごとに、総長さL2が算出される。この結果、回転方向に沿って1440の総長さL2が得られる。換言すれば、ゴルフボール2の1回転によって所定箇所に刻々と出現する表面の形状に依存するパラメータに関するデータ群が、算出される。このデータ群は、30240個の長さL1に基づいて算出されたものである。図2及び3に示されたゴルフボール2のデータ群がプロットされたグラフが、図28に示されている。このグラフでは、横軸は回転角度βであり、縦軸は総長さL2である。このグラフから、総長さL2の最大値と最小値とが決定される。この最大値から最小値が減じられ、変動幅Rhが算出される。変動幅Rhは、PH回転における空力特性を表す数値である。
【0083】
さらに、第一回転軸Ax1と直交する第二回転軸Ax2が決定される。第二回転軸Ax2を中心としたゴルフボール2の回転は、POP回転である。PH回転と同様、POP回転についても、大円GCと2つの小円C1、C2が想定される。小円C1と大円GCとの中心角の絶対値は、30°である。小円C2と大円GCとの中心角の絶対値も、30°である。ゴルフボール2の表面のうちこれら小円に挟まれた領域において、1440の総長さL2が算出される。換言すれば、ゴルフボール2の1回転によって所定箇所に刻々と出現する表面の形状に依存するパラメータに関するデータ群が、算出される。図2及び3に示されたゴルフボール2のデータ群がプロットされたグラフが、図27に示されている。このグラフでは、横軸は回転角度βであり、縦軸は総長さL2である。このグラフから、総長さL2の最大値と最小値とが決定される。この最大値から最小値が減じられ、変動幅Roが算出される。変動幅Roは、POP回転における空力特性を表す数値である。
【0084】
第一回転軸Ax1と直交する直線は、無数に存在する。従って、大円GCも無数に存在する。ディンプル8に含まれる部分が最長である大円GCが選択され、変動幅Ro及び差dRが算出される。これに代えて、無作為に抽出された20個の大円GCに基づき、20個の変動幅が算出されてもよい。この場合、20個のデータの中の最大値が、Roとされる。
【0085】
変動幅Rhが小さいほど、PH回転時に大きな飛距離が得られうる。その理由は、変動幅Rhが小さいほど、乱流遷移が円滑に継続されるためであると推測される。この観点から、変動幅Rhは3.3mm以下が好ましい。変動幅Roが小さいほど、POP回転時に大きな飛距離が得られうる。その理由は、変動幅Roが小さいほど、乱流遷移が円滑に継続されるためであると推測される。この観点から、変動幅Roは3.3mm以下が好ましい。PH回転時及びPOP回転時のいずれにおいても大きな飛距離が得られうるとの観点から、変動幅Rh及び変動幅Roの両方が3.3mm以下であることが好ましい。
【0086】
。変動幅Rhから変動幅Roが減じられ、差dRが算出される。差dRは、ゴルフボール2の空力的対称性を表す指標である。本発明者が得た知見によれば、差dRの絶対値が小さいゴルフボール2は、空力的対称性に優れる。その理由は、PH回転時の表面形状とPOP回転時の表面形状との類似性が高いためと推測される。
【0087】
セル・オートマトン法以外の方法により、ディンプルがランダムに配置されてもよい。例えば、仮想球の表面にヒトが無作為に点の位置を定め、この点を中心とする円が想定されてもよい。
【0088】
図29は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボール102が示された正面図である。図30は、図29のゴルフボール102が示された平面図である。図29及び30から明らかなように、このゴルフボール102は、多数のディンプル108を備えている。それぞれのディンプル108の輪郭は、円である。これらディンプル108とランド110とにより、ゴルフボール102の表面にディンプルパターンが形成されている。
【0089】
このディンプルパターンでは、多数のディンプル108がランダムに配置されている。このディンプルパターンの設計では、ゴルフボール102の仮想球の表面に、多数の点が配置される。それぞれの点を中心とする円が、想定される。この円を輪郭とするディンプル108が、想定される。点の配置がランダムなので、ディンプル108の配置もランダムである。この設計方法は、効率の観点から、コンピュータとソフトウエアとが用いられて実施されることが好ましい。もちろん、手計算でも本発明は実施されうる。本発明の本質がコンピュータソフトウエアにあるわけではない。
【0090】
点の配置には、乱数が用いられる。仮想球の表面上の点は、球面座標(θ,φ)で表される。ここで、θは緯度を表し、φは経度を表す。Robin Greenの論文「Spherical Harmonic Lighting : The Gritty Details」によれば、球面座標(θ,φ)は、下記数式によって算出されうる。
(θ,φ)=(2cos−1(1−ξx)1/2,2πξy)
上記数式においてξx及びξyは、それぞれ、0以上1以下の実数の乱数である。
【0091】
乱数ξx及びξyを順次発生させ、球面座標(θ,φ)を算出し、この球面座標(θ,φ)を有する点を仮想球の表面の上に配置する。このとき、無制限に配置を行うと、点が集中するゾーンが生じうる。換言すれば、ディンプル108が集中するゾーンが生じうる。このゾーンの発生を避ける目的で、点の配置に制約が加えられる。具体的には、球面座標(θ,φ)を有する点と、仮想球の表面の上に既に存在している点であって球面座標(θ,φ)を有する点に最も近い点との距離が、算出される。この距離が所定範囲内である場合に、球面座標(θ,φ)を有する点が仮想球の表面の上に存在する点と認定される。球面座標(θ,φ)を有する点と、仮想球の表面の上に既に存在している点との距離が、所定範囲外である場合は、球面座標(θ,φ)を有する点は、仮想球の表面の上に存在する点と認定されない。なお、距離は、点と点とを結ぶ直線の長さでもよく、点と点とを結びかつ仮想球の表面に存在する円弧の長さでもよい。
【0092】
上記距離が直線の長さである場合、球面座標(θ,φ)を有する点が仮想球の表面の上に存在する点と認定される距離の範囲は、2.5mm以上が好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。この範囲は、6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下が特に好ましい。
【0093】
仮想球の表面の上の点の数が所定数に達するまで、
(a)乱数ξx及びξyの発生
(b)距離の算出
(c)距離が所定範囲内であるか否かの判定
が繰り返される。
【0094】
図31及び32には、前述の方法によって多数の点112がランダムに配置された仮想球114が示されている。この実施形態では、点112の数は324個である。この実施形態では、仮想球114の表面の上に既に存在している最も近い点112との距離が3.7mm以上4.0mm以下である場合に、当該球面座標(θ,φ)を有する点112が、仮想球114の表面の上に存在する点112と認定されている。これらの点に基づき、図23に示された方法にて、ディンプル108の直径が決定される。この決定により、図29及び30に示されたディンプルパターンが得られる。
【0095】
図35は、本発明のさらに他の実施形態に係るゴルフボール122が示された正面図である。図36は、図35のゴルフボール122が示された平面図である。このゴルフボール122も、その表面に多数のディンプル108を備えている。ディンプル108とランド110とにより、ゴルフボール122の表面にディンプルパターンが形成されている。
【0096】
このディンプルパターンの設計方法でも、図31及び32に示された多数の点112が、仮想球114の表面に想定される。本実施形態では、これらの点112の座標に修正が施される。修正は、ドロネー三角分割(Delaunay triangulation)によって達成されうる。この方法では、仮想球114の表面が多数の三角形(ドロネー領域)に分割される。以下、この分割の方法が説明される。
【0097】
この方法では、多数の点112から、任意の3つの点112が選択される。これら3つの点112を頂点とする三角形が、想定される。この三角形の外接円が、想定される。これら3つの点112以外の点112が、この外接円の中に含まれないとき、この三角形はドロネー領域と判定される。3つの点112の組み合わせの全てについて、判定がなされる。これにより、仮想球114の表面の全体が、多数のドロネー領域に分割される。図37には、図31に示された仮想球114がドロネー領域124に分割された状態が示されている。
【0098】
図38には、図37の仮想球114の一部が示されている。図38には、7個の点112A−112Gが示されている。図38にはさらに、6個のドロネー領域124A−124Fが示されている。それぞれのドロネー領域124は、点112と他の点112とが隣接しているか否かの判定に利用される。ドロネー領域124の1つの頂点112と、このドロネー領域124の他の頂点112とは、隣接しているとみなされる。
【0099】
点112Bはドロネー領域124Bの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Bの頂点である。従って、点112Bは点112Aと隣接している。点112Cはドロネー領域124Cの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Cの頂点である。従って、点112Cは点112Aと隣接している。点112Dはドロネー領域124Dの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Dの頂点である。従って、点112Dは点112Aと隣接している。点112Eはドロネー領域124Eの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Eの頂点である。従って、点112Eは点112Aと隣接している。点112Fはドロネー領域124Fの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Fの頂点である。従って、点112Fは点112Aと隣接している。点112Gはドロネー領域124Aの頂点であり、点112Aもドロネー領域124Aの頂点である。従って、点112Gは点112Aと隣接している。点112B−112G以外には、点112Aと隣接する点112は存在しない。以下、点112Aは基準点と称され、点112B−112Gは隣接点と称される。
【0100】
これら隣接点112B−112Gの座標が、平均される。基準点112Aの座標は、得られた平均値と置換される。置換後の基準点112A’が、図39に示されている。図38では、点112Dの点112Aまでの距離は、小さい。図39では、点112A’までの距離が小さい点112は存在しない。
【0101】
仮想球114の表面の上の全ての点112について、このような置換がなされる。置換後の仮想球114が、図40−42に示されている。図40には、置換後の点112’に基づくドロネー領域124’が示されている。図41及び42には、置換後の点112’が示されている。これらの点112’に基づき、図23に示された方法により、ディンプル108の直径が決定される。この決定により、図35及び36に示されたディンプルパターンが得られる。図35と図29との対比から明らかなように、座標の修正により、占有率が高められうる。
【0102】
座標の修正が、セル・オートマトン法によって得られた点32(図22参照)に対してなされてもよい。
【実施例】
【0103】
図2及び3に示された、実施例1のパターンを設計した。このパターンは、391個のディンプルを有している。図29及び30に示された、実施例2のパターンを設計した。このパターンは、324個のディンプルを有している。図35及び36に示された、実施例3のパターンを設計した。このパターンは、324個のディンプルを有している。
【0104】
さらに、図45及び46に示された、比較例1のディンプルパターンを設計した。このパターンは、直径が4.00mmであるディンプルAと、直径が3.70mmであるディンプルBと、直径が3.40mmであるディンプルCと、直径が3.20mmであるディンプルDとを備えている。それぞれのディンプルの断面形状は、円弧である。ディンプルの詳細は、下記の通りである。
種類 数 直径(mm) 深さ(mm) 容積(mm3)
A 120 4.00 0.1532 0.964
B 152 3.70 0.1532 0.825
C 60 3.40 0.1532 0.697
D 60 3.20 0.1532 0.618
【0105】
前述の方法により、それぞれのパターンの変動幅Ro及びRhを算出した。この結果が、下記の表1に示されている。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示されるように、実施例1−3のパターンのdRは小さい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明されたディンプルパターンは、ツーピースゴルフボールのみならず、ワンピースゴルフボール、マルチピースゴルフボール及び糸巻きゴルフボールにも適用されうる。
【符号の説明】
【0109】
2、102、122・・・ゴルフボール
8、108・・・ディンプル
10、110・・・ランド
12・・・メッシュ
14、114・・・仮想球
16・・・セル
21・・・第一ループ
28・・・第二ループ
29・・・第三ループ
30・・・ループ
32、112・・・点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)仮想球の表面の上に多数の点をランダムに配置するステップ、
(2)第一の点と、この第一の点に最も近い点である第二の点との間の距離を、算出するステップ、
(3)上記距離に基づいて、半径を決定するステップ、
(4)上記第一の点を中心とし、かつ上記半径を有する円を想定するステップ、
及び
(5)上記円を輪郭とするディンプルを想定するステップ
を含む、ゴルフボールのディンプルパターン設計方法。
【請求項2】
上記ステップ(3)において、上記距離の半分の値が半径とされる請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
上記ステップ(1)において、セル・オートマトン法に基づいて多数の点がランダムに配置される請求項1又は2に記載の設計方法。
【請求項4】
上記ステップ(1)において、セル・オートマトン法の反応・拡散モデルに基づいて多数の点がランダムに配置される請求項3に記載の設計方法。
【請求項5】
上記ステップ(1)が、
(1.1)複数の状態が想定されるステップ、
(1.2)仮想球の表面の上に多数のセルが想定されるステップ、
(1.3)それぞれのセルに、いずれかの状態が付与されるステップ、
(1.4)上記セルの状態及びこのセルの近傍に位置する複数のセルの状態に基づいて、当該セルの属性として、インサイド、アウトサイド及び境界のいずれかが付与されるステップ、
(1.5)境界のセルが結ばれることによって、ループが想定されるステップ、並びに
(1.6)上記ループ又はこのループに基づいて得られた他のループに基づいて点が決定されるステップ
を含む請求項4に記載の設計方法。
【請求項6】
上記ステップ(1)が、
(1.1)乱数を発生させるステップ、
(1.2)上記乱数に基づいて、上記仮想球の表面の上の座標を決定するステップ、
(1.3)上記座標を有する点と、仮想球の表面の上に既に存在している点との距離を算出するステップ、
及び
(1.4)上記距離が所定範囲内である場合に、上記座標を有する点を仮想球の表面の上に存在する点と認定するステップ
を含む、請求項1又は2に記載の設計方法。
【請求項7】
上記ステップ(1)が、
(1.5)上記仮想球の表面の上の1つの点を基準点とみなすステップ、
(1.6)上記基準点に隣接する複数の隣接点を決定するステップ、
(1.7)上記複数の隣接点の座標の平均を算出するステップ、
及び
(1.8)上記基準点の座標を、上記平均の座標と置換するステップ
をさらに含む請求項6に記載の設計方法。
【請求項8】
上記ステップ(1.6)が、
(1.6.1)上記仮想球の表面の上の全ての点を用いたドロネー三角分割により、多数の三角形が想定されるステップ、
及び
(1.6.2)上記基準点を頂点とする三角形の他の頂点を、上記隣接点とみなすステップ
を含む請求項7に記載の設計方法。
【請求項9】
その表面に多数のディンプルを備えており、
これらのディンプルがランダムに配置されており、
これらのディンプルのパターンが請求項1から8のいずれかに記載の方法で設計されたゴルフボール。
【請求項10】
下記ステップ(1)から(16)によって得られる変動幅Rh及び変動幅Roが、3.3mm以下である請求項9に記載のゴルフボール。
(1)ゴルフボールの両極を結ぶ線が、第一回転軸に想定されるステップ
(2)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第一回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(3)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第一回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(4)これらの小円によりゴルフボールが区画され、このゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(5)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(6)それぞれの点から上記第一回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(7)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(8)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Rhが算出されるステップ
(9)上記ステップ(1)で想定された第一回転軸に直交する第二回転軸が想定されるステップ
(10)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第二回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(11)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第二回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(12)これらの小円によりゴルフボールが区画され、ゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(13)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(14)それぞれの点から上記第二回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(15)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(16)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Roが算出されるステップ
【請求項11】
上記変動幅Rhと上記変動幅Roとの差dRの絶対値が1.0mm以下である請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項1】
(1)仮想球の表面の上に多数の点をランダムに配置するステップ、
(2)第一の点と、この第一の点に最も近い点である第二の点との間の距離を、算出するステップ、
(3)上記距離に基づいて、半径を決定するステップ、
(4)上記第一の点を中心とし、かつ上記半径を有する円を想定するステップ、
及び
(5)上記円を輪郭とするディンプルを想定するステップ
を含む、ゴルフボールのディンプルパターン設計方法。
【請求項2】
上記ステップ(3)において、上記距離の半分の値が半径とされる請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
上記ステップ(1)において、セル・オートマトン法に基づいて多数の点がランダムに配置される請求項1又は2に記載の設計方法。
【請求項4】
上記ステップ(1)において、セル・オートマトン法の反応・拡散モデルに基づいて多数の点がランダムに配置される請求項3に記載の設計方法。
【請求項5】
上記ステップ(1)が、
(1.1)複数の状態が想定されるステップ、
(1.2)仮想球の表面の上に多数のセルが想定されるステップ、
(1.3)それぞれのセルに、いずれかの状態が付与されるステップ、
(1.4)上記セルの状態及びこのセルの近傍に位置する複数のセルの状態に基づいて、当該セルの属性として、インサイド、アウトサイド及び境界のいずれかが付与されるステップ、
(1.5)境界のセルが結ばれることによって、ループが想定されるステップ、並びに
(1.6)上記ループ又はこのループに基づいて得られた他のループに基づいて点が決定されるステップ
を含む請求項4に記載の設計方法。
【請求項6】
上記ステップ(1)が、
(1.1)乱数を発生させるステップ、
(1.2)上記乱数に基づいて、上記仮想球の表面の上の座標を決定するステップ、
(1.3)上記座標を有する点と、仮想球の表面の上に既に存在している点との距離を算出するステップ、
及び
(1.4)上記距離が所定範囲内である場合に、上記座標を有する点を仮想球の表面の上に存在する点と認定するステップ
を含む、請求項1又は2に記載の設計方法。
【請求項7】
上記ステップ(1)が、
(1.5)上記仮想球の表面の上の1つの点を基準点とみなすステップ、
(1.6)上記基準点に隣接する複数の隣接点を決定するステップ、
(1.7)上記複数の隣接点の座標の平均を算出するステップ、
及び
(1.8)上記基準点の座標を、上記平均の座標と置換するステップ
をさらに含む請求項6に記載の設計方法。
【請求項8】
上記ステップ(1.6)が、
(1.6.1)上記仮想球の表面の上の全ての点を用いたドロネー三角分割により、多数の三角形が想定されるステップ、
及び
(1.6.2)上記基準点を頂点とする三角形の他の頂点を、上記隣接点とみなすステップ
を含む請求項7に記載の設計方法。
【請求項9】
その表面に多数のディンプルを備えており、
これらのディンプルがランダムに配置されており、
これらのディンプルのパターンが請求項1から8のいずれかに記載の方法で設計されたゴルフボール。
【請求項10】
下記ステップ(1)から(16)によって得られる変動幅Rh及び変動幅Roが、3.3mm以下である請求項9に記載のゴルフボール。
(1)ゴルフボールの両極を結ぶ線が、第一回転軸に想定されるステップ
(2)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第一回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(3)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第一回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(4)これらの小円によりゴルフボールが区画され、このゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(5)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(6)それぞれの点から上記第一回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(7)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(8)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Rhが算出されるステップ
(9)上記ステップ(1)で想定された第一回転軸に直交する第二回転軸が想定されるステップ
(10)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第二回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(11)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第二回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(12)これらの小円によりゴルフボールが区画され、ゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(13)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(14)それぞれの点から上記第二回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(15)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(16)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Roが算出されるステップ
【請求項11】
上記変動幅Rhと上記変動幅Roとの差dRの絶対値が1.0mm以下である請求項10に記載のゴルフボール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公開番号】特開2013−106937(P2013−106937A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220513(P2012−220513)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
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