説明

ゴルフボールを圧縮成形する方法

【課題】 ゴルフボールの型成形プロセスを改善する。
【解決手段】 球状の内側コア層を形成するステップと、圧縮モールド内で2つの半球シェルを形成するステップと、内側コアの周囲に外側コア層として2つの半球シェルを組み付けるステップと、を含むゴルフボールを製造する方法を提示する。この方法は、さらに、内側コア層を融かす温度で、内側コア層の周囲にあるシェルを圧縮成形することにより、一体の外側コア層を形成するように2つの半球シェルを硬化させるステップと、を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ゴルフボールを製造する方法に関し、詳しくは、ゴルフボールの製造に用いる圧縮成形技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴルファーは、自分の好みや腕前に応じて種々の特性が組み合わされたゴルフボールを選択する。いくつかの場合、ゴルフボールの内側コアを熱可塑性材料から形成することが望ましい。圧縮成形により熱可塑性内側コア層が形成され得るが、いくつかの場合、射出成形することにより熱可塑性内側コア層を形成することが望ましい。射出成形などのいくつかの製造プロセスにおいて、ゴルフボール材料内ガスまたはゴルフボール材料間ガスに起因して、ゴルフボールの各層が形成されるときに、ゴルフボールの層内および/または層間に、ガスポケット(気泡)が生じ得る。
【0003】
いくつかのゴルフボール特性が、ゴルフボール内の気泡から影響を受けることがある。気泡内のガスは、ゴルフボールを形成するのに使用される種々の材料よりもずっと圧縮され易いので、ゴルフボール特性のいくつかは、ゴルフボール内のガスポケットから悪影響を受ける恐れがある。例えば、ガスポケットが存在すると、クラブによる衝撃を好ましくない仕方で吸収してしまう。従って、このようなゴルフボールを打っても飛距離の限界が短い。
【0004】
気泡が生じる原因の一つとして、熱可塑性材料の水分レベルが高いことが考えられる。気泡が生じる他の原因としては、射出成形プロセスにおけるパラメータに関連する原因が考えられる。例えば、射出速度があまりにも速いと、気泡が生じる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造プロセスの際に、ゴルフボール内にガスポケットが形成されないようにする方法を提案する。例えば、そのような方法の一つとして、外面に溝が刻まれたコアを形成することがある。コアに外層が型成形されるとき、層間にガスが捕捉されることや空洞(ボイド)を形成することがないように、ガスが溝を通って流出するように意図されている。しかし、このプロセスは、層間にガスポケットが形成されないようにできるが、層内にガスポケットが形成されることには対処できない。
【0006】
本開示は、ゴルフボールの型成形プロセスを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様においては、本開示は、ゴルフボールを製造する方法に関する。この方法は、球状の内側コア層を形成するステップと、圧縮モールド内で2つの半球シェルを形成するステップと、内側コア層の周囲に外側コア層として2つの半球シェルを組み付けるステップと、を含み得る。さらには、この方法は、内側コア層を融かす温度で内側コア層の周囲に2つの半球シェルを圧縮成形することにより、一体の外側コア層を形成するように2つの半球シェルを硬化させるステップと、を含み得る。
【0008】
他の態様においては、本開示は、ゴルフボールを製造する方法に関する。この方法は、球状の内側コア層を形成するステップと、圧縮モールド内で2つの半球シェルを形成するステップと、内側コア層の周囲に外側コア層として2つの半球シェルを組み付けるステップと、を含み得る。さらには、この方法は、内側コア層の融点よりも少なくとも30℃高い温度で内側コア層の周囲に2つの半球シェルを圧縮成形することにより、一体の外側コア層を形成するように2つの半球シェルを硬化させるステップと、を含み得る。
【0009】
他の態様においては、本開示は、ゴルフボールに関する。このゴルフボールは、カバー層と、カバー層の半径方向内側に配置された外側コア層と、外側コア層の半径方向内側に配置された内側コア層と、を備え得る。外側コア層は、内側コア層の融点よりも少なくとも30℃高い硬化温度を有する材料から形成されているとよい。
【0010】
本発明の他のシステム、方法、特徴および利点は、以下の詳細な説明と図面から当業者には明らかとなろう。それらの追加のシステム、方法、特徴および利点のすべてが、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の詳細な説明およびこの要旨の範囲に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されることを意図している。
【0011】
本発明は、以下の図および説明を参照することによってさらによく理解されよう。各図に示されている構成要素については、必須の寸法を示すものではなく、本発明の原理を示すことを主眼としている。さらに、各図において、同様の参照符号は対応する部位を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示による例示的なゴルフボールの部分的断面図であって、このゴルフボールがスリーピース構造であることを示す図。
【図2】本開示による例示的なゴルフボールの部分的断面図であって、このゴルフボールがフォーピース構造であることを示す図。
【図3】内側コア層の周囲に外側コア層シェルを硬化させて外側コア層シェルを形成するのに用いられる例示的な圧縮モールドの拡大図。
【図4】図3のモールドの組み付けられた状態における断面図。
【図5】図3のモールド内で形成されるときの外側コア層シェルおよび内側コア層の断面図。
【図6】内側コア層の周囲に外側コア層を硬化させるために組み付けられた圧縮モールドの断面図。
【図7】図6に示される圧縮成形プロセスにより形成されたゴルフボールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の概要
本開示は、概して、ゴルフボールを製造するプロセスに関し、詳しくは、ゴルフボールの内側コア層内の気泡を減少させるプロセスに関する。
【0014】
ゴルフボールの性能特性は、少なくともその一部は、各層の構造および/または各層の材料組成によって確定される。ゴルフボールの全体的な性能特性は、ある意味では、個々の層からなる構成から影響を受け、また、層の組合せや配置と、ゴルフボールを形成する材料とを反映するものである。本開示で説明する概念は、種々の構成(適切な層数を含む)のゴルフボールに適し得るものである。いくつかの実施例においては、本明細書中に開示される方法は、3層構造のゴルフボールを製造するために用いられる。他の実施例においては、この方法は、4層構造のボールを製造するために用いられる。加えて、この方法は、5層以上を含む他の構造のゴルフボールを製造するために用いられ得る。
【0015】
さらには、本開示は、様々なゴルフボールの製造方法を開示しているが、当業者であれば、(ゴルフボール以外の)他の型式のボールの製造方法に、本開示の概念を適用することができよう。例えば、本開示の概念は、発射体(投射物)、玩具またはこれらの物品の個々の構成要素などの種々の層状物品を製造するのに適当である。
【0016】
3層ボール構造
図1は、一例としての3層ゴルフボール構造の部分的断面を示す。図1に示されるように、ゴルフボール100は、カバー層105と、カバー層105の半径方向内側に配置された外側コア層110と、外側コア層110の半径方向内側に配置された内側コア層115と、を有し得る。各層の寸法および材料は、所望の性能特性を実現するように選択され得る。
【0017】
カバー層105は、比較的軟らかくも耐久性のある材料で形成され得る。プレーヤにスピンの効いたボールの打感を与えるように、カバー層105は、例えば、ゴルフクラブで打たれたときに圧縮/収縮する材料から形成されている。材料は、比較的軟らかくも耐久性を備え、クラブおよび/またはゴルフコースから受けるスカッフィング(ダフり)に耐える。カバー層材料の例としては、ウレタン、アイオノマ混合物および/または他の適切な材料がある。
【0018】
さらに、図1は、一般的なディンプルパターンを有するカバー層105の外面を示している。ゴルフボール100上のディンプルパターンは、ゴルフボール100の弾道に影響を与え得るものであるが、本開示の実施形態に加えて種々の適切なディンプルパターンが使用され得る。いくつかの実施例においては、ゴルフボール100は、約300〜約400個のディンプル総数からなるディンプルパターンを有する。
【0019】
外側コア層110は、比較的硬く程よい弾力性のある材料から形成され得る。外側コア層110は、ゴルフボールを、ドライバで打ったときには比較的高い打ち出し角で比較的低いスピン速度のものとし、アイアンで打ったときには比較的高いスピン速度でコントロールし易いものとするように構成されている。これにより、ティーショットでは飛距離が生まれ、グリーン周辺ではスピンが効いてコントロールし易いゴルフボールが提供される。内側コア層115は、飛距離を生むことに有利な比較的硬い材料で形成されているとよい。
【0020】
複数のゴルフボール層の厚さは、所望の特性を実現するために、様々な厚さにされる。いくつかの実施例においては、内側コア層115は、約19mm〜約30mmの範囲の直径を有し得る。例えば、いくつかの実施例においては、内側コア層115は、約24mm〜約28mmの直径120を有する球状の層である。
【0021】
説明する目的で、開示の概念は、ゴルフボール100などのスリーピース・ゴルフボールに適用されるものとして示しているが、以下に詳細に説明する概念は、フォーピース・ゴルフボール構造についても適用され得る。とはいえ、上述の概念および/または以下の概念は、スリーピース構造、フォーピース構造、ファイブピース構造または他の適切な構造に適用可能であることが理解されよう。
【0022】
4層ボール構造
図2は、フォーピース構造のゴルフボール200の部分的断面を示す。図2に示されるように、ゴルフボール200は、互いに隣接して配置された4つの層を有し得る。例えば、いくつかの実施例においては、ゴルフボール200は、外側カバー層205と、この外側カバー層205の半径方向内側に配置された内側カバー層210と、を有する。ゴルフボール200は、さらに、内側カバー層210の半径方向内側に配置された外側コア層215と、この外側コア層215の半径方向内側に配置された内側コア層220と、を有し得る。どの層も、自己の層の半径方向内側に配置された種々の層を取り囲むか実質的に取り囲み得る。例えば、外側コア層215は、内側コア層220を取り囲んでいるか実質的に取り囲んでいる。
【0023】
本明細書および各図において、ゴルフボール200は、4つの層を有するものとして示されている。いくつかの実施例においては、少なくとも1つの追加の層が加えられる。例えば、いくつかの実施例においては、外側コア層215と内側カバー層210との間にマントル層が加えられる。いくつかの実施例においては、内側カバー層210と外側カバー層205との間に中間カバー層が挿入される。さらには、いくつかの実施例においては、内側コア層220と外側コア層215との間に中間コア層が挿入される。特定の性能特性および/または特質を実現するために、必要に応じて、開示の層のいずれかの側に他の層が加えられ得る。
【0024】
いくつかの実施例においては、ゴルフボール200は、ゴルフの規則に反しないように、少なくとも42.67mm(1.680インチ)の直径を有する。例えば、いくつかの実施例においては、ゴルフボール200は、約42.67mm〜約42.9mmの間のボール直径を有し、さらにいくつかの実施例においては、約42.7mmのボール直径を有する。ゴルフボール200は、約45g〜約45.8gの重量を有し、さらにいくつかの実施例においては、約45.4gのボール重量を有する。
【0025】
所望の性能特性を実現するために、ゴルフボール200の層の厚さは、様々な厚さにされる。いくつかの実施例においては、外側カバー層205の厚さは、約0.5mm〜約2mmである。加えて、いくつかの実施例においては、内側カバー層210の厚さは、約0.5mm〜約2mmである。いくつかの実施例においては、外側カバー層205および/または内側カバー層210の厚さは、約0.8mm〜約2mmである。いくつかの実施例においては、外側カバー層205および/または内側カバー層210の厚さは、約1mm〜約1.5mmである。
【0026】
いくつかの実施例においては、外側コア層215の厚さは、少なくとも約5mmである。いくつかの実施例においては、内側コア層220は、約21mm〜約30mmの直径225を有する球体である。いくつかの実施例においては、内側コア層220の直径225は、約24mm〜約28mmの範囲内にある。例えば、いくつかの実施例においては、直径225は、24mmである。他の実施例においては、直径225は、28mmである。
【0027】
内側コア層の形成
本開示によるゴルフボールの製造方法は、球状の内側コア層を形成することを含む。いくつかの実施例においては、内側コア層は、型成形(例えば、射出成形)によって形成される。いくつかの実施例においては、型成形される材料は、熱可塑性材料を含む。型成形ステップの前に、材料の水分レベルが所定の限度未満に維持されていることを確認するステップが取り入れられることがある。
【0028】
いくつかの実施例においては、開示の方法は、乾燥プロセスを行うことを含み、この乾燥プロセスは、乾燥空気を生成することができる耐湿性の乾燥器内に、内側コア層220の形成に使用される材料を密閉しておくことを含む。この乾燥プロセスは、50℃の環境に約2時間〜約24時間、材料を保管することを含み得る。加えて、水分レベルが所定の閾値を越えている場合に水分を除去するために、乾燥プロセスは、減圧および/または加熱することを含み得る。例えば、いくつかの実施例においては、閾値は、約2000ppmとされる。
【0029】
内側コア層220は、射出成形などの型成形プロセスを用いて形成され得る。射出成形は、射出成形機(図示せず)を使用して実施され得る。例えば、熱可塑性物質または他の適切な材料が、球状のモールド(図示せず)内へ注入される。当業者であれば、球形の形状に型成形する技術および機器に精通していよう。
【0030】
内側コア層220は、約190℃〜約220℃の範囲内の温度で射出成形され得る。射出成形プロセスに続いて、内側コア層220が射出成形機から取り出され、冷却プロセスを受け得る。いくつかの実施例においては、内側コア層220は、環境温度で冷却される。他の実施例においては、内側コア層220は、所定の条件に制御された空調環境で冷却される。いくつかの場合、冷却プロセスにおける冷却時間は、適切な継続時間に及ぶ。例えば、型成形プロセスに続いて内側コア層220の形状が維持されるように、冷却時間が決められる。いくつかの場合、冷却時間は、約1時間〜約8時間である。
【0031】
外側コア層シェルの圧縮成形
外側コア層は、2つの圧縮成形(加硫処理)ステップで形成され得る。最初に、外側コア層材料が、外側コア層形成モールド内に配置され、第1の加硫処理ステップを受けることで、一対の半加硫処理済み半球シェルが製造され得る。この第1の加硫処理ステップの後に、予備製造された(例えば、上述した方法で形成された)内側コア層が、圧縮モールドの一方の側から半球シェル内に配置され、この組み付けられたものが、さらに、圧縮モールドの他方の側から半球シェルと組み付けられる。そして、内側コア層と2つの外側コア層シェルとからなるアセンブリ(組付け体)が、第2の加硫処理ステップで、硬化され得る。
【0032】
図3は、上述した第1の加硫処理ステップにおいて外側コア層シェルを形成することと、上記の第2の加硫処理ステップにおいて内側コア層と外側コア層半球シェルの組付け体を硬化することとに用いられる一例としての圧縮モールド300の拡大図である。圧縮モールド300としては、複数の半球状キャビティ310を有する下側モールド305と、この下側モールド305と実質的に同一でかつ下側モールド305のキャビティ310と整列する複数の半球状キャビティを有する上側モールド(図3に示さず)と、を含み得る。これに加え、圧縮モールド300は、プレート315の上面325と、プレート315の底面330と、から延出している複数の突出部320を有する中間プレート315を含み得る。複数の突出部320は、下側モールド305内のキャビティ310に対応する一方で、上側モールド内のキャビティにも対応する。圧縮モールド300は、図示する目的で、3つのキャビティを有するものとして示されている。圧縮モールド300内のキャビティの数は、当業者の製造上の意向に応じて変化し得る。
【0033】
図4は、図3の圧縮モールド300の長手方向軸327に対してライン4に沿って切り出した圧縮モールド300の断面を示す。図4においては、圧縮モールド300は、組み付けられた形で示されている。図4に示されるように、突出部320がキャビティ310内へ延出するように、中間プレート315が下側モールド305の頂部に配置され得る。加えて、キャビティ340を有する上側モールド335が中間プレート315の上方に被せられると、突出部320が上方向にキャビティ340内へ延出する。このように組み付けられると、圧縮モールド300は、上半球空洞345と下半球空洞350を画定し得る。
【0034】
外側コア層材料は、半球シェル内の上半球空洞345内および下半球空洞350内へ型成形され得る。例えば、図5は、圧縮モールド300の上半球空洞345内に形成された第1の半球状外側コアシェル355と、圧縮モールド300の下半球空洞350内に形成された第2の半球状外側コアシェル360と、の断面を示す。図5はさらに、上述した方法で形成された内側コア層220の断面を示している。
【0035】
上述したように、約19mm〜約30mmの範囲内の直径を有する内側コア層を収容する寸法の内側シェルキャビティを形成するために、中間プレート315の突出部320の直径は、約19mm〜約30mmの範囲内にされ得る。加えて、下側モールド305のキャビティ310および上側モールド335のキャビティ340の直径は、少なくとも38mmにされ得る。従って、圧縮モールド300は、少なくとも4mmの厚さを有する半球状外側コア層シェルを形成するように構成されている。いくつかの実施例においては、圧縮モールド300は、少なくとも5mmの厚さの半球状外側コア層シェルを形成するように構成されている。
【0036】
内側コア層の周囲への外側コア層シェルの型成形
図6は、上記に簡潔に説明した第2の加硫処理ステップを示す。図6に示されるように、圧縮モールド300から中間プレート315が取り除かれ、下側モールド305内および上側モールド335内において、内側コア層220の周囲に半球シェル355,360が組み付けられ得る。いくつかの実施例においては、内側コア層220と外側コア層215との接着を高めるために、半球シェル355,360内に配置する前に、内側コア層220の表面が粗面化される。いくつかの実施例においては、ゴルフボール200の耐久性および反発特性を向上させるために、半球シェル355,360内に内側コア層220を配置する前に、内側コア層220の表面が接着剤で予備コーティングされている。
【0037】
いくつかの実施例においては、内側コア層220を半球シェル355,360で覆うことは、圧縮モールド300内で行われることに留意されたい。例えば、内側コア層220と半球シェル355,360との組み付けは、キャビティ340,310内に、それぞれ、半球シェル355,360を残し、下側半球シェル360内に内側コア層220を配置してから、内側コア層220を覆う位置かつ下側モールド305の上の位置に上側モールド335を再配置すること(このとき半球シェル355はまだキャビティ340内の所定の位置にある)によってなされる。あるいは、いくつかの実施例においては、最初に、圧縮モールド300から半球シェル355,360が取り出され、次に、内側コア層220が、手か道具を使って、半球シェル355,360に覆われる。組み付けられた部品は、キャビティ310内に配置され、上側モールド335は、下側モールド305の上の位置かつ組み付けられた部品を覆う位置に再配置される。圧縮モールド300の外で部品を組み付ける場合には、各部品は、圧縮モールド300内へ戻される前に再配向される。例えば、図6に示されるように、半球シェル355と半球シェル360との境界線は、下側モールド305と上側モールド335との間の境界線と直交する向き(または他の所望の角度で交わるように)にされる。
【0038】
組み付けられた部品が圧縮モールド300内に固定されると、第2の加硫処理ステップが実行され、この加硫処理ステップにおいて、矢印365で示される方向に加圧されるとともに、波線370で示されるように加熱され得る。圧力は、種々の適切な方法で加えればよい。加えて、適切な方法で加熱される。例えば、外部の加熱エレメント、あるいは下側モールド305および/または上側モールド335内に組み込まれている加熱エレメントによって加熱される。当業者であれば、加硫処理の条件を揃えるための適切な方法に精通していよう。加圧および加熱を施し、内側コア層220の周囲に半球シェル355,360を圧縮成形することによって、一体の外側コア層215を形成するように半球シェル355,360を硬化させる。
【0039】
いくつかの実施例においては、内側コア層220の周囲に半球シェル355,360を硬化させることは、内側コア層220を融かす温度で実行される(図6において、内側コア層220が液体で満たされている模様で示されている)。いくつかの実施例においては、第2の加硫処理ステップは、内側コア層材料の融点よりも少なくとも30℃高い温度で、内側コア層220の周囲に半球シェル355,360を圧縮成形することによって、一体の外側コア層215を形成するように半球シェル355,360を硬化させることを含む。従って、外側コア層215は、内側コア層材料の融点よりも少なくとも30℃高い硬化温度を有する材料から形成されなければならない。第2の加硫処理ステップにおいて、内側コア層220を融かすことによって、内側コア層220から空気や種々の他の気体が放出され得る。
【0040】
第2の加硫処理ステップの適切な条件としては、120℃〜190℃の硬化温度と、5分間〜20分間の硬化時間とがある。いくつかの実施例においては、外側コア層215の硬化温度は、内側コア層220の熱可塑性材料の融点よりも少なくとも30℃高い。いくつかの実施例においては、所望のゴム架橋構造を得るためかつ加硫処理プロセスにおいて内側コア層を融かすために、硬化温度は、少なくとも約140℃にされる。例えば、いくつかの実施例においては、硬化温度は、ほぼ140℃にされる。
【0041】
いくつかの実施例においては、内側コア層220の全部あるいは一部が融解している状態で硬化後処理をする際に内側コア層220の変形を防止できる適切な厚さを有する外側コア層215を提供することが望ましい。いくつかの実施例においては、外側コア層215の厚さは、製造の際に内側コア層220を保護できるように少なくとも5mmにされる。
【0042】
外側コア層の材料
外側コア層215は、熱硬化性材料から形成され得る。例えば、いくつかの実施例においては、外側コア層215は、ポリブタジエンゴム化合物を架橋することによって形成される。他のゴムがポリブタジエンと組み合わせて使用される場合、ポリブタジエンは、主成分の化合物として含まれ得る。例えば、ベースゴム全体の重量におけるポリブタジエンの重量の比率は、50%以上とされ、いくつかの実施例においては、80%以上とされる。いくつかの実施例においては、外側コア層215は、モル比で60モル%以上のシス1,4−ポリブタジエンを含むプリブタジエンゴム化合物から形成されている。例えば、いくつかの実施例においては、モル比は、80モル%以上である。
【0043】
いくつかの実施例においては、シス1,4−ポリブタジエンは、ベースゴムとして使用され、他の材料と混合される。いくつかの実施例においては、100重量部のゴム化合物に基づいて、シス1,4−ポリブタジエンの量は、少なくとも50重量部にされる。このベースゴムに様々な添加物が加えられ、化合物が形成される。添加物としては、架橋剤や充填剤がある。いくつかの実施例においては、架橋剤は、ジアクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸マグネシウムである。いくつかの実施例においては、ジアクリル酸亜鉛は、優れた弾力性をもたらす。
【0044】
いくつかの実施例においては、充填剤は、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムである。いくつかの実施例においては、優れた特性を有するという理由で酸化亜鉛が選択される。いくつかの実施例においては、材料の比重を増加させるために充填剤が使用される。例えば、タングステンなどの金属粉末が充填剤として代替的に使用され、所望の比重を実現する。いくつかの実施例においては、外側コア層215の比重は、約1.05g/cm〜約1.35g/cmの範囲内にある。
【0045】
いくつかの実施例においては、希土類触媒を使用して合成されたポリブタジエンであることが好ましい。このポリブタジエンを使用することによって、弾力性に優れたゴルフボール200を提供することができる。希土類触媒の例としては、ランタノイド(ランタン系列)希土類化合物、有機アルミニウム化合物、およびアルモキサンとハロゲンを含有する化合物があるが、ランタノイド希土類化合物であることが好ましい。ランタノイド希土類基触媒を使用して得られるポリブタジエンは、通常、ランタノイド希土類(原子番号57番〜71番)化合物のどれかとの組合せを用いるが、特にはネオジム化合物であることが好ましい。
【0046】
いくつかの実施例においては、ポリブタジエンゴム化合物は、少なくとも約0.5重量部〜約5重量部のハロゲン化有機硫黄化合物を含む。いくつかの実施例においては、ポリブタジエンゴム化合物は、少なくとも約1重量部〜約4重量部のハロゲン化有機硫黄化合物を含む。ハロゲン化有機硫黄化合物は、ペンタクロロチオフェノール、2−クロロチオフェノール、3−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,3−クロロチオフェノール、2,4−クロロチオフェノール、3,4−クロロチオフェノール、3,5−クロロチオフェノール、2,3,4−クロロチオフェノール、3,4,5−クロロチオフェノール、2,3,4,5−テトラクロロチオフェノール、2,3,5,6−テトラクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、2−フルオロチオフェノール、3−フルオロチオフェノール、4−フルオロチオフェノール、2,3−フルオロチオフェノール、2,4−フルオロチオフェノール、3,4−フルオロチオフェノール、3,5−フルオロチオフェノール、2,3,4−フルオロチオフェノール、3,4,5−フルオロチオフェノール、2,3,4,5−テトラフルオロチオフェノール、2,3,5,6−テトラフルオロチオフェノール、4−クロロテトラフルオロチオフェノール、ペンタヨードチオフェノール、2−ヨードチオフェノール、3−ヨードチオフェノール、4−ヨードチオフェノール、2,3−ヨードチオフェノール、2,4−ヨードチオフェノール、3,4−ヨードチオフェノール、3,5−ヨードチオフェノール、2,3,4−ヨードチオフェノール、3,4,5−ヨードチオフェノール、2,3,4,5−テトラヨードチオフェノール、2,3,5,6―テトラヨードチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、2−ブロモチオフェノール、3−ブロモチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、2,3−ブロモチオフェノール、2,4−ブロモチオフェノール、3,4−ブロモチオフェノール、3,5−ブロモチオフェノール、2,3,4−ブロモチオフェノール、3,4,5−ブロモチオフェノール、2,3,4,5−テトラブロモチオフェノール、2,3,5,6−テトラブロモチオフェノールおよびこれらの亜鉛塩などの金属塩、ならびにこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0047】
内側コア層の材料
本開示のプロセスは、120℃よりも融点の低い種々の熱可塑性材料に適する。いくつかの実施例においては、適切な熱可塑性材料としては、例えば、E.I.Dupont de Nemous and Company社製のサーリン(登録商標)などのアイオノマ樹脂がある。いくつかの実施例においては、内側コア層は、高度に中和された酸性ポリマ化合物から形成される。内側コア層を形成するのに適切な高度に中和された酸性ポリマ化合物としては、例えば、HPF1000,HPF2000、HPF AD1024、HPF AD1027、HPF AD1030、HPF AD1035、 HPF AD1040などのHPF樹脂があり、これらはすべてE.I.Dupont de Nemous and Company社製である。
【0048】
酸性ポリマは、マグネシウム、ナトリウム、亜鉛またはカリウムなどの適切な陽イオン源を用いて、80%以上(100%までを含む)まで中和され得る。内側コア層の形成に用いるのに適切な高度に中和された酸性ポリマ化合物は、高度に中和された酸性ポリマ化合物を含むとともに、選択的に、添加剤、充填剤および/または融解流動性改良剤を含み得る。
【0049】
適切な添加剤および充填剤としては、例えば、膨張剤ないし発泡剤、光学的光沢剤、着色剤、蛍光剤、白色剤、UV吸収材、光安定剤、消泡剤、酸処理用の酸、酸化防止剤、安定剤、柔軟剤、芳香性化合物、可塑剤、衝撃改質剤、酸性コポリマろう状物質、界面活性剤がある。いくつかの実施例においては、添加物および充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、雲母、タルク(滑石)、土、シリカ(ケイ土)およびケイ酸鉛などの無機充填剤、ならびに他の種類の有機充填剤がある。いくつかの実施例においては、添加剤および充填剤としては、例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末およびその他の比重の高い金属粉末の充填剤がある。いくつかの実施例においては、添加剤および充填剤は、粉砕再生材料すなわち粉砕後に再利用されたコア材料を含む。
【0050】
種々の適切な融解流動性改良剤が、高度に中和された酸性ポリマ化合物に含まれ得る。適切な融解流動性改良剤の例としては、例えば、脂肪酸および脂肪酸塩、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル酸塩、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ尿素、多価アルコール、ならびにこれらの組合せがある。
【0051】
内側コア層は、射出成形または圧縮成形などの種々の適切なプロセスによって形成され得る。内側コア層を形成する射出成形プロセスの一例においては、射出成形機の温度は、約190℃〜約220℃に設定される。
【0052】

内側コア層内に気泡を形成させない開示のゴルフボール製造法の効果を検証するため、他の方法との比較試験を行った。この試験においては、100%HPF2000からなる100個の内側コアを製造し、これを50個ずつのサンプルに分けた。内側コア層の各々の直径は、24mmであった。
【0053】
外側コア層は、次の表1に示す組成の化合物Aから製造した。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示されるように、ゴム化合物Aは、ベースゴムとしてのTAIPOL BR0150と、充填剤および添加剤として含まれるアクリル酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸バリウムおよび過酸化物と、から形成されている。充填剤および添加剤は、表に示される量(100ポンドのTAIPOL BR0150当たりのポンド数)で含まれていた。
【0056】
50個ずつの2つのグループの試験は、以下のように行った。試験グループAについては、内側コア層の50個の部品に、上述した加硫処理プロセス(内側コア層の融点よりも少なくとも30℃高い温度で内側コア層の周囲に外側コア層シェルを硬化させる第2の加硫ステップを実行すること)を施した。試験グループBについては、内側コア層に、最初の射出成形の後に、さらなるプロセスを施さなかった。100個の部品の各々を切り開いて、内側コア層の断面に何らかの空洞(気泡)が存在するかを調べた。その結果、グループAの50個のどの部品にも気泡はなかった。これに対し、グループBの50個の部品のうち6個の部品に気泡の存在が認められた(注:グループBについて、内側コア層が充分に透けていれば、断面を切り出さなくても光に照らすだけで部品を調べることができる)。
【0057】
カバー層
図7は、上述した加硫処理プロセスで完全に硬化された外側コア層215を含む、完成品のゴルフボール200を示す。図7に示されるように、1つまたは複数のカバー層が、外側コア層215を取り囲むように型成形され得る。
【0058】
図7に示されるように、ゴルフボール200は、外側カバー層205および内側カバー層210を有し得る。図7はさらに、外側カバー層205に形成されたディンプル230を示している。上で述べた通り、ディンプル230は、種々の適切な構成にされ得る。
【0059】
いくつかの実施例においては、カバー層は、熱可塑性材料または熱硬化性材料から形成される。例えば、いくつかの実施例においては、内側カバー層210および/または外側カバー層205は、アイオノマ樹脂、高度に中和された酸性ポリマ化合物、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂のうちの少なくとも1つを含む熱可塑性材料から形成され得る。いくつかの実施例においては、内側カバー層210または外側カバー層205は、アイオノマ樹脂、ポリウレタン樹脂、または高度に中和された酸性ポリマ化合物から形成されることがさらに好ましい。いくつかの実施例においては、内側カバー層210は、外側カバー層205と同じ種類の材料から形成される。他の実施例においては、内側カバー層210は、外側カバー層205とは異なる種類の材料から形成される。
【0060】
本発明の様々な実施例について説明したが、この説明は、例示するためのものであり、限定するためのものではない。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、さらに多くの実施形態および応用が可能であることが明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物に照らすこと以外によっては制限されない。本開示で説明した種々の実施例における特徴は、本開示で説明した以外の実施例にも含まれ得る。また、添付の特許請求の範囲内において、様々な変更や変形がなされ得る。
【符号の説明】
【0061】
200…ゴルフボール
220…内側コア層
305…下側モールド
335…上側モールド
355…半球状外側コアシェル(半球シェル)
360…半球状外側コアシェル(半球シェル)
365…矢印
370…波線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状の内側コア層を形成するステップと、
圧縮モールド内で2つの半球シェルを形成するステップと、
上記内側コア層の周囲に外側コア層として上記2つの半球シェルを組み付けるステップと、
上記内側コア層を融かす温度で上記内側コア層の周囲に上記2つの半球シェルを圧縮成形することにより、一体の外側コア層を形成するように上記2つの半球シェルを硬化させるステップと、
を含む、ゴルフボールを製造する方法。
【請求項2】
上記内側コア層を形成するステップは、熱可塑性物質を型成形することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記熱可塑性物質は、高度に中和された酸性ポリマ化合物であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記内側コアを形成するステップは、約21mm〜約30mmの範囲の直径を有する内側コアを射出成形することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記外側コア層は、ポリブタジエンゴムを含有し、少なくとも4mmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記圧縮成形することは、約120℃〜約190℃の硬化温度で約5分〜約20分間、上記外側コア層を加硫処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記内側コア層の融点よりも約30℃高い硬化温度で上記2つの半球シェルを硬化させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
約140℃で上記2つの半球シェルを硬化させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
球状の内側コア層を形成するステップと、
圧縮モールド内で2つの半球シェルを形成するステップと、
上記内側コア層の周囲に外側コア層として上記2つの半球シェルを組み付けるステップと、
上記内側コア層の融点よりも少なくとも30℃高い温度で上記内側コア層の周囲に上記2つの半球シェルを圧縮成形することにより、一体の外側コア層を形成するように上記2つの半球シェルを硬化させるステップと、
を含む、ゴルフボールを製造する方法。
【請求項10】
上記内側コア層を形成するステップは、熱可塑性物質を型成形することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記熱可塑性物質は、高度に中和された酸性ポリマ化合物であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記内側コア層を形成するステップは、上記内側コア層を射出成形することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
上記外側コア層は、ポリブタジエンゴムを含有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
上記圧縮成形することは、約120℃〜約190℃の硬化温度で約5分〜約20分間、上記外側コア層を加硫処理することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
約140℃で上記2つの半球シェルを硬化させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
カバー層と、
上記カバー層の半径方向内側に配置された外側コア層と、
上記外側コア層の半径方向内側に配置された内側コア層と、
を備え、
上記外側コア層は、上記内側コア層の融点よりも少なくとも30℃高い硬化温度を有する材料から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【請求項17】
上記内側コア層は、熱可塑性物質から形成されていることを特徴とする請求項16に記載のゴルフボール。
【請求項18】
上記熱可塑性物質は、高度に中和された酸性ポリマ化合物であることを特徴とする請求項17に記載のゴルフボール。
【請求項19】
上記内側コア層は、射出成形されたものであることを特徴とする請求項16に記載のゴルフボール。
【請求項20】
上記外側コア層は、ポリブタジエンゴムを含有することを特徴とする請求項16に記載のゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−66710(P2013−66710A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−205587(P2012−205587)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)