説明

ゴルフ用のソケットの製造方法

【課題】 ゴルフ用のソケットに施される装飾が長期に亙って剥離や摩耗することなく保持され、しかも成形工程に手間を要さずバリエーションに富んだ装飾を可能とするゴルフ用のソケットの製造方法を提供する。
【解決手段】 ソケット本体4の表面に形成した凹嵌部5の底部に、任意の文字や図形等の装飾を施した装飾層6を配置させ、その後、該ソケット本体4をソケットの最終外形状を有する成形用金型8内に配置させた後に、該凹嵌部5と、成形用金型の内壁面9との間に形成される間隙10に、透明或は、半透明の合成樹脂を射出成形することを特徴とするゴルフ用のソケットの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴルフクラブのヘッドとシャフトとの接合部に装着されているゴルフ用のソケットの製造方法に関し、該ソケットの表面所望部に、文字や図形等の装飾を一体的に形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、ゴルフクラブのヘッドとシャフトとの接合部に装着されているソケットは、主にセルロース・アセテート・ブチレート樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂材料を用いて射出成形法や、旋盤等による削り出しにより成形されており、一般にその外観は、黒色単色の単調なデザインに仕上がっている。又、このようなソケットに装飾を施す方法としては、通常、該ソケットを表面仕上げした上に、スクリーン印刷や転写マーク等の方法により任意の文字や図形等を施した装飾層を形成する方法や、ソケット表面の一部或いは、全面にアルミ等を蒸着させることにより、金属光沢を有する装飾層を得る方法等が公知となっている。しかし、このような装飾方法にあっては、いずれも前記装飾層がソケットの表面に露出して配置される構成であるため、長期の使用による衝撃や摩擦等によって、前記装飾層が剥がれ落ちたり、摩耗して見にくくなるなどの不体裁な外観を呈するといった問題があった。
【0003】そこで、上記の問題点を解決する方法として、例えば、実公昭55−21710号に開示され、図9R>9に示すように、合成樹脂製径小管部12と、透明の合成樹脂製径大管部13との間に金属箔等の金属色中間層14を介装一体化させ、これを任意幅に輪切りにして装飾リング15を形成し、その後、該装飾リング15をソケット管16の軸方向断面適宜箇所に介装して接着することにより装飾ソケット17を得る方法が提案され、公知となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の方法においては、装飾層である金属色中間層14が、その外周側から透明の合成樹脂製径大管部13により一体的に保護される構成であるため、前記装飾層の光沢と色彩を長期に亙って保持させることは出来るが、該ソケット表面に表出されるデザインは、金属色の単なるリング状の模様として形成されるのみで、スクリーン印刷や転写マーク等の装飾方法に比して、所望とする文字や図形等、バリエーションに富んだデザインを装飾することができないといった問題があった。
【0005】又、上記の方法では、予め金属箔を合成樹脂製径小管部12と合成樹脂製径大管部13との間に介装させて装飾リング15を成形する工程と、該装飾リング15を輪切りにする工程、そして、前記輪切りにされた装飾リング15をソケット管16の軸方向断面適宜箇所に介装して接着する工程とからなり、その後、該ソケット管16に介装された前記装飾リング15の周囲をソケットの外形状に沿うように切削する工程が必要で、一つのソケットが成形されるまでに非常に手間がかかり、工程が複雑で製造費用が高くなるといった問題を有するものであった。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、上記装飾ソケットの製造方法における従来の問題点に鑑み、該ソケットに施される装飾が長期に亙って剥離や摩耗することなく保持され、しかも成形工程に手間を要さずバリエーションに富んだ装飾を可能とするゴルフ用のソケットの製造方法を提供することを目的としてなされたものである。上記目的を達成するために、本発明は、円錐台形状を有するソケットの適宜表面部に、文字や図形等の装飾を一体的に配置させる方法であって、予めソケットの適宜表面部に、任意形状の凹嵌部を形成しておき、該凹嵌部の底部に装飾層を配置させた後、該凹嵌部の開口端を透明或いは、半透明の合成樹脂で充填被覆することを特徴とする方法とした。
【0007】その方法は、予め射出成形法により成形された円錐台形状を有するソケット本体の適宜表面部に任意形状の凹嵌部を形成しておき、該凹嵌部の底部に、任意の文字や図形等の装飾を施した装飾層を配置させ、その後、該ソケット本体を、ソケットの最終外形状を有する成形用金型内に配置させ、該ソケット本体の凹嵌部と、成形用金型の内壁面との間に形成される間隙に、透明或いは、半透明の合成樹脂を射出成形することによって充填被覆する方法である。
【0008】上記の方法における装飾層は、例えば、該凹嵌部の底部にスクリーン印刷や熱転写等の方法により直接文字や図形等を印刷させたものであっても良く、又、予め、紙或いは、合成樹脂フィルムからなる基体の上面に、任意の文字や図形等を印刷しておき、これを該凹嵌部と合致する形状に打ち抜いてラベル状としたものを、両面テープ或いは、接着剤等で該凹嵌部の底部に接着配置させるものであっても良い。又その他、前記装飾層は、該凹嵌部の底部に所望とする文字や図形等を刻設して成形された装飾溝内に、ソケット本体と異なる色彩の樹脂或いは、塗料を充填させて形成されるものであっても良い。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、図面と共に詳記する好適な実施例により、本発明を説明する。図1は、本実施例の方法により得られたソケット1をゴルフクラブのヘッド2とシャフト3との接合部に装着した状態を表す外観説明図であり、図2は、前記ソケットの正面図、図3は、前記ソケットの縦方向断面図、図4〜図5は、本実施例のソケットの製造方法を表す説明図である。
【0010】図2〜図3に示すように、本実施例の方法により製造されたソケット1は、成形品として弾力性と伸びがあり、シャフト挿入時の潤滑性や接着性の良好な樹脂、例えば、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ABS・ポリアミドアロイ樹脂、その他これらと同効質の樹脂材料で黒色単色に形成された円錐台形状のソケット本体4と、該ソケット本体4の表面適宜箇所に凹設された凹嵌部5の底部に配置される装飾層6、そして、該装飾層6の外周に配置され、該凹嵌部5の開口端を充填被覆する透明或いは、半透明の合成樹脂層7とから構成されており、前記装飾層6は、前記透明或いは、半透明の合成樹脂層7を介して、外部から視認可能な状態に配置されている。
【0011】即ち、上記構成のソケット1を製造するには、先ず、射出成形法により図4に示すようなソケット本体4を形成する。該ソケット本体4は、その上端から下端に向けてテーパー形状に広がる略円錐台形状に形成されていると共に、該ソケット本体4の表面部の下端近傍には、適宜深さの環状溝型の凹嵌部5が一体的に形成されている。その後、前記凹嵌部5の底部に、該凹嵌部5と略同一形状に形成された装飾層6を配置させる。ここで使用する前記装飾層6は、基体となる紙或いは、合成樹脂フィルムの上面に、スクリーン印刷や熱転写等の方法により任意の文字や図形等の装飾が施された装飾ラベルからなり、これを該凹嵌部5と合致する形状に形成した後に、該凹嵌部の底部に両面テープや接着剤等で接着配置させる。次に、上記のように形成されたソケット本体4を、図5に示すように、ソケットの最終外形状を有する成形用金型8内に配置させ、該ソケット本体4の凹嵌部5と、成形用金型8の内壁面9との間に形成される間隙10に、透明或いは、半透明の合成樹脂を射出成形し、該凹嵌部5の開口端を充填被覆させることによって、本実施例のソケット1を成形する。
【0012】尚、前記ソケット本体4の表面に形成される凹嵌部5は、上記実施例に示したように、環状の溝型に形成される形態とする他、図6に示すように、該ソケット本体4の軸方向の略中間部に段部を形成した段差型の形態とすることもでき、又、図7に示すように、該凹嵌部5を環状とせず、該ソケット本体4の表面所望部に任意の形で点在させる形態として実施することもできる。
【0013】また、本発明の方法で使用される前記装飾層6の形態は、上記の装飾ラベルを使用する方法の他、例えば、該ソケット本体4の凹嵌部5の底部にスクリーン印刷や熱転写等の方法により直接任意の文字や図形等を印刷する方法としても良く、又、図8に示すように、前記ソケット本体4の凹嵌部5の底部に任意の文字や図形等を刻設して装飾溝11を形成し、該装飾溝11内に、該ソケット本体4と異なる色彩の樹脂或いは、塗料を充填させて装飾層6を形成する方法としても良い。
【0014】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。即ち、本発明の製造方法によれば、ゴルフ用のソケットの適宜表面部に凹嵌部を形成し、該凹嵌部の底部に装飾層を配置させて後、その外周に該凹嵌部の開口端を被覆するように透明或いは、半透明の合成樹脂を充填する方法であることから、該装飾層に施される文字や図形等の装飾は、透明の合成樹脂層を介して外部より視認できるように配置されるようになる。従って、前記装飾層のデザインを多様化させることで、バリエーションに富んだ装飾ソケットを成形することができ、又、前記装飾層の表面部が前記透明な合成樹脂層で被覆された構成となるため、前記装飾層の摩耗や剥離を防止でき、長期に亙ってその美観を維持させることができる。又、製造工程にあっては、透明の合成樹脂の射出成形により、該凹嵌部内に配置された装飾層を一体的に充填被覆するものであり、従来のように工程に手間を要さずに簡単な方法で装飾ソケットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の方法により得られたソケットをゴルフクラブのヘッドとシャフトとの接合部に装着した状態を表す外観説明図。
【図2】本実施例のソケットの正面図。
【図3】本実施例のソケットの縦方向断面図。
【図4】本実施例のソケットの製造方法を表す説明図である。
【図5】本実施例のソケットの製造方法を表す説明図である。
【図6】ソケットに設けられる凹嵌部の他の実施形態を示す断面説明図。
【図7】ソケットに設けられる凹嵌部の他の実施形態を示す断面説明図。
【図8】装飾層の他の実施形態を示す断面説明図。
【図9】従来の装飾ソケットの製造方法を表す断面説明図。
【符号の説明】
1 ソケット
2 ヘッド
3 シャフト
4 ソケット本体
5 凹嵌部
6 装飾層
7 合成樹脂層
8 成形用金型
9 内壁面
10 間隙
11 装飾溝
12 合成樹脂製径小管部
13 合成樹脂製径大管部
14 金属色中間層
15 装飾リング
16 ソケット管
17 装飾ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 円錐台形状を有するソケットの適宜表面部に、任意形状の凹嵌部を形成し、該凹嵌部の底部に装飾層を配置させた後に、該凹嵌部の開口端を透明或いは、半透明の合成樹脂で充填被覆することを特徴とするゴルフ用のソケットの製造方法。
【請求項2】 前記装飾層は、紙或いは、合成樹脂フィルムからなる基体の上面に、文字や図形等の装飾を施した装飾ラベルであることを特徴とする請求項1記載のゴルフ用のソケットの製造方法。
【請求項3】 前記装飾層は、該凹嵌部の底部に、直接文字や図形等の装飾が印刷された印刷層であることを特徴とする請求項1記載のゴルフ用のソケットの製造方法。
【請求項4】 前記装飾層は、該凹嵌部の底部に、任意の文字や図形等を刻設して成形された装飾溝内に、ソケット本体と異なる色彩の樹脂或いは、塗料を充填させたものであることを特徴とする請求項1記載のゴルフ用のソケットの製造方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【公開番号】特開平10−286330
【公開日】平成10年(1998)10月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−110464
【出願日】平成9年(1997)4月11日
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)