説明

ゴルフ用手袋およびスポーツ用手袋

【課題】グリップ時の窮屈感が改善され、周囲長が徐々に大きくなることが抑制され、かつ、親指部のねじれが抑制されたスポーツ用手袋およびゴルフ用手袋を提供する。
【解決手段】スポーツ用手袋(たとえば、ゴルフ用手袋)は、装着者の手の甲の少なくとも一部に当接する手甲部2を備える。上記手甲部2は、第1方向(矢印DR1方向)に沿って伸びにくく、該第1方向に直交する第2方向に沿って伸びやすい素材で構成される。ここで、装着者の中指の中心線(A)に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向になるように『伸びにくい方向』である第1方向(矢印DR1方向)が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ用手袋およびスポーツ用手袋に関し、特に、ゴルファーが装着するゴルフ用手袋、その他一般的なスポーツに用いるスポーツ用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフなどのスポーツ時に着用する手袋の素材として、天然皮革の羊革とともに、主に不織布で構成された人工皮革や、基布を織物や編物で構成し、その表面にウレタン等の樹脂をコーティング、あるいは貼り付けなどした合成皮革が広く用いられている。
【0003】
下記の非特許文献1には、人工皮革の一般的な製造工程が示されている。非特許文献1によれば、人工皮革の製造工程において、シートが一方向にのみ引っ張り続けられるため、最終的に縦横で伸びやすさに差が生じるとされている。
【0004】
図12,図13は、各々、生地寸法が幅20mm、長さ100mmである手袋用材料の30%伸び、50%伸びのための必要張力(N)を示す図である。なお、図12,図13中の『合成皮革』は、代表的な手袋用合成皮革を示し、図12,図13中の『人工皮革』は、代表的な手袋用の人工皮革を示す。
【0005】
図12,図13に示すように、合成皮革、人工皮革ともに、縦方向(ロールの延伸方向)よりも横方向(ロールの幅方向)に伸びやすいという傾向が見られる。すなわち、縦方向には相対的に大きな力を作用させないと、皮革を所定量伸ばすことはできない。
【0006】
人工皮革の伸びやすさが縦横方向で異なるという内容は、特許文献1(実公平7−42451号公報)にも示されている。特許文献1には、さらに、指の縦方向に対して横方向によく伸びるように手袋を縫製することが示されている。特許文献1によれば、上記のようにすることで、手袋に手を入れるときに伸縮性生地の伸びが制限されてスムーズに手を入れることができるとされている。
【0007】
ところで、特許文献2(特開2002−331062号公報)には、親指部(親指袋)のねじれを抑えることができるゴルフ手袋が示されている。
【0008】
さらに、特許文献3(実開昭56−155870号公報)には、親指袋の掌部生地に甲部の側に折り曲げる折曲片を一体に裁断し、該折曲片を甲部生地に縫着した手袋が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公平7−42451号公報
【特許文献2】特開2002−331062号公報
【特許文献3】実開昭56−155870号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】(株)クラレ、[平成21年6月26日検索]、インターネット<URL:http://www.kuraray.co.jp/products/question/fiber/leather.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の手袋では、たとえばゴルフクラブなどをグリップする際に、指の縦方向に手甲部が伸びにくく、装着者が窮屈感を感じやすい。
【0012】
また、グリップ動作を繰り返すことにより、手甲部が指の幅方向(横方向)に伸び、手袋の手甲周りのサイズ(周囲長)が徐々に大きくなってしまうという問題もあった。
【0013】
特許文献2に記載の手袋では、たとえばゴルフクラブのスイング時などに親指部のねじれを必ずしも十分に抑制することができない。親指部がねじれた結果、親指部の背側と親指部の腹側とを縫着する縫着線が指とグリップとの間に介在することになり、装着感が悪化する。
【0014】
特許文献3には、手甲部材と手掌部材とを縫着して親指袋を形成する手袋のうち、縫着線の一部が親指甲部側に配置されている手袋が開示されている。しかし、縫着線は連続する一本しか設けられていないから、親指のねじれ抑制には十分ではなく、さらに手掌部材を手甲部材に重ねて縫着するから装着感にも問題があった。
【0015】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の1つの目的は、グリップ時の窮屈感が改善され、かつ、周囲長が徐々に大きくなることが抑制された手袋(ゴルフ用手袋またはスポーツ用手袋)を提供することにあり、本発明の他の目的は、親指部のねじれが抑制された手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ゴルファーが装着するゴルフ用手袋、および、野球、テニス等、主にスイングを伴なうその他のスポーツ時に用いるスポーツ用手袋に関するものである。
【0017】
本発明は、端的に言えば、『伸びやすい方向』と『伸びにくい方向』とを有する『伸縮異方性』の材料で手袋を構成し、上記『伸びにくい方向』を中指中心線または親指中心線に対して交差させるものである。より具体的には、手甲部および手掌部において、上記『伸びにくい方向』を中指中心線に対して交差させ、親指部において、上記『伸びにくい方向』を親指中心線に対して交差させるものである。
【0018】
なお、本願明細書において、『中指中心線』および『親指中心線』とは、各々、手袋を装着したときの中指の中心線および親指の中心線を意味する。より具体的には、『中指中心線』は、手袋を装着し、さらに人差指から小指までの4本の指を閉じたときの中指の中心線を意味する。
【0019】
本発明に係るゴルフ用手袋およびスポーツ用手袋は、1つの局面では、装着者の手の甲の少なくとも一部に当接する手甲部と、装着者の掌の少なくとも一部に当接する手掌部とを備える。
【0020】
上記ゴルフ用手袋およびスポーツ用手袋の1つの実施態様では、少なくとも手甲部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、手甲部において、材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定される。
【0021】
上記実施態様によれば、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に『伸びにくい方向』を設定することにより、たとえばゴルフクラブ等のグリップ時に、装着者の人差指から小指のそれぞれの指の長手方向と材料が『伸びやすい方向』とを略一致させることができる。したがって、グリップ時に手甲部が伸びやすくなり、手甲側のつっぱり感が低減する。
【0022】
上記ゴルフ用手袋の他の実施態様では、少なくとも手掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、手掌部において、材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向、または該中指の先端側が親指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定される。
【0023】
上記実施態様によれば、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に『伸びにくい方向』を設定することにより、インパクト時の掌の中でのグリップの回転に伴なう手掌部の伸びを抑制することができる。すなわち、インパクト時の打点のブレにより、ヘッドがねじれ、それに伴ない掌の中でグリップが回転し、手袋の手掌部も回転方向に伸びやすくなる傾向にあるが、この意図しない伸びを抑制可能である。
【0024】
他方、上記実施態様によれば、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に『伸びにくい方向』を設定することにより、スイング中の遠心力に伴なう手掌部の伸びを抑制することができる。すなわち、スイング中には、クラブが手からすっぽ抜けようとする方向の遠心力が作用し、手袋の手掌部も掌からグリップが抜ける方向に伸びやすくなる傾向にあるが、この意図しない伸びを抑制可能である。
【0025】
上記ゴルフ用手袋のさらに他の実施態様では、少なくとも手甲部および手掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、手甲部において、記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定され、かつ、手掌部において、材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向、または該中指の先端側が親指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定される。
【0026】
この実施態様によれば、先に述べたとおり、手甲側のつっぱり感を低減するとともに、手掌側の意図しない伸びを抑制することが可能である。
【0027】
上記ゴルフ用手袋のさらに他の実施態様では、少なくとも手甲部および手掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、手甲部において、材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定され、かつ、手掌部において、材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して略平行に設定される。
【0028】
上記実施態様によれば、手甲部において、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に『伸びにくい方向』を設定することにより、先に述べたとおり、手甲側のつっぱり感を低減することができる。さらに、手掌部において、装着者の中指の中心線に対して略平行に材料の『伸びにくい方向』を設定することにより、手掌側は人差指から小指のそれぞれの指の長手方向に伸びにくくなるため、手袋の装着時の指入れが行ないやすくなる。
【0029】
上記スポーツ用手袋の他の実施態様では、少なくとも手甲部および手掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、手甲部において、材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して略直交するように設定され、かつ、手掌部において、材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して略平行に設定される。
【0030】
上記実施態様によれば、手甲部において、装着者の中指の中心線に対して略直交するように『伸びにくい方向』を設定することにより、先に述べたとおり、手甲側のつっぱり感を低減することができる。さらに、手掌部において、装着者の中指の中心線に対して略平行に材料の『伸びにくい方向』を設定することにより、手掌側は人差指から小指のそれぞれの指の長手方向に伸びにくくなるため、手袋の装着時の指入れが行ないやすくなる。
【0031】
本発明に係るゴルフ用手袋およびスポーツ用手袋は、他の局面では、装着者の親指を受け入れる親指部を備える。親指部は、装着者の親指の甲側に当接する親指甲部と、装着者の親指の掌側に当接する親指掌部とを含む。
【0032】
上記ゴルフ用手袋の1つの実施態様では、親指部は、少なくとも親指甲部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、親指甲部において、材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定される。
【0033】
上記ゴルフ用手袋の他の実施態様では、親指部は、少なくとも親指掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、親指掌部において、材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して該親指の先端側が人差指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定される。
【0034】
上記ゴルフ用手袋のさらに他の実施態様では、親指部は、少なくとも親指甲部および親指掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、親指甲部において、材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定され、かつ、親指掌部において、材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して該親指の先端側が人差指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定される。
【0035】
上記各実施態様によれば、装着者の親指の腹側と背側とで、上述の如く材料の『伸びにくい方向』を各々設定することにより、スイング時の親指部のねじれ方向に対して伸びにくい親指部を形成することができる。
【0036】
なお、ここで言う『親指部のねじれ方向』とは、右利きゴルファーが装着する左手用の手袋であれば、親指の先端側から見て時計回り方向のねじれを意味し、左利きゴルファーが装着する右手用の手袋であれば、親指の先端側から見て反時計回り方向のねじれを意味する。このねじれは、ゴルフクラブを両手でグリップするとき、利き腕が手袋を装着した手の親指を人差指側に押し付け、手甲側へ捻るようにして握るために生じる。また、ゴルフクラブのヘッド重心がシャフト軸からずれていることでスイング時にゴルフクラブに生じる捻りモーメントが手袋を装着した手の親指の腹側を捻るように伝わることでも生じる。本発明に係るゴルフ用手袋は、上記方向のねじれが抑制されるものである。
【0037】
上記ゴルフ用手袋のさらに他の実施態様では、親指部は、少なくとも親指甲部および親指掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、親指甲部において、材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定され、かつ、親指掌部において、材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して略平行に設定される。
【0038】
上記実施態様によれば、親指の背側における材料の『伸びにくい方向』の設定により、先に述べたとおり、スイング時の親指部のねじれを抑制することができる。さらに、親指の腹側における材料の『伸びにくい方向』の設定により、親指部は親指の長手方向に伸びにくくなるため、手袋の装着時の指入れが行ないやすくなる。
【0039】
上記スポーツ用手袋の1つの実施態様では、親指部は、少なくとも親指甲部および親指掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、親指甲部において、材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して略直交する方向に設定され、かつ、親指掌部において、材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して該親指の先端側が人差指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定される。
【0040】
上記実施態様によれば、親指の腹側における材料の『伸びにくい方向』の設定により、先に述べたとおり、スイング時の親指部のねじれを抑制することができる。さらに、親指の背側における材料の『伸びにくい方向』の設定により、グリップ対象に対して人差指から小指を略垂直に交差させてグリップするとき(たとえば野球のバットを握るとき)に、装着者の親指の長手方向と材料が『伸びやすい方向』とを略一致させることができる。したがって、グリップ時に親指部が伸びやすくなり、親指が曲げやすくなる。
【0041】
上記ゴルフ用手袋のさらに他の実施態様では、親指部のねじれを抑制するねじれ抑制部が前記親指甲部上に設けられている。これにより、親指部のねじれをさらに効果的に抑制することが可能である。
【0042】
1つの例として、ゴルフ用手袋において、ねじれ抑制部は、親指部の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に延在する。
【0043】
他の例として、ゴルフ用手袋において、ねじれ抑制部は、親指甲部における材料の伸びにくい方向に沿って延在する。
【0044】
なお、上述した『30度から60度』の範囲は、より好ましくは『40度から50度』の範囲であり、最も好ましくは、45度程度である。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、1つの局面では、手袋(ゴルフ用手袋またはスポーツ用手袋)において、グリップ時の窮屈感を改善し、かつ、周囲長が徐々に大きくなることを抑制することができ、他の局面では、手袋(ゴルフ用手袋またはスポーツ用手袋)において、親指部のねじれを抑制することができる。
【0046】
なお、本発明の上述の効果は、当て布等の部材を追加しなくとも得られるものであるが、さらに、当て布等の部材を付加することにより、周囲長の拡大の抑制や親指部のねじれを抑制などに関して、相乗的により高い効果を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1,2に係るゴルフ用手袋を手の甲側から見た状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るゴルフ用手袋における手甲部を構成する手甲部材を表面側(装着者の手に接触しない側)から見た状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るゴルフ用手袋における手掌部を構成する手掌部材を表面側(装着者の手に接触しない側)から見た状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るゴルフ用手袋における親指部を構成する親指部材を表面側(装着者の手に接触しない側)から見た状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るゴルフ用手袋における手甲部および手掌部を構成する本体部材を表面側(装着者の手に接触しない側)から見た状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るゴルフ用手袋における親指部を構成する親指部材を表面側(装着者の手に接触しない側)から見た状態を示す図である。
【図7】本発明の1つの実施例に係るゴルフ用手袋の繰り返しの打球試験を行なった後の状態を示す図である。
【図8】比較例に係るゴルフ用手袋の繰り返しの打球試験を行なった後の状態を示す図である。
【図9】親指部における『伸びにくい方向』の配向角とねじれ剛性との関係を示す図である。
【図10】ヒトの手の骨を示した透過図である。
【図11】中指中心線に対する角度の規定を説明するための模式図である。
【図12】手袋用材料の30%伸びのための必要張力(N)を示す図である。
【図13】手袋用材料の50%伸びのための必要張力(N)を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係るゴルフ用手袋を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係るゴルフ用手袋におけるステッチの配置について説明するための図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係るゴルフ用手袋の変形例を示す図である。
【図17】本発明の実施例に係るゴルフ用手袋に「ねじれ抑制部」としてのステッチを付加した手袋で繰り返しの打球試験を行なった後の状態を示す図である。
【図18】本発明の実施例に係るゴルフ用手袋であって、「ねじれ抑制部」としてのステッチを付加しない手袋で繰り返しの打球試験を行なった後の状態を示す図である。
【図19】図17,図18に示す手袋に対する比較例に係るゴルフ用手袋で繰り返しの打球試験を行なった後の状態を示す図である。
【図20】本発明の実施例に係るゴルフ用手袋に「ねじれ抑制部」としてのステッチを付加した手袋で繰り返しの打球試験を行なった後の状態を示す図(その2)である。
【図21】本発明の実施例に係るゴルフ用手袋であって、「ねじれ抑制部」としてのステッチを付加しない手袋で繰り返しの打球試験を行なった後の状態を示す図(その2)である。
【図22】図20,図21に示す手袋に対する比較例に係るゴルフ用手袋で繰り返しの打球試験を行なった後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0049】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、特に記載がある場合を除き、後述の(実施の形態1),(実施の形態2),(実施の形態3)および(ゴルフ用以外の手袋)の構成を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0050】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るゴルフ用手袋を手の甲側から見た状態を示す図である。図1を参照して、本実施の形態に係るゴルフ用手袋1は、装着者の手の甲に当接する手甲部2と、装着者の掌に当接する手掌部3(図3参照)と、装着者の指の側面上に位置し、手甲部2および手掌部3に縫着される襠材4とを有する。ここで、「掌」とは手首から先の内側の面(指を含む)を意味し、「手の甲」とは掌の反対側を意味する。
【0051】
ゴルフ用手袋1には、装着者の親指、人差指、中指、薬指および小指をそれぞれ受け入れる親指部10、人差指部20、中指部30、薬指部40および小指部50がそれぞれ形成されている。
【0052】
図2,図3は、ゴルフ用手袋1の手甲部2および手掌部3を各々構成する手甲部材2Aおよび手掌部材3Aを示す図である。図2,図3を参照して、手甲部材2Aおよび手掌部材3Aは、ゴルフ用手袋1における手甲部2および手掌部3の主要部分を構成する。
【0053】
図4は、ゴルフ用手袋1の親指部10を構成する親指部材10A,10Bを示す図である。図4を参照して、親指部10の手甲側(指の背側)は親指部材10Aにより構成され、親指部10の手掌側(指の腹側)は親指部材10Bにより構成される。
【0054】
なお、図1〜図4に示す例は、右利きのゴルファーが装着する左手用の手袋である。当然のことながら、左利きのゴルファーであれば、同様の手袋を右手にすることになる。
【0055】
本実施の形態に係るゴルフ用手袋は、人工皮革または合成皮革により構成される。人工皮革や合成皮革は、製法上ある特定の方向には伸びやすく、それに直交する方向には伸びにくいという性質(伸縮異方性)を有する。
【0056】
本実施の形態に係るゴルフ用手袋1は、手甲部材2A、手掌部材3A、および親指部材10A,10Bにおける『伸びやすい方向』『伸びにくい方向』の設定に特徴を有するものである。
【0057】
なお、本実施の形態では、指の中心線との交差角度で上記方向を定義する。図2,図3中の『A』は中指の中心線であり、図4中の『B』は親指の中心線である。中指の中心線、および親指の中心線とは、図10に示すように、各々、中指、親指を伸ばしたときの各指の骨の中心線を意味する。
【0058】
一般的に、人工皮革および合成皮革における『伸びやすい方向』と『伸びにくい方向』とは、互いに略直交する。本実施の形態では、手甲部材2Aおよび手掌部材3Aについては、中指の中心線『A』と『伸びにくい方向』との交差角度を規定し、親指部10については、親指の中心線『B』と『伸びにくい方向』との交差角度を規定する。
【0059】
すなわち、図11(a)に示すように、手甲部2(手甲部材2A)については、中指の中心線『A』に対して指の先端側が親指に近づく方向に傾く角度を『θ1』と定義するとともに、図11(b)に示すように、手掌部3(手掌部材3A)についても、中指の中心線『A』に対して指の先端側が親指に近づく方向に傾く角度を『θ2』と定義する。
【0060】
また、図4に示すように、親指部10の手甲側(指の背側)については、親指の中心線『B』に対して指の先端側が人差指に近づく方向に傾く角度を『α1』と定義するとともに、親指部10の手掌側(指の腹側)についても、親指の中心線『B』に対して指の先端側が人差指に近づく方向に傾く角度を『α2』と定義する。
【0061】
上記のように定義された『θ1』『θ2』『α1』『α2』について、本願発明者らは、本実施の形態に係るゴルフ用手袋1として、以下のようなバリエーションを用意した。なお、下記の表1,表2では、従来例も併記している。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1を参照して、従来例では『θ1』および『θ2』がともに0度とされているのに対し、本実施の形態に係るゴルフ用手袋1では、手甲部2の『θ1』は、略45度とされている。このようにすることで、上記『伸びにくい方向』をグリップ時のシャフトの軸方向と略平行にすることができる。この結果、ゴルフクラブのグリップ時に、装着者の人差指から小指のそれぞれの指の長手方向と材料が『伸びやすい方向』とを略一致させることができる。したがって、グリップ時に手甲部が伸びやすくなり、手甲側のつっぱり感が低減される。
【0065】
さらに、表1に示されるように、従来例では『θ2』も0度とされているのに対し、本実施の形態に係るゴルフ用手袋1では、『θ1』が略45度のときにおいて、手掌部3の『θ2』は、略45度、略−45度、または0度とされている。
【0066】
上記のように、『θ2』を略−45度に設定することで、インパクト時の掌の中でのグリップの回転に伴なう手掌部の伸びを抑制することができる。すなわち、インパクト時の打点のブレにより、ヘッドがねじれ、それに伴ない掌の中でグリップが回転し、手掌部3も回転方向に伸びやすくなる傾向にあるが、この意図しない伸びを抑制可能である。
【0067】
また、『θ2』を略45度に設定することで、グリップ時のシャフトの軸方向に対して略平行になるように『伸びにくい方向』を設定することができるので、スイング中の遠心力に伴なう手掌部3の伸びを抑制することができる。すなわち、スイング中には、クラブが手からすっぽ抜けようとする方向の遠心力が作用し、手袋の手掌部3も掌からグリップが抜ける方向に伸びやすくなる傾向にあるが、この意図しない伸びを抑制可能である。
【0068】
また、『θ2』を0度に設定することで、手掌部3は人差指から小指のそれぞれの指の長手方向に伸びにくくなるため、手袋の装着時の指入れが行ないやすくなる。
【0069】
表2を参照して、従来例では『α1』,『α2』がともに0度とされているのに対し、本実施の形態に係るゴルフ用手袋1では、親指の背側の『α1』は、略45度とされている。このようにすることで、スイング時にねじれが生じる方向に伸びにくい構成とすることができるため、スイング時の親指部のねじれ方向に対して伸びにくい親指部を形成することができる。
【0070】
さらに、表1に示されるように、従来例では『α2』も0度とされているのに対し、本実施の形態に係るゴルフ用手袋1では、『α1』が略45度の場合の親指の腹側の『α2』は、0度の場合もあるものの、略−45度とされている。
【0071】
上記のように、『α2』を略−45度とすることで、スイング時の親指部のねじれ方向に対してさらに伸びにくい親指部を形成することができる。他方、『α2』を従来と同じように0度とすることで、親指部10はその長手方向に伸びにくくなるため、手袋の装着時の指入れが行ないやすくなる。
【0072】
上記の例では、『θ1』『θ2』『α1』『α2』の絶対値がゼロか略45度の例についてのみ示しているが、『伸びない方向』の配向角度は、上記の値に限定されるべきものではない。本願発明者が検討したところ、図9に示すように、配向角が30〜60度(より好ましくは40〜50度)のときは、配向角が略45度の場合と同様に、高いねじれ剛性を示している。したがって、『α1』『α2』の値の範囲は、たとえば30〜60度(より好ましくは40〜50度)程度の範囲内で適宜変更可能である。また、『θ1』『θ2』についても、上記と同様に、30〜60度(より好ましくは40〜50度)程度の範囲内で適宜変更可能である。
【0073】
なお、図9に示すねじれ剛性は、『伸びにくい方向』の弾性率を『伸びやすい方向』の弾性率の5倍と仮定して計算したものである。
【0074】
本願発明者らは、上記『α1』『α2』を設定することによる効果の確認を行なうため、本実施の形態に係るゴルフ用手袋1(α1=45度、α2=−45度)と、従来のゴルフ用手袋(α1=α2=0度)とを用いて、1000回の試打を行なった後、親指部の先端の汚れに注目して両手袋を観察した。その結果を図7(本実施の形態)および図8(従来例)に示す。なお、図7,図8は、左利きのゴルファーが右手に装着する手袋における親指部先端を示す。
【0075】
図7,図8を参照して、本実施の形態(図7)および従来例(図8)ともに、腹側部分101に汚れが付着している。これは、親指部10の腹側がグリップに押し付けられることによって付着するものである。
【0076】
本実施の形態(図7)および従来例(図8)は、以下の点で異なる傾向を示す。すなわち、本実施の形態においては、上記汚れは、腹側部分101に略限定して形成されている(図7)のに対し、従来例においては、上記汚れは、腹側部分101から縫着線103を越えて背側部分102側に大きくはみ出している。これは、従来例(図8)では、繰り返しの打球により、親指部のねじれが大きくなり、背側部分102がグリップに押し付けられるのに対し、本実施の形態(図7)では、これが抑制されているということを示している。なお、図8に示すように、腹側部分101と背側部分102の両方がグリップに押し付けられる場合、それらを縫着する縫着線103が親指とグリップとの間に介在することになるので、装着感が悪化する。本実施の形態(図7)に係るゴルフ用手袋では、繰り返しの打球による装着感の悪化が抑制される。
【0077】
(実施の形態2)
図5,図6は、各々、実施の形態2に係るゴルフ用手袋における手甲部および手掌部を構成する本体部材、当該ゴルフ用手袋における親指部を構成する親指部材を示す図である。
【0078】
図5,図6に示すように、本実施の形態に係るゴルフ用手袋1は、実施の形態1の変形例であって、手甲部2と手掌部3とを一体の部材(本体部材1A)で構成するとともに、親指部10における指の背側と腹側を一体の部材(親指部材10C)で構成することを特徴とする。
【0079】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、『伸びやすい方向』『伸びにくい方向』の設定を行なうことで、上述の効果を得ることが可能である。ただし、手甲側と手掌側とを一体の部材で形成するため、手甲側と手掌側とで独立して上記方向を設定することはできない。したがって、表1中であればθ1=45度,θ2=−45度の例、表2中であればα1=45度,α2=−45度の例に限って実現可能である。
【0080】
なお、上記以外の事項については、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0081】
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3に係るゴルフ用手袋を示す図である。図14に示すように、本実施の形態に係るゴルフ用手袋は、親指部において、上述した『伸びにくい方向』に沿ってステッチ11(縫目)を設けたことを特徴とする。
【0082】
手袋本体上にステッチを設けることで、手袋本体は、ステッチの延在方向には延びにくくなる。したがって、上記のように、『伸びにくい方向』に沿ってステッチを設けることで、親指部のねじれを効果的に抑制することができる。すなわち、ステッチ11は、親指部のねじれを抑制する「ねじれ抑制部」として機能している。
【0083】
なお、『伸びにくい方向』に沿うとは、『伸びにくい方向』に完全に平行になる場合と、『伸びにくい方向』に対して若干交差する(具体的には±5度程度の角度で交差する)場合とを含む。
【0084】
図14に示す例では、ステッチ11は、親指の関節の位置を避けるように設けられている。関節部では指を曲げたときの伸縮が大きく、ここに伸びにくいステッチを配置することにより、装着者が違和感を感じやすくなるため、上記のように、関節部の位置を避けてステッチを配置している。
【0085】
図14に示す例では、ステッチ11は、装着者の指の先端側において相対的に密に、装着者の指の根元側において相対的に疎に配置されている。ステッチにより装着者が感じる違和感を低減する観点からは、装着者の指の根元側においてステッチの間隔を広げておくことが好ましい。
【0086】
しかし、親指部のねじれを効果的に抑制する観点からは、装着者の指の根元側において相対的に密に、装着者の指の先端側において相対的に疎に配置することが好ましい。このようにすることで、根元部のねじれを効果的に抑制することができるので、親指部全体のねじれをより効果的に抑制することが可能である。
【0087】
ステッチ11は、「ほつれ」防止の観点から、その端部が他の縫目上に位置するように設けることが好ましい。したがって、ステッチ11を形成する場合は、典型的には、実施の形態1(図4)のように、親指部10を手甲側と手掌側とに分けて形成し、手甲部の全幅にわたってステッチ11を延在させる。しかし、図15に示すように、ステッチ11を連続させながら往復させることで、親指部の手甲側と手掌側とを一体の部材で形成しながらステッチ11を設けることもできる。
【0088】
なお、親指部のねじれを抑制する「ねじれ抑制部」は、上述のステッチ11に限られない。たとえば、図16に示すように、短冊状のテープ12を親指部10上に縫着したり(縫着線12A)、熱圧着テープを親指部10上に設けたり、親指部10上に樹脂プリントを施したりすることで、「ねじれ抑制部」を得ることもできる。すなわち、親指部10上に手袋本体部材(親指部10を構成する部材)よりも伸びにくい素材を重ねることにより「ねじれ抑制部」を形成することが可能である。
【0089】
なお、テープ12としては、例えば不織布、織物やニット含む織布などが考えられる。熱圧着テープとしては、熱可塑性樹脂フィルムや不織布、織物やニットを含む織布に熱可塑性樹脂を含浸させたものなどが考えられ、高周波ウェルダー、超音波ウェルダーなどを使用して親指袋に固定する。また加硫ゴムシートを熱融着することもできる。樹脂プリントとしてはポリウレタン、シリコンなどの樹脂を用いたプリントが利用可能である。
【0090】
本願発明者らは、上記ステッチを設けることによる効果の確認を行なうため、上述した実施の形態1に係るゴルフ用手袋1(α1=45度、α2=−45度)にステッチ11を設けた手袋(以下「手袋1」という。)と、実施の形態1に係るゴルフ用手袋(α1=45度、α2=−45度)であって、ステッチ11を設けていない手袋(以下、「手袋2」という。)と、従来のゴルフ用手袋(α1=α2=0度)とを用いて、150回の試打を行なった後、親指部の先端の汚れに注目して各々の手袋を観察した。その結果を図17(手袋1)、図18(手袋2)および図19(従来例)に示す。なお、図17〜図19は、先に述べた図7、図8とは異なる右利きのゴルファーが左手に装着して試打をした手袋の親指部先端を示す。
【0091】
図17〜図19を参照して、手袋1(図17)、手袋2(図18)および従来例(図19)ともに、腹側部分101に汚れが付着している。これは、親指部10の腹側がグリップに押し付けられることによって付着するものである。
【0092】
手袋1(図17)、手袋2(図18)および従来例(図19)は、以下の点で異なる傾向を示す。すなわち、手袋1(図17)においては、指の根元側において、縫着線103付近にほとんど汚れが見られない(図17中のA部)のに対し、手袋2(図18)においては、同じ部分(図18中のB部)に若干の汚れが見られる。さらに、従来例においては、上記汚れは、腹側部分101のみならずから縫着線103を越えて背側部分102側に大きくはみ出している。このように、手袋1、手袋2ともに、従来例に係る手袋と比較して親指のねじれを抑制できているが、手袋1においては、手袋2と比較してさらに効果的にねじれを抑制できていることが分かる。
【0093】
本願発明者らは、上記の「手袋1」、「手袋2」および従来の手袋(α1=α2=0度)を用いて、さらに他のゴルファーにより150回の試打を行なった後、親指部の先端の汚れに注目して各々の手袋を観察した。その結果を図20(手袋1)、図21(手袋2)および図22(従来例)に示す。図20〜図22は、先に述べた図17〜図19とは異なる右利きのゴルファーが左手に装着して試打をした手袋の親指部先端を示す。
【0094】
図20〜図22に示す例においても、手袋1(図20)、手袋2(図21)および従来例(図22)ともに、腹側部分101に汚れが付着している。その一方で、手袋1(図20)においては、指の根元側において、腹側部分101の縫着線103付近に汚れがない部分が見られる(図20中のC部)のに対し、手袋2(図21)においては、腹側部分101の全体にわたって汚れが付着している。さらに、従来例においては、上記汚れは、腹側部分101のみならずから縫着線103を越えて背側部分102側にはみ出している(図22のD部)。図20〜図22の例からも、図17〜図19の例と同様に、手袋1、手袋2ともに、従来例に係る手袋と比較して親指のねじれを抑制できているが、手袋1においては、手袋2と比較してさらに効果的にねじれを抑制できていることが分かる。
【0095】
ところで、上記ステッチ11は、生地の『伸びにくい方向』とは関係なく、それ単独で親指部のねじれを防止する効果を奏することも期待できる。したがって、ステッチ11は、必ずしも生地の『伸びにくい方向』に沿って延在している必要はなく、生地の『伸びにくい方向』とステッチ11の延在方向が任意の方向に交差する場合もあり得る。
【0096】
(ゴルフ用以外の手袋)
実施の形態1ないし3に係るゴルフ用手袋1の考え方は、ゴルフ用以外のスポーツ用手袋にも応用できるものである。
【0097】
たとえば、野球のように、グリップする対象に対して指が垂直に交差する場合は、上記θ1=90度,θ2=0度とすることも考えられる。θ1=90度とすることで、甲側は指の長手方向に伸びやすくなるため、指曲げが行ないやすくなるとともに、繰り返しの使用に伴なう手甲周りの伸びを抑制することができる。また、掌側では、指の長手方向に伸びにくくなるため、指入れがしやすい。
【0098】
また、たとえば、ラケットを用いるスポーツのように、親指の屈曲性が強く求められる場合は、たとえばα1=90度、α2=45度とすることもできる。α1=90度とすることで、甲側は指の長手方向に伸びやすくなるため、親指の指曲げが行ないやすくなる。他方、α2=45度とすることで、上述したねじり剛性向上に寄与し得る。
【0099】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
1 ゴルフ用手袋、1A 本体部材、2 手甲部、2A 手甲部材、3 手掌部、3A 手甲部材、4 襠材、10 親指部、10A,10B,10C 親指部材、11 ステッチ、12 テープ、12A 縫着線、20 人差指部、30 中指部、40 薬指部、50 小指部、101 腹側部分、102 背側部分、103 縫着線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の手の甲の少なくとも一部に当接する手甲部と、
装着者の掌の少なくとも一部に当接する手掌部とを備えたスポーツ用手袋であって、
前記手袋は、少なくとも前記手甲部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記手甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定された、スポーツ用手袋。
【請求項2】
前記手甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に40度から50度傾斜した方向に設定された、請求項1に記載のスポーツ用手袋。
【請求項3】
装着者の手の甲の少なくとも一部に当接する手甲部と、
装着者の掌の少なくとも一部に当接する手掌部とを備えたゴルフ用手袋であって、
前記手袋は、少なくとも前記手掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記手掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向、または該中指の先端側が親指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定された、ゴルフ用手袋。
【請求項4】
装着者の手の甲の少なくとも一部に当接する手甲部と、
装着者の掌の少なくとも一部に当接する手掌部とを備えたゴルフ用手袋であって、
前記手袋は、少なくとも前記手甲部および前記手掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記手甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定され、かつ、
前記手掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向、または該中指の先端側が親指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定された、ゴルフ用手袋。
【請求項5】
装着者の手の甲の少なくとも一部に当接する手甲部と、
装着者の掌の少なくとも一部に当接する手掌部とを備えたゴルフ用手袋であって、
前記手袋は、少なくとも前記手甲部および前記手掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記手甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定され、かつ、
前記手掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して略平行に設定された、ゴルフ用手袋。
【請求項6】
前記手甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に40度から50度傾斜した方向に設定された、請求項4または請求項5に記載のゴルフ用手袋。
【請求項7】
前記手掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して該中指の先端側が親指に近づく方向に40度から50度傾斜した方向、または該中指の先端側が親指から遠ざかる方向に40度から50度傾斜した方向に設定された、請求項3また
は請求項4に記載のゴルフ用手袋。
【請求項8】
装着者の手の甲の少なくとも一部に当接する手甲部と、
装着者の掌の少なくとも一部に当接する手掌部とを備えたスポーツ用手袋であって、
前記手袋は、少なくとも前記手甲部および前記手掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記手甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して略直交するように設定され、かつ、
前記手掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、装着者の中指の中心線に対して略平行に設定された、スポーツ用手袋。
【請求項9】
装着者の親指を受け入れる親指部を備えたゴルフ用手袋であって、
前記親指部は、装着者の親指の甲側に当接する親指甲部と、装着者の親指の掌側に当接する親指掌部とを含み、
前記親指部は、少なくとも前記親指甲部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記親指甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定された、ゴルフ用手袋。
【請求項10】
装着者の親指を受け入れる親指部を備えたゴルフ用手袋であって、
前記親指部は、装着者の親指の甲側に当接する親指甲部と、装着者の親指の掌側に当接する親指掌部とを含み、
前記親指部は、少なくとも前記親指掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記親指掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して該親指の先端側が人差指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定された、ゴルフ用手袋。
【請求項11】
装着者の親指を受け入れる親指部を備えたゴルフ用手袋であって、
前記親指部は、装着者の親指の甲側に当接する親指甲部と、装着者の親指の掌側に当接する親指掌部とを含み、
前記親指部は、少なくとも前記親指甲部および前記親指掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記親指甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定され、かつ、
前記親指掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して該親指の先端側が人差指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定された、ゴルフ用手袋。
【請求項12】
装着者の親指を受け入れる親指部を備えたゴルフ用手袋であって、
前記親指部は、装着者の親指の甲側に当接する親指甲部と、装着者の親指の掌側に当接する親指掌部とを含み、
前記親指部は、少なくとも前記親指甲部および前記親指掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記親指甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に設定され、かつ、
前記親指掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して略平行に設定された、ゴルフ用手袋。
【請求項13】
前記親指甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に40度から50度傾斜した方向に設定された、請求項9、請求項11または請求項12のいずれかに記載のゴルフ用手袋。
【請求項14】
前記親指掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して該親指の先端側が人差指から遠ざかる方向に40度から50度傾斜した方向に設定された、請求項10または請求項11に記載のゴルフ用手袋。
【請求項15】
装着者の親指を受け入れる親指部を備えたスポーツ用手袋であって、
前記親指部は、装着者の親指の甲側に当接する親指甲部と、装着者の親指の掌側に当接する親指掌部とを含み、
前記親指部は、少なくとも前記親指甲部および前記親指掌部が伸縮異方性の材料で構成されており、該異方性の材料は伸びやすい方向と伸びにくい方向が略直交しており、
前記親指甲部において、前記材料の伸びにくい方向が、該親指の中心線に対して略直交する方向に設定され、かつ、
前記親指掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して該親指の先端側が人差指から遠ざかる方向に30度から60度傾斜した方向に設定された、スポーツ用手袋。
【請求項16】
前記親指掌部において、前記材料の伸びにくい方向が、親指中心線に対して該親指の先端側が人差指から遠ざかる方向に40度から50度傾斜した方向に設定された、請求項15に記載のスポーツ用手袋。
【請求項17】
前記親指部のねじれを抑制するねじれ抑制部が前記親指甲部上に設けられ、
前記ねじれ抑制部は、前記親指部の中心線に対して該親指の先端側が人差指に近づく方向に30度から60度傾斜した方向に延在する、請求項9および請求項11から請求項14のいずれかに記載のゴルフ用手袋。
【請求項18】
前記親指部のねじれを抑制するねじれ抑制部が前記親指甲部上に設けられ、
前記ねじれ抑制部は、前記親指甲部における前記材料の伸びにくい方向に沿って延在する、請求項9および請求項11から請求項14のいずれかに記載のゴルフ用手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図7】
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【図8】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−45707(P2011−45707A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169486(P2010−169486)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】