説明

ゴルフ靴

【課題】防滑性能に優れたゴルフ靴の提供。
【解決手段】ゴルフ靴のアウトソール12は、ベース14と多数の突起16を備えている。アウトソール12の底面は、爪先ゾーン20、センターゾーン22及び踵ゾーン24に区画されうる。このアウトソール12は、下記数式(1)を満たす。
HTmax > HCmax (1)
この数式において、HTmaxは爪先ゾーン20に存在する突起16tの中で最も高いものの高さであり、HCmaxはセンターゾーン22に存在する突起16cの中で最も高いものの高さである。このアウトソール12は、下記数式(2)を満たす。
HHmax > HCmax (2)
この数式において、HHmaxは踵ゾーン24に存在する突起16hの中で最も高いものの高さである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ靴に関する。詳細には、本発明は、ゴルフ靴のアウトソールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルファーがゴルフボールを打撃するとき、左右の爪先を結ぶ線が打撃方向とほぼ平行となるようにアドレスする。右利きのゴルファーのアドレスでは、左足が打撃方向前側に位置し、右足が打撃方向後側に位置する。アドレスでは、ゴルフクラブのヘッドはゴルフボールの近くに位置する。この状態からゴルファーはテイクバックを開始し、ヘッドを後へ、次いで上方へと振り上げる。最もヘッドが振り上げられた位置がトップである。トップからダウンスイングが開始されてヘッドが振り下ろされ、ヘッドがゴルフボールと衝突する(インパクト)。インパクト後、ゴルファーはゴルフクラブを前方へ、次いで上方へと振る(フォロースルー)。フォロースルーの後、ゴルフクラブが静止する(フィニッシュ)。
【0003】
スイングにおいて、ゴルファーの両足には大きな力がかかる。この力によって、ゴルフ靴が地面とスリップを起こすことがある。スリップが起こると、スイングフォームが乱れてミスショットが発生する。特に、トップからインパクトにかけて、スリップが生じやすい。
【0004】
底面に金属又はセラミクスからなるスパイクピンを備えたゴルフ靴が存在する。スパイクピンは、スリップを防止する。しかし、このゴルフ靴では、スパイクピンがグリーン上の芝生、クラブハウスの床、ゴルフコース中に設けられた歩行用通路の路面等を傷める。スパイクピンを備えたゴルフ靴の使用を禁止しているゴルフ場が多い。スパイクピンを備えたゴルフ靴では下からの突き上げ感があり、ゴルファーにとって履き心地のよいものではない。スパイクピンを備えたゴルフ靴は、近年ではあまり用いられていない。
【0005】
スパイクピンに代えてゴム又は合成樹脂からなる突起が底面に設けられたゴルフ靴が、普及している。このようなゴルフ靴は、特開2003−204805公報に開示されている。このゴルフ靴では、芝生等が傷つけられることが少ない。このゴルフ靴は、履き心地に優れる。しかしこのゴルフ靴では、スパイクピンを有するゴルフ靴に比べ、防滑性能が十分ではない。
【0006】
右利きのゴルファーは、トップからフィニッシュにかけて、左足を軸としてボディターンを行う。同時にゴルファーは、右足で地面を蹴ってその力をゴルフボールに伝える。右利きのゴルファーは、左足を軸足として使い、右足を蹴足として使う。左利きゴルファーの場合は、右足を軸足として使い、左足を蹴足として使う。軸足と蹴足との役割の相違が考慮されたゴルフ靴が、特開2001−299406公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−204805公報
【特許文献1】特開2001−299406公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
突起を備えたゴルフ靴の防滑性能は、スパイクピンを備えたゴルフ靴のそれに比べて十分ではない。本発明の目的は、防滑性能に優れたゴルフ靴の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴルフ靴は、アウトソールを備えている。このアウトソールは、ベースと、このベースから突出する多数の突起とを有する。このゴルフ靴は、下記数式(1)を満たす。
HTmax > HCmax (1)
この数式において、HTmaxは爪先ゾーンに存在する突起の中で最も高いものの高さであり、HCmaxはセンターゾーンに存在する突起の中で最も高いものの高さである。上記アウトソールの底面の輪郭に画かれうる最長線の長さが長さLとされ、上記最長線の爪先側端からの距離が0.10Lである最長線上の点を通過し上記最長線と直交する直線が第一区画線とされ、上記最長線の踵側端からの距離が0.10Lである最長線上の点を通過し上記最長線と直交する直線が第二区画線とされたとき、上記第一区画線よりも爪先側のゾーンが爪先ゾーンであり、上記第一区画線及び第二区画線に挟まれたゾーンがセンターゾーンである。
【0010】
好ましくは、高さHTmaxとHCmaxとの差は、0.3mm以上である。
【0011】
好ましくは、ゴルフ靴は下記数式(2)を満たす。
HHmax > HCmax (2)
この数式において、HHmaxは踵ゾーンに存在する突起の中で最も高いものの高さである。第二区画線よりも踵側のゾーンが、踵ゾーンである。
【0012】
好ましくは、高さHHmaxとHCmaxとの差は、0.3mm以上である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るゴルフ靴が軸足に着用されたとき、爪先ゾーンに存在しかつ大きな高さを有する突起が、トップにおいて地面に突き刺さる。この突き刺さりにより、トップでの軸足のスリップが抑制される。このゴルフ靴が蹴足に着用されたとき、爪先ゾーンに存在しかつ大きな高さを有する突起が、インパクトにおいて地面に突き刺さる。この突き刺さりにより、インパクトでの蹴足のスリップが抑制される。このゴルフ靴は、防滑性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフ靴が示された一部切欠断面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフ靴のアウトソールが示された底面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1に示されたゴルフ靴2は、アッパー4とソール6とを備えている。ソール6は、インソール8、ミッドソール10及びアウトソール12からなる。図1において、符号Yで示されているのは長さ方向であり、符号Zで示されているのは鉛直方向である。
【0017】
アッパー4には、既知の材料が用いられる。天然皮革、合成皮革、人工皮革、織布等が、アッパー4に用いられうる。アッパー4の内面に、内材が貼り付けられてもよい。典型的な内材は、織布である。内材として、透湿防水材料が用いられてもよい。典型的な透湿防水材料は、ゴアテックス(登録商標)からなるブーティである。
【0018】
インソール8は、ミッドソール10と積層されている。インソール8は、織布又は発泡合成樹脂からなる。インソール8は、足と接触する。このインソール8は、ゴルフ靴2を履く動作において、足の滑りに寄与する。インソール8はさらに、履き心地に寄与する。インソール8が設けられなくてもよい。
【0019】
ミッドソール10は、発泡体からなる。好ましくは、ミッドソール10は、多数の独立気泡を含む。着地時に、ミッドソール10は圧縮変形を起こす。この圧縮変形により、衝撃が吸収される。ミッドソール10における好ましい基材ポリマーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である。衝撃吸収性の観点から、ミッドソール10の硬度は70以下が好ましく、65以下が特に好ましい。強度の観点から、硬度は40以上が好ましい。硬度は、「JIS K 6253」の規定に準拠して、タイプAのデュロメーターにて測定される。
【0020】
アウトソール12は、ミッドソール10の下側に位置している。アウトソール12は、ミッドソール10と接合されている。接合は、接着剤によって達成されうる。アウトソール12は、架橋ゴムからなる。好ましい基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)及びウレタンゴムが例示される。アウトソール12に、合成樹脂又は熱可塑性エラストマーが用いられてもよい。アウトソール12は、気泡を含まない。耐摩耗性の観点から、アウトソール12の硬度は70以上が好ましく、75以上が特に好ましい。足の変形への追従性の観点から、硬度は85以下が好ましく、80以下が特に好ましい。硬度は、「JIS K 6253」の規定に準拠して、タイプAのデュロメーターにて測定される。
【0021】
図2には、アウトソール12の底面が示されている。図2において符号Xで示されているのは、幅方向である。このアウトソール12は、左足用である。換言すれば、このアウトソール12は、右利きゴルファーにとっての軸足用であり、左利きゴルファーにとっての蹴足用である。右足用のアウトソール12は、図2に示された形状が反転した形状を有する。
【0022】
図2及び3に示されるように、このアウトソール12は、ベース14と多数の突起16とを備えている。それぞれの突起16は、ベース14から、鉛直方向下向きに突出している。この突起16は、ゴルフ靴2の防滑性能に寄与する。突起16は、接地面18を有している。防滑性能の観点から、突起16とこれに隣接する他の突起16の間の距離は、5mm以上が好ましい。
【0023】
図2において符号Smで示されているのは、最長線である。最長線Smは、アウトソール12の底面の輪郭内に画かれうる線分の中で最も長い線分である。最長線Smの長さは、符号Lで示されている。符号Ptで示されているのは最長線Smの爪先側端であり、符号Phで示されているのは最長線Smの踵側端である。最長線Smは、長さ方向Yに沿っている。
【0024】
図2には、第一区画線S1が示されている。第一区画線S1は、点P1を通過する。点P1と爪先側端Ptとの距離は、最長線Smの長さLの0.10倍である。第一区画線S1は、最長線Smと直交している。
【0025】
図2には、第二区画線S2が示されている。第二区画線S2は、点P2を通過する。点P2と踵側端Phとの距離は、最長線Smの長さLの0.10倍である。第二区画線S2は、最長線Smと直交している。
【0026】
図2に示されるように、アウトソール12の底面は、爪先ゾーン20、センターゾーン22及び踵ゾーン24に区画されうる。爪先ゾーン20は、第一区画線S1よりも爪先側に位置している。センターゾーン22は、第一区画線S1及び第二区画線S2に挟まれている。踵ゾーン24は、第二区画線S2よりも踵側に位置している。
【0027】
爪先ゾーン20、センターゾーン22及び踵ゾーン24は、それぞれ、突起16を有している。接地面18が第一区画線S1よりも爪先側にある突起16tは、爪先ゾーン20に属する。接地面18が第一区画線S1と第二区画線S2との間にある突起16cは、センターゾーン22に属する。接地面18が第二区画線S2よりも踵側にある突起16hは、踵ゾーン24に属する。
【0028】
接地面18が第一区画線S1と交差し、かつ、接地面18のうち第一区画線S1よりも爪先側の部分の面積が接地面18のうち第一区画線S1よりも踵側の部分の面積よりも大きい突起16は、爪先ゾーン20に属する。接地面18が第一区画線S1と交差し、かつ、接地面18のうち第一区画線S1よりも踵側の部分の面積が接地面18のうち第一区画線S1よりも爪先側の部分の面積よりも大きい突起16は、センターゾーン22に属する。
【0029】
接地面18が第二区画線S2と交差し、かつ、接地面18のうち第二区画線S2よりも爪先側の部分の面積が接地面18のうち第二区画線S2よりも踵側の部分の面積よりも大きい突起16は、センターゾーン22に属する。接地面18が第二区画線S2と交差し、かつ、接地面18のうち第二区画線S2よりも踵側の部分の面積が接地面18のうち第二区画線S2よりも爪先側の部分の面積よりも大きい突起16は、踵ゾーン24に属する。
【0030】
図3において、矢印HTで示されているのは爪先ゾーン20に存在する突起16tの高さであり、矢印HCで示されているのはセンターゾーン22に存在する突起16cの高さであり、矢印HHで示されているのは踵ゾーン24に存在する突起16hの高さである。防滑性能の観点から、これら突起16の高さ(HT、HC及びHH)は2mm以上が好ましく、4mm以上が特に好ましい。突起16の剛性の観点から、この高さは15mm以下が好ましく、12mm以下が特に好ましい。
【0031】
このアウトソール12は、下記数式(1)を満たす。
HTmax > HCmax (1)
この数式において、HTmaxは爪先ゾーン20に存在する突起16tの中で最も高いものの高さであり、HCmaxはセンターゾーン22に存在する突起16cの中で最も高いものの高さである。HTmaxは、HCmaxよりも大きい。換言すれば、このアウトソール12は、大きな高さを有する突起16tを爪先ゾーン20に備えている。
【0032】
スイングのトップにおいて、軸足の爪先ゾーン20に大きな力がかかる。このゴルフ靴2が軸足に着用されたとき、爪先ゾーン20に存在しかつ大きな高さを有する突起16tが、トップにおいて地面に突き刺さる。センターゾーン22に存在する突起16cは低いので、爪先ゾーン20に存在する突起16tの突き刺さりを妨げない。このゴルフ靴2では、トップでの軸足のスリップが抑制される。
【0033】
インパクトにおいて、蹴足の爪先ゾーン20に大きな力がかかる。このゴルフ靴2が蹴足に着用されたとき、爪先ゾーン20に存在しかつ大きな高さを有する突起16tが、インパクトにおいて地面に突き刺さる。センターゾーン22に存在する突起16cは低いので、爪先ゾーン20に存在する突起16tの突き刺さりを妨げない。このゴルフ靴2では、インパクトでの蹴足のスリップが抑制される。
【0034】
好ましくは、爪先ゾーン20に存在する突起16tの中で最も高い突起16tは、最長線Smよりもインサイドに存在する。この突起16tは、トップ及びインパクトにおいて、スリップを十分に抑制する。
【0035】
爪先ゾーン20に存在する全ての突起16tが、HCmaxより大きな高さHTを有してもよい。爪先ゾーン20に存在する突起16tの中の一部が、HCmaxより大きな高さHTを有してもよい。爪先ゾーン20に存在し、かつHCmaxより大きな高さHTを有する突起16tの数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が特に好ましい。爪先ゾーン20に存在する突起16tの総数は、4以上が好ましく、6以上が特に好ましい。
【0036】
防滑性能の観点から、差(HTmax−HCmax)は0.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、4.0mm以上が特に好ましい。躓き防止及び履き心地の観点から、差(HTmax−HCmax)は7.0mm以下が好ましく、5.0mm以下が特に好ましい。
【0037】
好ましくは、このアウトソール12は、下記数式(3)を満たす。
HTave > HCave (3)
この数式において、HTaveは爪先ゾーン20に存在する全ての突起16tの高さHTの平均値であり、HCaveはセンターゾーン22に存在する全ての突起16cの高さHCの平均値である。この数式(3)を満たすゴルフ靴2は、防滑性能に優れる。防滑性能の観点から、差(HTave−HCave)は0.3mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。躓き防止及び履き心地の観点から、差(HTave−HCave)は7.0mm以下が好ましく、5.0mm以下が特に好ましい。
【0038】
爪先ゾーン20に存在しかつHCmaxより大きな高さHTを有する突起16tの接地面積は、150mm以下が好ましい。接地面積が150mm以下である突起16tは、地面によく突き刺さる。この観点から、接地面積は120mm以下がより好ましく、100mm以下が特に好ましい。接地面積は、10mm以上が好ましい。
【0039】
このアウトソール12は、下記数式(2)を満たす。
HHmax > HCmax (2)
この数式において、HHmaxは踵ゾーン24に存在する突起16hの中で最も高いものの高さであり、HCmaxはセンターゾーン22に存在する突起16cの中で最も高いものの高さである。HHmaxは、HCmaxよりも大きい。換言すれば、このアウトソール12は、大きな高さを有する突起16tを踵ゾーン24に備えている。
【0040】
アドレスからトップにかけて、ゴルファーの上半身が、下半身に対して捻られる。インパクトでは、この捻りの戻りにより、ゴルフクラブのヘッドが高速で移動する。この捻りは、蹴足のゴルフ靴2に回転の力をかける。具体的には、爪先がアウトサイドに移動し踵がインサイドに移動する方向の力が、ゴルフ靴2にかかる。
【0041】
このゴルフ靴2が蹴足に着用されたとき、爪先ゾーン20に存在しかつ大きな高さを有する突起16tと、踵ゾーン24に存在しかつ大きな高さを有する突起16hとが、地面に突き刺さる。これらの突起16の突き刺さりにより、ゴルフ靴2の回転が抑制される。このゴルフ靴2を着用したゴルファーは、下半身に対して上半身を、十分に捻ることができる。
【0042】
インパクトでは、軸足のゴルフ靴2に回転の力がかかる。具体的には、爪先がアウトサイドに移動し踵がインサイドに移動する方向の力が、ゴルフ靴2にかかる。このゴルフ靴2が軸足に着用されたとき、爪先ゾーン20に存在しかつ大きな高さを有する突起16tと、踵ゾーン24に存在しかつ大きな高さを有する突起16hとが、地面に突き刺さる。これらの突起16の突き刺さりにより、ゴルフ靴2の回転が抑制される。軸足のゴルフ靴2の回転が抑制されたスイングでは、ゴルフボールに伝わるエネルギーが大きい。
【0043】
踵ゾーン24に存在する全ての突起16hが、HCmaxより大きな高さHHを有してもよい。踵ゾーン24に存在する突起16hの中の一部が、HCmaxより大きな高さHHを有してもよい。踵ゾーン24に存在し、かつHCmaxより大きな高さHHを有する突起16hの数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が特に好ましい。踵ゾーン24に存在する突起16hの総数は、4以上が好ましく、6以上が特に好ましい。
【0044】
防滑性能の観点から、差(HHmax−HCmax)は0.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、4.0mm以上が特に好ましい。躓き防止及び履き心地の観点から、差(HHmax−HCmax)は7.0mm以下が好ましく、5.0mm以下が特に好ましい。
【0045】
好ましくは、このアウトソール12は、下記数式(4)を満たす。
HHave > HCave (4)
この数式において、HHaveは踵ゾーン24に存在する全ての突起16tの高さHHの平均値であり、HCaveはセンターゾーン22に存在する全ての突起16cの高さHCの平均値である。この数式(4)を満たすゴルフ靴2は、防滑性能に優れる。防滑性能の観点から、差(HHave−HCave)は0.3mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。躓き防止及び履き心地の観点から、差(HHave−HCave)は7.0mm以下が好ましく、5.0mm以下が特に好ましい。
【0046】
踵ゾーン24に存在しかつHCmaxより大きな高さHHを有する突起16hの接地面積は、150mm以下が好ましい。接地面積が150mm以下である突起16hは、地面によく突き刺さる。この観点から、接地面積は120mm以下がより好ましく、100mm以下が特に好ましい。接地面積は、10mm以上が好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0048】
[実施例1]
100質量部のアクリロニトリル−ブタジエンゴム(日本ゼオン社の商品名「ニッポールDN200」)、45質量部のシリカ(デグサ社の商品名「ウルトラジルVN3」)、シランカップリング剤としての4.0質量部のビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフェン(デグサ社の商品名「Si69」 )、可塑剤としての2.0質量部のジオクチルフタレート(三建化工社の商品名「DOP」)、老化防止剤としての2.0質量部の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(大内新興化学工業社の商品名「ノクラック200」)、0.5質量部の他の老化防止剤「大内新興化学工業社の商品名「サンノックN」)、3.0質量部の酸化亜鉛及び1.0質量部のステアリン酸をバンバリーミキサーで混練し、混練物を得た。この混練物をオープンロールに投入し、0.5質量部の硫黄、加硫促進剤としての1.3質量部のジベンゾチアジルジスルフィド(大内新興化学工業社の商品名「ノクセラーDM」)、他の加硫促進剤としての0.7質量部のテトラエチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業社の商品名「ノクセラーTET」)及びさらに他の加硫促進剤としての0.1質量部のジ−o−トリルグアニジン(大内新興化学工業社の商品名「ノクセラーDT」)を添加して混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を、金型のキャビティに充填した。そして、160℃の温度下で8分間加圧及び加熱して、アウトソールを得た。このアウトソールは、図2及び3に示された形状を有している。このアウトソールにミッドソール、インソール及びアッパーを取り付けて、実施例1のゴルフ靴を得た。
【0049】
このゴルフ靴は、爪先ゾーンに存在し高さが9.0mmである8個の突起を備えている。このゴルフ靴は、センターゾーンに存在し高さが5.0mmである81個の突起を備えている。このゴルフ靴は、踵ゾーンに存在し高さが5.0mmである8個の突起を備えている。
【0050】
[実施例2−4及び比較例]
他のモールドを用い、爪先ゾーンの突起の高さを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−4及び比較例のゴルフ靴を得た。
【0051】
[実施例5−8]
他のモールドを用い、踵ゾーンの突起の高さを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5−8のゴルフ靴を得た。
【0052】
[実施例9−10]
他のモールドを用い、爪先ゾーンの突起の高さを下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例9−10のゴルフ靴を得た。実施例9のゴルフ靴の爪先ゾーンには、高さが5.0mmである6個の突起と、高さが9.0mmである2個の突起とが存在している。実施例10のゴルフ靴の爪先ゾーンには、高さが5.0mmである4個の突起と、高さが9.0mmである4個の突起とが存在している。
【0053】
[実施例11−12]
他のモールドを用い、踵ゾーンの突起の高さを下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例11−12のゴルフ靴を得た。実施例11のゴルフ靴の踵ゾーンには、高さが5.0mmである6個の突起と、高さが9.0mmである2個の突起とが存在している。実施例12のゴルフ靴の踵ゾーンには、高さが5.0mmである4個の突起と、高さが9.0mmである4個の突起とが存在している。
【0054】
[防滑性能]
ゴルフ靴をゴルファーに着用させ、ゴルフ場のティグラウンドで、ドライバーにてゴルフボールを打撃させた。10名のゴルファーに、防滑性能について、格付けさせた。この平均値が、下記の表1から3に示されている。この値が大きいほど好ましい。
【0055】
[躓き難さ]
ゴルフ靴をゴルファーに着用させ、ゴルフ場のフェアウエイを歩行させた。10名のゴルファーに、躓き難さについて、格付けさせた。この平均値が、下記の表1から3に示されている。この値が大きいほど好ましい。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
表1から3に示されるように、実施例のゴルフ靴は防滑性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るゴルフ靴は、ゴルフ場でのプレーのときに着用されうる。このゴルフ靴は、ドライビングレンジでのプラクティスのときにも着用されうる。
【符号の説明】
【0061】
2・・・ゴルフ靴
12・・・アウトソール
14・・・ベース
16、16t、16c、16h・・・突起
18・・・接地面
20・・・爪先ゾーン
22・・・センターゾーン
24・・・踵ゾーン
Sm・・・最長線
S1・・・第一区画線
S2・・・第二区画線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、このベースから突出する多数の突起とを有するアウトソールを備えており、下記数式(1)を満たすゴルフ靴。
HTmax > HCmax (1)
(この数式において、HTmaxは爪先ゾーンに存在する突起の中で最も高いものの高さであり、HCmaxはセンターゾーンに存在する突起の中で最も高いものの高さである。上記アウトソールの底面の輪郭に画かれうる最長線の長さが長さLとされ、上記最長線の爪先側端からの距離が0.10Lである最長線上の点を通過し上記最長線と直交する直線が第一区画線とされ、上記最長線の踵側端からの距離が0.10Lである最長線上の点を通過し上記最長線と直交する直線が第二区画線とされたとき、上記第一区画線よりも爪先側のゾーンが爪先ゾーンであり、上記第一区画線及び第二区画線に挟まれたゾーンがセンターゾーンである。)
【請求項2】
上記高さHTmaxとHCmaxとの差が0.3mm以上である請求項1に記載のゴルフ靴。
【請求項3】
下記数式(2)を満たす請求項1又は2に記載のゴルフ靴。
HHmax > HCmax (2)
(この数式において、HHmaxは踵ゾーンに存在する突起の中で最も高いものの高さである。上記第二区画線よりも踵側のゾーンが踵ゾーンである。)
【請求項4】
上記高さHHmaxとHCmaxとの差が0.3mm以上である請求項3に記載のゴルフ靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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