説明

サッカーシューズ

【課題】サッカーシューズの如何なる部位においてサッカーボールに対するタッチ及びキックを行うかの選択判断を可能とするようなサッカーシューズの構成を提供すること。
【解決手段】サッカーシューズ1の全領域又は一部領域において、当該サッカーシューズ1を着用したプレーヤーがサッカーボールをタッチし、かつキックする各位置を区分する区分領域21を表示するか、又はタッチし、かつキックするための目安となる各位置に、マークを表示することによって、適切な位置において、サッカーボールに対するタッチ及びキックを行うことを可能とするサッカーシューズ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッカーボール(以下「ボール」と略称する。)をタッチし、かつキックするために使用するサッカーシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレーヤーがサッカーシューズを着用したうえで、ボールをキックする(蹴る)場合において、ボールのスピード、回転の程度、及び方向をどのように設定するかは、ボールにおけるキックの対象となる位置、キックする脚部の移動方向、キックに伴う衝撃力だけでなく、サッカーシューズにおいてキックする位置によっても左右される。
【0003】
したがって、ボールをキックする場合には、ボールの如何なる位置を選択し、かつキックする足の方向、キックに伴う衝撃の程度を選択するだけでなく、サッカーシューズの如何なる位置においてタッチ及びキックするかもまた重要な選択判断の対象となる。
【0004】
従来、サッカーの練習においては、前2者については色々と詳細な指導が行われているが、サッカーシューズの如何なる部位においてタッチ及びキックするかについては、精々上側、左横、右横、底、後側などという大まかな区分けによる指導が行われているに過ぎない。
【0005】
その原因としては、従来のサッカーシューズにおいては、サッカーの上達のために如何なる位置においてタッチ及びキックするかを選択し、かつ判断を行うことを可能とするような構成が採用されていないことが根本原因となっている。
【0006】
因みに、特許文献1は、ボールをキックした際、ボールの回転及びカーブを増加するため、サッカーシューズの上部に複数の突起を設け、サッカーの上達に寄与し得る構成を提供しているが、当該構成の場合には、サッカーシューズの上部の突起においてタッチ及びキックを行うことが前提となっているに過ぎない。
【0007】
他方、特許文献2は、サッカーシューズの特定の位置に圧力応答検出要素を設け、検出された圧力に応じてボールに対するキックの程度を調整することを可能とする構成を提供しているが、当該構成の場合には、圧力応答検出要素を設けた部位においてのみタッチ及びキックを行うことが前提となっているに過ぎない。
【0008】
【特許文献1】特表2004−520113号公報。
【特許文献2】特表2005−507678号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、サッカーシューズの如何なる部位においてボールに対するタッチ及びキックを行うかの選択判断を可能とするようなサッカーシューズの構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)サッカーシューズの全領域又は一部領域において、当該サッカーシューズを着用したプレーヤーがサッカーボールをタッチし、かつキックする各位置が所属する区分領域を表示したことに基づくサッカーシューズ、
(2)サッカーシューズの全領域又は一部領域において、当該サッカーシューズを着用したプレーヤーがボールをタッチし、かつキックするための目安となる各位置に、マークを表示したことに基づくサッカーシューズ、
からなる。
【発明の効果】
【0011】
前記(1)及び(2)の基本構成に基づいて、サッカーシューズを着用したプレーヤーは、所定の位置に到来して来るボールに対し、サッカーシューズの如何なる位置においてタッチ及びキックを行うかについて、指導者からの指導を受けながら、又は自主的に適切な選択判断しながら、タッチ及びキックを行うことが可能となり、このような選択判断を蓄積し、ボールに対して、キックする脚部の移動方向、キックを行う衝撃力と相俟ってサッカーシューズの各区分領域(前記(1)の構成の場合)又は目安となるマーク又はその近傍(前記(2)の構成の場合)の基準について、自らの経験を蓄積することによって、効率的にタッチ及びキックのトレーニングを実現し、ひいてはキックを中心として、サッカー技術を上達することも不可能ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
前記(1)、(2)の基本構成からも明らかなように、本発明においては、サッカーシューズ1の全領域又は一部領域において区分領域又はマークを表示することを構成要件としている。
【0013】
図1は、前記(1)の基本構成に対応しており、区分領域21がカラーによって区分されているか、各領域毎に数値、若しくは文字、若しくは他の識別符合を囲んだ状態にある境界ラインによって区分されていることを特徴とする実施形態を示している。
【0014】
即ち、図1においては、各境界ラインによって区分された各領域に、A、B、C、D…の表示が行われているが、当該表示は、少なくとも隣接し合う領域において相互に異なるカラー、数字、文字又は他の識別符合を表しており(単に「A」、「B」、「C」、「D」…というアルファベット文字自体のみを表す訳ではない。)、このような表示を伴う区分領域21を設けることによって、プレーヤーは、所定位置に到来して来たボールに対し、サッカーシューズ1のうちのタッチ及びキックを行う位置を区分領域21に従って適宜選択判断したうえで、キックを行う脚部の方向、更にはキックに伴う衝撃力の選択判断と相俟って、適切なキックを行うことができる。
【0015】
しかも、前記選択判断は、指導者から区画の位置を特定してタッチ及びキックを行うための指令の伝達(例えば、左側側部の赤色部分をキックせよという指令の伝達)に対応して、プレーヤーが行う場合、更には前記指導者による指令の伝達を伴わずに、プレーヤーが意識的に自主トレーニングとして行う場合の何れのトレーニングも実現可能である。
【0016】
区分領域21の設定基準は、確一的ではなく、プレーヤーの技術レベルに応じて相違するが、初心者の場合には区分領域21の数は少なく、かつ区分の仕方も単純であるのに対し、上達者の場合には区分の数が多くなり、しかも区分領域21の形状もまた複雑となる。
【0017】
サッカーシューズ1のメーカーにおいては、各プレーヤーの技術レベルの段階において、好ましい区分領域21の設定について多くのプレーヤーから経験による好ましい区分の基準に関するデータにつき統計処理を行ったうえで、標準的かつ合理的な区分領域21を設定すると良い。
【0018】
図1に示す前記(1)の実施形態において、カラーによって区分を行う場合には、各カラーの隣接部分が境界となるため、境界ラインは不要であるが、カラー表示を採用しない場合には、数字、文字、その他の識別符合を囲む境界ラインを通常設定している。
【0019】
前記カラー及び識別符合は、全て異なるような実施形態、又はサッカーシューズ1の左側面部、右側面部、後面部、底面部においてそれぞれ異なるように設定するも、これらの各面部が相違している場合には、同一のカラー表示又は識別符合が実現し得るような実施形態の何れをも採用可能である。
【0020】
図2は前記(2)の基本構成に対応しており、マーク22として、数値、又は文字、又は図形の何れかを採用することを特徴とする実施形態を示している。
【0021】
即ち、図2において、a、b、c、…によって表示されている位置は、前記(2)の基本構成のマーク22であって、数値、又は文字、又は他の識別符合(例えば図形など)の何れかを表しており(単に「a」、「b」、「c」、「d」…というアルファベット文字自体のみを表す訳ではない。)、プレーヤーはこのようなマーク22を設けることによって所定の位置に到来したボールに対し、サッカーシューズ1のうちのタッチ及びキックを行う位置を、前記各マーク22又はその近傍の位置に従って適宜選択判断したうえで、キックを行う脚部の方向、更にはキックに伴う衝撃力の選択判断と相俟って、適切なキックを行うことができる。
【0022】
前記選択判断は、指導者の指令の伝達を伴う場合のトレーニング及び自主的トレーニングの何れをも実現可能である点は、前記(1)の基本構成の場合と同様である。
但し、前記(2)の基本構成の場合において、指導者の指令の伝達を伴わずに単なる自主的トレーニングのみを行う場合には、マーク22が単一の表示(例えば○印、×印など)であっても、プレーヤーが自主的に各マーク22の位置を選択判断できるならば、そのような単一マーク22の場合も、前記(2)の基本構成の実施形態に該当する。
【0023】
前記(2)の基本構成における各マーク22の位置は、前記(1)の基本構成における各区分領域21の中心位置に概略一致している。
【0024】
したがって、各マーク22の設定基準についても、前記(1)の区分領域21の場合と同様、プレーヤーの技術レベルに応じて相違すると共に、各メーカーにおいては、各技術レベルの段階にあるプレーヤーの経験による好ましいマーク22の位置に関するデータにつき、統計処理を行ったうえで、標準的かつ合理的なマーク22の位置を設定すると良い。
【0025】
マーク22を表す、数値、文字、図形などの識別符合は、全て相互に異なる実施形態、及び左側面部、右側面部、後面部、底面部の各面部において異なるも、異なる面部との間では同一の識別符合が存在し得るような実施形態の何れをも採用することが可能である。
【0026】
前記(1)、(2)の構成においては、それぞれ区分領域21又はマーク22をサッカーシューズ1の全領域又は少なくとも一部領域に表示しているが、一部領域の場合に底部のみに表示する方式は通常採用されていない(底部は最も目につき難い部位であり、当該部位のみに表示を行うことは、本発明の目的効果を達するうえで非効率的だから。)。
【0027】
前記(1)の基本構成における区分領域21、前記(2)の基本構成におけるマーク22は、所定のデザイン性を発揮することがあり、この点においては、従来技術のサッカーシューズ1と共通している。
しかしながら、本願発明の区分領域21及びマーク22によるデザインは、あくまでサッカーボールに対するタッチ及びキックの部位の位置の選択判断の行い易さを基準としており、従来技術の場合のような美的感情の惹起を基準としている訳ではない以上、自ずと従来技術によるデザインと相違している(例えば、従来技術のデザインの場合には、当該デザインを表す部位が局所的に集中しているのに対し、本発明の区分領域21又はマーク22によるデザインは、全領域又は一部領域において集中せずに分布している点において明らかに相違している。)。
【0028】
以下実施例に従って説明する。
【実施例1】
【0029】
実施例1においては、図3に示すように、前記(1)の構成において、区分領域21が境界ラインに囲まれた識別符合によって区分すると共に、各区分領域21における数字、又は文字、又は他の識別符合について、それぞれ異なるカラーによって設定していることを特徴としている(図3は、A、B、C、D…による識別符合をそれぞれ「黒」、「赤」などのカラーによって表示されることを示している。)。
【0030】
このような文字又は数字による識別符合を異なるカラーとすることによって、プレーヤー及び指導者は、カラーによる峻別のみならず前記の如き識別符合による峻別の双方に基づいて選択判断を行うことが可能となり、極めて好都合である。
尚、カラーと識別符合の組み合わせとしてサッカーシューズ1の全領域又は同一の面部の領域において、同一のカラーによる区分領域21を採用しながら異なる符合を表示するような実施例(但し、同一のカラーによる区分領域21は、相互に隣接しないように表示する。)も採用可能であり、この場合においても、図3に示す実施例1と同様の効果を発揮することが可能となる。
【実施例2】
【0031】
実施例2においては、前記(2)の構成において図4に示すように、各マーク22の位置を異なるカラーによる数字又は文字、又は図形によって設定していることを特徴としている(図4は、a、b、c、d…による識別符合をそれぞれ「黒」、「赤」などのカラーによって表示されることを示している。)。
【0032】
このような実施例2においては、プレーヤー及び指導者は各マーク22又はその近傍の位置をカラーによる峻別のみならず、数字又は文字、又は図形などの他の識別符合による峻別の双方に基づいて選択判断を行うことが可能となり、極めて便利である。
【実施例3】
【0033】
実施例3は、前記(1)、(2)の基本構成の組み合わせであって、図5に示すように、各区分領域21の各中心位置にポイントとなる記号を表示していることを特徴としている(図5は、マーク22として○印による単一の表示を採用したうえで、当該マーク22について「黒」、「赤」などの種々のカラー表示を示している。)。
【0034】
このような実施例3の構成においては、ユーザーは各区分領域21に基づく選択判断だけでなく、各マーク22及びその近傍に基づく選択判断をも行うことが可能となり、極めて便利である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願発明は、主として練習用のサッカーシューズに利用可能であるが、試合用のサッカーシューズにおいても、日頃の練習成果を踏まえたうえで利用可能である以上、練習用及び試合用の双方のサッカーシューズの製造分野においても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】前記(1)の基本構成の実施形態を示しており、(a)は左側面部、(b)は右側面部、(c)は上面部、(d)は後面部、(e)は底面部にそれぞれ対応している。
【図2】前記(2)の基本構成の実施形態を示しており、(a)は左側面部、(b)は右側面部、(c)は上面部、(d)は後面部、(e)は底面部にそれぞれ対応している。
【図3】実施例1の構成を示しており、特に左側面部を例示している。
【図4】実施例2の構成を示しており、特に左側面部を例示している。
【図5】実施例3の構成を示しており、特に左側面部を例示している。
【符号の説明】
【0037】
1 サッカーシューズ
21 区分領域
22 マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッカーシューズの全領域又は一部領域において、当該サッカーシューズを着用したプレーヤーがサッカーボールをタッチし、かつキックする各位置が所属する区分領域を表示したことに基づくサッカーシューズ。
【請求項2】
区分領域がカラーによって区分されているか、各領域毎に同一又は異なるカラーによる数値、若しくは文字、若しくは他の識別符合を囲んだ状態にある境界ラインによって区分されていることを特徴とする請求項1記載のサッカーシューズ。
【請求項3】
サッカーシューズの全領域又は一部領域において、当該サッカーシューズを着用したプレーヤーがサッカーボールをタッチし、かつキックするための目安となる各位置に、マークを表示したことに基づくサッカーシューズ。
【請求項4】
マークとして、同一若しくは異なるカラーによる数値、又は文字、又は図形の何れかを採用することを特徴とする請求項3記載のサッカーシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−131289(P2009−131289A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50024(P2006−50024)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(506067497)
【Fターム(参考)】