説明

サッシ

【課題】サッシの障子を構成する縦框について、火災発生時にも室内外方向の振れを防止して確実に室内側面を縦枠の気密材に当接した状態を維持し、隙間の発生を防止することのできるサッシを提供する。
【解決手段】左右の縦枠12は、それぞれ閉じた状態の内障子2または外障子3の外周面に向かって突出する中間フィン部12dと、中間フィン部12dより室内側から突出して内障子2または外障子3の室内側面と対向する室内フィン部12fとを、内周面12aに有し、縦框22は、縦枠12の中間フィン部12dと対向する縦傾斜面部24bを外周面に有し、縦傾斜面部24bは金属材により形成されると共に、室外内周側から室内外周側に向かう傾斜面状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に設けられる枠体内に内外障子を納めたサッシに関し、特に火災発生時に高温に晒されても枠体と障子の位置関係を保つことで隙間を発生させないようにしたサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に設けられるサッシにおいて、枠体内に内外障子を引き違い状に納めてなる引き違いサッシが広く用いられている。引き違いサッシを含むサッシには、火災が発生した場合にも、一定時間以上、閉塞状態を維持する防火性能が求められる。防火性能を十分に確保するためには、サッシが高温に晒されたとしても、サッシを構成する枠体と障子との位置関係をそのままに保つことで、枠体と障子の間に隙間を生じさせないようにすることが重要である。
【0003】
サッシには、樹脂製のサッシはもちろんのこと、金属製のサッシにおいても、樹脂部材が各所に用いられている。このような樹脂部材は、火災時の高温に晒されると溶融するから、樹脂部材が溶融しても枠体と障子の位置関係が保たれるようにする必要がある。樹脂サッシにおいては、例えば枠体側と障子側にそれぞれ金属製の部品を設け、火災発生時にはそれらが掛かり合うようにすることで、障子の脱落を防ぐようにしたものが知られている。このようなサッシとしては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−265646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属製のサッシにおいては、火災時に高温に晒されることで熱膨張が生じ、枠体を構成する枠材や障子を構成する框材が大きく伸びる現象が発生する。枠材や框材の端部に隙間がある場合には、これらの部材は長手方向に伸びていくが、隙間がない場合には、それ以上伸びることができないため、反りが発生して部材が屈曲する。このような屈曲が発生すると、枠体と障子の間には隙間が生じるから、その隙間から火炎が侵入し、防火性能を十分に確保することができない。
【0006】
引き違いサッシの障子を構成する縦框は、障子を閉鎖した状態で枠体を構成する縦枠内周面と対向し、室内側面が縦枠の長手方向に沿って設けられる気密材に当接することで、気密性を確保するようにしている。通常時には、縦框の外周面に設けられる樹脂製の振止部品が、縦枠内周面に設けられるフィン部に当接し、縦框の室内外方向の振れを規制して確実に気密材に対し当接するようにしている。
【0007】
しかし、前述のように火災が発生した場合には振止部品は溶融してしまうから、縦框の室内外方向の振れを規制するものがなく、縦框と縦枠のフィン部との間に隙間を生じてしまうこととなるので、これを防止する必要があった。
【0008】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、サッシの障子を構成する縦框について、火災発生時にも室内外方向の振れを防止して確実に室内側面を縦枠の気密材に当接した状態を維持し、隙間の発生を防止することのできるサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係るサッシは、上下枠と左右の縦枠を枠組みしてなる枠体に、上下框と縦框及び召合わせ框を框組みしてなる框体を有する内障子と外障子を納めてなるサッシにおいて、
前記左右の縦枠は、それぞれ閉じた状態の前記内障子または外障子の外周面に向かって突出する中間フィン部と、該中間フィン部より室内側から突出して前記内障子または外障子の室内側面と対向する室内フィン部とを、内周面に有し、
前記縦框は、前記縦枠の中間フィン部と対向する縦傾斜面部を外周面に有し、該縦傾斜面部は金属材により形成されると共に、室外内周側から室内外周側に向かう傾斜面状に形成されることを特徴として構成されている。
【0010】
また、本発明に係るサッシは、前記縦框は前記内障子または外障子が閉じた状態で前記中間フィン部の室内側面に当接する樹脂製の縦引き寄せ部材を外周面に備え、該縦引き寄せ部材が前記中間フィン部の室内側面に当接した状態で、前記縦傾斜面部は前記中間フィン部と離隔していることを特徴として構成されている。
【0011】
さらに、本発明に係るサッシは、前記縦框の長手方向中間位置に前記縦傾斜面部を有する金属製の傾斜面部材が取付けられてなることを特徴として構成されている。
【0012】
さらにまた、本発明に係るサッシは、前記傾斜面部材は前記縦框の外周面に固定される基部を備え、前記傾斜面部材の前記縦傾斜面部は前記基部から立ち上がり状に形成されて前記中間フィン部に近接対向することを特徴として構成されている。
【0013】
そして、本発明に係るサッシは、前記傾斜面部材と縦引き寄せ部材とが一体とされてなることを特徴として構成されている。
【0014】
また、本発明に係るサッシは、前記縦框の外周面に傾斜面を形成することにより前記縦傾斜面部を構成することを特徴として構成されている。
【0015】
さらに、本発明に係るサッシは、前記縦框には上端部に樹脂製の上振止部品が取付けられ、該上振止部品は前記上枠に形成される上レール部に対し長手方向に沿って摺動自在な飲込部を備えると共に、金属製の上端引き寄せ部材を一体的に有してなり、該上端引き寄せ部材は前記飲込部を構成する側壁に沿う側面部を有し、該側面部の外周側端部に前記縦傾斜面部が形成されることを特徴として構成されている。
【0016】
また、本発明に係るサッシは、上下枠と左右の縦枠を枠組みしてなる枠体に、上下框と縦框及び召合わせ框を框組みしてなる框体を有する内障子と外障子を納めてなるサッシにおいて、
前記左右の縦枠は、それぞれ閉じた状態の前記内障子または外障子の外周面に向かって突出する中間フィン部と、該中間フィン部より室内側から突出して前記内障子または外障子の室内側面と対向する室内フィン部とを、内周面に有し、
前記中間フィン部は、前記縦框の室内側面と対向する枠側縦傾斜面部を有し、該枠側縦傾斜面部は室内根元側から室外先端側に向かう傾斜面状に形成されることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るサッシによれば、縦框が縦枠の中間フィン部と対向する縦傾斜面部を外周面に有し、縦傾斜面部は金属材により形成され、室外内周側から室内外周側に向かう傾斜面状に形成されることにより、火災時にサッシが高温に晒され、熱膨張により縦框が縦枠側に移動すると、縦傾斜面部が中間フィン部の先端部に当接し、中間フィン部によって縦框が室内側に押し付けられるから、縦框の室内外方向への振れを防止して縦枠の室内フィン部に対する縦框の当接状態を維持し、縦枠と縦框の間に隙間を生じないようにすることができ、防火性能を高くすることができる。
【0018】
また、本発明に係るサッシによれば、樹脂製の縦引き寄せ部材が中間フィン部の室内側面に当接した状態で、縦傾斜面部は中間フィン部と離隔していることにより、通常時には縦傾斜面部が中間フィン部と干渉しないので、金属同士が擦れて傷を生じることなく縦引き寄せ部材で縦框の室内側への引き寄せをなし、火災発生時には縦傾斜面部により確実に縦框の室内側への引き寄せをなすことができる。
【0019】
さらに、本発明に係るサッシによれば、縦框の長手方向中間位置に縦傾斜面部を有する金属製の傾斜面部材が取付けられてなることにより、縦框に対し容易に縦傾斜面部を設けることができる。
【0020】
さらにまた、本発明に係るサッシによれば、傾斜面部材の縦傾斜面部は基部から立ち上がり状に形成されて中間フィン部に近接対向することにより、縦傾斜面部と中間フィン部との間隔を小さくして、火災発生時には確実に縦傾斜面部が中間フィン部に当接するようにできる。
【0021】
そして、本発明に係るサッシによれば、傾斜面部材と縦引き寄せ部材とが一体とされてなることにより、部品の取付を容易にすることができる。
【0022】
また、本発明に係るサッシによれば、縦框の外周面に傾斜面を形成することにより縦傾斜面部を構成することにより、縦傾斜面部を形成するために別部品を設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0023】
さらに、本発明に係るサッシによれば、上振止部品は金属製の上端引き寄せ部材を一体的に有し、上端引き寄せ部材は飲込部を構成する側壁に沿う側面部を有し、側面部の外周側端部に縦傾斜面部が形成されることにより、縦框の上端部においても縦傾斜面部を形成することができ、より確実な縦框の室内側への引き寄せをなすことができる。
【0024】
また、本発明に係るサッシによれば、中間フィン部は、縦框の室内側面と対向する枠側縦傾斜面部を有し、枠側縦傾斜面部は室内根元側から室外先端側に向かう傾斜面状に形成されることにより、縦枠に縦傾斜面部を形成しているので、縦傾斜面部を形成するために別部品を設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のサッシの縦断面図である。
【図2】本実施形態のサッシの横断面図である。
【図3】内障子の縦框付近の拡大横断面図である。
【図4】傾斜面部材及び縦引き寄せ部材を一体化した部材の斜視図である。
【図5】傾斜面部材及び縦引き寄せ部材の分解斜視図である。
【図6】図5を裏側から見た分解斜視図である。
【図7】火災発生時の状態における内障子の縦框付近の拡大横断面図である。
【図8】第2の実施例の縦傾斜面部を有する縦框付近の拡大横断面図である。
【図9】第2の実施例の縦傾斜面部を有する縦框付近の拡大横断面図である。
【図10】第2の実施例の縦傾斜面部が機能した状態における縦框付近の拡大横断面図である。
【図11】第3の実施例の縦傾斜面部を有する縦框付近の拡大横断面図である。
【図12】第3の実施例の縦傾斜面部が機能した状態における縦框付近の拡大横断面図である。
【図13】縦框を上方から平面視するサッシの拡大横断面図である。
【図14】上振止部品の斜視図である。
【図15】上端引き寄せ部材の斜視図である。
【図16】上端引き寄せ部材の縦傾斜面部が機能した状態における縦框を上方から平面視するサッシの拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には本実施形態のサッシの縦断面図を、図2には本実施形態のサッシの横断面図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、本実施形態のサッシは、建物開口部に取付けられる枠体1内に、内障子2と外障子3を引き違い状に納めてなる引き違いサッシである。
【0027】
枠体1は、いずれも金属材からなる上枠10と下枠11及び左右の縦枠12、12を方形状に枠組みして構成されている。内障子2と外障子3は、それぞれいずれも金属材からなる上框20と下框21、縦框22及び召合わせ框23を方形状に框組みしてなる框体4内に、ガラス板からなるパネル体5を納めて構成されている。
【0028】
枠体1を構成する上枠10は、内周面10aの室内外端部からそれぞれ垂直方向に伸びる室内側面10bと室外側面10cを備え、これら室内側面10bと室外側面10cの間には、内障子2の上辺を長手方向に案内する内上レール部10dと、外障子3の上辺を長手方向に案内する外上レール部10eとが、それぞれ内周面10aから突出状に形成されている。
【0029】
枠体1を構成する下枠11は、内周面11aが室内外方向に段差を有するように形成されており、室内側が高く、室外側が低くなっている。この内周面11aのうち高い側の室内側には、内障子2の下辺を長手方向に案内する内レール部11bが、内周面11aのうち低い側の室外側には、外障子3の下辺を長手方向に案内する外レール部11cが、それぞれ突出状に形成されている。
【0030】
下枠11の室内側面には、内障子2を構成する下框21の室内側面と対向する内障子対向部11dが形成され、その先端部には気密材11fが設けられて、この気密材11fが内障子2の室内側面に当接することで、内障子2下辺の気密性を確保している。また、下枠11には、内レール部11bの下部から室外側に突出し外障子3を構成する下框21の室内側面と対向する外障子対向部11eが形成され、その先端部には気密材11fが設けられて、この気密材11fが外障子3の室内側面に当接することで、外障子3下辺の気密性を確保している。
【0031】
枠体1を構成する縦枠12は、内周面12aの室内外端部からそれぞれ垂直方向に伸びる室内側面12bと室外側面12cを備えている。縦枠12のうち、閉じた状態の内障子2が配置される側の内周面12aには、内障子2の外周面に向かって突出する中間フィン部12dが形成されている。また、室内側面12bを構成する面のうち内周面12aより見付方向内側に突出する部分は、内障子2を構成する縦框22の室内側面と対向する室内フィン部12fとなっている。室内フィン部12fの先端部には、気密材12gが設けられて内障子2の室内側面に当接し、内障子2縦辺の気密性を確保している。
【0032】
縦枠12のうち、閉じた状態の外障子3が配置される側の内周面12aには、外障子3の外周面に向かって突出する中間フィン部12dが形成されている。また、中間フィン部12dより室内側の内周面12aからは、外障子3を構成する縦框22の室内側面と対向する室内フィン部12fが突出しており、その先端部には気密材12gが設けられて外障子3の室内側面に当接し、外障子3縦辺の気密性を確保している。
【0033】
框体4を構成する上框20は、内周側にはパネル体5の端部を納めるパネル飲込部20aを有し、外周側には上枠10の内上レール部10dまたは外上レール部10eを飲み込んで案内されるレール案内部20bを有している。レール案内部20bは断面凹状となっており、その開口付近には室内外にそれぞれ気密材20cが設けられていて、これらが内上レール部10dまたは外上レール部10eに当接することで、内障子2及び外障子3上辺の気密性を確保している。
【0034】
框体4を構成する下框21は、内周側にパネル体5の端部を納めるパネル飲込部21aを有している。下框21の外周側、すなわち下端部には戸車21dが設けられており、戸車21dが下枠11の内レール部11bまたは外レール部11cに載置されることにより、内障子2や外障子3を移動自在としている。
【0035】
下框21の室内側面には、下端部が下方に延出された室内面延出部21bが形成されている。内障子2の室内面延出部21bは下枠11の内障子対向部11dと対向し、外障子3の室内面延出部21bは下枠11の外障子対向部11eと対向して、気密材11fに当接する。下框21の室外側面にも、下端部が下方に延出された室外面延出部21cが形成されている。室外面延出部21cは、内レール部11bまたは外レール部11cの上端より下方まで延出されており、風雨の室内側への吹き込みを防止している。
【0036】
框体4を構成する縦框22は、内周側にパネル体5の端部を納めるパネル飲込部22aを有している。縦框22の外周側には縦枠12の中間フィン部12dを飲み込む凹状のフィン飲込部22cが形成されている。フィン飲込部22cを構成する室内側面は、縦枠12の室内フィン部12fに設けられる気密材12gに対して当接し、これによって内障子2及び外障子3縦辺の気密性を確保している。
【0037】
縦框22のパネル飲込部22aには、長手方向中間位置の室内側部分に、樹脂製のピース状からなる縦引き寄せ部材25が設けられている。縦引き寄せ部材25は、内障子2または外障子3が閉じた状態で、パネル飲込部22aの室内側面と縦枠12の中間フィン部12dとに挟まれる形状を有しており、内障子2または外障子3を閉じた際に、縦框22が室内外方向に振れないようにすると共に、内障子2または外障子3を室内側に引き寄せて、縦框22が確実に縦枠12の気密材12gに当接するようにしている。縦引き寄せ部材25は、縦枠12の中間フィン部12dに傷をつけないようにするため、樹脂によって形成されている。
【0038】
框体4を構成する召合わせ框23は、内周側にパネル体5の端部を納めるパネル飲込部23aを有している。また、外障子3を構成する召合わせ框23の室内側壁部23bと、内障子2を構成する召合わせ框23の室外側壁部23cには、それぞれ略L字状に形成され内障子2と外障子3が閉じた状態で互いに噛み合う煙返し部23gが形成されている。また、内障子2を構成する召合わせ框23の室外側壁部23cには、気密材23hが設けられている。煙返し部23gによって、内障子2と外障子3の召合わせ部分における隙間が塞がれ、さらに気密材23hによって召合わせ辺の気密性を確保している。
【0039】
次に、縦框22における防火性能の確保について詳細に説明する。火災が発生してサッシが高温に晒されると、縦框22に設けられている樹脂製の縦引き寄せ部材25は溶融して溶け落ちるから、そのままでは縦枠12と縦框22の間に隙間を生じ、防火性能を低下させる。そこで、本実施形態では、縦引き寄せ部材25が溶け落ちても、縦框22を室内側に引き寄せた状態を維持することにより、隙間の発生を防止し、防火性能を確保しようとしている。
【0040】
図3には、内障子2の縦框22付近の拡大横断面図を示している。この図に示すように、縦框22に設けられる縦引き寄せ部材25には、さらに金属製の傾斜面部材24が一体化されている。傾斜面部材24は、縦枠12の中間フィン部12dに近接対向する縦傾斜面部24bを有しており、この縦傾斜面部24bは、室外内周側から室内外周側に向かう傾斜面状に形成されている。
【0041】
図4には傾斜面部材24及び縦引き寄せ部材25を一体化した部材の斜視図を、図5と図6には傾斜面部材24及び縦引き寄せ部材25の分解斜視図を、それぞれ示している。金属材からなる傾斜面部材24は、縦框22の外周面に対して固定される基部24aを備え、この基部24aから縦傾斜面部24bが傾斜した立ち上がり状に形成されると共に、その両側には、縦引き寄せ部材25を固定するための嵌合部24dが垂直の立ち上がり状に形成されている。
【0042】
基部24aには縦框22に対してビス止めするための固定孔24cが形成されている。固定孔24cは、縁部が傾斜面状となるように形成されており、傾斜面部材24を固定するビス28の頭部が、基部24aの厚みより突出しないようにしている。これにより、ビス28が中間フィン部12dに干渉することを防止している。また、固定孔24cは若干長孔状となるように形成されており、傾斜面部材24の位置調整を可能としている。これによって、縦傾斜面部24bと中間フィン部12dとの位置関係を正確に調整することができる。
【0043】
縦引き寄せ部材25は、縦框22の先端に位置する側に、傾斜面状の引き寄せ面部25aが形成されている。引き寄せ面部25aは、内障子2を閉じる際に、中間フィン部12dの先端部に当接する。そしてこの引き寄せ面部25aが傾斜面状となっていることにより、縦引き寄せ部材25を円滑に中間フィン部12dの室内側に導くことができる。
【0044】
縦引き寄せ部材25には、図6に示すように、引き寄せ面部25aが形成される側と反対側の面に、突起状の嵌合突起部25bが形成されている。この嵌合突起部25bが傾斜面部材24の嵌合部24dに対して嵌合することにより、傾斜面部材24と縦引き寄せ部材25とが一体化される。また、縦引き寄せ部材25の両端部には、縦框22に対して嵌合する縦框固定部25cも形成されており、これによって縦引き寄せ部材25は、縦框22に対しても固定がなされる。
【0045】
火災が発生してサッシが高温に晒されると、前述のように樹脂製の縦引き寄せ部材25は、溶融して溶け落ちる。さらに、温度上昇に伴い、框体4を構成する各框材も大きく伸びる。上框20及び下框21が長手方向に伸びることにより、縦框22は縦枠12の内周面12aに向かって移動する。図7には、火災発生時の状態における内障子2の縦框22付近の拡大横断面図を示している。
【0046】
図7に示すように、火災発生時においても、金属材からなる傾斜面部材24はそのまま縦框22に固定されている。縦框22が縦枠12の内周面12a側に移動すると、傾斜面部材24の縦傾斜面部24bが中間フィン部12dの先端部に当接し、縦框22がさらに縦枠12の内周面12a側に移動するのに伴い、縦傾斜面部24bの傾斜方向に沿って縦框22が中間フィン部12dによって室内側に押圧される。それによって、縦框22の室内側面が縦枠12の室内フィン部12fに設けられる気密材12gに対して押し付けられるため、縦框22と縦枠12の間に隙間を生じないようにすることができる。すなわち、縦框22における防火性能を保つことができる。
【0047】
また、中間フィン部12dにおいても、先端部が縦傾斜面部24bと対向する傾斜面状に形成されているので、傾斜面部材24が中間フィン部12d側に近づいてきた際に、縦傾斜面部24bを確実に中間フィン部12dの室内側に向かって導くことができ、より確実に防火性能を発揮させることができる。
【0048】
このように、縦框22の外周面に縦傾斜面部24bを設けて、縦枠12の中間フィン部12dに近接対向させるようにしたことにより、簡易な構成で確実な縦框22の室内側への引き寄せを実現することができる。また、通常時には内障子2を閉じた状態で縦傾斜面部24bが中間フィン部12dに当接することなく近接対向するので、防火のための部品が通常時における障子の開閉を阻害することがなく、火災発生時にのみ機能を発揮させることができる。なお、ここでは内障子2の引き寄せ構造について説明したが、外障子3についても同じ構造となっており、同じ効果を得ることができる。また、以下の実施例においても、内障子2と外障子3では同様の引き寄せ構造を有している。
【0049】
本実施形態では、傾斜面部材24と縦引き寄せ部材25とを一体化して縦框22に固定するようにしたが、両者は必ずしも一体である必要はなく、縦框22の外周面に別々に設けるようにしてもよい。ただし、一体化した方が取付作業を容易にすることができる。
【0050】
図8には、第2の実施例の縦傾斜面部を有する縦框22付近の拡大横断面図を示している。図8(a)は通常時を表しており、この図では縦引き寄せ部材25は省略している。本実施例の傾斜面部材24は、基部24aから根元面部24fが垂直方向に立ち上がり、その先端部が傾斜状とされて縦傾斜面部24bが形成されている。傾斜面部材24の根元面部24fは、通常状態における縦枠12の中間フィン部12dを内周側に延長した面の室外側に隣接する位置に形成されている。
【0051】
図8(b)は、火災が発生して縦框22が縦枠12側に近づいた状態を示している。火災が発生して縦框22が縦枠12の内周面12aに近づくと、縦傾斜面部24bが中間フィン部12dに衝当し、さらに縦框22が縦枠12の内周面12aに近づくと、根元面部24fが中間フィン部12dの室内側面に当接した状態となる。中間フィン部12dと根元面部24fの位置関係は前述の通りであるから、根元面部24fは中間フィン部12dによって室内側に押圧され、縦框22の室内側面は室内フィン部12fの気密材12gに対して押し付けられ、図3、7で示した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、本実施形態では傾斜面部材24に縦傾斜面部24bを設ける構成としたが、縦框22自体に縦傾斜面部を設けるようにしてもよい。図9には、第3の実施例の縦傾斜面部を有する縦框22付近の拡大横断面図を示している。この図に示すように、この実施例では、縦框22の外周面に室外内周側から室内外周側に向かう傾斜面状の縦傾斜面部22dを形成しており、縦傾斜面部22dは中間フィン部12dと対向している。
【0053】
図10には、第3の実施例の縦傾斜面部が機能した状態における縦框22付近の拡大横断面図を示している。この図は、図7と同様、火災発生時の状態を表しており、このとき縦引き寄せ部材25は溶融して溶け落ちているものとする。縦引き寄せ部材25が存在せず、また縦框22が縦枠12側に移動することにより、縦框22に形成された縦傾斜面部22dは、縦枠12の中間フィン部12dの室内側に当接し、中間フィン部12dによって室内側に押圧される。これにより、縦框22の室内側面は室内フィン部12fの気密材12gに対して押し付けられ、縦框22と縦枠12の間に隙間を生じるのを防止し、防火性能を高くすることができる。
【0054】
さらに、縦框22側ではなく、縦枠12側に縦傾斜面部を設けるようにしてもよい。図11には、第4の実施例の縦傾斜面部を有する縦框22付近の拡大横断面図を示している。この図に示すように、縦枠12の中間フィン部12dは、根元の位置が図7などに示したものに比べ、より室内側の位置にあって、根元部分付近が平面状の根元面部12iであり、この根元面部12iより先端側の中間位置には、室内根元側から室外先端側に向かう傾斜面状の枠側縦傾斜面部12hを有している。枠側縦傾斜面部12hより先端側は、中間フィン部12dとして機能する位置、すなわち縦框22のフィン飲込部22cの中央位置となるように形成されている。
【0055】
この縦枠12の中間フィン部12dは、通常時においては縦引き寄せ部材25に当接して、中間フィン部12dとしての機能を果たすことができる。一方で、火災発生時には、縦框22を室内側に引き寄せる機能を発揮することができる。図12には、第4の実施例の縦傾斜面部が機能した状態における縦框22付近の拡大横断面図を示している。この図は、図7と同様、火災発生時の状態を表しており、このとき縦引き寄せ部材25は溶融して溶け落ちているものとする。
【0056】
縦引き寄せ部材25が存在せず、また縦框22が縦枠12側に移動することにより、縦框22の室内側面の外周端は、中間フィン部12dの枠側縦傾斜面部12hに当接して室内側に押圧される。中間フィン部12dの根元面部12iは、通常状態における縦框22の室内側面を外周側に延長した面の室外側に隣接する位置に形成されているので、縦枠12の内周面12aに当接した状態では、中間フィン部12dの根元面部12iに当接する。これにより、縦框22の室内側面は室内フィン部12fの気密材12gに対して押し付けられ、縦框22と縦枠12の間に隙間を生じるのを防止し、防火性能を高くすることができる。
【0057】
これまで説明した縦傾斜面部は、いずれも縦框22の長手方向中間位置、あるいは長手方向に沿って設けられるものである。一方、縦框22の上端部には、上振止部品26が設けられており、これらの縦傾斜面部は、上振止部品26に対してはそのままでは適用できないから、別の部品を設ける必要がある。
【0058】
図13には、縦框22を上方から平面視するサッシの拡大横断面図を示している。なお、この図では上框20は省略されている。この図に示すように、縦框22の上端部には、樹脂製の上振止部品26が設けられている。上振止部品26は、上框20のレール案内部20bよりも幅狭で上枠10の内上レール部20dまたは外上レール部20eに対し長手方向に沿って摺動自在な飲込部26aを有している。飲込部26aの両開口縁には、ヒレ部26bが形成されており、これらが内上レール部20dまたは外上レール部20eに対して直接、摺接する。また、飲込部26aの外周側端部には、中間フィン部12dに当接して縦框22を室内側に引き寄せる引き寄せ部26cが形成されている。
【0059】
図14には、上振止部品26の斜視図を示している。上振止部品26には、金属製の上端引き寄せ部材27が一体的に取付けられている。図15には上端引き寄せ部材27の斜視図を示している。上端引き寄せ部材27は、上振止部品26の飲込部26aを構成する側壁に沿う2つの側面部27a、27aを有し、各側面部27aの外周端は、それぞれ端部に向かって広がる方向に傾斜して縦傾斜面部27bを構成している。
【0060】
図13において、上端引き寄せ部材27の縦傾斜面部27bは、破線にて表されている。この図に示されているように、縦傾斜面部27bは飲込部26aを挟んで両側に形成されているが、そのうち一方が室外内周側から室内外周側に向かう傾斜状となり、縦枠12の中間フィン部12dと対向する。他方の縦傾斜面部27bは中間フィン部12dと対向しないため、機能しないが、図13に示されている外障子3ではなく、内障子2に取付ける際には、他方側の縦傾斜面部27bが機能する。すなわち、両側面部27aにそれぞれ縦傾斜面部27bが形成されていることにより、左右勝手違いに対応して部品を共用化することができる。
【0061】
図16には、上端引き寄せ部材27の縦傾斜面部27bが機能した状態における縦框22を上方から平面視するサッシの拡大横断面図を示している。この図は、図7と同様、火災発生時の状態を表しており、このとき上振止部品26は溶融して溶け落ちているものとする。上振止部品26が存在せず、また縦框22が縦枠12側に移動することにより、上端引き寄せ部材27の縦傾斜面部27bは、縦枠12の中間フィン部12dの室内側に当接し、中間フィン部12dによって室内側に押圧される。これにより、縦框22の室内側面は室内フィン部12fの気密材12gに対して押し付けられ、縦框22と縦枠12の間に隙間を生じるのを防止し、防火性能を高くすることができる。
【0062】
本実施形態では、縦框22の中間位置に縦傾斜面部24bを有する傾斜面部材24を設け、縦框22の上端部に縦傾斜面部27bを有する上端引き寄せ部材27を設けることで、縦框22の上端と中間位置でそれぞれ縦枠12側に引き寄せておくことができ、縦框22と縦枠12の間における防火性能を高くすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では内外障子2、3が枠体1内に引き違い状に納められるものとしたが、内外障子2、3のいずれかが枠体1に固定された片引きサッシであっても、同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 枠体
2 内障子
3 外障子
4 框体
5 パネル体
10 上枠
11 下枠
12 縦枠
12a 内周面
12d 中間フィン部
12g 気密材
20 上框
21 下框
22 縦框
23 召合わせ框
24 傾斜面部材
24a 基部
24b 縦傾斜面部
25 縦引き寄せ部材
26 上振止部品
27 上端引き寄せ部材
27a 側面部
27b 縦傾斜面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下枠と左右の縦枠を枠組みしてなる枠体に、上下框と縦框及び召合わせ框を框組みしてなる框体を有する内障子と外障子を納めてなるサッシにおいて、
前記左右の縦枠は、それぞれ閉じた状態の前記内障子または外障子の外周面に向かって突出する中間フィン部と、該中間フィン部より室内側から突出して前記内障子または外障子の室内側面と対向する室内フィン部とを、内周面に有し、
前記縦框は、前記縦枠の中間フィン部と対向する縦傾斜面部を外周面に有し、該縦傾斜面部は金属材により形成されると共に、室外内周側から室内外周側に向かう傾斜面状に形成されることを特徴とするサッシ。
【請求項2】
前記縦框は前記内障子または外障子が閉じた状態で前記中間フィン部の室内側面に当接する樹脂製の縦引き寄せ部材を外周面に備え、該縦引き寄せ部材が前記中間フィン部の室内側面に当接した状態で、前記縦傾斜面部は前記中間フィン部と離隔していることを特徴とする請求項1記載のサッシ。
【請求項3】
前記縦框の長手方向中間位置に前記縦傾斜面部を有する金属製の傾斜面部材が取付けられてなることを特徴とする請求項2記載のサッシ。
【請求項4】
前記傾斜面部材は前記縦框の外周面に固定される基部を備え、前記傾斜面部材の前記縦傾斜面部は前記基部から立ち上がり状に形成されて前記中間フィン部に近接対向することを特徴とする請求項3記載のサッシ。
【請求項5】
前記傾斜面部材と縦引き寄せ部材とが一体とされてなることを特徴とする請求項3または4記載のサッシ。
【請求項6】
前記縦框の外周面に傾斜面を形成することにより前記縦傾斜面部を構成することを特徴とする請求項2記載のサッシ。
【請求項7】
前記縦框には上端部に樹脂製の上振止部品が取付けられ、該上振止部品は前記上枠に形成される上レール部に対し長手方向に沿って摺動自在な飲込部を備えると共に、金属製の上端引き寄せ部材を一体的に有してなり、該上端引き寄せ部材は前記飲込部を構成する側壁に沿う側面部を有し、該側面部の外周側端部に前記縦傾斜面部が形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のサッシ。
【請求項8】
上下枠と左右の縦枠を枠組みしてなる枠体に、上下框と縦框及び召合わせ框を框組みしてなる框体を有する内障子と外障子を納めてなるサッシにおいて、
前記左右の縦枠は、それぞれ閉じた状態の前記内障子または外障子の外周面に向かって突出する中間フィン部と、該中間フィン部より室内側から突出して前記内障子または外障子の室内側面と対向する室内フィン部とを、内周面に有し、
前記中間フィン部は、前記縦框の室内側面と対向する枠側縦傾斜面部を有し、該枠側縦傾斜面部は室内根元側から室外先端側に向かう傾斜面状に形成されることを特徴とするサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−113061(P2013−113061A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262779(P2011−262779)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】