説明

サポート装置

【課題】 クランプ装置にてクランプされる物品を、ベース上で、効率的な作業により支持可能なサポート装置を提供する。
【解決手段】 装置本体10に設けられた第一及び第二の挿入孔12,14内に、支持部材44と第一の移動部材62とを引込/突出移動可能に挿入位置せしめると共に、それら第一及び第二の挿入孔12,14を連通する連通孔86内に、ストッパ部材92を移動可能に挿入位置せしめ、更に、移動機構68,104により、第一の移動部材62の引込移動に伴って、ストッパ部材92を第一の挿入孔12側に移動せしめることによって、ストッパ部材92が支持部材44と係合して、支持部材44の引込移動が阻止せしめられるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポート装置に係り、特に、所定のベース上に固定されたクランプ装置にてクランプされる物品をベース上で支持するサポート装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機械の基台等の所定のベースに対して、ワーク(被加工物)やジグプレート等の物品を固定して、保持せしめる際には、各種のクランプ装置が用いられている。また、このクランプ装置にてクランプされた物品とベースとの間にスペースが形成される場合、そのスペースを形成するベースと物品との間に介在せしめられて、かかる物品をベース上で支持するサポート装置が使用されることがあるが、このようなサポート装置としては、一般に、油圧式又は空気圧式の位置決め構造を有するもの(例えば、特許文献1及び2参照)や、ねじ式の位置決め構造を有するもの等が、知られている。
【0003】
すなわち、油圧式又は空気圧式の位置決め構造を有するサポート装置は、通常、ベース上に固定されるシリンダと、このシリンダに対して突出/引込移動せしめられるピストンロッドとを有している。そして、クランプ装置にてクランプされた物品とベースとの間のスペース内において、ベース上に固定されたシリンダから、ピストンロッドが、クランプされた物品に接触せしめられる位置まで突出せしめられた状態下で、シリンダ内に圧油や圧縮空気が導入されて、引込移動が阻止されるように位置決め固定されることにより、かかる物品が、ベース上で支持されるようになっている。
【0004】
また、ねじ式構造を有するサポート装置は、例えば、ベース上に固定される筒状のハウジングと、このハウジングの筒壁部に螺入された雄ねじ部材と、ハウジングに対して突出/引込移動可能に挿入されたロッド部材と、かかるロッド部材がハウジング内に引込移動せしめられる際に、ロッド部材に対して、その移動方向とは反対の方向に付勢力を作用せしめるばね部材とを有して、構成されている。そして、クランプ装置にてクランプされた物品とベースとの間のスペース内において、ベース上に固定されたハウジングから突出せしめられるロッド部材が、ばね部材の付勢力に基づいて、物品に対して押圧接触せしめられた状態下で、雄ねじ部材がハウジングの筒壁部にねじ込まれて、雄ねじ部材の先端部位が、ロッド部材に対して、その引込移動を阻止するように係合せしめられることで、ロッド部材が位置決め固定されることにより、かかる物品が、ベース上で支持されるようになっているのである。
【0005】
これらの構造を有する従来のサポート装置を用いれば、クランプ装置によりクランプされた、例えばワーク等に対して各種の加工を施す際に、ワークが、工作機械などによって作用乃至は入力せしめられる加工負荷や振動等によって変形せしめられたり、或いは加工精度が低下するようなことが、可及的に防止され得るようになる。
【0006】
ところが、上述の如き従来のサポート装置を用いる場合、クランプ装置によるワーク(物品)のクランプ操作とは別に、油圧機構や空気圧機構を作動させたり、或いは雄ねじ部材をハウジングの筒壁部にねじ込んだりすることで、ワークを支持するピストンロッドやロッド部材をワークに接触せしめられた位置において位置決め固定する面倒な作業を行わなければならず、それが、ベース上での物品の支持定作業の簡略化や作業時間の短縮化の妨げとなっていたのである。
【0007】
【特許文献1】特開平9−300154号公報
【特許文献2】特開2001−198754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、所定のベース上に固定されたクランプ装置にてクランプされる物品をベース上で支持するサポート装置において、物品を支持する支持部材を所定の位置に位置決め固定するための面倒で且つ時間の掛かる作業が省略され得て、ベース上での物品の支持作業の効率化が有利に図られ得るように改良された構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、かかる課題の解決のために、本発明の第一の態様とするところは、所定のベースと、該ベース上に固定されたクランプ装置にてクランプされる物品との間に介在せしめられて、該ベース上で該物品を支持するサポート装置において、(a)前記ベース上に固定される装置本体と、(b)該装置本体の前記ベース側とは反対側の面において外部に開口する開口部を有して、該ベース側に向かって延びるように、該装置本体に設けられた第一の挿入孔及び第二の挿入孔と、(c)前記装置本体に対して、前記第一の挿入孔と前記第二の挿入孔との間に延出するように設けられ、それら第一及び第二の挿入孔のそれぞれの内周面において開口して、該第一の挿入孔と該第二の挿入孔とを連通する連通孔と、(d)一部の部位を、前記第一の挿入孔内から前記開口部を通じて外部に突出させ、且つかかる突出部分を該第一の挿入孔内に引込移動せしめ得るように、該第一の挿入孔内に挿入配置されて、前記物品を該突出部分の先端面において支持する支持部材と、(e)該支持部材の前記突出部分が前記第一の挿入孔内に引込移動せしめられる際に、該支持部材に対して、その移動方向とは反対の方向に付勢力を作用せしめる第一の付勢手段と、(f)一部の部位を、前記第二の挿入孔内から前記開口部を通じて外部に突出させ、且つかかる突出部分を該第二の挿入孔内に引込移動せしめ得るように、該第二の挿入孔内に挿入配置されて、前記クランプ装置のクランプアームが前記ベース側に移動せしめられる際に、該突出部分が該クランプアームにて押圧されて、該第二の挿入孔内に引込移動せしめられる第一の移動部材と、(g)該第一の移動部材の前記突出部分が前記第二の挿入孔内に引込移動せしめられる際に、該第一の移動部材に対して、その移動方向とは反対の方向に付勢力を作用せしめる第二の付勢手段と、(h)前記連通孔内に、該連通孔の延出方向に移動可能に挿入配置され、該連通孔内での前記第一の挿入孔側への移動に伴って、該第一の挿入孔側に位置する端部が、該第一の挿入孔内に突入せしめられて、該第一の挿入孔内の前記支持部材に係合することにより、該支持部材の該第一の挿入孔内への引込移動を阻止するストッパ部材と、(i)該ストッパ部材が、前記連通孔内を前記第一の挿入孔側に向かって移動せしめられる際に、該ストッパ部材に対して、その移動方向とは反対の方向に付勢力を作用せしめる第三の付勢手段と、(j)前記ストッパ部材と前記第一の移動部材との間に設けられて、該第一の移動部材の前記突出部分が前記第二の挿入孔内に引込移動せしめられる際の該第一の移動部材の直線運動の作用方向を、該ストッパ部材が前記連通孔内を前記第一の挿入孔側に向かって移動せしめられる方向に変換せしめて、該第一の移動部材の引込移動に伴って、該ストッパ部材を該第一の挿入孔側に移動せしめる移動機構とを有して構成されていることを特徴とするサポート装置にある。
【0010】
すなわち、この第一の態様にあっては、ベース上に固定された装置本体の第一の挿入孔内から突出せしめられる支持部材が、第一の付勢手段の付勢力に基づいて、クランプ装置にてクランプされるべき物品に対して押圧接触せしめられるようになっている。そして、そのような状態下で、クランプ装置のクランプアームが、ベース側に移動せしめられると、第一の移動部材が、クランプアームに押圧されて、第二の付勢手段の付勢力に抗して第二の挿入孔内に引込移動せしめられる。また、それに伴って、連通孔内のストッパ部材が、第一の挿入孔内に突入移動せしめられて、その端部において、支持部材に係合せしめられる。これによって、支持部材が、第一の挿入孔内への引込移動が阻止されるように位置決め固定されるようになる。そして、その結果、物品が、クランプ装置にてクランプされると共に、支持部材にて固定的に支持されるようになっているのである。
【0011】
このように、かかる第一の態様では、支持部材が、クランプ装置にてクランプされるべき物品のベース側の面に対して押圧接触せしめられるように、装置本体をベース上に固定しておけば、支持部材を所定の位置に位置決め固定するための特別な作業、例えば、従来装置を用いた場合に行われる油圧機構や空気圧機構を作動させる作業やねじの締付け作業等の面倒で且つ時間の掛かる作業を何等行うことなく、物品が、クランプ装置にてクランプされると同時に、支持部材が、物品に押圧接触せしめられた位置で、自動的に位置決め固定され得るようになるといった極めて優れた特徴が発揮される。
【0012】
また、本発明に従うサポート装置の第二の態様においては、前記第一の移動部材における前記突出部分の先端面において開口する開口部を有して、該突出部分の前記引込移動方向に延びるように、該第一の移動部材に設けられた第三の挿入孔と、一部の部位を、該第三の挿入孔内から前記開口部を通じて外部に突出させ、且つかかる突出部分を該第三の挿入孔内に引込移動せしめ得るように、該第三の挿入孔内に挿入配置されて、前記クランプ装置のクランプアームが前記ベース側に移動せしめられる際に、該突出部分が該クランプアームにて押圧されて、該第三の挿入孔内に引込移動せしめられる第二の移動部材と、該第二の移動部材と前記第一の移動部材との間に介在せしめられて、該クランプアームから該第二の移動部材に作用せしめられる押圧力に抗する付勢力を発揮する第四の付勢手段とを更に有して構成されると共に、前記第一の移動部材の引込移動に伴う前記ストッパ部材の移動により、該ストッパ部材が前記支持部材に対して係合せしめられるまでは、該第二の移動部材の該第三の挿入孔内への引込移動を阻止し得るような大きさにおいて、該第四の付勢手段の付勢力が設定されて、該ストッパ部材の該支持部材に対する係合前には、該クランプアームから該第二の移動部材に作用せしめられる押圧力が、該第四の付勢手段を介して、該第一の移動部材に伝達されて、該第一の移動部材が前記第二の挿入孔内に引込移動せしめられる一方、該ストッパ部材が該支持部材に係合せしめられてからは、該押圧力にて、該第二の移動部材が、該第三の挿入孔内に引込移動せしめられるように構成されることとなる。
【0013】
すなわち、このような第二の態様では、クランプ装置のクランプアームのベース側への移動に伴って、第一の移動部材が引込移動せしめられて、ストッパ部材が第一の挿入孔側に移動せしめられることにより、ストッパ部材の端部が支持部材に係合せしめられて、支持部材と第一の移動部材の引込移動が共に阻止せしめられた状態下において、クランプアームがベース側に更に移動せしめられる場合にも、第二の移動部材が、クランプアームに押圧されて、第三の挿入孔内に引込移動せしめられることにより、クランプアームのベース側への更なる移動が許容され得るようになっている。
【0014】
それ故、かかる第二の態様によれば、例えば、クランプされるべき物品の高さが種々異なる場合にも、ストッパ部材の支持部材に対する係合により、支持部材と第一の移動部材の引込移動が共に阻止せしめられた状態下において、クランプアームが、それらの物品に対して接触せしめられて、クランプ力が確実に作用せしめられ得るようになる。
【0015】
さらに、本発明に従うサポート装置の第三の態様では、前記第一の移動部材と前記ストッパ部材とを、該第一の移動部材の前記第二の挿入孔内への引込移動方向前方側に向かって、前記第一の挿入孔から徐々に離隔する傾斜面形態を有する互いに対応した傾斜面同士において摺動可能に接触させて、該第一の移動部材の該第二の挿入孔内への引込移動に伴って、該傾斜面同士を摺動させることにより、該ストッパ部材を該第一の挿入孔側に移動せしめる楔機構が、該第一の移動部材と該ストッパ部材との間に設けられて、かかる楔機構により、前記移動機構が構成される。
【0016】
かかる第三の態様においては、第一の移動部材とストッパ部材とを、単に、互いに対応した傾斜面同士において摺動可能に接触させただけで、それら第一の移動部材とストッパ部材との間に余分な部品を何等介在せしめることのない簡略な構造により、第一の移動部材の引込移動に伴って、ストッパ部材が第一の挿入孔側に移動せしめられるようになる。
【0017】
更にまた、本発明に従うサポート装置の第四の態様においては、前記ストッパ部材における前記第一の挿入孔側の先端面が、前記第一の挿入孔内への該支持部材の引込移動方向前方側に向かって、該支持部材に徐々に接近する傾斜面形態を有する第一の傾斜面とされる一方、該支持部材に対して、該第一の傾斜面に対応した傾斜面形態を有する第二の傾斜面が設けられて、該ストッパ部材における該第一の挿入孔側に位置する端部が、該第一の挿入孔内に突入せしめられた際に、該ストッパ部材の該第一の傾斜面が該支持部材の該第二の傾斜面に係合せしめられることにより、該支持部材の該第一の挿入孔内への引込移動が阻止されるように構成される。
【発明の効果】
【0018】
そして、本発明に従うサポート装置の第一の態様にあっては、前述せる如き優れた特徴が発揮されることによって、ベース上に固定されたクランプ装置にてクランプされる物品が、ベース上で、容易に且つ迅速に支持され得るのであり、以て、ベース上での物品の支持作業の効率化が極めて有利に実現され得ることとなるのである。
【0019】
また、本発明に従うサポート装置の第二の態様によれば、クランプ装置にてクランプされる物品が、その高さに拘わらず、クランプ装置によるクランプ力を十分に確保した上で、ベース上において、より確実に支持され得る。そして、その結果として、クランプされる物品の高さに応じて、例えば、装置本体のベースに対する取付高さ、或いは支持部材や第一の移動部材の第一及び第二の挿入孔からの突出高さを調節する必要が解消され得て、より優れた使用性が発揮され得ることとなる。
【0020】
さらに、本発明に従うサポート装置の第三の態様によれば、移動機構部、ひいては装置全体の構造の簡略化が、有利に図られ得る。
【0021】
更にまた、本発明に従うサポート装置の第四の態様によれば、支持部材の第一の挿入孔内への引込移動量に拘わらず、無段階で、ストッパ部材を支持部材に係合させることが出来、それによって、支持部材を、任意の位置で、より確実に位置決め固定することが可能となるといった利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係るサポート装置の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0023】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有するサポート装置の一実施形態が、その縦断面形態と横断面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のサポート装置は、装置本体10を有している。この装置本体10は、全体として、略長手矩形形状を呈するブロック体にて、構成されている。
【0024】
そして、かかる装置本体10にあっては、長さ方向一方側の部位に、第一の挿入孔12が形成されており、また、その他方側の部位には、第二の挿入孔14が形成されている。それら第一及び第二の挿入孔12,14は、何れも、装置本体10の上面と下面とにおいてそれぞれ開口する上側開口部16,18と下側開口部20,22とを有し、装置本体10を、その高さ方向(上下方向)に貫通して、鉛直線上において互いに平行に延びるように形成されている。なお、図2中、15は、装置本体10を所定のベース上に固定するための固定ボルトが挿通せしめられるボルト挿通孔である。また、以下からは、サポート装置の構造の理解を容易とするために、装置本体10における第一の挿入孔12側を左側、第二の挿入孔14側を右側と言うこととする。
【0025】
また、それら各挿入孔12,14においては、下側開口部20,22側の端部部位が、それ以外の部位に比して所定寸法大径化されてなる段付円筒面状の内周面を有しており、かかる大径化された内周面を有する部位が大径部24とされている一方、それ以外の部位が小径部26とされている。そして、各挿入孔12,14の大径部24の高さ方向の中間部には、それよりも下側開口部20,22側の部分を更に大径化せしめる円環面状の段差面28が、形成されている。また、かかる大径部24の段差面28形成部位よりも上側の内周面には、雌ねじ部30が、形成されている。
【0026】
そして、そのような各挿入孔12,14の大径部24内には、蓋体32,34が、それぞれ、収容位置せしめられている。それらの蓋体32,34は、何れも、高さの低い略円柱形状を呈しており、その下端部外周面に、外フランジ部36が一体的に周設されている一方、上端部外周面には、雄ねじ部38が形成されている。また、上端面の中心部には、円形穴40が、形成されている。
【0027】
そして、かかる蓋体32,34が、円形穴40を第一及び第二の挿入孔12,14内に向かって開口せしめると共に、外フランジ部36を、第一及び第二の挿入孔12,14における前記大径部24の段差面28に当接させ、更に雄ねじ部38を、大径部24の雌ねじ部30に螺合させた状態で、各挿入孔12,14内に収容位置せしめられている。これによって、第一及び第二の挿入孔12,14の大径部24に対して、各蓋体32,34がそれぞれ着脱可能に取り付けられて、各挿入孔12,14の下側開口部20,22が、蓋体32,34にて各々覆蓋されるようになっている。
【0028】
また、蓋体32にて下側開口部20が覆蓋された第一の挿入孔12内には、第一の付勢手段としての圧縮コイルばね42と、支持部材としての支持ロッド44とが、それぞれ挿入位置せしめられている。そして、圧縮コイルばね42は、第一の挿入孔12内において、下端部を、蓋体32の円形穴40の底面に接触、係合させて、上下方向に延び、且つ上側部分を第一の挿入孔12の小径部26内に突入させた状態で、上下方向に伸縮可能で且つ左右方向(水平方向)に移動不能に配置されている。
【0029】
一方、支持ロッド44は、第一の挿入孔12の小径部26の内径よりも所定寸法小さな外径と、かかる小径部26の長さ(高さ)よりも所定寸法大きな高さとを有する、全体として、円柱形状をもって構成されている。そして、その上端面が、平坦な支持面46とされており、その支持面46の中心部には、図示しない支持ボルトが螺入せしめられる雌ねじ穴48が形成されている。また、下端面の中心部には、所定深さの円形穴50が設けられている。
【0030】
さらに、かかる支持ロッド44にあっては、特に、高さ方向の略中央部よりも下側部分の一部が、中心軸に向かって斜めに切除されてなる如き形態とされて、そのような下側部分の外周面の一部に、中心軸に向かって下傾する傾斜面形態を有する、第二の傾斜面としての支持ロッド側係合傾斜面52が、形成されている。
【0031】
そして、このような構成を有する支持ロッド44が、第一の挿入孔12の上側開口部16を通じて、支持ロッド側係合傾斜面52の形成部位を含む下側部位を、第一の挿入孔12内に挿入せしめて、配置されている。また、そのような配置状態下において、支持ロッド側係合傾斜面52が、第一の挿入孔12における第二の挿入孔14側の内周面部位と対向せしめられていると共に、第一の挿入孔12内に位置せしめられた圧縮コイルばね42の上端部が、円形穴50の底面に接触して、係合せしめられている。
【0032】
これによって、支持ロッド44が、上側開口部16を通じて、上側部位を上方に突出させ且つ支持面46を外部に露出せしめた状態で、第一の挿入孔12内に、上下方向に移動可能に挿入位置せしめられている。換言すれば、上側開口部16から突出せしめられた上側部位の第一の挿入孔12内への引込移動と、そのような引込状態からの突出移動が許容され得る状態で、装置本体10に組み付けられているのである。そして、かかる上側部位の第一の挿入孔12内への引込移動時には、圧縮コイルばね42が収縮乃至は圧縮せしめられることにより、支持ロッド44に対して、圧縮コイルばね42による上方への付勢力が作用せしめられるようになっている。
【0033】
また、ここでは、上述の如き第一の挿入孔12内への支持ロッド44の挿入状態下で、装置本体10の側面から第一の挿入孔12に向かって延びるねじ孔54に螺入された止めねじ56の先端部が、支持ロッド44の外周面に対して軸方向(上下方向)に所定寸法延びるように設けられた縦溝58内に突入せしめられている。これによって、支持ロッド44の中心軸回りの回転が阻止されて、支持ロッド44が、支持ロッド側係合傾斜面52を、第一の挿入孔12における第二の挿入孔14側の内周面部位に対して、常に対向させた状態において、支持ロッド44の上側部位の上記引込移動と突出移動が行われ得るようになっている。
【0034】
一方、第一の挿入孔12と左右に並んで装置本体10に設けられる第二の挿入孔14内には、第二の付勢手段としての圧縮コイルばね60と、第一の移動部材としての第一の移動ロッド62とが、それぞれ挿入位置せしめられている。そして、圧縮コイルばね60は、第一の挿入孔12内に挿入位置せしめられる圧縮コイルばね42と同様な配置形態をもって、第二の挿入孔14内に位置せしめられている。
【0035】
また、第一の移動ロッド62は、第二の挿入孔14の小径部26の内径よりも所定寸法小さな外径と、かかる小径部26の長さ(高さ)よりも十分に大きな高さとを有する、全体として、前記支持ロッド44よりも高さの高い円柱形状を有している。そして、その下端面の中心部には、所定深さの円形穴64が設けられている。
【0036】
さらに、かかる第一の移動ロッド62にあっては、特に、高さ方向の略中央から下側の部分に、所定幅を有する横断面矩形形状を呈する切欠部66が設けられている。そして、この切欠部66の底面が、第一の移動ロッド62の中心軸に向かって下傾する傾斜面形態、換言すれば、第一の移動ロッド62の引込移動方向前方側に向かって、第一の挿入孔12から徐々に離隔するように傾斜する傾斜面形態を有する移動ロッド側摺動傾斜面68とされている。
【0037】
そして、このような構成を有する第一の移動ロッド62が、第二の挿入孔14の上側開口部18を通じて、移動ロッド側摺動傾斜面68の形成部位を含む下側部位を、第二の挿入孔14内に挿入せしめて、配置されている。また、そのような配置状態下において、移動ロッド側摺動傾斜面68が、第二の挿入孔14における第一の挿入孔12側の内周面部位と対向せしめられていると共に、第二の挿入孔14内に位置せしめられた圧縮コイルばね60の上端部が、円形穴64の底面に接触して、係合せしめられている。
【0038】
これによって、第一の移動ロッド62が、上側開口部18を通じて、上側部位を上方に突出させた状態で、第二の挿入孔14内に、上下方向に移動可能に挿入位置せしめられている。換言すれば、上側開口部18から突出せしめられた上側部位の第二の挿入孔14内への引込移動と、そのような引込状態からの突出移動が許容され得る状態で、装置本体10に組み付けられているのである。そして、かかる上側部位の第二の挿入孔14内への引込移動時には、圧縮コイルばね60が収縮乃至は圧縮せしめられることにより、第一の移動ロッド62に対して、圧縮コイルばね60による上方への付勢力が作用せしめられるようになっている。
【0039】
また、ここでは、上述の如き第二の挿入孔14内への第一の移動ロッド62の挿入状態下で、装置本体10の側面から第二の挿入孔14に向かって延びるねじ孔70に螺入された止めねじ72の先端部が、第一の移動ロッド62の外周面に対して軸方向に所定寸法延びるように設けられた縦溝74内に突入せしめられている。これによって、第一の移動ロッド62の中心軸回りの回転が阻止されて、第一の移動ロッド62が、移動ロッド側摺動傾斜面68を、第二の挿入孔14における第一の挿入孔12側の内周面部位に対して、常にと対向させた状態において、第一の移動ロッド62の上側部位の上記引込移動と突出移動が行われ得るようになっている。
【0040】
また、このような第一の移動ロッド62にあっては、その上端面の中心部に、有底の第三の挿入孔76が、所定の深さをもって形成されている。そして、この第三の挿入孔76の上側開口部には、所定高さを有する案内ブッシュ78が、かかる上側開口部の内周面に形成された雌ねじに螺入されて、取り付けられており、以て、上側開口部の内径が、その他の部位に比して、所定寸法小さくされている。また、かかる第三の挿入孔76内には、第四の付勢手段としての圧縮コイルばね80が、その下側部分を、第三の挿入孔76の底面に接触して、係合せしめられた状態で、収容されている。
【0041】
さらに、第三の挿入孔76内には、第二の移動手段としての第二の移動ロッド82も、挿入位置せしめられている。この第二の移動ロッド82は、前記案内ブッシュ78の内径よりも所定寸法小さな外径と、案内ブッシュ78の高さよりも十分に高い高さとを有する円柱形状を呈している。また、かかる第二の移動ロッド82の下端部外周面には、外フランジ部84が、一体的に周設されている。
【0042】
そして、このような第二の移動ロッド82が、その高さ方向略中央部よりも下側部位を、第三の挿入孔76の上側開口部に取り付けられた案内ブッシュ78の内孔を通じて、第三の挿入孔76内に挿入せしめて、配置されている。また、そのような状態下で、下端面において、第三の挿入孔76内で予備圧縮せしめられた圧縮コイルばね80の上端部に接触、係合せしめられている共に、外フランジ部84が、案内ブッシュ78の下端面に対して、接触して、係合せしめられている。
【0043】
これによって、第二の移動ロッド82が、案内ブッシュ78の上側開口部を通じて、上側部位を上方に突出させ、且つ圧縮コイルばね80の付勢力に基づいて、上方に向かって付勢せしめられた状態で、第三の挿入孔76内に、上下方向に移動可能に挿入位置せしめられている。換言すれば、案内ブッシュ78の上側開口部から突出せしめられた上側部位を、突出移動方向に付勢させた状態で、かかる上側部位の第三の挿入孔76内への引込移動と、そのような引込状態からの突出移動が許容され得るように、装置本体10に組み付けられているのである。そして、かかる上側部位の第三の挿入孔76内への引込移動時には、圧縮コイルばね80が更に収縮乃至は圧縮せしめられることにより、第二の移動ロッド82に対して、圧縮コイルばね80による上方への付勢力が、より大きな力で作用せしめられるようになっている。
【0044】
また、かかる本実施形態のサポート装置にあっては、装置本体10の内部に、第一の挿入孔12と第二の挿入孔14とを連通する連通孔86が、形成されている。即ち、この連通孔86は、第一の挿入孔12と第二の挿入孔14との間において、それらの挿入孔12,14の延出方向とは直角な左右方向に延出せしめられている。そして、第一の挿入孔12内に挿入位置せしめられた支持ロッド44の支持ロッド側係合傾斜面52と対向する第一の挿入孔12の内周面部位において、第一の挿入孔12内に向かって開口せしめられている一方、第二の挿入孔14の内に挿入位置せしめられた第一の移動ロッド62の移動ロッド側摺動傾斜面68と対向する第二の挿入孔14の内周面部位において、第二の挿入孔14内に向かって開口せしめられている。また、この連通孔86においては、第一の挿入孔12側の端部部位が小径化された段付円筒面形状を呈する内周面を有しており、この小径部分と大径部分との境界部位に、円環面形状を呈する段差面88が、形成されている。
【0045】
そして、かかる連通孔86内には、第三の付勢手段としての圧縮コイルばね90と、ストッパ部材としてのストッパロッド92とが、それぞれ挿入位置せしめられている。そして、圧縮コイルばね90は、連通孔86内において、長さ方向の一端部を、連通孔86の段差面88に接触、係合させて、左右方向に延出せしめた状態で、左右方向に伸縮可能に配置されている。
【0046】
また、ストッパロッド92は、全体として、略段付の円柱形状を呈しており、軸方向の一方側(左側)部位が、連通孔86の小径部分よりも僅かに小さな外径を有する小径部94とされている一方、その他方側(右側)部位が、小径部94の外径よりも大きく且つ連通孔86の大径部分の内径よりも僅かに小さな外径を有する大径部96とされている。換言すれば、大径部96の一方側の端面の中心部に、小径部94が一体的に突出形成されて、ストッパロッド92が構成されているのである。また、このようなストッパロッド92においては、大径部96における小径部94の形成側の端面の外周部が、それら大径部96と小径部94とを段付けする円環面状の段付面98とされている。
【0047】
そして、ここでは、特に、ストッパロッド92の小径部94の先端面(大径部96側とは反対側の端面)が、前記支持ロッド44に設けられた支持ロッド側係合傾斜面52に対応した傾斜面形態を有する第一の傾斜面としてのストッパロッド側係合傾斜面100とされている。
【0048】
すなわち、このストッパロッド側係合傾斜面100は、大径部96側とは反対側方向に向かって下傾する傾斜面形態、換言すれば、下方に向かうに従って、大径部96の端面からの小径部94の突出高さが徐々に大きくなるように傾斜する傾斜面形態、更に換言すれば、第一の挿入孔12内への支持ロッド44の引込移動方向前方側に向かって、支持ロッド44に徐々に接近するように傾斜する傾斜面形態を有して構成され、その傾斜角度が、支持ロッド側係合傾斜面52の傾斜角度と同じ大きさとされているのである。なお、これら支持ロッド側係合傾斜面52とストッパロッド側係合傾斜面100の傾斜角度は、特に限定されるものではないものの、ここでは、それらの係合傾斜面52,100同士の後述する如き係合状態の解消が容易となるように、例えば9°程度の大きさとされている。
【0049】
また、ストッパロッド92の大径部96においては、小径部94側とは反対側、つまり段付面98側とは反対側の面上に、前記第一の移動ロッド62の切欠部66内に突入可能な幅と突出高さとを有する突出部102が、一体形成されている。そして、この突出部102の先端面が、第一の移動ロッド62における切欠部66の底面に設けられた移動ロッド側摺動傾斜面68に対応した傾斜面形態を有するストッパロッド側摺動傾斜面104とされている。
【0050】
すなわち、このストッパロッド側摺動傾斜面104は、小径部94側とは反対側方向(突出部102の突出方向)に向かって下傾する傾斜面形態、換言すれば、下方に向かうに従って、突出部102の高さが徐々に高くなるように傾斜する傾斜面形態、更に換言すれば、第二の挿入孔14内への第一の移動ロッドの引込移動方向前方側に向かって、第一の挿入孔12から徐々に離隔するように傾斜する傾斜面形態をもって構成され、その傾斜角度が、移動ロッド側摺動傾斜面68の傾斜角度と同じ大きさとされているのである。なお、これら移動ロッド側摺動傾斜面68とストッパロッド側摺動傾斜面104の傾斜角度も、適宜に決定されるところではあるが、ここでは、それらの摺動傾斜面68,104同士の後述する如き摺動状態がスムーズに確保され得ると共に、強大な作用力にて互いに押圧せしめられたときに、テーパ嵌合の如き嵌合状態生ずることのないように、例えば15°程度の大きさとされている。
【0051】
そして、このようなストッパロッド92が、小径部94と大径部96とにおいて、連通孔86内に、同軸的に挿入されている。また、そのような状態下において、大径部96に設けられた突出部102が、第二の挿入孔14内に挿入された第一の移動ロッド62の切欠部66内に突入位置せしめれるていると共に、段付面98において、連通孔86内で予備圧縮せしめられた圧縮コイルばね90における連通孔86の段差面88との係合側とは反対側の端部に接触して、係合せしめられている。なお、図1及び図2中、106は、ストッパロッド92を、第二の挿入孔14を通じて連通孔86内に挿入するための挿入孔であり、また、108は、かかる挿入孔106を覆蓋する蓋体である。
【0052】
かくして、ストッパロッド92が、圧縮コイルばね90の付勢力に基づいて、ストッパロッド側係合傾斜面104を、第一の移動ロッド62の移動ロッド側摺動傾斜面68に対して摺動可能に押圧接触せしめた状態で、連通孔86内に、左右方向に移動可能に挿入位置せしめられている。
【0053】
これによって、本実施形態のサポート装置においては、第一の移動ロッド62が下方に押圧されて、その上側部位が、圧縮コイルばね60の付勢力に抗して、第二の挿入孔14内に引込移動せしめられるのに伴って、移動ロッド側摺動傾斜面68とストッパロッド側摺動傾斜面104とが摺動せしめられるようになっている。そして、それらの摺動傾斜面68,104同士の摺動により、第一の移動ロッド62の下方への直線運動が、ストッパロッド92に対して、ストッパロッド92を、連通孔86内で、第一の挿入孔12側に移動させる左方向の直線運動に変換せしめられて、伝達され、それによって、ストッパロッド92が、圧縮コイルばね90の付勢力に抗して、第一の挿入孔12側に移動せしめられて、小径部94の先端部分が、第一の挿入孔12内に突入せしめられるようになる。そして、その結果、かかる小径部94の先端面からなるストッパ側係合傾斜面90が、第一の挿入孔12内の支持ロッド44に設けられた支持ロッド側係合傾斜面52に係合せしめられ、以て、かかる係合状態下において、第一の挿入孔12内への支持ロッド44の引込移動と、第二の挿入孔14内への第一の移動ロッド62の引込移動とが、共に阻止せしめられるようになっているのである(図3参照)。このことから明らかなように、本実施形態では、移動ロッド側摺動傾斜面68とストッパロッド側摺動傾斜面104とにて、移動機構(楔機構)が構成されている。
【0054】
また、ここでは、特に、第一の移動ロッド62における第三の挿入孔76内に収容される圧縮コイルばね80の付勢力が、第二の挿入孔14内に収容される圧縮コイルばね60の付勢力や、第一の移動ロッド62の引込移動に伴う、移動ロッド側摺動傾斜面68とストッパロッド側摺動傾斜面104との摺動時に、それらの摺動傾斜面68,104の間に生ずる摩擦力よりも大きく設定されている。
【0055】
そのため、本実施形態では、第三の挿入孔76内の圧縮コイルばね80にて上方に付勢せしめられた状態で、第三の挿入孔76内に引込移動可能に挿入された第二の移動ロッド82を下方に押圧したときに、ストッパロッド92のストッパロッド側係合傾斜面100と支持ロッド44の支持ロッド側係合傾斜面52との係合により、第二の挿入孔14内への第一の移動ロッド62の引込移動が阻止せしめられるようになるまでは、第二の移動ロッド82に対する押圧力が、圧縮コイルばね80を介して第一の移動ロッド62に伝達されるようになる。そして、それによって、第三の挿入孔76内への第二の移動ロッド82の引込移動が阻止せしめられた状態で、第一の移動ロッド62が、第二の挿入孔14内に引込移動せしめられるようになっている。
【0056】
また、ストッパロッド92のストッパロッド側係合傾斜面100と支持ロッド44の支持ロッド側係合傾斜面52との係合により、第二の挿入孔14内への第一の移動ロッド62の引込移動が阻止せしめられるようになってからは、第二の移動ロッド82が、それに加えられる押圧力により、圧縮コイルばね80の付勢力に抗して、第三の挿入孔76内に引込移動せしめられるようになっているのである(図3参照)。
【0057】
而して、かくの如き構造とされたサポート装置を用いて、クランプ装置にてクランプされたワークをベース上で支持させる際には、例えば、以下の如き作業が行われることとなる。
【0058】
すなわち、先ず、図1に示されるように、工作機械のテーブル等のベース110(図1に二点鎖線で示す)上に、装置本体10が載置される。そして、図示されてはいないものの、装置本体10に設けられる二つのボルト挿通孔(15,15)に挿通された固定ボルトにて、装置本体10が、ベース110に対してボルト固定される。
【0059】
なお、この装置本体10のベース110上への固定に際しては、第一の移動ロッド62が、ベース110に固定されるクランプ装置のクランプアーム111(図1に二点鎖線で示す)の下方に配されるような位置において、装置本体10がベース110上に固定せしめられることとなる。また、そのような装置本体10のベース110上への固定状態下では、支持ロッド44と第一及び第二の移動ロッド62,82は、何れも、上死点に位置せしめられ、また、それによって、支持ロッド側係合傾斜面52とストッパロッド側係合傾斜面100とが非接触の状態(非係合状態)とされる。
【0060】
次に、図3に示されるように、ワーク112が、支持ロッド44の支持面46上に載置される。このとき、ワーク112の自重により、支持ロッド44が、圧縮コイルばね42の付勢力に抗して、第一の挿入孔12内に引込移動せしめられる。なお、かくしてワーク112を支持ロッド44上に載置する際には、必要に応じて、支持ロッド44の雌ねじ穴48内に支持ボルト等が螺入され、ワーク112が、かかる支持ボルトを介して、支持ロッド44上に載置されることとなる。
【0061】
その後、第一の移動ロッド62の上方に位置せしめられたクランプアーム111が、下降せしめられて、第二の移動ロッド82の先端に接触せしめられる。そして、クランプアーム111が更に下降せしめられることで、第二の移動ロッド82がクランプアーム111にて下方に押圧される。これにより、第三の挿入孔76内の圧縮コイルばね80の付勢力に基づいて、第三の挿入孔76内への第二の移動ロッド82の引込移動が阻止せしめられた状態で、第一の移動ロッド62が、第二の挿入孔14内に引込移動せしめられる。
【0062】
このとき、クランプアーム111が徐々に下降せしめられるのに従って、第一の移動ロッド62の引込移動に伴う移動ロッド側摺動面68とストッパロッド側摺動面104との摺動が惹起せしめられて、ストッパロッド92が第一の挿入孔12側に向かって移動せしめられる。そして、クランプアーム111が、図3に二点鎖線で示される位置まで下降せしめられると、ストッパロッド側係合傾斜面100と支持ロッド側係合傾斜面52とが係合せしめられて、支持ロッド44の引込移動が阻止されるように、支持ロッド44が位置決め固定され、以て、ワーク112が、支持ロッド44により、ベース110上で支持されるようになる。
【0063】
その後、更に、クランプアーム111が下降せしめられることにより、ワーク112が、クランプアーム111と支持ロッド44との間、或いはクランプアーム111と、ベース110上に固定される図示しない基準ブロックとの間でクランプされて、固定されることとなる。このときのクランプアーム111の下降は、第二の移動ロッド82が、圧縮コイルばね80の付勢力に抗して、第三の挿入孔76内に引込移動せしめられることにより許容される。
【0064】
一方、上述の如き状態からクランプアーム111が上昇せしめられて、ワーク112のクランプ状態が解消されると、第三の挿入孔76内と第二の挿入孔14内の圧縮コイルばね60,80の付勢力により、第一及び第二の移動ロッド62,82が共に、突出移動せしめられる。また、このとき、連通孔86内の圧縮コイルばね90の付勢力により、ストッパロッド92が、ストッパロッド側摺動傾斜面104において、第一の移動ロッド62の移動ロッド側摺動傾斜面68に摺動せしめられつつ、第二の挿入孔14側に移動せしめられ、以て、支持ロッド側係合傾斜面52とストッパロッド側係合傾斜面100との係合が解除される。そして、ワーク112が、支持ロッド44上から取り除かれると、支持ロッド44が、第一の挿入孔12内の圧縮コイルばね42の付勢力によって、突出移動せしめられる。これによって、支持ロッド44と第一及び第二の移動ロッド62,82が、何れも、引込移動せしられる前の状態(図1に示される状態)に復帰せしめられることとなる。
【0065】
このように、本実施形態では、ワーク112を支持ロッド44に載置しておくだけで、クランプ装置にてワーク112をクランプする際のクランプアーム111の下降に伴って、支持ロッド44が自動的に位置決め固定されて、ワーク112が、支持ロッド44にてベース110上で支持されるようになる。
【0066】
従って、かくの如き本実施形態に係るサポート装置によれば、ベース110上に固定されたクランプ装置にてクランプされるワーク112が、ベース110上で、容易に且つ迅速に支持され得る。そして、その結果として、ベース110上でのワーク112の支持作業の効率化が極めて有利に実現され得ることとなるのである。
【0067】
また、かかる本実施形態においては支持ロッド側係合傾斜面52とストッパロッド側係合傾斜面100との係合により、ワーク112が載置された支持ロッド44が位置決め固定されて、ワーク112が、支持ロッド44にて、ベース110上に固定的に支持された状態から、クランプアーム111にて下方に押圧される第二の移動ロッド82の引込移動が行われることにより、クランプアーム111の更なる下降が許容され、以て、ワーク112のクランプが実現されるようになっている。
【0068】
それ故、このような本実施形態のサポート装置を用いれば、クランプされるワーク112の高さに拘わらず、ワーク112を支持ロッド44にて固定的に支持せしめた状態で、ワーク112に対して、クランプ力が確実に作用せしめられ得る。従って、クランプされるワーク112の高さに応じて、例えば、装置本体10のベース110に対する取付高さ、或いは支持ロッド44や第一の移動ロッド62の突出高さ等を調節することなく、十分なクランプ性能や支持性能が発揮され得ることとなるのである。
【0069】
さらに、本実施形態では、第一の移動ロッド62とストッパロッド92との間に余分な部品を何等介在せしめることなく、第一の移動ロッド62の引込移動に伴って、単に、第一の移動ロッド62に設けられた移動ロッド側摺動傾斜面68と、ストッパロッド92に設けられたストッパロッド側摺動傾斜面104とを摺動させるだけで、ストッパロッド92が第一の挿入孔12側に移動せしめられて、支持ロッド44の位置決め固定が行われるようになっているため、ストッパロッド92を移動させるための機構の付加に伴う部品点数の増加やそれに伴う装置全体の構造の複雑化が、可及的に抑制され得るといった利点が得られる。
【0070】
更にまた、本実施形態においては、支持ロッド側係合傾斜面52とストッパロッド側係合傾斜面100との係合により、支持ロッド44の位置決め固定が実現されるようになっているところから、第一の挿入孔12内への支持ロッド44の引込移動量に拘わらず、支持ロッド44が、無段階で位置決め固定され得る。それによって、ワーク112が、その高さや大きさ等に拘わらず、より確実に且つ有利に支持され得ることとなる。
【0071】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0072】
例えば、支持部材や第一及び第二の移動部材、ストッパ部材のそれぞれの形状や配設個数等は、前記実施形態に示されるものに、何等限定されるものではない。
【0073】
また、前記実施形態では、移動ロッド側摺動傾斜面68とストッパロッド側摺動傾斜面104とにて、楔機構が構成されて、ストッパロッド92を、連通孔86内で、第一の挿入孔12側に移動させる移動機構が構成されていたが、かかる移動機構の構造は、何等これに限定されるものではない。
【0074】
例えば、第一の移動ロッド62とストッパロッド92との間に、第一の移動ロッド62の引込移動に伴って、ストッパロッド92を第一の挿入孔12側に移動させるリンク機構やその他の公知の伝達機構を形成し、それらリンク機構や公知の伝達機構にて、移動機構を構成することも、可能である。
【0075】
また、第一乃至第三の挿入孔12,14,76内や連通孔86内に収容位置せしめられる付勢手段は、例示の圧縮コイルばね42,60,80,90以外に、公知の付勢手段が何れも採用可能である。
【0076】
さらに、ストッパ部材と支持部材とを係合させて、支持部材の引込移動を阻止する構造も、例示されたストッパロッド側係合傾斜面100と支持ロッド側係合傾斜面52との係合構造に、特に限定されるものでないことは、勿論である。
【0077】
加えて、前記実施形態では、クランプ装置にてクランプされるワークをベース上で支持するためのサポート装置に対して、本発明を適用したものの具体例が示されていたが、本発明は、その他、ジグプレート等のワーク以外の物品をベース上で支持するサポート装置の何れに対しても有利に適用され得るものであることは、勿論である。
【0078】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に従うサポート装置の一例を示す縦断面説明図である。
【図2】図1におけるII−II断面説明図である。
【図3】図1に示されたサポート装置の使用状態を説明するための図であって、クランプ装置にてクランプされるワークをベース上で支持せしめた状態を示している。
【符号の説明】
【0080】
10 装置本体 12 第一の挿入孔
14 第二の挿入孔 42,60,80,90 圧縮コイルばね
44 支持ロッド 52 支持ロッド側係合傾斜面
62 第一の移動ロッド 68 移動ロッド側州土傾斜面
76 第三の挿入孔 82 第二の移動ロッド
86 連通孔 92 ストッパロッド
100 ストッパロッド側係合傾斜面 104 ストッパロッド側摺動傾斜面
110 ベース 111 クランプアーム
112 ワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のベースと、該ベース上に固定されたクランプ装置にてクランプされる物品との間に介在せしめられて、該ベース上で該物品を支持するサポート装置にして、
前記ベース上に固定される装置本体と、
該装置本体の前記ベース側とは反対側の面において外部に開口する開口部を有して、該ベース側に向かって延びるように、該装置本体に設けられた第一の挿入孔及び第二の挿入孔と、
前記装置本体に対して、前記第一の挿入孔と前記第二の挿入孔との間に延出するように設けられ、それら第一及び第二の挿入孔のそれぞれの内周面において開口して、該第一の挿入孔と該第二の挿入孔とを連通する連通孔と、
一部の部位を、前記第一の挿入孔内から前記開口部を通じて外部に突出させ、且つかかる突出部分を該第一の挿入孔内に引込移動せしめ得るように、該第一の挿入孔内に挿入配置されて、前記物品を該突出部分の先端面において支持する支持部材と、
該支持部材の前記突出部分が前記第一の挿入孔内に引込移動せしめられる際に、該支持部材に対して、その移動方向とは反対の方向に付勢力を作用せしめる第一の付勢手段と、
一部の部位を、前記第二の挿入孔内から前記開口部を通じて外部に突出させ、且つかかる突出部分を該第二の挿入孔内に引込移動せしめ得るように、該第二の挿入孔内に挿入配置されて、前記クランプ装置のクランプアームが前記ベース側に移動せしめられる際に、該突出部分が該クランプアームにて押圧されて、該第二の挿入孔内に引込移動せしめられる第一の移動部材と、
該第一の移動部材の前記突出部分が前記第二の挿入孔内に引込移動せしめられる際に、該第一の移動部材に対して、その移動方向とは反対の方向に付勢力を作用せしめる第二の付勢手段と、
前記連通孔内に、該連通孔の延出方向に移動可能に挿入配置され、該連通孔内での前記第一の挿入孔側への移動に伴って、該第一の挿入孔側に位置する端部が、該第一の挿入孔内に突入せしめられて、該第一の挿入孔内の前記支持部材に係合することにより、該支持部材の該第一の挿入孔内への引込移動を阻止するストッパ部材と、
該ストッパ部材が、前記連通孔内を前記第一の挿入孔側に向かって移動せしめられる際に、該ストッパ部材に対して、その移動方向とは反対の方向に付勢力を作用せしめる第三の付勢手段と、
前記ストッパ部材と前記第一の移動部材との間に設けられて、該第一の移動部材の前記突出部分が前記第二の挿入孔内に引込移動せしめられる際の該第一の移動部材の直線運動の作用方向を、該ストッパ部材が前記連通孔内を前記第一の挿入孔側に向かって移動せしめられる方向に変換せしめて、該第一の移動部材の引込移動に伴って、該ストッパ部材を該第一の挿入孔側に移動せしめる移動機構と、
を有して構成されていることを特徴とするサポート装置。
【請求項2】
前記第一の移動部材における前記突出部分の先端面において開口する開口部を有して、該突出部分の前記引込移動方向に延びるように、該第一の移動部材に設けられた第三の挿入孔と、一部の部位を、該第三の挿入孔内から前記開口部を通じて外部に突出させ、且つかかる突出部分を該第三の挿入孔内に引込移動せしめ得るように、該第三の挿入孔内に挿入配置されて、前記クランプ装置のクランプアームが前記ベース側に移動せしめられる際に、該突出部分が該クランプアームにて押圧されて、該第三の挿入孔内に引込移動せしめられる第二の移動部材と、該第二の移動部材と前記第一の移動部材との間に介在せしめられて、該クランプアームから該第二の移動部材に作用せしめられる押圧力に抗する付勢力を発揮する第四の付勢手段とを更に有して構成されると共に、前記第一の移動部材の引込移動に伴う前記ストッパ部材の移動により、該ストッパ部材が前記支持部材に対して係合せしめられるまでは、該第二の移動部材の該第三の挿入孔内への引込移動を阻止し得るような大きさにおいて、該第四の付勢手段の付勢力が設定されて、該ストッパ部材の該支持部材に対する係合前には、該クランプアームから該第二の移動部材に作用せしめられる押圧力が、該第四の付勢手段を介して、該第一の移動部材に伝達されて、該第一の移動部材が前記第二の挿入孔内に引込移動せしめられる一方、該ストッパ部材が該支持部材に係合せしめられてからは、該押圧力にて、該第二の移動部材が、該第三の挿入孔内に引込移動せしめられるようになっている請求項1に記載のサポート装置。
【請求項3】
前記第一の移動部材と前記ストッパ部材とを、該第一の移動部材の前記第二の挿入孔内への引込移動方向前方側に向かって、前記第一の挿入孔から徐々に離隔する傾斜面形態を有する互いに対応した傾斜面同士において摺動可能に接触させて、該第一の移動部材の該第二の挿入孔内への引込移動に伴って、該傾斜面同士を摺動させることにより、該ストッパ部材を該第一の挿入孔側に移動せしめる楔機構が、該第一の移動部材と該ストッパ部材との間に設けられて、かかる楔機構により、前記移動機構が構成されている請求項1又は請求項2に記載のサポート装置。
【請求項4】
前記ストッパ部材における前記第一の挿入孔側の先端面が、前記第一の挿入孔内への該支持部材の引込移動方向前方側に向かって、該支持部材に徐々に接近する傾斜面形態を有する第一の傾斜面とされる一方、該支持部材に対して、該第一の傾斜面に対応した傾斜面形態を有する第二の傾斜面が設けられて、該ストッパ部材における該第一の挿入孔側に位置する端部が、該第一の挿入孔内に突入せしめられた際に、該ストッパ部材の該第一の傾斜面が該支持部材の該第二の傾斜面に係合せしめられることにより、該支持部材の該第一の挿入孔内への引込移動が阻止されるようになっている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載のサポート装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−123052(P2006−123052A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312850(P2004−312850)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(592063401)株式会社ナベヤ (28)
【Fターム(参考)】