説明

サンドブラスト用マスキングシート

【課題】サンドブラスト時にサンドブラストで損傷しない性質(耐摩耗性や硬さ)を有し、且つ文字・模様等などを切り抜くときの切り抜き性(柔らかでカットし易い)に優れたサンドブラスト用マスキングシートを提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタン40〜90質量%と共重合ポリアミド60〜10質量%からなるシ−トの裏面に粘着剤層を設け、該粘着剤層の表面に剥離紙層を設けたサンドブラスト用マスキングシ−トである。上記の共重合ポリアミドはポリ(ε−カプロアミド/ω−ラウロアミド)共重合樹脂が好ましい。また、熱可塑性ポリウレタンはJIS K7215(1986)のデュロメータ硬さHDA60〜HDA95の熱可塑性ポリウレタンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石材、コンクリート、木材等にサンドブラスト法で彫刻を施すときに使用するマスキングシ−トに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、墓石、墓誌などの石材に文字・図形等をサンドブラストによって彫刻するには、彫刻を施す面に、所定の文字・模様等を描いた、いわゆるマスキングシ−トを貼着し、この貼着したマスキングシ−トの上から、文字・模様等の輪郭に沿ってカッタ−を当てて切り抜き、次いで、サンドブラストを行う方法がとられている。また、あらかじめ、コンピューターなどを用いて所定の文字・模様等の輪郭に沿って切れ目を入れたマスキングシートを彫刻を施す面に貼着し、次いでマスキングシートの文字・模様等の部分を上記切れ目の切開によって除去し、その後サンドブラストを行う方法が知られている。
【0003】
そして、このサンドブラスト用マスキングシートとして、種々のシートが提案されている。例えば、加硫ゴムシートの裏面、或は加硫ゴムシートの表面にプラスチック層を有する複合シートの裏面に、粘着剤層を設け、該粘着剤層にセパレータを仮着したマスキングシートが提案されている(特許文献1)。また、上記マスキングシートに切れ目を入れて使用する方法において、切れ目を見やすくするため、炭酸カルシウムなどの粉末をマスキングシートに配合して乱反射で切れ目を白色化するすることが提案されている(特許文献2)。更に、透明或は半透明なシート材料、例えば塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、アクリル樹脂などで形成されたマスキングシート層と該マスキングシート層の一側面に設けられた透明或は半透明な材料で形成された接着層と、該接着層を被覆し、透明或は半透明なシート材にて形成された剥離層とを有する、位置合わせを容易にした、透明或は半透明なサンドブラスト用マスキングシートが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平6−55447号公報
【特許文献2】特許第2883170号公報
【特許文献3】特許第3759599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サンドブラスト法で彫刻するには、彫刻を施す面に所定の文字・模様等を切り抜いたマスキングシ−トを貼着し、或いは彫刻面に貼着したマスキングシートを切り抜いてサンドブラストするが、このサンドブラストのとき、マスキングシ−トの切り抜いた文字・模様の縁にも噴射サンドが衝突する。この噴射サンドにより、マスキングシ−トの文字・模様の縁が損傷すると、彫刻された文字・模様は、その縁がシャープでなくなり、美麗な彫刻が得られない。そのため、サンドブラスト用マスキングシートには、サンドブラストで損傷しない性質(耐摩耗性や硬さ)が要求される。その一方、マスキングシ−トは、文字・模様等などをカッタ−で切り抜くため、切り抜き性、すなわちカッターで切り易い硬さ(軟らかさ)が要求される。本発明は、これらの性質を備えたサンドブラスト用マスキングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン40〜90質量%と共重合ポリアミド60〜10質量%からなるシ−トの裏面に粘着剤層を設け、該粘着剤層の表面に剥離紙層を設けたことを特徴とするサンドブラスト用マスキングシ−トである。上記の共重合ポリアミドはポリ(ε−カプロアミド/ω−ラウロアミド)共重合樹脂が好ましい。また、熱可塑性ポリウレタンは、JIS K7215(1986)のデュロメータ硬さHDA60〜HDA95の熱可塑性ポリウレタンが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のサンドブラスト用マスキングシートは、サンドブラスト時の噴射サンドに対する耐久性(耐サンドブラスト性:耐摩耗性や硬さが影響する)が優れ、マスキングシートの切り抜き文字・模様の縁がサンドブラスト時に損傷することが少ない。そのため、マスキングシートの厚さを従来のものより薄くすることができる。すなわち、耐サンドブラスト性がよいため、マスキングシートの厚さを薄くしても、シャープな縁を有する文字・模様の彫刻を施すことができる。そして、薄くすることによって、細かな文字・模様を切り抜くことができ、また軽くなり、取り扱いやすくなる。しかも、本発明のサンドブラスト用マスキングシートは、文字・模様等などをカッタ−で切り抜くときの切り抜き性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のサンドブラスト用マスキングシートの本体シートは、基本的には、熱可塑性ポリウレタンと共重合ポリアミドとの混合樹脂組成物のシートである。本発明で用いる熱可塑性ポリウレタンは、ポリオールとジイソシアネートを原料とし、高分子化したものである。この熱可塑性ポリウレタンは、硬さがデュロメータ硬さHDA60〜HDA95のものが、共重合ポリアミドの硬さ調整の点で好ましい。
【0008】
上記のポリオールとしては、一分子中に−OH基を2個以上持った高分子で、平均分子量200〜100000のものが用いられる。ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテポリオール;アジピン酸、フタル酸等の二塩基酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとの縮合脱水反応物などのポリエステルポリオールが用いられる。その他に、多価アルコールを開始剤としε−カプロラクタムの開環重合によって得られるラクトン系ポリエステルポリオ−ル;グリコールとエチレンカーボネートとの反応で得られるカーボネートポリオール;アクリル共重合体に水酸基を導入したアクリルポリオールなども用いられる。
【0009】
上記のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、必要に応じて、鎖伸長剤を使用する。鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール等の多価アルコール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等の多価アミン、アルカノールアミン類が挙げられる。
【0010】
本発明で用いる共重合ポリアミド樹脂は、融点が100〜190℃のものである。ポリアミド樹脂は、二塩基酸HOOC(CH)COOHとジアミンNH(CH)NHとを重縮合して製造する。この重縮合のとき、原料に2種以上の二塩基酸を用いたり、或は原料に2種以上のジアミンを用いることによって共重合ポリアミド樹脂を製造することができる。また、ポリアミド樹脂は、ω−アミノ酸HOOC(CH)NH又はラクタムを重縮合或は重合して製造することもできる。この重縮合或は重合のとき、原料に、2種以上のω−アミノ酸又はラクタムを用いることによって共重合ポリアミド樹脂を製造することができる。そして、共重合成分を選択することによって種々の融点の共重合ポリアミド樹脂を製造することができる。なお、上記の式中のnは整数である。本発明のマスキングシートに適したポリアミド樹脂は、例えばポリ(ε−カプロアミド/ω−ラウロアミド)共重合樹脂;ポリアミド6/12共重合樹脂(融点133℃)である。この樹脂は東レ株式会社からCM6541X3の商品名で市販されている。
【0011】
本発明において、熱可塑性ポリウレタンと共重合ポリアミドとの混合割合は、熱可塑性ポリウレタン40〜90質量%、共重合ポリアミド60〜10質量%である。好ましくは熱可塑性ポリウレタン60〜80質量%、共重合ポリアミド40〜20質量%である。熱可塑性ポリウレタンと共重合ポリアミドは相溶性が良好であり、共重合ポリアミドはマスキングシートの耐サンドブラスト性を向上させる作用をなし、その配合割合が大きいほど耐サンドブラスト性が優れる。また、熱可塑性ポリウレタンはマスキングシートの硬さを調整する作用をなす。そして、熱可塑性ポリウレタンは、柔軟にもかかわらず耐摩耗性に優れているため、これを配合しても耐サンドブラスト性をあまり損なうことはない。
【0012】
また、マスキングシートに文字・模様の切り抜きの切れ目を入れたとき、切れ目を白色化させて見やすくするために、熱可塑性ポリウレタンと共重合ポリアミドとの混合樹脂組成物に炭酸カルシウムなどの無機粉末を配合するのが好ましい。その配合量は、混合樹脂組成物中5〜40質量%である。また、マスキングシートを墓石などの被彫刻物の表面に貼着したとき、被彫刻物の地模様が目立たなくするために、顔料を、切れ目の白色化を阻害しない範囲で配合するのが好ましい。この混合樹脂組成物をシートに成形する。このシート成形はカレンダーによるのが好ましい。そして、カレンダーでシート化する場合は、混合樹脂組成物にモンタン酸ワックスなどの滑剤を配合するのが好ましい。この本体シートの厚さは0.2〜0.6mmである。
【0013】
熱可塑性ポリウレタンと共重合ポリアミドとの混合樹脂組成物のシートの裏面に粘着剤層を設け、その上に剥離紙層を設ける。粘着剤は、石材などの被彫刻面に糊残りの問題が少ないアクリル系粘着剤が好ましい。剥離紙は、シリコーン層を設けた紙が好ましい。
【0014】
実施例1〜3、比較例1〜2
表1に示す成分を混合し、混練し、カレンダーで厚さ0.4mmのシートに成形した。このシートの裏面にアクリル系粘着剤を塗布し、更にその上に剥離紙を仮着してサンドブラスト用マスキングシートを得た。なお、表1の成分で、熱可塑性ポリウレタンは、エラストランET−385−10C(BASF社製:JIS K7215(1986)のデュロメータ硬さHDA85)を用いた。また、共重合ポリアミドは、CM6541X3(東レ社製)を用いた。
得られたサンドブラスト用マスキングシートについて、切り抜き性、耐サンドブラスト性を試験した。切り抜き性は、カッターで切り抜いて切り抜き易さ(作業性)を調べた。また、耐サンドブラスト性は、サンドブラスト法で墓石に彫刻し、マスキングシートの切れ目の損傷の程度、彫刻ラインの乱れを調べた。その結果を併せて表1に示した。
【0015】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン40〜90質量%と共重合ポリアミド60〜10質量%からなるシ−トの裏面に粘着剤層を設け、該粘着剤層の表面に剥離紙層を設けたことを特徴とするサンドブラスト用マスキングシ−ト。
【請求項2】
共重合ポリアミドがポリ(ε−カプロアミド/ω−ラウロアミド)共重合樹脂である請求項1記載のサンドブラスト用マスキングシ−ト。
【請求項3】
熱可塑性ポリウレタンがデュロメータ硬さHDA60〜HDA95の熱可塑性ポリウレタンである請求項1又は2記載のサンドブラスト用マスキングシ−ト。

【公開番号】特開2007−331076(P2007−331076A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167538(P2006−167538)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)