説明

サージ電圧吸収装置及び定量装置

【課題】付け忘れやズレ及び半田付不良が生じてもサージ電圧が発生せず、また、省スペース化とコスト削減、及びより確実性と安全性を高めた本質安全防爆構造に寄与することが可能なサージ電圧吸収装置、及びこのサージ電圧吸収装置を備える定量装置を提供する。
【解決手段】サージ電圧吸収装置28は、基板30と、この基板30に形成される一対の回路31と、一対の回路31に跨って接続される複数のチップダイオード32とを備えて構成されている。各回路31の中間には、回路分断部分36が複数形成されている。各回路分断部分36は、各回路31を所定の間隔で分断することにより形成されている。各回路分断部分36は、チップダイオード32の取り付け位置に応じて形成されている。各回路分断部分36には、一対の凸部37が形成されている。この一対の凸部37は、チップダイオード32に対する接続部として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージ電圧を吸収するサージ電圧吸収装置と、この装置を備えてなる定量装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
定量計は、流量計に定量機能を付加したものであり、周知である。この周知の定量計について簡単に説明する。定量計は、定量設定手段により定量値を予め設定するようになっている。そして、この設定の後にスタートボタンの操作をすると、流路に設けられた定量弁が開いて流体の流れが開始するようになっている。また、定量計は、流量計が予め設定した定量値の流量を計測した時点で定量弁が閉じられ、これにより流体の流れが停止するようになっている。定量計は、定量弁の制御を、空気回路に設けた切替弁により行うような構成となっている。切替弁は、機械式弁機構である場合や電磁弁の場合がある。下記特許文献1に開示された定量計(定量装置)においては、電磁弁が適用されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された定量計(定量装置)は、電磁弁によって定量弁の制御を行うことから、サージ電圧吸収装置を備えて構成することが必要になっている。サージ電圧吸収装置は、電磁弁のコイル等により発生するサージ電圧を吸収するための装置であって、電磁弁のコイルに接続されるようになっている。下記特許文献1に開示された定量計(定量装置)は、サージ電圧吸収装置を備えることにより、防爆機能を有するようになっている。
【0004】
図3を参照しながら上記のサージ電圧吸収装置について説明する。サージ電圧吸収装置1は、基板2と、この基板2に形成される一対の回路3と、一対の回路3に跨って接続される複数のチップダイオード(チップツェナーダイオード)4とを備えて構成されており、防爆上は安全保持部品と呼ばれ、コイルにより発生するサージ電圧を吸収する役目を果たしている。サージ電圧吸収装置1は、上記コイルと、このコイルに接続される一対のリード線5との間に設けられている。
【0005】
各回路3の一端には、上記コイルとの接続を図るためのコイル接続部6が形成されている。また、各回路3の他端には、リード線5との接続を図るためのリード線接続部7が形成されている。各回路3は、基板2上において直線的に形成されており、これに直交するように(回路側方へ突出するように)凸部8が複数形成されている。各凸部8は、チップダイオード4に対する接続部として形成されている。各凸部8は、幅広に形成されている。
【0006】
チップダイオード4と凸部8、コイルとコイル接続部6、リード線5とリード線接続部7は、半田付けにより接続されるようになっている。チップダイオード4における引用符号9はコンタクトを示している。引用符号10は半田付けを示している。
【0007】
尚、チップダイオード4は、本質安全防爆構造におけるランク(ia、ib)に応じて実装個数が決められている。これは実装部品を冗長化(2重化(ib)、3重化(ia))することにより、より防爆性能の信頼性を向上させるためである。
【0008】
図4はダイオード有無の波形の一例を示している。図4(a)に示すように、ダイオードが存在しない場合(サージ電圧吸収装置が存在しない場合)には、サージ電圧が約150Vとなる結果が得られている。一方、図4(b)に示すように、ダイオードが存在する場合(サージ電圧吸収装置が存在する場合)には、サージ電圧がダイオードの順方向電圧(約1V)まで下がるという結果が得られている。
【特許文献1】特許第2997240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来のサージ電圧吸収装置1にあっては、コイルとリード線5との間に回路3が介在するものの、コイルとリード線5は実質的に直接つながった状態になっている。従って、図5に示すように、チップダイオード4の付け忘れや、ズレ及び半田付不良が発生すると、サージ電圧が吸収されないという問題点を有している。防爆上では、必ず冗長化実装しなければならないことになっている。サージ電圧吸収装置1は、定量計における電子回路の故障要因を有している。
【0010】
その他、上記従来のサージ電圧吸収装置1にあっては、チップダイオード4を複数実装することから、コストや実装面積が大きくなるという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、付け忘れやズレ及び半田付不良が生じてもサージ電圧が発生せず、また、省スペース化とコスト削減、及びより確実性と安全性を高めた本質安全防爆構造に寄与することが可能なサージ電圧吸収装置、及びこのサージ電圧吸収装置を備える定量装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のサージ電圧吸収装置は、基板と、該基板に形成されて誘導負荷に接続される一対の回路と、該一対の回路に跨って接続される一又は複数のチップ状のサージキラーと、を備えるサージ電圧吸収装置において、前記一対の回路をそれぞれ分断して回路分断部分を形成し、この各回路分断部分を前記チップ状のサージキラーの接続部とすることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の本発明のサージ電圧吸収装置は、請求項1に記載のサージ電圧吸収装置において、分断状態を保ちつつ前記分断部分から回路側方へ突出する凸部を含んで前記接続部を形成することを特徴としている。
【0014】
請求項3記載の本発明のサージ電圧吸収装置は、請求項1又は請求項2に記載のサージ電圧吸収装置において、前記チップ状のサージキラーをダイオードとすることを特徴としている。
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の本発明の定量装置は、計量を開始する計量開始信号により開弁し、設定された流量値の計量終了に係る計量終了信号により閉弁する定量弁と、該定量弁を制御するための信号処理を行う演算装置と、前記定量弁を制御するための計量開始及び計量終了を示す制御信号により制御される電磁弁と、該電磁弁のコイルに接続されるサージ電圧吸収装置と、を備える定量装置であって、前記サージ電圧吸収装置は、基板と、該基板に形成されて前記コイルに接続される一対の回路と、該一対の回路に跨って接続される一又は複数のチップ状のサージキラーと、を備える定量装置において、前記一対の回路をそれぞれ分断して回路分断部分を形成し、この各回路分断部分を前記チップ状のサージキラーの接続部とすることを特徴としている。
【0016】
このような特徴を有する本発明によれば、仮にチップ状のサージキラーの付け忘れやズレ或いは経年使用後の半田付不良が発生した場合、コイルへの電流が遮断される。特に従来のハード部品と異なり、最近では表面実装部品となっているため、半田付不良はより起こりやすい状況となっている。また、仮にサージキラーが破損(パンク)した場合でも同様に流れが遮断される。サージキラーの破損(パンク)でコイルへの電流が遮断されれば、サージキラーは一つで済むことになる。本発明では、製造面に対する配慮や定量装置の従来構成に対する配慮から、サージキラーに対する接続部に凸部が含まれ、また、サージキラーがチップ状のダイオードとなる。
【0017】
尚、チップ状のサージキラーは、ダイオード(ツェナーダイオード)に限らず、バリスターやCR素子なども用いることができるものとする。また、誘導負荷も電磁弁に限らず、リレーなどの逆起電圧が発生する電気部品を用いることができるものとする。
【0018】
本発明のサージ電圧吸収装置は、防爆の目的から装置全体に樹脂モールドを施す場合であっても、製品検査においてサージキラーの付け忘れやズレ及び半田付不良を容易に確認することが可能となる。すなわち、樹脂モールドでサージキラーの取り付け状態が目視確認不能であっても、単に回路の一端と他端とで導通をとることにより付け忘れやズレ及び半田付不良を確認することが可能となる(回路分断部分の形成により、サージキラーの付け忘れやズレ及び半田付不良があると導通が得られない)。このため、防爆上で規定されている冗長化実装(ia機器の場合3個、ib機器の場合2個)が確実になされることになる。従来の回路では、サージキラーの付け忘れやズレ及び半田付不良があっても判別することが不能であったが、本発明ではこれを解消することができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された本発明によれば、付け忘れやズレ及び半田付不良が生じてもサージ電圧が発生せず、また、省スペース化とコスト削減、及びより確実性と安全性を高めた本質安全防爆構造に寄与することが可能なサージ電圧吸収装置を提供することができる。
【0020】
請求項2に記載された本発明によれば、サージキラーの接続をし易くしたりすることができる。
【0021】
請求項3に記載された本発明によれば、定量装置に備えるサージ電圧吸収装置として好適なものとすることができる。
【0022】
請求項4に記載された本発明によれば、付け忘れやズレ或いは経年使用後の半田付不良が生じてもサージ電圧が発生せず、また、省スペース化とコスト削減とに寄与するとともに、回路分断によってより安全サイドに働く本質安全防爆構造とすることが可能なサージ電圧吸収装置を備えた定量装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のサージ電圧吸収装置及び定量装置の一実施の形態を示す構成図である。また、図2(a)は本発明のサージ電圧吸収装置の平面図、図2(b)は回路パターンを示す平面図である。
【0024】
図1において、引用符号21は本発明の定量装置の要部となる定量弁制御装置を示している。この定量弁制御装置21は、図示しない定量弁に接続される空気出力部22と、空気出力部22の両側に設けられる電磁弁ユニット23と、電磁弁ユニット23に接続されるリード線24とを備えて構成されている。
【0025】
電磁弁ユニット23は、電磁弁本体25と、この電磁弁本体25を覆うケース26と、ケース26の基板収納部27に収納される本発明のサージ電圧吸収装置28と、サージ電圧吸収装置28を覆うカバー29とを備えて構成されている。
【0026】
本発明の定量装置は、定量弁制御装置21における電磁弁ユニット23のサージ電圧吸収装置28が従来と異なっているものとする。この他の構成は、背景技術の欄で挙げた特許文献1の開示技術における構成と基本的に同じものとする(一例であるものとする)。
【0027】
図1及び図2において、本発明のサージ電圧吸収装置28は、基板30と、この基板30に形成される一対の回路31と、一対の回路31に跨って接続される複数のチップダイオード(チップツェナーダイオード)32とを備えて構成されている。サージ電圧吸収装置28は、電磁弁本体25のソレノイドコイル33と、リード線24との間に設けられている。尚、チップダイオード32は、特許請求の範囲に記載されたサージキラーに相当するものとする。また、電磁弁本体25は誘導負荷に相当するものとする。
【0028】
各回路31は、基板30上に形成されている。各回路31の一端には、ソレノイドコイル33との接続を図るためのコイル接続部34が形成されている。また、各回路31の他端には、リード線24との接続を図るためのリード線接続部35が形成されている。各回路31の中間には、回路分断部分36が複数形成されている。各回路分断部分36は、各回路31を所定の間隔で分断することにより形成されている。各回路分断部分36は、チップダイオード32の取り付け位置に応じて形成されている。本形態において、回路分断部分36は各回路31に三つずつ形成されている。回路分断部分36は、(プリント)基板30の銅箔部分のみならず、基板30自身も分断されていると、より効果的であるものとする。
【0029】
各回路分断部分36には、一対の凸部37が形成されている。この一対の凸部37は、チップダイオード32に対する接続部として形成されている。一対の凸部37は、回路分断部分36の分断状態を保ちつつ回路側方(図示参照)へ突出するように形成されている。一対の凸部37は、半田付け38によりチップダイオード32のコンタクト39との電気的な接続を図ることができるように形成されている。本形態において、各回路31の中間は、凸部37を含む回路分断部分36の形成によって略コ字状の回路パターンになっている。
【0030】
次に、上記構成に基づきながらサージ電圧吸収装置28の製造について説明する。
【0031】
サージ電圧吸収装置28は、第一工程と第二工程とを経ることにより製造されている。第一工程では、凸部37を含む回路分断部分36を有する回路31を予めプリント形成した基板30と、三つのチップダイオード32とを準備する作業が行われ、この第一工程が完了すると第二工程へ移行する。第二工程では、各回路31に跨るようにチップダイオード32を置いて半田付け38を施し、チップダイオード32を実装する作業が行われる。
【0032】
半田付け38は凸部37毎に施され、この半田付け38によってこれまで分断された状態の一対の凸部37がチップダイオード32のコンタクト39を介して導通するようになる(仮に、チップダイオード32の付け忘れやズレ及び半田付不良があった場合、回路31の中間が分断されたままとなる)。半田付け38が終わると、サージ電圧吸収装置28の製造が完了する。
【0033】
サージ電圧吸収装置28の製造後、このサージ電圧吸収装置28は基板収納部27に収納される。そして、ソレノイドコイル33とコイル接続部34、及び、リード線24とリード線接続部35が半田付け40により接続され、また、カバー29で覆われると、サージ電圧吸収装置28自体の取り付けが完了する。
【0034】
以上、図1及び図2を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、仮にチップダイオード32の付け忘れやズレ及び半田付不良が発生した場合、この時点でコイルに電流が流れなくなることから、より確実性と安全性を高めた本質安全防爆機器とすることができる。また、仮にチップダイオード32が破損(パンク)した場合でも、同様にサージ電圧の発生を防ぐことができる。尚、このような場合、回路が動作しないことになるが、本質安全防爆機器というのは、万が一であっても事故があってはならないものであるので、安全性の向上に重点を置いた発明になる。
【0035】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0036】
すなわち、本発明によれば、省スペース化とコスト削減とを図るために、一つのチップダイオード32で構成することも可能であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のサージ電圧吸収装置及び定量装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】(a)は本発明のサージ電圧吸収装置の平面図、(b)は回路パターンを示す平面図である。
【図3】(a)は従来例のサージ電圧吸収装置の平面図、(b)は回路パターンを示す平面図である。
【図4】(a)はダイオードが存在しない場合のサージ波形の図、(b)はダイオードが存在する場合のサージ波形の図である。
【図5】ダイオードの付け忘れやズレを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
21 定量弁制御装置
22 空気出力部
23 電磁弁ユニット(誘導負荷)
24 リード線
25 電磁弁本体
26 ケース
27 基板収納部
28 サージ電圧吸収装置
29 カバー
30 基板
31 回路
32 チップダイオード(サージキラー)
33 ソレノイドコイル
34 コイル接続部
35 リード線接続部
36 回路分断部分
37 凸部
38 半田付け
39 コンタクト
40 半田付け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に形成されて誘導負荷に接続される一対の回路と、該一対の回路に跨って接続される一又は複数のチップ状のサージキラーと、を備えるサージ電圧吸収装置において、
前記一対の回路をそれぞれ分断して回路分断部分を形成し、この各回路分断部分を前記チップ状のサージキラーの接続部とする
ことを特徴とするサージ電圧吸収装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサージ電圧吸収装置において、
分断状態を保ちつつ前記分断部分から回路側方へ突出する凸部を含んで前記接続部を形成する
ことを特徴とするサージ電圧吸収装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のサージ電圧吸収装置において、
前記チップ状のサージキラーをダイオードとする
ことを特徴とするサージ電圧吸収装置。
【請求項4】
計量を開始する計量開始信号により開弁し、設定された流量値の計量終了に係る計量終了信号により閉弁する定量弁と、該定量弁を制御するための信号処理を行う演算装置と、前記定量弁を制御するための計量開始及び計量終了を示す制御信号により制御される電磁弁と、該電磁弁のコイルに接続されるサージ電圧吸収装置と、を備える定量装置であって、前記サージ電圧吸収装置は、基板と、該基板に形成されて前記コイルに接続される一対の回路と、該一対の回路に跨って接続される一又は複数のチップ状のサージキラーと、を備える定量装置において、
前記一対の回路をそれぞれ分断して回路分断部分を形成し、この各回路分断部分を前記チップ状のサージキラーの接続部とする
ことを特徴とする定量装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−266288(P2007−266288A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89057(P2006−89057)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】