説明

サーモトロピック液晶ポリマー組成物と絶縁材

【目的】 電気絶縁性で熱伝導性がよく、熱膨張性の少ない信頼性に優れた液晶ポリマー組成物を得る。
【構成】 サーモトロピック液晶ポリマー樹脂10〜50重量%と、ジルコン50〜90重量%とからなる電気絶縁材として有用なサーモトロピックLCP組成物であり、射出成形して電気機械器具用のコイルと端子部を含む固定子部の絶縁性ハウジング形成に用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶ポリマー組成物に係り、特に、射出成形により電気機械器具の構造体に用いるのに適した電気絶縁材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、液晶ポリマーに充填剤例えば、ガラス、カーボン、ケプラーなどの短繊維を充填して強化することや、炭酸カルシウムなどを充填して成形品の引け防止をすることは行なわれていたが、充填剤の含有率は通常30〜40重量%までであった。これに対して液晶ポリマーに充填剤を高含有量で混練して、射出成形により充填成形し、電気絶縁性や熱伝熱性を改善することは知られていなかった。また、従来例えば、小型モータの固定子磁気鉄心や、それに配設された固定子コイル、並びにその端子部は運転に伴なう脈動トルクや発熱に起因するさまざまな機械的ストレス、湿度、水分、腐食性雰囲気、腐食性液体、熱放散、などの実用上の諸条件下にさらされていることから、それらの固着法や絶縁法について種々検討されてきた。
【0003】一般には絶縁ワニス並びに接着剤を用いて、固定子コイルの絶縁並びに固定子磁気鉄心への固着を行ない、ついで鋳造金属部分を用いて、ハウジングを行なう方法が採られている。然し、この様な方法では、製造工程数が多く、多大の時間と資材とを使用するため、製品のコストが高くなる。また、一方回転機の運転時に生ずる熱冷サイクルや機械的振動により、接着面の剥離、絶縁性能の低下などの欠点があった。特に、可変周波数電源例えばPWMインバータ制御(可変電圧、可変周波数制御装置、云わゆるVVVF制御等)によって高周波数で高速運転されるモータにおいては、この欠点はより助長される欠陥を持っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この様な問題点を取り除く方法として、固定子鉄心、固定子コイル全体を樹脂でモールドする方法が提案されている。この方法においては、一体モールドできる樹脂組成物として次のような点が要求される。まず、樹脂組成物は、固定子磁気鉄心と、固定子コイルに対して極めて接着性が優れていなければならない。
【0005】そして、回転機の作動時に発生する熱の放散性を良くし、かつ剥離現象を起さずに長時間にわたってその絶縁性を保持出来る必要がある。また、回転子の作動、停止による熱、冷却サイクルあるいは作動時の振動により、モールド層にクラックが生じ、絶縁性能の低下のみならず、回転機の寸法精度が悪くなり、回転子の運動に支障を来たしてはならない。さらに、回転機の電磁気学的な要請に基づいて、固定子磁気鉄心に備えられる多数のスロット部へ完全に樹脂が充填して、電気力線分布に乱れを生ぜず、また回転機の作動時の脈動振動により、固定子磁気鉄心から樹脂が剥離したり、樹脂にクラックが生じたり、あるいはまた樹脂の破片が回転子に当ってはならない。
【0006】さらに最も重要な点としては、何より絶縁性がよくなければならない。一度モールドすると、後で修正することができないために絶対的な特性の信頼性がなければならない。以上の様な種々の問題点を解決することは従来極めて困難であるとされていた。このような課題を解決する手法として、高充填性、高生産性に優れる射出成形技術が有用であるが、今までの充填材料は化学反応を伴う液状樹脂であるため、射出成形ができなかった。本発明は、上記した従来技術の欠点を解消する射出成形用材料を開発し、作業性と量産性を向上させ、かつ、絶縁性、熱伝導性、熱膨張性並びに信頼性のすぐれた液晶ポリマー組成物及び電気絶縁材を提供し、それを用いた樹脂モールド固定子を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、サーモトロピック液晶ポリマー樹脂10〜50重量%と、ジルコン50〜90重量%とからなるサーモトロピック液晶ポリマー組成物としたものであり、上記組成物には、ジルコンに対して容積比で最大40%までの無機鉱物質充填剤を添加してもよい。また、本発明では、サーモトロピック液晶ポリマー樹脂10〜50重量%に、粒径1〜60μmのジルコン50〜90重量%及び該ジルコンに対して容積比で最大40%までの無機鉱物質充填剤を充填してなる電気絶縁材としたものである。
【0008】さらに、本発明では、前記の電気絶縁材を用いて、電気機械器具用有鉄心又は空鉄心コイル及びそのコイルと端子部を含む固定子部全体に、射出成形により絶縁性ハウジングを形成したことを特徴とする樹脂モールド製電気機械器具用固定子とその製造方法としたものである。そして、このような固定子は、電気絶縁性が良く、且つ膨張係数が極めて金属に近いため剥離、クラック発生がなく、信頼性が高く優れている。
【0009】次に本発明を詳細に説明する。本発明における液晶ポリマー樹脂とは、芳香族ポリエステルに属する熱可塑性を有するものでサーモトロピックLCP( Liquid Crystalline Polymers:液晶ポリマー)と呼ばれるものである。このサーモトロピックLCPは基本分子構造の違いにより、現在3つのタイプがあり、耐熱性も大いに異なっている。いずれも、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)を含むポリエステル系の共重合体であるが、1型はPHB、テレフタル酸(TA)、p,p′−ビフェノール(BP)の共重合体で荷重たわみ温度(HDT)は275〜350℃である。2型は2−オキシ−6−ナフトエ酸(2,6−NA)を主成分としたもので、HDTは180〜240℃、3型はPHBとPET(ポリエチレンテレフタレート)の共重合体で、HDTは64〜210℃である。いずれも、溶融粘度が低く高流動性であり、低線膨張係数、低成形収縮率、低吸湿寸法変化による高寸法安定性、振動減衰特性、高強度・高弾性率の他に電気機械器具として必要な高い絶縁耐力と耐アーク性をもつ。
【0010】一方、高分子材料は一般に熱伝導性が悪く、更にこのサーモトロピックLCPは成形時の結晶配向の影響による異方性が大きく、特にウェルド強度が低下する性質があるため、本発明では無機鉱物質のフィラーを多量に含有させ改善を図った。無機鉱物質としては電気特性を低下させないことを第一義に、また射出成形によってステータコイルの線間などを始めとする微小隙間への材料の充填をするため、構造式、ZrSiO4 のジルコン、例えばジルコンサンドの微粒子(ジルコンフラワー:350メッシュパス96.5%以上、約60μm以下)を使用した。
【0011】ジルコンフラワーはサーモトロピックLCPに対し重量比で50〜90%、望ましくは80%以上含有させ、両者を予め加熱混練して均質な組成を持つペレット(粒状)にして使用する。本発明おいてサーモトロピックLCPに混練される無機鉱物質充填剤としてはジルコンの他にシリカ、クレー、タルク、アスベスト、カオリン、ドロマイト、クロマイト、アルミナ、マイカ、マグネサイト、酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、スレート、チョウク、珪砂、シラス、山砂、川砂、溶融石英、ガラス粉、その他自然に存在する無機質物質を粉状に加工した種々な粉状物質がある。その添加量はジルコンに対する添加比率が容積比で最大40%であり、ジルコンの比重との換算で重量比が求められる。
【0012】また、樹脂モールド製電気機械器具用固定子を製造するための射出成形条件としては、加熱混練の温度範囲は260〜330℃特に270〜280℃が最適であり、射出成形の際の圧力範囲は400〜1400kgf/cm2 である。
【0013】
【作用】本発明でジルコンの添加量を重量比で50%以上としたのは、この量以下では熱伝導率の値が低く実質的に添加効果が得られないためである。また、90%を越える添加では混練機やペレタイザー更には射出成形機や金型の摩耗や負荷が大きくなり実質的に混練不可能になるためであり、かつ組成物成形体に空隙を生じ特性の低下を来たすためである。また、ジルコン以外の無機鉱物質充填材の添加量を最大で40%までとしたのは、ジルコン以外の無機鉱物質充填材を使用する場合、電気絶縁性としては差異のないものが多いが、熱伝導率の特性としては、差異が大きくなるためジルコンに対する添加比率は容積比で最大40%としたものである。
【0014】更に、射出成形の際の圧力範囲を400〜1,400kgf/cm2 としているが、水中モータステータの成形では、充填材料の配合割合や射出成形時の樹脂温度や金型温度により、範囲が広くなるため、一般的に一次成形は、600〜1,400kgf/cm2 、二次成形は400〜700kgf/cm2 の圧力範囲となるためである。本発明のサーモトロピック液晶ポリマー組成物は、熱伝導性のよいジルコンを含有しているため、電気絶縁性、熱伝導性及び耐熱性に優れた安価で強い電気絶縁材であり、この絶縁材を用いて射出成形することによって、絶縁とハウジング形成を同時に行ない、絶縁性能が良好で、小型軽量な信頼性の優れた固定子を得ることができる。
【0015】従来電気機械器具の樹脂モールドは、液状の不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、エポキシ樹脂で行なわれていたが、この方法では■硬化時間が長い、■硬化中フィラーの沈降を生じ、レジンリッチ部を形成するためヒートサイクルによりクラックを発生しやすい、■成形品には必ずケース(容器)が必要なため附形部品を作りにくい、■成形品にエアボイドが生じ易く品質上好ましくない。■硬化時大気中の湿度の影響を受けやすい、など製造上並びに性能上の欠点があった。
【0016】つまり、従来技術の樹脂モールドでは、硬化収縮やヒートサイクル、エアボイド、硬化状態の差異などに起因するクラックの発生があり、経時劣化が避け難かった。しかし、本発明では高熱伝導性の無機鉱物質フィラーを均質に混練したサーモトロピックLCPを射出成形することにより従来の欠点を全て克服した上に、振動減衰特性や腐食性ガスに対するバリヤー性など新たな機能を付加した樹脂モールド製電気機械器具を提供することが可能となった。更に、射出成形が可能となったことにより生産性が従来技術に較べ2〜3倍向上した。
【0017】
【実施例】以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1パラヒドロキシ安息香酸とポリエチレンテレフタレートの共重合体からなる3型のサーモトロピックLCP(HDT:170℃)にジルコンフラワー(350メッシュパス96.5%以上、約60μm以下)を重量比で85.3%含有し、温度270〜280℃で加熱混練して、本発明の均質なサーモトロピック液晶ポリマー組成物を製造した。ジルコンフラワーZはジルコニア(ZrO2 )を66wt%と二酸化けい素(SiO2 )33wt%の成分比をもつ。
【0018】本発明のサーモトロピック液晶ポリマー組成物のペレットを使って、射出成形により平板状の試験片を作成して測定した熱伝導率及び線熱膨張係数は表1のとおりである。比較として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とジルコンサンド(粒度分布のピークが105〜125μmで非常に粗い)の無機質充填材(86.8wt%)からなる材料(比較例1)、FRP(ガラス繊維:GF、30wt%)からなる材料(比較例2)、ナイロン66(GF、30wt%)からなる材料(比較例3)、サーモトロピックLCP(GF、30wt%)からなる材料(比較例4)を示す。
【0019】実施例2実施例2は実施例1と同じ配合比をベースに、ジルコンフラワーの容積に対し溶融石英(ジルコンフラワーと同じく60μm以下の粒径のシリカフラワー:粒形は破砕砂のため角張っている)を30容量%配合した組成物である。溶融石英は熱膨張係数がジルコンフラワーより小さく、熱的安定性に優れた性質を持っている。測定結果を表1に示す。
【0020】
【表1】


【0021】実施例3次に、実施例1と同じ、サーモトロピック液晶ポリマーとジルコンフラワーを用いてサーモトロピック液晶ポリマー組成物を製造した。この例ではジルコンフラワーの含有量を、45、60、70、85、90、95重量%として実施し、熱伝導率と絶縁破壊電圧を測定しそれぞれ固有の値と比較した結果を表2に示す。
【0022】
【表2】


【0023】上記、表1、表2に記載のように本発明の組成物は、熱伝導率がよく、また線熱膨張係数が小さい。なお、表2に示すように、90%まではジルコンフラワー含有量は多くなるほど熱伝導率はよくなるが、ジルコンフラワー含有量が90%を超えると、組成物成形体に空隙部を生じるため、徐々に特性が低下する。
【0024】実施例4熱伝導性効果を見るため、水中キャンドモータを製作し温度試験を実施した。本発明の液晶ポリマー樹脂としてはジルコンフラワー85wt%、LCP15wt%を用いた。その結果を表3に示す。熱伝導性向上による固定子の冷却は顕著であり、特にコイルエンド部の熱放散が良く、モータ全体の温度の平均化が行われている。
【0025】
【表3】


【0026】前記の水中キャンドモータの断面図を図1に示す。図1において、1は水中キャンドモータのシャフト、2はシャフト1に嵌着固定されたロータ、3は軸受、4はシャフト1を軸受3を介して支承するブラケットを示す。5はステータ室6とロータ室7を分離隔壁とするステータキャン、8はステータコア、9は絶縁紙、10はコイルを示す。11はステータコア8を嵌着固定するフレーム、14はフレーム側板、15はリード線を示す。ステータ室6は本発明のサーモトロピック液晶ポリマーとジルコンフラワーの混合物で充填モールドされており、ロータ室7はプロピレングリコール水溶液で充満されている。
【0027】31はサンドスリンガー、32はオイルシールを示しロータ室内へのゴミ、汚水の浸入を防止するシール機構を示す。33はスラストカーボン、34はスラストパッド、35は調心球、36はスラストディスク、37はスラストハウジングを示し、本水中キャンドモータに連結されるポンプを運転した時に発生する水力学的アキシャルスラスト力をシャフト1を通して担持するスラスト軸受機構を示す。比較例として、ステータ室内6にエポキシ樹脂及びシリカの混合物を充填したものを比較例5として、また、ステータ室内6に不活性トライガスと空気との混合気体を充満させたものを比較例6として表3に示している。
【0028】実施例5本実施例では、水中モータのステータ室内を本発明による電気絶縁性に優れた高熱伝導性成形材料で充填する方法を説明する。図2は水中モータ・ステータの断面図を示す。8がステータコアの珪素鋼板で、モータ容量に応じて必要数が積層されフレーム11の所定位置に固定されている。この珪素鋼板の中には絶縁紙9等で保護されたコイル10が配置されその端部が両端のコイルエンド10a、10bを形成している。ステータ21はこの他に負荷側フレーム側板14a、反負荷側フレーム側板14b及びキャン5により密閉された部屋を形成している。
【0029】図3〜5は図2に示した水中モータのステータ室内6を本発明の充填材料で射出成形により充填成形するための金型構造の例を示したものである。このうち、図3は一次成形用で、ステータコア8に設けられたスロット19に配置されたコイル、及びその両端のコイルエンド10a、10bに損傷を与えずに、空隙を完全に充填するための射出成形用金型であり、図4は、図3のA−A線断面図である。
【0030】先ず、一次成形においては、コイルを配置したステータコア8を金型に装着し、ステータコア8の中空部に設けたスプルー24、ゲート29から本発明のサーモトロピックの液晶ポリマー組成物を高圧で射出し複数のスロット19及びそのスロット19を通して両端のコイルエンド10a、10b周囲のステータ室内6の一部を充填成形する。この場合の射出圧力は、充填樹脂材料の流動長さが長いため、実施例では800〜1,200kgf/cm2 が適正範囲であった。
【0031】図5は二次成形用金型であり、図2における両端のコイルエンド部10a、10bを負荷側・反負荷側フレーム側板14a、14bに設けた注入口(ゲート)29を通して射出成形により本発明の成形材料で充填した。即ち、図5は、図3の一次成形後のステータコア8が、フレーム11、負荷側フレーム側板14a、反負荷側フレーム側板14b及びキャン5により密閉されたステータコア両端のコイルエンド部10a、10bのステータ室内6を、同じく射出成形で充填するための二次成形用金型である。
【0032】図5において、二次成形用金型は、X−X部で固定型22と可動型23に分割されており、それぞれに金型温度を調整するための温調回路28が設けられている。ステータ21はステータの変形を防ぐための補強治具26a、26b、26cで予め補強され吊り具27で吊り上げて可動型23に装着する。この状態で成形材料をスプルー24から射出成形する。成形後、金型を分割面X−Xで開き、突き出しプレート25を作動させてステータ21を補強治具26a、26b、26cと共に可動型23から抜き出し、吊り具27を用いて取り出す。
【0033】この手順によりコイルエンド10a、10bの一方の充填が完了し、同じ操作によりもう一方のコイルエンドを充填成形する。二次成形では充填するキャビティ(空洞)のマス(容積)が大きく流動長さが短いので、射出圧力は約500kgf/cm2 で充填できる。本実施例の射出成形条件を整理し、表4に示す。
【0034】
【表4】


尚、本実施例としては一次成形と二次成形でステータ室6を完全に充填したが、用途によっては一次成形だけで目的を達することができるケースもある。
【0035】実施例6図6は本発明による樹脂モールドモータの断面図を示す。図6において、1は樹脂モールドモータのシャフト、2はシャフト1に嵌着固定されたロータ、3a、3bは軸受、4a、4bはシャフト1を軸受3a、3bを介して支承するブラケットを示す。17a、17bは樹脂モールド部18とロータ室7a、7bを分離隔壁とする樹脂モールド製キャンで、樹脂モールド部18と一体に境界目なく形成されている。8はステータコア、9は絶縁紙、10はコイルを示す。18はステータコア8、コイル10、絶縁紙9を一体にハウジングする樹脂モールド部を示す(図1に示すステータ室6はこの部分に包含される)。15はリード線を示す。ロータ室7a、7bは真空又は流体(気体又は液体)で充満されている。
【0036】図7は図6のステータコア8、樹脂モールド製キャン17の部分詳細断面図を示す。8はステータコア、17は樹脂モールド製キャン、9は絶縁紙、10はコイル、16はくさびを示す。これらは樹脂モールド部18に一体ハウジングされる。樹脂モールド部18はステータコア8とロータ2とが対向する範囲においてはステータキャン17としても機能し、ロータ室7a、7bと分離隔壁する機能も合せ持つ。
【0037】実施例7図8は本発明による樹脂モールド・モータの他の実施例の断面図である。図8において、1はキャンドモータのシャフト、2はシャフト1に嵌着固定されたロータ、3a、3bは軸受、4a、4bはシャフト1を軸受3a、3bを介して支承するブラケットを示す。5はステータ室6とロータ室7a、7bを分離隔壁とするステータキャン、8はステータコア、9は絶縁紙、10はコイルを示す。11はステータコア8を嵌着固定するフレーム、12は冷却水室、13は冷却ジャケット、14はフレーム側板、15はリード線を示す。ステータ室6は、本発明のサーモトロピック液晶ポリマーとジルコンフラワーの混合物で充填され、ロータ室7a、7bは真空又は流体(気体又は液体)で充満されている。
【0038】
【発明の効果】本発明の液晶ポリマー組成物は、絶縁性、熱伝導性、熱膨張性、並びに信頼性のすぐれた組成物であり、これを電気絶縁材として電気機械器具用固定子の絶縁性ハウジングに用いることにより、強固で密着性がよく、しかも熱安定性、絶縁性のよい樹脂モールド固定子をうることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水中キャンドモータの断面図である。
【図2】本発明の水中モータ・ステータの断面図である。
【図3】図2のモータ・ステータの一次成形用金型の断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】射出成形により充填成形するための金型構造の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の樹脂モールド・モータの断面図である。
【図7】図4のステータコアと樹脂モールド製キャンの部分詳細断面図である。
【図8】本発明の樹脂モールドモータの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:シャフト、2:ロータ、3,3a,3b:軸受、4,4a,4b:ブランケット、5:ステータキャン、6:ステータ室、7,7a,7b:ロータ室、8:ステータコア、9:絶縁紙、10,10a,10b:コイル、11:ステータコア、12:冷却水室、13:冷却ジャケット、14:フレーム側板、15:リード線、16:くさび、17,17a,17b:樹脂モールド製キャン、18:樹脂モールド部、21:ステータ、22:固定型、23:可動型、24:スプルー、25:突き出しプレート、26a、26b、26c:補強治具、27:吊り具

【特許請求の範囲】
【請求項1】 サーモトロピック液晶ポリマー樹脂10〜50重量%と、ジルコン(ZrSiO4 )50〜90重量%とからなるサーモトロピック液晶ポリマー組成物。
【請求項2】 サーモトロピック液晶ポリマー樹脂10〜50重量%と、ジルコン(ZrSiO4 )50〜90重量%と、該ジルコンに対して容積比で最大40%までの無機鉱物質充填剤とからなるサーモトロピック液晶ポリマー組成物。
【請求項3】 サーモトロピック液晶ポリマー樹脂10〜50重量%に、粒径1〜60μmのジルコン(ZrSiO4 )50〜90重量%及び該ジルコンに対して容積比で最大40%までの無機鉱物質充填剤を充填してなる電気絶縁材。
【請求項4】 電気機械器具用有鉄心又は空鉄心コイル及びそのコイルと端子部を含む固定子部全体に、請求項3記載の電気絶縁材を用いて、射出成形により絶縁性ハウジングを形成したことを特徴とする樹脂モールド製電気機械器具用固定子。
【請求項5】 電気機械器具用有鉄心又は空鉄心コイル及びそのコイルと端子部を含む固定子部全体に、請求項3記載の電気絶縁材を400〜1400kgf/cm2 の圧力で射出成形して絶縁性ハウジングを形成することを特徴とする樹脂モールド製電気機械器具用固定子の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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