説明

システインタグを付加したFc結合性タンパク質、および当該タンパク質を利用した吸着剤

【課題】 Fc結合性タンパク質を担体に固定化させる際、その方向性を有した状態で固定化させることが可能なタンパク質、当該タンパク質の製造方法、および当該タンパク質を担体に固定化して得られる吸着剤を提供すること。
【解決手段】 システイン残基を1つ以上含むオリゴペプチドをFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加したタンパク質、当該タンパク質の製造方法、および当該タンパク質を担体に固定化して得られる吸着剤により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率に担体へ固定化可能なFc結合性タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記タンパク質の製造方法、および前記タンパク質を担体に固定化することで得られる吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガンや感染症等の治療に抗体を含む医薬品(抗体医薬)が用いられている。抗体医薬に用いる抗体は、遺伝子工学的手法により得られた、当該抗体を発現可能な細胞(たとえば、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞等)を培養後、カラムクロマトグラフィー等を用いて高純度に精製し製造する。
【0003】
カラムクロマトグラフィーのうち、アフィニティークロマトグラフィーは、吸着対象物質に対し特異的に結合可能な物質(リガンド)を不溶性の担体に固定化することで得られる吸着剤を用いたクロマトグラフィーであり、抗体と特異的に結合可能な物質をリガンドにすることで、培養液から抗体を特異的に吸着させることができ、結果として抗体の高純度な精製を可能としている。特に抗体製造の分野では、プロテインAをリガンドとした吸着剤を用いたアフィニティークロマトグラフィーが多用されている。一方で、IgG抗体のFc領域に結合する一群のタンパク質分子であるFc受容体やFc領域結合能を有したFc受容体の部分領域(以下、合わせてFc結合性タンパク質という)もプロテインAと同様、抗体を特異的に吸着可能なリガンドとして用いることができる(特許文献1)。
【0004】
リガンドを担体に固定化する際、リガンド表面に存在する反応性の高い側鎖、例えばリジン残基が有するε−アミノ基を、担体に導入したエポキシ基等の活性基を介して共有結合により担体に固定化する方法が一般的に用いられている。しかしながら、リガンドを担体に固定化する際、リガンドの方向性を無視しランダムに固定化すると、当該リガンドが有する抗体結合領域の一部が担体表面側に固定化されるため、その分吸着剤が有する抗体結合性が損なわれる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−126436号公報
【特許文献2】特開2011−097898号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nucleic Acids Res.,30(10),e43,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、Fc結合性タンパク質を担体に固定化させる際、その方向性を有した状態で固定化させることが可能なタンパク質、当該タンパク質の製造方法、および当該タンパク質を担体に固定化して得られる吸着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、Fc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側にシステインを含むオリゴペプチドを付加することで、担体へ固定化させる際、該タンパク質に方向性を付与した状態で固定化させることができ、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の態様を包含する:
第一の態様は、システイン残基を1つ以上含むオリゴペプチドをFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加したタンパク質である。
【0009】
第二の態様は、システイン残基を1つ以上含むオリゴペプチドが配列番号55に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドである、前記第一の態様に記載のタンパク質である。
【0010】
第三の態様は、Fc結合性タンパク質が、
(1)配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(2)配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上を他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質である、
前記第一または第二の態様に記載のタンパク質である。
【0011】
第四の態様は、前記第一から第三の態様のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
【0012】
第五の態様は、前記第四の態様に記載のポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0013】
第六の態様は、前記第五の態様に記載のベクターにより宿主を形質転換して得られる形質転換体である。
【0014】
第七の態様は、前記第六の態様に記載の形質転換体を培養することでタンパク質を製造する方法である。
【0015】
第八の態様は、前記第一から第三の態様のいずれかに記載のタンパク質を担体に固定化して得られる抗体吸着剤である。
【0016】
第九の態様は、担体が、その表面に活性基を有しており、かつ前記活性基が、エポキシ基、マレイミド基、クロロアセチル基、ブロモヒドリン基、ブロモメチル基、ヨードアセチル基のいずれかである、前記第八の態様に記載の抗体吸着剤である。
【0017】
第十の態様は、前記第八または第九の態様に記載の吸着剤を用いた抗体の精製方法である。
【0018】
第十一の態様は、タンパク質のN末端側またはC末端側に付加することで、前記タンパク質に方向性を付与した状態で担体へ固定化可能な、配列番号55に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドである。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明において、システイン残基を1つ以上含むオリゴペプチド(以下、システインタグという)を付加するFc結合性タンパク質とは、Fc領域を含む抗体(IgG)と結合可能なタンパク質のことをいい、Fc受容体およびその部分領域を例示することができる。Fc受容体がヒトFc受容体の場合、構造と機能からヒトFcγRI、ヒトFcγRIIa、ヒトFcγRIIbおよびヒトFcγRIIIに分類され、その中でもヒトFcγRIは抗体との親和性が高い点で、システインタグを付加するFc結合性タンパク質として好ましい。
【0021】
ヒトFcγRIは、抗体と結合するα鎖と、α鎖と作用し免疫信号を細胞質内に伝達するγ鎖からなり、α鎖の構造の概略を図1に示す。ヒトFcγRIのα鎖は、N末端側から15アミノ酸からなるシグナルペプチド(SS、配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち1番目のメチオニンから15番目のグリシンまでの領域)、277アミノ酸からなる細胞外領域(EC、配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち16番目のグルタミンから292番目のヒスチジンまでの領域)、21アミノ酸からなる細胞膜貫通領域(TM、配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち293番目のバリンから313番目のイソロイシンまでの領域)、61アミノ酸からなる細胞内領域(C、配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち314番目のアルギニンから374番目のスレオニンまでの領域)から構成される。本発明におけるシステインタグを付加するFc結合性タンパク質として、前記FcγRIの全領域を用いてもよいが、ヒトFcγRIの細胞外領域(図1のEC領域)中の少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域を含むタンパク質とすると、Fc領域結合能を有しつつ遺伝子工学的手法により細胞外にタンパク質を発現させることができるため、好ましい。なお、Fc結合性タンパク質の熱、酸およびアルカリに対する安定性をさらに向上させることを目的に、配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域にあるアミノ酸の一つ以上を他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したポリペプチドを含むFc結合性タンパク質であってもよい。さらに、ポリヒスチジンタグといった、精製等を行なうためのタグペプチドをN末端側またはC末端側に付加してもよい。配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域にあるアミノ酸の一つ以上を他のアミノ酸に置換したポリペプチドを含むFc結合性タンパク質の例として、配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ以下の(1)から(168)のいずれかに記載のアミノ酸置換を1つ以上含む、タンパク質があげられる(特開2011−206046号公報)。
(1)配列番号53の20番目のスレオニンがプロリンに置換
(2)配列番号53の25番目のスレオニンがリジンに置換
(3)配列番号53の38番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(4)配列番号53の46番目のロイシンがアルギニンまたはプロリンに置換
(5)配列番号53の62番目のアラニンがバリンに置換
(6)配列番号53の63番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(7)配列番号53の69番目のセリンがフェニルアラニンまたはスレオニンに置換
(8)配列番号53の71番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(9)配列番号53の77番目のバリンがアラニンまたはグルタミン酸に置換
(10)配列番号53の78番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(11)配列番号53の94番目のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換
(12)配列番号53の100番目のイソロイシンがバリンに置換
(13)配列番号53の110番目のセリンがアスパラギンに置換
(14)配列番号53の114番目のフェニルアラニンがロイシンに置換
(15)配列番号53の125番目のヒスチジンがアルギニンに置換
(16)配列番号53の131番目のロイシンがアルギニンまたはプロリンに置換
(17)配列番号53の149番目のトリプトファンがロイシンに置換
(18)配列番号53の156番目のロイシンがプロリンに置換
(19)配列番号53の160番目のイソロイシンがメチオニンに置換
(20)配列番号53の163番目のアスパラギンがセリンに置換
(21)配列番号53の195番目のアスパラギンがスレオニンに置換
(22)配列番号53の199番目のスレオニンがセリンに置換
(23)配列番号53の206番目のアスパラギンがリジン、セリンまたはスレオニンに置換
(24)配列番号53の207番目のロイシンがプロリンに置換
(25)配列番号53の218番目のロイシンがバリンに置換
(26)配列番号53の240番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(27)配列番号53の248番目のロイシンがセリンに置換
(28)配列番号53の283番目のロイシンがヒスチジンに置換
(29)配列番号53の285番目のロイシンがグルタミンに置換
(30)配列番号53の17番目のバリンがグリシンまたはグルタミン酸に置換
(31)配列番号53の19番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(32)配列番号53の20番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(33)配列番号53の25番目のスレオニンがメチオニンまたはアルギニンに置換
(34)配列番号53の27番目のグルタミンがプロリンまたはリジンに置換
(35)配列番号53の35番目のグルタミンがロイシン、メチオニンまたはアルギニンに置換
(36)配列番号53の36番目のグルタミン酸がグリシンに置換
(37)配列番号53の41番目のロイシンがメチオニンに置換
(38)配列番号53の42番目のヒスチジンがロイシンに置換
(39)配列番号53の44番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
(40)配列番号53の45番目のバリンがアラニンに置換
(41)配列番号53の46番目のロイシンがアラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、セリンまたはトリプトファンに置換
(42)配列番号53の47番目のヒスチジンがグルタミン、ロイシンまたはアスパラギンに置換
(43)配列番号53の49番目のプロリンがセリンまたはアラニンに置換
(44)配列番号53の50番目のグリシンがアルギニンまたはグルタミン酸に置換
(45)配列番号53の51番目のセリンがアラニン、スレオニン、ロイシン、プロリンまたはバリンに置換
(46)配列番号53の52番目のセリンがグリシンに置換
(47)配列番号53の53番目のセリンがロイシン、スレオニンまたはプロリンに置換
(48)配列番号53の55番目のグルタミンがアルギニンに置換
(49)配列番号53の57番目のフェニルアラニンがチロシンに置換
(50)配列番号53の58番目のロイシンがアルギニンに置換
(51)配列番号53の60番目のグリシンがアスパラギン酸に置換
(52)配列番号53の61番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(53)配列番号53の62番目のアラニンがグルタミン酸に置換
(54)配列番号53の63番目のスレオニンがロイシン、フェニルアラニンに置換
(55)配列番号53の64番目のグルタミンがプロリン、ヒスチジン、ロイシン、リジンに置換
(56)配列番号53の65番目のスレオニンがアラニンまたはバリンに置換
(57)配列番号53の66番目のセリンがスレオニンに置換
(58)配列番号53の67番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(59)配列番号53の69番目のセリンがアラニンに置換
(60)配列番号53の70番目のチロシンがヒスチジンまたはフェニルアラニンに置換
(61)配列番号53の71番目のアルギニンがチロシンに置換
(62)配列番号53の73番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(63)配列番号53の74番目のセリンがフェニルアラニンに置換
(64)配列番号53の76番目のセリンがアスパラギンに置換
(65)配列番号53の77番目のバリンがアスパラギン酸またはリジンに置換
(66)配列番号53の78番目のアスパラギンがセリンまたはグリシンに置換
(67)配列番号53の80番目のセリンがアラニンに置換
(68)配列番号53の84番目のアルギニンがセリンに置換
(69)配列番号53の88番目のグリシンがセリンに置換
(70)配列番号53の89番目のロイシンがグルタミンまたはプロリンに置換
(71)配列番号53の90番目のセリンがグリシンに置換
(72)配列番号53の92番目のアルギニンがシステインまたはロイシンに置換
(73)配列番号53の96番目のイソロイシンがバリンまたはリジンに置換
(74)配列番号53の97番目のグルタミンがロイシンまたはリジンに置換
(75)配列番号53の101番目のヒスチジンがロイシンに置換
(76)配列番号53の102番目のアルギニンがセリンまたはロイシンに置換
(77)配列番号53の103番目のグリシンがアスパラギン酸またはセリンに置換
(78)配列番号53の111番目のセリンがアラニンに置換
(79)配列番号53の114番目のフェニルアラニンがアラニン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、スレオニンまたはバリンに置換
(80)配列番号53の115番目のスレオニンがイソロイシンまたはフェニルアラニンに置換
(81)配列番号53の118番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
(82)配列番号53の121番目のアラニンがスレオニンまたはバリンに置換
(83)配列番号53の128番目のリジンがアルギニンまたはグリシンに置換
(84)配列番号53の129番目のアスパラギン酸がグリシンに置換
(85)配列番号53の131番目のロイシンがグルタミンに置換
(86)配列番号53の133番目のチロシンがヒスチジンまたはアルギニンに置換
(87)配列番号53の134番目のアスパラギンがセリンに置換
(88)配列番号53の137番目のチロシンがフェニルアラニンに置換
(89)配列番号53の138番目のチロシンがヒスチジンに置換
(90)配列番号53の139番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(91)配列番号53の140番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(92)配列番号53の141番目のグリシンがアスパラギン酸またはバリンに置換
(93)配列番号53の142番目のリジンがグルタミン酸またはアルギニンに置換
(94)配列番号53の144番目のフェニルアラニンがイソロイシンに置換
(95)配列番号53の147番目のフェニルアラニンがセリンに置換
(96)配列番号53の148番目のヒスチジンがアルギニンまたはグルタミンに置換
(97)配列番号53の149番目のトリプトファンがアルギニンに置換
(98)配列番号53の151番目のセリンがスレオニンに置換
(99)配列番号53の152番目のアスパラギンがスレオニン、イソロイシンまたはプロリンに置換
(100)配列番号53の154番目のスレオニンがセリンに置換
(101)配列番号53の156番目のロイシンがヒスチジンに置換
(102)配列番号53の157番目のリジンがアルギニンに置換
(103)配列番号53の159番目のアスパラギンがスレオニンまたはアスパラギン酸に置換
(104)配列番号53の160番目のイソロイシンがスレオニン、バリンまたはロイシンに置換
(105)配列番号53の161番目のセリンがスレオニンに置換
(106)配列番号53の165番目のスレオニンがメチオニンに置換
(107)配列番号53の171番目のメチオニンがスレオニンに置換
(108)配列番号53の173番目のリジンがアルギニンに置換
(109)配列番号53の174番目のヒスチジンがグルタミンに置換
(110)配列番号53の177番目のスレオニンがセリンに置換
(111)配列番号53の181番目のイソロイシンがスレオニンに置換
(112)配列番号53の182番目のセリンがスレオニン、ロイシン、バリンまたはグルタミン酸に置換
(113)配列番号53の184番目のスレオニンがセリンに置換
(114)配列番号53の190番目のプロリンがセリンに置換
(115)配列番号53の193番目のバリンがロイシンに置換
(116)配列番号53の195番目のアスパラギンがアラニンに置換
(117)配列番号53の196番目のアラニンがセリンに置換
(118)配列番号53の198番目のバリンがグリシンまたはメチオニンに置換
(119)配列番号53の199番目のスレオニンがアラニンに置換
(120)配列番号53の200番目のセリンがグリシンまたはアルギニンに置換
(121)配列番号53の202番目のロイシンがメチオニンに置換
(122)配列番号53の203番目のロイシンがヒスチジン、グルタミン、チロシン、アルギニン、プロリンに置換
(123)配列番号53の204番目のグルタミン酸がバリンに置換
(124)配列番号53の207番目のロイシンがグルタミン、ヒスチジンまたはアルギニンに置換
(125)配列番号53の209番目のスレオニンがアラニンに置換
(126)配列番号53の211番目のセリンがアルギニンまたはグリシンに置換
(127)配列番号53の213番目のグルタミン酸がバリンまたはイソロイシンに置換
(128)配列番号53の215番目のリジンがアルギニンまたはグルタミン酸に置換
(129)配列番号53の217番目のロイシンがアルギニンまたはグルタミンに置換
(130)配列番号53の218番目のロイシンがイソロイシン、メチオニンまたはリジンに置換
(131)配列番号53の219番目のグルタミンがプロリンまたはアルギニンに置換
(132)配列番号53の223番目のロイシンがアルギニン、グルタミンまたはメチオニンに置換
(133)配列番号53の224番目のグルタミンがアルギニンに置換
(134)配列番号53の225番目のロイシンがグルタミンに置換
(135)配列番号53の227番目のフェニルアラニンがイソロイシンに置換
(136)配列番号53の230番目のチロシンがヒスチジンまたはフェニルアラニンに置換
(137)配列番号53の231番目のメチオニンがリジンまたはアルギニンに置換
(138)配列番号53の233番目のセリンがグリシンまたはアスパラギンに置換
(139)配列番号53の234番目のリジンがグルタミン酸に置換
(140)配列番号53の240番目のアスパラギンがグリシンに置換
(141)配列番号53の244番目のグルタミン酸がバリンに置換
(142)配列番号53の245番目のチロシンがヒスチジンまたはグルタミン酸に置換
(143)配列番号53の246番目のグルタミンがアルギニンまたはリジンに置換
(144)配列番号53の248番目のロイシンがイソロイシンに置換
(145)配列番号53の249番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(146)配列番号53の250番目のアラニンがバリンに置換
(147)配列番号53の251番目のアルギニンがセリンに置換
(148)配列番号53の252番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(149)配列番号53の253番目のグルタミン酸がグリシンに置換
(150)配列番号53の257番目のロイシンがアルギニンまたはグルタミンに置換
(151)配列番号53の261番目のグルタミン酸がバリンまたはアラニンに置換
(152)配列番号53の262番目のアラニンがバリンに置換
(153)配列番号53の263番目のアラニンがセリンに置換
(154)配列番号53の264番目のスレオニンがセリンに置換
(155)配列番号53の265番目のグルタミン酸がアラニンまたはグリシンに置換
(156)配列番号53の268番目のアスパラギンがセリン、イソロイシンまたはスレオニンに置換
(157)配列番号53の270番目のロイシンがヒスチジン、アルギニンまたはバリンに置換
(158)配列番号53の271番目のリジンがアルギニンに置換
(159)配列番号53の272番目のアルギニンがグルタミンに置換
(160)配列番号53の277番目のグルタミン酸がバリンに置換
(161)配列番号53の279番目のグルタミンがアルギニンまたはヒスチジンに置換
(162)配列番号53の282番目のグリシンがアスパラギン酸に置換
(163)配列番号53の283番目のロイシンがプロリンに置換
(164)配列番号53の285番目のロイシンがアルギニンまたはヒスチジンに置換
(165)配列番号53の286番目のプロリンがグルタミン、アルギニンまたはグルタミン酸に置換
(166)配列番号53の287番目のスレオニンがイソロイシン、プロリン、アラニンまたはバリンに置換
(167)配列番号53の288番目のプロリンがアラニン、セリンまたはスレオニンに置換
(168)配列番号53の289番目のバリンがアラニン、アスパラギン酸、グリシン、ロイシンまたはイソロイシンに置換
本発明において、システインタグの長さは当該タグを付加するFc結合性タンパク質が有する抗体(Fc領域)結合能を損なわない限り、1残基から100残基の範囲の中から任意に設定でき、特に5残基から20残基の範囲に設定するとよい。システインタグに含まれるシステイン残基は1つ以上あればよいが、2つ以上含む場合はシステインタグ内でS−S結合が形成されないよう設計する必要がある。システインタグを構成するシステイン以外のアミノ酸残基の種類は、担体表面の物性を考慮の上、担体表面と相互作用しやすい物性を有したアミノ酸残基を適宜選択すればよい。本発明におけるシステインタグの一例として配列番号55に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドがあげられる。
【0022】
Fc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側にシステインタグを付加して得られる本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、単に本発明のポリヌクレオチドという)の作製方法としては、
(I)本発明のタンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、当該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(II)本発明のタンパク質のうちFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、直接人工的に、またはFc結合性タンパク質のcDNA等からPCR法などのDNA増幅法を用いて調製後、当該調製したポリヌクレオチドの5’末端側または3’末端側に遺伝子工学的手法によりシステインタグをコードするオリゴヌクレオチドを付加する方法、が例示できる。
【0023】
なお、アミノ酸配列をヌクレオチド配列に変換する際、形質転換させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。一例として、宿主が大腸菌(Escherichia coli)の場合は、アルギニン(Arg)ではAGA/AGG/CGG/CGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)ではCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それぞれ使用頻度が少ないため(いわゆるレアコドンであるため)、それらのコドンを避けるように変換すればよい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のホームページにあるCodon Usage Database等)を利用することによっても可能である。また、前記(I)または(II)の方法で作製した本発明のポリヌクレオチドの5’末端側にシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを付加してもよく、宿主が大腸菌の場合は、前記シグナルペプチドとしてpelB、DsbA、MalE(UniProt No.P0AEX9に記載のアミノ酸配列のうち1番目から26番目までの領域)、TorTといったペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドをあげることができる(特許文献2)。
【0024】
本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主を形質転換する場合、本発明のポリヌクレオチドそのものを用いてもよいが、発現ベクター(例えば、原核細胞や真核細胞の形質転換に通常用いるバクテリオファージ、コスミドやプラスミド等)の適切な位置に本発明のポリヌクレオチドを挿入したものを用いると、より好ましい。なお、当該発現ベクターは、形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限はなく、大腸菌を宿主とする場合は、pETプラスミドベクター、pUCプラスミドベクター、pTrcプラスミドベクター、pCDFプラスミドベクター、pBBRプラスミドベクター等を例示することができる。また、前記適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。前記発現ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要なプロモータといった機能性ポリヌクレオチドに連結される状態で挿入すると好ましい。当該プロモータの例として、宿主が大腸菌の場合は、trpプロモータ、tacプロモータ、trcプロモータ、lacプロモータ、T7プロモータ、recAプロモータ、lppプロモータ、さらにはλファージのλPLプロモータ、λPRプロモータ等を例示することができる。前記方法により作製した本発明のポリヌクレオチドを挿入した(本発明のポリヌクレオチドを含む)ベクターで宿主を形質転換するには、当業者が通常用いる方法で行なえばよい。
【0025】
本発明のタンパク質は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換された宿主(形質転換体)を培養することで製造することができる。具体的には、当該形質転換体を培養し、その培養物から本発明のタンパク質を何らかの方法で回収すればよい。なお、本明細書において、培養物とは、培養された形質転換体の細胞そのもののほか、培養に用いた培地も含まれる。本発明のタンパク質製造方法で用いる形質転換体は、対象宿主の培養に適した培地で培養すればよく、宿主が大腸菌の場合は、必要な栄養源を補ったLB(Luria−Bertani)培地が好ましい培地の一例としてあげられる。なお、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターの導入の有無によって選択的に形質転換体を増殖させるために、培地に当該ベクターに含まれる薬剤耐性遺伝子に対応した薬剤を添加して培養すると好ましい。例えば、当該ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合は、培地にカナマイシンを添加すればよい。また培地には、炭素、窒素および無機塩供給源の他に、適当な栄養源を添加してもよく、所望により、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレートおよびジチオスレイトールからなる群から選択される一種類以上の還元剤を含んでもよい。さらに、グリシンといった前記形質転換体から培養液へのタンパク質分泌を促す試薬を添加してもよく、具体的には、宿主が大腸菌の場合、培地に対してグリシンを2%(w/v)以下で添加すると好ましい。培養温度は宿主が大腸菌の場合、一般に10℃から40℃、好ましくは25℃から35℃、より好ましくは30℃前後であるが、発現させるFc結合性タンパク質の特性により選択すればよい。培地のpHは宿主が大腸菌の場合、pH6.8からpH7.4、好ましくはpH7.0前後である。
【0026】
本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに誘導性のプロモータが含まれている場合は、本発明のタンパク質が良好に発現できるような条件下で誘導をかけると好ましい。誘導剤としてはIPTG(isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside)を例示することができる。宿主が大腸菌の場合、培養液の濁度(600nmにおける吸光度)を測定し、約0.5から1.0となったときに適当量のIPTGを添加後、引き続き培養することで、本実施形態のFc結合性タンパク質の発現を誘導することができる。IPTGの添加濃度は0.005から1.0mMの範囲から適宜選択すればよいが、0.01から0.5mMの範囲が好ましい。IPTG誘導に関する種々の条件は当該技術分野において周知の条件で行なえばよい。
【0027】
本発明のタンパク質を回収するには、培養物から何らかの方法でFc結合性タンパク質を抽出すればよい。本発明の形質転換体の培養液から、本発明のタンパク質を抽出するには、当該タンパク質の発現の形態により適宜抽出方法を選択すればよい。培養上清に発現する場合は菌体を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清から本発明のタンパク質を抽出すればよい。一方、細胞内(原核生物においてはペリプラズムも含む)に発現する場合には、遠心分離操作により菌体を集めた後、酵素処理剤や界面活性剤等を添加することにより菌体を破砕し、本発明のタンパク質を抽出すればよい。抽出した本発明のタンパク質を含む溶液から本発明のタンパク質を分離精製するには、当該技術分野において公知の方法を用いればよく、一例として液体クロマトグラフィーを用いた分離精製があげられる。液体クロマトグラフィーには、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等があり、これらのクロマトグラフィーを組み合わせて精製操作を行なうことにより、本発明のタンパク質を高純度に調製することができる。調製した高純度な本発明のタンパク質は、還元剤存在下で保存すると安定に保存できるため好ましく、還元剤としてはジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオンまたはトリカルボキシエチルフォスフィンを例示することができる。還元剤の濃度は、1nMから100mMの範囲の中から使用する還元剤の還元力より判断し適宜設定すればよく、1μMから10mMの範囲とすると好ましい。
【0028】
本発明のタンパク質を不溶性の担体に固定化させることで、本発明の抗体吸着剤を作製することができる。本発明の抗体吸着剤の作製に用いる不溶性の担体は特に限定はないが、アガロース、アルギネート(アルギン酸塩)、カラゲナン、キチン、セルロース、デキストリン、デキストラン、デンプンといった多糖質ゲル、またはポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタンといった合成高分子ゲルが好ましい。前記好ましい担体の一例として、トヨパール(東ソー社製)等の水酸基を導入したポリメタクリレートゲル、Sepharose(GEヘルスケア社製)等のアガロースゲル、セルファイン(JNC社製)等のセルロースゲルがあげられる。担体の形状については特に限定はなく、粒状物または非粒状物、多孔性または非多孔性、いずれであってもよい。
【0029】
本発明のタンパク質を不溶性の担体に固定化する際は、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)活性化エステル基、エポキシ基、マレイミド基、トレシル基、ホルミル基、ハロアセトアミド等の活性基を介して担体と共有結合により固定化すればよい。活性基を有した担体は市販の担体をそのまま用いてもよいし、適切な反応条件にて担体表面に活性基を導入し調製してもよい。表面に活性基を有した市販の担体としてはTOYOPEARL AF−Epoxy−650M、TOYOPEARL AF−Tresyl−650M(いずれも東ソー社製)、HiTrap NHS−activated HP Columns、NHS−activated Sepharose 4 Fast Flow、Epoxy−activated Sepharose 6B(いずれもGEヘルスケア社製)、SulfoLink Coupling Resin(Thermo Scientific社製)を例示できる。担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在する水酸基やエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基等に対して2個以上の活性部位を有する化合物の一方を反応させる方法が例示できる。当該化合物の一例として、担体表面の水酸基やアミノ基にエポキシ基を導入する化合物としては、エピクロロヒドリン、エタンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを例示できる。また前記化合物により担体表面に導入したエポキシ基にカルボキシル基を導入する化合物としては、2−メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト酪酸、6−メルカプト酪酸、グリシン、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸を例示できる。
【0030】
担体表面に存在する水酸基やエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基にマレイミド基を導入する化合物としてはN−(ε−マレイミドカプロン酸)ヒドラジド、N−(ε−マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド、4−[4−N−マレイミドフェニル]酢酸ヒドラジド、2−アミノマレイミド、3−アミノマレイミド、4−アミノマレイミド、6−アミノマレイミド、1−(4−アミノフェニル)マレイミド、1−(3−アミノフェニル)マレイミド、4−(マレイミド)フェニルイソシアナート、2−マレイミド酢酸、3−マレイミドプロピオン酸、4−マレイミド酪酸、6−マレイミドヘキサン酸、(N−[α―マレイミドアセトキシ]コハク酸イミドエステル)、(m−マレイミドベンゾイル)N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、(コハク酸イミジル−4−[マレイミドメチル]シクロヘキサンー1−カルボニル−[6−アミノヘキサン酸])、(コハク酸イミジル−4−[マレイミドメチル]シクロヘキサンー1−カルボン酸)、(p−マレイミドベンゾイル)N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、(m−マレイミドベンゾイル)N−ヒドロキシコハク酸イミドエステルを例示できる。
【0031】
担体表面に存在する水酸基やアミノ基にハロアセチル基を導入する化合物としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロリド、ブロモ酢酸ブロミド、クロロ酢酸無水物、ブロモ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、2−(ヨードアセトアミド)酢酸−N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、3−(ブロモアセトアミド)プロピオン酸−N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、4−(ヨードアセチル)アミノ安息香酸−N−ヒドロキシコハク酸イミドエステルを例示できる。
【0032】
また、担体表面に存在する水酸基やアミノ基にω―アルケニルアルカングリシジルエーテルを反応させた後、ハロゲン化剤でω―アルケニル部位をハロゲン化し活性化する方法も例示できる。ω―アルケニルアルカングリシジルエーテルとしては、アリルグリシジルエーテル、3−ブテニルグリシジルエーテル、4−ペンテニルグリシジルエーテルを例示でき、ハロゲン化剤としてはN−クロロコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミドを例示できる。
【0033】
担体表面に活性基を導入する方法の別の例として、担体表面にあるカルボキシル基に対して縮合剤と添加剤を用いて活性化基を導入する方法もある。縮合剤としては1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジアミド、カルボニルジイミダゾールが例示できる。また添加剤としてはN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、4−ニトロフェノール、1−ヒドロキシベンズトリアゾールを例示できる。
【0034】
担体への活性基導入量は担体1mLあたり1nmolから1mmolが好ましく、より好ましくは1μmolから100μmolである。
【0035】
本発明のタンパク質を不溶性の担体に固定化させる際は、本発明のタンパク質を緩衝液に溶解し、担体が有する活性基と反応させればよく、緩衝液としては酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、MES緩衝液、HEPES緩衝液、Tris緩衝液、ホウ酸緩衝液を例示することができる。固定化させるときの反応温度は、5℃から50℃の範囲の中から活性基の反応性や本発明のタンパク質の安定性を考慮の上適宜設定すればよく、好ましくは10℃から35℃の範囲である。
【0036】
本発明のタンパク質を不溶性の担体に固定化させる方法の具体例として、本発明のタンパク質に含まれるカルボキシル基を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドとN−ヒドロキシコハク酸イミドを作用させてN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)活性化エステル基に変換し、アミノ基を有する担体に固定化させる方法があげられる。
【0037】
本発明のタンパク質を不溶性の担体に固定化して得られる抗体吸着剤(以下、単に本発明の抗体吸着剤という)で精製可能な抗体は、Fc領域を有する抗体(IgG)であれば特に制限はなく、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、ウサギ抗体を例示することができる。
【0038】
本発明の抗体吸着剤を用いた、抗体の精製方法に特に制限はないが、空カラムに本発明の抗体吸着剤を充填して得られるカラムを用いたクロマトグラフィーによる精製方法が抗体を高純度に精製できる点で好ましい。本発明の抗体吸着剤により精製する、抗体を含む溶液としては、抗体を生産する宿主の培養液や、当該培養液を遠心分離等により細胞を除去した培養上清を例示できる。カラムの大きさ(本発明の抗体吸着剤の充填量)は精製原料の処理量を考慮の上、適宜決定すればよい。
【0039】
本発明の抗体吸着剤を充填したカラムに抗体を含む溶液を添加する際は、送液量を考慮しポンプ等の送液手段を用いて添加すればよい。なお、本発明の抗体吸着剤を充填したカラムは、抗体を添加する前に、あらかじめ適切な緩衝液を用いて平衡化すると、抗体をより高純度に精製できるため好ましい。緩衝液としてはリン酸緩衝液等無機塩を成分とした緩衝液を例示することができる。なお、緩衝液のpHは、pH3から10、好ましくはpH5から8である。前記抗体吸着剤に吸着させた抗体を溶出させるには、前記抗体吸着剤と抗体との相互作用を弱める緩衝液を用いればよく、具体的には、クエン酸緩衝液、グリシン塩酸緩衝液、酢酸緩衝液を例示することができる。緩衝液のpHは、抗体が有する機能を損なわない範囲で設定すればよく、好ましくはpH3から6、より好ましくはpH3.3から4.0である。
【発明の効果】
【0040】
本発明のタンパク質は、システイン残基を1つ以上含むオリゴペプチド(システインタグ)をFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加したタンパク質であり、前記Fc結合性タンパク質に方向性を付与した状態で担体に固定化させることができる。その結果、担体に固定化したFc結合性タンパク質のうち抗体への結合能を保持しているタンパク質の割合(有効固定化率)を向上させることができる。よって、本発明のタンパク質を担体に固定化して得られる抗体吸着剤は、システインタグを付加しないFc結合性タンパク質を担体に固定化して得られる抗体吸着剤と比較し、ゲル当たりの抗体吸着量を向上させることができ、抗体精製コストを低減させることができる。
【0041】
なお、本発明のタンパク質を得る際、Fc結合性タンパク質に付加したシステインタグ(例えば、配列番号55に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチド)は、Fc結合性タンパク質以外のタンパク質に対しても、本発明のタンパク質と同様、N末端側またはC末端側に付加することで、方向性を付与した状態で担体に固定化することができる。このため、前記システインタグはタンパク質を効率的に担体に固定化させるのに有効といえる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】Fc結合性タンパク質の概略構造を示す図である。
【図2】pETMalEの概略構造を示す図である。
【図3】pETFcRm32発現ベクターの概略構造を示す図である。
【図4】pETFcRm32C発現ベクターの概略構造を示す図である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1 Fc結合性タンパク質をコードする発現ベクターの作製
配列番号1に示す、Fc結合性タンパク質を含むポリペプチドを発現可能なベクターを以下の方法により作製した。配列番号1のうち、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド(UniProt No.P0AEX9に記載のアミノ酸配列のうち1番目から26番目までの領域)、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFc結合性タンパク質(FcRm32)、308番目から313番目までのヒスチジンがFc結合タンパク質の定量または精製のために導入したポリヒスチジンタグである。なおFcRm32は、配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち、16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当し、かつThr20Pro(配列番号53の20番目のスレオニンをプロリンに置換、以下同じ)、Thr25Lys、Glu36Gly、Thr38Ser、Val45Ala、Leu46Pro、Pro49Ser、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Asp、Ile100Val、Phe114Leu、Tyr133His、Arg139His、Trp149Arg、Leu156Pro、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Asn195Thr、Leu203His、Asn206Thr、Leu207Gln、Met231Lys、Asn240Asp、Leu283HisおよびLeu285Glnの置換を導入したFc結合性タンパク質である。またThr20Proのプロリンは配列番号1において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Val45Alaのアラニンは63番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Leu203Hisのヒスチジンは221番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Glnのグルタミンは225番目、Met231Lysのリジンは249番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置に、それぞれある。
(1)MalEシグナルペプチドおよびリンカーペプチド(MKIKTGARILALSALTTMMFSASALAKIEEM、配列番号54)をコードするポリヌクレオチドを作製するために、下記に示す2段階のPCRを行なった。
(1−1)1段階目のPCR反応を、表1に示す反応液を用い、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル行なうことで実施した。
【0045】
【表1】

【0046】
なお表1に示す反応液の組成のうち、オリゴヌクレオチドミックスは、
配列番号2(5’−TATA[CATATG]AAAATAAAAACAGGTGCACGCATCC−3’;角かっこ内の塩基は制限酵素NdeIサイト)、
配列番号3(5’−GCATTAACGACGATGATGTTTTCCGCCTCGGCTCTCGCC−3’)、
配列番号4(5’−ATCGTCGTTAATGCGGATAATGCGAGGATGCGTGCACCTG−3’)、および
配列番号5(5’−TTGTC[CCATGG]CTTCTTCGATTTTGGCGAGAGCCG−3’;角かっこ内の塩基は制限酵素NcoIサイト)
に記載の配列からなる各オリゴヌクレオチド(本明細書の実施例で用いたオリゴヌクレオチドはいずれもSigmaGenosys社製である)溶液(濃度:50pmoL/μL)を、それぞれ等量ずつ採取し混合した溶液である。
(1−2)2段階目のPCR反応を、表2に示す反応液を用い、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なうことで実施し、MalEシグナルペプチドおよびリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製した。
【0047】
【表2】

【0048】
なお、表2に示す反応液の組成のうち、鋳型は1段階目のPCR反応液を用い、PCRプライマーは配列番号2および5に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを使用した。
(2)(1)で調製したMalEシグナルペプチドおよびリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを、制限酵素NdeIとNcoIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとNcoIで消化したpET26b(+)プラスミドベクター(Novagen社製)にライゲーションし、大腸菌E.coli JM109株(タカラバイオ社製)を50μg/mLのカナマイシン(タカラバイオ社製)を含むLB寒天培地を用いて形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地で培養し、形質転換体よりプラスミドDNAを抽出することで、プラスミドpETMalEを調製した。pETMalEの構造を図2に示す。
(4)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち34番目のグルタミンから307番目のバリンまでの領域からなるポリペプチド(FcRm32、274アミノ酸)をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を、下記に示すPCRを用いてアッセンブリーする方法(Nucleic Acids Res.,30(10),e43,2002:非特許文献1)により作製した。
(4−1)1段階目のPCR反応は、表3に示す反応液を用いて、94℃で5分間熱処理後、94℃で30秒間の第1ステップ、62℃で30秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を25サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
【0049】
【表3】

【0050】
なお、表3に示す反応液の組成のうち、オリゴヌクレオチドミックスは、設計した配列番号7から配列番号44に記載の配列からなる、38種類のオリゴヌクレオチド溶液(濃度:50pmoL/μL)をそれぞれ等量ずつ採取し混合した溶液である。
(4−2)2段階目のPCR反応は、表4に示す反応液を用いて、94℃で5分間熱処理後、94℃で30秒間の第1ステップ、65℃で30秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を25サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
【0051】
【表4】

【0052】
なお、表4に示す反応液の組成のうち、鋳型は1段階目のPCRの反応液を用い、PCRプライマーは、
配列番号45(5’−TCAG[CCATGG]GACAAGTAGATACCCCCAAAGCTGTGATTA−3’;角かっこ内は制限酵素NcoIサイト)および
配列番号46(5’−CC[AAGCTT]AATGATGATGATGATGATGGACCGGGGTCGGCTGTTGATGACCCAG−3’;角かっこ内は制限酵素HindIIIサイト)
に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。また、配列番号46に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドはFc結合性タンパク質(FcRm32)のC末端側に精製を容易にするためのポリヒスチジンタグ(ヒスチジン6残基からなる)が付加されるよう設計したオリゴヌクレオチドである。
(4−3)2段階目のPCRの反応液をアガロースゲルから抽出精製(QIAquick Gel extraction kit:キアゲン社製)することで、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを調製した。
(5)(3)で作製したベクターpETMalE(図2)と、(4)で作製したFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、ライゲーション後、大腸菌E.coli JM109株(タカラバイオ社製)を50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地を用いて形質転換した。
(6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地にて培養し、定法に従いプラスミドを抽出後(QIAprep Spin Miniprep Kit:キアゲン社製)、発現ベクターpETFcRm32を得た。図3に概略構造を示す。
(7)FcRm32を発現させるために、ベクターpETFcRm32により大腸菌E.coli BL21(DE3)株(タカラバイオ社製)を50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地を用いて形質転換した。
【0053】
実施例2 ポリヌクレオチドの塩基配列の解析
前述したベクターpETFcRm32(図3)に挿入されたポリヌクレオチドの塩基配列をチェーンターミネータ法に基づくBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS read Reaction kit(PEアプライドバイオシステム社製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI Prism 3700 DNA analyzer(PEアプライドバイオシステム社製)にて解析した。なお、シークエンス用プライマーとして、
配列番号47(5’−TAATACGACTCACTATAGGG−3’)および、
配列番号48(5’−TATGCTAGTTATTGCTCAG−3’)
に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。解析の結果、pETFcRm32に挿入されたポリヌクレオチドの配列は設計通りであることを確認した。
【0054】
実施例3 Fc結合性タンパク質へのシステインタグの導入
(1)表4に示す反応液の組成のうち、鋳型を実施例1で作製したベクターpETFcRm32(図3)に、PCRプライマーを、
配列番号49(5’−AACATG[CCATGG]GACAAGTAGATACCCCCAAAGCTGTGATTA−3’;角かっこ内は制限酵素NcoIサイト)、および
配列番号50(5’−TTCCC[AAGCTT]AGCCGCAGCCACCCGAGCCACCGACCGGGGTCGGCTGTTG−3’;角かっこ内は制限酵素HindIIIサイト)
に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドに、それぞれ変更した他は実施例1(4−2)と同様な方法でPCR反応を行なった。
(2)実施例1(5)から(6)と同様な方法により、Fc結合性タンパク質(FcRm32)のC末端側にシステインタグ(GGSGGCG、配列番号55)を付加したポリペプチド(以下、FcRm32C)を発現可能なベクターpETFcRm32Cを調製した。
(3)FcRm32Cを発現させるために、ベクターpETFcRm32Cにより大腸菌E.coli BL21(DE3)株(タカラバイオ社製)を50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地を用いて形質転換した。
(4)ベクターpETFcRm32Cに挿入されたポリヌクレオチドの塩基配列を実施例2と同様な方法で確認した。
【0055】
ベクターpETFcRm32Cの構造概略を図4に示す。また、FcRm32Cをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を配列番号52に、FcRm32Cのアミノ酸配列を配列番号51にそれぞれ示す。なお、配列番号51のうち1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド(UniProt No.P0AEX9に記載のアミノ酸配列のうち1番目から26番目までの領域)、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFc結合性タンパク質(FcRm32)、308番目のグリシンから314番目のグリシンまでがシステインタグである。
【0056】
実施例4 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm32C)の調製
(1)実施例3で作製したFcRm32Cを発現可能なベクターpETFcRm32C(図4)を導入した形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加した2×TY液体培地に接種し、37℃で一晩振とうすることで前培養を行なった。
(2)前培養液を50μg/mLのカナマイシンを添加した2×TY培地(2L)に添加し37℃で振とう培養した。
(3)培養開始1.5時間後に培養温度を20℃に切り換え、さらにIPTGを終濃度0.01mMとなるよう添加して、引き続き20℃で一晩振とう培養した。
(4)培養終了後、遠心分離操作(10000×gで20分間)により得られた湿菌体を、150mMのNaClと0.1mMのPMSF(phenylmethylsulfonyl fluoride)とを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)に懸濁させ、4℃に冷却しながら超音波破砕処理を行なった。
(5)遠心分離操作(4℃、10000×gで20分間)により、FcRm32Cを含む溶液を遠心上清として回収した。
(6)(5)の遠心上清に114g/Lとなるように硫酸アンモニウムを添加し、生成した沈殿を遠心分離操作(4℃、12000×gで20分間)により除去した。
(7)(6)の遠心上清を、あらかじめ114g/Lの硫酸アンモニウムを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したTOYOPEARL Phenyl−650Mゲル(東ソー社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ6cm)に添加し、同緩衝液で洗浄後、20%のグリセロールを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いてゲルに吸着したFcRm32Cを溶出した。
(8)(7)の溶出液に純水を添加して導電率を10mS/cm以下まで低下させた後、終濃度1Mとなるように尿素を添加した。この溶液を、あらかじめ1Mの尿素を含む20mMのリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したTOYOPEARL CM−650Mゲル(東ソー株式会社製)を充填したカラム(内径9mm×長さ15cm)に添加し、同緩衝液で洗浄後、1Mの尿素と2MのNaClとを含む20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)を用いてゲルに吸着したFcRm32Cを溶出した。
(9)(8)の溶出液を、あらかじめ150mMのNaClと0.05%のTween20とを含む50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したIgG Sepharose 6 Fast Flowゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ3cm)に添加し、同緩衝液で洗浄後、0.05%のTween20と10%のグリセリンとを含む20mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)でゲルに吸着したFcRm32Cを溶出した。なお溶出の際は、溶出液を中性付近に戻すため、溶出量に対し約1/4量の1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を添加した試験管に溶出液を集めた。
(10)溶出されたFcRm32Cの純度を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびクマシーブリリアントブルー(CBB)染色で確認し、均一なタンパク質であることを確認した。
(11)精製したFcRm32Cを、プロテインアッセイキット(Bio−Rad社製、標準タンパク質:キット添付の抗体)を用いて定量した。
【0057】
結果、FcRm32Cは大腸菌培養液1Lあたり約5mg調製することができた。
【0058】
比較例1 Fc結合性タンパク質(FcRm32)の調製
(1)実施例1で作製したFcRm32を発現可能なベクターpETFcRm32(図3)により形質転換された形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加した2×TY液体培地に接種し、37℃で一晩振とうすることで前培養を行なった。
(2)前培養液を50μg/mLのカナマイシンを添加した2×TY培地(2L)に添加し37℃で振とう培養した。
(3)培養開始1.5時間後に培養温度を20℃に切り換えて、さらにIPTGを終濃度0.01mMとなるよう添加して、引き続き20℃で一晩振とう培養した。
(4)培養終了後、遠心分離操作(10000×g、20分間)により得られた湿菌体を、500mMのNaClと0.1mMのPMSF(phenylmethylsulfonyl fluoride、和光純薬社製)および20mM イミダゾール(和光純薬社製)を含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)に懸濁させ、4℃に冷却しながら超音波破砕処理を行なった。
(5)遠心分離操作(4℃、10000×gで20分間)により、FcRm32を含む溶液を遠心上清として回収した。
(6)(5)の遠心上清を、あらかじめ500mMのNaClと0.1%のTween20と20mMのイミダゾールとを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したニッケルキレートゲル(His・Bind Resin、Novagen社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ3cm)に添加し、同緩衝液で洗浄後、500mMのNaClと0.1%のTween20と500mMのイミダゾールとを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いて、ゲルに吸着したFcRm32を溶出した。
(7)(6)の溶出液を、あらかじめ150mMのNaClと0.05%のTween20とを含む50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したIgG Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケア社製)に添加し、同緩衝液で洗浄後、0.05%のTween20と10%のグリセリンとを含む20mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)でFcRm32を溶出した。なお溶出の際は、溶出液を中性付近に戻すため、溶出量に対して約1/4量の1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を添加した試験管に溶出液を集めた。
(8)溶出されたFcRm32の純度を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびクマシーブリリアントブルー(CBB)染色で確認し、均一なタンパク質であることを確認した。
(9)精製したFcRm32を、プロテインアッセイキット(Bio−Rad社製、標準タンパク質:キット添付の抗体)を用いて定量した。
【0059】
結果、FcRm32は大腸菌培養液1Lから約21mg調製することができた。
【0060】
実施例5 ポリメタクリレートゲルへのエポキシ基の導入
ポリメタクリレートゲル(TOYOPEARL HW−65(東ソー社製))約2mLをグラスフィルター上で吸引ろ過後、そのまま吸引乾燥して得られたゲル2.0gに水1.0mL、0.2M水酸化ナトリウム水溶液1.0mL、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル(EDGE)2.0gを添加し、50℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(20mL)で4回、1,4−ジオキサン(20mL)で4回、水(20mL)で4回洗浄することでエポキシ基を導入したゲル(以下、エポキシトヨパールとする)を作製した。
【0061】
実施例6 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm32C)の固定化(その1)
(1)実施例4で調製したFc結合性タンパク質FcRm32C溶液を、20mMの酢酸緩衝液(pH5.3)に対して透析し、同緩衝液にて平衡化したTOYOPEARL SP−650Mゲル(東ソー社製)を充填したカラム(内径9mm×長さ15cm)に添加し、同緩衝液にて洗浄後、1MのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)によりFcRm32Cを濃縮溶液として溶出させた。
(2)(1)の濃縮溶液を、あらかじめ50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiTrap Desaltingゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ2.5cm)に通液し、脱塩処理を行なった。
(3)得られたFcRm32C溶液0.1mL(濃度5.3mg/mL)に終濃度1mMとなるようにトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)を添加し、1時間静置後、実施例5で作製したエポキシトヨパール0.1mL(ベッドボリューム)および3Mのリン酸緩衝液(pH7.0)73μLを添加し、20℃で14時間反応させた。
(4)反応終了後、150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にてゲルを洗浄することで、FcRm32C固定化ゲルを調製した。
【0062】
エポキシトヨパールへのFcRm32Cの固定化量を、反応に供したFcRm32Cの量から反応液に残存したFcRm32Cの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm32Cの固定化率は54.7%であり、ゲル1mLあたり2.9mgのFcRm32Cが固定化されていた。
【0063】
実施例7 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm32C)の固定化(その2)
(1)カルボキシル基を導入したトヨパール(登録商標)(以下、単にカルボキシトヨパールとする)を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)を用いて活性エステルへと誘導し、20mMのN−[ε−マレイミドカプロン酸]ヒドラジドを添加することでマレイミド基を導入した。
(2)マレイミド基を導入した担体に、250mMのエタノールアミンと0.25MのNaClを含む100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)を加え、25℃で30分反応させることで残存するNHS活性基を不活化した。
(3)NHS活性基を不活化させた後、150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にて洗浄することで、マレイミド基を導入したゲルA(以下、マレイミドトヨパールA)を調製した。
(4)(3)で得られたマレイミドトヨパールA0.1mL(ベットボリューム)に、FcRm32C溶液0.1mL(濃度5.3mg/mL)およびTCEP(終濃度1mM)を添加し、1時間静置後、3Mのリン酸緩衝液(pH7.0)73μLを添加し、20℃で14時間反応させた。
(5)反応終了後、ゲルを150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にて洗浄することで、FcRm32C固定化ゲルを調製した。
【0064】
マレイミドトヨパールAへのFcRm32Cの固定化量を、反応に供したFcRm32Cの量から反応液に残存したFcRm32Cの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm32Cの固定化率は26.4%であり、マレイミドトヨパールA1mLあたり1.4mgのFcRm32Cが固定化されていた。
【0065】
比較例2 Fc結合性タンパク質(FcRm32)の固定化(その1)
(1)実施例6(1)から(2)と同様な方法で、参考例1で調製したFcRm32の濃縮および脱塩操作を行なった。
(2)濃縮脱塩処理後のFcRm32溶液0.1mL(濃度8.5mg/mL)に0.1mLのエポキシトヨパール0.1mL(ベットボリューム)および3Mのリン酸緩衝液(pH7.0)73μLを添加し、20℃で14時間反応させた。
(3)反応終了後、実施例6(4)と同様な方法で洗浄処理することで、FcRm32固定化エポキシトヨパールを調製した。
【0066】
エポキシトヨパールへのFcRm32の固定化量を、反応に供したFcRm32の量から反応液に残存したFcRm32の量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm32の固定化率は49.4%であり、ゲル1mL当たり4.2mgのFcRm32が固定化されていた。
【0067】
比較例3 Fc結合性タンパク質(FcRm32)の固定化(その2)
(1)実施例7(1)から(3)の方法で得られたマレイミドトヨパールAを0.1mL(ベットボリューム)分取し、FcRm32溶液0.1mL(濃度5.3mg/mL)およびTCEP(終濃度1mM)を添加し、1時間静置後、3Mのリン酸緩衝液(pH7.0)73μLを添加し、20℃で14時間反応させた。
(2)反応終了後、実施例7(5)と同様な方法で洗浄処理することで、FcRm32固定化ゲルを調製した。
【0068】
マレイミドトヨパールAへのFcRm32の固定化量を、反応に供したFcRm32の量から反応液に残存したFcRm32の量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算したが、FcRm32の固定化を確認することはできなかった。
【0069】
実施例8 抗体結合量と有効固定化率の算出
(1)実施例6および7で作製したFcRm32C固定化ゲル、ならびに比較例2で作製したFcRm32固定化ゲル(比較例3で作製したゲルはFcRm32の固定化が確認できなかったため除外)、各50μLをそれぞれ1mL容量のカラムに充填した。
(2)50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を150μL添加することでゲルを平衡化後、50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解したヒトポリクローナル抗体(ガンマグロブリン製剤、化学及血清療法研究所製)10mg添加し、10分間静置した。
(3)150mMのNaClを含む50mMリン酸緩衝液で十分洗浄することで未吸着のヒト抗体をカラムから溶出させた後、100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)をカラムに添加することでゲルに吸着したヒト抗体を溶出させた。
(4)溶出液の中の抗体濃度を280nmの吸光度を測定することで算出した。なお、1%濃度の抗体溶液の280nmにおける吸光度(光路長:10mm)を14.0として算出している。
【0070】
結果を表5に示す。システインタグを付加したFc結合性タンパクであるFcRm32Cをエポキシトヨパールに固定化したゲル(実施例6)では1mLあたり6.4mgの抗体が吸着され、FcRm32CをマレイミドトヨパールAに固定化したゲル(実施例7)では1mLあたり4.8mgの抗体が吸着された。一方、システインタグを付加しないFc結合性タンパクであるFcRm32をエポキシトヨパールに固定化したゲル(比較例2)では1mLあたりの抗体吸着量は4.9mgにとどまった。
【0071】
またゲルに固定したFc結合性タンパク質が機能している割合(有効固定化率)を計算した。なお、抗体およびFc結合性タンパク質の分子量はそれぞれ約15万、約3万であり、抗体とFc結合性タンパク質とは1対1結合する前提の下、計算している。表5に示すように、FcRm32Cをエポキシトヨパールに固定化したゲル(実施例6)の有効固定化率は44%であり、FcRm32CをマレイミドトヨパールAに固定化したゲル(実施例7)の有効固定化率は69%である一方、FcRm32をエポキシトヨパールに固定化したゲル(比較例2)の有効固定化率は23%であった。
【0072】
【表5】

実施例9 Fc結合性タンパク質(FcRm56bおよびFcRm56bC)の調製
(1)前述したFcRm32とは異なるFc結合性タンパク質FcRm56bを含むポリペプチドを発現可能なベクターを、特開2011−206046号公報に記載の方法に従い調製した。なお、FcRm56bは配列番号53に記載のアミノ酸のうち、16番目から289番目のバリンまでの領域に相当し、かつThr20Pro(配列番号53の20番目のスレオニンをプロリンに置換、以下同じ)、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、His42Leu、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Ala、Ser52Gly、Leu58Arg、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Arg71His、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Ser111Ala、Phe114Leu、Thr115Ile、Ala121Val、Lys128Arg、Leu131Gln、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Thr199Ala、Leu203His、Asn206Thr、Leu207Gln、Glu213Val、Leu218Ile、Met231Lys、Lys234Glu、Asn240Asp、Thr249Ala、Leu270Val、Leu283HisおよびLeu285Glnの置換を導入したFc結合性タンパク質である。
(2)(1)で調製した発現ベクターを用いて大腸菌を形質転換し、比較例1に記載の方法に従ってFcRm56bを調製した。結果、FcRm56bは大腸菌培養液1Lあたり約21mg調製することができた。
(3)FcRm56bにシステインタグ(配列番号55)を付与したポリペプチド(以下、FcRm56bC)を実施例3および4の方法に従って調製した。結果、FcRm56bCは大腸菌培養液1Lあたり約13mg調製することができた。
【0073】
実施例10 Fc結合性タンパク質(FcRm60cおよびFcRm60cC)の調製
(1)前述したFcRm32とは異なるFc結合性タンパク質FcRm60cを含むポリペプチドを発現可能なベクターを、特開2011−206046号公報に記載の方法に従い調製した。なお、FcRm60cは配列番号53に記載のアミノ酸のうち、16番目から289番目のバリンまでの領域に相当し、かつThr20Pro(配列番号53の20番目のスレオニンをプロリンに置換、以下同じ)、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、His42Leu、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Ala、Ser52Gly、Leu58Arg、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Tyr70Phe、Arg71His、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Ser111Ala、Phe114Leu、Thr115Ile、Ala121Val、Lys128Arg、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Thr165Met、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Thr199Ala、Asn206Thr、Leu207Pro、Glu213Val、Leu217Gln、Leu218Ile、Tyr230Phe、Met231Lys、Ser233Gly、Lys234Glu、Asn240Asp、Thr249Ala、Leu270Val、Leu283His、Leu285GlnおよびVal289Aspの置換を導入したFc結合性タンパク質である。
(2)(1)で調製した発現ベクターを用いて大腸菌を形質転換し、比較例1に記載の方法に従ってFcRm60cを調製した。結果、FcRm60cは大腸菌培養液1Lあたり約12mg調製することができた。
(3)FcRm60cにシステインタグ(配列番号55)を付与したポリペプチド(以下、FcRm60cC)を実施例3および4の方法に従って調製した。結果、FcRm60cCは大腸菌培養液1Lあたり約5mg調製することができた。
【0074】
実施例11 ポリメタクリレートゲルへのマレイミド基の導入(その1)
(1)ポリメタクリレートゲル(TOYOPEARL HW−65(東ソー社製))約20mLをグラスフィルター上で吸引ろ過し、そのまま吸引乾燥して得られたゲル17gに水24.7mL、0.2M水酸化ナトリウム水溶液8.5mL、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(HDGE)0.17gを添加し、50℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(100mL)で5回、1,4−ジオキサン(100mL)で5回、水(100mL)で5回洗浄し、エポキシ基を導入したゲルを作製した。
(2)(1)で作製したゲル12gに水24mL、エチレンジアミン6.5gを添加し、45℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(50mL)で4回、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(50mL)で4回洗浄した。
(3)洗浄後、吸引乾燥して得られたゲル5gにDMF10mLを加えて0℃に冷却後、3−マレイミドプロピオン酸N−コハク酸イミジル40mgを加えた。
(4)さらにN,N−ジイソプロピルエチルアミン/DMF=1:4の混合液(0.75mL)を加え、25℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、ゲルをDMF(15mL)で4回、水(15mL)で4回洗浄することで、マレイミド基を導入したゲル(以下、マレイミドトヨパールBとする)を作製した。
【0075】
実施例12 ポリメタクリレートゲルへのマレイミド基の導入(その2)
(1)グラスフィルター上で吸引乾燥して得られたポリメタクリレートゲル(TOYOPEARL HW−65(東ソー社製))3gに0.2M水酸化ナトリウム水溶液3mL、HDGE3gを添加し、50℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(30mL)で4回、1,4−ジオキサン(30mL)で4回、水(30mL)で4回洗浄した。
(2)洗浄したゲルに0.5Mの2−メルカプト酢酸ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウムでpH 8.0に調整)9mLを添加し、45℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(30mL)で4回洗浄した。
(3)洗浄後吸引乾燥により得られたゲルに0.1Mの硫酸3mL加え、70℃で1時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(30mL)で4回、DMF(30mL)で4回洗浄した。
(4)洗浄したゲル0.5gにDMF0.65mLを加え0℃に冷却後、3−マレイミドプロピオン酸N−コハク酸イミジルのDMF溶液(34.6mg/mL(DMF))0.05mLを加えた。
(5)さらにN,N−ジイソプロピルエチルアミン:DMF=1:4の混合液0.15mLを加え、25℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、ゲルをDMF(5mL)で4回、水(5mL)で4回で洗浄することで、マレイミド基を導入したゲル(以下、マレイミドトヨパールCとする)を作製した。
【0076】
実施例13 ポリメタクリレートゲルへのクロロアセチル基の導入
(1)実施例5で作製したエポキシトヨパール1gに水0.5mL、28%アンモニア水2mLを添加し、45℃に設定した撹拌振とう器内で4時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(50mL)で4回、アセトニトリル(50mL)で4回洗浄した。
(2)洗浄後吸引乾燥により得られたエポキシトヨパール1gにアセトニトリル2mLを加え0℃に冷却後、2−クロロ酢酸クロリド(80μL)を加えた。
(3)さらにN,N−ジイソプロピルエチルアミン(200μL)を加え、25℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、エポキシトヨパールをアセトニトリル(10mL)で4回、水(10mL)で4回洗浄することで、クロロアセチル基を導入したゲル(以下、クロロアセチルトヨパールとする)を作製した。
【0077】
実施例14 ポリメタクリレートゲルへの3−ブロモ−2−ヒドロキシル基の導入
(1)グラスフィルター上で吸引乾燥して得られたポリメタクリレートゲル(TOYOPEARL HW−65(東ソー社製))1.5gに水1.95mL、0.2M水酸化ナトリウム水溶液0.75mL、アリルグリシジルエーテル0.75gを添加し、50℃に設定した撹拌振とう器内で16時間撹拌振とうした。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(15mL)で4回、1,4−ジオキサン(15mL)で4回、水(15mL)で4回洗浄した。
(2)洗浄後のゲルに水4.2mL、DMSO1.4mL、N―ブロモコハク酸イミド414mgを添加し、水浴上、常温で1時間撹拌振とうした。反応終了後、溶液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、水(20mL)で4回洗浄することで、ブロモヒドリン基を導入したゲル(以下、ブロモヒドリントヨパールとする)を作製した。
【0078】
実施例15 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm56bC)のエポキシ基を導入したゲルへの固定化
(1)実施例9で調製したFc結合性タンパク質FcRm56bC溶液を、20mMの酢酸緩衝液(pH5.3)に対して透析後、同緩衝液にて平衡化したTOYOPEARL SP−650Mゲル(東ソー社製)を充填したカラム(内径9mm×長さ15cm)に添加した。同緩衝液にて洗浄後、1MのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)を用いてFcRm56bCを濃縮溶液として溶出させた。
(2)(1)の濃縮溶液を、50mMのリン酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したHiTrap Desaltingゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ2.5cm)に通液し、脱塩処理を行なった。
(3)得られたFcRm56bC溶液0.5mL(濃度4.0mg/mL)に終濃度1mMとなるようにTCEPを添加し、1時間静置した。静置後の溶液に、実施例5で作製したエポキシトヨパール0.1mLと、3Mのリン酸緩衝液(pH8.0)218μLを添加し、35℃で5時間反応させた。
(4)反応終了後、150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にてエポキシトヨパールを洗浄した。
【0079】
エポキシトヨパールへのFcRm56bCの固定化量を、反応に供したFcRm56bCの量から反応液に残存したFcRm56bCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm56bCの固定化率は65.3%であり、エポキシトヨパール1mLあたり13.0mgのFcRm56bCが固定化されていた。また、実施例8と同様の手法にて抗体結合量と有効固定化率の算出を行なったところ、FcRm56bC固定化エポキシトヨパール1mLあたりの抗体結合量は24.7mg、有効固定化率は37.8%であった。
【0080】
実施例16 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm56bC)のマレイミド基を導入したゲルへの固定化
(1)実施例9で調製したFc結合性タンパク質FcRm56bC溶液を、20mMの酢酸緩衝液(pH5.3)に対して透析し、同緩衝液にて平衡化したTOYOPEARL SP−650Mゲル(東ソー社製)を充填したカラム(内径9mm×長さ15cm)に添加し、同緩衝液にて洗浄後、1MのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)によりFcRm56bCを濃縮溶液として溶出させた。
(2)(1)の濃縮溶液を、50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiTrap Desaltingゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ2.5cm)に通液し、脱塩処理を行なった。
(3)実施例11で調製したマレイミドトヨパールB0.1mLにFcRm56bC溶液0.2mL(濃度8.1mg/mL)およびトリカルボキシエチルフォスフィン(終濃度1mM)を添加し、1時間静置した。静置後の溶液に、3Mのリン酸緩衝液(pH7.0)63μLを添加し、35℃で5時間反応させた。
(4)反応終了後、マレイミドトヨパールBを150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液を用いて洗浄した。
【0081】
マレイミドトヨパールBへのFcRm56bCの固定化量を、反応に供したFcRm56bCの量から反応液に残存したFcRm56bCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm56bCの固定化率は60.3%であり、マレイミドトヨパールB1mLあたり19.4mgのFcRm56bCが固定化されていた。また、実施例8と同様の手法にて抗体結合量と有効固定化率の算出を行なったところ、FcRm56bC固定化マレイミドトヨパールB1mLあたりの抗体結合量は49.7mg、有効固定化率は51.2%であった。
【0082】
実施例17 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm60cC)のエポキシ基を導入したゲルへの固定化
(1)実施例10で調製したFc結合性タンパク質FcRm60cC溶液を、20mMの酢酸緩衝液(pH5.3)に対して透析し、同緩衝液にて平衡化したTOYOPEARL SP−650Mゲル(東ソー社製)を充填したカラム(内径9mm×長さ15cm)に添加し、同緩衝液にて洗浄後、1MのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)によりFcRm60cCを濃縮溶液として溶出させた。
(2)(1)の濃縮溶液を、500mMのNaClを含む100mMのホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したHiTrap Desaltingゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ2.5cm)に通液し、バッファー交換処理を行なった。
(3)得られたFcRm60cC溶液0.3mL(濃度2.1mg/mL)に終濃度1mMとなるようにTCEPを添加し、4℃で1時間静置後、実施例5で作製したエポキシトヨパール0.05mL(ベッドボリューム)添加し、35℃で2時間反応させた。
(4)反応終了後、100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)および150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にて順次ゲルを洗浄することで、FcRm60cC固定化エポキシトヨパールを調製した。
【0083】
エポキシトヨパールへのFcRm60cCの固定化量を、反応に供したFcRm60cCの量から反応液に残存したFcRm60cCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm60cCの固定化率は76.3%であり、エポキシトヨパール1mLあたり9.7mgのFcRm60cCが固定化されていた。また、実施例8と同様の手法にて抗体結合量と有効固定化率の算出を行なったところ、FcRm60cC固定化エポキシトヨパール1mLあたりの抗体結合量は16.8mg、有効固定化率は34.7%であった。
【0084】
実施例18 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm60cC)のマレイミド基を導入したゲルへの固定化(その1)
(1)実施例10で調製したFc結合性タンパク質FcRm60cC溶液を、20mMの酢酸緩衝液(pH5.3)に対して透析し、同緩衝液にて平衡化したTOYOPEARL SP−650Mゲル(東ソー社製)を充填したカラム(内径9mm×長さ15cm)に添加し、同緩衝液にて洗浄後、1MのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)によりFcRm60cCを濃縮溶液として溶出させた。
(2)(1)の濃縮溶液を、500mMのNaClを含む100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiTrap Desaltingゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ2.5cm)に通液し、バッファー交換処理を行なった。
(3)実施例11で調製したマレイミドトヨパールB0.03mLにFcRm60cC溶液0.2mL(濃度2.7mg/mL)およびTCEP(終濃度1mM)を添加し、4℃で1時間静置後、35℃で2時間反応させた。
(4)反応終了後、マレイミドトヨパールBを100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)および150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にて順次洗浄することで、FcRm60cC固定化マレイミドトヨパールBを調製した。
【0085】
マレイミドトヨパールBへのFcRm60cCの固定化量を、反応に供したFcRm60cCの量から反応液に残存したFcRm60cCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm60cCの固定化率は26.0%であり、マレイミドトヨパールB1mLあたり4.6mgのFcRm60cCが固定化されていた。また、実施例8と同様の手法にて抗体結合量と有効固定化率の算出を行なったところ、FcRm60cC固定化マレイミドトヨパールB1mLあたりの抗体結合量は21.2mg、有効固定化率は91.1%であった。
【0086】
比較例4 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)のエポキシ基を導入したゲルへの固定化
(1)実施例15の(1)から(2)と同様な方法で、実施例9で調製したFc結合性タンパク質FcRm56bの濃縮および脱塩操作を行なった。
(2)濃縮脱塩処理後のFcRm56b溶液0.3mL(濃度6.6mg/mL)に、実施例5で作製したエポキシトヨパール0.1mL(ベットボリューム)と、3Mのリン酸緩衝液(pH8.0)146μLを添加し、35℃で5時間反応させた。
(3)反応終了後、実施例15(4)と同様な方法で洗浄処理することで、FcRm56b固定化エポキシトヨパールを調製した。
【0087】
エポキシトヨパールへのFcRm56bの固定化量を、反応に供したFcRm56bの量から反応液に残存したFcRm56bの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm56bの固定化率は56.6%であり、ゲル1mL当たり11.2mgのFcRm56bが固定化されていた。また、FcRm56b固定化エポキシトヨパールについて、実施例8と同様の手法にて抗体結合量と有効固定化率の算出を行なったところ、エポキシトヨパール1mLあたりの抗体結合量が16.2mg、有効固定化率が28.9%となった。
【0088】
比較例5 Fc結合性タンパク質(FcRm60c)のエポキシ基を導入したゲルへの固定化
(1)実施例17(1)から(2)と同様な方法で、実施例10で調製したFc結合性タンパク質FcRm60cの濃縮およびバッファー交換操作を行なった。
(2)得られたFcRm60c溶液0.3mL(濃度2.4mg/mL)に実施例5で作製したエポキシトヨパール0.05mL(ベットボリューム)を添加し、35℃で2時間反応させた。
(3)反応終了後、実施例17(4)と同様な方法で洗浄処理することで、FcRm60c固定化ゲルを調製した。
【0089】
エポキシトヨパールへのFcRm60cの固定化量を、反応に供したFcRm60cの量から反応液に残存したFcRm60cの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm60cの固定化率は59.4%であり、エポキシトヨパール1mL当たり8.6mgのFcRm60cが固定化されていた。また、FcR60c固定化エポキシトヨパールについて、実施例8と同様の手法にて抗体結合量と有効固定化率の算出を行なったところ、エポキシトヨパール1mLあたりの抗体結合量が9.7mg、有効固定化率が22.5%となった。
【0090】
実施例19 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm56bC)のクロロアセチル基を導入したゲルへの固定化
(1)実施例15(1)から(2)に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm56bC溶液の濃縮および脱塩操作を行なった。
(2)得られたFcRm56bC溶液0.12mL(濃度12.8mg/mL)に終濃度1mMとなるようにTCEPを添加し、1時間静置後、実施例13で作製したクロロアセチルトヨパール0.05mL(ベッドボリューム)、3Mのリン酸緩衝液(pH7.0)43μLおよび1mg/mLのヨウ化カリウム1.5μLを添加し、35℃で5時間反応させた。
(3)反応終了後、150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液を用いてクロロアセチルトヨパールを洗浄した。
【0091】
クロロアセチルトヨパールへのFcRm56bCの固定化量を、反応に供したFcRm56bCの量から反応液に残存したFcRm56bCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、反応残渣中にFcRm56bCは検出されず(すなわち固定率100%)、クロロアセチルトヨパール1mLあたり30.7mgのFcRm56bCが固定化されていた。また、調製したFcR固定化クロロアセチルトヨパールの抗体結合量と有効固定化率を、実施例8と同様に算出したところ、クロロアセチルトヨパール1mLあたりの抗体結合量が20.5mg、有効固定化率が13.4%であった。
【0092】
実施例20 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm56bC)のブロモヒドリン基を導入したゲルへの固定化
(1)実施例15の(1)から(2)に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm56bC溶液の濃縮および脱塩操作を行なった。
(2)得られたFcRm56bC溶液0.15mL(濃度12.3mg/mL)に終濃度1mMとなるようにTCEPを添加し、1時間静置後、実施例14で作製したブロモヒドリントヨパールを0.05mL、3Mのリン酸緩衝液(pH7.0)50μL、および1mg/mLのヨウ化カリウム1.5μL添加し、35℃で5時間反応させた。
(3)反応終了後、150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にてゲルを洗浄することで、FcRm56bC固定化ブロモヒドリントヨパールを調製した。
【0093】
ゲルへのFcRm56bCの固定化量を、反応に供したFcRm56bCの量から反応液に残存したFcRm56bCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm56bCの固定率は53.6%、ブロモヒドリントヨパール1mLあたり19.8mgのFcRm56bCが固定化されていた。また、調製したFcRm56b固定化ゲルの抗体結合量と有効固定化率を、実施例8と同様に算出したところ、ゲル1mLあたりの抗体結合量が33.3mg、有効固定化率が33.4%であった。
【0094】
実施例21 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm60cC)のブロモメチル基を導入したゲルへの固定化
(1)実施例17(1)に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm60cC溶液の濃縮を行なった。
(2)(1)の濃縮溶液を、600mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiTrap Desaltingゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ2.5cm)に通液し、バッファー交換処理を行なった。
(3)得られたFcRm60cC溶液0.2mL(濃度3.5mg/mL)に終濃度1mMとなるようにTCEPを添加し、1時間静置後、実施例14で作製したブロモヒドリントヨパール0.03mL、および1mg/mLのヨウ化カリウム1.5μLを添加し、35℃で5時間反応させた。
(4)反応終了後、150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にてゲルを洗浄することで、FcRm60cC固定化ブロモヒドリントヨパールを調製した。
【0095】
ブロモヒドリントヨパールへのFcRm60cCの固定化量を、反応に供したFcRm60cCの量から反応液に残存したFcRm60cCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm60cCの固定率は43.9%、ブロモヒドリントヨパール1mLあたり10.1mgのFcRm60cCが固定化されていた。また、調製したFcRm60cC固定化ブロモヒドリントヨパールの抗体結合量と有効固定化率を、実施例8と同様に算出したところ、ブロモヒドリントヨパール1mLあたりの抗体結合量が14.1mg、有効固定化率が27.8%であった。
【0096】
実施例22 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm60cC)のヨードアセチル基を有したゲルへの固定化
(1)実施例17(1)に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm60cC溶液の濃縮を行なった。
(2)(1)の濃縮溶液を、5mMのEDTAを含む50mMのトリス緩衝液(pH8.5)で平衡化したHiTrap Desaltingゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ2.5cm)に通液し、脱塩処理を行なった。
(3)得られたFcRm60cC溶液0.15mL(濃度6.1mg/mL)に終濃度1mMとなるようにTCEPを添加し、1時間静置後、SulfoLink Coupling Resin(活性基:ヨードアセチル基、Thermo Scientific社製)を0.05mL添加し、25℃で1時間反応させた。
(4)反応終了後、150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にてゲルを洗浄することで、FcRm60cC固定化ゲルを調製した。
【0097】
ゲルへのFcRm60cCの固定化量を、反応に供したFcRm60cCの量から反応液に残存したFcRm60cCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm60cCの固定化率は49.9%であり、ゲル1mLあたり9.1mgのFcRm60cCが固定化されていた。また、調製したFcRm60cC固定化ゲルの抗体結合量と有効固定化率を、実施例8と同様に算出したところ、ゲル1mLあたりの抗体結合量が14.4mg、有効固定化率が31.7%であった。
【0098】
実施例23 システインタグを付加したFc結合性タンパク質(FcRm60cC)のマレイミド修飾ゲルへの固定化(その2)
(1)実施例10で調製したFc結合性タンパク質FcRm60cC溶液を、20mMの酢酸緩衝液(pH5.3)に対して透析し、同緩衝液にて平衡化したTOYOPEARL SP−650Mゲル(東ソー社製)を充填したカラム(内径9mm×長さ15cm)に添加し、同緩衝液にて洗浄後、1MのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)によりFcRm60cCを濃縮溶液として溶出させた。
(2)(1)の濃縮溶液を、200mMのNaClを含む100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したHiTrap Desaltingゲル(GEヘルスケア社製)を充填したカラム(内径16mm×長さ2.5cm)に通液し、バッファー交換処理を行なった。
(3)実施例12で作製したマレイミドトヨパールC0.03mL(ベットボリューム)に、FcRm60cC溶液0.33mL(濃度5.5mg/mL)およびTCEP(終濃度1mM)を添加し、4℃で1時間静置後、35℃で0.5時間反応させた。
(4)反応終了後、ゲルを100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)および150mMのNaClを含む50mMのリン酸緩衝液にて順次洗浄することで、FcRm60cC固定化マレイミドトヨパールCを調製した。
【0099】
マレイミドトヨパールCへのFcRm60cCの固定化量を、反応に供したFcRm60cCの量から反応液に残存したFcRm60cCの量(前述のプロテインアッセイキットを用いて定量)を差し引いて計算した。その結果、FcRm60cCの固定化率は27.2%であり、マレイミドトヨパールC1mLあたり16.5mgのFcRm60cCが固定化されていた。また、調製したFcRm60cC固定化マレイミドトヨパールCの抗体結合量と有効固定化率を、実施例8と同様に算出したところ、マレイミドトヨパールC1mLあたりの抗体結合量が51.6mg、有効固定化率が62.7%であった。
【0100】
反応に供したゲル基材、リガンドFcRおよび有効固定化率について、表5(前述)および6にまとめた。以上の結果をまとめると、システインタグを付加したFc結合性タンパク質は、担体表面における方向性が著しく向上するため、抗体への結合能を保持した状態で担体に固定化することができ、結果としてゲルあたりの抗体吸着量を向上させることができることが分かる。
【0101】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
システイン残基を1つ以上含むオリゴペプチドをFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加したタンパク質。
【請求項2】
システイン残基を1つ以上含むオリゴペプチドが配列番号55に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
Fc結合性タンパク質が、
(1)配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(2)配列番号53に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上を他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質である、
請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターにより宿主を形質転換して得られる形質転換体。
【請求項7】
請求項6に記載の形質転換体を培養することでタンパク質を製造する方法。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載のタンパク質を担体に固定化して得られる抗体吸着剤。
【請求項9】
担体が、その表面に活性基を有しており、かつ前記活性基が、エポキシ基、マレイミド基、クロロアセチル基、ブロモヒドリン基、ブロモメチル基、ヨードアセチル基のいずれかである、請求項8に記載の抗体吸着剤。
【請求項10】
請求項8または9に記載の吸着剤を用いた抗体の精製方法。
【請求項11】
タンパク質のN末端側またはC末端側に付加することで、前記タンパク質に方向性を付与した状態で担体へ固定化可能な、配列番号55に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−59313(P2013−59313A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270272(P2011−270272)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】