説明

システム

【課題】衝撃や振動に対する耐久性を向上し、微粒子汚染による故障の傾向もより少なくすることができるダイナミックフォーカスシステムを提供する。
【解決手段】ダイナミックフォーカスシステム100は、可動部品を備えておらず、電子アクティブレンズ102と、電子アクティブレンズ102に光学的に連結された固定フォーカスレンズ104と、電子アクティブレンズ102および固定フォーカスレンズ104の協働によってフォーカスされた光を受け取るように配置された焦点面106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子アクティブ光学システムに関するものであって、特に、ダイナミックフォーカス能力およびズーム能力を有する改善された電子アクティブ光学システムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明の優先権は2009年1月15日に出願された米国仮出願番号61/144,796および2009年7月13日に出願された米国仮出願番号61/225,065に基づき、それらの全文を本願明細書に参照により引用する。
【0003】
従来の光学フォーカスシステムおよびズームシステムは、可動部品を必要としている。結果として、これら従来のシステムが組み込まれた装置は、大型となり、重量も重くなり、且つ、微粒子の汚染による故障をし易い傾向がある。さらに、従来の光学フォーカスおよびズームシステムは、衝撃や振動による故障をし易い傾向もある。
【0004】
したがって、可動部品を必要としない改善された光学フォーカスシステムおよび光学ズームシステムが、求められている。可動部品の必要性を排除することによって、改善された光学フォーカスおよびズームシステムを備える装置は、より薄く、より軽量に製造することが可能となる。また、これら装置においては、衝撃や振動に対する耐久性が向上し、微粒子汚染による故障の傾向もより少なくなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面として、可動部品を備えないダイナミックフォーカスシステムを提供する。例えば、本発明に係るダイナミックフォーカスシステムにおいては、全てのレンズおよび焦点面、またはそれらの一部が、光学軸に沿って不可動となっている。本発明に係るダイナミックフォーカスシステムは、電子アクティブレンズと、電子アクティブレンズおよび焦点面に光学的に連結された固定フォーカスレンズを備える。焦点面は、電子アクティブレンズおよび固定フォーカスレンズの協働によってフォーカスされた光を受光するように配置される。本発明に係る電子アクティブレンズは、可変のフォーカス能力を提供するために、調整可能な屈折力(optical power)を有していてもよい。本発明に係るダイナミックフォーカスシステムは、電子アクティブレンズの調整可能な屈折力を変化させるために、コントローラを備えていてもよい。本発明に係るダイナミックフォーカスシステムは、電子アクティブレンズの制御された可変屈折力に基づいて、様々な距離に配置された対象物にフォーカスすることが可能である。本発明に係るダイナミックフォーカスシステムによってフォーカスされた光は、可視光、または、例えば紫外線や赤外線のような他のタイプの電磁波の形態であってもよい。
【0006】
本発明の一局面として、可動部品を備えないダイナミックズームシステムを提供する。例えば、本発明に係るダイナミックズームシステムにおいては、全てのレンズおよび焦点面、またはそれらの一部が、光学軸に沿って不可動となっている。本発明に係るダイナミックズームシステムは、第一の電子アクティブレンズと、第二の電子アクティブレンズと、固定フォーカスレンズと、焦点面とを備える。第一の電子アクティブレンズと、第二の電子アクティブレンズと、固定フォーカスレンズとは、光学的に連結されていてもよい。焦点面は、第一および第二の電子アクティブレンズと、固定フォーカスレンズとの協働によってフォーカスされた光を受光するように配置される。本発明に係るダイナミックズームシステムは、電子アクティブレンズの調整可能な屈折力を変化させるために、コントローラを備えていてもよい。本発明に係るダイナミックズームシステムは、電子アクティブレンズの制御された可変屈折力に基づいて、倍率の拡大および縮小を提供してもよい。本発明に係るダイナミックフォーカスシステムおよびダイナミックズームシステムは、互いと協働するように用いられてもよいし、および/または、如何なる数の追加の電子アクティブレンズまたは固定フォーカスレンズと協働するように用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一局面に係る第一のダイナミックフォーカスシステムを示す。
【図2】本発明の一局面に係る第二のダイナミックフォーカスシステムを示す。
【図3】従来のズームレンズシステムを示す。
【図4】ズームまたは望遠設定における従来のズームレンズシステムを示す。
【図5】本発明の一局面に係るズームシステムを示す。
【図6】本発明の一局面に係る第二のズームシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一局面に係るダイナミックフォーカスシステム100を示す。ダイナミックフォーカスシステム100は、如何なる可動部品または可動コンポーネントを用いることなく(すなわち、構成要素のコンポーネントは、互いに光学軸に沿って移動することが不可能となっている)、様々な距離に置かれた対象物にフォーカスする能力を提供することができる。ダイナミックフォーカスシステム100は、互いに光学的に連結された電子アクティブレンズ102および固定フォーカスレンズ104を備える。固定フォーカスレンズ104は、図示の観点から両凸レンズとして示されているが、これに限定されない。すなわち、固定フォーカスレンズ104は、固定または静的な屈折力を有する如何なるタイプのレンズであってもよい。
【0009】
ダイナミックフォーカスシステム100は、図1において、一つの電子アクティブレンズ102、および一つの固定フォーカスレンズ104を備える形態として図示されているが、これに限定されない。すなわち、本発明に係るダイナミックフォーカスシステム100は、如何なる数の電子アクティブレンズ、および如何なる数の固定フォーカスレンズを備えていてもよい。さらに、本発明に係るダイナミックフォーカスシステム100においては、如何なる数の電子アクティブレンズ、および如何なる数の固定フォーカスレンズが、如何なる方法によって配置されていてもよく、図1に示すような電子アクティブレンズ102および固定フォーカスレンズ104の特定の配置に限定されるものではない。より具体的には、如何なる数の電子アクティブレンズ、および如何なる数の固定フォーカスレンズが、如何なる順序、また、電子アクティブレンズと固定フォーカスレンズとの間の如何なる離隔距離(離隔させない場合も含む)をもって、配置されてもよい。例として、固定フォーカスレンズ104は、図1に示す配置とは逆に、電子アクティブレンズ102の前に配置されてもよい。
【0010】
ダイナミックフォーカスシステム100は、焦点面106をさらに備える。この焦点面106は、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)、相補型金属酸化膜半導体装置(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)、カメラ(例えばフィルムカメラ)、または、電子アクティブレンズ102と固定フォーカスレンズ104との協働によってフォーカスされた画像を受け取って、処理することが可能な、他の如何なる装置であってもよい。電子アクティブレンズ102は、電気的アプリケーションを介したレンズによって供給された屈折力を、調整する、変化させる、またはチューニングすることが可能な、如何なる電子アクティブレンズであってもよい。一般的には、電子アクティブレンズ102は、第一の基材108と、液晶を含む電子アクティブレイヤー110と、第二の基材112とを有する。
【0011】
電子アクティブレンズ102、固定フォーカスレンズ104、および焦点面106は、固定された空間的位置に配置される。すなわち、ダイナミックフォーカスシステム100は、可動コンポーネントまたは可動部品を用いることなく、フォーカス能力(例えばオートフォーカス機能)を提供することができる。
【0012】
ダイナミックフォーカスシステム100は、如何なる数のフォーカスポイントを提供してもよい。特に、ダイナミックフォーカスシステム100は、ダイナミックフォーカスシステム100から如何なる距離114に配置された対象物からの光をも、焦点面106にフォーカスすることができる。焦点面106は、ダイナミックフォーカスシステム100のフォーカス要素(例えば図1に示す電子アクティブレンズ102および固定フォーカスレンズ104)から如何なる距離の位置に配置されてもよい。一般的に、焦点面106と、ダイナミックフォーカスシステム100のフォーカス要素との間の距離116は、ダイナミックフォーカスシステム100が用いられるアプリケーションによって決定される。このことは、当業者であれば容易に理解されるであろう。例えば、携帯電話に用いられる場合、距離116は、手持ち用デジタルカメラのアプリケーションの場合と比べて、より小さくなる。
【0013】
一般的に、固定フォーカスレンズ104は、例えば20〜350ディオプトリの範囲の固定屈折力を提供することができる。固定フォーカスレンズ104によって供される固定屈折力は、距離116や、電子アクティブレンズ102によって供される可変屈折力を含む、多くの要素に依存する。電子アクティブレンズ102のタイプや構造に依存して、電子アクティブレンズ102は、可能な屈折力の範囲内において、多離散的な、および/または、連続的に可変な屈折力を提供することができる。可能な屈折力の範囲は、可変フォーカス能力を提供するために、ポジティブ、ネガティブ、および/またはニュートラルな屈折力を含む。
【0014】
限定的でない実施例として、固定フォーカスレンズ104は、51ディオプトリの固定屈折力を提供することができる。また、電子アクティブレンズは、0.5ディオプトリの量子化単位で、−1.0から1ディオプトリの範囲の屈折力を提供することができる。したがって、電子アクティブレンズ102は、−1.0、−0.5、0、0.5、および1.0ディオプトリの屈折力を提供するように制御することができる。これにより、ダイナミックフォーカスシステム101のフォーカス要素は、50.0、50.5、51.0、51.5、および52ディオプトリの連結屈折力を提供することができる。例えばフォーカス要素と焦点面との間の距離116のような焦点距離に基づいて、ダイナミックフォーカスシステム100は、いくつかの異なる距離にて対象物をフォーカスすることができる。例えば焦点距離116が2cmである場合に関しては、ダイナミックフォーカスシステムは、近似的に無限、2m、1m、2/3m、1/2mで、離散的なフォーカスポイントを提供することができる。ダイナミックフォーカスシステム100のアパーチャーサイズは、フォーカスポイントの範囲(例えば被写界深度:depth of field)に影響を与える。よって、チューニング可能な範囲は、本質的に連続的となる。
【0015】
図2は、本発明の一局面に係るダイナミックフォーカスシステム200を示す。ダイナミックフォーカスシステム100と同様に、ダイナミックフォーカスシステム200は、可動部品や可動コンポーネントを用いることなく(すなわち、構成要素のコンポーネントは、互いに光学軸に沿って移動することが不可能となっている)、様々な距離に配置された対象物をフォーカスする能力を提供することができる。ダイナミックフォーカスシステム200は、電子アクティブレンズ102と、第一の固定フォーカスレンズ202と、第二の固定フォーカスレンズ204とを備える。これらのレンズは、全て光学的に連結されている。
【0016】
ダイナミックフォーカスシステム200は、下記を除いて、上記したダイナミックフォーカスシステム100と同様の方法で動作する。すなわち、ダイナミックフォーカスシステム200のフォーカス要素(電子アクティブレンズ102と、第一および第二固定フォーカスレンズ202,204)は、結合された複合レンズまたは複合レンズ要素を構成するように、互いに連結されている(一方、ダイナミックフォーカスシステム100のフォーカス要素は、互いに分離され、それぞれの要素が、物理的に互いに離隔して配置されている)。一般的に、本発明に係るダイナミックフォーカスシステムにおいては、如何なる数の固定フォーカスレンズおよび電子アクティブレンズを用いて、複合フォーカス要素または分離フォーカス要素の如何なる組み合わせを利用してもよい。さらに、本発明に係るダイナミックフォーカスシステムは、電子アクティブレンズを対象物の近くに配置する(固定フォーカスレンズは、例えば図1に示すように、対象物から離れて配置される)ことも可能であり、または、固定フォーカスレンズを対象物の近くに配置する(電子アクティブレンズは、対象物から離れて配置される)ことも可能である。それとは逆に、本発明に係るダイナミックフォーカスシステムは、電子アクティブレンズを焦点面の近くに配置する(固定フォーカスレンズは、例えば図1に示すように焦点面から離れて配置される)ことも可能であり、または、固定フォーカスレンズを焦点面の近くに配置する(電子アクティブレンズは、焦点面から離れて配置される)ことも可能である。
【0017】
上記したように、電子アクティブレンズ102は、屈折力を調整または変化させることが可能な如何なる電子アクティブレンズを適用してもよい。電子アクティブレンズ102として適用可能な電子アクティブレンズの例としては、エッチングによりパターン化された電子アクティブレンズ(etched patterned electro−active lens)や、リソグラフィーによりパターン化された電極を備える電子アクティブレンズ(active lens with lithographically−patterned electrodes)、およびリソグラフィーによりパターン化された抵抗ブリッジを用いた電子アクティブレンズが、含まれる。
【0018】
エッチングパターン電子アクティブレンズは、パターン(屈折パターンまたは回折パターン)を基材(例えば眼科用樹脂材料)にエッチングすることによって製造される。このエッチングパターンは、透明の伝導体(例えばインジウムスズ酸化物:ITO)、および、液晶側に向けた好ましい配列方向を形成するための配向層によってコーティングされる。その他エッチングされていない基材も、ITOおよび配向層によって同様にコーティングされる。二つの基材は、近接して互いに接合される。液晶は、基材間の空洞内に密封される。
【0019】
基材材料および液晶材料は、電子アクティブレンズがオフ状態のときに、これら材料が互いに同じ屈折率を有するように、選択される。電子アクティブレンズがオン状態となったとき、複屈折性液晶の屈折率は変化し、これにより、液晶が、二つの基材と異なる屈折率を有することとなる。その結果、エッチングパターンが機能し、電子アクティブレンズの屈折力を変化させることができる。
【0020】
米国特許No.5712721号、米国特許No.6517203号、および米国特許出願No.12/408973号(2009年3月23日出願)は、いずれも電子アクティブレンズ102を構成するために利用可能なエッチングパターン電子アクティブレンズを開示している。これらは、全体のレファレンスによって組み込まれている。
【0021】
リソグラフィーパターン電子アクティブレンズは、ITOコーティングされた基材を用いることができる。この基材は、互いに電気的に絶縁された同心円状の電極を形成するために、続けてリソグラフィーによりパターン化される。パターン化された基材は、その後に、エッチングパターン電子アクティブレンズの上記基材と同様に、上記電極とともに他方の基材と結合される。その後に、液晶が、二つの基材の間に密封される。液晶の屈折率に勾配を設けるために、異なる電圧のアレイが、個々のリングに適用され、その結果、動的屈折力を提供するレンズを形成することができる。この設計アプローチによって、電子アクティブレンズが、電極間に亘って設けられた電圧勾配の機能として、ポシティブまたはネガティブの屈折力を供することを可能とする。
【0022】
米国特許No.6517203号、米国特許No.7264354号、および米国特許出願No.12/135587号(2008年6月9日出願)は、いずれも、電子アクティブレンズ102を形成するために適用可能なリソグラフィーパターン電子アクティブレンズを開示している。これらは、全体のレファレンスによって組み込まれている。
【0023】
抵抗ブリッジを用いたリソグラフィーパターン電子アクティブレンズは、他の電極から電気的に絶縁されていないリソグラフィーパターンリング電極を用いることができる。その代わりに、パターン化された電極は、抵抗ブリッジを使用して、隣接するパターン化電極に接続される。抵抗ブリッジの使用によって、隣接する電極間に、小さな電位差が形成されることとなる。この構造によって、多くの電極が、ともにグループ化およびアドレス化される、または、単一電圧により制御することが可能となる。結果として、多くの電極が用いられている場合において、多くのバスラインまたはコントロールラインの必要性を、排除することができる。また、この設計は、より“チューニング可能”な電子アクティブレンズを提供することができる。このことは、当業者によって評価される事項であろう。すなわち、多くの光位相プロファイル、または球形レンズパワーが、単にレンズ間の電圧プロファイルを調整することによって達成され、本質的にアナログの屈折力制御を可能としている。
【0024】
米国特許出願No.12/410889号(2009年3月25日出願)、および米国暫定特許出願No.61/269110号(2009年6月19日出願)は、いずれも、電子アクティブレンズを形成するために使用された抵抗ブリッジを用いるリソグラフィーパターン電子アクティブレンズを開示している。これらは、全体のレファレンスによって組み込まれている。
【0025】
図3は、従来のズームレンズシステム300を示している。従来のズームレンズシステム300は、可動部品を必要としている。特に、ズーム動作を提供するために、一つまたは複数の可動レンズを必要とする。従来のズームレンズシステム300は、第一のレンズ302と、第二のレンズ304と、第三のレンズ306と、第四のレンズ308と、焦点面310とを備える。第一のレンズ302は、凸レンズである。第二のレンズ304は、凹レンズである。第三のレンズは、凸レンズである。そして、第四レンズは、凸レンズであって、フォーカス要素として機能する。
【0026】
従来のズームシステム300を構成する、いずれの、または全てのコンポーネントは、可動であってもよく、少なくとも一つのコンポーネントは、求められるズーム機能を提供するために、移動することを要求される。従来のズームシステム300においては、図3に示されているように、第二レンズ304が可動であることが、要求されている。従来のズームレンズ300は、図3において、ワイドアングル設定として示されている。特に、第二のレンズ304は、図示されているように、対象物から離れるように(すなわち、第一のレンズ302から離れるように)移動する。第一のレンズ302から離れるように第二のレンズ304を移動させることは、対象物の倍率を減じさせることとなる。なぜならば、第一レンズ302に入射する実質的に全ての光は、焦点面310にフォーカスされるからである。
【0027】
図4は、ズームまたは望遠設定における従来のズームシステム300を示している。具体的には、第二のレンズ304が、対象物に近づく方向(すなわち、第一レンズ302に近づく方向)に移動している。第一のレンズ302に近づくように第二のレンズ304を移動させることは、対象物の倍率を増加させることとなる。なぜならば、第一レンズ302に入射する光のうち一部のみが、焦点面310にフォーカスされるからである。
【0028】
図5は、本発明の一局面に係るズームシステム500を示している。ズームシステム500は、第一の電子アクティブレンズ102−Aと、第二の電子アクティブレンズ102−Bと、フォーカス要素504と、焦点面506とを備える。フォーカス要素504は、両凸レンズとして図示されているが、これに限定されるものではない。すなわち、フォーカス要素504は、例えば、いずれの固定フォーカスレンズであってもよい。焦点面506としては、CCD、カメラ、または、フォーカス要素504から出力された光を受け取り、処理することが可能なその他装置を適用することができる。ズームシステム500は、一つまたは複数の固定フォーカスレンズを追加してもよく、コンポーネントの配置や間隔に関して、図5に示すものに限定されない。例えば、第一の電子アクティブレンズ102−A、および/または第二の電子アクティブレンズ102−Bは、単独で動作した場合に、これらの電子アクティブレンズによって供給されるものから得ることができる屈折力を増加するために、一つまたは複数の固定フォーカスレンズと結合されてもよい(例えば、光学的に連結するように配置される)。
【0029】
第一および第二の電子アクティブレンズ102−A,102−Bは、上記した如何なる電子アクティブレンズであってもよい。第一および第二の電子アクティブレンズ102−A,102−Bと、フォーカス要素504と、焦点面506とは、望ましい、または要求される如何なる距離で互いに離隔して配置されてもよい。ズームシステム500は、可動部品または可動コンポーネントを必要とすることなく、従来のズームシステム300と同様のズーム機能を提供することができる。すなわち、ズームシステム500は、固定され不可動な各構成コンポーネント(例えば第一および第二の電子アクティブレンズ102−A,102−B、フォーカス要素504、ならびに焦点面506)によって、距離502で対象物を見た場合に、ズーム機能とワイドアングル機能とを提供することができる。
【0030】
ズームまたは望遠設定を提供するために、第一の電子アクティブレンズ102−Aは、ネガティブ(例えば、マイナスまたは発散)の屈折力を提供するように制御され、第二の電子アクティブレンズ102−Bは、ポジティブ(例えば、プラスまたは収束)の屈折力を提供するように制御される。当業者であれば評価するであろう事項だが、このようなネガティブ屈折力のレンズとポジティブ屈折力のレンズとの特定のコンビネーションは、対象物の倍率を増加させることができる。なぜならば、第一の電子アクティブレンズ102−Aに入射する光のうち、一部のみが、焦点506にフォーカスされることとなるからである。
【0031】
ワイドアングル設定を提供するために、第一の電子アクティブレンズ102−Aは、ポジティブ(例えば、プラスまたは収束)の屈折力を提供するように制御され、第二の電子アクティブレンズ102−Bは、ネガティブ(例えば、マイナスまたは発散)の屈折力を提供するように制御される。当業者であれば評価するであろう事項だが、このようなネガティブ屈折力のレンズとポジティブ屈折力のレンズとの特定のコンビネーションは、対象物の倍率を低減させることができる。なぜならば、第一の電子アクティブレンズ102−Aに入射する実質的に全ての光が、焦点506にフォーカスされることとなるからである。
【0032】
第一および第二の電子アクティブレンズ102−A、102−Bが、ともにオフ状態であるとき(例えば、各電子アクティブレンズ102−A、102−Bが、0またはニュートラルな屈折力を提供するとき)は、対象物の非拡大画像が、焦点面506に形成される。
【0033】
上記したように、本発明に係るズームシステム500は、コンビネーションとして用いられてもよいし、または、如何なる数の固定フォーカスレンズ、或は追加の電子アクティブレンズを備えていてもよい。さらに、ズームシステム500は、本発明に係るダイナミックフォーカスシステム(例えば、ダイナミックフォーカスシステム100および/または200)とのコンビネーションとして用いることも可能であるし、ダイナミックフォーカスシステムが、対象物の距離が変化するにつれて、拡大または縮小された画像のフォーカスを、焦点面へ維持するように動作させることも可能である。
【0034】
ズームシステム500、またはその一部は、上記した従来のズームシステムとの結合として用いられてもよい。このような構成(不可動レンズ要素と可動レンズ要素とを組み合わせる構成)においては、可動レンズ要素の動きによって、第一レベルの調整が提供され(例えば、粗い調整)、不可動レンズ要素(例えば、電子アクティブレンズおよび固定レンズ)によって、第二レベルの調整が提供される(例えば、微調整)。本発明に係るこれらシステムは、機械的システムまたは電子アクティブズームシステムのいずれもが独立してもたらすことのできる範囲を超えたズームレベルの変更を要求される場合に、有益である。または、機械的システムが供給できるスピードよりも高速なズーム変更のスピードが要求された場合にも、有利である。
【0035】
図6は、本発明の一局面に係るズームシステム600を示している。図6に示しているように、ズームシステム600は、第一のレンズ602と、第二のレンズ604と、第三のレンズ606と、第四のレンズ608と、焦点面610とを備える。第一のレンズ602は、凸レンズである。第二のレンズ604は、凹レンズである。第三のレンズ606は、凸レンズである。そして、第四のレンズ608は、凸レンズであって、フォーカス要素として機能する。ズームシステム600は、電子アクティブレンズ612をさらに備える。電子アクティブレンズは、上記したいずれの電子アクティブレンズを適用してもよい(例えば、電子アクティブレンズ102に関して上記したいずれの設計バリエーション、構造であってもよい)。
【0036】
ズームシステム600は、図6に図示されている形態に限定されるものではない。すなわち、ズームシステム600は、構成要素であるレンズ要素の特定の配置、および要素間の距離に限定されない。さらに、電子アクティブレンズ612および第二のレンズ604は、複合レンズを形成するように結合されてもよく、または、互いに物理的に離隔されてもよい(例えば、図6に示すように)。さらに、電子アクティブレンズ612は、第二のレンズ604の前に配置されてもよい。本発明の一局面によれば、ズームシステム600のそれぞれの構成レンズコンポーネントは、不可動であってもよい。このシナリオの下では、第二のレンズ604でさえ、不可動であって、電子アクティブレンズ612は、ポジティブおよびネガティブの屈折力を調整することによって、ズームシステム600のズーム能力の全体を調整するために用いられる。
【0037】
本発明の一局面によれば、ズームシステム600のそれぞれの構成レンズコンポーネントは、第二のレンズ600を除いて、不可動であってもよい。このシナリオの下では、第二のレンズ604の機械的な移動によって、ズームの粗調整を行うことができ、電子アクティブレンズ612の調整によって、ズームシステム600におけるズームの微調整を行うことができる。
【0038】
本発明の一局面によれば、図6に示された如何なるレンズグループは、レンズグループまたはレンズ要素の屈折力をさらに調整するための電子アクティブレンズを含むように修正されてもよい。
【0039】
本発明に係るダイナミックフォーカスシステム(例えば、ダイナミックフォーカスシステム100および/または200)、およびズームシステム(例えば、ズームシステム500および/または600)は、ローカルまたはリモートのプラグラマブルコントローラによって動作または操作されてもよい。このコントローラは、電子アクティブレンズおよび本発明に係るダイナミック光学システムの要素から提供される屈折力を起動、停止、および制御することができる。コントローラは、本発明に係るダイナミック光学システムを、自動的に操作することができる。または、コントローラは、使用者または手動による制御や入力に応答するように構成することもできる。
【0040】
本発明に係るダイナミックフォーカスシステム(例えば、ダイナミックフォーカスシステム100および/または200)、およびズームシステム(例えば、ズームシステム500および/または600)は、従来のフォーカスシステムおよびズームシステムに比べて、より多くの利益をもたらす。具体的には、本発明の一局面として上記したように、本発明に係るダイナミックフォーカスシステム、および本発明に係るダイナミックズームシステムの双方とも、可動部品または可動コンポーネントを必要としない。したがって、本発明係るこれらシステムは、従来と比して、より薄く、より軽量に製造することが可能である。可動の構成コンポーネントのためのシステムを備える必要なく、本発明係るシステムは、より少ないコンポーネントにより構成することが可能となり、その結果、より低コストでの製造が可能となる。
【0041】
さらに、本発明に係るダイナミックフォーカスシステムおよびズームシステムは、薄い電子アクティブレンズを用いて製造することができる。その結果、フォーカスチェンジのスピードが、従来のシステムと比べて改善されることとなる。また、可動部品を省くことによって、本発明に係るシステムが、衝撃や振動に対してより耐性を有することを可能とし、且つ、これらシステムが、微粒子汚染による影響を受け難くすることができる。したがって、本発明に係るシステムは、埃、砂、摩耗、および折損による故障の可能性を低減することができる。
【0042】
結言:本発明に係る様々な実施形態が、上記のように説明されたが、これらは一実施例として手供されたものであって、これに限定されるものではないことは、理解されたい。本発明の概念および範囲を逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更を行うことが可能であることは、当業者にとって自明である。したがって、本発明は、本願の特許請求の範囲によって規定されるべきである。
【符号の説明】
【0043】
100,200 ダイナミックフォーカスシステム、102,102−A,102−B 電子アクティブレンズ、104,202,204 固定フォーカスレンズ、106,310,506,610 焦点面、108,112 基材、110 電子アクティブレイヤー、114,116,502 距離、300 ズームシステム、302,304,306,602,604,606,608 レンズ、504 フォーカス要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部品を備えないダイナミックフォーカスシステムであって、
電子アクティブレンズと、
前記電子アクティブレンズに光学的に連結された固定フォーカスレンズと、
前記電子アクティブレンズおよび前記固定フォーカスレンズの協働によってフォーカスされた光を受け取るように配置された焦点面と、を備える、ダイナミックフォーカスシステム。
【請求項2】
前記電子アクティブレンズは、可変のフォーカス能力を提供するために、調整可能な屈折力を有する、請求項1に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項3】
前記電子アクティブレンズの調整可能な屈折力を変化させるためのコントローラをさらに備える、請求項2に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、自動的に制御される、請求項3に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、手動で制御される、請求項3に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項6】
前記電子アクティブレンズの調整可能な屈折力は、ポジティブ、ネガティブ、またはニュートラルな屈折力である、請求項2に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項7】
前記電子アクティブレンズの調整可能な屈折力は、屈折力の範囲内において、連続的に変化する、請求項2に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項8】
前記電子アクティブレンズの調整可能な屈折力は、屈折力の範囲内において、離散的に変化する、請求項2に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項9】
前記電子アクティブレンズは、前記固定フォーカスレンズから離隔して配置される、請求項1に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項10】
前記電子アクティブレンズは、前記ダイナミックフォーカスシステムによって見られる対象物に近い位置に配置される、請求項9に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項11】
前記固定フォーカスレンズは、前記ダイナミックフォーカスシステムによって見られる対象物に近い位置に配置される、請求項9に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項12】
前記電子アクティブレンズおよび前記固定フォーカスレンズは、複合レンズ要素を形成するように、互いに連結されている、請求項1に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項13】
前記焦点面は、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体装置(CMOS)を有する、請求項1に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項14】
少なくとも一つの追加的な固定パワーレンズをさらに備える、請求項1に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項15】
少なくとも一つの追加的な電子アクティブレンズをさらに備える、請求項1に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項16】
前記電子アクティブレンズは、エッチングによりパターン化された電子アクティブレンズ(etched patterned electro−active lens)、またはリソグラフィーによりパターン化された電極を備える電子アクティブレンズ(active lens with lithographically−patterned electrodes)を有する、請求項1に記載のダイナミックフォーカスシステム。
【請求項17】
可動部品を備えないダイナミックズームシステムであって、
第一の電子アクティブレンズと、
第二の電子アクティブレンズと、
固定フォーカスレンズと、
前記第一の電子アクティブレンズ、前記第二の電子アクティブレンズ、および前記固定フォーカスレンズの協働によってフォーカスされた光を受け取るように配置された焦点面と、を備え、
前記第一の電子アクティブレンズと、前記第二の電子アクティブレンズと、前記固定フォーカスレンズとは、互いに光学的に連結されている、ダイナミックズームシステム。
【請求項18】
前記第一の電子アクティブレンズは、第一の可変フォーカス能力を提供するために、第一の調整可能な屈折力を有し、
前記第二の電子アクティブレンズは、第二の可変フォーカス能力を提供するために、第二の調整可能な屈折力を有する、請求項17に記載のダイナミックズームシステム。
【請求項19】
前記第一の電子アクティブレンズが、ネガティブの屈折力を提供するように制御され、且つ、前記第二の電子アクティブレンズが、ポジティブの屈折力を提供するように制御されたときは、倍率の拡大を提供する、請求項18に記載のダイナミックズームシステム。
【請求項20】
前記第一の電子アクティブレンズが、ポジティブの屈折力を提供するように制御され、且つ、前記第二の電子アクティブレンズが、ネガティブの屈折力を提供するように制御されたときは、倍率の縮小を提供する、請求項18に記載のダイナミックズームシステム。
【請求項21】
可動部品を備えないダイナミックフォーカスシステムをさらに備え、
前記ダイナミックフォーカスシステムは、
前記ダイナミックズームシステムと光学的に連結されており、
第三の電子アクティブレンズと、
前記第三の電子アクティブレンズに光学的に連結された第二の固定フォーカスレンズと、を有する、請求項17に記載のダイナミックズームシステム。
【請求項22】
電子アクティブレンズと、
前記電子アクティブレンズに光学的に連結された固定フォーカスレンズと、
前記電子アクティブレンズおよび前記固定フォーカスレンズの協働によってフォーカスされた光を受け取るように配置された焦点面と、を備え、
前記電子アクティブレンズ、前記固定フォーカスレンズ、および前記焦点面は、互いに光学軸に沿って移動することが不可能となっている、ダイナミックフォーカスシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−515368(P2012−515368A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546311(P2011−546311)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/020893
【国際公開番号】WO2010/083211
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(512008543)イービジョン スマート オプティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】