説明

シナリオ生成装置及びシナリオ生成方法並びに試験システム

【課題】メッセージ単体では種別を特定できない場合に、付随する他のメッセージを基に種別を特定し、その種別に応じて、通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオを生成可能なシナリオ生成装置を提供する。
【解決手段】通信シーケンスを記録されたログ情報に基づき、擬似基地局で通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオを生成するシナリオ生成装置であって、メッセージに含まれる情報を基に種別を特定し、種別を単一のメッセージにより特定できない場合には、当該メッセージに付随する他のメッセージの情報を基に種別を特定する種別特定部と、特定された種別に応じて、一のメッセージの中からシナリオを生成するためのシナリオ情報を抽出するシナリオ情報抽出部と、特定されたメッセージの種別と、シナリオ情報とに基づいて、シナリオを生成するシナリオ生成部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル端末等の移動体通信端末が設計された通りに機能するのかを試験するために、基地局を模擬した擬似基地局において通信シーケンスをシミュレーションするための動作を記述したシナリオを生成するシナリオ生成装置及びそのシナリオを生成する生成方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近時では、フィールドテストとして、実際の運用現場に移動体通信端末を持込み、所定の通信プロトコルによる通信において、基地局と移動体通信端末との間で遣り取りされるネットワーク層(レイヤ3)の通信シーケンスを記録したログ情報を移動体通信端末から取得する。通信プロトコルの例としては、例えば、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、GSM(Global System for Mobile Communications)、またはLTE(Long Term Evolution)、LTE−Advanced等が挙げられる。このフィールドテストを実施した後、取得されたログ情報に基づいて基地局を模擬した擬似基地局を制御するシナリオを作成する。その後、移動体通信端末を擬似基地局に接続して、作成されたこのシナリオに基づき移動体通信端末を動作させることで、移動体通信端末の動作状態を試験する。
【0003】
ところで、この試験方式にあっては、シナリオの作成には、規格内容や擬似基地局の動作についての知識が必要であるが、例えば、3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)で作定される規格等は量が多く、しかも現状では数ヶ月毎に更新される内容もある。そのため、シナリオの作成が複雑になってしまい、知識があっても多大な時間を要してしまう。このため、擬似基地局をシミュレーションするためのシナリオを作成する時間を短縮することが要求される。
【0004】
このようなシナリオを自動的に作成し、シナリオを作成する時間を短縮するシナリオ生成装置が、特許文献1に開示されている。このシナリオ生成装置は、ログ情報に記述された通信シーケンスに含まれるメッセージを解析して通信に係るパラメータの設定値を抽出し、この抽出されたパラメータの設定値とパラメータテーブルに記憶された設定値とを比較する。これにより、このシナリオ生成装置は、通信に係るパラメータの設定と疑似基地局の動作に必要なパラメータを決定し、この決定されたパラメータの設定値に基づいて、疑似基地局を動作させるためのシナリオを生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−101160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、ログ情報からシナリオを生成する場合には、従来の方法では、ログ情報に含まれる各メッセージを解析し、メッセージごとにシナリオを生成するための情報(例えば、パラメータ)を抽出している。しなしながら、規約によっては、他のメッセージに付随するメッセージが存在し、そのメッセージに含まれる情報の内容や書式が、付随するメッセージの内容に応じて異なるものがある。そのため、このようなメッセージを解析する場合には、そのメッセージの種別を具体的に特定する必要があるが、そのメッセージ単体では種別を特定できない場合がある。
【0007】
この発明は、メッセージ単体では種別を特定できない場合に、付随する他のメッセージを基に種別を特定し、その種別に応じて、通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオを生成可能なシナリオ生成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基地局(2)から移動体通信端末(3)に対して通信に係るパラメータを送信する通信シーケンスを含んだ通信プロトコルを用いて前記基地局と前記移動体通信端末との間で行う通信の通信シーケンスが記録されたログ情報(D1)に基づき、前記基地局を模擬した擬似基地局(5)で前記通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオ(D2)を生成するシナリオ生成装置(1)であって、前記ログ情報に記録された通信シーケンスを構成する各メッセージに含まれる情報を基に前記メッセージの種別を特定し、前記種別を単一のメッセージにより特定できない場合には、当該メッセージに付随する他のメッセージに含まれる情報を基に前記種別を特定する種別特定部(122)と、特定された前記種別に応じて、前記メッセージの中から前記シナリオを生成するためのシナリオ情報を抽出するシナリオ情報抽出部(124)と、特定された前記メッセージの種別と、前記シナリオ情報とに基づいて、前記シナリオを生成するシナリオ生成部(15)と、を備えたことを特徴とするシナリオ生成装置である。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシナリオ生成装置であって、前記シナリオ情報は、前記擬似基地局が通信シーケンスをシミュレーションするためのパラメータの設定値を含み、前記パラメータとそのパラメータの設定値とを関連付けてあらかじめ記憶しているパラメータテーブルを備えたテーブル記憶部(14)と、前記シナリオ情報抽出部によって抽出された前記パラメータの設定値、前記パラメータテーブルに記憶されたパラメータの設定値の順で優先度を付け、優先度の高い設定値を前記パラメータの設定値として決定するパラメータ決定部(13)と、を備え、前記シナリオ生成部は、特定された前記メッセージの種別と、決定された当該パラメータの設定値とに基づいて、前記シナリオを生成することを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシナリオ生成装置であって、前記パラメータ決定部は、操作者により入力された前記パラメータの設定値を受けて、前記優先度に替えて、前記シナリオ情報抽出部によって抽出された前記パラメータの設定値、前記操作者により入力された前記パラメータの設定値、前記パラメータテーブルに記憶されたパラメータの設定値の順で優先度を付け、前記擬似基地局が通信シーケンスをシミュレーションするためのパラメータについて、これらの設定値のうち、値が設定されている設定値の中で、最も優先度の高い設定値を前記シナリオ情報として出力することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のシナリオ生成装置であって、表示部を備え、前記シナリオ生成部は、前記表示部に前記シナリオを表示させ、操作者により入力された前記シナリオの編集内容を示す情報を受けて、表示された前記シナリオに当該情報を反映させることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のシナリオ生成装置と、前記シナリオに基づいて前記移動体通信端末との間で通信を行って、当該移動体通信端末の試験を行う疑似基地局と、を備えたことを特徴とする試験システム(10)である。
また、請求項6に記載の発明は、基地局(2)から移動体通信端末(3)に対して通信に係るパラメータを送信する通信シーケンスを含んだ通信プロトコルを用いて前記基地局と前記移動体通信端末との間で行う通信の通信シーケンスが記録されたログ情報(D1)に基づき、前記基地局を模擬した擬似基地局(5)で前記通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオ(D2)を生成するシナリオ生成方法であって、前記ログ情報に記録された通信シーケンスを構成する各メッセージに含まれる情報を基に前記メッセージの種別を特定し、前記種別を単一のメッセージにより特定できない場合には、当該メッセージに付随する他のメッセージに含まれる情報を基に前記種別を特定する種別特定ステップと、特定された前記種別に応じて、前記メッセージの中から前記擬似基地局が通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオを生成するためのシナリオ情報を抽出するパラメータ抽出ステップと、特定された前記メッセージの種別と、前記シナリオ情報とに基づいて、前記擬似基地局で動作させるためのシナリオを生成するシナリオ生成ステップと、を備えたことを特徴とするシナリオ生成方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る技術は、ログ情報に記述された通信シーケンスに含まれるメッセージの種別を特定できない場合には、そのメッセージに付随する他のメッセージに含まれる情報を基に、そのメッセージの種別を特定する。これにより、特定された種別に応じてシナリオ情報を抽出し、通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】ログ情報を取得するまでの試験システムのブロック図である。
【図1B】取得したログ情報からシナリオを生成して通信シーケンスをシミュレーションする試験システムのブロック図である。
【図2】シナリオ生成装置のブロック図である。
【図3】ログ情報の内容の一例を示した図である。
【図4】中間ファイルの内容の一例を示した図である
【図5A】メッセージ種別に応じたパラメータの違いを説明するための図である。
【図5B】メッセージ種別に応じたパラメータの違いを説明するための図である。
【図6A】サブ種別を示唆する情報の一例を示した図である。
【図6B】サブ種別を示唆する情報の一例を示した図である。
【図7】パラメータテーブルの内容の一例を示した図である。
【図8A】パラメータの決定に係る処理の一例を示した概念図である。
【図8B】パラメータの決定に係る処理の一例を示した概念図である。
【図9】シナリオの一例を示した図である。
【図10】シナリオ生成装置の一連の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図1A及び図1Bを参照しながら、本発明に係る試験システムの構成を説明する。図1A及び図1Bは、携帯電話、モバイル端末等の移動体通信端末の試験システムの構成図である。図1Aは、試験システムにおいてログ情報を取得するまでの構成を示している。このシステムの構成は、基地局2と、移動体通信端末3aと、ログ情報取得装置4とを含む。
【0012】
また、図1Bは、試験システム10において、取得したログ情報からシナリオを生成して通信シーケンスをシミュレーションするまでの構成を示している。このシステムの構成は、ログ情報取得装置4(図1Aと共通)、シナリオ生成装置1と、擬似基地局5と、擬似基地局5と通信を行う試験対象となる移動体通信端末3bとを含む。なお、ログ情報取得装置4は、常に移動体通信端末3aと接続されている必要は無い。実際の運用現場(フィールド)で移動体通信端末3aが基地局2と通信を行った後、試験を行う操作者がこの移動体通信端末3aを試験現場に持ち帰ってログ情報取得装置4に接続し、移動体通信端末3aに記録されたログを取得するようにしてもよい。
【0013】
ここでは、説明のため、「移動体通信端末3」を「移動体通信端末3a」と「移動体通信端末3b」とに分けて記述している。なお、特に分ける必要がない場合については、「移動体通信端末3」と記載する場合がある。
【0014】
本実施形態では、フィールドテスト時に移動体通信端末3aを基地局2に接続して移動体通信端末3aの操作を行うようになっている。このとき、基地局2と移動体通信端末3aの間で予め定められた通信プロトコルを使用して通信が行われ、その中でネットワーク層(以下、レイヤ3という)の通信シーケンスも行われる。
【0015】
このレイヤ3の通信シーケンスには基地局2から移動体通信端末3aに対して送信される通信シーケンスとして、データリンク層(以下、レイヤ2という)/物理層(以下、レイヤ1という)のパラメータの設定を変更するためのメッセージが含まれている。
【0016】
ログ情報取得装置4は、移動体通信端末3aから主にレイヤ3の通信シーケンスで構成されたログを取得してログ情報(ログ情報)D1を作成する。シナリオ生成装置1は、ログ情報D1に基づいて基地局を模擬した擬似基地局5でレイヤ3の通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオを生成し、このシナリオが記載されたシナリオデータD2を出力する。
【0017】
擬似基地局5は、シナリオ生成装置1によって生成されたシナリオデータD2に基づいて移動体通信端末3bとの間で通信を行う。これにより、フィールドテストで発生した通信シーケンスが再現されて、再現された通信シーケンスにおける移動体通信端末3bの動作状態が試験される。
【0018】
次に、図2を参照しながら、シナリオ生成装置1の構成について説明する。図2は、シナリオ生成装置1のブロック図である。図2に示すように、シナリオ生成装置1は、ログ入力部11と、メッセージ解析部12と、パラメータ決定部13と、テーブル記憶部14と、シナリオ生成部15と、表示制御部16と、表示部17と、編集部18と、シナリオ出力部19とを含んで構成されている。
【0019】
ログ入力部11は、ログ情報D1を読み出す。ログ入力部11は、読み出されたログ情報D1をメッセージ解析部12に入力する。
【0020】
メッセージ解析部12は、変換部121と、種別特定部122と、関連情報記憶部123と、シナリオ情報抽出部124とを含んで構成されている。メッセージ解析部12は、ログ入力部11からログ情報D1を受ける。メッセージ解析部12は、このログ情報D1を変換部121に出力する。
【0021】
変換部121は、メッセージ解析部12からログ情報D1を受ける。
【0022】
ここで、ログ情報D1の一例について図3を参照しながら説明する。図3は、ログ情報の内容の一例を示した図である。図3に示すように、ログ情報D1は、メッセージL11を含んで構成されている。メッセージL11は、あらかじめ決められた書式で記述されており、属性情報L111と、実データL112とを含んで構成されている。属性情報L111には、メッセージL11が出力された環境を示す制御情報が含まれている。属性情報L111としては、例えば、パラメータ「RAT」には、メッセージL11の通信プロトコルの種類が出力される。実データL112には、移動体通信端末3aにより出力されたメッセージの内容が含まれている。例えば、図3の例では、パラメータ「PDU BODY」に、メッセージL11が示す情報が16進データとして出力されており、このデータの長さを示す情報がパラメータ「PDU LENGTH」に出力されている。実データL112は、あらかじめ決められた書式で記述されている。例えば、先頭ビットを1ビット目として、13ビット目から16ビット目までの情報がメッセージの種別を示している。また、例えば、48ビット目から64ビット目までの情報がLAC(Local Area Code)を示している。なお、LACとは、国を示す国コードや、事業者を示す事業者コードに類似の情報であり、一般にはそれらよりも狭いエリアを示すための情報である。
【0023】
2つのメッセージL11の間は、例えば、デリミタ−(区切り文字)により区切られており、変換部121は、このデリミタ−を特定することで、各メッセージL11を個々に取り出す。また、メッセージL11の接頭語があらかじめ決められている場合には、変換部121は、この接頭語を特定することで、各メッセージL11を個々に取り出してもよい。例えば、図3の例では、各メッセージL11は、「Time」パラメータが最初に記述されている。そのため、この場合には変換部121は、「Time=」を接頭語として、各メッセージL11を個々に取り出す。このような書式は通信規格ごとに決められており、変換部121は、通信規格ごとに、ログ情報D1の書式を解析するための解析ロジックをあらかじめ記憶している。変換部121は、ログ情報D1に対して、これらの解析ロジックをあらかじめ決められた優先順位に基づき順番に適用し、解析ができたか否かにより通信規格を特定する。変換部121は、特定された通信規格を、パラメータ決定部13及びシナリオ生成部15に通知する。パラメータ決定部13及びシナリオ生成部15については後述する。
【0024】
また、変換部121は、ログ情報D1が解析できた場合には、ログ情報D1に含まれるメッセージL11を取り出す。変換部121は、取り出されたメッセージL11それぞれを、所定の変換ロジックに従ってあらかじめ決められた書式で記述されたメッセージL21に変換し、変換後の各メッセージL21を含む中間ファイルD11を生成する。例えば、図4は、中間ファイルD11の内容の一例を示している。ここで、「hexdump」パラメータには、実データL112(図3を参照)に設定されていた設定値が入力される。なお、図3のL112のデータと、図4のL21のデータとは値が異なっているが、実際には、対応するデータであれば、同じ値が入力される。このように、中間ファイルD11を生成することで、例えば、通信方式によってログ情報D1の書式が異なる場合においても、通信方式間の書式の違いを中間ファイルD11により吸収し、共通の解析ロジックを用いて情報を抽出することが可能となる。
【0025】
なお、変換部121は、ログ情報D1を解析してメッセージL11を取り出し、中間ファイルD11を生成する過程において、あらかじめ決められた種類のメッセージを間引いてもよい。例えば、変換部121は、メッセージL11の属性情報L111を参照し、そのメッセージL11が通信シーケンスの制御情報を含まない場合には、そのメッセージL11が示す情報を中間ファイルD11に出力しないように動作させてもよい。
【0026】
変換部121は、生成された中間ファイルD11を種別特定部122に出力する。
【0027】
種別特定部122は、変換部121から中間ファイルD11を受ける。種別特定部122は、中間ファイルD11に含まれる各メッセージL21を解析し、そのメッセージの種別を特定する。具体的な特定方法の一例として、種別特定部122は、メッセージL21の「hexdump」パラメータに設定された実データL112を抽出し、実データL112における所定の位置のデータの内容を基に、そのメッセージの種別を特定する。この所定の位置のデータの内容と、メッセージの種別との対応関係は、関連情報記憶部123に記憶されている。これにより、例えば、通信方式がGSMの場合における「System Information Type1〜9」のようなメッセージ種別を特定することが可能となる。なお、種別特定部122は、特定された種別が、そのメッセージ内に抽出対象となる情報を含まないメッセージの種別の場合には、以降の処理を行わず次のメッセージに対する処理に遷移する。
【0028】
一方で、このようなメッセージ種別には、さらに含まれる内容の異なるサブ種別が存在する場合がある。例えば、GSMにおける種別「System Information Type7」には、「System Information Type7_S」と「System Information Type7_O」とが存在し、設定される値がそれぞれ異なる。図5Aに、種別が「System Information Type7_S」の場合におけるメッセージの内容の一例を示す。また、図5Bに、種別が「System Information Type7_O」の場合におけるメッセージの内容の一例を示す。図5Aに示すように、種別が「System Information Type7_S」のメッセージは、パラメータL511(即ち、「SI4 Rest Octets_S」パラメータ)を含んで構成されている。これに対して図5Bに示した種別が「System Information Type7_O」のメッセージは、パラメータL511に加え、パラメータL512(即ち、「SI4 Rest Octets_O」パラメータ)を含んで構成されている。即ち、サブ種別が異なる場合には、そのメッセージから取り出せる情報の種類や数が異なり、そのサブ種別に応じてメッセージから情報を取り出すための解析ロジックも異なる。
【0029】
このようなメッセージのサブ種別は、そのメッセージに含まれる情報ではなく、他の種別のメッセージに含まれる情報に付随して決定されることが通信規格で決められている場合がある。例えば、「System Information Type7」のメッセージのサブ種別が「System Information Type7_S」及び「System Information Type7_O」のうちのいずれかは、GSMの通信規約により、「System Information Type4」のメッセージに内に記されている。具体的に一例を図6A及び図6Bに示す。図6Aは、「System Information Type7」のメッセージのサブ種別が「System Information Type7_S」の場合の、「System Information Type4」のメッセージの内容を示している。また、図6Bは、「System Information Type7」のメッセージのサブ種別が「System Information Type7_O」の場合の、「System Information Type4」のメッセージの内容を示している。図6A及び図6Bに示すように、「System Information Type7」のメッセージのサブ種別は、「System Information Type4」のメッセージ内のパラメータL521(即ち、「Break indicator」パラメータ)に設定された設定値で示されている。即ち、図6Aに示すようにパラメータL521に設定値V52Aが設定されている場合には、そのメッセージ以降に出力された「System Information Type7」のメッセージのサブ種別が「System Information Type7_S」であることを示している。また、図6Bに示すようにパラメータL521に設定値V52Bが設定されている場合には、そのメッセージ以降に出力された「System Information Type7」のメッセージのサブ種別が「System Information Type7_O」であることを示している。
【0030】
関連情報記憶部123には、上述した「System Information Type7」のメッセージのように、複数のサブ種別を有し、そのサブ種別が、他のメッセージ内のパラメータの設定値に付随して決定されるメッセージについて、サブ種別と他のメッセージのパラメータ及び設定値との関連付けを示す情報があらかじめ記憶されている。また、シナリオ情報抽出部124は、これらのメッセージのサブ種別を示唆する情報とその情報に対応するパラメータの種別(以降では、単に「パラメータ」と呼ぶ場合がある)とを、これらのメッセージが検出される以前にシナリオ情報抽出部124から受ける。シナリオ情報抽出部124については後述する。種別特定部122は、これらの情報を記憶部(図示しない)に記憶しておく。種別特定部122は、特定されたメッセージの種別が、サブ種別を有するメッセージの種別の場合には、関連情報記憶部123に記憶された情報を基に、前述した記憶部(図示しない)に記憶された情報の中から対応するパラメータに関連付けられた情報を特定する。種別特定部122は、特定された情報に応じてサブ種別を特定する。
【0031】
種別特定部122は、取り出された各メッセージL21を、そのメッセージの種別及びサブ種別を示す情報と関連付けてシナリオ情報抽出部124に出力する。
【0032】
シナリオ情報抽出部124は、中間ファイルD11から取り出された各メッセージL21と、そのメッセージの種別及びサブ種別を示す情報を種別特定部122から受ける。このメッセージL21には、ログ情報D1が取得された通信シーケンスを実現するためのパラメータとその設定値、または所定のパラメータの書式を示す報知情報を示す「シナリオ情報」が含まれている。このシナリオ情報の内容及び種別やそれらの取り出し方は、そのシナリオ情報が含まれるメッセージの種別及びサブ種別に応じて異なる。そのため、シナリオ情報抽出部124は、メッセージの種別及びサブ種別ごとに、メッセージL21の解析ロジックをあらかじめ記憶している。シナリオ情報抽出部124は、受けたメッセージL21に関連付けられた種別及びサブ種別に応じて、対応する解析ロジックを特定する。シナリオ情報抽出部124は、特定された解析ロジックによりメッセージL21を解析し、そのメッセージの種別及びサブ種別に応じたシナリオ情報を抽出する。
【0033】
シナリオ情報抽出部124は、抽出されたシナリオ情報が、所定のパラメータの書式を示す報知情報の場合には、この報知情報をシナリオ生成部15に出力する。シナリオ生成部15は、この報知情報を、表示制御部16を介して表示部17に表示させる。これにより操作者は、その報知情報が示す内容を確認することが可能となる。なお、シナリオ生成部15、表示制御部16、表示部17の詳細については後述する。
【0034】
また、シナリオ情報抽出部124は、各メッセージL21からシナリオ情報として抽出された、通信シーケンスを実現するための一連のパラメータとその設定値を、パラメータセットC11としてパラメータ決定部13に出力する。また、シナリオ情報抽出部124は、ログ情報D1が取得された通信シーケンスに沿って出力された一連のメッセージの順序、即ち一連の処理の流れを示す情報を解析結果としてシナリオ生成部15に出力する。
【0035】
また、シナリオ情報の中には、他のメッセージのサブ種別を示唆する情報が含まれている場合がある。シナリオ情報抽出部124は、このような情報の種別をあらかじめ記憶しておき、抽出されたシナリオ情報がサブ種別を示唆する情報が否かを判別する。シナリオ情報抽出部124は、抽出されたシナリオ情報がサブ種別を示唆する情報の場合には、この情報を対応するパラメータと関連付けて種別特定部122に出力する。
【0036】
テーブル記憶部14は、ログ情報D1が取得された通信シーケンスに沿って擬似基地局5を動作させるためのパラメータとそのパラメータの設定値とが関連付けられたパラメータテーブルC3をあらかじめ記憶している記憶部である。図7にパラメータテーブルC3の一例を示す。図7に示すように、パラメータテーブルC3は、通信規格ごとのパラメータテーブルC31〜C33を含んで構成されている。図7に示すように、例えば、パラメータテーブルC31には、パラメータテーブルC31に対応する通信方式におけるパラメータP1と設定値V31とが関連付けられて記憶されている。同様に、パラメータP2と設定値V32、パラメータP3と設定値V33、パラメータP4と設定値V34がそれぞれ関連付けられてパラメータテーブルC31に記憶されている。ここで、パラメータテーブルC3に記憶されている設定値とは、その設定値が疑似基地局5にそのまま設定されたとしても疑似基地局が動作可能な設定値であり、いわば初期値である。
【0037】
パラメータ決定部13は、通信規格を示す情報を変換部121から受ける。パラメータ決定部13は、テーブル記憶部14に記憶されたパラメータテーブルC3から、この通信規格を示す情報に対応するパラメータテーブル(例えば、パラメータテーブルC31)を抽出する。以降は、パラメータテーブルC31が抽出されたものとして説明する。
【0038】
また、パラメータ決定部13は、各メッセージL21から抽出されたパラメータとその設定値を示すパラメータセットC11をシナリオ情報抽出部124から受ける。パラメータ決定部13は、パラメータセットC11として抽出されたパラメータの設定値、パラメータテーブルC31に記憶されたパラメータの設定値の順で優先度を付ける。パラメータ決定部13は、各パラメータについて優先度の高い設定値を選択し、一連のパラメータと選択された設定値とを基にパラメータテーブルC40を生成する。
【0039】
ここで図8Aを参照する。図8Aは、パラメータ決定部13が行うパラメータ決定処理の一例を示した概念図である。図8BにおけるパラメータセットC11は、ログ情報D1が取得された通信シーケンスを示すシナリオを生成するためのパラメータ(例えば、パラメータP1〜P4)と、そのパラメータに対応する中間ファイルD11から抽出された設定値との対応関係を示している。即ち、パラメータセットC11は、シナリオ情報抽出部124から受けたパラメータセットC11を示している。例えば、パラメータセットC11では、パラメータP1の設定値としてV11が抽出され、パラメータP2の設定値としてV12が抽出されたことを示している。なお、「−」は、対応する値が設定されていないことを示している。即ち、パラメータセットC11は、パラメータP3及びP4に対応する設定値は抽出されなかったことを示している。また、図8AにおけるC31は、テーブル記憶部14から抽出されたパラメータテーブルC31を示している。
【0040】
図8Aに示すように、パラメータ決定部13は、優先度の高いパラメータセットC11に設定値が含まれているC401で示されたパラメータの設定値については、パラメータセットC11から抽出し設定する。図8Aの例では、パラメータ決定部13は、パラメータP1及びP2に対応する設定値として、パラメータセットC11から設定値V11及びV12を抽出し、これをパラメータP1及びP2に設定している。また、優先度の高いパラメータセットC11に設定値が含まれていないC403で示されたパラメータの設定値については、優先度の低いパラメータテーブルC31から抽出し設定する。図8Aの例では、パラメータP3及びP4に対応する設定値として、パラメータテーブルC31から設定値V33及びV34を抽出し、これをパラメータP3及びP4に設定している。
【0041】
また、パラメータ決定部13は、一連のパラメータとパラメータセットC11に含まれる設定値とを表示制御部16を介して表示部17に表示させ、編集部18を介して操作者が指定した設定値を含むパラメータセットC21を受けてもよい。表示制御部16、表示部17、及び編集部18については後述する。この場合には、パラメータ決定部13は、パラメータセットC11として抽出されたパラメータの設定値、パラメータセットC21として操作者が指定したパラメータの設定値、パラメータテーブルC31に記憶されたパラメータの設定値の順で優先度を付ける。パラメータ決定部13は、各パラメータについて値が設定されている設定値の中で最も優先度の高い設定値を選択し、一連のパラメータと選択された設定値とを基にパラメータテーブルC41を生成する。
【0042】
ここで、図8Bを参照する。図8Bは、パラメータ決定部13が行うパラメータ決定処理の一例を示した概念図である。パラメータセットC11及びパラメータテーブルC31は、図8Aと同様である。パラメータセットC21は、シナリオを生成するためのパラメータと、操作者が編集部18を介して指定した、そのパラメータに対応する設定値との対応関係を示している。
【0043】
図8Bに示すように、パラメータ決定部13は、最も優先度の高いパラメータセットC11に設定値が含まれているC411で示されたパラメータの設定値については、パラメータセットC11から抽出し設定する。C411で示されたパラメータの設定値は、図8Aに示されたC401の場合と同様である。パラメータセットC11に設定値が含まれていないパラメータについて、パラメータ決定部13は、次に優先度の高いパラメータセットC21から設定値の抽出を試みる。パラメータ決定部13は、パラメータセットC21に設定値が含まれているC412で示されたパラメータの設定値を、パラメータセットC21から抽出し設定する。図8Bの例では、パラメータ決定部13は、パラメータP3に対応する設定値として、パラメータセットC21から設定値V23を抽出し、これをパラメータP3に設定している。なお、パラメータセットC11及びC21に設定値が含まれないC413で示されたパラメータについては、最も優先度の低いパラメータテーブルC31から抽出し設定する。図8Bの例では、パラメータP4に対応する設定値として、パラメータテーブルC31から設定値V34を抽出し、これをパラメータP4に設定している。このように動作させることで、ログ情報D1に基づき決定できなかったパラメータの設定値を、操作者により指定されたパラメータの設定値により補完することが可能となる。また、操作者により設定されたパラメータの設定値でも補完できなかった場合は、パラメータテーブルC31にあらかじめ設定された設定値により補完される。
【0044】
パラメータ決定部13は、作成されたパラメータテーブルC40またはC41をシナリオ生成部15に出力する。以降では、パラメータ決定部13は、パラメータテーブルC41をシナリオ生成部15に出力したものとして説明する。
【0045】
シナリオ生成部15は、パターン組込部151を含んで構成されている。シナリオ生成部15は、変換部121から通信規格を示す情報を受ける。また、シナリオ生成部15は、シナリオ情報抽出部124から、一連の処理の流れを示す情報を解析結果として受ける。また、シナリオ生成部15は、パラメータ決定部13からパラメータテーブルC41を受ける。シナリオ生成部15は、通信規格を示す情報、解析結果、及びパラメータテーブルC41をパターン組込部151に出力し、その応答として生成されたシナリオをパターン組込部151から受ける。パターン組込部151については後述する。
【0046】
シナリオ生成部15は、表示制御部16を介して生成されたシナリオを表示部17に編集可能に表示させ、編集部18を介して操作者が指定したシナリオの編集内容を受けてもよい。この場合には、シナリオ生成部15は、操作者に指定された編集内容に基づきシナリオの内容を編集する。
【0047】
また、シナリオ生成部15は、シナリオ情報抽出部124から報知情報を受ける。シナリオ生成部15は、この報知情報を、表示制御部16を介して表示部17に表示させる。これにより操作者は、その報知情報が示す内容を確認するとともに、編集部18を介して生成されたシナリオを編集することが可能となる。この場合には、シナリオ生成部15は、編集部18から操作者が指定したシナリオの編集内容を示す情報を受けて、生成されたシナリオ情報に反映する。
【0048】
シナリオ生成部15は、作成及び編集された一連の通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオをシナリオ出力部19に出力する。
【0049】
パターン組込部151は、シナリオ生成部15から、通信規格を示す情報、一連の処理の流れを示す解析結果、及びパラメータテーブルC41をシナリオ生成部15から受ける。パターン組込部151は、一連の処理の流れを示す解析結果を、受けた通信規格に対応する書式に変換することで、一連の通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオの雛型を生成する。次に、パターン組込部151は、生成された雛型に、パラメータテーブルC41で示されたパラメータの設定値を埋め込むことによりシナリオを生成する。図9にシナリオの一例を示す。図9に示すように、ログ情報D1に含まれるメッセージに基づき、一連の通信シーケンスを形成する各処理をシミュレーションするための情報が含まれる。例えば、処理L61は、基地局2から移動体通信端末3に向けて「System Information Type2」のメッセージを送信する処理を示している。また、処理L62は、移動体通信端末3から基地局2に向けて「Channel Request」を送信する処理を示している。また、処理L631と処理L632は、基地局2から移動体通信端末3に向けて前述した「System Information Type4」及び「System Information Type7_O」を送信する処理を示している。このように、種別特定部122により、メッセージごとにその種別及びサブ種別を特定されているため、パターン組込部151は、サブ種別により異なる処理を切り分けてシナリオを生成することが可能となる。パターン組込部151は、生成されたシナリオをシナリオ生成部15に出力する。
【0050】
表示制御部16、表示部17、及び編集部18は、操作者が、パラメータの設定値の確認及び指定と、生成されたシナリオの確認及び編集を行うためのインタフェースである。
【0051】
表示制御部16は、パラメータ決定部13から一連のパラメータとパラメータセットC11に含まれる設定値とを受ける。表示制御部16は、これらを所定の表示形式に従い編集可能に表示部17に表示させる。編集部18はこの表示に基づき入力されたパラメータの設定値を受ける。編集部18は、操作者が指定した設定値をパラメータセットC21としてパラメータ決定部13に出力する。
【0052】
また、表示制御部16は、シナリオ生成部15から生成されたシナリオ及び報知情報を受ける。表示制御部16は、生成されたシナリオを所定の表示形式に従い編集可能に表示部17に表示させる。また、表示制御部16は、報知情報の内容を確認可能に表示部17に表示させる。編集部18は、この表示に基づき入力されたシナリオの編集内容を受ける。編集部18は、操作者が指定した編集内容をシナリオ生成部15に出力する。シナリオ生成部15は、この編集内容に基づきシナリオを編集する。
【0053】
シナリオ出力部19は、シナリオ生成部15から生成または編集されたシナリオを受ける。シナリオ出力部19は、受けたシナリオを所定の形式(例えば、ファイル形式)のシナリオデータD2として出力する。
【0054】
次に、シナリオ生成装置1の動作について、図10を参照しながら、特にメッセージ解析部12の動作に着目して説明する。図10は、シナリオ生成装置1の一連の動作を示したフローチャートである。
【0055】
(ステップS10)
ログ入力部11は、ログ情報D1を読み出す。ログ入力部11は、読み出されたログ情報D1をメッセージ解析部12に入力する。メッセージ解析部12は、このログ情報D1を変換部121に出力し、ログ情報D1に含まれるメッセージに対する解析処理を実行させる。
【0056】
変換部121は、メッセージ解析部12からログ情報D1を受ける。変換部121は、通信規格ごとに、ログ情報D1を解析するための解析ロジックをあらかじめ記憶している。変換部121は、ログ情報D1に対して、これらの解析ロジックをあらかじめ決められた優先順位に基づき順番に適用し、解析ができたか否かにより通信規格を特定する。変換部121は、特定された通信規格を、パラメータ決定部13及びシナリオ生成部15に通知する。
【0057】
また、変換部121は、ログ情報D1が解析できた場合には、ログ情報D1に含まれるメッセージL11を取り出す。変換部121は、取り出されたメッセージL11それぞれを、所定の変換ロジックに従ってあらかじめ決められた書式で記述されたメッセージL21に変換し、変換後の各メッセージL21を含む中間ファイルD11を生成する。変換部121は、生成された中間ファイルD11を種別特定部122に出力する。
【0058】
(ステップS12)
種別特定部122は、変換部121から中間ファイルD11を受ける。種別特定部122は、中間ファイルD11に含まれる全てのメッセージが解析されるまで(ステップS11、N)、各メッセージL21を遂次読み出す。
【0059】
(ステップS13)
種別特定部122は、読み出されたメッセージL21を解析し、そのメッセージの種別を特定する。具体的な特定方法の一例として、種別特定部122は、メッセージL21の「hexdump」パラメータに設定された実データL112を抽出し、実データL112における所定の位置のデータの内容を基に、そのメッセージの種別を特定する。この所定の位置のデータの内容と、メッセージの種別との対応関係は、関連情報記憶部123に記憶されている。これにより、例えば、通信方式がGSMの場合における「System Information Type1〜9」のようなメッセージ種別を特定することが可能となる。
【0060】
(ステップS14)
なお、種別特定部122は、特定された種別が、そのメッセージ内に抽出対象となる情報を含まないメッセージの種別の場合には(ステップS14、N)、以降の処理を行わず次のメッセージに対する処理に遷移する。
【0061】
(ステップS15)
特定されたメッセージの種別が、そのメッセージ内に抽出対象となる情報を含むメッセージの種別の場合には(ステップS14、Y)、種別特定部122は、そのメッセージL21がサブ種別により処理が異なるメッセージか否かを特定する。メッセージL21がサブ種別により処理が異ならない(または、サブ種別を有さない)メッセージの場合には(ステップS15、N)、取り出されたメッセージL21を、そのメッセージの種別を示す情報と関連付けてシナリオ情報抽出部124に出力する。
【0062】
(ステップS16)
メッセージL21がサブ種別により処理が異なるメッセージの場合には(ステップS15、Y)、そのメッセージL21のサブ種別を特定する。具体的には、関連情報記憶部123に複数のサブ種別を有し、そのサブ種別が、他のメッセージ内のパラメータの設定値に付随して決定されるメッセージについて、サブ種別と他のメッセージのパラメータ及び設定値との関連付けを示す情報があらかじめ記憶されている。また、シナリオ情報抽出部124は、このメッセージL21のサブ種別を示唆する情報とその情報に対応するパラメータとを、このメッセージL21が検出される以前にシナリオ情報抽出部124から受け、記憶部(図示しない)に記憶している。種別特定部122は、関連情報記憶部123に記憶された情報を基に、前述した記憶部(図示しない)に記憶された情報の中から対応するパラメータに関連付けられた情報を特定する。種別特定部122は、特定された情報に応じてサブ種別を特定する。種別特定部122は、取り出されたメッセージL21を、そのメッセージの種別及びサブ種別を示す情報と関連付けてシナリオ情報抽出部124に出力する。
【0063】
(ステップS17)
シナリオ情報抽出部124は、中間ファイルD11から取り出された各メッセージL21と、そのメッセージの種別及びサブ種別を示す情報を種別特定部122から受ける。このメッセージL21には、ログ情報D1が取得された通信シーケンスを実現するためのパラメータとその設定値、または所定のパラメータの書式を示す報知情報を示す「シナリオ情報」が含まれている。
【0064】
シナリオ情報抽出部124は、抽出されたシナリオ情報が、所定のパラメータの書式を示す報知情報の場合には、この報知情報をシナリオ生成部15に出力する。シナリオ生成部15は、この報知情報を、表示制御部16を介して表示部17に表示させる。これにより操作者は、その報知情報が示す内容を確認することが可能となる。
【0065】
また、シナリオ情報抽出部124は、各メッセージL21からシナリオ情報として抽出された、通信シーケンスを実現するための一連のパラメータとその設定値を、パラメータセットC11としてパラメータ決定部13に出力する。また、シナリオ情報抽出部124は、ログ情報D1が取得された通信シーケンスに沿って出力された一連のメッセージの順序、即ち一連の処理の流れを示す情報を解析結果としてシナリオ生成部15に出力する。
【0066】
(ステップS18、S19)
また、シナリオ情報の中には、他のメッセージのサブ種別を示唆する情報が含まれている場合がある(ステップS18、Y)。シナリオ情報抽出部124は、このような情報の種別をあらかじめ記憶しておき、抽出されたシナリオ情報がサブ種別を示唆する情報が否かを判別する。シナリオ情報抽出部124は、抽出されたシナリオ情報がサブ種別を示唆する情報の場合には、この情報を対応するパラメータと関連付けて種別特定部122に出力する(ステップS19)。なお、サブ種別を示唆する情報が含まれない場合には(ステップS18、N)、この処理は実行されない。
【0067】
(ステップS20)
全てのメッセージについて解析処理が完了したら(ステップS11、Y)、パラメータ決定部13は、パラメータテーブルC41を生成する。具体的には、パラメータ決定部13は、通信規格を示す情報を変換部121から受ける。パラメータ決定部13は、テーブル記憶部14に記憶されたパラメータテーブルC3から、この通信規格を示す情報に対応するパラメータテーブルC31を抽出する。
【0068】
パラメータ決定部13は、各メッセージL21から抽出されたパラメータとその設定値を示すパラメータセットC11をシナリオ情報抽出部124から受ける。パラメータ決定部13は、パラメータセットC11として抽出されたパラメータの設定値、パラメータテーブルC31に記憶されたパラメータの設定値の順で優先度を付ける。パラメータ決定部13は、各パラメータについて優先度の高い設定値を選択し、一連のパラメータと選択された設定値とを基にパラメータテーブルC40を生成する。
【0069】
また、パラメータ決定部13は、一連のパラメータとパラメータセットC11に含まれる設定値とを表示制御部16を介して表示部17に表示させ、編集部18を介して操作者が指定した設定値を含むパラメータセットC21を受けてもよい。この場合には、パラメータ決定部13は、パラメータセットC11として抽出されたパラメータの設定値、パラメータセットC21として操作者が指定したパラメータの設定値、パラメータテーブルC31に記憶されたパラメータの設定値の順で優先度を付ける。パラメータ決定部13は、各パラメータについて値が設定されている設定値の中で最も優先度の高い設定値を選択し、一連のパラメータと選択された設定値とを基にパラメータテーブルC41を生成する。
【0070】
パラメータ決定部13は、作成されたパラメータテーブルC40またはC41をシナリオ生成部15に出力する。以降では、パラメータ決定部13は、パラメータテーブルC41をシナリオ生成部15に出力したものとして説明する。
【0071】
シナリオ生成部15は、パターン組込部151を含んで構成されている。シナリオ生成部15は、変換部121から通信規格を示す情報を受ける。また、シナリオ生成部15は、シナリオ情報抽出部124から、一連の処理の流れを示す情報を解析結果として受ける。また、シナリオ生成部15は、パラメータ決定部13からパラメータテーブルC41を受ける。シナリオ生成部15は、通信規格を示す情報、解析結果、及びパラメータテーブルC41をパターン組込部151に出力し、その応答として生成されたシナリオをパターン組込部151から受ける。シナリオ生成部15は、作成及び編集された一連の通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオをシナリオ出力部19に出力する。
【0072】
シナリオ出力部19は、シナリオ生成部15から生成または編集されたシナリオを受ける。シナリオ出力部19は、受けたシナリオを所定の形式(例えば、ファイル形式)のシナリオデータD2として出力する。
【0073】
以上、本実施形態に係るシナリオ生成装置は、図5A及び図5Bに示した、GSMにおける「System Information Type7」のように、そのメッセージ単体ではサブ種別を特定できないメッセージについて、そのメッセージに付随する他のメッセージの含まれる情報を基にサブ種別を特定する。これにより、本実施形態に係るシナリオ生成装置に依れば、サブ種別に応じて処理が異なる場合に、それらを識別して、一連の通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオを生成することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 シナリオ生成装置
10 試験システム
11 ログ入力部
12 メッセージ解析部
121 変換部
122 種別特定部
123 関連情報記憶部
124 シナリオ情報抽出部
13 パラメータ決定部
14 テーブル記憶部
15 シナリオ生成部
151 パターン組込部
16 表示制御部
17 表示部
18 編集部
19 シナリオ出力部
2 基地局
3、3a、3b 移動体通信端末
4 ログ情報取得装置
5 擬似基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局(2)から移動体通信端末(3)に対して通信に係るパラメータを送信する通信シーケンスを含んだ通信プロトコルを用いて前記基地局と前記移動体通信端末との間で行う通信の通信シーケンスが記録されたログ情報(D1)に基づき、前記基地局を模擬した擬似基地局(5)で前記通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオ(D2)を生成するシナリオ生成装置(1)であって、
前記ログ情報に記録された通信シーケンスを構成する各メッセージに含まれる情報を基に前記メッセージの種別を特定し、前記種別を単一のメッセージにより特定できない場合には、当該メッセージに付随する他のメッセージに含まれる情報を基に前記種別を特定する種別特定部(122)と、
特定された前記種別に応じて、前記メッセージの中から前記シナリオを生成するためのシナリオ情報を抽出するシナリオ情報抽出部(124)と、
特定された前記メッセージの種別と、前記シナリオ情報とに基づいて、前記シナリオを生成するシナリオ生成部(15)と、
を備えたことを特徴とするシナリオ生成装置。
【請求項2】
前記シナリオ情報は、前記擬似基地局が通信シーケンスをシミュレーションするためのパラメータの設定値を含み、
前記パラメータとそのパラメータの設定値とを関連付けてあらかじめ記憶しているパラメータテーブルを備えたテーブル記憶部(14)と、
前記シナリオ情報抽出部によって抽出された前記パラメータの設定値、前記パラメータテーブルに記憶されたパラメータの設定値の順で優先度を付け、優先度の高い設定値を前記パラメータの設定値として決定するパラメータ決定部(13)と、
を備え、
前記シナリオ生成部は、特定された前記メッセージの種別と、決定された当該パラメータの設定値とに基づいて、前記シナリオを生成することを特徴とする請求項1に記載のシナリオ生成装置。
【請求項3】
前記パラメータ決定部は、操作者により入力された前記パラメータの設定値を受けて、前記優先度に替えて、前記シナリオ情報抽出部によって抽出された前記パラメータの設定値、前記操作者により入力された前記パラメータの設定値、前記パラメータテーブルに記憶されたパラメータの設定値の順で優先度を付け、前記擬似基地局が通信シーケンスをシミュレーションするためのパラメータについて、最も優先度の高い設定値を前記シナリオ情報として出力することを特徴とする請求項2に記載のシナリオ生成装置。
【請求項4】
表示部を備え、
前記シナリオ生成部は、前記表示部に前記シナリオを表示させ、操作者により入力された前記シナリオの編集内容を示す情報を受けて、表示された前記シナリオに当該情報を反映させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のシナリオ生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のシナリオ生成装置と、
前記シナリオに基づいて前記移動体通信端末との間で通信を行って、当該移動体通信端末の試験を行う疑似基地局と、
を備えたことを特徴とする試験システム(10)。
【請求項6】
基地局(2)から移動体通信端末(3)に対して通信に係るパラメータを送信する通信シーケンスを含んだ通信プロトコルを用いて前記基地局と前記移動体通信端末との間で行う通信の通信シーケンスが記録されたログ情報(D1)に基づき、前記基地局を模擬した擬似基地局(5)で前記通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオ(D2)を生成するシナリオ生成方法であって、
前記ログ情報に記録された通信シーケンスを構成する各メッセージに含まれる情報を基に前記メッセージの種別を特定し、前記種別を単一のメッセージにより特定できない場合には、当該メッセージに付随する他のメッセージに含まれる情報を基に前記種別を特定する種別特定ステップと、
特定された前記種別に応じて、前記メッセージの中から前記擬似基地局が通信シーケンスをシミュレーションするためのシナリオを生成するためのシナリオ情報を抽出するパラメータ抽出ステップと、
特定された前記メッセージの種別と、前記シナリオ情報とに基づいて、前記擬似基地局で動作させるためのシナリオを生成するシナリオ生成ステップと、
を備えたことを特徴とするシナリオ生成方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−62751(P2013−62751A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201252(P2011−201252)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】