説明

シノビオリン活性調節作用の検出方法

本発明は、プロリン4水酸化酵素の活性を調節する作用を評価するための方法を提供する。また、本発明は、その評価方法を利用するスクリーニング方法を提供する。さらに本発明は、線維症または関節リウマチの治療または予防に有用な化合物のスクリーニング方法を提供する。 本発明は、シノビオリンによるプロリン4水酸化酵素αサブユニット(P4HA1)のユビキチン化活性を調節する作用を検出するための方法に関する。更に本発明は、この方法に基づくシノビオリンのP4HA1のユビキチン化活性を調節する作用を有する物質のスクリーニング方法に関する。このスクリーニングによって見出される化合物は、プロリン4水酸化酵素の活性異常によってもたらされる線維症や関節リウマチなどの疾患の治療や予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、シノビオリン活性を調節する作用を検出するための方法に関する。
さらに本発明は、線維症やリウマチの治療または予防に有用な化合物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
シノビオリンは、リウマチ患者由来滑膜細胞に存在する膜蛋白質として発見された蛋白質である(WO 02/052007参照)。遺伝子改変動物を用いた研究により、骨・関節の発生および関節症の発症に同因子が直接関与することが明らかとなったことから、シノビオリンは正常な骨形成または四肢の発達に貢献する活性を有する蛋白質と考えられる。また、蛋白質構造予測システムにより、シノビオリンにRING fingerモチーフの存在が示された。このモチーフは蛋白質の分解に関わるE3ユビキチン蛋白質リガーゼに共通に存在することが知られている。実際に、シノビオリンがRING finger型E3ユビキチン蛋白質リガーゼの特徴である自己ユビキチン化活性を有することが証明されている(WO 02/052007参照)。
骨・関節の発生および関節症におけるシノビオリンの機能、すなわちシノビオリンはどのような細胞内シグナル伝達経路に関わっているかを解明するには、シノビオリンと結合する因子の探索が有力な手法のひとつである。特に、シノビオリンの基質蛋白質を同定することは、シノビオリンが関与する細胞内シグナル伝達経路を明らかにするための重要な課題である。
シノビオリンと結合する蛋白質、その中でもシノビオリンの基質蛋白質を同定することは、骨・関節の発生および関節症におけるシノビオリンの機能を解明し、新たな関節症の診断および治療法の開発に有用である。しかしながら、シノビオリンの基質は同定されていない。したがって、シノビオリンとその基質との間の相互作用に影響を与える物質も明らかにされていない。
一方、コラーゲンは以下のような特徴を有する重要な生体構成成分である。
結合組織の主成分である、
三重らせん構造のドメインを1つ以上持つ、
超分子集合体を形成する、そして
細胞外マトリックスを構成する
コラーゲンの主要な役割のひとつは組織の構造形成と維持、さらに細胞の足場としての働きである。またコラーゲンは、細胞の移動、分化、増殖、代謝機能にも影響を与えている。コラーゲンの産生細胞は主として線維芽細胞である。まず、プレプロコラーゲンが細胞内で合成され、粗面小胞体でプロコラーゲンとなる。プロコラーゲンのN末端およびC末端にはプロペプチドが結合している。プロペプチドは、細胞から分泌される直前にプロコラーゲンペプチダーゼによって切り離されて、プロコラーゲンがトロポコラーゲンとなる。分泌されたトロポコラーゲンは膠原線維の基本成分である。分泌後のトロポコラーゲンが相互に架橋されて、コラーゲン線維束が形成される。
プロリン4水酸化酵素は、コラーゲン合成に必須の酵素である。プロリン4水酸化酵素の構造は公知である。すなわちプロリン4水酸化酵素は、それぞれ2つのαサブユニットとβサブユニットが会合して構成された4量体構造を有する。αサブユニットがプロリンの水酸化反応を触媒する作用を、そしてβサブユニットはジスルフィドイソメラーゼ(disulfide isomerase)活性を有していると考えられている。プロリン4水酸化酵素を構成するαサブユニットを、P4HA1と記載する。プロリン4水酸化酵素は、プロコラーゲンの−X−Pro−Gly配列上のプロリン残基をヒドロキシル化することによって、安定なコラーゲン三重らせん構造を形成させる(Pihlajanicmi,T.,et.al.,J.Hepatol.,1991,13,S2−7参照)。
更にプロリン4水酸化酵素は、ヒドロキシル化されていないプロコラーゲンに結合することによって、その小胞体からの分泌を防ぐ作用を持つことも報告された(Walmsley,A.R.,et.al.,J.Biolog.Chem.,1999,274(21),p14884−14892参照)。ヒドロキシル化されていないプロコラーゲンは、未成熟なプロコラーゲンである。したがって、プロリン4水酸化酵素は、生体内におけるコラーゲンの品質管理を担当していると考えられる。
コラーゲンは生体の重要な構成要素であるとともに、線維症(fibrosis)などの病的な生体反応の原因にもなっている。たとえば、肺、肝、あるいは腎などの組織におけるコラーゲンの蓄積は、各臓器の線維症の原因となる。リウマチや変形性骨関節症の関節においては、軟骨や滑膜細胞のコラーゲンを含む細胞外マトリックスの異常が見られることが知られている(桑名正隆、Molecular Medicine,2001,Vol.38(8),p900−907参照)。
したがって、コラーゲン産生の制御によって、これらの疾患を治療できる可能性がある。たとえばストレス蛋白質HSP47(heat shock protein 47)の活性阻害によってコラーゲンの産生を抑制することで、これらの疾患の治療が可能なことが報告されている(Kivirikko KI.Ann Med.1993 Apr;25(2):113−26.参照)。プロリン4水酸化酵素、およびこの酵素によるコラーゲン産生は、線維症及び関節炎の診断や治療法の開発における重要な標的となるはずである。しかし、プロリン4水酸化酵素の活性調節機構は明らかにされていない。
関節リウマチ(以下、RAあるいはリウマチと記載することがある)は、関節の滑膜組織に異常な増殖が見られる全身性の慢性炎症性疾患である。滑膜細胞(synovial cell)は、関節の滑膜で1−6層の上皮様層を形成する繊維芽細胞様の細胞で、滑液にプロテオグリカンやヒアルロン酸を供給するものとされている。RA患者の関節では、滑膜組織の増殖、その結果として引き起こされる多層構造、滑膜細胞の他の組織への浸潤といったような症状が観察される。またRA患者の血清中には、自己のIgGのFc領域に対する自己抗体が存在することから、自己免疫疾患のひとつとして考えられているがその病因については未だに解明されていない。
【発明の開示】
本発明は、プロリン4水酸化酵素の活性調節機構を明らかにすることを課題とする。また本発明は、プロリン4水酸化酵素の活性を調節する作用を評価するための方法の提供を課題とする。あるいは本発明は、その評価方法を利用して、当該作用を有する化合物をスクリーニングするための方法の提供を課題とする。さらに本発明は、関節リウマチまたは線維症の治療または予防に有用な化合物をスクリーニングするための方法の提供を課題とする。
本発明者らは、シノビオリンと結合する蛋白質を同定するため、酵母ツーハイブリッド法を用いてスクリーニングを行った。シノビオリンをベイトとして用い、ヒト軟骨由来cDNAライブラリーを酵母ツーハイブリッドシステム(クロンテック社MATCHMAKERツーハイブリッドシステム)によってスクリーニングした。その結果、プロリン4水酸化酵素αサブユニット(Prolyl 4−Hydroxylase α subunit;P4HA1)を得た。次に、GSTプルダウン解析により、P4HA1とシノビオリンの結合を確認した。
更に本発明者らは、P4HA1がシノビオリンのユビキチンリガーゼ活性によって、ユビキチン化されることを明らかにした。すなわちP4HA1は、シノビオリンユビキチンリガーゼ(E3)の基質ポリペプチドであることが確認された。シノビオリンは、P4HA1のユビキチン化によって、プロテアソーム(proteasome)によるP4HA1の分解を誘導する。プロリン4水酸化酵素は、コラーゲン合成における重要な酵素(key enzyme)の一つである。したがって、シノビオリンが、プロリン4水酸化酵素活性の制御を介して、個体の発達や骨・関節の発生および関節症の発症に関わる可能性が考えられた。
これらの知見に基づいて、本発明者らは、シノビオリンとP4HA1の相互作用に干渉する作用を評価するための方法を確立した。またその方法を利用して、当該作用を有する物質のスクリーニングが可能であることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下に記載の被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法に関する。あるいは本発明は、当該方法を利用してシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を有する化合物のスクリーニング方法に関する。
〔1〕以下の工程を含む、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルと違うときに、被験化合物のシノビオリンによる基質のユビキチン化作用を調節する活性が検出される工程
〔2〕以下の成分の共存により、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項1に記載の方法。
i)ユビキチン活性化酵素
ii)ユビキチン転移酵素、
iii)ユビキチン、および
iv)アデノシン3リン酸
〔3〕シノビオリンまたはそのホモログと基質とを発現する細胞内で基質をユビキチン化することによって、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項1に記載の方法。
〔4〕基質のユビキチン化のレベルを、以下のいずれかのレベルを指標として測定する請求項1に記載の方法。
A)ユビキチン化された基質のレベル
B)ユビキチン化されなかった基質のレベル、および
C)プロリン4水酸化酵素αサブユニットの生物学的活性のレベル
〔5〕プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項1に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド
〔6〕シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項1に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド
〔7〕以下の工程を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を有する被験化合物のスクリーニング方法。
a)請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の方法によって、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する工程、および
b)対照と比較して、基質のユビキチン化のレベルに差がある被験化合物を選択する工程
〔8〕請求項7に記載の方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、シノビオリンによる基質のユビキチン化の調節剤。
〔9〕以下の要素を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出するためのキット。
(1)シノビオリンまたはそのホモログ、および
(2)プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログ
〔10〕更に以下の要素を含む、請求項9に記載のキット。
(3)ユビキチン活性化酵素
(4)ユビキチン転移酵素、
(5)ユビキチン、および
(6)アデノシン3リン酸
〔11〕シノビオリンまたはそのホモログ、およびプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログを発現する細胞と、プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログのユビキチン化のレベルを測定するための手段を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出するためのキット。
〔12〕以下の工程を含む、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルと違うときに、被験化合物のシノビオリンによる基質のユビキチン化作用を調節する活性が検出される工程
〔13〕シノビオリンと基質のいずれかが固相に結合されているか、または固相に結合可能な標識を有している請求項12に記載の方法。
〔14〕プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項12に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンと結合することができるポリペプチド
〔15〕シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項12に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド
〔16〕以下の工程を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を有する被験化合物のスクリーニング方法。
a)請求項12〜請求項15のいずれか一項に記載の方法によって、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する工程、および
b)対照と比較して、シノビオリンと基質の結合のレベルに差がある被験化合物を選択する工程
〔17〕請求項16に記載の方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、シノビオリンによる基質のユビキチン化の調節剤。
また、本発明者らは、線維症の治療または予防に有用な化合物のスクリーニングが可能であることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下に記載のスクリーニング方法、そのためのキット、そしてこの方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する線維症の治療および/または予防のための医薬組成物に関する。
〔18〕以下の工程を含む線維症を治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルよりも低い被験化合物を線維症を治療または予防するための化合物として選択する工程
〔19〕以下の成分の共存により、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項18に記載の方法。
i)ユビキチン活性化酵素
ii)ユビキチン転移酵素、
iii)ユビキチン、および
iv)アデノシン3リン酸
〔20〕シノビオリンまたはそのホモログと基質とを発現する細胞内で基質をユビキチン化することによって、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項18に記載の方法。
〔21〕基質のユビキチン化のレベルを、以下のいずれかのレベルを指標として測定する請求項18に記載の方法。
A)ユビキチン化された基質のレベル
B)ユビキチン化されなかった基質のレベル、および
C)プロリン4水酸化酵素αサブユニットの生物学的活性のレベル
〔22〕プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項18に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド
〔23〕シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項18に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド
〔24〕請求項18〜請求項23のいずれか一項に記載の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、線維症の治療および/または予防のための医薬組成物。
〔25〕以下の要素を含む線維症を治療または予防するための化合物のスクリーニングのためのキット。
(1)シノビオリンまたはそのホモログ、および
(2)プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログ
〔26〕更に以下の要素を含む、請求項25に記載のキット。
(3)ユビキチン活性化酵素、
(4)ユビキチン転移酵素、
(5)ユビキチン、および
(6)アデノシン3リン酸
〔27〕シノビオリンまたはそのホモログ、およびプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログを発現する細胞と、プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログのユビキチン化のレベルを測定するための手段を含む、線維症を治療または予防するための被験化合物のスクリーニングのためのキット。
〔28〕以下の工程を含む、線維症を治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルよりも低い被験化合物を線維症を治療または予防するための化合物として選択する工程
〔29〕シノビオリンと基質のいずれかが固相に結合されているか、または固相に結合可能な標識を有している請求項28に記載の方法。
〔30〕プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項28に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンと結合することができるポリペプチド
〔31〕シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項28に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド
〔32〕請求項28〜請求項31に記載の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、線維症の治療および/または予防のための医薬組成物。
また、本発明者らは、関節リウマチの治療または予防に有用な化合物のスクリーニングが可能であることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下に記載のスクリーニング方法、そのためのキット、そしてこの方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する慢性関節リウマチの治療および/または予防のための医薬組成物に関する。
〔33〕以下の工程を含む、関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルよりも低い被験化合物を関節リウマチを治療または予防するための化合物として選択する工程
〔34〕以下の成分の共存により、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項33に記載の方法。
i)ユビキチン活性化酵素
ii)ユビキチン転移酵素、
iii)ユビキチン、および
iv)アデノシン3リン酸
〔35〕シノビオリンまたはそのホモログと基質とを発現する細胞内で基質をユビキチン化することによって、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項33に記載の方法。
〔36〕基質のユビキチン化のレベルを、以下のいずれかのレベルを指標として測定する請求項33に記載の方法。
A)ユビキチン化された基質のレベル
B)ユビキチン化されなかった基質のレベル、および
C)プロリン4水酸化酵素αサブユニットの生物学的活性のレベル
〔37〕プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項33に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド
〔38〕シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項33に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド
〔39〕請求項33〜請求項38のいずれか一項に記載の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、関節リウマチの治療および/または予防のための医薬組成物。
〔40〕以下の要素を含む関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニングのためのキット。
(1)シノビオリンまたはそのホモログ、および
(2)プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログ
〔41〕更に以下の要素を含む、請求項39に記載のキット。
(3)ユビキチン活性化酵素、
(4)ユビキチン転移酵素、
(5)ユビキチン、および
(6)アデノシン3リン酸
〔42〕シノビオリンまたはそのホモログ、およびプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログを発現する細胞と、プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログのユビキチン化のレベルを測定するための手段を含む、関節リウマチを治療または予防するための被験化合物のスクリーニングのためのキット。
〔43〕以下の工程を含む、関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルよりも低い被験化合物を関節リウマチを治療または予防するための化合物として選択する工程
〔44〕シノビオリンと基質のいずれかが固相に結合されているか、または固相に結合可能な標識を有している請求項43に記載の方法。
〔45〕プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項43に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンと結合することができるポリペプチド
〔46〕シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項43に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド
〔47〕請求項43〜46に記載の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、関節リウマチの治療および/または予防のための医薬組成物。
また、本発明者らは、本願発明の方法を用いて被験化合物のスクリーニングを行い、配列番号:5に示されるポリペプチドを単離した。すなわち本発明は、以下に記載のポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および該ポリペプチドを有効成分として含有する医薬組成物に関する。
〔48〕配列番号:5に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
〔49〕配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、請求項1に記載の方法において該ポリペプチドを被験化合物として用いたときに、基質のユビキチン化のレベルが該ポリペプチド不存在下において測定されたユビキチン化のレベル結合のレベルよりも低い、ポリペプチド。
〔50〕配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、請求項12に記載の方法において該ポリペプチドを被験化合物として用いたときに、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが該ポリペプチド不存在下において測定された結合のレベルよりも低い、ポリペプチド。
〔51〕請求項48〜50のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
〔52〕請求項48〜50のいずれか一項に記載のポリペプチドを有効成分として含有する、線維症の治療および/または予防のための医薬組成物。
〔53〕請求項48〜50のいずれか一項に記載のポリペプチドを有効成分として含有する、関節リウマチの治療および/または予防のための医薬組成物。
本発明は、プロリン4水酸化酵素の活性が、シノビオリンによるプロリン水酸化酵素αサブユニットのユビキチン化によって制御されているという新規な知見に基いている。すなわち本発明は、以下の工程を含む、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法であって、基質がP4HA1またはそのホモログである方法を提供する。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルと違うときに、被験化合物のシノビオリンによる基質のユビキチン化作用を調節する活性が検出される工程
ユビキチン化とは、少なくとも1つのユビキチンが結合されることを言う。またユビキチン化のレベルとは、結合したユビキチンの数、並びにユビキチンが結合した場所の数のいずれか、または両方を言う。すなわち、あるポリペプチドの特定の部分に結合したユビキチンの数を測定することによって、ユビキチン化のレベルを評価することができる。更に、あるポリペプチドの複数の領域がユビキチン化される場合には、ユビキチン化された領域の数を測定することによって、ユビキチン化のレベルを評価することもできる。
ユビキチン化のレベルを測定する方法は公知である。たとえば、ユビキチンに結合する親和性物質を利用して、ユビキチン化のレベルを測定することができる。親和性物質として、抗ユビキチン抗体を利用することができる。たとえばユビキチンを特異的に認識して結合するモノクローナル抗体が市販されている。ユビキチンに対する親和性物質を標識しておけば、基質に結合した標識物質のレベルに基いて、ユビキチン化のレベルを明らかにすることができる。あるいは予め標識したユビキチンを与え、基質ポリペプチドに結合したユビキチンの量を標識物質のレベルに基いて測定することもできる。
抗体やユビキチンの標識には、一般に用いられる標識技術を応用することができる。具体的には、放射活性物質、酵素活性物質、蛍光活性物質、あるいは発光物質などを標識として利用することができる。また、標識物質を間接的に抗体やユビキチンに結合させるために、結合性のタグを利用することもできる。たとえば、ビオチン化した抗体やユビキチンには、アビジン化した標識物質を結合することができる。更に、結合性のタグを導入したユビキチンを利用し、ユビキチン化された基質を捕捉することもできる。捕捉された基質ポリペプチドのレベルを測定することによって、ユビキチン化のレベルを評価することができる。この方法においては、基質ポリペプチドに対する標識抗体を利用して、ユビキチン化のレベルが測定される。ユビキチン化のレベルの測定を目的として、以下のような標識ユビキチンが市販されている。
フルオレセイン結合ユビキチン:蛍光物質であるフルオレセインを結合したユビキチン。蛍光強度を指標としてユビキチン化のレベルを測定することができる。
ビオチン化ユビキチン:結合性リガンドであるビオチンで標識されたユビキチン。ビオチン化ユビキチンでユビキチン化された基質ポリペプチドは、アビジンカラムに捕捉することができる。あるいはアビジン化された酵素や蛍光物質などを利用して、ユビキチン化のレベルを測定することもできる。
(His)6−ユビキチン:ヒスチジンタグで標識したユビキチン。ヒスチジンタグはニッケルカラムに捕捉することができる。つまり、ユビキチン化された基質をユビキチンを介してカラムに捕捉することができる。あるいは、抗ヒスチジンタグ抗体を利用して間接的に標識することもできる。
ユビキチン化のレベルの測定に当たっては、基質を固相化するのが有利である。たとえば、予め基質を固相に結合させておくことができる。具体的には、ビーズや反応容器の内壁に、化学的に基質を共有結合させる、あるいは物理吸着させることができる。ビーズや反応容器には、ポリスチレンなどが利用できる。基質の化学的な結合のために、アミノ基やカルボキシル基などの官能基を導入したポリスチレン誘導体も公知である。
あるいは、先に述べた結合親和性物質で標識したユビキチンを用いて、ユビキチン化された基質を、ユビキチンを介して間接的に捕捉することもできる。逆に、基質に対する抗体や、結合性親和性物質を導入した基質を、固相に捕捉することもできる。いずれにせよ、固相化された基質は、固相に結合しなかった成分と分離され、続いてユビキチン化のレベルが測定される。ユビキチンや基質自身が標識されていない場合には、ユビキチンや基質に対する親和性物質を利用して標識物質を結合させる。たとえばユビキチンに対する抗体が利用される。最終的に、固相上に捕捉された標識(または結合されなかった標識)のレベルを測定して、ユビキチン化のレベルを決定することができる。このようなユビキチン化のレベルの測定の結果、最終的に、ユビキチン化された基質の量を明らかにすることができる。あるいは、ユビキチン化のレベルの測定によって、ユビキチン化されなかった基質の量を明らかにすることもできる。
加えて、P4HA1のユビキチン化によって、プロリン4水酸化酵素の生物学的活性が制御されていることが本発明によって明らかにされた。したがって、プロリン4水酸化酵素の生物学的活性のレベルを指標として、ユビキチン化のレベルを測定することもできる。プロリン4水酸化酵素の生物学的活性のレベルは、たとえばトリチウム放出アッセイ(Tritium release assay;Methods Enzymol.Vol.82,pp.246−259,1982)などの方法によって測定することができる。
シノビオリン(またはそのホモログ)、基質、および被験物質を接触させる順序は任意である。すなわち本発明は、前記工程a)、a’)、およびa’’)に記載したいずれかの順序でシノビオリン(またはそのホモログ)、基質、および被験物質を接触させる工程を含むことができる。被験物質の存在下で三者をインキュベートする場合(a)には、シノビオリン(またはそのホモログ)によるユビキチン化反応に与える被験物質の影響を評価することができる。あるいは、シノビオリン(またはそのホモログ)および基質のいずれかに被験物質を接触後にユビキチン化が可能な条件を与えることもできる(a’)。この場合には、シノビオリンのユビキチンリガーゼ活性に与える影響、または基質のユビキチン化される機能のいずれかに対する被験物質の影響が評価される。更に、ユビキチン化が可能な条件を与えた後に被験物質を接触させる(a’’)ことによって、ユビキチン化された基質に対する被験物質の影響を評価することができる。
本発明においては、P4HA1またはそのホモログが基質として利用される。P4HA1は、4量体構造のプロリン4水酸化酵素を構成するサブユニットの1つである。αサブユニットは、プロリンの水酸化反応を触媒する作用を有していると考えられている。一方そのホモログとは、P4HA1との構造的な類似性を有し、かつシノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチドである。本発明におけるP4HA1またはそのホモログとして、たとえば以下の(a)−(e)に示すポリペプチドを用いることができる。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド
配列番号:1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドに対して変異を含む塩基配列で構成されるポリヌクレオチドは、当業者によって公知の方法で単離することができる(実験医学別冊・遺伝子工学ハンドブック,pp246−251、羊土社、1991年発行)。たとえば類似する遺伝子を含むライブラリーを対象に、配列番号:1に示す塩基配列(またはその断片)をプローブとしてスクリーニングすれば、相同性の高い塩基配列を持ったDNAをクローニングすることができる。このようなライブラリーとしては、配列番号:1の塩基配列に対してランダムに変異を入れたもの、ヒト以外の種に由来するcDNAライブラリー等を示すことができる。
与えられた塩基配列に対してランダムに変異を加える方法としては、たとえばDNAの亜硝酸処理による塩基対の置換が知られている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,79:7258−7260,1982)。この方法では、変異を導入したいセグメントを亜硝酸処理することにより、特定のセグメント内にランダムに塩基対の置換を導入することができる。あるいはまた、目的とする変異を任意の場所にもたらす技術としてはギャップド デュプレックス法(gapped duplex法)等がある(Methods Enzymol.,154:350−367,1987)。変異を導入すべき遺伝子をクローニングした環状2本鎖のベクターを1本鎖とし、目的とする部位に変異を持つ合成オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせる。制限酵素により切断して線状化させたベクター由来の相補1本鎖DNAを、前記環状1本鎖ベクターにアニールさせ、前記合成ヌクレオチドとの間のギャップをDNAポリメラーゼで充填し、更にライゲーションすることにより完全な2本鎖環状ベクターとする。
改変されるアミノ酸の数は、典型的には50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、1アミノ酸)であり、数個のアミノ酸である。アミノ酸を人為的に置換する場合、性質の似たアミノ酸に置換すれば、もとのタンパク質の活性が維持されやすいと考えられる。本発明のタンパク質には、上記アミノ酸置換において保存的置換が加えられたポリペプチドであって、P4HA1(配列番号:2)と機能的に同等なポリペプチドが含まれる。保存的置換は、タンパク質の活性に重要なドメインのアミノ酸を置換する場合などにおいて重要であると考えられる。このようなアミノ酸の保存的置換は、当業者にはよく知られている。
保存的置換に相当するアミノ酸のグループとしては、例えば、塩基性アミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性アミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性アミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐アミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族アミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)などが挙げられる。
また、非保存的置換によりタンパク質の活性などをより上昇(例えば恒常的活性化型タンパク質などを含む)または下降(例えばドミナントネガティブなどを含む)させることも考えられる。
配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドは、人為的に合成された、または天然に存在するポリペプチドを含む。ここで「複数のアミノ酸」とは、典型的には50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、1アミノ酸)であり、数個のアミノ酸である。一般に真核生物の遺伝子は、インターフェロン遺伝子等で知られているように、多型現象(polymorphism)を有する。この多型現象によって生じた塩基配列の変化によって、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加される場合がある。このように自然に存在するポリペプチドであって、かつ配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドは、本発明に利用することができる。
あるいは多型現象によって塩基配列に変化はあっても、アミノ酸配列が変わらない場合もある。このような塩基配列の変異は、サイレント変異と呼ばれる。サイレント変異を有する塩基配列からなる遺伝子も、本発明に利用することができる。なおここで言う多型現象とは、集団内において、ある遺伝子が個体間で異なる塩基配列を有することを言う。多型現象は、異なる遺伝子が見出される割合とは無関係である。
この他、P4HA1またはそのホモログであるタンパク質を得る方法として、ハイブリダイゼーションを利用する方法を挙げることができる。すなわち、配列番号:1に示すようなP4HA1をコードするポリヌクレオチド、あるいはその断片をプローブとし、これとハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを単離するのである。ハイブリダイゼーションをストリンジェントな条件下で実施すれば、塩基配列としては相同性の高いポリヌクレオチドが選択され、その結果として単離されるタンパク質にはP4HA1またはそのホモログであるタンパク質が含まれる可能性が高まる。相同性の高い塩基配列とは、たとえば70%以上、望ましくは90%以上の同一性を示すことができる。
なおストリンジェントな条件とは、具体的には例えば6×SSC、40%ホルムアミド、25℃でのハイブリダイゼーションと、1×SSC、55℃での洗浄といった条件を示すことができる。ストリンジェンシーは、塩濃度、ホルムアミドの濃度、あるいは温度といった条件に左右されるが、当業者であればこれらの条件を必要なストリンジェンシーを得られるように設定することは自明である。
ハイブリダイゼーションを利用することによって、たとえばヒト以外の動物種におけるP4HA1のホモログをコードするポリヌクレオチドの単離が可能である。ヒト以外の動物種、すなわちマウス、ラット、ウサギ、ブタ、あるいはヤギ等の動物種から得ることができるポリヌクレオチドがコードするP4HA1のホモログは、本発明における機能的に同等なタンパク質を構成する。
本発明によるポリヌクレオチドは、その由来を問わない。すなわち、cDNA、ゲノムDNAのほか、合成によって得ることもできる。また、本発明のタンパク質をコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。
ヒトP4HA1(配列番号:2)に変異を導入して得たタンパク質や、上記のようなハイブリダイゼーション技術等を利用して単離されるポリヌクレオチドがコードするタンパク質は、通常、ヒトP4HA1(配列番号:2)とアミノ酸配列において高い相同性を有する。高い相同性とは、少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、95%以上)の配列の同一性を指す。塩基配列やアミノ酸配列の同一性は、インターネットを利用したホモロジー検索サイトを利用して行うことができる[例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)において、FASTA、BLAST、PSI−BLAST、およびSSEARCH等の相同性検索が利用できる[例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)のウェブサイトの相同性検索(Search and Analysis)のページ;http://www.ddbj.nig.ac.jp/E−mail/homology−j.html]。また、National Center for Biotechnology Information(NCBI)において、BLASTを用いた検索を行うことができる(例えばNCBIのホームページのウェブサイトのBLASTのページ;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/;Altschul,S.F.et al.,J.Mol.Biol.,1990,215(3):403−10;Altschul,S.F.& Gish,W.,Meth.Enzymol.,1996,266:460−480:Altschul,S.F.et al.,Nucleic Acids Res.,1997,25:3389−3402)]
本発明においては、シノビオリンまたはそのホモログがユビキチンリガーゼ(E3)として利用される。シノビオリンは、RING fingerモチーフを有するポリペプチドである。そのアミノ酸配列(配列番号:4)と、当該アミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号:3)は明らかにされている。一方そのホモログとは、シノビオリンとの構造的な類似性を有し、かつP4HA1をユビキチン化することができるポリペプチドである。本発明におけるシノビオリンまたはそのホモログとして、たとえば以下の(A)−(E)に示すポリペプチドを用いることができる。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド
既知のアミノ酸配列情報、および塩基配列情報に基いて、機能的に同等なポリペプチドを得るための方法は、既に述べた。また、ホモログとして望ましい構造的な条件も先に述べたとおりである。このようにして得ることができるホモログは、シノビオリンと同様に本発明に用いることができる。たとえばWO 02/052007には、各種のシノビオリンホモログが開示されている。これらのホモログは、P4HA1をユビキチン化する作用を有する限り、本発明の方法に用いることができる。
配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドは、人為的に合成された、または天然に存在するポリペプチドを含む。ここで「複数のアミノ酸」とは、典型的には50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、1アミノ酸)であり、数個のアミノ酸である。一般に真核生物の遺伝子は、インターフェロン遺伝子等で知られているように、多型現象(polymorphism)を有する。この多型現象によって生じた塩基配列の変化によって、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加される場合がある。このように自然に存在する蛋白質であって、かつ配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質と機能的に同等な蛋白質は、本発明に利用することができる。
あるいは多型現象によって塩基配列に変化はあっても、アミノ酸配列が変わらない場合もある。このような塩基配列の変異は、サイレント変異と呼ばれる。サイレント変異を有する塩基配列からなる遺伝子も、本発明に含まれる。なおここで言う多型現象とは、集団内において、ある遺伝子が個体間で異なる塩基配列を有することを言う。多型現象は、異なる遺伝子が見出される割合とは無関係である。
この他、シノビオリンまたはそのホモログであるタンパク質を得る方法として、ハイブリダイゼーションを利用する方法を挙げることができる。すなわち、配列番号:3に示すような本発明によるシノビオリンをコードするポリヌクレオチド、あるいはその断片をプローブとし、これとハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを単離するのである。ハイブリダイゼーションをストリンジェントな条件下で実施すれば、塩基配列としては相同性の高いポリヌクレオチドが選択され、その結果として単離されるタンパク質にはシノビオリンまたはそのホモログであるタンパク質が含まれる可能性が高まる。相同性の高い塩基配列とは、たとえば70%以上、望ましくは90%以上の同一性を示すことができる。
なおストリンジェントな条件とは、具体的には例えば6×SSC、40%ホルムアミド、25℃でのハイブリダイゼーションと、1×SSC、55℃での洗浄といった条件を示すことができる。ストリンジェンシーは、塩濃度、ホルムアミドの濃度、あるいは温度といった条件に左右されるが、当業者であればこれらの条件を必要なストリンジェンシーを得られるように設定することは自明である。
ハイブリダイゼーションを利用することによって、たとえばヒト以外の動物種におけるシノビオリンのホモログをコードするポリヌクレオチドの単離が可能である。ヒト以外の動物種、すなわちマウス、ラット、ウサギ、ブタ、あるいはヤギ等の動物種から得ることができるポリヌクレオチドがコードするシノビオリンのホモログは、本発明における機能的に同等なタンパク質を構成する。
本発明によるポリヌクレオチドは、その由来を問わない。すなわち、cDNA、ゲノムDNAのほか、合成によって得ることもできる。また、本発明のタンパク質をコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。
ヒトシノビオリン(配列番号:4)に変異を導入して得たタンパク質や、上記のようなハイブリダイゼーション技術等を利用して単離されるポリヌクレオチドがコードするタンパク質は、通常、ヒトシノビオリン(配列番号:4)とアミノ酸配列において高い相同性を有する。高い相同性とは、少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上(例えば、95%以上)の配列の同一性を指す。塩基配列やアミノ酸配列の同一性は、インターネットを利用したホモロジー検索サイトを利用して行うことができる[例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)において、FASTA、BLAST、PSI−BLAST、およびSSEARCH等の相同性検索が利用できる[例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)のウェブサイトの相同性検索(Search and Analysis)のページ;http://www.ddbj.nig.ac.jp/E−mail/homology−j.html]。また、National Center for Biotechnology Information(NCBI)において、BLASTを用いた検索を行うことができる(例えばNCBIのホームページのウェブサイトのBLASTのページ;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/;Altschul,S.F.et al.,J.Mol.Biol.,1990,215(3):403−10;Altschul,S.F.& Gish,W.,Meth.Enzymol.,1996,266:460−480;Altschul,S.F.et al.,Nucleic Acids Res.,1997,25:3389−3402)]
実際に本発明者らは、WO 02/052007において、シノビオリンを構成するアミノ酸配列に対して、1アミノ酸を欠失したクローンを明らかにした。このようなアミノ酸配列に変異を含む蛋白質は、本発明に必要な機能を有する限り、本発明におけるシノビオリンのホモログに含まれる。本発明者らが確認した1アミノ酸を欠失した変異体は、配列番号:3における1293−1295に相当するgcaを欠損している。その結果、配列番号:4における412位のAlaを欠損している。
本発明において、ある蛋白質がP4HA1をユビキチン化する作用を有することは、先に述べたユビキチン化が可能な条件において当該蛋白質と基質を接触させて、基質のユビキチン化を検出することによって確認することができる。
次に本発明において、基質またはそのホモログのユビキチン化が可能な条件下とは、シノビオリンによるP4HA1のユビキチン化が可能な条件をいう。このような条件は、インビトロで、あるいはインビボで構成することができる。たとえば以下の成分の共存により、基質のユビキチン化が可能な条件が与えられる。
(i)ユビキチン活性化酵素(E1)、
(ii)ユビキチン転移酵素(E2)、
(iii)ユビキチン、および
(iv)アデノシン3リン酸
一般に、生体内において、蛋白質のユビキチン化は、以下のようにして進行すると考えられている。まず蛋白質のユビキチン化には上記4つの成分に加えて、ユビキチン連結酵素(リガーゼ/E3)が必要である。ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン転移酵素(E2)、およびユビキチン連結酵素(リガーゼ/E3)は、ユビキチンシステムと呼ばれる複合酵素系を構成している。場合により、E2によって基質がユビキチン化される場合もあるが、P4HA1は、シノビオリン(E3)によってユビキチン化される。
ユビキチン活性化酵素(E1)は、ユビキチン転移酵素(E2)を活性化する。一方、ユビキチン連結酵素(リガーゼ/E3)は、基質蛋白質を認識して捕捉する。そして、活性化されたユビキチン転移酵素(E2)のユビキチンを用いて、捕捉した基質蛋白質をユビキチン化する。ユビキチンシステムにおいて、ユビキチン連結酵素(リガーゼ/E3)は、基質となる蛋白質を識別する重要な役割を有している。すなわち、ユビキチン連結酵素(リガーゼ/E3)による基質の選択は、基質蛋白質の運命の終わりを意味している。
ユビキチンシステムにおいて、基質を識別するユビキチン連結酵素(リガーゼ/E3)と基質の組み合わせは重要である。したがって、本発明における基質は、P4HA1またはそのホモログが用いられなければならない。他方、ユビキチン連結酵素(リガーゼ/E3)は、シノビオリンまたはそのホモログである必要がある。しかしその他の酵素は、基質のユビキチン化が可能な任意の酵素とすることができる。
たとえば実施例においては、ユビキチン活性化酵素(E1)には、酵母由来の酵素が用いられた。またユビキチン転移酵素(E2)には、ヒト由来のUbcH5cが用いられた。しかし本発明におけるユビキチン活性化酵素(E1)は、酵母由来の酵素に限定されない。たとえば、ラット由来のユビキチン活性化酵素(E1)を本発明に利用することができる。同様にユビキチン転移酵素(E2)も、ヒト由来の酵素に限定されない。E1あるいはE2は、天然の酵素であっても遺伝子組み換え体であっても良い。遺伝子組み換え体は、E1やE2がその活性を維持している限り、構造の改変が許容される。構造の改変には、アミノ酸配列の置換、欠失、挿入、あるいは付加が含まれる。たとえば以下に述べる実施例においては、ヒト由来のUbcH5cをGST融合蛋白質として大腸菌で発現させたE2を用いている。このような遺伝子組み換え体は、本発明におけるE2に含まれる。
上記成分(i)−(iv)を用いて、基質のシノビオリンによるユビキチン化が可能な条件を与えるとき、当業者は、ユビキチン化に必要なその他の条件をデザインすることができる。具体的には、インキュベーションのための条件や、各成分の使用量を、当業者は決定することができる。これらの条件を例示すれば、各成分はたとえば、以下のような濃度で利用される。
シノビオリン(E3): 500ng
GST−P4HA1: 800ng
(i)ユビキチン活性化酵素(E1): 60ng
(ii)ユビキチン転移酵素(E2): 0.3mg
(iii)ユビキチン(32P−標識 His−ユビキチン): 0.75μg
上記組成を以下の反応緩衝液に加えて反応液量を30μLとする。この混合液を37℃で1時間インキュベートすることによって、基質のユビキチン化が可能な条件とすることができる。各成分の濃度は、必用に応じて適宜調節することができる。たとえば上記の使用量の1/10から10倍の間で、調節することができる。
反応緩衝液の組成
50mM Tris−HCl 緩衝液 pH7.4
5mM MgCl
2mM NaF
10nM オカダ酸
2mM ATP(iv)
0.6mM ジチオスレイトール(DTT)
あるいは、本発明におけるユビキチン化が可能な条件は、インビボにおいて構成することもできる。すなわち、シノビオリンまたはそのホモログと基質とを発現する細胞内で基質をユビキチン化することによって、基質のユビキチン化が可能な条件を与えることができる。シノビオリンと基質とを発現する細胞としては、たとえば滑膜細胞を用いることができる。
あるいは、シノビオリン(またはそのホモログ)と基質とを遺伝子工学的に強制発現させた細胞によって、基質のユビキチン化が可能な条件を与えることもできる。外来遺伝子としてシノビオリン(またはそのホモログ)あるいは基質をコードする遺伝子を導入した細胞においては、誘導発現が可能な発現システムを利用することによって、シノビオリンや基質の発現時期を調節することができる。生きている細胞は、ユビキチンシステムを持っている。すなわち上記成分(i)−(iv)を細胞内に備えている。したがって、シノビオリンと基質とを存在させれば、本発明におけるユビキチン化が可能な条件を構築することができる。
シノビオリンとその基質であるP4HA1をコードする塩基配列は公知である。当業者は、公知の遺伝情報に基いて、その発現系をデザインすることができる。強制発現させるための宿主細胞には、動物細胞、昆虫細胞、あるいは酵母などを利用することができる。
細胞内でユビキチン化された基質は、細胞を破壊して回収することができる。更に、ユビキチンや基質に対する親和性物質を利用して、目的の基質を単離することができる。なお細胞内には、目的としている基質以外にもユビキチン化された蛋白質が多く存在する。したがって、細胞内で基質をユビキチン化した場合には、目的とする基質蛋白質のユビキチン化を特異的に測定することが望ましい。
そのためには、たとえば、基質蛋白質に対する抗体を使って基質蛋白質を特異的に捕捉する方法を利用することができる。あるいは基質蛋白質を、ヒスチジンタグなどのタグペプチドとの融合蛋白質として発現させ、タグをマーカーとして基質蛋白質を単離することもできる。こうして細胞から回収された基質蛋白質は、先に述べたような方法によってそのユビキチン化のレベルが測定される。
たとえば、タグ付きのユビキチン、並びにシノビオリン(またはそのホモログ)およびP4HA1(またはそのホモログ)の両方あるいはいずれかを共形質転換した細胞をユビキチン化が可能な条件として利用することができる。ユビキチン化のレベルは、タグに対する抗体を使った免疫沈降の後に、沈降分画のP4HA1のレベルを測定することによって、決定することができる。沈降分画のP4HA1のレベルは、P4HA1に対する抗体を利用して免疫学的に測定することができる。あるいは、免疫沈降の後に、沈降しなかったP4HA1のレベルを測定することによって、ユビキチン化されなかった基質を測定することもできる。
更に、タグ付きのユビキチンおよびシノビオリン(またはそのホモログ)を、P4HA1を発現している細胞に共形質転換することによって、ユビキチン化が可能な条件を構築することができる。抗P4HA1抗体で免疫沈降した後に、タグに対する抗体またはユビキチンに対する抗体を用いて、ユビキチン化のレベルを測定することができる。P4HA1を発現している細胞としては、たとえば滑膜細胞などを利用することができる。
また本発明は、以下の工程を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を有する被験化合物のスクリーニング方法に関する。
a)本発明によるシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法によって、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する工程、および
b)対照と比較して、基質のユビキチン化のレベルに差がある被験化合物を選択する工程
本発明のスクリーニング方法について、より具体的な方法を以下に例示する。
シノビオリンとP4HA1との相互作用に影響を与える物質の選択に当っては、最も一般的には、被験化合物の存在下で、酵素であるシノビオリンとその基質であるP4HA1とを反応させ、その反応量を測定すればよい。この場合、対照として、被験化合物の非存在下でシノビオリンとP4HA1とを反応させた結果とを比較すればより客観的な選択が可能である。
シノビオリンは、P4HA1をユビキチン化する反応を触媒する。従って、反応量の測定のためには、前記反応をユビキチンの存在下で行い、ユビキチン化されたP4HA1を測定すればよい。ユビキチン化されたP4HA1の量、すなわちP4HA1に結合したユビキチンの量を測定する方法としては、ユビキチンに対して特異的に結合する物質、例えばユビキチンに対する抗体を使用する方法が挙げられる。ユビキチンに対する抗体は、定法に従って得ることができる。例えば、免疫原であるユビキチンを免疫動物に注射し、そしてその動物の血液から血清を採取すればよい。免疫動物には、マウス、ラット、あるいはウサギなどを用いることができる。また、抗体としてモノクローナル抗体を利用することもできる。モノクローナル抗体を得るための方法は公知である。
さらに、ユビキチンの測定のためには、ユビキチン自体を標識し、それを検出又は測定することもできる。このための標識としては、常用の種々の標識を用いることができる。具体的には、放射能標識、酵素標識、ビオチン等が標識としてあげられる。例えば、ユビキチンを32Pにより標識した場合には、オートラジオグラフィーにより検出することができる。あるいは、シンチレーションカウンターで32Pの放射活性を測定することもできる。また、ビオチンにより標識した場合には、標識したアビジンにより検出することができる。
具体的な方法としては、例えば次のような方法を例示することができる。
方法1.
まずタグ付きP4HA1を調製し、これとE1、E2、ATP、シノビオリン、ユビキチン及び被験化合物をインキュベートし、P4HA1−ユビキチンの複合体を生成させる。次にP4HA1に付したタグに対する抗体を反応させ、免疫沈降によって、前記複合体と未反応のユビキチンとを分離する。更に前記複合体を形成したユビキチンを、ユビキチンに対する抗体により検出又は測定する。被験化合物を含まない反応系により、上記と同じ検出又は測定を行い、被験化合物の有無によるユビキチンの結合量を比較する。
方法2.
P4HA1、E1、E2、ATP、シノビオリン、[32P]標識ユビキチン、及び被験化合物を一緒にインキュベートし、P4HA1−ユビキチンの複合体を生成させる。次に電気泳動などにより、前記の複合体と未反応のユビキチンとを分離する。更に前記複合体を形成したユビキチンを、オートラジオグラフィーにより検出又は測定する。被験化合物を含まない反応系により、上記と同じ検出又は測定を行い、被験化合物の有無によるユビキチンの結合量を比較する。
なお、上記の方法において、32Pに代えて、ビオチン標識したユビキチンを利用することもできる。この場合、標識アビジンでユビキチンが検出または測定される。標識には、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、蛍光等を利用することができる。
方法3.
シノビオリン、E1、E2、ATP、液体シンチランを含むビーズに結合したP4HA1、[33P]または[32P]標識ユビキチン、及び被験化合物を反応させ、標識ユビキチンがP4HA1に結合したときに生じる励起光を液体シンチレーションカウンターにより検出又は測定する。被験化合物を含まない反応系により、上記と同じ検出又は測定を行い、被験化合物の有無によるユビキチンの結合量を比較する。
方法1〜3において、被験化合物がシノビオリンの活性、即ちシノビオリンとP4HA1との相互作用を阻害する物質(アンタゴニスト)である場合、被験化合物の存在下でのユビキチンの結合量が被験化合物の非存在下でのそれに比べて少なくなる。被験化合物がシノビオリンとP4HA1との相互作用を活性化する物質(アゴニスト)である場合、結果は逆になる。したがって、上記の実験の結果により、被験化合物がアゴニスト(活性化物質)であるかアンタゴニスト(阻害物質)であるかを決定することができる。
本発明者らによって、シノビオリンがP4HA1に結合し、ユビキチン化することが明らかにされた。したがって、両者の結合に干渉する作用を検出することによって、シノビオリンによるP4HA1のユビキチン化作用を調節する作用を評価することができる。すなわち本発明は、以下の工程を含む、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法であって、基質がP4HA1またはそのホモログである方法に関する。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルと違うときに、被験化合物のシノビオリンによる基質のユビキチン化作用を調節する活性が検出される工程
シノビオリン(またはそのホモログ)、基質、および被験物質を接触させる順序は任意である。すなわち本発明は、前記工程a)、a’)、およびa’’)に記載したいずれかの順序でシノビオリン(またはそのホモログ)、基質、および被験物質を接触させる工程を含むことができる。被験物質の存在下で三者をインキュベートする場合(a)には、シノビオリン(またはそのホモログ)と基質の結合に与える影響を評価することができる。あるいは、シノビオリン(またはそのホモログ)および基質のいずれかに被験物質を接触後に両者の結合が可能な条件を与えることもできる(a’)。この場合には、シノビオリン、または基質の結合能に対する被験物質の影響が評価される。更に、シノビオリンと基質の結合が可能な条件を与えた後に被験物質を接触させる(a’’)ことによって、シノビオリンと基質の結合体に対する被験物質の影響を評価することができる。
上記方法において、シノビオリンまたはそのホモログと基質のいずれかが固相に結合されているか、または固相に結合可能な標識を有していることが望ましい。固相に結合可能な標識とは、たとえば結合性リガンドを示すことができる。結合性リガンドにはビオチンなどが含まれる。ビオチンは、アビジンセファロースなどの固相に捕捉することができる。固相への結合により、両者の結合生成物を容易に分離することができる。
一方、固相化しなかった他方の成分は、検出を容易にするために標識しておくことができる。シノビオリン、そのホモログ、あるいは基質は、蛋白質を標識するための公知の方法により標識することができる。具体的には、放射活性物質、酵素活性物質、蛍光活性物質、あるいは発光物質などを標識として利用することができる。また、標識物質を間接的に蛋白質に結合させるために、結合性のタグを利用することもできる。たとえば、ビオチン化した蛋白質には、アビジン化した標識物質を結合することができる。
本発明の方法において、P4HA1またはそのホモログは、シノビオリンとの結合活性を有する任意の蛋白質を用いることができる。具体的には、P4HA1またはそのホモログは、以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドを含む。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンと結合することができるポリペプチド
また本発明の方法において、シノビオリンまたはそのホモログは、P4HA1との結合活性を有する任意の蛋白質を用いることができる。具体的には、シノビオリンまたはそのホモログは、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドを含む。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド
与えられたアミノ酸配列に対して、任意の変異を導入するための方法は既に述べた。あるいは、人為的にまたは天然に存在する変異体をコードするポリヌクレオチドから、ハイブリダイゼーションやPCRによって、構造的に類似のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離する方法も公知である。当業者は、このようにして得ることができる各種の変異体の中から、シノビオリンあるいはP4HA1との結合活性を有するポリペプチドを選択することができる。たとえば、ある蛋白質が固定化されたシノビオリンに捕捉されるとき、その蛋白質はシノビオリンとの結合活性を有すると判定される。また、ある蛋白質が固定化されたP4HA1に捕捉されるとき、その蛋白質はシノビオリンとの結合活性を有すると判定される。
たとえば、P4HA1のcDNAを断片化したDNAを適当な発現ベクターに組み込んで発現させることによって、P4HA1の断片蛋白質を得ることができる。断片蛋白質のライブラリーについて上記のようにしてシノビオリンとの結合活性を確認すれば、シノビオリンとの結合に必要な領域を決定することができる。このようにして決定された領域を含むシノビオリンの断片は、本発明の方法におけるシノビオリンのホモログとして利用することができる。更に当該領域を構成するアミノ酸配列を保存している他の種に由来するP4HA1のカウンターパートや、その断片配列からなるポリペプチドも、本発明の方法におけるP4HA1のホモログとして利用することができる。
本発明の、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法は、シノビオリンと基質との結合への干渉によって、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する作用を有する化合物のスクリーニング方法に有用である。すなわち本発明は、以下の工程を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を有する被験化合物のスクリーニング方法に関する。
a)前記の被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法によって、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する工程、および
b)対照と比較して、シノビオリンと基質の結合のレベルに差がある被験化合物を選択する工程
本発明によるシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法については既に述べたとおりである。当該方法によって、各種の被験化合物についてその活性を評価し、対照と比較することによって、目的の活性を有する被験化合物を選択することができる。本発明において対照としては、目的とする活性のレベルが予め確認されている任意の化合物を用いることができる。たとえば目的とする活性がないことが明らかな化合物は、陰性対照として利用できる。また、被験化合物を加えない場合のユビキチン化のレベルを陰性対照として比較しても良い。あるいは、一定の活性を有する物質を対照として用いれば、その活性レベルを超える物質をスクリーニングすることもできる。
木発明のスクリーニングに用いる被験化合物は特に制限されない。たとえば、無機化合物、有機化合物、ペプチド、蛋白質、天然または合成低分子化合物、天然または合成高分子化合物、組織または細胞抽出液、微生物の培養上清や、植物、海洋生物由来の天然成分などを被験化合物とすることができる。遺伝子ライブラリーの発現産物または発現cDNAライブラリーなどを被験化合物として用いることもできる。
本発明のスクリーニング方法によって、P4HA1に対するシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を有する化合物を選択することができる。そのような化合物には、関節リウマチまたは線維症の治療用薬剤が含まれる。本発明において、ユビキチン化作用を調節する活性とは、活性の刺激と抑制が含まれる。蛋白質のユビキチン化は、ATP依存性プロテアーゼによる当該蛋白質の選択的な分解を誘導する。生体内においては、異常な蛋白質や不要となった蛋白質の除去のためにユビキチン化が行われていると推定されている。したがって、P4HA1に対するシノビオリンのユビキチン化作用の調節によって、プロリン4水酸化酵素の活性を調節することができる。
P4HA1のユビキチン化が促進されれば、当該酵素の活性レベルが上昇する。たとえば、関節リウマチ患者の滑膜細胞においては、シノビオリンの発現が上昇している。その結果、P4HA1のユビキチン化が促進され、当該酵素の活性レベルが上昇する。P4HA1のユビキチン化によって、異常な分子が特異的に分解され、正常な蛋白質の割合が高まることが、そのメカニズムとして予測される。異常な蛋白質としては、たとえば次のような蛋白質を示すことができる。
−異常な修飾を受けた蛋白質
−蛋白質のフォールディングに異常を持つ蛋白質
逆にP4HA1のユビキチン化が阻害された場合には、異常な蛋白質の蓄積が進むため、プロリン4水酸化酵素活性が低下する。異常な蛋白質は、それ自身の酵素活性が低下の原因となるばかりでなく、正常な蛋白質と他のサブユニットとの会合、あるいは酵素分子と基質との会合に対しても阻害的に働く。
シノビオリンによる、P4HA1のユビキチン化作用の調節作用を有する化合物は、シノビオリンによる基質のユビキチン化の調節剤として有用である。すなわち本発明は、本発明の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、シノビオリンによる基質のユビキチン化の調節剤を提供する。本発明のユビキチン化の調節剤は、プロリン4水酸化酵素活性の異常に起因する疾患の治療や予防に有用である。プロリン4水酸化酵素は、コラーゲン代謝をつかさどる酵素である。したがって、コラーゲン合成の異常を伴う疾患を、シノビオリンによるユビキチン化の調節によって治療あるいは予防することができる。
実際に、本発明者らは、遺伝子工学的にシノビオリンを欠失させたマウスの細胞において、正常細胞と比べてプロリン4水酸化酵素の活性(図6)、およびコラーゲンの産生量(図5)が低下することを実験的に確認している。この細胞におけるP4HA1の蛋白質量には、正常細胞との有意な差が見られなかった(図4)。つまり、シノビオリンによるP4HA1のユビキチン化が、プロリン4水酸化酵素の活性上昇をもたらしていると考えられた。したがって、シノビオリンの作用を抑制すればコラーゲンの過剰な産生を抑制することができる。あるいはシノビオリンの作用を増強することによって、コラーゲン産生を刺激することができる。
より具体的には、P4HA1のユビキチン化作用に対する影響を指標として見出されたシノビオリンの阻害剤は、線維細胞の蓄積が原因とされている疾患あるいは病態の治療や予防に有用である。たとえば、肺線維症、あるいは肝線維症などの疾患を、線維細胞の蓄積を原因とする疾患、あるいは病態として示すことができる(Kivirikko KI.Ann Med.1993 Apr;25(2):113−26.)。
本発明において線維症とは、組織の修復や障害に対する反応として線維の形成と蓄積が増加する病態を有する疾患を言う。先に示した肺線維症、あるいは肝線維症は、線維症の代表的な疾患である。これらの疾患の病因には、様々なメカニズムが関与する可能性が指摘されている。しかしいずれにせよ、組識の線維化によって、組織の機能が損なわれることは共通している。たとえば肺線維症においては呼吸機能が損なわれる。肝線維症は肝臓の血流を妨げ、肝機能障害の原因となる。したがって、線維症を改善することができれば、これらの疾患の症状を治療、治癒、あるいは予防することができる。
肝線維症のような線維症の進行がコラーゲン産生の阻害によって抑制されることは公知である(Kivirikko KI.Ann Med.1993 Apr;25(2):113−26.)。
本発明による、線維症の治療または予防のための化合物のスクリーニング方法は、先に述べたシノビオリンによるP4HA1のユビキチン化作用を調節する化合物のスクリーニング方法と同様の操作によって実施することができる。
したがって本発明によって、以下の工程を含む線維症を治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法が提供される。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルよりも低い被験化合物を線維症を治療または予防するための化合物として選択する工程
あるいは本発明は、以下の工程を含む、線維症を治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法に関する。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルよりも低い被験化合物を線維症を治療または予防するための化合物として選択する工程
また、リウマチにおけるコラーゲンの産生過剰は、リウマチの代表的な病態の1つである。したがって、シノビオリンによるP4HA1活性の調節を制御し、コラーゲンの産生を抑制することは、リウマチの治療戦略として有効である(Kivirikko KI.Ann Med.1993 Apr;25(2):113−26.)。
したがって本発明によって、以下の工程を含む、関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法が提供される。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルよりも低い被験化合物を選択する工程
また、本発明は、以下の工程を含む、関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法に関する。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルよりも低い被験化合物を関節リウマチを治療または予防するための化合物として選択する工程
一方、P4HA1のユビキチン化作用に対する影響を指標として見出されたシノビオリンの活性化剤は、コラーゲンの補充療法において有用である。たとえば加齢、紫外線照射、あるいはストレスなどによって減少するコラーゲンを、シノビオリンの活性化剤の投与によって補充することができる。
加えて本発明は、以下の要素を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出するためのキット、ならびに線維症及び関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニングのためのキットに関する。本発明のキットに必要な下記要素(1)および(2)は、既に述べたようにして得ることができる。
(1)シノビオリンまたはそのホモログ、および
(2)P4HA1またはそのホモログ
本発明のキットにおいて、P4HA1またはそのホモログは、予め標識されていても良い。あるいは標識するための手段を組み合わせることもできる。たとえば、P4HA1またはそのホモログを認識して結合する標識抗体を組み合わせることができる。
本発明のキットには、更に付加的に以下の要素を組み合わせることができる。これらの要素も先に述べたとおりである。
(3)ユビキチン活性化酵素
(4)ユビキチン転移酵素、
(5)ユビキチン、および
(6)アデノシン3リン酸(ATP)
上記構成要素のうち、ユビキチンについては予め標識しておくことができる。あるいは、ユビキチンを標識するための手段を組み合わせることができる。たとえば、ユビキチンを認識して結合する標識抗体を組み合わせることができる。
本発明のキットを構成するP4HA1は、ビーズなどの固相に結合させておくことができる。特に液体シンチランを含むビーズは、32P標識したユビキチンとP4HA1との結合を簡便に検出することができるので有利である。したがって、液体シンチランを含むビーズに結合されたP4HA1と放射活性標識されたユビキチンを含むキットは、本発明のキットとして好ましい。
本発明のキットには、細胞を培養するための容器や培地を組み合わせることもできる。本発明のキットは、既に述べた本発明の方法を実施するために用いることができる。
本発明の試験またはスクリーニング方法により同定された化合物は、シノビオリンとプロリン4水酸化酵素が関与する疾患に対する医薬の候補となり、その予防または治療に利用することができる。このような疾患として、たとえば線維症または関節リウマチを示すことができる。これらの化合物は、有効成分以外に適宜他の溶質や溶媒と組み合わせて医薬組成物とすることができる。本発明のスクリーニング方法により単離される化合物を医薬品として用いる場合には、単離された化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化した医薬組成物として投与を行うことも可能である。
例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤などと適宜組み合わせて製剤化して投与することが考えられる。本発明の医薬組成物は、水溶液、錠剤、カプセル、トローチ、バッカル錠、エリキシル、懸濁液、シロップ、点鼻液、または吸入液などの形態であり得る。化合物の含有率は適宜決定すればよい。患者への投与は、一般的には、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、経口投与、関節内注入、その他の当業者に公知の方法により行いうる。
投与量は、患者の体重や年齢、投与方法、症状などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。一般的な投与量は、薬剤の有効血中濃度や代謝時間により異なるが、1日の維持量として約0.1mg/kg〜約1.0g/kg、好ましくは約0.1mg/kg〜約10mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg〜約1.0mg/kgであると考えられる。投与は1回から数回に分けて行うことができる。また、該化合物がポリヌクレオチドによりコードされうるものであれば、該ポリヌクレオチドを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
図1は、酵母ツーハイブリッドシステムを用いたスクリーニングに用いたベイトのコンストラクションの構造を示す図である。
図2は、〔32P]標識したFlag−P4HA1融合タンパク質とGST−Syno dTM及びGST−Syno RING融合タンパク質との結合を示すオートラジオグラフの写真である。
図3は、シノビオリン各蛋白質:Syno dTM、Syno dTM(C307S)、Syno dTM(dRING)、Syno RINGによるGST蛋白質、またはGST融合P4HA1蛋白質のユビキチンアッセイの結果を示すオートラジオグラフの写真である。
図4は、各種マウス胎児線維芽細胞におけるP4HA1発現量を示すウエスタンブロット法の結果を示す写真である。
図5は、各種マウス胎児線維芽細胞の培養上清に含まれるコラーゲン含量を示すグラフである。図中、縦軸はコラーゲン含量の比(0.09μgコラーゲン/mg蛋白質を1とする)を、また横軸はマウスの細胞の種類を示す。
図6は、各種マウス胎児線維芽細胞におけるプロリン4水酸化酵素活性を示すグラフである。図中、縦軸はSyno+/+の実測値を1とするH−HOの産生量の比を、また横軸はマウスの細胞の種類を示す。
図7は、肝硬変の病理組織におけるシノビオリンの発現を示す顕微鏡写真(200倍)である。
左上:抗シノビオリン抗体による染色
右上:ヘマトキシリン核染色
左下:マウスIgGによる染色(対照)
図8は、結節性筋膜炎の病理組織におけるシノビオリンの発現を示す顕微鏡写真(200倍/右および400倍/左)である。上から順に、マウスIgG、抗シノビオリン抗体、および抗シノビオリン抗体+ブロッキングペプチドによる染色結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例1.酵母ツーハイブリッド法によるP4HA1のスクリーニング
酵母ツーハイブリッドシステムとして、クロンテック社のMATCHMAKERツーハイブリッドシステムを用い、酵母形質転換法(Pro.Natl.Aca.Sci.USA.,88:9578−9582,1991)によりシノビオリンの基質タンパク質のスクリーニングを行なった。シノビオリンcDNAの706bpから1854bp及び805bpから1260bpの末端をEcoR I/Xho Iで修飾し、pGBT9ベクターのEcoR I/Xho Iサイトに挿入した。以下、シノビオリンの706bpから1854bpのフラグメントをSyno dTM、805bpから1260bpをSyno RINGと呼ぶ(図1)。
シノビオリンの基質タンパク質のスクリーニングに用いるライブラリーはヒト軟骨由来のcDNAをpACT2ベクターに挿入したものを用いた(pACT2−Y)。42℃、15分のヒートショックの後、酵母株Y190にpGBT9−Syno dTM又はpGBT9−Syno RING(2.0μg)、pACT2−Y(20μg)を導入した。各ベクターを導入した酵母Y190をTris−EDTA(pH7.5)緩衝液(TE緩衝液)で洗浄後、SD−Trp−Leu−HisプレートにTE緩衝液で希釈した酵母Y190の溶液を広げ30℃で10日培養した。現れてきたコロニーに対し、0.5mg/mlのX−galを基質とするβガラクトシダーゼフィルターアッセイを行ない陽性クローンを検出した。
陽性クローンをSD−Leu−His培地にて30℃で10日振盪培養し、アルカリ−SDS法(Methods Enzymol.,194:169−182,1991)にて酵母DNAを抽出した。抽出した酵母DNAを大腸菌株HB101に形質転換し、M9プレート(−Leu)に広げ37℃で2日培養した。現れてきたコロニーを20μg/mlのアンピシリンを添加したLB培地で37℃、16時間震盪培養しアルカリ−SDS法によってプラスミドDNAを抽出した。抽出したプラスミドDNAに挿入されているヒト軟骨由来のcDNA断片の解析にはアプライド・バイオシステムズ社のBigDye Terminator Cycle Sequencing systemを用いた。
配列をBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)により解析した結果、コラーゲン産生において必須であるプロコラーゲンのプロリン残基の水酸化を触媒する酵素であるプロリン4水酸化酵素のαサブユニット(procollagen−proline,2−oxoglutarate 4−dioxygenase(proline 4hydraxylase),alpha polypeptide I(ACCESSION No.XM_032511P4HA1)を得た。
実施例2.シノビオリンとP4HA1の結合
TNT−coupled Translation System(プロメガ社)及びpcDNA3−Flag−P4HA1を用い、〔35S〕標識したFlag−P4HA1融合タンパク質を作成し、これとGST−Syno dTM、GST−Syno RING及びGSTタンパク質を20mM HEPES(pH7.9)、100mM NaCl,1mM EDTA,0.05%Tween、5%グリセロール、1mM DTT,0.2mM NaVO,5mM NaF,1mM PMSFを含む結合バッファーに加え、4℃で16時間反応させた。その反応物をSDS−PAGE上で展開後、イメージアナライザー(BAS2000,Fujix)で放射活性を検出した。GST−Syno dTM及びGST−Syno RING融合タンパク質と〔35S〕pcDNA3−Flag−P4HA1では、結合が観察された。またコントロールであるGSTタンパク質とpcDNA3−Flag−P4HA1との結合は認められなかった(図2)。この結果から、シノビオリンとP4HA1は、結合することが明らかとなった。
実施例3.シノビオリンのユビキチンリガーゼ(E3)としての基質の同定
ユビキチンは、活性化酵素(E1)、結合酵素(E2)及びリガーゼ(E3)から成るユビキチン系酵素により標的蛋白質(基質)に共有結合し、この反応が繰り返されることにより形成されるポリユビキチン鎖が、基質のプロテアソームによる分解マーカーとして作用する。E3は基質を選択する最も重要な酵素である。シノビオリンの基質蛋白質を同定することは、シノビオリンが関与するシグナル伝達経路を決定する上で重要な手係りになると考えられる。酵母ツーハイブリッド法を用いたスクリーニングで得られたシノビオリンと結合する蛋白質はシノビオリンユビキチンリガーゼ(E3)の基質候補となる。
そこで、インービトロでのユビキチンリガーゼ活性測定系を用いて検討した。Syno dTM、Syno RING、シノビオリンの307番目のシステインをセリンに置換したSyno dTM(C307S)、291番目から329番目のアミノ酸を欠損したSyno dTM(dRING)およびP4HA1の全領域を含むcDNAを、GST融合蛋白質のベクター(pGEX4T−1)に挿入し、大腸菌での融合蛋白質の産生を行った。大腸菌の可溶化上清から得られた各融合蛋白質はグルタチオン セファロースTM4Bビーズ(アマシャム バイオサイエンス社)に結合させた。
次に、各シノビオリン融合蛋白質ビーズをプロテアーゼの一種、トロンビンによってGST部分を除き、シノビオリン蛋白質を得た。あらかじめPKAサイトを挿入したHis−ユビキチン蛋白質は〔32P−γ〕ATPで標識した。E1(酵母由来)、E2(UbcH5c)、ATP、〔32P−γ〕標識ユビキチン、GST融合P4HA1蛋白質ビーズ及び各シノビオリン蛋白質を混合し、37℃にて60分間反応させた。反応後の各サンプルに4xSDS−PAGE緩衝液を加え、5分間煮沸した後、10%SDS−PAGE上で展開させた。
展開したゲルをイメージアナライザー(BAS2000,Fujix)によりイメージングし、ユビキチン化されたバンドを検出した。結果として、Syno dTMおよびSyno RINGにより、P4HA1がユビキチン化されることが明らかとなった(図3)。しかし、Syno dTM(C307S)およびSyno dTM(dRING)ではP4HA1はユビキチン化されなかった。従って、P4HA1はシノビオリンの基質であることが明らかとなった。
実施例4. シノビオリンとコラーゲン産生
各種マウス胎児線維芽細胞(MEFs)におけるP4HA1発現量およびコラーゲン産生量
胎児線維芽細胞(MEFs)を2x10個まき、3日間培養後に回収した。P4HA1発現量は、抗P4HA1抗体(抗hPH(α)、精製IgG、第一ファインケミカル(株))を用いたウエスタンブロット法により定量した。同時に、抗シノビオリン抗体(モノクローナル抗体、10 Da)および抗βアクチン抗体(モノクローナル抗−β−アクチン、クローン AC−15,シグマ)により、シノビオリンおよびβアクチンの発現量も比較した。コラーゲンはSircol TM soluble collagen assay kit(Biocolor社)を用いて定量した。データはMEF(syno +/+)細胞中のコラーゲン含量(0.09μgコラーゲン/mg蛋白質)を1として処理した。
その結果、シノビオリン欠損マウス(syno −/−)MEFsにおいては、P4HA1の蛋白質レベルは野生型マウス(syno +/+)のMEFsの場合とほぼ同様であった(図4)。一方syno −/−のMEFs培養上清中のコラーゲン含量は、syno +/+のそれより少ないことが観察された(図5)。この二つの所見から、シノビオリンはP4HA1をユビキチン化することによって、細胞中のプロリン4水酸化酵素蛋白質の品質を管理している可能性が示唆された。
各種MEFにおけるプロリン4水酸化酵素活性の比較
プロリン4水酸化酵素活性は以下の論文を参考にして測定した。
1)Gribble TJ,Comstock JP,Udenfriend S.Collagen chain formation and peptidyl proline hydroxylation in monolayer tissue cultures of L−929 fibroblasts.Arch Biochem Biophys.1969 Jan;129(1):308−16
2)Margolis RL,Lukens LN.The role of hydroxylation in the secretion of collagen by mouse fibroblasts in culture.Arch Biochem Biophys.1971 Dec;147(2):612−8.
3)Methods enzymol.Vol.82(1982)p247−265.
コラーゲン産生細胞である正常滑膜細胞の培地にα,α’−ジピリジルを添加することにより、細胞中のヒドロキシラーゼによる水酸化反応を停止させ、その後培養上清中に[2,3−H]プロリンを加え、合成されたH−プロトコラーゲンを抽出した。また、syno −/−のMEF培養細胞とsyno +/+のMEF培養細胞からP4Hが含まれるライセートを回収し、H−プロトコラーゲンを水酸化する活性(H−HOの産生量)を測定した。
その結果、H−HOの産生量は、Syno+/+では39.28cpm/μg全細胞抽出物、Syno−/−では27.58cpm/μg全細胞抽出物であった。Syno+/+の実測値を1としてH−HOの産生量の比を図6に示した。syno −/−のMEFsにおけるP4Hの酵素活性はsyno +/+のMEFsに比べて低いことが分かった(図6)。
実施例5. 肝硬変および結節性筋膜炎の病理組織におけるシノビオリンの発現
線維化を伴う疾患において、シノビオリンの発現部位を確認するために、肝硬変および結節性筋膜炎の病理組織を用いて、抗シノビオリン抗体による組織免疫染色を行った。
肝硬変および結節性筋膜炎の病理組織はインフォームド・コンセントを行ない入手した。組織は定法によりホルマリン固定をした後、パラフィンに抱埋をしてミクロトームにて薄切し、組織検体として使用した。組織切片はキシレン各5分ずつ3回の処理で完全にパラフィンを除き、100%エチルアルコールから10%ずつ濃度を下げた50%までの6段階下降系列のアルコール溶液をくぐらせた後、1%牛血清アルブミン(BSA)にて30分間ブロッキングした。
ブロッキング終了後の組織に、1%BSAを含むPBS溶液で希釈した1次抗体溶液(抗シノビオリンモノクローナル抗体)を、室温にて60分反応させた。次いで、その組織をPBSにて5分間、5回洗浄した後、1%BSA溶液にて希釈した2次HRP標識抗マウスイムノグロブリン抗体を室温30分間反応させた。反応終了後PBSにて5分間、5回洗浄して更に発色試薬(3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩)を反応させた。適度な発色が得られた後に組織を水洗して顕微鏡で観察した。
また、対比染色としてヘマトキシリン核染色を行い、顕微鏡にて観察した。更に、対照として染色に用いた抗シノビオリンモノクローナル抗体のエピトープのアミノ酸配列からなるブロッキングペプチドとともに反応させた試料も顕微鏡で観察した。
その結果、肝硬変の病理組織においては、肝臓の実質細胞、特に、細胞増殖性の高い部分にシノビオリンの高い発現が見られた(図7)。筋膜の線維芽細胞の腫瘍様増殖を特徴とする結節性筋膜炎の病理組織においても、細胞増殖性の高い結節部分において、シノビオリンの高い発現が見られた(図8)。
実施例6. シノビオリンとP4HA1の結合を阻害する化合物のスクリーニング法
シノビオリンとその基質であるP4HA1との結合を阻害する化合物を、ハイスループットスクリーニング(HTS)する方法を検討した。シノビオリンをHisタグとの融合蛋白質として発現し、P4HA1もGSTとの隔虫合蛋白として発現して、シノビオリンとP4HA1が結合すれば、XL665標識した抗His抗体とEu(K)標識した抗GST抗体との間でエネルギートランスファーが起こり、蛍光が検出される系を考案した。
1)MBP−Syno dTM−Hisの作製
MBPシノビオリンdTM−Hisx12は、細胞膜貫通部分(TM)を欠損させたシノビオリン(シノビオリンdTM)をMBPと融合させたものである。MBPシノビオリンdTM−Hisx12は、大腸菌で融合タンパク質を産生し、Ni−NTAカラム(キアゲン社)で精製することにより調製した。
2)His−E2の作製
His−E2はUbcH5cの全領域を含むcDNAをHisタグ融合タンパク質のベクター(pET)に挿入し、大腸菌で融合タンパク質を産生し、Ni−NTAカラム(キアゲン社)で精製することより得た。
3)GST−P4HA1の作製
P4HA1の全領域を含むcDNAを、GST融合蛋白質のベクター(pGEX 4T−1)に挿入し、大腸菌での融合蛋白質の産生を行った。大腸菌の可溶化上清から得られた融合蛋白質はグルタチオン セファロースTM 4Bビーズ(アマシャム バイオサイエンス社)で精製することにより調製した。
4)シノビオリンとP4HA1との結合阻害活性の測定
384穴プレートを用い、15μLの50mM HEPES(pH7.5)溶液中に60ng MBP−シノビオリン−His、10ng GST−P4HA1、1mM DTT、1mM EDTA、50mM NaCl、0.1%BSA、0.3%DMSO及び被験化合物を含む標準反応液を作製した。反応は5μLのGST−P4HA1を含む50mM HEPES溶液添加で開始した。室温、30分反応後、Eu(K)標識した抗GST抗体(20000 B counts、CIS bio international社製)、XL665標識した抗His抗体(0.025μg、CIS bio international社製)及び1M KFを含む50mM HEPES溶液5μLを添加し、室温で一晩静置後、蛍光をルビースターTMで測定した。
一部改変したシノビオリンの部分ペプチド(配列番号5)について阻害活性を調べたところ、167μg/mlのIC50でシノビオリンとP4HA1との結合を抑制した。
実施例7. シノビオリンのP4HA1ユビキチン化活性を阻害する化合物のスクリーニング法
1)XL665−Eu(K)のエネルギートランスファー(HTRF法)を用いたユビキチン化活性を阻害する化合物のスクリーニング法
シノビオリンのP4HA1ユビキチン化活性を阻害する化合物を、ハイスループットスクリーニング(HTS)する方法を検討した。GSTとの融合蛋白として発現させたP4HA1を基質とし、Eu(K)標識したユビキチンによるユビキチン化を行って、P4HA1がEu(K)標識したユビキチン化されれば、XL665標識した抗GST抗体とEu(K)標識したユビキチンとの間でエネルギートランスファーが起こり、蛍光が検出される系を考案した。
384穴プレートを用い、15μLの20mM HEPES(pH7.5)溶液中に60ng MBP−シノビオリン−His、15ng GST−P4HA1、15ng E1(Boston Biochem社製)、200ng His−E2、6.25nM Eu(K)標識したユビキチン(CIS bio international社製)、5mM MgCl、2mM ATP、1mM DTT、0.1%BSA、0.3%DMSO及び被験化合物を含む標準反応液を作製した。37℃で30分反応後、5μLの0.5M EDTAを添加して反応を停止させた。これにXL665標識した抗His抗体(0.025μg)及び1M KFを含む20mM HEPES溶液5μLを添加し、室温で一晩静置後、蛍光をルビースターで測定した。
一部改変したシノビオリンの部分ペプチド(配列番号5)は、結合を阻害する1/20の濃度でP4HA1のユビキチン化を阻害した。
2)ELISA法を用いたユビキチン化活性を阻害する化合物のスクリーニング法
96穴ELISA用プレートを抗GST抗体で4℃で一晩吸着後、使用するまで室温下、5%BSA/PBS溶液でブロッキングした。プレートは使用前に0.3%BSAを含むPBS(PBSA)で300μLで2回洗浄した。
反応用チューブで30μLの50mM HEPES(pH7.5)溶液中に80ng MBP−シノビオリン−His、40ng GST−P4HA1、15ng E1、200ng His−E2、5mM MgCl、2mM ATP、1mM DTT、0.1%BSA、0.3%DMSO及び被験化合物を含む標準反応液を作製した。室温で30分反応後、70μLの70mM EDTA及び50mM HEPESを含む溶液を添加して反応を停止させた。この30μLをあらかじめ70μL PBSAを添加したプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。300μL PBSAで3回洗浄後、PBSAで5000倍稀釈したマウス抗ユビキチン抗体溶液100μLを添加し、室温で1時間インキュベートした。300μL PBSAで3回洗浄後、PBSAで10000倍稀釈したパーオキシダーゼ標識抗マウスIgG溶液100μLを添加し室温で1時間インキュベートした。300μL PBSAで3回洗浄後、100μL TMB溶液を添加し室温でインキュベーションした。発色が充分認められた時点で、1Mリン酸を加え反応を停止し、450nmの吸光度を測定した。
一部改変したシノビオリンの部分ペプチド(配列番号5)は、P4HA1のユビキチン化を55μg/mlのIC50で阻害した。
産業上の利用の可能性
本発明によって、シノビオリンによるプロリン4水酸化酵素のαサブユニットのユビキチン化作用を調節する活性を評価することができる。更に本発明の方法に基いて、シノビオリンによるプロリン4水酸化酵素のαサブユニットのユビキチン化作用を調節する活性を有する化合物のスクリーニング方法が提供された。また、本発明によって、関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニング方法が提供された。
シノビオリンがαサブユニットのユビキチン化によって、プロリン4水酸化酵素の活性を調節していることは本発明者らによって明らかにされた新規な知見である。プロリン4水酸化酵素は、生体内のコラーゲン合成において重要な役割を果たす酵素である。したがって、本発明の方法によって選択することができる化合物は、プロリン4水酸化酵素の活性異常によってもたらされる疾患の治療や予防に有用である。たとえば、コラーゲンの蓄積によってもたらされる各種の線維症または関節リウマチを、本発明によって得ることができる化合物によって、治療あるいは予防することができる。
【配列表】

























【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルと違うときに、被験化合物のシノビオリンによる基質のユビキチン化作用を調節する活性が検出される工程
【請求項2】
以下の成分の共存により、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項1に記載の方法。
i)ユビキチン活性化酵素
ii)ユビキチン転移酵素、
iii)ユビキチン、および
iv)アデノシン3リン酸
【請求項3】
シノビオリンまたはそのホモログと基質とを発現する細胞内で基質をユビキチン化することによって、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基質のユビキチン化のレベルを、以下のいずれかのレベルを指標として測定する請求項1に記載の方法。
A)ユビキチン化された基質のレベル
B)ユビキチン化されなかった基質のレベル、および
C)プロリン4水酸化酵素αサブユニットの生物学的活性のレベル
【請求項5】
プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項1に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド
【請求項6】
シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項1に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド
【請求項7】
以下の工程を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を有する被験化合物のスクリーニング方法。
a)請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の方法によって、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する工程、および
b)対照と比較して、基質のユビキチン化のレベルに差がある被験化合物を選択する工程
【請求項8】
請求項7に記載の方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、シノビオリンによる基質のユビキチン化の調節剤。
【請求項9】
以下の要素を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出するためのキット。
(1)シノビオリンまたはそのホモログ、および
(2)プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログ
【請求項10】
更に以下の要素を含む、請求項9に記載のキット。
(3)ユビキチン活性化酵素
(4)ユビキチン転移酵素、
(5)ユビキチン、および
(6)アデノシン3リン酸
【請求項11】
シノビオリンまたはそのホモログ、およびプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログを発現する細胞と、プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログのユビキチン化のレベルを測定するための手段を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出するためのキット。
【請求項12】
以下の工程を含む、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルと違うときに、被験化合物のシノビオリンによる基質のユビキチン化作用を調節する活性が検出される工程
【請求項13】
シノビオリンと基質のいずれかが固相に結合されているか、または固相に結合可能な標識を有している請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項12に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンと結合することができるポリペプチド
【請求項15】
シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項12に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド
【請求項16】
以下の工程を含む、シノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を有する被験化合物のスクリーニング方法。
a)請求項12〜請求項15のいずれか一項に記載の方法によって、被験化合物のシノビオリンのユビキチン化作用を調節する活性を検出する工程、および
b)対照と比較して、シノビオリンと基質の結合のレベルに差がある被験化合物を選択する工程
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって得ることができる化合物を有効成分として含有する、シノビオリンによる基質のユビキチン化の調節剤。
【請求項18】
以下の工程を含む線維症を治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルよりも低い被験化合物を線維症を治療または予防するための化合物として選択する工程
【請求項19】
以下の成分の共存により、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項18に記載の方法。
i)ユビキチン活性化酵素
ii)ユビキチン転移酵素、
iii)ユビキチン、および
iv)アデノシン3リン酸
【請求項20】
シノビオリンまたはそのホモログと基質とを発現する細胞内で基質をユビキチン化することによって、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項18に記載の方法。
【請求項21】
基質のユビキチン化のレベルを、以下のいずれかのレベルを指標として測定する請求項18に記載の方法。
A)ユビキチン化された基質のレベル
B)ユビキチン化されなかった基質のレベル、および
C)プロリン4水酸化酵素αサブユニットの生物学的活性のレベル
【請求項22】
プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項18に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド
【請求項23】
シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項18に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド
【請求項24】
請求項18〜請求項23のいずれか一項に記載の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、線維症の治療および/または予防のための医薬組成物。
【請求項25】
以下の要素を含む線維症を治療または予防するための化合物のスクリーニングのためのキット。
(1)シノビオリンまたはそのホモログ、および
(2)プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログ
【請求項26】
更に以下の要素を含む、請求項25に記載のキット。
(3)ユビキチン活性化酵素、
(4)ユビキチン転移酵素、
(5)ユビキチン、および
(6)アデノシン3リン酸
【請求項27】
シノビオリンまたはそのホモログ、およびプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログを発現する細胞と、プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログのユビキチン化のレベルを測定するための手段を含む、線維症を治療または予防するための被験化合物のスクリーニングのためのキット。
【請求項28】
以下の工程を含む、線維症を治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルよりも低い被験化合物を線維症を治療または予防するための化合物として選択する工程
【請求項29】
シノビオリンと基質のいずれかが固相に結合されているか、または固相に結合可能な標識を有している請求項28に記載の方法。
【請求項30】
プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項28に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンと結合することができるポリペプチド
【請求項31】
シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項28に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド
【請求項32】
請求項28〜請求項31に記載の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、線維症の治療および/または予防のための医薬組成物。
【請求項33】
以下の工程を含む、関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、被験化合物の存在下で基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれか一方を被験化合物と接触後に基質のユビキチン化が可能な条件下で他方とインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質を、基質のユビキチン化が可能な条件下でインキュベート後に被験化合物と接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、基質のユビキチン化のレベルを測定する工程、および
c)基質のユビキチン化のレベルが、被験化合物不存在下において測定されたユビキチン化のレベルよりも低い被験化合物を関節リウマチを治療または予防するための化合物として選択する工程
【請求項34】
以下の成分の共存により、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項33に記載の方法。
i)ユビキチン活性化酵素
ii)ユビキチン転移酵素、
iii)ユビキチン、および
iv)アデノシン3リン酸
【請求項35】
シノビオリンまたはそのホモログと基質とを発現する細胞内で基質をユビキチン化することによって、基質のユビキチン化が可能な条件を与える請求項33に記載の方法。
【請求項36】
基質のユビキチン化のレベルを、以下のいずれかのレベルを指標として測定する請求項33に記載の方法。
A)ユビキチン化された基質のレベル
B)ユビキチン化されなかった基質のレベル、および
C)プロリン4水酸化酵素αサブユニットの生物学的活性のレベル
【請求項37】
プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項33に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンによってユビキチン化することができるポリペプチド
【請求項38】
シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項33に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをユビキチン化する活性を有するポリペプチド
【請求項39】
請求項33〜請求項38のいずれか一項に記載の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、関節リウマチの治療および/または予防のための医薬組成物。
【請求項40】
以下の要素を含む関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニングのためのキット。
(1)シノビオリンまたはそのホモログ、および
(2)プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログ
【請求項41】
更に以下の要素を含む、請求項39に記載のキット。
(3)ユビキチン活性化酵素、
(4)ユビキチン転移酵素、
(5)ユビキチン、および
(6)アデノシン3リン酸
【請求項42】
シノビオリンまたはそのホモログ、およびプロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログを発現する細胞と、プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログのユビキチン化のレベルを測定するための手段を含む、関節リウマチを治療または予防するための被験化合物のスクリーニングのためのキット。
【請求項43】
以下の工程を含む、関節リウマチを治療または予防するための化合物のスクリーニング方法であって、基質がブロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログである方法。
a)被験化合物の存在下でシノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、
a’)シノビオリン若しくはそのホモログ、および基質のいずれかを被験化合物と接触後にシノビオリンと基質との結合が可能な条件下でインキュベートする工程、または
a’’)シノビオリンまたはそのホモログと基質との結合が可能な条件下でインキュベートした後に被験化合物を接触させる工程、
b)前記a)、a’)、およびa’’)のいずれかの工程の後に、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合レベルを測定する工程、および
c)シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが、被験化合物不存在下において測定された結合のレベルよりも低い被験化合物を関節リウマチを治療または予防するための化合物として選択する工程
【請求項44】
シノビオリンと基質のいずれかが固相に結合されているか、または固相に結合可能な標識を有している請求項43に記載の方法。
【請求項45】
プロリン4水酸化酵素αサブユニットまたはそのホモログが以下の(a)−(e)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項43に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、シノビオリンと結合することができるポリペプチド、および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、シノビオリンと結合することができるポリペプチド
【請求項46】
シノビオリンまたはそのホモログが、以下の(A)−(E)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項43に記載の方法。
(A)配列番号:3に記載の塩基配列によってコードされるポリペプチド、
(B)配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(C)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、
(D)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド、および
(E)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと結合するポリペプチド
【請求項47】
請求項43〜46に記載の方法によって選択することができる化合物を有効成分として含有する、関節リウマチの治療および/または予防のための医薬組成物。
【請求項48】
配列番号:5に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項49】
配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、請求項1に記載の方法において該ポリペプチドを被験化合物として用いたときに、基質のユビキチン化のレベルが該ポリペプチド不存在下において測定されたユビキチン化のレベル結合のレベルよりも低い、ポリペプチド。
【請求項50】
配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、請求項12に記載の方法において該ポリペプチドを被験化合物として用いたときに、シノビオリンまたはそのホモログと基質の結合のレベルが該ポリペプチド不存在下において測定された結合のレベルよりも低い、ポリペプチド。
【請求項51】
請求項48〜50のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項52】
請求項48〜50のいずれか一項に記載のポリペプチドを有効成分として含有する、線維症の治療および/または予防のための医薬組成物。
【請求項53】
請求項48〜50のいずれか一項に記載のポリペプチドを有効成分として含有する、関節リウマチの治療および/または予防のための医薬組成物。

【国際公開番号】WO2005/019472
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513374(P2005−513374)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012329
【国際出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(301050902)株式会社ロコモジェン (15)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】