説明

シャッタ式雨戸装置

【課題】 閉鎖状態で屋外から見た場合の体裁を良好にすると共に、防犯上も有利な構造を提供する。
【解決手段】 シャッタ1の引き出し方向先端に位置するスラット7の屋内側面で、このシャッタ1を閉鎖位置に移動させた状態で屋外側から見えない部分に、このシャッタ1を上枠及び下枠に沿って移動させる際の手掛かりとなる移動框25を結合固定する。この為、閉鎖状態で屋外側に上記移動框25が露出する事がなく、上記課題を解決できる。又、この移動框25を、隣り合うスラット7、7に掛け渡す状態で設ける事により、この移動框25に手を掛けて上記シャッタ1を開閉する際に上記スラット7、7を傾斜しにくくして、この開閉に要する力の低減を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般住宅等の建造物の窓開口(腰窓及び掃き出し窓を含む=特許請求の範囲に記載した開口部)を開閉する為のシャッタ式雨戸装置の改良に関し、閉鎖状態で屋外から見た場合の体裁を良好にすると共に、防犯上も有利な構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
それぞれが短冊状に形成された複数枚のスラットの幅方向端縁同士を揺動変位自在に結合して成り、巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを自在としたシャッタを使用した雨戸装置が、一部で使用されている。但し、雨戸装置として使用されているシャッタ装置の多くは、建造物の外壁面のうちで上記窓開口の上側部分に巻き取り軸を、水平方向に設けた構造を有する。窓開口を開放する場合には、上記シャッタを上方に巻き上げ、この窓開口を下側から順番に解放する。この様な従来から広く使用されているシャッタ式雨戸装置の場合には、例えば日差しの方向等に応じて、窓開口の水平方向の一部のみ解放しておく事はできない。
【0003】
これに対して特許文献1には、横開き式のシャッタ式雨戸装置が記載されている。このシャッタ式雨戸装置は、巻き取り軸と、シャッタと、上枠と、下枠とを備える。このうちの巻き取り軸は、建造物の外壁面のうちでこの建造物に設けられた窓開口(開口部)の側方部分に、鉛直方向に亙って配置されている。又、上記シャッタは、それぞれが縦方向に長い短冊状に形成された複数枚のスラットの幅方向端縁同士を、揺動変位自在に結合して成り、上記巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを自在とされている。又、上記上枠は、上記外壁面の一部に上記開口部の上辺に沿って設けられたもので、下面にこのシャッタの上端部を案内する為の上部ガイド溝を設けている。又、上記下枠は、上記外壁面の一部に上記開口部の下辺に沿って設けられたもので、上面に上記シャッタの下端部を案内する為の下部ガイド溝を設けている。
【0004】
この様なシャッタ式雨戸装置の場合には、上記シャッタの開閉を容易に行なえる様にすべく、このシャッタの引き出し方向先端縁に、このシャッタを上記上枠及び下枠に沿って移動させる際の手掛かりとなる移動框を結合固定する必要がある。この為に上記引用文献1に記載された発明の場合には、引き出し方向先端に位置するスラットに、このスラットよりも更に引き出し方向前方に突出する状態で、上記移動框を結合固定している。この様な移動框は、上記シャッタ式雨戸装置を閉鎖した状態でも屋外側からはっきりと目視できる。この為、閉鎖状態で屋外から見た場合の意匠が悪くなる。又、屋外側から上記シャッタを解放する為に利用可能な手掛かりが存在する為、防犯上も好ましくない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−364265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、閉鎖状態で屋外から見た場合の体裁を良好にすると共に、防犯上も有利な構造を提供すべく、閉鎖状態で屋外側に移動框が露出する事のないシャッタ式雨戸装置を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャッタ式雨戸装置は、前述の特許文献1に記載されて従来から知られているシャッタ式雨戸装置と同様に、巻き取り軸と、シャッタと、上枠と、下枠とを備える。このうちの巻き取り軸は、建造物の外壁面のうちでこの建造物に設けられた窓開口(開口部)の側方部分に、鉛直方向に亙って配置されている。又、上記シャッタは、それぞれが縦方向に長い短冊状に形成された複数枚のスラットの幅方向端縁同士を、揺動変位自在に結合して成り、上記巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを自在とされている。又、上記上枠は、上記外壁面の一部に上記開口部の上辺に沿って設けられたもので、下面にこのシャッタの上端部を案内する為の上部ガイド溝を設けている。又、上記下枠は、上記外壁面の一部に上記開口部の下辺に沿って設けられたもので、上面に上記シャッタの下端部を案内する為の下部ガイド溝を設けている。
特に、本発明のシャッタ式雨戸装置に於いては、上記シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面で、少なくともこのシャッタを閉鎖位置に移動させた状態で屋外側から見えない部分に、このシャッタを上記上枠及び下枠に沿って移動させる際の手掛かりとなる移動框を結合固定している。
【発明の効果】
【0008】
上述の様に構成する本発明のシャッタ式雨戸装置の場合には、シャッタを閉鎖位置に移動させた状態では、シャッタを上枠及び下枠に沿って移動させる際の手掛かりとなる移動框が、屋外側に露出しなくなる。この為、閉鎖状態で屋外から見た場合の意匠をすっきりとした良好なものにできるだけでなく、屋外側から上記シャッタを解放する為の手掛かりを少なくして、このシャッタを屋外側からこじ開けにくくでき、防犯の面からも好ましくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2、3に記載した様に、各スラットとして、アルミニウム合金或いは合成樹脂の押出型材製で、屋内側面の幅方向2個所位置に、それぞれがシャッタの移動方向に開口した係止凹溝が、互いの開口を逆方向に向けた状態で設けられたものを使用する。又、移動框は、押出型材製で、屋外側端部の2個所位置に第一、第二の係止突条を形成したものを使用する。
【0010】
そして、例えば請求項2に記載した様に、このうちの第一の係止突条を、シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面に形成した1対の係止凹溝のうちの一方の係止凹溝に、第二の係止突条を他方の係止凹溝に、それぞれ係止する事により、上記引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面に結合固定する。
この様な構成を採用すれば、上記移動框を上記スラットに対し、容易にしかも強固に結合固定できる。
【0011】
或いは、請求項3に記載した様に、上記第一、第二の係止突条のうちの一方の係止突条を、シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面に形成した1対の係止凹溝のうちの先端側の係止凹溝に係止する。又、他方の係止突条を、シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの隣に位置する第二のスラットの屋内側面に形成した1対の係止凹溝のうち、このシャッタの引き出し方向先端に位置するスラットから遠い側に存在する係止凹溝に係止する。これにより、上記引き出し方向先端に位置する2枚のスラットの屋内側面に結合固定する。
【0012】
この様に構成すれば、上記移動框に手を掛けて、上記シャッタの巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを行なう際に於ける、上記移動框の移動に対する抵抗を大きくなりにくくできる。即ち、上記各スラットの上下両端縁部が係合している上部ガイド溝及び下部ガイド溝の幅寸法は、上記シャッタの移動を可能とすべく、上記各スラットの上下両端部でこれら各ガイド溝に係合している部分の厚さ寸法よりも少し大きくしている。従って、上記移動框に手を掛けて上記引き出し方向先端に位置するスラットを押し引きすると、このスラットの幅方向が上記両ガイド溝の長さ方向に対し傾斜する傾向になる。そして、この傾斜角度が大きくなると、上記スラットの上下両端部と上記両ガイド溝との間に作用する摩擦が大きくなり、上記移動框を移動させる為に要する力が大きくなる。これに対して、上記請求項3に記載した様に、隣り合う2枚のスラット同士を結合し、これら両スラット同士が折れ曲がらない様にすれば、上記傾斜角度が大きくならず、上記移動框を移動させる為に要する力が徒に大きくなる事を防止できる。
【0013】
又、上述の様な請求項3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した様に、上記移動框の屋外側端部で第一、第二の係止突条の間部分に、第三の係止突条を形成する。そして、この第三の係止突条を、これら第一、第二の係止突条を係止した係止凹溝の間に存在する別の係止凹溝に係合させる。
この様に構成すれば、上記2枚のスラット同士の結合部が上記移動框から離れる方向に変位する事を防止して、上記シャッタの先端部の剛性を向上させられる。
【0014】
又、上述の請求項2〜4に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した様に、上記移動框を、それぞれが押出型材製である主体と補助体とをねじにより結合固定して構成する。そして、このうちの主体の屋外側端部に第一の係止突条を、補助体の屋外側端部に第二の係止突条を、それぞれ形成する。
この様に構成すれば、第一、第二の係止突条(請求項4に記載した発明の場合には更に第三の係止突条)を係止凹溝に係合させる作業を容易に行なえる。即ち、これら各係止突条を形成した移動框を一体としても、これら各係止突条を上記各係止凹溝に、スラットの長さ方向端部から滑り込ませる事で、係合させる事は可能である。但し、係合作業が面倒になり、特に、シャッタ式雨戸装置を窓開口部分に建て込んだままの状態で上記移動框の着脱作業を行なう事はできない。
これに対して、上述の様に、上記移動框を主体と補助体とから構成すれば、上記各係止突条と上記各係止凹溝との係合作業が容易になり、シャッタ式雨戸装置を窓開口部分に建て込んだままの状態で上記移動框の着脱作業を行なう事も可能になる。
【0015】
又、本発明を実施する場合に、シャッタは1枚で片開きであっても良いが、請求項6に記載した様に、2枚のシャッタを両開き式に設置する事が、開口部の開閉状態の調節の自由度を高くする面からは好ましい。この場合には、巻き取り軸を開口部の両側方部分に設ける。そして、この開口部を閉鎖する状態で、これら両巻き取り軸から引き出した1対のシャッタの先端縁同士を、この開口部の水平方向中間部で突き合わせる。
この様な両開き式のシャッタ式雨戸装置で本発明を実施する場合には、上記両シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面で、これら両シャッタを閉鎖位置に移動させた状態で屋外側から見えない部分に、それぞれ移動框を結合固定する。
【実施例】
【0016】
図1〜18は、本発明の実施例を示している。先ず図1は、本発明のシャッタ式雨戸装置を、1対のシャッタ1、1を閉鎖位置にまで移動して窓開口を閉鎖した状態で、屋外側から見た正面図である。上記シャッタ式雨戸装置は、それぞれが上記両シャッタ1、1を収納する為の戸袋ケース部2、2を有する。これら両戸袋ケース部2、2は、それぞれ鉛直方向に配置した状態で、建造物の壁3の外壁面で、この壁3に形成した窓開口4(図2、4参照)の両側部分に支持固定している。又、上記両戸袋ケース部2、2の上端の互いに対向する側面同士の間に上枠5を、同じく下端の互いに対向する側面同士の間に下枠6を、それぞれ掛け渡す様に、互いに平行に、水平方向に設けている。
【0017】
上記両シャッタ1、1はそれぞれ、鉛直方向に長い短冊状のスラット7、7を揺動変位自在に結合して成る。これら各スラット7、7は、アルミニウム合金或いは硬質合成樹脂を射出成形して成る長尺材を所定長さに切断して互いに同じ長さ寸法を有する定尺材を得、更にこの定尺材の中間部上下両端近傍部分に、それぞれ上部ガイド切り欠き8と下部ガイド切り欠き9(図4参照)とを形成して成る。この様にして得た上記各スラット7、7の幅方向(図2〜3の左右方向)両端縁部には、それぞれ屋内側(図2〜3の下側)に折れ曲がった折れ曲がり板部10a、10bを形成している。そして、一端縁(図2〜3の右側のシャッタ1を構成する各スラット7、7の左端縁、左側のシャッタ1の場合は右端縁)側の折れ曲がり板部10aの屋外側端縁から、先端縁に向かう程屋内側に向かう方向に回り込んだ屋外側係合湾曲部11を、上記折れ曲がり板部10aよりも幅方向に突出する状態で形成している。これに対して、他端縁(図2〜3の右側のシャッタ1の場合の右端縁、左側のシャッタ1の場合の左端縁)側の折れ曲がり板部10bの屋内側端縁から、先端縁に向かう程屋外側に向かう方向に回り込んだ屋内側係合湾曲部12を形成している。
【0018】
そして、隣り合うスラット7、7同士の間で、上記屋内側係合湾曲部12と上記屋外側係合湾曲部11とを係合させる事により、上記隣り合うスラット7、7を、揺動変位自在に連結している。尚、この様にして連結したスラット7、7は、図2〜3に示す状態よりもシャッタ1の屋内面側(図2〜3の下面側)が凹面となる方向には揺動するが、この屋内面側が凸面となる方向に揺動する事はない。この様な凸面となる方向への揺動は、隣り合うスラット7、7の一端縁に形成した屋外側係合湾曲部11の基部と、同じく他端縁に形成した上記折れ曲がり板部10bとの衝合により阻止する。
【0019】
上述の様に複数枚のスラット7、7を揺動変位自在に結合して成る上記両シャッタ1、1の基端縁は、それぞれ前記両戸袋ケース部2、2内に設けた巻き取り軸13に結合し、前記窓開口4を解放する際に、この巻き取り軸13に巻き取る様にしている。本実施例の場合、この巻き取り軸13は、これら両戸袋ケース部2、2の上下両端部に、両戸袋ケース部2、2毎に互いに同心に設けた1対の軸素子13a、13bと、これら両軸素子13a、13bに上下両端部を外嵌固定した円環状のドラムチューブ55とにより構成している。上記両シャッタ1、1は、それぞれの基端縁を構成するそれぞれ1枚のスラット7を、図10に示す様に、何れかの戸袋ケース部2内に回転自在に設けた上記ドラムチューブ55に、ねじ14により結合固定している。
【0020】
この様な巻き取り軸13を構成する上記両軸素子13a、13bのうち、少なくとも一方(一方にのみ設ける場合には、通常は上側の軸素子13a)と上記戸袋ケース部2との間には、図9、11に示す様に、ゼンマイ15を設け、上記巻き取り軸13に、上記シャッタ1を巻き取る方向の弾力を付与している。但し、この弾力は、このシャッタ1を自動的に巻き取る程大きなものではない。即ち、人がこのシャッタ1の先端縁を上記戸袋ケース部2に向けて押した場合に、このシャッタ1を上記巻き取り軸13に巻き取る程度の大きさに規制している。尚、上記両軸素子13a、13bの中間部で、上記巻き取り軸13に巻き取られたシャッタ1を上下から挟む位置に、それぞれフランジ部16、16を設けている。又、少なくとも下側(図示の例では両側)の軸素子13bと上記戸袋ケース部2との間に、ラジアル転がり軸受17とスラスト転がり軸受18とを設け、上記巻き取り軸13の回転抵抗の低減を図っている。尚、上記軸素子13aの一部で、上記フランジ部16よりも上記シャッタ1と反対側に突出した部分には、図13に示す様に、上記ゼンマイ15の端部を係止する為の係止スリット56、56を設けている。図13に係止スリット56、56が2個所設けられているのは、左右の戸袋ケース部2、2同士の間で(或いは戸袋ケース部2の上下で)部品を共通化する為である。
【0021】
上記両シャッタ1、1を構成する各スラット7、7の上端部に形成した前記上部ガイド切り欠き8は、図4に示す様に、前記上枠5の下面に形成した上部ガイド溝19に、摺動自在に係合させている。即ち、この上部ガイド溝19の屋内側面に突設した上部ガイド突条20を上記上部ガイド切り欠き8に緩く係合させている。又、上記上部ガイド溝19の屋外側面に係止した上部シール材21を上記各スラット7、7の上部屋外側面に摺接させている。又、上記各スラット7、7の下端部に形成した前記下部ガイド切り欠き9は、前記下枠6の上面に形成した下部ガイド溝22に、摺動自在に係合させている。即ち、この下部ガイド溝22の屋内側面に突設した下部ガイド突条23を上記下部ガイド切り欠き9に緩く係合させている。又、上記下部ガイド溝22の屋外側面に係止した下部シール材24を上記各スラット7、7の下部屋外側面に摺接させている。尚、上記上部、下部両シール材21、24は、摩擦係数の小さい弾性材を使用するか、表面に摩擦係数の低い皮膜を形成して、上記各スラット7、7の移動に対する抵抗を低く抑えられる様にしている。
【0022】
上述の様な構成により、前記各戸袋ケース部2、2内の巻き取り軸13から、上記上枠5と上記下枠6との間に上記シャッタ1を引き出して、前記窓開口4を塞いだり、或いは、この窓開口4を塞いだこのシャッタ1を上記各戸袋ケース部2、2内に押し込んで、上記巻き取り軸13に巻き取れる様にできる。この様にして上記窓開口4を開閉する際には、上記シャッタ1の引き出し方向先端部を押し引きする必要がある。この為に、このシャッタ1の先端部に、この押し引き作業の際の手掛かりとなる移動框25を設けている。
【0023】
本実施例の場合には、上記シャッタ1を構成する上記各スラット7、7として、図2〜3に示す様な、それぞれの屋内側面の幅方向両端寄りの2個所位置に、それぞれが上記シャッタ1の移動方向(図2〜3の左右方向)に開口した係止凹溝26a、26bを形成したものを使用している。上記各スラット7、7の両端部に形成した係止凹溝26a、26bが開口している方向は互いに逆方向であり、図示の例では、これら両係止凹溝26a、26bが、互いに対向する状態で形成している。又、本実施例の場合には、上記移動框25は、主体27と補助体28とをねじ29により結合固定して成る。これら主体27及び補助体28はそれぞれ、上記各スラット7、7と同様に、アルミニウム合金或いは硬質合成樹脂等の押出型材により造っている。
【0024】
そして、このうちの主体27の屋外側端部に形成した第一の係止突条30(請求項4の第三の係止突条)の先端部に形成したL字形の鉤部を、上記シャッタ1の引き出し方向先端に位置するスラット7の屋内側面に形成した1対の係止凹溝26a、26bのうちの一方(図示の例では引き出し方向に関して後側)の係止凹溝26aに係止している。又、上記補助体28の屋外側端部に形成した第二の係止突条31の先端部に形成したL字形の鉤部を他方(図示の例では引き出し方向前側)の係止凹溝26bに係止している。上記主体27と上記補助体28とは、この様に、上記第一、第二両係止突条30、31の鉤部を上記両係止凹溝26a、26bに係止した状態で、上記ねじ29により互いに結合し、上記シャッタ1の引き出し方向先端に位置するスラット7の屋内側面に結合固定している。本実施例の場合には、この様な構成を採用する事により、上記移動框25を上記引き出し方向先端に位置するスラット7に対し、容易にしかも強固に結合固定できる様にしている。
【0025】
本実施例の場合には、上述の様な構成により、上記両シャッタ1、1を閉鎖位置に移動させた状態では、これら両シャッタ1、1を前記上枠5及び下枠6に沿って移動させる際の手掛かりとなる上記移動框25が、図1に示す様に、屋外側に露出しなくなる。この為、閉鎖状態で屋外から見た場合の意匠をすっきりとした良好なものにできるだけでなく、屋外側から上記両シャッタ1、1を解放する為の手掛かりを少なくして、これら両シャッタ1、1を屋外側からこじ開けにくくでき、防犯の面からも好ましくなる。
【0026】
又、図示の実施例の場合には、上記主体27の屋外側端部で、上記シャッタ1の引き出し方向後側部分に、第三の係止突条32(請求項3の第二の係止突条)を設けている。そして、この第三の係止突条32を、上記シャッタ1の引き出し方向先端に位置するスラット7の隣に位置する第二のスラット7の屋内側面に形成した1対の係止凹溝26a、26bのうち、上記引き出し方向先端側に位置するスラット7から遠い側(戸袋ケース部2側)に存在する係止凹溝26aと係合させている。従って、図示の実施例の場合に、上記主体27と上記補助体28とから成る上記移動框25は、上記シャッタ1の引き出し方向先端部に存在する2枚のスラット7、7に掛け渡される状態で、これら両スラット7、7に対し結合固定されている。
【0027】
本実施例の場合には、上述の様な構成を採用する事により、上記移動框25に手を掛けて、上記シャッタ1の前記巻き取り軸13への巻き取り及びこの巻き取り軸13からの引き出しを行なう際に於ける、上記移動框25の移動に対する抵抗を小さく抑えられる様にしている。即ち、上記各スラット7、7の上下両端部に設けた前記上部、下部両切り欠き8、9が係合している、前記上部ガイド溝19及び下部ガイド溝22の幅寸法は、上記シャッタ1の移動を可能とすべく、上記各スラット7、7の上下両端部で上記上部、下部両切り欠き8、9を形成した部分の厚さ寸法よりも少し大きくしている。又、上記移動框25は、上記シャッタ1よりも屋内側に突出する状態で設けられているので、この移動框25に手を掛けてこのシャッタ1を押し引きすると、この移動框25を固定したスラット7、7に、鉛直軸を中心に回転する方向のモーメントが加わる。
【0028】
従って、上記移動框25に手を掛けて上記引き出し方向先端に位置するスラット7を押し引きすると、このスラット7の幅方向が上記両ガイド溝19、22の長さ方向に対し傾斜する傾向になる。そして、この傾斜角度が大きくなると、上記スラット7の上下両端部が上記両ガイド溝19、22の内側面同士の間で突っ張る傾向が強くなり、これらスラット7の上下両端部と両ガイド溝19、22の内側面との間に作用する摩擦が大きくなって、上記移動框25を移動させる為に要する力が大きくなる。これに対して、図示の実施例の場合には、隣り合う2枚のスラット7、7同士を結合し、これら両スラット7、7同士が折れ曲がらない様にしているので、上記傾斜角度が大きくはならない。この為、これら両スラット7、7の上下両端部が上記両ガイド溝19、22の内側面同士の間で突っ張る傾向になりにくく、これらスラット7の上下両端部と両ガイド溝19、22の内側面との間に作用する摩擦を小さく抑えられて、上記移動框25を移動させる為に要する力が徒に大きくなる事を防止できる。
【0029】
更に、図示の実施例の場合には、前記1対のシャッタ1、1の引き出し方向先端部を前記上枠5及び下枠6の中央部で停止させるべく、図3〜8に示す様な上部、下部両ストッパ機構33、34を設けている。これら両ストッパ機構33、34を構成する為に、上記移動框25の上端開口部に上部ホルダ35を、同じく下端開口部に下部ホルダ36を、それぞれ装着している。合成樹脂を射出成形する等により造られたこれら両ホルダ35、36には、それぞれ上部ストッパローラ37と下部ストッパローラ38とを、屋内外方向に配置された水平軸を中心とする回転を自在に保持している。又、これら水平軸の両端部は、それぞれ上記両ホルダ35、36に内蔵した上部、下部支持ブラケット39、40に支持し、更にこれら両支持ブラケット39、40を圧縮ばね41、41により、上記移動框25の上端面或いは下端面から突出する方向に押圧している。但し、上記両支持ブラケット39、40の昇降量は、上記移動框25の上端面或いは下端面からの突出量が最も大きくなった場合でも、上記各ストッパローラ37、38が、前記上枠5の下面或いは下枠6の上面に近接対向しても接触しない様に、それぞれ規制している。
【0030】
一方、上記上枠5の長さ方向中央部下面には上部止めブロック42を、上記下枠6の長さ方向中央部上面には下部止めブロック43を、それぞれねじ止め固定している。これら両止めブロック42、43はそれぞれ、上記各枠5、6の長さ方向中央部に、上記上枠5の下面或いは上記下枠6の上面から最も突出した上部止め壁44或いは下部止め壁45を形成している。又、これら両止め壁44、45の両側部分を両端部分よりも凹ませて、それぞれ1対ずつの上部保持凹部46、46或いは下部保持凹部47、47を形成している。更に、上記上部止めブロック42の両端部下面或いは上記下部止めブロック43の両端部上面には、それぞれこれら各ブロック42、43の両端縁に向かう程上記上枠5の下面或いは上記下枠6の上面からの突出量が少なくなる方向に傾斜した、上部ガイド傾斜面48、48或いは下部ガイド傾斜面49、49を形成している。
【0031】
本実施例の場合には、上述の様な上部、下部両ストッパ機構33、34を設けている為、前記1対のシャッタ1、1の引き出し方向先端部を、上記上枠5及び下枠6の中央部で、容易且つ確実に停止させる事ができる。即ち、上記移動框25に手を掛けて、上記両シャッタ1、1を引き出しつつ、この移動框25を上記上枠5及び下枠6の中央部に移動させると、前記上部、下部両ストッパローラ37、38が、前記各圧縮ばね41、41を弾性的に縮めつつ、上記上部、下部両ガイド傾斜面48、49に乗り上げる。但し、これら両ストッパローラ37、38は、上記上部、下部両止め壁44、45を越えて移動する事はないので、上記シャッタ1、1の引き出し方向先端部を上記上枠5及び下枠6の中央部で、容易且つ確実に停止させる事ができる。しかも、この状態では、上記両ストッパローラ37、38が、上記各圧縮ばね41、41の弾力に基づいて、上記上部、下部両保持凹部46、47内に嵌り込む。この為、上記シャッタ1、1の引き出し方向先端部の位置が不用意に移動する事はない。施錠時には、この状態で、屋内側でこれら両シャッタ1、1同士を結合するか、或いはこれら両シャッタ1、1と上記上枠5或いは上記下枠6とを結合する。
【0032】
尚、前記下部ホルダ36には、上記下部ストッパローラ38に加えて、屋内外方向に配置された水平軸を中心として回転する案内ローラ54を設置している。そして、この案内ローラ54の外周面を、上記下枠6の上面に転がり接触させる事により、上記移動框25の重量を支え、前記シャッタ1の引き出し及び巻き取りを軽い力で行なえる様にしている。
【0033】
次に、上述の様なシャッタ式雨戸装置の組立手順に就いて説明しつつ、残りの構成各部に就いて説明する。
先ず、図14の上半部に示す様に、左右1対の戸袋ケース部2、2と、上枠5と、下枠6とを組み立てる。但し、これら両戸袋ケース部2、2のうちで、屋外側を覆うカバー50(図2、17、18参照)は未だ装着しないでおく。そして、この様に組み立てた、上記各部材2、5、6を、壁3の外壁面のうちで窓開口4(図2、4参照)を囲む部分にねじ止め固定する。その後、前記1対の軸素子13a、13bとドラムチューブ55とにより構成される巻き取り軸13にシャッタ1を巻き付けたものを、上記両戸袋ケース部2、2内に組み込む。
【0034】
次に、図15に示す様に、上記シャッタ1を上記巻き取り軸13から、上記上枠5と上記下枠6との間に、前記上部、下部両切り欠き8、9と前記上部、下部両ガイド突条20、23とを係合させつつ引き出す。そして、図16に示す様に、このシャッタ1の先端部屋内側面に前記移動框25を、前記主体27と前記補助体28とをねじ止めする事により結合固定する。
次いで、図17に示す様に、上記両戸袋ケース部2、2の屋外側の開口部に上記カバー50をねじ止め固定し、この開口部を覆う。このカバー50をねじ止め固定する為のねじを螺合させるナット部材は、上記両戸袋ケース部2、2を構成する天板の下面及び底板部の上面に固定している。
そして最後に、図18に示す様に、上記カバー50の先端部(図2の左上端部)を覆う補助カバー51を装着する。この補助カバー51は、その基端縁部(図2の右端縁部)を上記カバー50の先端部に形成した係止溝に係合させると共に、その先端寄り部分の屋内側面に形成した突壁の上下両端部のうちの少なくとも上端部を上記上枠5及び上記下枠6に対し、アタッチメント52(図2参照)とねじ53とにより結合固定する。
以上の組立作業により、本実施例のシャッタ式雨戸装置を、上記壁3の外壁面のうちで窓開口4を囲む部分に組み付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例を示す、シャッタ式雨戸装置を屋外側から見た正面図。
【図2】図1の拡大A−A断面図。
【図3】同拡大B−B断面図。
【図4】同拡大C−C断面図。
【図5】図4の上部に相当する部分断面図。
【図6】図5の側方から見た図。
【図7】図4の下部に相当する部分断面図。
【図8】図7の側方から見た図。
【図9】戸袋ケース内に設けたシャッタの巻き取り機構部分の側面図。
【図10】図9のD−D断面図。
【図11】図9の上部に相当する部分の断面図。
【図12】図11の下方から見た図。
【図13】同E−E断面図。
【図14】シャッタ式雨戸装置の組立工程の初期段階を示す略斜視図。
【図15】続く工程を示す部分略斜視図。
【図16】それに続く工程を示す部分略斜視図。
【図17】更にそれに続く工程を示す部分略斜視図。
【図18】最終工程を示す略斜視図。
【符号の説明】
【0036】
1 シャッタ
2 戸袋ケース部
3 壁
4 窓開口
5 上枠
6 下枠
7 スラット
8 上部ガイド切り欠き
9 下部ガイド切り欠き
10a、10b 折れ曲がり板部
11 屋外側係合湾曲部
12 屋内側係合湾曲部
13 巻き取り軸
13a、13b 軸素子
14 ねじ
15 ゼンマイ
16 フランジ部
17 ラジアル転がり軸受
18 スラスト転がり軸受
19 上部ガイド溝
20 上部ガイド突条
21 上部シール材
22 下部ガイド溝
23 下部ガイド突条
24 下部シール材
25 移動框
26a、26b 係止凹溝
27 主体
28 補助体
29 ねじ
30 第一の係止突条
31 第二の係止突条
32 第三の係止突条
33 上部ストッパ機構
34 下部ストッパ機構
35 上部ホルダ
36 下部ホルダ
37 上部ストッパローラ
38 下部ストッパローラ
39 上部支持ブラケット
40 下部支持ブラケット
41 圧縮ばね
42 上部止めブロック
43 下部止めブロック
44 上部止め壁
45 下部止め壁
46 上部保持凹部
47 下部保持凹部
48 上部ガイド傾斜面
49 下部ガイド傾斜面
50 カバー
51 補助カバー
52 アタッチメント
53 ねじ
54 案内ローラ
55 ドラムチューブ
56 係止スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の外壁面のうちでこの建造物に設けられた開口部の側方部分に、鉛直方向に亙って配置された巻き取り軸と、それぞれが縦方向に長い短冊状に形成された複数枚のスラットの幅方向端縁同士を揺動変位自在に結合して成り、上記巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを自在とされたシャッタと、上記外壁面の一部に上記開口部の上辺に沿って設けられた、下面にこのシャッタの上端部を案内する為の上部ガイド溝を設けた上枠と、上記外壁面の一部に上記開口部の下辺に沿って設けられた、上面に上記シャッタの下端部を案内する為の下部ガイド溝を設けた下枠とを備えたシャッタ式雨戸装置に於いて、上記シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面で、少なくともこのシャッタを閉鎖位置に移動させた状態で屋外側から見えない部分に、このシャッタを上記上枠及び下枠に沿って移動させる際の手掛かりとなる移動框を結合固定したシャッタ式雨戸装置。
【請求項2】
各スラットは、押出型材製で、屋内側面の幅方向2個所位置に、それぞれがシャッタの移動方向に開口した係止凹溝が、互いの開口を逆方向に向けた状態で設けられたものであり、移動框は、押出型材製で、屋外側端部の2個所位置に第一、第二の係止突条を形成したものであって、このうちの第一の係止突条を、シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面に形成した1対の係止凹溝のうちの一方の係止凹溝に、第二の係止突条を他方の係止凹溝に、それぞれ係止する事により、上記引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面に結合固定している、請求項1に記載したシャッタ式雨戸装置。
【請求項3】
各スラットは、押出型材製で、屋内側面の幅方向2個所位置に、それぞれがシャッタの移動方向に開口した係止凹溝が、互いの開口を逆方向に向けた状態で設けられたものであり、移動框は、押出型材製で、屋外側端部の2個所位置に第一、第二の係止突条を形成したものであって、このうちの第一の係止突条を、シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面に形成した1対の係止凹溝のうちの先端側の係止凹溝に、第二の係止突条を、シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの隣に位置する第二のスラットの屋内側面に形成した1対の係止凹溝のうち、このシャッタの引き出し方向先端に位置するスラットから遠い側に存在する係止凹溝に、それぞれ係止する事により、上記引き出し方向先端に位置する2枚のスラットの屋内側面に結合固定している、請求項1に記載したシャッタ式雨戸装置。
【請求項4】
移動框の屋外側端部で第一、第二の係止突条の間部分に第三の係止突条を形成し、この第三の係止突条を、これら第一、第二の係止突条を係止した1対の係止凹溝の間に存在する別の係止凹溝に係合させた、請求項3に記載したシャッタ式雨戸装置。
【請求項5】
移動框が、それぞれが押出型材製である主体と補助体とをねじにより結合固定して成るものであり、このうちの主体の屋外側端部に第一の係止突条と第二の係止突条とのうちの一方の係止突条を、補助体の屋外側端部に同じく他方の係止突条を、それぞれ形成している、請求項2〜4の何れか1項に記載したシャッタ式雨戸装置。
【請求項6】
巻き取り軸が開口部の両側方部分に設けられており、この開口部を閉鎖する状態で、これら両巻き取り軸から引き出した1対のシャッタの先端縁同士がこの開口部の水平方向中間部で突き合わせられ、これら両シャッタの引き出し方向先端に位置するスラットの屋内側面で、これら両シャッタを閉鎖位置に移動させた状態で屋外側から見えない部分に、それぞれ移動框を結合固定している、請求項1〜5の何れか1項に記載したシャッタ式雨戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−132268(P2006−132268A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325318(P2004−325318)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2004年8月26日、8月27日、8月28日 財団法人日本産業デザイン振興会主催の「2004年度 グッドデザイン・プレゼンテーション」に出品
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)