説明

シャッタ式雨戸装置

【課題】 鉛直方向に配置された巻き取り軸13にシャッタ1を巻き取る、横開き式の構造で、このシャッタ1により窓開口4を開閉する為に要する力の軽減を図る。
【解決手段】 上記巻き取り軸13に、人手により戸袋ケース部2内に押し込まれた上記シャッタ1を巻き取れるだけの大きさの弾力を付与する。又、下部ガイド溝の端部に、このシャッタ1の下端縁を支承する為の支承ローラを設ける。この構成により、上記戸袋ケース部2から上記シャッタ1を引き出す際に要する力も、この戸袋ケース部2内にシャッタ1を押し込む際に要する力も、何れも小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般住宅等の建造物の窓開口(腰窓及び掃き出し窓を含む=特許請求の範囲に記載した開口部)を開閉する為のシャッタ式雨戸装置の改良に関し、開閉作業に要する力を小さくできる構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
それぞれが短冊状に形成された複数枚のスラットの幅方向端縁同士を揺動変位自在に結合して成り、巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを自在としたシャッタを使用した雨戸装置が、一部で使用されている。但し、雨戸装置として使用されているシャッタ装置の多くは、建造物の外壁面のうちで上記窓開口の上側部分に巻き取り軸を、水平方向に設けた構造を有する。窓開口を開放する場合には、上記シャッタを上方に巻き上げ、この窓開口を下側から順番に解放する。この様な従来から広く使用されているシャッタ式雨戸装置の場合には、例えば日差しの方向等に応じて、窓開口の水平方向の一部のみ解放しておく事はできない。
【0003】
これに対して特許文献1には、横開き式のシャッタ式雨戸装置が記載されている。このシャッタ式雨戸装置は、戸袋ケース部と、巻き取り軸と、シャッタと、上枠と、下枠とを備える。このうちの巻き取り軸は、この戸袋ケース部内に回転自在に設置されて、建造物の外壁面のうちでこの建造物に設けられた窓開口(開口部)の側方部分に、鉛直方向に配置されている。又、上記シャッタは、それぞれが縦方向に長い短冊状に形成された複数枚のスラットの幅方向端縁同士を、揺動変位自在に結合して成り、上記巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを自在とされている。又、上記上枠は、上記外壁面の一部に上記開口部の上辺に沿って設けられたもので、下面にこのシャッタの上端部を案内する為の上部ガイド溝を設けている。又、上記下枠は、上記外壁面の一部に上記開口部の下辺に沿って設けられたもので、上面に上記シャッタの下端部を案内する為の下部ガイド溝を設けている。
【0004】
この様なシャッタ式雨戸装置の場合には、上記窓開口の開閉、即ち、上記巻き取り軸からの上記シャッタの引き出し、及びこの巻き取り軸へのシャッタの巻き取りを、何れも軽い力で行なえる様にする必要がある。この様な点に就いて、上記特許文献1には特に記載されていない。一方、上記窓開口の上側部分に巻き取り軸を設けた、巻き上げ式のシャッタ式雨戸装置の場合には、この巻き取り軸にシャッタの重量を支える程度の(比較的大きな)弾力を付与している。
【0005】
この為、この構造をそのまま横開き式のシャッタ式雨戸装置に適用すると、上記シャッタを巻き取る方向の弾力が大きくなり過ぎる。そして、このシャッタを窓開口を閉鎖する方向に移動させる(上記巻き取り軸から引き出す)為に要する力が徒に大きくなるだけでなく、窓開口の一部のみを塞ぐべく、上記シャッタを途中で停止させる事ができない。これに対して、上記シャッタを巻き取る方向の弾力をなくせば、このシャッタを窓開口を閉鎖する方向に移動させる為に要する力を小さくできる他、窓開口の一部のみを塞ぐべく、上記シャッタを途中で停止させる事も可能になる。但し、この場合には、このシャッタを上記巻き取り軸を設けた戸袋ケース部内に押し込んでも、このシャッタがこの戸袋ケース部の内面に押し付けられるだけで、上記巻き取り軸に巻き取られなくなる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−364265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、巻き取り軸からのシャッタの引き出し、及びこの巻き取り軸へのシャッタの巻き取りを、何れも軽い力で行なえ、しかもこのシャッタを途中で停止できるシャッタ式雨戸装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシャッタ式雨戸装置は、前述の特許文献1に記載されて従来から知られているシャッタ式雨戸装置と同様に、戸袋ケース部と、巻き取り軸と、シャッタと、上枠と、下枠とを備える。
このうちの戸袋ケース部は、建造物の外壁面のうちでこの建造物に設けられた開口部の側方部分に設けられる。
又、上記巻き取り軸は、上記戸袋ケース部内に鉛直方向に配置されて、この戸袋ケース部内で回転する。
又、上記シャッタは、それぞれが縦方向に長い短冊状に形成された複数枚のスラットの幅方向端縁同士を揺動変位自在に結合して成り、上記巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを自在とされている。
又、上記上枠は、上記外壁面の一部に上記開口部の上辺に沿って設けられており、下面に上記シャッタの上端部を案内する為の上部ガイド溝を設けている。
更に、上記下枠は、上記外壁面の一部に上記開口部の下辺に沿って設けられており、上面に上記シャッタの下端部を案内する為の下部ガイド溝を設けている。
特に、本発明のシャッタ式雨戸装置に於いては、上記巻き取り軸と上記戸袋ケース部との間にゼンマイを設け、この巻き取り軸に、上記シャッタを巻き取る方向の弾力を付与している。そして、このゼンマイの弾力を、上記上部ガイド溝と上記下部ガイド溝との間に存在する上記シャッタを自動的に巻き取る事はできないが、このシャッタが上記巻き取り軸に向け押された場合に、このシャッタをこの巻き取り軸に緩みなく巻き取れる大きさに規制している。尚、緩みなく巻き取れるとは、上記シャッタのうちで内径側に存在する部分(巻き取り軸に近い側)の外周面と、外径側に存在する部分(巻き取り軸から遠い側)の内周面とが接触する状態で巻き取れる状態を言う。
【発明の効果】
【0009】
上述の様に構成する本発明のシャッタ式雨戸装置の場合には、巻き取り軸からのシャッタの引き出し、及び、この巻き取り軸へのシャッタの巻き取りを、何れも軽い力で行なえ、しかもこのシャッタを途中で停止できる。
即ち、ゼンマイにより上記巻き取り軸に付与している巻き取り方向の弾力は、上部ガイド溝と下部ガイド溝との間に存在する上記シャッタを自動的に巻き取る事はできない程度に小さい。従って、上記ゼンマイの存在に基づき、上記巻き取り軸からのシャッタの引き出しに要する力の増大は限られたもので済み、開口部(窓開口)を塞ぐべく、このシャッタを引き出す為に要する力が軽くて済む。又、上記巻き取り軸から引き出したシャッタを、途中で停止させる事もできる。
【0010】
一方、上記シャッタを戸袋ケース部に向け押し込むと、このシャッタが、上記ゼンマイの弾力により、上記巻き取り軸に巻き取られる。このシャッタをこの巻き取り軸に向け、上記戸袋ケース部内に押し込む作業は、人手により行なう為、上記ゼンマイの弾力により上記シャッタを上部、下部両ガイド溝同士の間部分から引き戻す必要はない。従って、上記ゼンマイの弾力が小さくても、上記シャッタを上記巻き取り軸の周囲に、緩みなく、確実に巻き取れる。この為、人手により上記戸袋ケース部内に押し込まれたシャッタの外周面が、この戸袋ケース部の内面に擦れ合う事を確実に防止して、このシャッタをこの戸袋ケース部内に押し込みつつ、このシャッタを開口部を解放する方向に移動させる作業を、軽い力で行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、下部ガイド溝の底面で戸袋ケース部の底板部に隣接する部分に、屋内外方向に配置された枢軸を中心として回転する支承ローラを設ける。そして、この支承ローラにより、上記戸袋ケース部と下枠との間を移動するシャッタの下端縁を案内する。
この場合に、例えば請求項3に記載した様に、巻き取り軸として、その下端部にフランジ部が設けられたものを使用し、上記シャッタの下端縁を、上記巻き取り軸に巻き取られた状態でこのフランジ部の上面に当接させる。この場合に、上記支承ローラの上端部を、このフランジ部の上面の位置と同じか、この上面の位置よりも上方に位置させる。
この様に構成すれば、上記戸袋ケース部内にシャッタを出し入れする際に、このシャッタの下端縁と、例えばフランジ部の外周縁等の他の部分とが擦れ合う事を防止して、このシャッタを上記戸袋ケース部内に出し入れする際の摩擦抵抗を低減できる。この結果、このシャッタをこの戸袋ケース部内に出し入れする為に要する力を、より一層低減できる。
【実施例】
【0012】
図1〜19は、本発明の実施例を示している。先ず図1は、本発明のシャッタ式雨戸装置を、1対のシャッタ1、1を閉鎖位置にまで移動して窓開口を閉鎖した状態で、屋外側から見た正面図である。上記シャッタ式雨戸装置は、それぞれが上記両シャッタ1、1を収納する為の戸袋ケース部2、2を有する。これら両戸袋ケース部2、2は、それぞれ鉛直方向に配置した状態で、建造物の壁3の外壁面で、この壁3に形成した窓開口4(図2、4参照)の両側部分に支持固定している。又、上記両戸袋ケース部2、2の上端の互いに対向する側面同士の間に上枠5を、同じく下端の互いに対向する側面同士の間に下枠6を、それぞれ掛け渡す様に、互いに平行に、水平方向に設けている。
【0013】
上記両シャッタ1、1はそれぞれ、鉛直方向に長い短冊状のスラット7、7を揺動変位自在に結合して成る。これら各スラット7、7は、アルミニウム合金或いは硬質合成樹脂を射出成形して成る長尺材を所定長さに切断して互いに同じ長さ寸法を有する定尺材を得、更にこの定尺材の中間部上下両端近傍部分に、それぞれ上部ガイド切り欠き8と下部ガイド切り欠き9(図4参照)とを形成して成る。この様にして得た上記各スラット7、7の幅方向(図2〜3の左右方向)両端縁部には、それぞれ屋内側(図2〜3の下側)に折れ曲がった折れ曲がり板部10a、10bを形成している。そして、一端縁(図2〜3の右側のシャッタ1を構成する各スラット7、7の左端縁、左側のシャッタ1の場合は右端縁)側の折れ曲がり板部10aの屋外側端縁から、先端縁に向かう程屋内側に向かう方向に回り込んだ屋外側係合湾曲部11を、上記折れ曲がり板部10aよりも幅方向に突出する状態で形成している。これに対して、他端縁(図2〜3の右側のシャッタ1の場合の右端縁、左側のシャッタ1の場合の左端縁)側の折れ曲がり板部10bの屋内側端縁から、先端縁に向かう程屋外側に向かう方向に回り込んだ屋内側係合湾曲部12を、上記折れ曲がり板部10bから幅方向に突出する状態で形成している。
【0014】
そして、隣り合うスラット7、7同士の間で、上記屋内側係合湾曲部12と上記屋外側係合湾曲部11とを係合させる事により、上記隣り合うスラット7、7同士を、揺動変位自在に連結している。尚、この様にして連結したスラット7、7は、図2〜3に示す状態よりもシャッタ1の屋内面側(図2〜3の下面側)が凹面となる方向には揺動するが、この屋内面側が凸面となる方向に揺動する事はない。この様に屋内面側が凸面となる方向への揺動は、隣り合うスラット7、7の一端縁に形成した屋外側係合湾曲部11の基部と、同じく他端縁に形成した上記折れ曲がり板部10bとの衝合により阻止する。
【0015】
上述の様に複数枚のスラット7、7を揺動変位自在に結合して成る上記両シャッタ1、1の基端縁は、それぞれ前記両戸袋ケース部2、2内に設けた巻き取り軸13に結合し、前記窓開口4を解放する際に、この巻き取り軸13に巻き取る様にしている。本実施例の場合、この巻き取り軸13は、これら両戸袋ケース部2、2の上下両端部に、両戸袋ケース部2、2毎に互いに同心に設けた1対の軸素子13a、13bとドラムチューブ59とにより構成している。上記両シャッタ1、1は、それぞれの基端縁を構成するそれぞれ1枚のスラット7を、図6に示す様に、何れかの戸袋ケース部2内に回転自在に設けた上記両軸素子13a、13bにその両端部を外嵌固定したドラムチューブ59に、ねじ14により結合固定している。
【0016】
この様な巻き取り軸13を構成する上記両軸素子13a、13bのうち、少なくとも一方の軸素子(一方にのみ設ける場合には、通常は上側の軸素子13a)と上記戸袋ケース部2との間には、図5、7に示す様に、ゼンマイ15を設け、上記巻き取り軸13に、上記シャッタ1を巻き取る方向の弾力を付与している。但し、この弾力は、このシャッタ1を自動的に巻き取る程大きなものではない。即ち、人がこのシャッタ1の先端縁を上記戸袋ケース部2に向けて押した場合に、このシャッタ1を上記巻き取り軸13に巻き取る程度の大きさに規制している。尚、上記両軸素子13a、13bの中間部で、上記巻き取り軸13に巻き取られたシャッタ1を上下から挟む位置に、それぞれフランジ部16、16を設けている。又、少なくとも下側(図示の例では両側)の軸素子13bと上記戸袋ケース部2との間に、ラジアル転がり軸受17とスラスト転がり軸受18とを設け、上記巻き取り軸13の回転抵抗の低減を図っている。尚、図示の例では、これら両軸受17、18を、上記戸袋ケース部2内に収納する、上部ブラケット20と上記軸素子13aとの間、及び、下部ブラケット21と上記軸素子13bとの間に設けている。
【0017】
上記ゼンマイ15を設ける為に、上記軸素子13aの一部で、上記フランジ部16よりも上記シャッタ1と反対側に突出した部分に、図9に示す様に、上記ゼンマイ15の一端部を係止する為の係止スリット19、19を設けている。図9に係止スリット19、19が2個所設けられているのは、左右の戸袋ケース部2、2同士の間で(或いは戸袋ケース部2の上下で)部品を共通化する為である。一方、上記ゼンマイ15の他端部を係止する為に、上記軸素子13a(13b)を枢支する、上記上部ブラケット20の下面(図示の場合には、及び下部ブラケット21の上面)に、係止突片22を突設している。上記ゼンマイ15は、その両端部を上記係止スリット19とこの係止突片22とに係止している。そして、上記両軸素子13a、13bから成る上記巻き取り軸13から上記シャッタ1を引き出した場合に上記ゼンマイ15が巻かれ、この巻き取り軸13に、このシャッタ1を巻き取る方向の弾力を付与する様にしている。尚、上記ゼンマイ15により上記巻き取り軸13に付与している巻き取り方向の弾力は、上記戸袋ケース部2内に押し込まれた上記シャッタ1を、隙間なく巻き取るのに十分な値に設定している。但し、上記弾力は、次述する上部ガイド溝23と下部ガイド溝26との間に存在する上記シャッタ1を自動的に巻き取る事はできない程度に小さい値に設定している。
【0018】
上記両シャッタ1、1を構成する各スラット7、7の上端部は、図4に示す様に、前記上枠5の下面に形成した上部ガイド溝23に、摺動自在に係合させている。即ち、上記各スラット7、7の上端部をこの上部ガイド溝23に挿入した状態で、この上部ガイド溝23の屋内側面に突設した上部ガイド突条24を、上記各スラット7、7の上端部屋内側面に形成した、前記上部ガイド切り欠き8に、緩く係合させている。又、上記上部ガイド溝23の屋外側面に係止した上部シール材25を上記各スラット7、7の上部屋外側面に摺接させている。又、上記各スラット7、7の下端部は、前記下枠6の上面に形成した下部ガイド溝26に、摺動自在に係合させている。即ち、上記各スラット7、7の下端部を、この下部ガイド溝26に挿入した状態で、この下部ガイド溝26の屋内側面に突設した下部ガイド突条27を、上記各スラット7、7の下端部屋内側面に形成した、前記下部ガイド切り欠き9に、緩く係合させている。又、上記下部ガイド溝26の屋外側面に係止した下部シール材28を上記各スラット7、7の下部屋外側面に摺接させている。尚、上記上部、下部両シール材25、28は、摩擦係数の小さい弾性材を使用するか、表面に摩擦係数の低い皮膜を形成して、上記各スラット7、7の移動に対する抵抗を低く抑えられる様にしている。
【0019】
上述の様な構成により、前記各戸袋ケース部2、2内の巻き取り軸13から、上記上枠5と上記下枠6との間に上記シャッタ1を引き出して、前記窓開口4を塞いだり、或いは、この窓開口4を塞いだこのシャッタ1を上記各戸袋ケース部2、2内に押し込んで、上記巻き取り軸13に巻き取れる。この様にして上記窓開口4を開閉すべく、上記シャッタ1を上記上枠5と上記下枠6との間に出し入れする為に要する力は、小さくて済む。
【0020】
即ち、前記ゼンマイ15により上記巻き取り軸13に付与している、巻き取り方向の弾力は、前述した様に小さいので、上記ゼンマイ15の存在に基づく、上記巻き取り軸13からの上記シャッタ1の引き出しに要する力の増大は限られたもので済み、上記窓開口4を塞ぐべく、このシャッタ1を引き出す為に要する力が軽くて済む。又、上記ゼンマイ15に基づく巻き取り方向の弾力は、上記シャッタ1を、その上下両端部と前記上部、下部両ガイド溝23、26部分との係合部に作用する摩擦力に打ち勝って上記シャッタ1を巻き取る程大きくはない。従って、上記巻き取り軸13から引き出したこのシャッタ1を、上記上枠5及び上記下枠6の水平方向中間部で停止させる事もできる。
【0021】
一方、上記シャッタ1を上記戸袋ケース部2に向け押し込むと、このシャッタ1が、上記ゼンマイ15の弾力により、上記巻き取り軸13に巻き取られる。このシャッタ1をこの巻き取り軸13に向け、上記戸袋ケース部2内に押し込む作業は、人手により行なう為、上記ゼンマイ15の弾力により、上記シャッタ1を上部、下部両ガイド溝23、26同士の間部分から引き戻す必要はない。従って、上記ゼンマイ15の弾力が小さくても、上記シャッタ1を上記巻き取り軸13の周囲に、緩みなく、確実に巻き取れる。この為、人手により上記戸袋ケース部2内に押し込まれたシャッタ1の外周面が、この戸袋ケース部2の内面に擦れ合う事を確実に防止して、このシャッタ1をこの戸袋ケース部2内に押し込みつつ、このシャッタ1を前記窓開口4を解放する方向に移動させる作業を、軽い力で行なえる。
【0022】
何れにしても、上述の様にして上記窓開口4を開閉する際には、上記シャッタ1の引き出し方向先端部を押し引きする必要がある。この為に、このシャッタ1の先端部に、この押し引き作業の際の手掛かりとなる移動框29を設けている。
本実施例の場合には、上記シャッタ1を構成する上記各スラット7、7として、図2〜3に示す様な、それぞれの屋内側面の幅方向両端寄りの2個所位置に、それぞれが上記シャッタ1の移動方向(図2〜3の左右方向)に開口した係止凹溝30a、30bを形成したものを使用している。上記各スラット7、7の両端部に形成した係止凹溝30a、30bが開口している方向は互いに逆方向であり、図示の例では、これら両係止凹溝30a、30bを、互いに対向する状態で形成している。又、本実施例の場合には、上記移動框29は、主体31と補助体32とをねじ33により結合固定して成る。これら主体31及び補助体32はそれぞれ、上記各スラット7、7と同様に、アルミニウム合金或いは硬質合成樹脂等の押出型材により造っている。
【0023】
そして、このうちの主体31の屋外側端部に形成した第一の係止突条34の先端部に形成したL字形の鉤部を、上記シャッタ1の引き出し方向先端に位置するスラット7の屋内側面に形成した1対の係止凹溝30a、30bのうちの一方(図示の例では引き出し方向に関して後側)の係止凹溝30aに係止している。又、上記補助体32の屋外側端部に形成した第二の係止突条35の先端部に形成したL字形の鉤部を他方(図示の例では引き出し方向前側)の係止凹溝30bに係止している。上記主体31と上記補助体32とは、この様に、上記第一、第二両係止突条34、35の鉤部を上記両係止凹溝30a、30bに係止した状態で、上記ねじ33により互いに結合し、上記シャッタ1の引き出し方向先端に位置するスラット7の屋内側面に結合固定している。本実施例の場合には、この様な構成を採用する事により、上記移動框29を上記引き出し方向先端に位置するスラット7に対し、容易にしかも強固に結合固定できる様にしている。
【0024】
本実施例の場合には、上述の様な構成により、上記両シャッタ1、1を閉鎖位置に移動させた状態では、これら両シャッタ1、1を前記上枠5及び下枠6に沿って移動させる際の手掛かりとなる上記移動框29が、図1に示す様に、屋外側に露出しなくなる。この為、閉鎖状態で屋外から見た場合の意匠をすっきりとした良好なものにできるだけでなく、屋外側から上記両シャッタ1、1を解放する為の手掛かりを少なくして、これら両シャッタ1、1を屋外側からこじ開けにくくでき、防犯の面からも好ましくなる。
【0025】
又、図示の実施例の場合には、上記主体31の屋外側端部で、上記シャッタ1の引き出し方向後側部分に、第三の係止突条36を設けている。そして、この第三の係止突条36を、上記シャッタ1の引き出し方向先端に位置するスラット7の隣に位置する第二のスラット7の屋内側面に形成した1対の係止凹溝30a、30bのうち、上記引き出し方向先端側に位置するスラット7から遠い側(戸袋ケース部2側)に存在する係止凹溝30aと係合させている。従って、図示の実施例の場合に、上記主体31と上記補助体32とから成る上記移動框29は、上記シャッタ1の引き出し方向先端部に存在する2枚のスラット7、7に掛け渡される状態で、これら両スラット7、7に対し結合固定されている。
【0026】
本実施例の場合には、上述の様な構成を採用する事により、上記移動框29に手を掛けて、上記シャッタ1の前記巻き取り軸13への巻き取り及びこの巻き取り軸13からの引き出しを行なう際に於ける、上記移動框29の移動に対する抵抗を小さく抑えられる様にしている。即ち、上記各スラット7、7の上下両端部に設けた前記上部、下部両切り欠き8、9が係合している、前記上部ガイド溝23及び下部ガイド溝26の幅寸法は、上記シャッタ1の移動を可能とすべく、上記各スラット7、7の上下両端部で上記上部、下部両切り欠き8、9を形成した部分の厚さ寸法よりも少し大きくしている。又、上記移動框29は、上記シャッタ1(スラット7、7)よりも屋内側に突出する状態で設けられているので、この移動框29に手を掛けてこのシャッタ1を押し引きすると、この移動框29を固定したスラット7、7に、鉛直軸を中心に回転する方向のモーメントが加わる。
【0027】
従って、上記移動框29に手を掛けて上記引き出し方向先端に位置するスラット7を押し引きすると、このスラット7の幅方向が上記両ガイド溝23、26の長さ方向に対し傾斜する傾向になる。そして、この傾斜角度が大きくなると、上記スラット7の上下両端部が上記両ガイド溝23、26の内側面同士の間で突っ張る傾向が強くなり、これらスラット7の上下両端部と両ガイド溝23、26の内側面との間に作用する摩擦が大きくなって、上記移動框29を移動させる為に要する力が大きくなる。これに対して、図示の実施例の場合には、隣り合う2枚のスラット7、7同士を結合し、これら両スラット7、7同士が折れ曲がらない様にしているので、上記傾斜角度が大きくはならない。この為、これら両スラット7、7の上下両端部が上記両ガイド溝23、26の内側面同士の間で突っ張る傾向になりにくく、これらスラット7の上下両端部と両ガイド溝23、26の内側面との間に作用する摩擦を小さく抑えられて、上記移動框29を移動させる為に要する力が徒に大きくなる事を防止できる。
【0028】
又、本実施例の場合には、上記移動框29の移動に伴って、上記シャッタ1を前記戸袋ケース部2内に出し入れする為に要する力のより一層の低減を図るべく、上記下部ガイド溝26の底面で上記戸袋ケース部2に隣接する部分、即ち、この下部ガイド溝26の端部底面に、図12〜14に示す様な支承ローラ37を設けている。この支承ローラ37は、金属板をコ字形に曲げ形成して成る支持ブラケット38に対し、屋内外方向(水平方向)に配置された枢軸39を中心とする回転を自在に支持している。この様な支承ローラ37の外周面は、上記下部ガイド溝26と上記戸袋ケース部2との間で受け渡される、上記シャッタ1が通過する位置に設けている。
【0029】
本実施例の場合には、上記支承ローラ37を設ける事により、上記戸袋ケース部2と前記下枠6との間を移動する上記シャッタ1の下端縁を案内する様にしている。より具体的には、上記支承ローラ37の上端面を、前記下側の軸素子13bの下端部に設けたフランジ部16(図5参照)の上面よりも少しだけ上方に位置させている。この構成により、上記シャッタ1のうちで上記フランジ部16の周縁部に近い部分を、このフランジ部16の上面よりも少しだけ上方に持ち上げ、このフランジ部16の外周縁と上記シャッタ1の下縁とが擦れ合わない様にしている。
【0030】
更に、図示の実施例の場合には、前記1対のシャッタ1、1の引き出し方向先端部を前記上枠5及び下枠6の中央部で停止させるべく、図15〜18に示す様な上部、下部両ストッパ機構40、41を設けている。これら両ストッパ機構40、41を構成する為に、前記移動框29の上端開口部に上部ホルダ42を、同じく下端開口部に下部ホルダ43を、それぞれ装着している。合成樹脂を射出成形する等により造られたこれら両ホルダ42、43には、それぞれ上部ストッパローラ44と下部ストッパローラ45とを、屋内外方向に配置された水平軸を中心とする回転を自在に保持している。又、これら水平軸の両端部は、それぞれ上記両ホルダ42、43に内蔵した上部、下部支持ブラケット46、47に支持し、更にこれら両支持ブラケット46、47を圧縮ばね48、48により、上記移動框29の上端面或いは下端面から突出する方向に押圧している。但し、上記両支持ブラケット46、47の昇降量は、上記移動框29の上端面或いは下端面からの突出量が最も大きくなった場合でも、上記各ストッパローラ44、45が、上記上枠5の下面或いは下枠6の上面に近接対向しても接触しない様に、それぞれ規制している。
【0031】
一方、上記上枠5の長さ方向中央部下面には上部止めブロック49を、上記下枠6の長さ方向中央部上面には下部止めブロック50を、それぞれねじ止め固定している。これら両止めブロック49、50はそれぞれ、上記各枠5、6の長さ方向中央部に、上記上枠5の下面或いは上記下枠6の上面から最も突出した上部止め壁51或いは下部止め壁52を形成している。又、これら両止め壁51、52の両側部分を両端部分よりも凹ませて、それぞれ1対ずつの上部保持凹部53、53或いは下部保持凹部54、54を形成している。更に、上記上部止めブロック49の両端部下面或いは上記下部止めブロック50の両端部上面には、それぞれこれら各ブロック49、50の両端縁に向かう程上記上枠5の下面或いは上記下枠6の上面からの突出量が少なくなる方向に傾斜した、上部ガイド傾斜面55、55或いは下部ガイド傾斜面56、56を形成している。
【0032】
本実施例の場合には、上述の様な上部、下部両ストッパ機構40、41を設けている為、前記1対のシャッタ1、1の引き出し方向先端部を、上記上枠5及び下枠6の中央部で、容易且つ確実に停止させる事ができる。即ち、上記移動框29に手を掛けて、上記両シャッタ1、1を引き出しつつ、この移動框29を上記上枠5及び下枠6の中央部に移動させると、前記上部、下部両ストッパローラ44、45が、前記各圧縮ばね48、48を弾性的に縮めつつ、上記上部、下部両ガイド傾斜面55、56に乗り上げる。但し、これら両ストッパローラ44、45は、上記上部、下部両止め壁51、52を越えて移動する事はないので、上記シャッタ1、1の引き出し方向先端部を上記上枠5及び下枠6の中央部で、容易且つ確実に停止させる事ができる。しかも、この状態では、上記両ストッパローラ44、45が、上記各圧縮ばね48、48の弾力に基づいて、上記上部、下部両保持凹部53、54内に嵌り込む。この為、上記シャッタ1、1の引き出し方向先端部の位置が不用意に移動する事はない。施錠時には、この状態で、屋内側でこれら両シャッタ1、1同士を結合するか、或いはこれら両シャッタ1、1と上記上枠5或いは上記下枠6とを結合する。
【0033】
又、前記下部ホルダ43には、上記下部ストッパローラ45に加えて、屋内外方向に配置された水平軸を中心として回転する案内ローラ57を設置している。そして、この案内ローラ57の外周面を、上記下枠6の上面に転がり接触させる事により、上記移動框29の重量を支え(上記シャッタ1の先端部の重量を支え)、このシャッタ1の引き出し及び巻き取りを軽い力で行なえる様にしている。
【0034】
上述の様に構成する、本実施例の構造の組立手順は、特に限定しないが、例えば、前記両戸袋ケース部2、2の本体部分は、上記両シャッタ1、1、これら両シャッタ1、1を巻き付けた巻き取り軸13、この巻き取り軸13の両端部を回転自在に支持した上部、下部両ブラケット20、21を組み付けるのに先立って、上記上枠5及び下枠6と共に、前記壁3の屋外側面で前記窓開口4の側方部分にねじ止め固定する。上記各部材1、13、20、21は、上記両戸袋ケース部2、2の本体部分を当該部分に固定した後、これら両戸袋ケース部2、2内に収納する。そして、これら両戸袋ケース部2、2の開口部を、カバー58(図2、6参照)により塞ぐ。
【0035】
尚、上述の実施例では、戸袋ケース部2と下枠6との間を移動するシャッタ1の下端縁を案内する為の支承ローラ37を、各シャッタ1毎に1個のみ設けた構造に就いて示した。これに対して、図19に示す様に、支承ローラ37、37を各シャッタ毎に2個ずつ設ければ、このシャッタの下端縁の支持を、より安定させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例を示す、シャッタ式雨戸装置を屋外側から見た正面図。
【図2】図1の拡大A−A断面図。
【図3】同拡大B−B断面図。
【図4】同拡大C−C断面図。
【図5】戸袋ケース部内に設けたシャッタの巻き取り機構部分の側面図。
【図6】図5のD−D断面図。
【図7】図5の上部に相当する部分の断面図。
【図8】図7の下方から見た図。
【図9】同E−E断面図。
【図10】上部ブラケットを取り出して示す底面図。
【図11】図10のF−F断面図。
【図12】下部ガイド溝への支承ローラの設置状態を示す、下枠の端部での、図4のG部に相当する図。
【図13】支持ブラケットに支持した支承ローラの斜視図。
【図14】同じく正面図及び側面図。
【図15】図4の上部に相当する部分断面図。
【図16】図15の側方から見た図。
【図17】図4の下部に相当する部分断面図。
【図18】図17の側方から見た図。
【図19】支持ブラケットに支持した支承ローラの別例を示す正面図及び平面図。
【符号の説明】
【0037】
1 シャッタ
2 戸袋ケース部
3 壁
4 窓開口
5 上枠
6 下枠
7 スラット
8 上部ガイド切り欠き
9 下部ガイド切り欠き
10a、10b 折れ曲がり板部
11 屋外側係合湾曲部
12 屋内側係合湾曲部
13 巻き取り軸
13a、13b 軸素子
14 ねじ
15 ゼンマイ
16 フランジ部
17 ラジアル転がり軸受
18 スラスト転がり軸受
19 係止スリット
20 上部ブラケット
21 下部ブラケット
22 係止突片
23 上部ガイド溝
24 上部ガイド突条
25 上部シール材
26 下部ガイド溝
27 下部ガイド突条
28 下部シール材
29 移動框
30a、30b 係止凹溝
31 主体
32 補助体
33 ねじ
34 第一の係止突条
35 第二の係止突条
36 第三の係止突条
37 支承ローラ
38 支持ブラケット
39 枢軸
40 上部ストッパ機構
41 下部ストッパ機構
42 上部ホルダ
43 下部ホルダ
44 上部ストッパローラ
45 下部ストッパローラ
46 上部支持ブラケット
47 下部支持ブラケット
48 圧縮ばね
49 上部止めブロック
50 下部止めブロック
51 上部止め壁
52 下部止め壁
53 上部保持凹部
54 下部保持凹部
55 上部ガイド傾斜面
56 下部ガイド傾斜面
57 案内ローラ
58 カバー
59 ドラムチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の外壁面のうちでこの建造物に設けられた開口部の側方部分に設けられた戸袋ケース部と、この戸袋ケース部内に鉛直方向に配置されてこの戸袋ケース部内で回転する巻き取り軸と、それぞれが縦方向に長い短冊状に形成された複数枚のスラットの幅方向端縁同士を揺動変位自在に結合して成り、上記巻き取り軸への巻き取り及びこの巻き取り軸からの引き出しを自在とされたシャッタと、上記外壁面の一部に上記開口部の上辺に沿って設けられた、下面にこのシャッタの上端部を案内する為の上部ガイド溝を設けた上枠と、上記外壁面の一部に上記開口部の下辺に沿って設けられた、上面に上記シャッタの下端部を案内する為の下部ガイド溝を設けた下枠とを備えたシャッタ式雨戸装置に於いて、上記巻き取り軸と上記戸袋ケース部との間にゼンマイを設け、この巻き取り軸に、上記シャッタを巻き取る方向の弾力を付与しており、このゼンマイの弾力を、上記上部ガイド溝と上記下部ガイド溝との間に存在する上記シャッタを自動的に巻き取る事はできないが、このシャッタが上記巻き取り軸に向け押された場合に、このシャッタをこの巻き取り軸に緩みなく巻き取れる大きさに規制している事を特徴とするシャッタ式雨戸装置。
【請求項2】
下部ガイド溝の底面で戸袋ケース部に隣接する部分に、屋内外方向に配置された枢軸を中心として回転する支承ローラを設け、この支承ローラにより、上記戸袋ケース部と下枠との間を移動するシャッタの下端縁を案内する、請求項1に記載したシャッタ式雨戸装置。
【請求項3】
巻き取り軸の下端部にフランジ部を設けて、シャッタの下端縁をこの巻き取り軸に巻き取られた状態でこのフランジ部の上面に当接させ、支承ローラの上端部を、このフランジ部の上面の位置と同じか、この上面の位置よりも上方に位置させている、請求項2に記載したシャッタ式雨戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−132269(P2006−132269A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325319(P2004−325319)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2004年8月26日、8月27日、8月28日 財団法人日本産業デザイン振興会主催の「2004年度 グッドデザイン・プレゼンテーション」に出品
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【Fターム(参考)】