シャトルコック用人工羽根、バドミントン用シャトルコックおよびそれらの製造方法
【課題】優れた飛翔特性とともに高い耐久性を備えるシャトルコック用人工羽根、バドミントン用シャトルコックおよびこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】シャトルコック用人工羽根は、羽部と、羽部に接続された軸とを備える。軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状は十字状またはT字状である。軸において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部13より厚みの薄い薄肉部14が、本体部13の側面から突出するように本体部13と一体に形成されている。
【解決手段】シャトルコック用人工羽根は、羽部と、羽部に接続された軸とを備える。軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状は十字状またはT字状である。軸において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部13より厚みの薄い薄肉部14が、本体部13の側面から突出するように本体部13と一体に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャトルコック用人工羽根、バドミントン用シャトルコックおよびそれらの製造方法に関し、より特定的には、優れた飛翔特性および耐久性を有するシャトルコック用人工羽根、バドミントン用シャトルコックおよびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バドミントン用シャトルコックとして、その羽根に水鳥の羽根を用いたもの(天然シャトルコック)と、ナイロン樹脂などにより人工的に製造された羽根を用いたもの(人工シャトルコック)とが知られている。そして、天然シャトルコックは、そのような天然の羽根について一定の品質のものを入手することに手間が掛かることから、人工の羽根を用いたシャトルコックより高価である。また、近年水鳥の羽根の供給国の食糧事情の変化や、鳥インフルエンザの流行に起因する水鳥の大量処分などにより、水鳥の羽根の供給量が激減しており、天然シャトルコックはますます高価なものとなってきている。そのため、安価で安定した品質の人工の羽根を用いたシャトルコックが提案されている(たとえば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1では、人工シャトルコックの飛翔特性を改善するため、人工の羽根の軸(断面がほぼ矩形状の軸)の側面から突出するように薄肉片を配置することが開示されている。また、特許文献2では、人工シャトルコックの羽根の軸について、シャトルコックの飛翔時における回転力を発生させるため、当該軸の断面形状を変形した菱形状とし、当該菱形の長軸が人工の羽根の配置された円周に対して傾斜した構成が開示されている。また、特許文献3では、人工シャトルコックの人工の羽根について、羽根となる不織布を軸の内部に部分的に埋設した状態とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54−136060号公報
【特許文献2】実公平2−29974号公報
【特許文献3】特開2008−206970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1〜特許文献3に示した人工シャトルコックでは、やはり天然の羽根に対して人工羽根の強度が不十分であった。一方、人工羽根の軸形状はシャトルコックの飛翔特性(特に飛翔時の回転特性)に大きな影響を与えるため、その形状は当該飛翔特性を考慮して決定する必要がある。そして、強度を向上させるため、単に人工羽根の軸の太さを太くするといった対応をとると、シャトルコック全体の質量が増え、結果的に人工シャトルコックの飛翔特性を天然シャトルコックと同等のものとすることが困難になっていた。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、優れた飛翔特性とともに高い耐久性を備えるシャトルコック用人工羽根、バドミントン用シャトルコックおよびこれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根は、羽部と、羽部に接続された軸とを備える。軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状は十字状またはT字状である。軸において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部より厚みの薄い薄肉部が、本体部の側面から突出するように本体部と一体に形成されている。
【0008】
このようにすれば、軸の断面形状を十字状またはT字状とすることにより、軸の総質量の増加を抑制しつつ軸の剛性を高めることができる。さらに、薄肉部を軸の本体部側面から突出するように形成することで、シャトルコックの飛翔特性を制御するための人工羽根の空気抵抗を適宜調整することができる。そして、このような薄肉部は本体部より厚みを薄くすることができるため、軸の質量の増加を抑制することができる。この結果、人工羽根の質量の増加を抑制しつつ、人工羽根の軸の剛性を向上させるとともに人工羽根の空気抵抗を調整することにより、優れた飛翔特性の人工シャトルコックを構成する人工羽根を実現できる。
【0009】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックは、半球状のベース本体と、当該ベース本体に接続された、上記シャトルコック用人工羽根とを備える。このようにすれば、天然の羽根を用いた天然シャトルコックと同等の飛翔特性を備えるとともに十分な耐久性を有する人工シャトルコックを実現できる。
【0010】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根の製造方法は、軸を準備する工程と、軸に羽部を接続する工程とを備える。軸を準備する工程は、軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状が十字状またはT字状となる軸をモールド成形するための金型を準備する工程と、当該金型を用いて射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより軸を形成する工程とを含む。金型を準備する工程では、軸において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部より厚みが薄く、本体部の側面から突出する薄肉部を形成するための隙間が金型に形成されている。軸を形成する工程では、射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより薄肉部が本体部の側面から突出した軸が形成される。このようにすれば、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根を製造することができる。
【0011】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックの製造方法は、半球状のベース本体を準備する工程と、上記シャトルコック用人工羽根の製造方法を用いてシャトルコック用人工羽根を製造する工程と、ベース本体にシャトルコック用人工羽根を接続する工程とを備える。このようにすれば、本発明に従ったバドミントン用シャトルコックを製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、優れた飛翔特性とともに高い耐久性を備えるシャトルコック用人工羽根およびバドミントン用シャトルコックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるシャトルコックの実施の形態を示す側面模式図である。
【図2】図1に示したシャトルコックの上面模式図である。
【図3】図1および図2に示したシャトルコック1を構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態を示す平面模式図である。
【図4】図3の線分IV−IVにおける断面模式図である。
【図5】図3の線分V−Vにおける断面模式図である。
【図6】図3の線分VI−VIにおける断面模式図である。
【図7】図1および図2に示したシャトルコックの中糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図8】図3〜図5に示した人工羽根の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8に示した構成材準備工程(S10)に含まれる軸の形成工程を説明するためのフローチャートである。
【図10】図1および図2に示したシャトルコック1の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第1の変形例を示す断面模式図である。
【図12】本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第2の変形例を示す断面模式図である。
【図13】本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第3の変形例を示す断面模式図である。
【図14】本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第4の変形例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0015】
図1および図2を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態を説明する。
図1および図2を参照して、本発明に従ったシャトルコック1は、半球状のベース本体2と、ベース本体2において表面がほぼ平坦に成形された固定用表面部に接続された複数のシャトルコック用の人工羽根3と、複数の人工羽根3を互いに固定するための固定用紐状部材と、複数の人工羽根3の積層状態を維持するための中糸15とからなる。複数(たとえば16枚)の人工羽根3は、ベース本体2の固定用表面部において、当該固定用表面部の外周部に沿って円環状に配置されている。また、複数の人工羽根3は、紐状部材によって互いに固定されている。複数の人工羽根3は、ベース本体2から離れるに従って、互いの間の距離が大きくなる(複数の人工羽根3によって形成される筒状体の内径がベース本体2から離れるに従って大きくなる)ように配置されている。
【0016】
中糸15は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するための固定部材として作用している。すなわち、中糸15は、後述するように複数の人工羽根3の位置関係を規定するように配置されている。
【0017】
次に、図3〜図6を参照して、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態を説明する。
【0018】
図3〜図6を参照して、図1および図2に示したシャトルコック1を構成する人工羽根3は、羽部5と、当該羽部5に接続された軸7とからなる。軸7は、羽部5から突出するように配置された羽軸部8と、羽部5のほぼ中央部において羽部5に接続された固着軸部10とからなる。羽軸部8と固着軸部10とは同一線状に延びるように配置され、1つの連続した軸7を構成している。軸7は、図4および図5に示すように、軸7の延在方向にほぼ垂直な方向における断面形状が十字状となっている。つまり、図4および図5に示すように、軸7の断面形状では、中心軸部11から図4の上下方向に、相対的に厚い厚み(図4における左右方向(あるいは中心軸部11を中心とした同心円の円周方向)における厚み)を有する厚肉リブ部12aが突出するように形成されている。
【0019】
また、中心軸部11から、図4の左右方向に、相対的に薄い厚み(図4における上下方向(あるいは中心軸部11を中心とした同心円の円周方向)における厚み)を有する薄肉リブ部12bが突出するように形成されている。上記2つの厚肉リブ部12aは、中心軸部11からそれぞれ反対方向に延びるように形成されている。また、上記2つの薄肉リブ部12bも、中心軸部11からそれぞれ反対方向に延びるように形成されている。薄肉リブ部12bは、厚肉リブ部12aの延在方向と交差する方向(より詳しくは直交する方向)に延びるように形成されている。厚肉リブ部12aと薄肉リブ部12bとからリブ部12が構成される。また、複数のリブ部12と中心軸部11とから、軸7の本体部13が構成される。本体部13の断面形状はいわゆる十字状となっている。
【0020】
また、薄肉リブ部12bの外周端部には、図4および図5に示すように(つまり本体部13の側壁から突出するように)薄肉部14が形成されている。薄肉部14の厚みは、薄肉リブ部12bの上記厚みよりさらに薄くなっている。薄肉部14は、薄肉リブ部12bと一体に形成されている。また、薄肉部14は、当該薄肉部14の表面が、薄肉リブ部12bの側面(図4における上方の側面)とほぼ同一平面を構成するように形成されている。薄肉部14の厚みは、たとえば0.03mm以上0.1mm以下、より好ましくは0.04mm以上0.07mm以下とすることができる。また、薄肉部14の幅W1、W3は、たとえば0.1mm以上0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.3mm以下とすることができる。
【0021】
このように、軸7の本体部13の断面形状をほぼ十字状とすることにより、軸7の総質量の増加を抑制しつつ軸7の剛性を高めることができる。さらに、薄肉部14を軸7の本体部13側面から突出するように形成することで、シャトルコック1の飛翔特性を制御するための人工羽根3の空気抵抗を適宜調整することができる。そして、このような薄肉部14は本体部13より厚みを薄くしているため、軸7の質量の増加を抑制することができる。この結果、人工羽根3の質量の増加を抑制しつつ、人工羽根3の軸7の剛性を向上させるとともに人工羽根3の空気抵抗を調整することにより、優れた飛翔特性のシャトルコック1を構成する人工羽根3を実現できる。
【0022】
薄肉リブ部12bが延びる方向(図4の左右方向)における軸7の幅Wは、薄肉部14の幅W1、W2と本体部13の幅W3との合計である。そして、軸7の当該幅Wは、厚肉リブ部12aが延びる方向(図4の上下方向)における軸7の幅(高さ)Tより大きくなっている。
【0023】
図4における一方(左側)の薄肉部14の幅W1と、他方(右側)の薄肉部14の幅W2とは同じ値でもよいが、異なる値となっていてもよい。また、薄肉部14は、軸7の全長に形成されていてもよいが、少なくとも外部に露出する部分である羽軸部8に形成されることが好ましい。また、薄肉部14は片側のみに形成されていてもよいし、軸7の全長ではなく、軸7の延在方向において部分的に(たとえば間欠的に)形成されていてもよい。
【0024】
羽部5は、図5および図6に示すように、固着軸部10を挟むように配置された発泡体層92と軸固定層91、およびこれらの発泡体層92および軸固定層91を互いに固定するための接着層93、94とからなる。すなわち、羽部5では、発泡体層92と軸固定層91とが固着軸部10を挟むように積層されている。さらに、羽部5では、発泡体層92と軸固定層91とを互いに接続するとともに固着軸部10とこれらの発泡体層92および軸固定層91とを接続固定するため、接着層93、94が配置されている。また、異なる観点でいえば、羽部5においては、シャトルコック1を構成した場合において外周側に位置する発泡体層92上に接着層93が積層されている。この接着層93上には、当該接着層93および発泡体層92のほぼ中央部に位置するように固着軸部10が配置されている。そして、この固着軸部10上から接着層93上にまで延在するように、もう一方の接着層94が配置されている。そして、この接着層94上に軸固定層91が配置されている。
【0025】
図6からもわかるように、人工羽根3においては、発泡体層92側(すなわちシャトルコック1における外周側)に向けて、軸7が反った状態になっている。異なる観点からいえば、軸7は、軸固定層91側に凸となるように反った状態となっている。また、図6では人工羽根3が軸7の延在方向において発泡体層92側に反った状態を示しているが、軸7の延在方向に対して交差する方向(たとえば軸7の延在方向に対して垂直であって羽部5の表面に沿った方向である幅方向)において、羽部5が発泡体層92側に反った状態(つまり羽部5が軸固定層91側に凸となるように反った状態)となっていてもよい。この場合、軸7の延在方向において人工羽根3が反った状態と、上記のように羽部5が軸7の延在方向に対して交差する方向において反った状態とが同時に発生していてもよいし、いずれか一方の反りのみが発生していてもよい。このような反りは、軸7や羽部5の構成材料に対して熱処理を施す、あるいは軸7や羽部5の構成材料を最初から反った状態で形成するなど、従来周知の方法で実現することができる。
【0026】
ここで、発泡体層92を構成する材料としては、たとえば樹脂の発泡体、より具体的にはたとえばポリエチレンフォーム(ポリエチレンの発泡体)を用いることができる。また、軸固定層91についても、同様に樹脂発泡体を用いることができる。また、軸固定層91については、たとえばポリエチレンフォーム以外に、樹脂などからなるフィルム、あるいは不織布など任意の材料を用いることができる。
【0027】
また、接着層93、94については、たとえば両面テープを用いることができる。図3〜図6に示した人工羽根3においては、発泡体層92および軸固定層91としてポリエチレンフォームを用いている。このポリエチレンフォームの押出方向は図3および図5の矢印95に示す方向となっていることが好ましい。この場合、矢印95に示すポリエチレンフォームの押出方向に対して交差するように軸7が羽部5と接続固定されているため、羽部5が軸7の延在方向に沿った方向に裂けるといった不具合の発生確率を低減できる。
【0028】
次に、図7を参照して、中糸15の配置を具体的に説明する。
図7に示すように、中糸15は、人工羽根3の軸7の周囲を周回するとともに、隣接する人工羽根3において積層した状態になっている羽部5の部分で、隣接する人工羽根3の羽部5が互いに対向する領域を通るように(すなわち積層した羽部5の間を通るように)配置されている。このように羽部5が積層した部分で、積層した羽部5の間を中糸15が通っているため、羽部5の積層順がシャトルコック1の使用中に入替わる(たとえばラケットによる打撃の衝撃によって羽部5の積層順番が入替わる)といった問題の発生を抑制することができる。
【0029】
上述した中糸15は、図1および図2に示すように、円環状に並んだ複数の人工羽根3のすべてを互いに固定するように、円周上に配置されている。そして、中糸15は、たとえば作業者が針などを用いて縫製することにより、図1および図2に示すような配置とすることができる。このようにすれば、羽部5の積層順がシャトルコック1の使用中に入替わるという問題の発生を抑制することにより、優れた耐久性を示すシャトルコック1を得ることができる。
【0030】
なお、円周上に配置された中糸15は、その縫い始めの一方端部と縫い終わりの他方端部とが結ばれて、余った糸の部分は結び目近傍でカットされて除去される。当該結び目には、接着剤などを塗布することにより表面に保護層を形成することが好ましい。このような保護層を形成することにより、シャトルコック1がラケットにより打撃されたときに、当該結び目が解けることを防止できる。
【0031】
また、中糸15は、綿や樹脂など任意の材料を用いることができるが、ポリエステル製の糸を用いることが好ましい。また、中糸15は、シャトルコック1の重心などに影響を極力与えないようにするため、できるだけ軽量なものを用いることが好ましい。たとえば、用いる糸としては、50番のポリエステル製の糸を用いてもよい。この場合、中糸15として使用した糸の質量は約0.02gとなる。この程度の質量であれば、シャトルコック1の重心位置に若干の影響はあるものの、飛翔特性にはほとんど影響がないと考えられる。また、中糸15の配置については、ベース本体2からの距離を任意に設定することができる。
【0032】
次に、図8〜図10を参照して、図1および図2に示したシャトルコック1、シャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明する。
【0033】
まず、図8を参照して、本発明に従ったシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明する。図8に示すように、人工羽根3の製造方法では、まず構成材準備工程(S10)を実施する。この工程(S10)では、人工羽根3を構成する軸7、図5および図6に示した発泡体層92および軸固定層91を構成するシート状材料、接着層93、94となるべき両面テープを準備する。なお、これらのシート状部材および両面テープの平面形状は、図3に示した羽部5のサイズよりも大きければ任意の形状とすることができる。発泡体層92となるべきシート状部材としては、たとえばポリエチレンフォーム(ポリエチレンの発泡体であってシート状に成形されたもの)であって厚みが1.0mm、目付けが24g/m2といった材料を用いることができる。また、軸固定層91となるべきシート状部材としては、ポリエチレンフォームであって厚みが0.5mm、目付けが20g/m2といった材料を用いることができる。また、接着層93、94となる両面テープの目付けは10g/m2とすることができる。
【0034】
また、上述した軸7の製造工程としては、図9に示すように、まず金型準備工程(S11)を実施する。この工程(S11)では、たとえば射出成形あるいは射出圧縮成形により軸7を形成するための金型を準備する。ここで準備する金型としては、たとえば上型と下型とに分割された金型であって、互いに対向する金型表面には、軸7の形状に対応した凹部が形成されている。また、当該凹部は、軸7の本体部13を形成する部分と、当該本体部13を形成する部分の外周部において、薄肉部14を形成するための隙間を含んでいる。
【0035】
次に、成形工程(S12)を実施する。この工程(S12)では、まず上記のように準備した金型を、射出成形機など金型の内部(凹部)に樹脂を注入するための装置にセットする(金型セット工程)。次に、樹脂注入工程を実施する。すなわち、金型に設けられた樹脂の注入口から、金型内部の凹部に樹脂を注入する。樹脂としては、たとえば熱可塑性樹脂を用いることができる。この結果、金型内部において軸が形成される。また、上述のように金型の凹部には薄肉部14を形成するための隙間が形成されているので、得られた軸7には側面から突出する薄肉部14が形成されている。このようにして、成形工程(S12)を実施する。その後、金型内部から軸7を取出す。この結果、人工羽根3を構成する軸7を得ることができる。
【0036】
次に、図8に示すように貼り合わせ工程(S20)を実施する。この工程(S20)においては、発泡体層92となるべきシート状部材の主表面上に接着層93となるべき両面テープを貼付する。そして、当該両面テープの上に軸7の固着軸部10を配置する。さらに、その上から、固着軸部10に対向する面に接着層94となるべき両面テープが貼付された軸固定層91となるべきシート状部材を積層配置して貼り合わせる。この結果、軸7の固着軸部10を、発泡体層92となるべきシート状部材と軸固定層91となるべきシート状部材とで挟んで固定した構造を得ることができる。
【0037】
次に、後処理工程(S30)を実施する。具体的には、羽部5となるべき積層配置されたシート状部材の不要部(つまり羽部5となるべき部分以外の領域)を切断除去する。この結果、図3〜図6に示したような人工羽根3を得ることができる。そして、当該人工羽根3に対して、たとえば発泡体層92側から熱を加えるなどの熱処理を行なうことにより、発泡体層92などを収縮させる。この結果、図6に示したように軸7および羽部5が反った状態を実現できる。なお、図6に示したような軸7および羽部5の反った状態を実現するため、他の方法を用いてもよい。たとえば、最初から反った形状の軸7を用いるといった方法を採用してもよい。
【0038】
次に、図10を参照して図1および図2に示したシャトルコック1の製造方法を説明する。図10に示すように、まず準備工程(S100)を実施する。この準備工程(S100)では、シャトルコック1のベース本体2(先端部材)および上述した人工羽根3など、シャトルコック1の構成部材を準備する。
【0039】
ベース本体2の製造方法は、従来公知の任意の方法を用いることができるが、たとえばベース本体2となるべき材料としてコルクなどの天然の素材を用いることができる。また、ベース本体2の材料として人工の樹脂などを用いてもよい。ベース本体2の材料として人工の樹脂を用いる場合、従来周知の任意の加工方法を用いてベース本体2を形成することができる。たとえば、まずベース本体2となる素材のブロックを準備し、切削加工により概略形状とする。このとき、先端部の半球状部分の高さを加味して加工を行なう。そして、さらに切削加工により、人工羽根3を挿入するための挿入穴を形成するといった方法を用いてもよい。また、上述した人工樹脂を用いる場合には、たとえば、アイオノマー樹脂発泡体、あるいはEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、ポリウレタン、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。また、人工羽根3の製造方法としては、上述した図8に示した製造方法を用いることができる。
【0040】
次に、組立工程(S200)を実施する。当該組立工程(S200)では、ベース本体の固定用表面部における挿入穴に上述した複数の人工羽根3の軸7の根元を挿入固定する。さらに、当該複数の人工羽根3を互いに紐状部材により固定する。また、羽部の重なり状態を維持するための中糸15が図7に示すような配置となるよう縫製を行なう。このようにして、図1および図2に示すシャトルコック1を製造することができる。なお、複数の人工羽根3を互いに固定する固定部材としては、上述のような紐状部材に限らず、たとえばリング状部材など任意の部材を用いてもよい。
【0041】
また、上記固定部材の材料としては、たとえば樹脂や繊維など任意の材料を用いることができる。たとえば、紐状部材としてアラミド繊維またはガラス繊維を用い、当該アラミド繊維またはガラス繊維に樹脂(たとえば熱硬化性樹脂)を含浸し、当該樹脂を硬化することでFRP化した固定部材を用いてもよい。このようにFRP化することによって、固定部材の強度や剛性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂としてはたとえばエポキシ樹脂やフェノール樹脂を用いることができる。このようにFRP化のために熱硬化性樹脂を用いれば、固定部材を軸7と固定するための加工において加熱工程を行なう場合などに、同時に熱硬化性樹脂により固定部材のFRP化を容易に行なうことができる。
【0042】
図10〜図14を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第1〜第4の変形例を説明する。なお、図10〜図14はそれぞれ図4に対応する。
【0043】
図11に示した軸を備える人工羽根は、基本的に図3〜図6に示す人工羽根3と同様の構造を備えるが、軸7の本体部13の断面形状が異なっている。具体的には、図11に示した軸7の本体部13は、中心軸部11から左右方向に2つの薄肉リブ部12bが延びる一方、中心軸部11の下側から一方のみに厚肉リブ部12aが延在している。なお、薄肉リブ部12bの外周端部には薄肉部14が形成されている。このような、いわゆる断面がT字状の本体部13となっている軸を用いた人工羽根によっても、図3〜図6に示した人工羽根3と同様の効果を得ることができる。
【0044】
図12に示した軸を備える人工羽根は、基本的に図11に示した人工羽根3と同様の構造を備えるが、中心軸部11から上方(薄肉リブ部12bが延びる方向に対して垂直な方向、あるいは厚肉リブ部12aの延びる方向と逆方向)に延びるように突出部16が形成されている点が異なる。このようなリブ部12に含まれる突出部16を形成することで、図11に示した軸を用いた人工羽根による効果と同様の効果を得られるとともに、図12の上下方向(厚肉リブ部12aおよび突出部16が延びる方向)において軸7の剛性をより高めることができる。
【0045】
図13に示した軸を備える人工羽根は、基本的に図3〜図6に示す人工羽根3と同様の構造を備えるが、軸7の本体部13の両側に形成された2つの薄肉部14の幅W1、W2が互いに異なっている点が、図3〜図6に示した人工羽根とは異なっている。具体的には、図13に示した軸7の本体部13の図中左側に形成された薄肉部14の幅W1は、図中右側に形成されている薄肉部14の幅W2より広くなっている。このようにすれば、図3〜図6に示した人工羽根3と同様の効果を得ることができるとともに、軸の中心軸部11から見て軸7の右側と左側とで空気抵抗の差を設けることができるので、人工羽根における空気抵抗パターンのバリエーションを豊富にすることができる。このため、当該人工羽根3を用いたシャトルコックにおいて、飛翔特性の制御範囲をより広くすることができる。
【0046】
図14に示した軸を備える人工羽根は、基本的に図3〜図6に示す人工羽根3と同様の構造を備えるが、軸7の本体部13の両側に形成された2つの薄肉部14の配置が図3〜図6に示した人工羽根とは異なっている。具体的には、図14に示した軸7の本体部13の側面に形成された薄肉部14は、薄肉リブ部12bの側面(図14における薄肉リブ部12bの平坦な側面)と同一平面を構成するように配置されていない。図14に示した軸の薄肉部14は、上記薄肉リブ部12bの側面と段差を介して連なった位置に配置されている。このような構成であっても、図3〜図6に示した人工羽根3と同種の効果を得ることができる。
【0047】
上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本願発明の特徴的な構成を以下に列挙する。
【0048】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根3は、羽部5と、羽部5に接続された軸7とを備える。軸7の延在方向に対して垂直な平面における断面形状(たとえば図4参照)は十字状(図4参照)またはT字状(図11参照)である。軸7において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部13より厚みの薄い薄肉部14が、本体部13の側面から突出するように本体部13と一体に形成されている。
【0049】
このようにすれば、軸7の断面形状を十字状またはT字状とすることにより、軸7の総質量の増加を抑制しつつ軸7の剛性を高めることができる。さらに、薄肉部14を軸7の本体部13の側面から突出するように形成することで、シャトルコック1の飛翔特性を制御するための人工羽根3の空気抵抗を適宜調整することができる。そして、このような薄肉部14は本体部13より厚みを薄くすることができるため、軸7の質量の増加を抑制することができる。この結果、人工羽根3の質量の増加を抑制しつつ、人工羽根3の軸7の剛性を向上させるとともに人工羽根3の空気抵抗を調整することにより、優れた飛翔特性の人工シャトルコック1を構成する人工羽根3を実現できる。
【0050】
上記シャトルコック用人工羽根3において、本体部13は、中心軸部11と当該中心軸部11の側面から突出する複数のリブ部12とを含んでいてもよい。複数のリブ部12は、軸7の延在方向に対して垂直な平面において、中心軸部11から外側へ向かう径方向に対して垂直な方向における厚みが相対的に厚い厚肉リブ部12aと、当該厚みが相対的に薄い薄肉リブ部12bとを含んでいてもよい。薄肉部14は薄肉リブ部12bの外周側面から突出するように形成されていてもよい。
【0051】
この場合、厚肉リブ部12aの突出方向における軸7の剛性を特に向上させることができる。また、薄肉部14が突出する方向(図4の左右方向)においては、軸7の本体部13の薄肉リブ部12bを配置しているので、本体部13に含まれるすべてのリブ部12の厚みを一律に厚くする場合より、軸7の質量を低減できる。このため、軸7の質量を所定の範囲に制限しつつ、薄肉部14が突出する方向(薄肉リブ部12bが突出する方向)における軸7の幅(図4における幅W)を十分に大きくできる。
【0052】
上記シャトルコック用人工羽根3において、図4に示すように、薄肉部14は、薄肉リブ部12bにおいて径方向に延びる表面に沿って突出するように形成されていてもよい。
【0053】
この場合、空気に対する抵抗体という観点から、薄肉部14と薄肉リブ部12bとを連続した一体の抵抗体とみなすことができる。また、薄肉部14を形成する場合に、薄肉リブ部12bの上記表面に沿わないように当該薄肉部14を形成する場合より、たとえば金型を用いて上記薄肉部14を有する軸7を容易に形成することができる。
【0054】
上記シャトルコック用人工羽根3において、軸7の延在方向に対して垂直な平面における、薄肉リブ部12bの突出方向に沿った本体部13と薄肉部14との合計幅Wは、厚肉リブ部12aの突出方向に沿った本体部13の幅(図4における高さT)より大きくなっていてもよい。
【0055】
この場合、厚肉リブ部12aの突出方向(つまり軸7の剛性が相対的に高くなっている方向)と異なる方向(つまり薄肉リブ部12bの突出方向)において、軸7の空気抵抗を大きくするように、空気抵抗を発生させるための軸7の実質的な幅Wを広く確保することができる。また、薄肉リブ部12bの突出方向における幅Wと同等の径を有する軸を用いる場合や、薄肉リブ部12bの厚みを上記厚肉リブ部12aの厚みと同等に設定する場合より、軸7の質量増加を抑制できる。
【0056】
上記シャトルコック用人工羽根3において、本体部13は、中心軸部11と前記中心軸部11の側面から突出する複数のリブ部12とを含んでいてもよい。薄肉部14は、図4、図5、図11〜図13などに示すように複数のリブ部12の少なくとも1つにおいて中心軸部11から外側へ向かう径方向に延びる表面に沿って突出するように形成されていてもよい。
【0057】
この場合、薄肉部14を複数のリブ部12の少なくとも1つから突出するように形成することで、軸7の実質的な幅Wを変更できる。この結果、シャトルコック1の飛翔特性を制御するための人工羽根3の空気抵抗を適宜調整することができる。
【0058】
上記シャトルコック用人工羽根3において、軸7の延在方向に対して垂直な平面における、薄肉部14が形成されたリブ部12の突出方向に沿った本体部13と薄肉部14との合計幅Wは、薄肉部14が形成されていない他のリブ部12の突出方向に沿った本体部13の幅(図4の高さT)より大きくなっていてもよい。
【0059】
この場合、薄肉部14が形成されたリブ部12の突出方向(たとえば図4や図11〜図13の左右方向)において、軸7の空気抵抗を大きくするように、空気抵抗を発生させるための軸7の実質的な幅Wを広く確保することができる。
【0060】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、半球状のベース本体2と、当該ベース本体2に接続された、上記シャトルコック用人工羽根3とを備える。このようにすれば、天然の羽根を用いた天然シャトルコックと同等の飛翔特性を備えるとともに十分な耐久性を有する人工シャトルコック1を実現できる。
【0061】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根の製造方法は、軸を準備する工程(S10、S11、S12)と、軸に羽部を接続する工程(S20)とを備える。軸を準備する工程(S10、S11、S12)は、軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状が十字状またはT字状となる軸をモールド成形するための金型を準備する工程(S11)と、当該金型を用いて射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより軸を形成する工程(S12)とを含む。金型を準備する工程(S11)では、軸7において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部13より厚みが薄く、本体部13の側面から突出する薄肉部14を形成するための隙間が金型に形成されている。軸を形成する工程(S12)では、射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより薄肉部14が本体部13の側面から突出した軸7が形成される。このようにすれば、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根3を製造することができる。
【0062】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックの製造方法は、半球状のベース本体を準備する工程(S100)と、上記シャトルコック用人工羽根の製造方法を用いてシャトルコック用人工羽根を製造する工程(S100)と、ベース本体にシャトルコック用人工羽根を接続する工程(S200)とを備える。このようにすれば、本発明に従ったバドミントン用シャトルコック1を製造することができる。
【0063】
次に、本発明によるシャトルコック用人工羽根およびシャトルコックの効果を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0064】
(実験内容)
本発明の実施例の人工羽根を用いたシャトルコックと、比較例としてのシャトルコック2種類とを準備し、円筒の下方から送風機により空気を流し、シャトルコックを浮遊回転させ、無接触回転数測定器を用いて、シャトルコックの回転速度(回転数)を測定した。
【0065】
(準備した試料)
本発明の実施例の試料として、図3〜図6に示した人工羽根3を用いたシャトルコックを準備した。人工羽根3の軸7の本体部13の幅W3(図4参照)は2.5mm、高さTは2.5mm、厚肉リブ部12aの中央部(中心軸部11から見た径方向での中央部)での厚みについて、図4の上側の厚肉リブ部12aでの中央部の厚みは0.8mm、図4の下側の厚肉リブ部12aの中央部の厚みは0.55mm、薄肉リブ部12bの厚みは0.4mm、薄肉部14の幅W1、W2はそれぞれ0.3mmとした。また、薄肉部14の厚みは0.05mmとした。
【0066】
また、人工羽根3の羽部5を構成する軸固定層91の材質はポリエチレンフォームを用い、厚みを0.5mm、目付け量を20g/m2とした。また、発泡体層92の材質はポリエチレンフォームを用い、厚みを1.0mm、目付け量を24g/m2とした。また、接着層93、94としては両面テープを用いた。両面テープの特性としては、厚さ10μm、目付け10g/m2といったものを用いた。そして、このような人工羽根を用いて、図1および図2に示した構成のシャトルコックを準備した。
【0067】
また、比較例1の試料として、上記実施例の試料に用いた軸と同様の構成の軸から、薄肉部14を削り取った加工済み軸を用いて人工羽根3を製造した。加工済み軸以外は、上述した実施例の試料に用いた人工羽根3と同様の構成とした。そして、このような比較例としての人工羽根3を用いて、実施例の試料と同様の構成を備えるシャトルコックを準備した。
【0068】
また、比較例2の試料として、上述した実施例の試料に用いた軸から薄肉部14を除いた構成の軸を用いて人工羽根およびシャトルコックを準備した。なお、ここで準備した軸については、射出成形に用いる金型として、実施例の人工羽根における軸とは異なる構成の金型(つまり、薄肉部14のための隙間を形成していない構成の金型)を用いた。
【0069】
(結果)
各試料のシャトルコックについて、円筒の下方から送風機により空気を7m/秒で流し、シャトルコックを浮遊回転させ、無接触回転数測定器を用いてシャトルコックの回転数を測定した。計測は、各試料ごとに5個のシャトルコックを用意し、当該5個の平均回転数を算出した。
【0070】
その結果、実施例の試料については平均回転数が477rpmであった。また、シャトルコックの飛翔の軌跡なども、天然シャトルコックに比較的近いものとなっていた。
【0071】
一方、比較例1の試料については、平均回転数が317rpmであり、また、比較例2の試料については、平均回転数が252rpmであった。また、このような回転数の差に起因して、比較例のシャトルコックの飛翔時の軌跡は実施例のシャトルコックの飛翔時の軌跡と異なり、また天然シャトルコックの飛翔時軌跡とも異なっていた。また、回転数が300rpm未満ではシャトルコックが飛翔中に揺れやすくなり、飛行時軌跡が安定しない傾向が見られた。
【0072】
なお、いずれの試料も今回の試験中には形状の崩れなど発生することなく、十分な耐久性を示していた。
【0073】
この結果、本発明の実施例の試料が十分な耐久性を示すと共に、比較的天然のシャトルコックに近い飛翔特性を示すことがわかった。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、水鳥の羽根を用いたバトミントン用シャトルコックと同等の飛翔特性および耐久性を有する、人工羽根を用いたバドミントン用シャトルコックに有利に適用される。
【符号の説明】
【0076】
1 シャトルコック、2 ベース本体、3 人工羽根、5 羽部、7 軸、8 羽軸部、10 固着軸部、11 中心軸部、12 リブ部、12a 厚肉リブ部、12b 薄肉リブ部、13 本体部、14 薄肉部、15 中糸、16 突出部、91 軸固定層、92 発泡体層、93,94 接着層、95 矢印。
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャトルコック用人工羽根、バドミントン用シャトルコックおよびそれらの製造方法に関し、より特定的には、優れた飛翔特性および耐久性を有するシャトルコック用人工羽根、バドミントン用シャトルコックおよびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バドミントン用シャトルコックとして、その羽根に水鳥の羽根を用いたもの(天然シャトルコック)と、ナイロン樹脂などにより人工的に製造された羽根を用いたもの(人工シャトルコック)とが知られている。そして、天然シャトルコックは、そのような天然の羽根について一定の品質のものを入手することに手間が掛かることから、人工の羽根を用いたシャトルコックより高価である。また、近年水鳥の羽根の供給国の食糧事情の変化や、鳥インフルエンザの流行に起因する水鳥の大量処分などにより、水鳥の羽根の供給量が激減しており、天然シャトルコックはますます高価なものとなってきている。そのため、安価で安定した品質の人工の羽根を用いたシャトルコックが提案されている(たとえば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1では、人工シャトルコックの飛翔特性を改善するため、人工の羽根の軸(断面がほぼ矩形状の軸)の側面から突出するように薄肉片を配置することが開示されている。また、特許文献2では、人工シャトルコックの羽根の軸について、シャトルコックの飛翔時における回転力を発生させるため、当該軸の断面形状を変形した菱形状とし、当該菱形の長軸が人工の羽根の配置された円周に対して傾斜した構成が開示されている。また、特許文献3では、人工シャトルコックの人工の羽根について、羽根となる不織布を軸の内部に部分的に埋設した状態とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54−136060号公報
【特許文献2】実公平2−29974号公報
【特許文献3】特開2008−206970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1〜特許文献3に示した人工シャトルコックでは、やはり天然の羽根に対して人工羽根の強度が不十分であった。一方、人工羽根の軸形状はシャトルコックの飛翔特性(特に飛翔時の回転特性)に大きな影響を与えるため、その形状は当該飛翔特性を考慮して決定する必要がある。そして、強度を向上させるため、単に人工羽根の軸の太さを太くするといった対応をとると、シャトルコック全体の質量が増え、結果的に人工シャトルコックの飛翔特性を天然シャトルコックと同等のものとすることが困難になっていた。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、優れた飛翔特性とともに高い耐久性を備えるシャトルコック用人工羽根、バドミントン用シャトルコックおよびこれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根は、羽部と、羽部に接続された軸とを備える。軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状は十字状またはT字状である。軸において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部より厚みの薄い薄肉部が、本体部の側面から突出するように本体部と一体に形成されている。
【0008】
このようにすれば、軸の断面形状を十字状またはT字状とすることにより、軸の総質量の増加を抑制しつつ軸の剛性を高めることができる。さらに、薄肉部を軸の本体部側面から突出するように形成することで、シャトルコックの飛翔特性を制御するための人工羽根の空気抵抗を適宜調整することができる。そして、このような薄肉部は本体部より厚みを薄くすることができるため、軸の質量の増加を抑制することができる。この結果、人工羽根の質量の増加を抑制しつつ、人工羽根の軸の剛性を向上させるとともに人工羽根の空気抵抗を調整することにより、優れた飛翔特性の人工シャトルコックを構成する人工羽根を実現できる。
【0009】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックは、半球状のベース本体と、当該ベース本体に接続された、上記シャトルコック用人工羽根とを備える。このようにすれば、天然の羽根を用いた天然シャトルコックと同等の飛翔特性を備えるとともに十分な耐久性を有する人工シャトルコックを実現できる。
【0010】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根の製造方法は、軸を準備する工程と、軸に羽部を接続する工程とを備える。軸を準備する工程は、軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状が十字状またはT字状となる軸をモールド成形するための金型を準備する工程と、当該金型を用いて射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより軸を形成する工程とを含む。金型を準備する工程では、軸において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部より厚みが薄く、本体部の側面から突出する薄肉部を形成するための隙間が金型に形成されている。軸を形成する工程では、射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより薄肉部が本体部の側面から突出した軸が形成される。このようにすれば、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根を製造することができる。
【0011】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックの製造方法は、半球状のベース本体を準備する工程と、上記シャトルコック用人工羽根の製造方法を用いてシャトルコック用人工羽根を製造する工程と、ベース本体にシャトルコック用人工羽根を接続する工程とを備える。このようにすれば、本発明に従ったバドミントン用シャトルコックを製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、優れた飛翔特性とともに高い耐久性を備えるシャトルコック用人工羽根およびバドミントン用シャトルコックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるシャトルコックの実施の形態を示す側面模式図である。
【図2】図1に示したシャトルコックの上面模式図である。
【図3】図1および図2に示したシャトルコック1を構成する、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態を示す平面模式図である。
【図4】図3の線分IV−IVにおける断面模式図である。
【図5】図3の線分V−Vにおける断面模式図である。
【図6】図3の線分VI−VIにおける断面模式図である。
【図7】図1および図2に示したシャトルコックの中糸が配置された部分の構成を示す部分断面模式図である。
【図8】図3〜図5に示した人工羽根の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8に示した構成材準備工程(S10)に含まれる軸の形成工程を説明するためのフローチャートである。
【図10】図1および図2に示したシャトルコック1の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第1の変形例を示す断面模式図である。
【図12】本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第2の変形例を示す断面模式図である。
【図13】本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第3の変形例を示す断面模式図である。
【図14】本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第4の変形例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0015】
図1および図2を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態を説明する。
図1および図2を参照して、本発明に従ったシャトルコック1は、半球状のベース本体2と、ベース本体2において表面がほぼ平坦に成形された固定用表面部に接続された複数のシャトルコック用の人工羽根3と、複数の人工羽根3を互いに固定するための固定用紐状部材と、複数の人工羽根3の積層状態を維持するための中糸15とからなる。複数(たとえば16枚)の人工羽根3は、ベース本体2の固定用表面部において、当該固定用表面部の外周部に沿って円環状に配置されている。また、複数の人工羽根3は、紐状部材によって互いに固定されている。複数の人工羽根3は、ベース本体2から離れるに従って、互いの間の距離が大きくなる(複数の人工羽根3によって形成される筒状体の内径がベース本体2から離れるに従って大きくなる)ように配置されている。
【0016】
中糸15は、複数の人工羽根3の積層状態を維持するための固定部材として作用している。すなわち、中糸15は、後述するように複数の人工羽根3の位置関係を規定するように配置されている。
【0017】
次に、図3〜図6を参照して、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根の実施の形態を説明する。
【0018】
図3〜図6を参照して、図1および図2に示したシャトルコック1を構成する人工羽根3は、羽部5と、当該羽部5に接続された軸7とからなる。軸7は、羽部5から突出するように配置された羽軸部8と、羽部5のほぼ中央部において羽部5に接続された固着軸部10とからなる。羽軸部8と固着軸部10とは同一線状に延びるように配置され、1つの連続した軸7を構成している。軸7は、図4および図5に示すように、軸7の延在方向にほぼ垂直な方向における断面形状が十字状となっている。つまり、図4および図5に示すように、軸7の断面形状では、中心軸部11から図4の上下方向に、相対的に厚い厚み(図4における左右方向(あるいは中心軸部11を中心とした同心円の円周方向)における厚み)を有する厚肉リブ部12aが突出するように形成されている。
【0019】
また、中心軸部11から、図4の左右方向に、相対的に薄い厚み(図4における上下方向(あるいは中心軸部11を中心とした同心円の円周方向)における厚み)を有する薄肉リブ部12bが突出するように形成されている。上記2つの厚肉リブ部12aは、中心軸部11からそれぞれ反対方向に延びるように形成されている。また、上記2つの薄肉リブ部12bも、中心軸部11からそれぞれ反対方向に延びるように形成されている。薄肉リブ部12bは、厚肉リブ部12aの延在方向と交差する方向(より詳しくは直交する方向)に延びるように形成されている。厚肉リブ部12aと薄肉リブ部12bとからリブ部12が構成される。また、複数のリブ部12と中心軸部11とから、軸7の本体部13が構成される。本体部13の断面形状はいわゆる十字状となっている。
【0020】
また、薄肉リブ部12bの外周端部には、図4および図5に示すように(つまり本体部13の側壁から突出するように)薄肉部14が形成されている。薄肉部14の厚みは、薄肉リブ部12bの上記厚みよりさらに薄くなっている。薄肉部14は、薄肉リブ部12bと一体に形成されている。また、薄肉部14は、当該薄肉部14の表面が、薄肉リブ部12bの側面(図4における上方の側面)とほぼ同一平面を構成するように形成されている。薄肉部14の厚みは、たとえば0.03mm以上0.1mm以下、より好ましくは0.04mm以上0.07mm以下とすることができる。また、薄肉部14の幅W1、W3は、たとえば0.1mm以上0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.3mm以下とすることができる。
【0021】
このように、軸7の本体部13の断面形状をほぼ十字状とすることにより、軸7の総質量の増加を抑制しつつ軸7の剛性を高めることができる。さらに、薄肉部14を軸7の本体部13側面から突出するように形成することで、シャトルコック1の飛翔特性を制御するための人工羽根3の空気抵抗を適宜調整することができる。そして、このような薄肉部14は本体部13より厚みを薄くしているため、軸7の質量の増加を抑制することができる。この結果、人工羽根3の質量の増加を抑制しつつ、人工羽根3の軸7の剛性を向上させるとともに人工羽根3の空気抵抗を調整することにより、優れた飛翔特性のシャトルコック1を構成する人工羽根3を実現できる。
【0022】
薄肉リブ部12bが延びる方向(図4の左右方向)における軸7の幅Wは、薄肉部14の幅W1、W2と本体部13の幅W3との合計である。そして、軸7の当該幅Wは、厚肉リブ部12aが延びる方向(図4の上下方向)における軸7の幅(高さ)Tより大きくなっている。
【0023】
図4における一方(左側)の薄肉部14の幅W1と、他方(右側)の薄肉部14の幅W2とは同じ値でもよいが、異なる値となっていてもよい。また、薄肉部14は、軸7の全長に形成されていてもよいが、少なくとも外部に露出する部分である羽軸部8に形成されることが好ましい。また、薄肉部14は片側のみに形成されていてもよいし、軸7の全長ではなく、軸7の延在方向において部分的に(たとえば間欠的に)形成されていてもよい。
【0024】
羽部5は、図5および図6に示すように、固着軸部10を挟むように配置された発泡体層92と軸固定層91、およびこれらの発泡体層92および軸固定層91を互いに固定するための接着層93、94とからなる。すなわち、羽部5では、発泡体層92と軸固定層91とが固着軸部10を挟むように積層されている。さらに、羽部5では、発泡体層92と軸固定層91とを互いに接続するとともに固着軸部10とこれらの発泡体層92および軸固定層91とを接続固定するため、接着層93、94が配置されている。また、異なる観点でいえば、羽部5においては、シャトルコック1を構成した場合において外周側に位置する発泡体層92上に接着層93が積層されている。この接着層93上には、当該接着層93および発泡体層92のほぼ中央部に位置するように固着軸部10が配置されている。そして、この固着軸部10上から接着層93上にまで延在するように、もう一方の接着層94が配置されている。そして、この接着層94上に軸固定層91が配置されている。
【0025】
図6からもわかるように、人工羽根3においては、発泡体層92側(すなわちシャトルコック1における外周側)に向けて、軸7が反った状態になっている。異なる観点からいえば、軸7は、軸固定層91側に凸となるように反った状態となっている。また、図6では人工羽根3が軸7の延在方向において発泡体層92側に反った状態を示しているが、軸7の延在方向に対して交差する方向(たとえば軸7の延在方向に対して垂直であって羽部5の表面に沿った方向である幅方向)において、羽部5が発泡体層92側に反った状態(つまり羽部5が軸固定層91側に凸となるように反った状態)となっていてもよい。この場合、軸7の延在方向において人工羽根3が反った状態と、上記のように羽部5が軸7の延在方向に対して交差する方向において反った状態とが同時に発生していてもよいし、いずれか一方の反りのみが発生していてもよい。このような反りは、軸7や羽部5の構成材料に対して熱処理を施す、あるいは軸7や羽部5の構成材料を最初から反った状態で形成するなど、従来周知の方法で実現することができる。
【0026】
ここで、発泡体層92を構成する材料としては、たとえば樹脂の発泡体、より具体的にはたとえばポリエチレンフォーム(ポリエチレンの発泡体)を用いることができる。また、軸固定層91についても、同様に樹脂発泡体を用いることができる。また、軸固定層91については、たとえばポリエチレンフォーム以外に、樹脂などからなるフィルム、あるいは不織布など任意の材料を用いることができる。
【0027】
また、接着層93、94については、たとえば両面テープを用いることができる。図3〜図6に示した人工羽根3においては、発泡体層92および軸固定層91としてポリエチレンフォームを用いている。このポリエチレンフォームの押出方向は図3および図5の矢印95に示す方向となっていることが好ましい。この場合、矢印95に示すポリエチレンフォームの押出方向に対して交差するように軸7が羽部5と接続固定されているため、羽部5が軸7の延在方向に沿った方向に裂けるといった不具合の発生確率を低減できる。
【0028】
次に、図7を参照して、中糸15の配置を具体的に説明する。
図7に示すように、中糸15は、人工羽根3の軸7の周囲を周回するとともに、隣接する人工羽根3において積層した状態になっている羽部5の部分で、隣接する人工羽根3の羽部5が互いに対向する領域を通るように(すなわち積層した羽部5の間を通るように)配置されている。このように羽部5が積層した部分で、積層した羽部5の間を中糸15が通っているため、羽部5の積層順がシャトルコック1の使用中に入替わる(たとえばラケットによる打撃の衝撃によって羽部5の積層順番が入替わる)といった問題の発生を抑制することができる。
【0029】
上述した中糸15は、図1および図2に示すように、円環状に並んだ複数の人工羽根3のすべてを互いに固定するように、円周上に配置されている。そして、中糸15は、たとえば作業者が針などを用いて縫製することにより、図1および図2に示すような配置とすることができる。このようにすれば、羽部5の積層順がシャトルコック1の使用中に入替わるという問題の発生を抑制することにより、優れた耐久性を示すシャトルコック1を得ることができる。
【0030】
なお、円周上に配置された中糸15は、その縫い始めの一方端部と縫い終わりの他方端部とが結ばれて、余った糸の部分は結び目近傍でカットされて除去される。当該結び目には、接着剤などを塗布することにより表面に保護層を形成することが好ましい。このような保護層を形成することにより、シャトルコック1がラケットにより打撃されたときに、当該結び目が解けることを防止できる。
【0031】
また、中糸15は、綿や樹脂など任意の材料を用いることができるが、ポリエステル製の糸を用いることが好ましい。また、中糸15は、シャトルコック1の重心などに影響を極力与えないようにするため、できるだけ軽量なものを用いることが好ましい。たとえば、用いる糸としては、50番のポリエステル製の糸を用いてもよい。この場合、中糸15として使用した糸の質量は約0.02gとなる。この程度の質量であれば、シャトルコック1の重心位置に若干の影響はあるものの、飛翔特性にはほとんど影響がないと考えられる。また、中糸15の配置については、ベース本体2からの距離を任意に設定することができる。
【0032】
次に、図8〜図10を参照して、図1および図2に示したシャトルコック1、シャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明する。
【0033】
まず、図8を参照して、本発明に従ったシャトルコック用の人工羽根3の製造方法を説明する。図8に示すように、人工羽根3の製造方法では、まず構成材準備工程(S10)を実施する。この工程(S10)では、人工羽根3を構成する軸7、図5および図6に示した発泡体層92および軸固定層91を構成するシート状材料、接着層93、94となるべき両面テープを準備する。なお、これらのシート状部材および両面テープの平面形状は、図3に示した羽部5のサイズよりも大きければ任意の形状とすることができる。発泡体層92となるべきシート状部材としては、たとえばポリエチレンフォーム(ポリエチレンの発泡体であってシート状に成形されたもの)であって厚みが1.0mm、目付けが24g/m2といった材料を用いることができる。また、軸固定層91となるべきシート状部材としては、ポリエチレンフォームであって厚みが0.5mm、目付けが20g/m2といった材料を用いることができる。また、接着層93、94となる両面テープの目付けは10g/m2とすることができる。
【0034】
また、上述した軸7の製造工程としては、図9に示すように、まず金型準備工程(S11)を実施する。この工程(S11)では、たとえば射出成形あるいは射出圧縮成形により軸7を形成するための金型を準備する。ここで準備する金型としては、たとえば上型と下型とに分割された金型であって、互いに対向する金型表面には、軸7の形状に対応した凹部が形成されている。また、当該凹部は、軸7の本体部13を形成する部分と、当該本体部13を形成する部分の外周部において、薄肉部14を形成するための隙間を含んでいる。
【0035】
次に、成形工程(S12)を実施する。この工程(S12)では、まず上記のように準備した金型を、射出成形機など金型の内部(凹部)に樹脂を注入するための装置にセットする(金型セット工程)。次に、樹脂注入工程を実施する。すなわち、金型に設けられた樹脂の注入口から、金型内部の凹部に樹脂を注入する。樹脂としては、たとえば熱可塑性樹脂を用いることができる。この結果、金型内部において軸が形成される。また、上述のように金型の凹部には薄肉部14を形成するための隙間が形成されているので、得られた軸7には側面から突出する薄肉部14が形成されている。このようにして、成形工程(S12)を実施する。その後、金型内部から軸7を取出す。この結果、人工羽根3を構成する軸7を得ることができる。
【0036】
次に、図8に示すように貼り合わせ工程(S20)を実施する。この工程(S20)においては、発泡体層92となるべきシート状部材の主表面上に接着層93となるべき両面テープを貼付する。そして、当該両面テープの上に軸7の固着軸部10を配置する。さらに、その上から、固着軸部10に対向する面に接着層94となるべき両面テープが貼付された軸固定層91となるべきシート状部材を積層配置して貼り合わせる。この結果、軸7の固着軸部10を、発泡体層92となるべきシート状部材と軸固定層91となるべきシート状部材とで挟んで固定した構造を得ることができる。
【0037】
次に、後処理工程(S30)を実施する。具体的には、羽部5となるべき積層配置されたシート状部材の不要部(つまり羽部5となるべき部分以外の領域)を切断除去する。この結果、図3〜図6に示したような人工羽根3を得ることができる。そして、当該人工羽根3に対して、たとえば発泡体層92側から熱を加えるなどの熱処理を行なうことにより、発泡体層92などを収縮させる。この結果、図6に示したように軸7および羽部5が反った状態を実現できる。なお、図6に示したような軸7および羽部5の反った状態を実現するため、他の方法を用いてもよい。たとえば、最初から反った形状の軸7を用いるといった方法を採用してもよい。
【0038】
次に、図10を参照して図1および図2に示したシャトルコック1の製造方法を説明する。図10に示すように、まず準備工程(S100)を実施する。この準備工程(S100)では、シャトルコック1のベース本体2(先端部材)および上述した人工羽根3など、シャトルコック1の構成部材を準備する。
【0039】
ベース本体2の製造方法は、従来公知の任意の方法を用いることができるが、たとえばベース本体2となるべき材料としてコルクなどの天然の素材を用いることができる。また、ベース本体2の材料として人工の樹脂などを用いてもよい。ベース本体2の材料として人工の樹脂を用いる場合、従来周知の任意の加工方法を用いてベース本体2を形成することができる。たとえば、まずベース本体2となる素材のブロックを準備し、切削加工により概略形状とする。このとき、先端部の半球状部分の高さを加味して加工を行なう。そして、さらに切削加工により、人工羽根3を挿入するための挿入穴を形成するといった方法を用いてもよい。また、上述した人工樹脂を用いる場合には、たとえば、アイオノマー樹脂発泡体、あるいはEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、ポリウレタン、PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。また、人工羽根3の製造方法としては、上述した図8に示した製造方法を用いることができる。
【0040】
次に、組立工程(S200)を実施する。当該組立工程(S200)では、ベース本体の固定用表面部における挿入穴に上述した複数の人工羽根3の軸7の根元を挿入固定する。さらに、当該複数の人工羽根3を互いに紐状部材により固定する。また、羽部の重なり状態を維持するための中糸15が図7に示すような配置となるよう縫製を行なう。このようにして、図1および図2に示すシャトルコック1を製造することができる。なお、複数の人工羽根3を互いに固定する固定部材としては、上述のような紐状部材に限らず、たとえばリング状部材など任意の部材を用いてもよい。
【0041】
また、上記固定部材の材料としては、たとえば樹脂や繊維など任意の材料を用いることができる。たとえば、紐状部材としてアラミド繊維またはガラス繊維を用い、当該アラミド繊維またはガラス繊維に樹脂(たとえば熱硬化性樹脂)を含浸し、当該樹脂を硬化することでFRP化した固定部材を用いてもよい。このようにFRP化することによって、固定部材の強度や剛性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂としてはたとえばエポキシ樹脂やフェノール樹脂を用いることができる。このようにFRP化のために熱硬化性樹脂を用いれば、固定部材を軸7と固定するための加工において加熱工程を行なう場合などに、同時に熱硬化性樹脂により固定部材のFRP化を容易に行なうことができる。
【0042】
図10〜図14を参照して、本発明によるシャトルコックの実施の形態を構成する人工羽根の第1〜第4の変形例を説明する。なお、図10〜図14はそれぞれ図4に対応する。
【0043】
図11に示した軸を備える人工羽根は、基本的に図3〜図6に示す人工羽根3と同様の構造を備えるが、軸7の本体部13の断面形状が異なっている。具体的には、図11に示した軸7の本体部13は、中心軸部11から左右方向に2つの薄肉リブ部12bが延びる一方、中心軸部11の下側から一方のみに厚肉リブ部12aが延在している。なお、薄肉リブ部12bの外周端部には薄肉部14が形成されている。このような、いわゆる断面がT字状の本体部13となっている軸を用いた人工羽根によっても、図3〜図6に示した人工羽根3と同様の効果を得ることができる。
【0044】
図12に示した軸を備える人工羽根は、基本的に図11に示した人工羽根3と同様の構造を備えるが、中心軸部11から上方(薄肉リブ部12bが延びる方向に対して垂直な方向、あるいは厚肉リブ部12aの延びる方向と逆方向)に延びるように突出部16が形成されている点が異なる。このようなリブ部12に含まれる突出部16を形成することで、図11に示した軸を用いた人工羽根による効果と同様の効果を得られるとともに、図12の上下方向(厚肉リブ部12aおよび突出部16が延びる方向)において軸7の剛性をより高めることができる。
【0045】
図13に示した軸を備える人工羽根は、基本的に図3〜図6に示す人工羽根3と同様の構造を備えるが、軸7の本体部13の両側に形成された2つの薄肉部14の幅W1、W2が互いに異なっている点が、図3〜図6に示した人工羽根とは異なっている。具体的には、図13に示した軸7の本体部13の図中左側に形成された薄肉部14の幅W1は、図中右側に形成されている薄肉部14の幅W2より広くなっている。このようにすれば、図3〜図6に示した人工羽根3と同様の効果を得ることができるとともに、軸の中心軸部11から見て軸7の右側と左側とで空気抵抗の差を設けることができるので、人工羽根における空気抵抗パターンのバリエーションを豊富にすることができる。このため、当該人工羽根3を用いたシャトルコックにおいて、飛翔特性の制御範囲をより広くすることができる。
【0046】
図14に示した軸を備える人工羽根は、基本的に図3〜図6に示す人工羽根3と同様の構造を備えるが、軸7の本体部13の両側に形成された2つの薄肉部14の配置が図3〜図6に示した人工羽根とは異なっている。具体的には、図14に示した軸7の本体部13の側面に形成された薄肉部14は、薄肉リブ部12bの側面(図14における薄肉リブ部12bの平坦な側面)と同一平面を構成するように配置されていない。図14に示した軸の薄肉部14は、上記薄肉リブ部12bの側面と段差を介して連なった位置に配置されている。このような構成であっても、図3〜図6に示した人工羽根3と同種の効果を得ることができる。
【0047】
上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本願発明の特徴的な構成を以下に列挙する。
【0048】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根3は、羽部5と、羽部5に接続された軸7とを備える。軸7の延在方向に対して垂直な平面における断面形状(たとえば図4参照)は十字状(図4参照)またはT字状(図11参照)である。軸7において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部13より厚みの薄い薄肉部14が、本体部13の側面から突出するように本体部13と一体に形成されている。
【0049】
このようにすれば、軸7の断面形状を十字状またはT字状とすることにより、軸7の総質量の増加を抑制しつつ軸7の剛性を高めることができる。さらに、薄肉部14を軸7の本体部13の側面から突出するように形成することで、シャトルコック1の飛翔特性を制御するための人工羽根3の空気抵抗を適宜調整することができる。そして、このような薄肉部14は本体部13より厚みを薄くすることができるため、軸7の質量の増加を抑制することができる。この結果、人工羽根3の質量の増加を抑制しつつ、人工羽根3の軸7の剛性を向上させるとともに人工羽根3の空気抵抗を調整することにより、優れた飛翔特性の人工シャトルコック1を構成する人工羽根3を実現できる。
【0050】
上記シャトルコック用人工羽根3において、本体部13は、中心軸部11と当該中心軸部11の側面から突出する複数のリブ部12とを含んでいてもよい。複数のリブ部12は、軸7の延在方向に対して垂直な平面において、中心軸部11から外側へ向かう径方向に対して垂直な方向における厚みが相対的に厚い厚肉リブ部12aと、当該厚みが相対的に薄い薄肉リブ部12bとを含んでいてもよい。薄肉部14は薄肉リブ部12bの外周側面から突出するように形成されていてもよい。
【0051】
この場合、厚肉リブ部12aの突出方向における軸7の剛性を特に向上させることができる。また、薄肉部14が突出する方向(図4の左右方向)においては、軸7の本体部13の薄肉リブ部12bを配置しているので、本体部13に含まれるすべてのリブ部12の厚みを一律に厚くする場合より、軸7の質量を低減できる。このため、軸7の質量を所定の範囲に制限しつつ、薄肉部14が突出する方向(薄肉リブ部12bが突出する方向)における軸7の幅(図4における幅W)を十分に大きくできる。
【0052】
上記シャトルコック用人工羽根3において、図4に示すように、薄肉部14は、薄肉リブ部12bにおいて径方向に延びる表面に沿って突出するように形成されていてもよい。
【0053】
この場合、空気に対する抵抗体という観点から、薄肉部14と薄肉リブ部12bとを連続した一体の抵抗体とみなすことができる。また、薄肉部14を形成する場合に、薄肉リブ部12bの上記表面に沿わないように当該薄肉部14を形成する場合より、たとえば金型を用いて上記薄肉部14を有する軸7を容易に形成することができる。
【0054】
上記シャトルコック用人工羽根3において、軸7の延在方向に対して垂直な平面における、薄肉リブ部12bの突出方向に沿った本体部13と薄肉部14との合計幅Wは、厚肉リブ部12aの突出方向に沿った本体部13の幅(図4における高さT)より大きくなっていてもよい。
【0055】
この場合、厚肉リブ部12aの突出方向(つまり軸7の剛性が相対的に高くなっている方向)と異なる方向(つまり薄肉リブ部12bの突出方向)において、軸7の空気抵抗を大きくするように、空気抵抗を発生させるための軸7の実質的な幅Wを広く確保することができる。また、薄肉リブ部12bの突出方向における幅Wと同等の径を有する軸を用いる場合や、薄肉リブ部12bの厚みを上記厚肉リブ部12aの厚みと同等に設定する場合より、軸7の質量増加を抑制できる。
【0056】
上記シャトルコック用人工羽根3において、本体部13は、中心軸部11と前記中心軸部11の側面から突出する複数のリブ部12とを含んでいてもよい。薄肉部14は、図4、図5、図11〜図13などに示すように複数のリブ部12の少なくとも1つにおいて中心軸部11から外側へ向かう径方向に延びる表面に沿って突出するように形成されていてもよい。
【0057】
この場合、薄肉部14を複数のリブ部12の少なくとも1つから突出するように形成することで、軸7の実質的な幅Wを変更できる。この結果、シャトルコック1の飛翔特性を制御するための人工羽根3の空気抵抗を適宜調整することができる。
【0058】
上記シャトルコック用人工羽根3において、軸7の延在方向に対して垂直な平面における、薄肉部14が形成されたリブ部12の突出方向に沿った本体部13と薄肉部14との合計幅Wは、薄肉部14が形成されていない他のリブ部12の突出方向に沿った本体部13の幅(図4の高さT)より大きくなっていてもよい。
【0059】
この場合、薄肉部14が形成されたリブ部12の突出方向(たとえば図4や図11〜図13の左右方向)において、軸7の空気抵抗を大きくするように、空気抵抗を発生させるための軸7の実質的な幅Wを広く確保することができる。
【0060】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコック1は、半球状のベース本体2と、当該ベース本体2に接続された、上記シャトルコック用人工羽根3とを備える。このようにすれば、天然の羽根を用いた天然シャトルコックと同等の飛翔特性を備えるとともに十分な耐久性を有する人工シャトルコック1を実現できる。
【0061】
この発明に従ったシャトルコック用人工羽根の製造方法は、軸を準備する工程(S10、S11、S12)と、軸に羽部を接続する工程(S20)とを備える。軸を準備する工程(S10、S11、S12)は、軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状が十字状またはT字状となる軸をモールド成形するための金型を準備する工程(S11)と、当該金型を用いて射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより軸を形成する工程(S12)とを含む。金型を準備する工程(S11)では、軸7において十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部13より厚みが薄く、本体部13の側面から突出する薄肉部14を形成するための隙間が金型に形成されている。軸を形成する工程(S12)では、射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより薄肉部14が本体部13の側面から突出した軸7が形成される。このようにすれば、本発明に従ったシャトルコック用人工羽根3を製造することができる。
【0062】
この発明に従ったバドミントン用シャトルコックの製造方法は、半球状のベース本体を準備する工程(S100)と、上記シャトルコック用人工羽根の製造方法を用いてシャトルコック用人工羽根を製造する工程(S100)と、ベース本体にシャトルコック用人工羽根を接続する工程(S200)とを備える。このようにすれば、本発明に従ったバドミントン用シャトルコック1を製造することができる。
【0063】
次に、本発明によるシャトルコック用人工羽根およびシャトルコックの効果を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0064】
(実験内容)
本発明の実施例の人工羽根を用いたシャトルコックと、比較例としてのシャトルコック2種類とを準備し、円筒の下方から送風機により空気を流し、シャトルコックを浮遊回転させ、無接触回転数測定器を用いて、シャトルコックの回転速度(回転数)を測定した。
【0065】
(準備した試料)
本発明の実施例の試料として、図3〜図6に示した人工羽根3を用いたシャトルコックを準備した。人工羽根3の軸7の本体部13の幅W3(図4参照)は2.5mm、高さTは2.5mm、厚肉リブ部12aの中央部(中心軸部11から見た径方向での中央部)での厚みについて、図4の上側の厚肉リブ部12aでの中央部の厚みは0.8mm、図4の下側の厚肉リブ部12aの中央部の厚みは0.55mm、薄肉リブ部12bの厚みは0.4mm、薄肉部14の幅W1、W2はそれぞれ0.3mmとした。また、薄肉部14の厚みは0.05mmとした。
【0066】
また、人工羽根3の羽部5を構成する軸固定層91の材質はポリエチレンフォームを用い、厚みを0.5mm、目付け量を20g/m2とした。また、発泡体層92の材質はポリエチレンフォームを用い、厚みを1.0mm、目付け量を24g/m2とした。また、接着層93、94としては両面テープを用いた。両面テープの特性としては、厚さ10μm、目付け10g/m2といったものを用いた。そして、このような人工羽根を用いて、図1および図2に示した構成のシャトルコックを準備した。
【0067】
また、比較例1の試料として、上記実施例の試料に用いた軸と同様の構成の軸から、薄肉部14を削り取った加工済み軸を用いて人工羽根3を製造した。加工済み軸以外は、上述した実施例の試料に用いた人工羽根3と同様の構成とした。そして、このような比較例としての人工羽根3を用いて、実施例の試料と同様の構成を備えるシャトルコックを準備した。
【0068】
また、比較例2の試料として、上述した実施例の試料に用いた軸から薄肉部14を除いた構成の軸を用いて人工羽根およびシャトルコックを準備した。なお、ここで準備した軸については、射出成形に用いる金型として、実施例の人工羽根における軸とは異なる構成の金型(つまり、薄肉部14のための隙間を形成していない構成の金型)を用いた。
【0069】
(結果)
各試料のシャトルコックについて、円筒の下方から送風機により空気を7m/秒で流し、シャトルコックを浮遊回転させ、無接触回転数測定器を用いてシャトルコックの回転数を測定した。計測は、各試料ごとに5個のシャトルコックを用意し、当該5個の平均回転数を算出した。
【0070】
その結果、実施例の試料については平均回転数が477rpmであった。また、シャトルコックの飛翔の軌跡なども、天然シャトルコックに比較的近いものとなっていた。
【0071】
一方、比較例1の試料については、平均回転数が317rpmであり、また、比較例2の試料については、平均回転数が252rpmであった。また、このような回転数の差に起因して、比較例のシャトルコックの飛翔時の軌跡は実施例のシャトルコックの飛翔時の軌跡と異なり、また天然シャトルコックの飛翔時軌跡とも異なっていた。また、回転数が300rpm未満ではシャトルコックが飛翔中に揺れやすくなり、飛行時軌跡が安定しない傾向が見られた。
【0072】
なお、いずれの試料も今回の試験中には形状の崩れなど発生することなく、十分な耐久性を示していた。
【0073】
この結果、本発明の実施例の試料が十分な耐久性を示すと共に、比較的天然のシャトルコックに近い飛翔特性を示すことがわかった。
【0074】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、水鳥の羽根を用いたバトミントン用シャトルコックと同等の飛翔特性および耐久性を有する、人工羽根を用いたバドミントン用シャトルコックに有利に適用される。
【符号の説明】
【0076】
1 シャトルコック、2 ベース本体、3 人工羽根、5 羽部、7 軸、8 羽軸部、10 固着軸部、11 中心軸部、12 リブ部、12a 厚肉リブ部、12b 薄肉リブ部、13 本体部、14 薄肉部、15 中糸、16 突出部、91 軸固定層、92 発泡体層、93,94 接着層、95 矢印。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽部と、
前記羽部に接続された軸とを備え、
前記軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状は十字状またはT字状であり、
前記軸において前記十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部より厚みの薄い薄肉部が、前記本体部の側面から突出するように前記本体部と一体に形成されている、シャトルコック用人工羽根。
【請求項2】
前記本体部は、中心軸部と前記中心軸部の側面から突出する複数のリブ部とを含み、
前記複数のリブ部は、前記軸の延在方向に対して垂直な平面において、前記中心軸部から外側へ向かう径方向に対して垂直な方向における厚みが相対的に厚い厚肉リブ部と、前記厚みが相対的に薄い薄肉リブ部とを含み、
前記薄肉部は前記薄肉リブ部の外周側面から突出するように形成されている、請求項1に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記薄肉リブ部において前記径方向に延びる表面に沿って突出するように形成されている、請求項2に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項4】
前記軸の延在方向に対して垂直な平面における、前記薄肉リブ部の突出方向に沿った前記本体部と前記薄肉部との合計幅は、前記厚肉リブ部の突出方向に沿った前記本体部の幅より大きくなっている、請求項2または3に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項5】
前記本体部は、中心軸部と前記中心軸部の側面から突出する複数のリブ部とを含み、
前記薄肉部は、前記複数のリブ部の少なくとも1つにおいて前記中心軸部から外側へ向かう径方向に延びる表面に沿って突出するように形成されている、請求項1に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項6】
前記軸の延在方向に対して垂直な平面における、前記薄肉部が形成されたリブ部の突出方向に沿った前記本体部と前記薄肉部との合計幅は、前記薄肉部が形成されていない他のリブ部の突出方向に沿った前記本体部の幅より大きくなっている、請求項5に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項7】
半球状のベース本体と、
前記ベース本体に接続された、請求項1に記載のシャトルコック用人工羽根とを備える、バドミントン用シャトルコック。
【請求項8】
軸を準備する工程と、
前記軸に羽部を接続する工程とを備え、
前記軸を準備する工程は、
前記軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状が十字状またはT字状となる軸をモールド成形するための金型を準備する工程と、
前記金型を用いて射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより前記軸を形成する工程とを含み、
前記金型を準備する工程では、前記軸において前記十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部より厚みが薄く、前記本体部の側面から突出する薄肉部を形成するための隙間が前記金型に形成され、
前記軸を形成する工程では、前記射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより前記薄肉部が前記本体部の側面から突出した軸が形成される、シャトルコック用人工羽根の製造方法。
【請求項9】
半球状のベース本体を準備する工程と、
請求項8に記載のシャトルコック用人工羽根の製造方法を用いてシャトルコック用人工羽根を製造する工程と、
前記ベース本体に前記シャトルコック用人工羽根を接続する工程とを備える、バドミントン用シャトルコックの製造方法。
【請求項1】
羽部と、
前記羽部に接続された軸とを備え、
前記軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状は十字状またはT字状であり、
前記軸において前記十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部より厚みの薄い薄肉部が、前記本体部の側面から突出するように前記本体部と一体に形成されている、シャトルコック用人工羽根。
【請求項2】
前記本体部は、中心軸部と前記中心軸部の側面から突出する複数のリブ部とを含み、
前記複数のリブ部は、前記軸の延在方向に対して垂直な平面において、前記中心軸部から外側へ向かう径方向に対して垂直な方向における厚みが相対的に厚い厚肉リブ部と、前記厚みが相対的に薄い薄肉リブ部とを含み、
前記薄肉部は前記薄肉リブ部の外周側面から突出するように形成されている、請求項1に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記薄肉リブ部において前記径方向に延びる表面に沿って突出するように形成されている、請求項2に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項4】
前記軸の延在方向に対して垂直な平面における、前記薄肉リブ部の突出方向に沿った前記本体部と前記薄肉部との合計幅は、前記厚肉リブ部の突出方向に沿った前記本体部の幅より大きくなっている、請求項2または3に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項5】
前記本体部は、中心軸部と前記中心軸部の側面から突出する複数のリブ部とを含み、
前記薄肉部は、前記複数のリブ部の少なくとも1つにおいて前記中心軸部から外側へ向かう径方向に延びる表面に沿って突出するように形成されている、請求項1に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項6】
前記軸の延在方向に対して垂直な平面における、前記薄肉部が形成されたリブ部の突出方向に沿った前記本体部と前記薄肉部との合計幅は、前記薄肉部が形成されていない他のリブ部の突出方向に沿った前記本体部の幅より大きくなっている、請求項5に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項7】
半球状のベース本体と、
前記ベース本体に接続された、請求項1に記載のシャトルコック用人工羽根とを備える、バドミントン用シャトルコック。
【請求項8】
軸を準備する工程と、
前記軸に羽部を接続する工程とを備え、
前記軸を準備する工程は、
前記軸の延在方向に対して垂直な平面における断面形状が十字状またはT字状となる軸をモールド成形するための金型を準備する工程と、
前記金型を用いて射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより前記軸を形成する工程とを含み、
前記金型を準備する工程では、前記軸において前記十字状またはT字状の断面形状を構成する本体部より厚みが薄く、前記本体部の側面から突出する薄肉部を形成するための隙間が前記金型に形成され、
前記軸を形成する工程では、前記射出成形または射出圧縮成形を行なうことにより前記薄肉部が前記本体部の側面から突出した軸が形成される、シャトルコック用人工羽根の製造方法。
【請求項9】
半球状のベース本体を準備する工程と、
請求項8に記載のシャトルコック用人工羽根の製造方法を用いてシャトルコック用人工羽根を製造する工程と、
前記ベース本体に前記シャトルコック用人工羽根を接続する工程とを備える、バドミントン用シャトルコックの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−36591(P2011−36591A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189139(P2009−189139)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
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