説明

シャープペンシル

【課題】 傾斜動部材のレバー作用を用いて芯の繰り出しを行うシャープペンシルは、シャープペンシルを持ちかえる操作上の煩わしさを解消した点は優れているものの、傾斜動部材に当接する部材が軸筒内で軸筒の中心軸に対して傾いて配置されることで、シャープペンシルの使用姿勢によっては、軸筒内部で前後に摺動する部材が摺動時のガイド作用を示す以上の摩擦抵抗を生じて、動作が不安定になる場合があった。
【解決手段】 軸筒内に、芯の後退を阻止するチャックユニットと、前記芯を保持する摺動体が配置されたシャープペンシルにおいて、前記摺動体の外周上に係止溝を設け、その係止溝と係合する係止部を前記軸筒内に複数設けると共に、それら係止溝と係止部との係合を解除する押圧部を前記チャックユニットに設けたシャープペンシル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に、芯の後退を阻止するチャックユニットと、前記芯を保持する摺動体が配置されたシャープペンシルに関するものである。
特に、筆記時の圧力(以下、筆記圧と称する)より高い荷重(以下、押圧力と称する)で芯の先端を紙面などに押しつけ、次いで、離すことによって一定長さの芯を繰り出すことができるシャープペンシルの芯繰り出し構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より筆記に伴う芯の摩耗に応じて、軸筒の後部に配置されているノック部材を押圧することによって芯の繰り出し操作を行うシャープペンシルが知られていた。しかし、筆記中に芯を出す繰り出し操作を行うためには、一旦、シャープペンシルを持ちかえる必要があり、操作上煩わしさが生じていた。
【0003】
そこで、特許文献1では、芯の先端を紙面等に強く押付けたときのボールチャック機構の後退量よりも余計に芯案内管を後退させ、前記芯の紙面に対する押付けをなくしたとき、芯案内管の芯戻り止め部材により保持された芯をスリップさせずに芯を前進させ繰り出す、所謂、先端ノックシャープペンシルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−179178公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているシャープペンシルの基本構造は、軸筒先端に取り付けた先金の内面にリングを固定し、そのリングの前方箇所に、傾斜した姿勢とリングに当接して直立した姿勢を取ることができる環状の傾斜動部材を揺動可能に設け、その傾斜動部材の揺動支点から離れた前端面箇所に、内装スプリングによって後方に向け賦勢され且つ軸方向に摺動自在とした芯戻り止め部材付き芯案内管の後端縁部と当接させ、また、その傾斜動部材の回動支点に近い後端面箇所に、ノックスプリングによって前方に向け賦勢され且つリングの後端面と軸筒内面に形成した段部端面の間を移動可能としたボールチャック機構の外筒先端に設けたストッパー前端面と当接させた構造となっている。
この基本構造において、傾斜動部材が揺動してレバー作用をもたらすことによって、紙面等に芯を強く押し付けた際に、芯案内管が芯を挟持したチャックの後退量よりも大なる長さを後退し、押圧力を除くと芯案内管が内蔵した芯戻り止め部材により保持された芯を、チャックから引き出しながら元の位置に戻ることで芯を前方に送り出すことを可能としている。
このようにレバー作用を用いて芯の繰り出しを行うことでシャープペンシルを持ちかえる操作上の煩わしさを解消した点は非常に優れている。しかしながら、傾斜動部材のそれぞれの端を異なる部材に当接させてレバーの作用を付与するため、傾斜動部材に当接する芯案内管とストッパーが軸筒内で軸筒の中心軸に対して傾いて配置されることになる。その結果、シャープペンシルの使用姿勢によっては、芯を紙面に押し付けた時に、芯案内管やストッパー及びこれらと一体に前後動する部材、具体的にはボールチャック機構の外軸などが、先部材や軸筒との摺動時にガイド作用を示す以上の摩擦抵抗を生じて、動作が不安定になる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は前記問題を鑑み、軸筒内に、芯の後退を阻止するチャックユニットと、前記芯を保持する摺動体が配置されたシャープペンシルにおいて、前記摺動体の外周上に係止溝を設け、その係止溝と係合する係止部を前記軸筒内に複数設けると共に、それら係止溝と係止部との係合を解除する押圧部を前記チャックユニットに設けたことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、軸筒内に、芯の後退を阻止するチャックユニットと、前記芯を保持する摺動体が配置されたシャープペンシルにおいて、前記摺動体の外周上に係止溝を設け、その係止溝と係合する係止部を前記軸筒内に複数設けると共に、それら係止溝と係止部との係合を解除する押圧部を前記チャックユニットに設けているので、従来技術で示したようなレバー機構として傾斜動部材を用いることなく、先端ノックによる芯の繰り出しを達成させる。このため、各部材が軸筒および先部材内で軸筒の中心軸に対して傾くことなく同軸上に配置され、その結果、先端ノック時に加わる荷重の方向が軸方向からずれて各部材に伝わって摺動抵抗が増大することを防止でき、シャープペンシルの使用姿勢に問わず安定して芯を繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施例の構成を示す縦断面図。
【図2】本発明の第1実施例の構成を示す部分拡大縦断面図。
【図3】本発明の第1実施例の摺動体と係止部材の詳細斜視図。
【図4】本発明の第1実施例の作動図。
【図5】本発明の第1実施例の作動図。
【図6】本発明の第1実施例の作動図。
【図7】本発明の第1実施例の作動図。
【図8】本発明の第2実施例の構成を示す部分拡大縦断面図。
【図9】本発明の第2実施例の摺動体と係止部材の詳細斜視図。
【図10】本発明の第2の実施例の作動図
【図11】本発明の第3実施例の構成を示す部分拡大縦断面図。
【図12】本発明の第3実施例のA-A断面図。
【図13】本発明の第3実施例の作動図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による芯繰り出し構造を有するシャープペンシルの基本構造は、以下の通りである。軸筒内には、芯の後退を阻止するチャックユニットと芯を保持する摺動体が配置され、その摺動体の外周上には係止溝が設けられている。さらに軸筒内に、その係止溝と係合する係止部を複数設け、チャックユニットには係止溝と係合部との係合を解除する押圧部を設けている。
作用について説明する。紙面に芯を押し付けると、チャックユニットと摺動体が同じ距離後退し、その押圧力を除くと、摺動体は係止部材に係止された場所に留まるが、チャックユニットは芯を挟持した状態で前進するため、摺動体から突出する芯の長さが増加することになる。その後、チャックユニットに取り付けられた押し部材が摺動体を押すことで、前記係止溝と係止部との係止が解除され、各部材が元の位置に戻って芯の繰り出しを完了する。この構造を採ることで、各部材が中心軸に対して傾くことなく同軸上に配置され、本体の把持姿勢に関わらずに安定して芯繰り出し操作が行われる。
【0010】
実施例に基づき本発明のシャープペンシルの芯繰り出し構造を説明する。図1は、本発明の第1実施例の構成を示す縦断面図であり、図2は、部分拡大縦断面図である。
外軸筒1の前方には、先部材2が固定されている。その先部材2の内部には、係止部材3を圧入固定し、摺動体4を前後動自在に配置している。摺動体4は内部に芯保持部材5を圧入固定し、先端に芯保護管6を固定している。前記摺動体4の後方には、部分鍔付筒体7が配置されているが、その部分鍔付筒体7の前方には傾斜筒体8が圧入固定されている。その傾斜筒体8の前部には押し部材9が固定されていると共に、傾斜筒体8の内部にはチャック10が配置されている。さらに、傾斜筒体8の内面とチャック10の前方に形成された半球状の凹部10aとの間には、球状のボール11が配置されており、チャックユニットを構成している。また、チャック10の凹部10aよりさらに前方に形成された段部10bと摺動体4の後部に形成された段部4aとの間に弾発部材12が配置されている。その弾発部材12によって、前記チャック10が後方に付勢されると共に、摺動体4が前方に付勢されている。
前記部分鍔付筒体7の外周と外軸筒1の間には筒体13が配置される。その筒体13の前面と先部材2の後端との間には弾発部材14が張設されて、筒体13を後方に付勢している。また、筒体13の内段部13aと、部分鍔付筒体7の段部7aとの間には弾発部材15が張設されており、前記部分鍔付筒体7を前方に付勢している。
前記チャックユニットの後方には、芯ガイド管16が前方に圧入された傾斜段付筒体17と芯タンク18、消しゴム19、ノック部材20から構成される芯タンクユニットが前後方向摺動自在に内挿入されている。前記外軸筒1の内部には内側鍔付筒体21が内嵌圧入されており、この内側鍔付筒体21の後端と、前記芯タンク18の長手方向の中程に形成された鍔部18aとの間に弾発部材22が張設されており、芯タンク18が後方に付勢される。また、前記外軸筒1の後方には小径部1aが設けられ、クリップ23が円筒状の取り付け部23aを前記小径部1aに外嵌圧入することで固定されている。以上が本実施例の構成であるが、本実施例においては、摺動体4と係止部材3と押し部材9の動作に特徴を有している。
【0011】
さらに各部材について詳述する。前記先部材2は、内部に貫通孔2aと、段部2b、2c、2dが形成され、段部2bと段部2cの間に内径部2eが、段部2cと段部2dの間に内径部2fが形成されている。また、先部材2の後方には、螺子2gと内径拡径部2hと段部2iが形成され、螺子2gは前記外軸筒1の前方に形成された螺子1bと螺合固定されている。
先部材2の内径拡径部2hには、係止部材3の円筒状部3aが着脱不能に内嵌圧入されている。図3に示すように、係止部材3の円筒状部3aの前端面からは、腕部3bが円状に並んで伸びており、この腕部3bは断面が円弧状の梁の形状となっている。その腕部3bの先端では、円筒状部3aの内径よりも内径が小さい部分が成形され、山形状をしたカギ部3cとなっている。
また、前記先部材2及び係止部材3の内部には、摺動体4を前後動自在に配置している。その摺動体4は、外部に段部4a、前方側面部4b、後方側面部4cを形成し、内部に内側段部4d、貫通孔4eを形成している。さらに、後方側面部4cには係止溝4fが円周状に形成される。尚、後方側面部4cの外径は、前記係止部材3のカギ部3cの内径よりもわずかに大きいため、通常時は常に摺動体4の後方側面部4cに、前記係止部材3のカギ部3cが触れていて、腕部3が撓んで広がっている。また、前記摺動体4が前後に移動する際には一定の摩擦力が発生する。一方で、摺動体4の係止溝4fの外径は、係止部材3のカギ部3cの内径よりも十分小さいため、摺動体4の係止溝4fに係止部材3のカギ部3cが嵌っている時(係止状態)は、腕部3の撓みは発生しない。また、その係止状態において、摺動体4が押圧されて、その係止が解除されるためには、係止部材3のカギ部3cと摺動体4の係止溝4fの嵌合によってもたらされる係止力を上回る係止解除荷重を摺動体4に与える必要がある。この係止力は、摺動体4の係止溝4fから係止部材3のカギ部3cが外れる程までに腕部3bが撓むための力であるため、通常時に摺動体4が前後に摺動する際に摺動体4と係止部材3のカギ部3cとの間に発生する摩擦力よりも大きくなる。なお、本実施例では係止部材の腕部の本数を4本としたが、円筒状の摺動体4に均等に前記摺動時の摩擦力や前記係止力を加えることが可能であることに配慮すれば、腕部の本数は4本に限定されず、3本以上であれば成形できる範囲内で腕部の本数を増減して構わない。
前記係止部材3の材質は、形状を維持できるものであれば良く、金属や合成樹脂を用いることができるが、腕部3bが常に中心軸から外向きに力を受けており、さらに摺動体4の係止を解除する際に腕部3bが撓む動作が繰り返されるため、特に塑性変形しにくい金属が望ましい。また、摺動体4は、その後方側面部4cに係止部材3のカギ部3cが接触して摺動するため、摺動性を有し、且つ、摩耗しにくい合成樹脂や金属を用いることが望ましい。例えば、ポリアセタール、ナイロンなどが挙げられる。ちなみに、この係止部材をゴム状弾性体にしてしまうと、芯に含有されている油などと反応してしまい、ゴム状弾性体の経時的な劣化が促進され、係合部材としての機能を果たさなくなってしまう恐れがある。また、本例においては、梁状の腕部とすることによって摩擦力と係止力の差をつけやすくしている。つまり、係合部(カギ部3c)を環状にしてしまうと、弾性変形が得られにくくなり、摩擦力と係止力の差をつけにくくしてしまうのである。さらに、ゴム状弾性体の環状の部材を用いると、先部材2への固定をゴムと先部材2の摩擦力に頼ることになるが、ゴム状弾性体が摺動体と係合する際に変形してしまうことで、先部材から脱落する恐れが大きくなる。一方、本実施例の係止部材は、先部材2に円筒状部3aで固定されており、係合時は腕部3bのみが外径方向に容易に変形するため、固定箇所の変形による脱落が防止できる。
前記摺動体4の内側段部4dに圧入固定される芯保持部材5は軸方向に貫通孔5aを有し、前方は先端が平らな円錐上、後方は円筒状となっている、この芯保持部材5に用いられる材質は、弾性を有する樹脂であれば良く、具体的には、ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。また、摺動体4の貫通孔4eに圧入固定される芯保護管6は繰り出された芯の保護と、視認性を向上させる目的で配置されるが、摺動体4と一体に形成しても良い。その芯保護管6に用いられる材質は、芯の保護(芯折れ防止機能付加)を目的とするためは金属を用いることが良い。具体的には、鉄およびその合金、銅及びその合金などが挙げられる。
また、前記摺る摺動体4の段部4aには、弾発部材12の前端が当接しており、その弾発部材12の弾発力によって前方に付勢されおり、その結果、摺動体4の先端が前記先部材2の段部2bに当接することで位置決めされる。さらに、摺動体4の前方側面4bは先部材2の内径部2eよりもわずかに細く形成されていると共に、後方側面4cは先部材2の内径部2fよりもわずかに細く形成されており、摺動体4が先部材2の内部を前後に摺動する際のガイドとなる。
【0012】
前記チャックユニットは、前述したように、部分鍔付筒体7、傾斜筒体8、押し部材9、チャック10、ボール11から構成される。
その部分鍔付筒体7の前方内面には、傾斜筒体8の細径部8aが着脱不能に係止されている。その傾斜筒体8の内面には、前方に向かって拡径する傾斜面8bが形成されている。その傾斜筒体8の内側には、チャック10が前後動可能に配置されている。そのチャック10の前方外周面には半球状の凹部10aと段部10bが形成されており、また、前方内面には芯を把持する凹状の芯把持部10cが形成されている。そして、その凹部10aと前記傾斜筒体8の傾斜面8bとの間には球状のボール11が介在している。
また、傾斜筒体8の前方の内径拡径部8cには、前記押し部材9の後端部9aが着脱不可能に内嵌圧入される。実施例では押し部材9の形状は全長の中程に鍔部9bが形成され、その前方に外径小径部9cが形成されている。しかし、押し部材9の後方が傾斜筒体8に着脱不能に固定することができ、且つ、前方が係止部材3のカギ部3cの内径より細くなる構成であれば、異なる形状を取ることも可能である。さらには、傾斜筒体8と押し部材9を一体に成形することも可能である。
また、押し部材9の内方にはチャック10を後方に向けて付勢する弾発部材12が配置されている。その弾発部材12により、チャック10を後方に付勢することで傾斜筒体8の傾斜面8bに当接したボール11を介して、チャック10が閉じる方向に作用し、芯24を把持している。即ち、芯の前進は許容するが、その後退は楔作用によって阻止するボールチャック機構となっている。本実施例では、そのチャック10を2つに分割された同様な形状のチャック片を互いに合い対向させることによって構成している。
前記外軸1の内部には筒体13が前後摺動可能に配置される。その筒体13の段部13bと先部材2の段部2iとの間には、弾発部材14が張設されており、その弾発力によって筒体13は後方へ付勢され、後端部13cが外軸筒1の段部1cに当接することで位置決めされている。この筒体13の内部には、前記チャックセットの部分鍔付筒体7が前後に摺動可能に配置され、部分鍔付筒体7の段部7aと筒体13の内段部13aの間に弾発部材15が張設されることで、部分鍔付筒体7が前方に付勢されている。また、筒体13には窓穴13dが形成されており、その窓穴13dの前端13eに部分鍔付筒体7の部分鍔7bの前端が当接することで部分鍔付筒体7が位置決めされている。また、筒体13の内側の後方には段部13fが形成されており、前記部分鍔付筒体7の後方には段部7cが成形されており、それら筒体13の段部13fと部分鍔付筒体7の7cとが当接することで、先端ノック操作時における先端ノックの押し込み過剰を防止している。
【0013】
前記チャックユニットを構成する傾斜筒体8およびチャック10の材質は、凹部10aにボール11が接することから、強度および耐久性に優れた金属、例えば、銅やその合金、鉄やその合金、アルミニウムやその合金、亜鉛やその合金などが望ましいが、比較的硬質な合成樹脂、例えば、アクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアセタールなどや、これらの合成樹脂に無機粉体、ガラス繊維、カーボン繊維などを充填したものであっても良い。
【0014】
前記芯タンクユニットは、前述したように、芯ガイド管16、傾斜段付筒体17、芯タンク18、消しゴム19、ノック部材20から構成される。前記傾斜段付筒体17の前方側面部17aには傾斜段17bが円周状に形成されており、この傾斜段17bと前記部分鍔付筒体7の後方内径部に形成された傾斜段7dとが対向した状態で、傾斜段付筒体17が部分付筒体7に挿入されている。
また、傾斜段付筒体17の前方には芯ガイド管16が着脱不能に内嵌圧入されており、後方には芯タンク18が着脱不能に外嵌圧入されている。その芯タンク18の全長の中程には鍔部18aが形成されており、その鍔部18aの前方に窓穴18bとその窓穴18bの前方に突起18cが形成されている。さらに、窓穴18bに対向する位置に長窓穴18dと、その長窓穴18dの内部に爪部18eが形成されている。
前記外軸筒1の内側には内側鍔付筒体21が、芯タンク18の窓穴18bと長窓穴18dの外周に相向する位置に内嵌圧入されている。その内側鍔付筒体21の後端と前記芯タンク18の鍔部18dとの間には弾発部材22が張設され、芯タンク18を後方に付勢しているが、内側鍔付筒体21の内側鍔21aが芯タンク18の突起18cと爪部18cに当接しているため、芯タンク18は外軸筒1の後方へ外れることがない。
また、芯タンク18の後方拡径部18fの内方には、消しゴム19が着脱可能に係止されており、また、後方拡径部18fの外方には、ノック部材20が消しゴム19を覆うように着脱可能に係止される。
【0015】
さらに、各弾発部材の付勢力、芯保持部材5の芯保持力、係止部材3のカギ部3cと摺動体4の係止溝4fの嵌合によってもたらされる係止力、係止部材のカギ部3cと摺動体4の後部側面4の間に生じる摩擦力、ボールチャック機構の芯把持力の各々の力の序列について詳述する。力の弱い方から順に以下の大小関係が必要となる。
ボールチャック機構の芯前進時保持力は芯保持部材5の芯保持力と弾発部材12の付勢力よりも弱く、また、その弾発部材12の付勢力は摺動体4の係止溝4fの嵌合によってもたらされる係止力よりも弱く、さらに、その係止力は弾発部材15の付勢力よりも弱く、その弾発部材15の付勢力はボールチャック機構の芯後退時把持力よりも弱く設定されている。
また、係止部材のカギ部3cと摺動体4の後方側面部4cの間に生じる摩擦力と弾発部材12の付勢力を加算した力が、芯保持部材5の芯保持力よりも弱く、その芯保持力は前記係止力と弾発部材12の付勢力の和よりも弱く設定されている。
具体的に説明すると、本実施例においては、ボールチャック機構の芯前進時把持力が0.15N以上、0.20N以下であり、芯保持部材5の芯把持力が0.69N以上、0.79N以下であり、また、弾発部材12の付勢力が0.29N以上、0.39N以下、さらに、前記係止力が0.98N以上、1.47N以下、また、弾発部材15の付勢力が2.94N以上、3.33N以下、さらに、ボールチャック機構の芯後退時把持力が7.84N以上、そして前記摩擦力が0.39N以下になるよう構成している。
【0016】
次に本発明の第1実施例における、紙面に芯を強く押し付けて芯を繰り出す動作(以下先端ノック動作)について説明する。図4〜図7は、先端ノック動作の作動図である。
【0017】
図4は、本発明品の筆記の最中の状態であり、芯保護管6の先端から芯24が長さLだけ突出している。
【0018】
芯を繰り出すために、芯保護管6の先端から突出している芯24の先端を紙面25に強く押し付ける。この時芯24に加わる後方への力(押圧力)は、通常の筆記時に紙面25から芯24に加わる力よりも大きい。この押圧力は芯24からチャック10に伝わり、そのチャック10は後退をしようとするが、チャック10の前方外周面の半円状の凹部10aに介在しているボール11が当接する傾斜面8bの楔作用によりチャック10は強固に閉じ、芯24を後退できないように強固に把持する(芯24の後退は楔作用によって阻止される)。さらに使用者が紙面25に付加する押圧力を増加し、押圧力が弾発部材15のチャックユニット前方付勢力を超えると、弾発部材15が抗しきれずチャックユニットが後退する。このチャックユニットの後退により、チャック10で把持している芯24も見掛け上後退し、芯24を把持する芯保持部材5も後退する。この後退により芯保持部材5を内包する摺動体4も後退することとなる。
ここで、摺動体4の後方側面部4cに成形された係止溝4fが、係止部材3のカギ部3cの位置と一致するまで摺動体4が後退すると、係止部材3のカギ部3cが摺動体4の係止溝4fに嵌ることで、摺動体4が係止される(図5参照)。この時点では芯24は繰り出されていない。この状態からさらに押圧力が加わった場合、摺動体4は後退せずに芯24は芯保持部材5を滑って後退するが、芯24と芯24を把持しているチャックユニットの後退は、部分鍔付筒体7の段部7cと筒体13の段部13fとが当接することで制限され、押圧動作が過剰になることを防止している。
【0019】
次に芯24を紙面25へ押し付ける動作を終了し、押圧力を解除すると、摺動体4は係止部材3に係止された状態で前進しないまま、弾発部材15の弾発力により部分鍔付筒体7が前方へ付勢され、押し部材9の先端9dが摺動体4の段部4aに当接するまでチャックセット全体が前進する(図6参照)。この時、チャックユニットは芯24を把持したまま前進するが、芯保持部材5の芯保持力が、摺動体4が受ける前記係止力と弾発部材12の弾発力の合計よりも小さく設定されているため、芯24は芯保持部材5を滑って前進する。このため、芯保護管6の先端から突出している芯の長さが、チャックユニットが図5の状態から図6の状態になるまでに移動した長さ、すなわち図5のL’に示した長さだけ伸びる。
【0020】
押し部材9の先端9dが摺動体4の段部4aに当接した後も、弾発部材15の弾発力によってチャックユニットはさらに前進しようとし、弾発力は押し部材9を介して摺動体4に伝わる。ここで、係止部材3による摺動体4の係止力は弾発部材15の弾発力よりも小さく設定されているため、摺動体4は押し部材9によって押圧され、係止溝4fが係止部材3のカギ部3cから外れ、弾発部材12による付勢力によって摺動体4が図7に示すように元の位置に戻る。芯保持部材5の芯保持力が、ボールチャック機構の芯前進時把持力に勝っているため、この時に芯保持部材5を内包した摺動体4とともに芯24も前進し、チャックから芯24が引き出され、先端ノックによる芯繰り出しの一連の動作が完了する。
【0021】
続いて、芯タンク18内に貯蔵されている芯の繰り出しについて説明する。芯タンク18の後方に取り付けられたノック部材20を押圧する(以下後端ノック)と、芯タンク18と一体に固定された傾斜段付筒体17の傾斜段17bを通じて部分鍔付筒体7の傾斜段7dに押圧力が伝わる。さらに部分鍔付筒体7の部分鍔7bと筒体13の窓穴13dの前端面が当接しているため、筒体13も前方に向けて力を受ける。前記押圧力が弾発部材14と弾発部材15の付勢力を上回ると、芯タンクユニットとチャックユニットと筒体13とが一体となって前進する。ここで、チャックセットの先端に取り付けられた押し部材9の鍔部9bの前端が、先部材2に固定された係止部材3の後端に当接すると、チャックユニットと筒体13の移動が阻止される。さらに、ノック部材20への押圧力を増加させると、部分鍔付筒体7の傾斜段7dが傾斜段付筒体17の傾斜段17bを乗り越えて側面部17a上を摺動し、芯タンクユニットがさらに前進する。その芯タンクユニットが前進し、傾斜段付筒体17の前端がチャック10の後端に当接すると、弾発部材12が抗しきれずチャック10が前進する。このチャック10が前進することでチャック10の凹部10aとボール11との間、及びボール11と傾斜筒体8の傾斜面8bとの間に隙間ができ、ボールチャック機構の楔効果が働かなくなって、チャック10が拡開する。この時、シャープペンシル本体を、先部材2を下に向けた方向で保持していると、重力によって芯は自由落下し、芯ガイド管16とチャック10を通って、芯の先端が芯保持部材5の貫通孔5a後方まで達する。ここで、ノック部材20の押圧を解除すると、弾発部材14と弾発部材22の付勢力によって、チャックユニットと芯タンクユニットと筒体13が一体となって後退するが、この時チャック10は拡開したままであり、つまり、芯は後退しない。前記筒体13の後端部13cが外軸筒1の段部1cに当接して、チャックユニットと筒体13の後退が阻止されると、弾発部材22の付勢力によって芯タンクユニットのみがさらに後退し、部分鍔付筒体7の傾斜段7dは傾斜段付筒体17の側面部17aから外れる。芯タンクユニットが後退することで、傾斜段付筒体17の前端がチャック10の後端から離れて、チャックユニットは再び楔作用を発揮し、チャック10が芯を把持する。本実施例ではチャックユニットの前進を、押し部材9の鍔部9bの前端と係止部材3の後端との当接で規制したが、例えば、先部材2に新たに段を設けて押し部材9の鍔部9bと当接させるなど、他の部材同士の当接によってチャックユニットの前進を阻止しても良い。
続けて後端ノックを行った場合も、チャックユニットと芯タンクユニットと筒体13は同様の動きをする。つまり、芯を把持したままの状態でチャック10が前進し、そのチャック体10の前進によって、芯が芯保持部材5の摩擦抵抗(芯保持力)に抗して貫通孔5aに押し込まれ、その後、チャック10が拡開する。そして、芯を解放したままチャック10は後退するが、芯は芯保持部材の保持力によってその場に留まり、チャック10が元の位置に戻った後に、チャック10は再び閉じて芯を把持する。このように、後端ノックを繰り返すことにより、芯が前方に繰り出されて芯保護管6から突出し、筆記が可能となる。
尚、芯の先端が芯保護管6から突出していなくても、芯が芯保持部材5に保持された状態であれば、芯保護管6を紙面に押し付けることで、チャックユニットと摺動体4の後退、摺動体4の係止、押し部材9による摺動体4の係止状態の解除といった、一連の芯の繰り出し動作を繰り返し行うことによって、芯が前方に繰り出されて、筆記が可能になる。
【0022】
図8は本発明の第2の実施例の構成を示す縦断面図である。外軸筒101の前方には、先部材102が固定されている。その先部材102の内部には、係止部材103が腕部103bを後方に伸ばした向きで圧入固定される。また、先部材102の内部には摺動体104を前後動自在に配置しており、その摺動体104の内部には芯保持部材105を圧入固定し、先端に芯保護管106を圧入固定している。前記摺動体104の後方には、部分鍔付筒体107が配置されているが、その部分鍔付筒体107の前方には傾斜筒体108が固定されている。その傾斜筒体108の前部には押し部材109が固定されている。また、傾斜筒体108の内部にはチャック110が配置されており、さらに傾斜筒体108の内面とチャック110の前方に形成された半球状の凹部110aとの間には、球状のボール111が配置されており、チャックユニットを構成している。また、チャック110の凹部110aよりさらに前方に形成された段部110bと、摺動体104の後部に形成された段部104aとの間には弾発部材112が配置されており、チャック110が後方に付勢されると共に、摺動体104が前方に付勢されている。前記部分鍔付筒体107の外周と外軸筒101の間には筒体113が配置される。その筒体113の前面と先部材102の後端との間には弾発部材114が張設されており、筒体113を後方に付勢している。また、その筒体113の内段部113aと部分鍔付筒体107の段部107aの間には、弾発部材115が張設されており、部分鍔付筒体107を前方に付勢している。前記チャックユニットの後方には、第1実施例と同様の芯タンクユニットが前後方向摺動自在に内挿入される。以上が本実施例の構成であるが、本実施例では、先部材102の内部に、係止部材103が腕部103bを後方に向けた形で圧入固定される点が、第1実施例と異なっている。
【0023】
さらに各部材について詳述する。
前記先部材102は、内部に貫通孔102aと、段部102b、102c、102dが形成され、段部102bと段部102cの間に内径部102eが、段部102cと段部102dの間に内径部102fが形成されている。また、先部材102の後方には、螺子102gと内径拡径部102hと段部102iが形成されていると共に、前記螺子102gは前記外軸筒101の前方に形成された螺子101bと螺合固定されている。
前記先部材102の段部102dには、係止部材103の円筒状部103aが着脱不能に内嵌圧入されている。図9に示すように、係止部材103の円筒状部103aの後端面から、断面が円弧状の梁の形状となっている腕部103bが伸びている点が第1実施例と異なる点である。その腕部103bの先端では、円筒状部103aの内径よりも内径が小さい部分が成形され、山形状をしたカギ部103cとなっている。円筒状部103aの後端面から腕部103bが伸びる構造を採ることで、円筒状部103aの外径と腕部103bの外径が等しくても、前記係止状態を解除する時に腕部103bが外側に撓むための隙間を、先部材102の内部にアンダーカットの部分を形成せずに確保できる。このことにより係止部材103の形成(成形)が容易になり、さらに、係止部材103の円筒状部103aと腕部103bの接合部に起こる応力集中を軽減することができる。
また、前記先部材102及び係止部材103の内部には、摺動体104を前後動自在に配置している。その摺動体104は、外部に段部104a、前方側面部104b、後方側面部104cを形成し、内部に内側段部104d、貫通孔104eを形成している。さらに、後方側面部104cには係止溝104fが円周状に形成されており、さらに、その後方に後方傾斜部104gが形成されている。前記摺動体104の係止溝104fの外径は、係止部材103のカギ部103cの内径よりも十分小さく、摺動体104の係止溝104fに係止部材103のカギ部103cが嵌っている時は、腕部103の撓みは発生しない。一方、後方側面部104cの外径は、前記係止部材103のカギ部103cの内径よりもわずかに大きいが、後方傾斜部104gの傾斜角度は係止溝104fの傾斜角度に比べて緩やかである。よって、先端ノック時に摺動体104が後方に摺動する際に係止部材103のカギ部103cが摺動体の後方傾斜部104gを通る時の摩擦力は、係止部材103のカギ部103と摺動体104の係止溝104fの嵌合によってもたらされる係止力よりも小さいものとなっている。
その摺動体104の段部104aには弾発部材112の前端が当接し、弾発部材112の弾発力によって摺動体104は前方に付勢されており、先端が前記先部材102の段部102bに当接することで位置決めされる。また、摺動体104の前方側面104bは先部材102の内径部102eよりもわずかに細く形成されていると共に、後方側面104cは先部材102の内径部102fよりもわずかに細く形成されており、摺動体104が先部材102の内部を前後に摺動する際のガイドとなる。
なお、摺動体104の係止溝104fの位置を図9に示した位置よりも前方に設け、第1実施例と同様に通常時は常に摺動体104の後方側面部104cに係止部材103のカギ部103cが触れて、腕部103が撓んで広がっており、摺動体104が前後に移動する際には一定の摩擦力が発生する構造を取ることも可能である。
【0024】
前記チャックユニットは、前述したように、部分鍔付筒体107、傾斜筒体108、押し部材109、チャック110、ボール111から構成される。
部分鍔付筒体107の前方には傾斜筒体108が着脱不能に固定されている。その傾斜筒体108の内側にはチャック110が前後動可能に配置され、傾斜筒体108内部に形成され傾斜面108bと、チャック110の外周面に設けられた半球状の凹部110aとの間には、球状のボール111が介在している。
また、傾斜筒体108の前方には前記押し部材109が着脱不能に固定されているが、傾斜筒体108と押し部材109を一体に成形することも可能である。また、押し部材109の内方にはチャック110を後方に向けて付勢する弾発部材112が配置されている。その弾発部材112により、チャック110を後方に付勢することで傾斜筒体108の傾斜面108bに当接したボール111を介して、チャック110が閉じる方向に作用させ、芯124を把持している。即ち、芯の前進は許容するが、その後退は楔作用によって阻止するボールチャック機構となっている。本実施例では、そのチャック110を2つに分割された同様な形状のチャック片を互いに合い対向させることによって構成している。
前記外軸101の内部には、筒体113が前後摺動可能に配置される。その筒体113の段部113bと先部材102の段部102iとの間には、弾発部材114が張設されており、この弾発力によって筒体113は後方へ付勢され、後端部113cが外軸筒101の段部101cに当接することで位置決めされている。この筒体113の内部には、前記チャックセットの部分鍔付筒体107が前後に摺動可能に配置されており、部分鍔付筒体107の段部107aと筒体113の内段部113aの間に弾発部材115が張設されることで、部分鍔付筒体107が前方に付勢されている。筒体113には窓穴113dが形成されており、その前端113eに部分鍔付筒体107の部分鍔107bの前端が当接することで、部分鍔付筒体107が位置決めされている。また、筒体113の後方には段部113fが、部分鍔付筒体107の後方には段部107cが成形されており、先端ノック時には筒体113の段部113fと部分鍔付筒体107の107cとが当接することで、先端ノックの押し込み過剰を防ぐ。
【0025】
次に本発明の第2実施例における、先端ノック動作について説明する。芯を繰り出すために芯保護管106の先端から突出している芯124の先端を紙面に強く押し付けると、楔効果によりチャック110が強固に閉じて、芯124を把持する。さらに使用者が押圧力を増加させると、弾発部材115が抗しきれずチャックユニットが後退する。このチャックユニットの後退により、チャック110で把持している芯124も見掛け上後退し、芯124を把持する芯保持部材105も後退する。この後退により芯保持部材105を内包する摺動体104も後退することとなる。そして、摺動体104の後方側面部104cに成形された係止溝104fが、係止部材103のカギ部103cの位置と一致するまで摺動体104が後退すると、係止部材103のカギ部103cが摺動体104の係止溝104fに嵌り、摺動体104が係止される(図10)。
次に、芯124を紙面へ押し付ける動作を終了し、押圧力を解除すると、摺動体104は係止部材103に係止された状態で前進しないまま、弾発部材115の弾発力により部分鍔付筒体107が前方へ付勢され、押し部材109の先端109dが摺動体104の段部104aに当接するまでチャックセット全体が前進する。この時、チャックユニットは芯124を把持したまま前進し、芯保持部材105の芯保持力は摺動体104が受ける係止力と弾発部材112の弾発力の合計よりも小さいため、芯124は芯保持部材105を滑って前進する。このため、芯保護管106の先端から突出している芯の長さが図10のL’に示した長さだけ伸びる。
ここで、押し部材109の先端109dが摺動体104の段部104aに当接した後も、チャックユニットは弾発部材115の弾発力によって前進しようとし、摺動体104を前方へ押圧し、係止部材103との係止を解除する。また、弾発部材112による付勢力によって摺動体104が元の位置に戻る際に、摺動体104に内包した芯保持部材105が芯124を把持しているため、芯124も前進してチャック110から引き出され、先端ノックによる芯繰り出しの一連の動作が完了する。
【0026】
図11は本発明の第3の実施例の構成を示す縦断面図である。外軸筒201の前方には、先部材202が固定されている。その先部材202の内部では、ボール226が弾発部材227によって中心軸内側方向へ付勢されている。また、そのボール226と弾発材227が先部材202から脱落しないよう蓋228が先部材202の外周近傍の側面部に固定されている。さらに、先部材202の内部には摺動体204を前後動自在に配置しており、その摺動体204の内部には芯保持部材105を圧入固定し、先端には芯保護管206を圧入固定している。前記摺動体204の後方には、部分鍔付筒体207が配置されているが、その部分鍔付筒体207の前方には傾斜筒体208が固定されている。その傾斜筒体208の前部には押し部材209が固定されており、内部にはチャック210が配置されている。さらに、前記傾斜筒体208の内面とチャック210の前方に形成された半球状の凹部210aとの間には、球状のボール211が配置されており、チャックユニットを構成している。また、チャック210の凹部210aよりさらに前方に形成された段部210bと摺動体204の後部に形成された段部204aの間に弾発部材212が配置されており、チャック210が後方に付勢されると共に、摺動体204が前方に付勢されている。前記部分鍔付筒体207の外周と外軸筒201との間には筒体213が配置される。その筒体213の前面と先部材202の後端との間には弾発部材214が張設されており、筒体213を後方に付勢している。その筒体213の内段部213aと部分鍔付筒体207の段部207aの間には弾発部材215が張設されており、部分鍔付筒体207を前方に付勢している。
また、前記チャックユニットの後方には、第1実施例と同様の芯タンクユニットが前後方向摺動自在に内挿入される。以上が本実施例の構成であるが、本実施例では、先部材202の内部にボール226が配置され、弾発部材227がそのボール226を先部材202の中心軸内側方向へ付勢している点が、第1実施例及び第2実施例と異なっている。
【0027】
さらに各部材について詳述する。
前記先部材202は、内部に貫通孔202aと、段部202b、202c、202dが形成され、段部202bと段部202cの間に内径部202eが、段部202cと段部202dの間に内径部202fが形成されている。また、先部材202の後方には、螺子202gと内径拡径部202hと段部202iが形成され、螺子202gは前記外軸筒201の前方に形成された螺子201bと螺合固定されている。
さらに先部材202の内径部202fには、図12に示すように半径方向に穴202jが設けられ、その穴202jにボール226が回転可能、且つ、先部材202の断面の半径方向に摺動可能に配置される。その先部材202に設けられた穴202jには、内径部202fと交わる位置で、穴縮径部202kが成形されており、この穴縮径部202kの内径はボール226の球直径よりも小さなものとなっている。即ち、ボール226は先部材202の半径方向内側に脱落することがない。また、先部材202の半径方向外側にボール226が脱落することを防止するために、蓋228が着脱不能に固定され、その蓋228とボール226との間に弾発部材227が張設される。
また、前記先部材202の内部には、摺動体204を前後動自在に配置している。摺動体204は、外部に段部204a、前方側面部204b、後方側面部204cを形成し、内部に内側段部204d、貫通孔204eを形成している。さらに、後方側面部204cには係止溝204fが形成される。また、摺動体204の段部204aには弾発部材212の前端が当接し、弾発部材212の弾発力によって摺動体204を前方に付勢する。その結果、摺動体204は先端が前記先部材202の段部202bに当接することで位置決めされる。また、その摺動体204の前方側面204bは先部材202の内径部202eよりもわずかに細く形成されており、後方側面204cは先部材202の内径部202fよりもわずかに細く形成されており、摺動体204が先部材202の内部を前後に摺動する際のガイドとなる。
前記ボール226が弾発部材227の弾発力によって常に摺動体204の後方側面部204cに押し付けられているため、摺動体204が前後に摺動する際には、ボール226と摺動体204及び弾発部材227の間に転がり摩擦力が発生する。よって、先端ノック時に摺動体204が後退し、係止溝204fがボール226の位置に到達すると、弾発部材227の弾発力によってボール226は半径方向内側へ付勢されているため、ボール226が摺動体204の係止溝204fに嵌り、摺動体204が係止された状態になる。その係止状態から摺動体204を解放するためには、ボール226を介して弾発部材227によってもたらされる係止力を上回る係止解除荷重を与える必要がある。
前記係止力は、弾発部材227の弾発力によって変化するため、この第3の実施例の構造を採ると、弾発部材227を交換することで容易に前記の係止力を調節できる。本実施例ではコイル状の弾発部材を用いたが、これに変えてゴム状弾性体を係止力の発生の目的で用いることも可能である。この場合、ゴム状弾性体のゴム硬度を変化させることにより、係止力を容易に調節できる。なお、本実施例では、ボールの配置箇所を3箇所としたが、円筒状の摺動体204に均等に前記転がり摩擦力や前記係止力を加えることが可能であることに配慮すれば、成形及び配置が可能な範囲でボールの配置箇所を増やすこともできる。また、ボール226と弾発部材227との間に発生する転がり摩擦力を軽減させるために、球状の窪みを持つ部材(図示せず)をボール226と弾発部材227の間に配置することも可能である。
また、摺動体204は、その後方側面部204cにボール226が接触して摺動するため、摺動性を有し且つ摩耗しにくい合成樹脂や金属を用いることが望ましい。例えばポリアセタール、ナイロンなどが挙げられる。また、本実施例では摺動体204の係止溝204fの断面形状を円弧状にしたが、ボールが安定して嵌ることができれば、三角形などの異なる断面形状の溝とすることも可能である。
【0028】
前記チャックユニットは、前述したように、部分鍔付筒体207、傾斜筒体208、押し部材209、チャック210、ボール211から構成される。
部分鍔付筒体207の前方には傾斜筒体208が着脱不能に固定されている。その傾斜筒体208の内側にはチャック210が前後動可能に配置され、傾斜筒体208内部に形成され傾斜面208bと、チャック210の外周面に設けられた半球状の凹部210aとの間には、ボール211が介在している。
前記傾斜筒体208の前方には前記押し部材209が着脱不能に固定されているが、傾斜筒体208と押し部材209を一体に成形することも可能である。また、押し部材209の内方にはチャック210を後方に向けて付勢する弾発部材212が配置されている。その弾発部材212により、チャック210を後方に付勢することで傾斜筒体208の傾斜面208bに当接したボール211を介して、チャック210が閉じる方向に作用させ、芯224を把持している。即ち、芯の前進は許容するが、その後退は楔作用によって阻止するボールチャック機構となっている。本実施例では、そのチャック210を2つに分割された同様な形状のチャック片を互いに合い対向させることによって構成している。
前記外軸201の内部には、筒体213が前後摺動可能に配置される。筒体213の段部213bと先部材202の段部202iとの間には、弾発部材214が張設されており、筒体213は後方へ付勢され、後端部213cが外軸筒201の段部201cに当接することで位置決めされている。この筒体213の内部には、前記チャックセットの部分鍔付筒体207が前後に摺動可能に配置されており、部分鍔付筒体207の段部207aと筒体213の内段部213aの間に弾発部材215が張設されることで、部分鍔付筒体207が前方に付勢されている。また、筒体213には窓穴213dが形成されており、その前端213eに部分鍔付筒体207の部分鍔207bの前端が当接することで、部分鍔付筒体207が位置決めされる。また、筒体213の後方には段部213fが、部分鍔付筒体207の後方には段部207cが成形されており、先端ノック時には筒体213の段部213fと部分鍔付筒体207の207cとが当接することで、先端ノックの押し込み過剰を防止している。
【0029】
次に本発明の第3実施例における先端ノック動作について説明する。芯を繰り出すために芯保護管206の先端から突出している芯224の先端を紙面に強く押し付けると、楔効果によりチャック210が強固に閉じて、芯224を把持する。さらに使用者が押圧力を増加させると、弾発部材215が抗しきれずチャックユニットが後退する。このチャックユニットの後退により、チャック210で把持している芯224も見掛け上後退し、芯224を把持する芯保持部材205も後退する。この後退により芯保持部材205を内包する摺動体204も後退することとなる。そして、摺動体204の後方側面部204cに成形された係止溝204fが、先部材202に取り付けられたボール226の位置と一致するまで摺動体204が後退すると、弾発部材227によってボール226が先部材202の半径方向内側へ向かって付勢されているため、ボール226が摺動体204の係止溝204fに嵌り、摺動体が係止された状態になる(図13)。
次に、芯224を紙面へ押し付ける動作を終了し、押圧力を解除すると、摺動体204は弾発部材227の弾発力によって付勢されたボール226に係止され前進しない状態で、弾発部材215の弾発力により部分鍔付筒体207が前方へ付勢され、押し部材209の先端209dが摺動体204の段部204aに当接するまでチャックセット全体が前進する。この時、チャックユニットは芯224を把持したまま前進するが、芯保持部材205の芯保持力は摺動体204が受ける係止力と弾発部材212の弾発力の合計よりも小さいため、芯224は芯保持部材205を滑って前進する。このため、芯保護管206の先端から突出している芯の長さが、図13のL’に示した長さだけ伸びる。
また、押し部材209の先端209dが摺動体204の段部204aに当接した後も、チャックユニットは弾発部材215の弾発力によって前進しようとして、弾発力は押し部材209を介して摺動体204に伝わる。ここで、弾発部材227によって付勢されたボール226が摺動体204にもたらす係止力は、弾発部材215の弾発力よりも小さく設定されているため、摺動体204は押し部材209によって押圧され、係止溝204fがボール226による係止から外れ、弾発部材212による付勢力によって摺動体204が元の位置に戻る。この時、摺動体204に内包した芯保持部材205が芯224を把持しているため、芯224も前進してチャック210から引き出され、先端ノックによる芯繰り出しの一連の動作が完了する。
【符号の説明】
【0030】
1 外軸筒
2 先部材
3 係止部材
4 摺動体
5 芯保持部材
6 芯保護管
7 部分鍔付筒体
8 傾斜筒体
9 押し部材
10 チャック
11 ボール
12 弾発部材
13 筒体
14 弾発部材
15 弾発部材
16 芯ガイド管
17 傾斜段付筒体
18 芯タンク
19 消しゴム
20 ノック部材
21 内側鍔付部材
22 弾発部材
23 クリップ
24 芯
25 紙面
226 ボール
227 弾発部材
228 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に、芯の後退を阻止するチャックユニットと、前記芯を保持する摺動体が配置されたシャープペンシルにおいて、前記摺動体の外周上に係止溝を設け、その係止溝と係合する係止部を前記軸筒内に複数設けると共に、それら係止溝と係止部との係合を解除する押圧部を前記チャックユニットに設けたシャープペンシル。
【請求項2】
前記係止部を梁状に延設された腕部の先端近傍に形成すると共に、前記係止部の長手方向における断面形状を略三角形状とした請求項1記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記係止部を弾発部材によって付勢された球体とした請求項1記載のシャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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