説明

シューズ、特にスポーツシューズ

本発明は、シューズ上側部分と、該シューズ上側部分に結合されたアウトソールと、踵シェルとを有しているシューズ(1)、特にスポーツシューズであって、踵シェル(4)が、シューズ着用者の踵を、少なくとも部分的に取り囲んでいる形式のものに関する。シューズを単純かつ廉価な手段で個人の要望に適合させることができるように、本発明では、踵シェル(4)が、シューズ上側部分(2)に交換可能に配置されていて、踵シェル(4)が、表面領域(5)内で少なくとも1つの突出部(6,7)または切欠を有していて、該突出部(6,7)または切欠が、シューズ上側部分(2)の切欠(8,9)または突出部と、踵シェル(4)のシューズ上側部分(2)内での形状接続的な固定のために協働しており、踵シェル(4)が、インサートソール(10)に結合されていて、踵シェル(4)とインサートソール(10)とが一体に形成されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズ上側部分と、該シューズ上側部分に結合されたアウトソールと、踵シェルとを有しているシューズ、特にスポーツシューズであって、踵シェルが、シューズ着用者の踵を、少なくとも部分的に取り囲んでいる形式のものに関する。
【0002】
このような種類のシューズ、特にスポーツシューズは一般的に公知である。着用者の足がシューズ内で確実な支持を得るために、少なくとも1つの踵シェルが設けられている。この場合、踵シェルは、着用者の足の踵を三次元的に取り囲む、もしくは収容する。踵シェルは、多くの場合シューズ内に、特に接着されて固く固定されている。
【0003】
シューズの使用時に、着用者の足と踵シェルの間との摩擦によって摩耗が生じ、それによってシューズ自体の耐用期間が短くなってしまう。
【0004】
さらに不利なのは、シューズと、特に踵シェルとを個人の視点によって加工成形することは、少なくともコストかからない形式では不可能なことである。オーダーメードされたシューズのような特別な場合を除けば、シューズ着用者は、市販の踵シェルの形に甘んじている。このことは、市販の踵シェルが敷革を使用する際に不都合である場合、さらに踵シェルの案内シャフトを高くすることが望ましい場合に特に不利である。
【0005】
さらには、特に踵シェルの通気性や安定性に関して、シューズと、特に踵シェルとをシューズ着用者の特別な要望に適合させることは不可能であるか、または高い費用をかけた場合にのみ可能である。多くの場合、踵シェルの硬さもしくは軟らかさに関して、着用者は特別な要望を持っている。
【0006】
ドイツ連邦共和国登録特許第102004014807号明細書から、スキー靴のために、内側シューズを取り付けることが公知である。この内側シューズは、シューズの外側シェル内に交換可能に配置されている。この場合、この内側シューズは、種々異なる領域で外側に向けられた突出部を有している。この突出部が、スキー靴の切欠内に係合する。しかしながらここで開示された原理は、スキー靴の場合のような構造空間が使用できない、たとえばスポーツシューズに構造的に適していない。
【0007】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べた種類のシューズ、特にスポーツシューズを、上記の問題点が克服されるように改良することである。特に、単純かつ廉価な形式でシューズを個人の要望に適合することが可能になる。さらには、摩耗時にも、シューズ自体を継続して使用可能にする解決手段が提供される。この場合、シューズの機能性が制限されないことは重要な必要条件である。これは特にスポーツ、とりわけ競技スポーツでの使用で重要なことである。
【0008】
この課題を解決するために本発明では、踵シェルが、交換可能にシューズ上側部分内に配置されているようにした。この場合、踵シェルは、表面領域に少なくとも1つの突出部または切欠を有している。この突出部または切欠は、シューズ上側部分の切欠または突出部と、踵シェルのシューズ上側部分内での形状接続式、つまり形状による束縛に基づいた固定のために協働する。この場合、踵シェルがインサートソールと結合されていて、踵シェルとインサートソールとは一体に形成されている。
【0009】
踵シェルが、切欠を有していて、該切欠内に、シューズ上側部分の突出部が係合することも同様に可能である。突出部が踵シェルに配置されていて、シューズ上側部分の切欠内に係合するように規定されていると有利である。さらに踵シェルの少なくとも1つの突出部または少なくとも1つの切欠、もしくは踵シェル内の少なくとも1つの突出部または少なくとも1つの切欠が、シューズ上側部分内の切欠もしくは突出部の形状に適合した形状を有していると有利である。別の実施形態では、2つの突出部または切欠が踵シェルの側面領域に配置されている。この場合、2つの突出部もしくは切欠は、シューズ着用者の足の踝の領域に配置されている。
【0010】
シューズ上側部分内で踵シェルを良好にかつ圧力が少ないように固定するためには、シューズの側面の投影面内の各突出部または各切欠が、踵シェルの側面の投影面の面積の少なくとも25%、有利には少なくとも33%を占める面積を有していることによって達成される。
【0011】
踵シェルの少なくとも1つの突出部もしくは少なくとも1つの切欠、もしくは踵シェル内の少なくとも1つの突出部もしくは少なくとも1つの切欠は、縦長または実質的に楕円の形状を有していてよい。これによって、シューズ長手方向に対して交差する水平方向軸線を中心とした、シューズ上側部分に相対的な踵シェルの回転が阻止される。
【0012】
踵シェルの領域、特に踵シェルの側面領域にのみ、少なくとも1つの突出部または少なくとも1つの切欠が配置されていると特に有利である。
【0013】
本発明の別の実施形態では、踵シェルと、場合によってはインサートソールとが、少なくとも1つの別の突出部を有している。この別の突出部は、地面の方向に向かって、シューズ上側部分内の切欠を通過して延在していてよい。
【0014】
シューズ上側部分および/またはアウトソールおよび/または踵シェルが、プラスチック、特に熱可塑性プラスチックの材料から成っていると有利である。この場合、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタン、ポリアミド、ポリウレタン、またはこれらのプラスチックのうち少なくとも2つのプラスチックから成る混合物が考えられる。
【0015】
シューズ上側部分は、本発明の意図において、踵シェル、有利には踵シェルに結合されたインサートソールが取り付けられるシャーシ(枠)であるといえる。シューズ上側部分は、硬い材料からも、軟らかい材料からも形成することができる。シューズ上側部分は、射出成形法で製作されるか、または少なくとも予め形成されていると特に有利である。この場合プラスチックだけでなく従来のシューズ材料(革、織布等)が使用される。
【0016】
本発明により提案された構成では、摩耗時に踵シェルを交換することが簡単な形式で可能であり、それによってシューズを継続的に使用することが可能である。これは、特にスポーツシューズのような高価格セグメントでは大きな利点となる。
【0017】
さらに、シューズを個人的に適合させることができる、つまり、特別な要望に適合させた踵シェルをシューズ上側部分に取り付けることができる。このためには、踵シェルだけが適合される必要があり、シューズ自体の変形は必要ない。これによって、従来と比べて極めて廉価にされた形式で、着用者の要望に適合したシューズ、特にスポーツシューズを実現することができる。
【0018】
これは特にシューズ着用者が敷革を必要とする場合に有利である。この場合、シューズ(上側部分)自体が変形する必要なく、敷革の使用のために踵シェルを最適に形成することができる。特に、踵シェルの高さを、使用する敷革によって最適に選択することができる。
【0019】
したがって、シューズの適合形状を着用者の足に合わせて理想的に設計することができる。
【0020】
別の利点は、本発明による解決手段では、材料の選択を自由に行うことができ、それによって所望の材料を使用できることである。この場合、シューズ上側部分の材料と、踵シェルの材料とは、たとえばシューズの所望の安定性や通気性が得られるように個人の希望に適合される。
【0021】
以下に本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。図1は、スポーツシューズの側面図であり、図2は、図1に示したスポーツシューズを踵シェルがない状態でアウトソールと一緒に示した側面図であり、図3は、図2に示したシューズ上側部分の中に取り付けられる踵シェルを、該踵シェルと一体に結合されたインサートソールと一緒に示した側面図であり、図4は、図3に示ししたシューズ上側部分に取り付けようとする、インサートソールなしに形成した踵シェルの側面図であり、図5は、図1のA−Bの線に沿った断面図である。
【0022】
図1は、スポーツシューズ1を側面から見た図である。このスポーツシューズ1は、公知の形式でシューズ上側部分2を有している。このシューズ上側部分2は、表底もしくはアウトソール3と結合している。
【0023】
シューズ上側部分2には、踵シェル(内側シェル)4が、交換可能に取り付けられている。踵シェル4は、取り付けられた状態でシューズ上側部分2の上側を超えて延在している。つまり踵シェル4が、対応するシャフト12を有している。シャフト12の延在長さは、シューズ1の着用者の要望によって、足の最適な案内もしくは姿勢が保証されるように選択されている。
【0024】
図2には、踵シェル4が取り付けられていないシューズ上側部分2が示されていて、図3には、踵シェル4自体が示されている。踵シェル4が、シューズ上側部分2内に取り付けられた状態で、シューズ上側部分2内に固定されて確実に設置されているように、シューズ上側部分2は切欠8,9を有している。この切欠8,9は、シューズ上側部分2の踝領域の両側に配置されている。この切欠8,9もしくは切抜きの形状に応じて、踵シェル4は、その表面領域5(図5参照)の両方の側面領域内に、踵シェル4の基本輪郭から突出させられた突出部6,7を有している。この突出部6,7の形状は、切欠8,9の形状に一致している。
【0025】
図5からは、突出部6,7が、シューズ1の外側で十分に邪魔にならない輪郭が得られる、つまり実質的に平坦な経過が得られるように、切欠8,9内に係合することが判る。突出部6,7は、図1から判るように、突出部6,7の面積が、切欠8,9の面積に一致するように形成されているだけではない。さらには、突出部6,7の高さが、シューズ1の側面領域で十分に同一平面の面を得られるように選択されている。
【0026】
図3からは、踵シェル4が、インサートソール(Einlegesohle)10と結合されていることが判る。本発明の場合、踵シェル4とインサートソール10は1つの部分から成っている。このような構成は、踵シェル4の交換によって、必要に応じてインサートソールも取り替えられる、もしくは個人的な要望に適合させることができるので有利である。
【0027】
図3には破線によって、インサートソール10の下側に、アウトソール部分の形の別の突出部11が配置されていてよいことが示されている。このアウトソール部分は、たとえばインサートソールに一体に射出成形されている。シューズ上側部分2の底領域もしくはアウトソール3には、切欠(図示せず)が配置されていてよい。この切欠内を突出部11が通過し、それによってアウトソールの一部を形成する。突出部11は、対応している切欠に対して精度よく適合して形成されていて、所望の場合には下側からシューズ内に水分が進入することを阻止するためのシール手段を有していてよい。
【0028】
図4には、本発明の択一的な構成による踵シェル4の側面図が示されている。該踵シェル4に配置されたインサートソール10は図示されていない。図3と図4とを比較することで、踵シェル4の延在長さがどれほど大きいか、またインサートソールが、どこから開始しているかが判る。
【0029】
重要なのは、突出部6,7、もしくは対応する切欠8,9の面積がどのように選択されているかである。一方で、シューズ上側部分2内で、シューズ長手方向に対して交差している水平方向軸線を中心とした捻り運動に十分に耐える踵シェル4の確実な支持が保証され、他方では、シューズ1の着用者の踝領域に側方からの圧力を加えないようにするために、以下のように規定されている。
【0030】
突出部6,7もしくは切欠8,9が、非円形、つまり縦長または楕円に形成されている。さらに、図4から判るように、突出部6,7の側面の投影面積Aが、踵シェルの側面の投影面積Aの少なくとも25%を占める。面積Aが、面積Aの少なくとも33%を占めると有利である。突出部6,7もしくは切欠8,9の形状は、突出部6,7もしくは切欠8,9の1つの周囲位置(つまり突出部6,7の下側の領域)で、上記の捻り運動を阻止する先端もしくは突起のような形状が設けられるように選択されていることが判る。
【0031】
たとえば図1から判るように、突出部6,7もしくは切欠8,9は、シューズ1の長手方向で好ましくは踝領域全体にわたって延在している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】スポーツシューズの側面図である。
【図2】図1に示したスポーツシューズを、踵シェルがない状態でアウトソールと一緒に示した側面図である。
【図3】図2に示した、シューズ上側部分の中に取り付けられる踵シェルを、該踵シェルと一体に結合されたインサートソールと一緒に示した側面図である。
【図4】図3に示ししたシューズ上側部分に取り付けようとする、インサートソールなしに形成した踵シェルの側面図である。
【図5】図1の破線A−破線Bの断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 シューズ(スポーツシューズ)
2 シューズ上側部分
3 アウトソール
4 踵シェル
5 表面領域
6 突出部
7 突出部
8 切欠
9 切欠
10 インサートソール
11 突出部
12 シャフト
突出部/切欠の側面の投影面
踵シェルの側面の投影面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズ上側部分(2)と、該シューズ上側部分(2)に結合されたアウトソール(3)と、踵シェル(4)とを有するシューズ、特にスポーツシューズであって、踵シェル(4)が、シューズ着用者の踵を少なくとも部分的に取り囲んでいる形式のものにおいて、踵シェル(4)が、シューズ上側部分(2)内に交換可能に配置されており、踵シェル(4)が、表面領域(5)内で少なくとも1つの突出部(6,7)または切欠を有していて、該突出部(6,7)または切欠が、シューズ上側部分(2)の切欠(8,9)または突出部と、踵シェル(4)のシューズ上側部分(2)内での形状接続的な固定のために協働しており、踵シェル(4)が、インサートソール(10)に結合されていて、踵シェル(4)とインサートソール(10)とが一体に形成されていることを特徴とする、シューズ。
【請求項2】
踵シェル(4)の、または踵シェル(4)内の少なくとも1つの突出部(6,7)または切欠が、シューズ上側部分(2)内の切欠(8,9)または突出部の形状に適合された形状を有している、請求項1記載のシューズ。
【請求項3】
2つの突出部(6,7)または切欠が、踵シェル(4)の側面領域内に配置されている、請求項1または2記載のシューズ。
【請求項4】
2つの突出部(6,7)または切欠が、シューズ着用者の足の踝の領域内に配置されている、請求項3記載のシューズ。
【請求項5】
各突出部(6,7)または各切欠が、シューズ(1)の側面の投影面で面積(A)を有していて、該面積(A)が、踵シェル(4)の側面の投影面の面積(A)の少なくとも25%、有利には少なくとも33%を有している、請求項4記載のシューズ。
【請求項6】
踵シェル(4)の、もしくは踵シェル(4)内の少なくとも1つの突出部(6,7)または少なくとも1つの切欠が、縦長または実質的に楕円の形状を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のシューズ。
【請求項7】
踵シェル(4)の領域内、特に踵シェル(4)の側面領域内のみに、少なくとも1つの突出部(6,7)または少なくとも1つの切欠が配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のシューズ。
【請求項8】
踵シェル(4)と、場合によってはインサートソール(10)とが、少なくとも1つの別の突出部(11)を有していて、該突出部(11)が、地面の方向に向かって、シューズ上側部分(2)内の切欠を通って延びている、請求項1から7までのいずれか1項記載のシューズ。
【請求項9】
シューズ上側部分(2)および/またはアウトソール(3)および/または踵シェル(4)が、プラスチック、特に熱可塑性プラスチックの材料から成る、請求項1から8までのいずれか1項記載のシューズ。
【請求項10】
プラスチックとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタン、ポリアミド、ポリウレタン、またはこれらのプラスチックのうち少なくとも2つのプラスチックからなる混合物が使用されている、請求項9記載のシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−528864(P2009−528864A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557645(P2008−557645)
【出願日】平成19年3月3日(2007.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001836
【国際公開番号】WO2007/101629
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(398049829)プーマ アクチエンゲゼルシャフト ルードルフ ダスレル シュポルト (18)
【氏名又は名称原語表記】Puma Aktiengesellschaft Rudolf Dassler Sport
【住所又は居所原語表記】Wuerzburger Strasse 13, D−91074 Herzogenaurach, BRD
【Fターム(参考)】