説明

シューズのソール

【課題】 シューズの使用中に可動性を制限せずに、足底の過伸展を防ぐソールを提供する。
【解決手段】 シューズのためのソール100であって、ソール100の背面の曲げを可能にし、足底の曲げを阻止する単一方向性曲げ部材150を備える。単一方向性曲げ部材150の幅がソール100の幅の半分未満である。単一方向性曲げ部材150がソール100のフォアフット領域110に配置されていることが好ましい。単一方向性曲げ部材150がソール100の中心線に沿って配置されていることが好ましい。単一方向性曲げ部材150の幅がソール100の縦軸に沿って変動することも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズ、特にサッカーシューズのソールに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツシューズは、特定の動作をサポートすることによるだけでなく、地面との良好な接触を提供することにより、それぞれの専門分野における特定の機能を果たす。スポーツシューズは、怪我を防ぐために、外部の衝撃から足を保護したり、ふさわしくない動作を防いだりしなければならない。
【0003】
サッカーにおいて、競技者がボールと接触するときに、この種の危険が生じる。この接触中、例えば、シュート時、または相手がボールをブロックしたときに、ソール(足底)の方向に足を過伸展させる非常に大きな力が足のインステップに作用することがある。極端な場合には、既に速く走っている競技者が、シュート時に足で地面を蹴ってしまうかもしれない。これによって、このような高速の動作が突然阻止されてしまう。この阻止により足底の過伸展が生じ、これは、痛みを伴う怪我の原因となるであろう。
【0004】
そのような足底の過伸展の虞は、堅いソールにより効果的に避けられるであろう。他方で、これにより、堅いソールは足の弾性的なロールアップ(rolling-up)を妨げるために、サッカーシューズの速い動作ができない状態になってしまう。足のロールアップを可能にすると同時に、足底の過伸展に対して堅いソールを提供するために、従来技術においていくつかの試行が行われてきた。そのような試行は、シューズの他の分野またはグローブについても知られている。
【0005】
特許文献1には、側壁にソールの材料よりも硬い層が設けられた、中足骨の領域に溝を有するサッカーシューズが記載されている(図1から4を参照のこと)。さらに、ソールの長手方向に対して横向きにソールから離れる方向の伸展を提供することによって、フォアフット(forefoot)領域の剛性を改善することも提案されている。
【0006】
同様に、特許文献2には、フォアフット領域に配置された異なる硬度の領域をソールが有しているサッカーシューズが記載されている。重くならないようにするために、ソールに対して横向きの凹部(recess)または溝が設けられている。
【0007】
さらに、特許文献3には、軟質部材と硬質部材がソールの一層内に横向きの溝として交互に配置されているソール構造が開示されている。
【0008】
特許文献4には、中足骨領域に、繋ぐことのできる断片を備えた可撓性ソールが開示されている。しかしながら、この出願は、本出願の課題とは反対の課題、すなわち、例えば、ダンス中に、足の土踏まずの強烈な曲がりをサポートすることに基づくものである。
【0009】
さらに、特許文献5には、ある方向に柔軟性であり、それと異なる方向には剛性であるサポート装置が記載されている。この装置は、スポーツシューズなどの様々なスポーツ用具の物品に組み込むことができる。
【0010】
特許文献6には、指の裏側への過伸展を避けるために、手の甲に部材を有するゴールキーパー用グローブが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】西独国実用新案第1973891号明細書
【特許文献2】独国特許発明第3219652号明細書
【特許文献3】欧州特許第1074194号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/1017265号明細書
【特許文献5】米国特許第6715218号明細書
【特許文献6】独国特許発明第3516545号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
足底の過伸展に対する以前の解決策では、シューズの着用者の可動性が妨げられ、滑らかな動作に対する一般的な生体機械的要件が満たされないので、そのような解決策は満足のいくものとなっていない。さらに、上述した装置の製造は複雑である。
【0013】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、特に、シューズの使用中に可動性を制限せずに、足底の過伸展を防ぐソールを提供することにある。さらに、そのソールは、容易に製造されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1の実施の形態において、単一方向性曲げ部材を備えた、シューズ、特にスポーツシューズ用のソールにより、この課題を解決する。この単一方向性曲げ部材により、ソールの背面曲げ(足裏方向の曲げ)が可能になり、足底曲げ(足のソール方向の曲げ)が妨げられる。単一方向性曲げ部材の幅は、ソールの幅の半分未満である。簡単にするために、単一方向性曲げ部材は、以下において曲げ部材と称する。
【0015】
従来技術における解決策以外に、本発明は、足を過伸展から保護するだけでなく、シューズの使用者に高い可動性も与える。本発明の出願人は、ソールを補強する公知の部材は、ソールの幅の大半を占め、それによって、足の横向きのロールアップを妨げるので、シューズの使用者の可動性を妨げるという問題を認識した。そのような横向きの動作は、例えば、競技者がドリブル中に動作の方向を何度も変えるときに、特に、サッカーなどの横向きの動きを多用するスポーツ(lateral sports)において生じる。方向の変更には、一方の足の内側の縁から外側の縁への横向きのロールアップ、および他方の足の反対の横向きのロールアップが必要である。
【0016】
反対に、ソールの幅の半分未満に亘り延在する「スリムな」曲げ部材により、ソールは曲げ部材よりも剛性が小さいので、足の横向きのロールアップが可能である。
【0017】
この曲げ部材がソールの中心線に沿って配置されることが好ましい。そのような中心配置によって、両側への均一なロールアップが可能になる。それでも、そのようなソールは、足の過伸展を防ぐ要件を満たし、走る方向のロールアップをかなえる。フォアフット領域の曲げ部材の好ましい配置により、足のこの特に敏感な領域が保護される。
【0018】
好ましい実施の形態において、曲げ部材の幅は、ソールの幅の三分の一未満を占める。この幅の狭い実施の形態において、横向きのロールアップは、曲げ部材の幅をさらに減少させることによって、さらに改善される。それにより、曲げ部材の領域においてソールの減少した弾性が、それに対応して制限される。
【0019】
曲げ部材の幅は、ソールの縦軸に沿って変化することが好ましい。曲げ部材の幅をソールに幅に対してこのように調節することによって、均一な横向きのロールアップが可能になる。
【0020】
曲げ部材がソールのつま先領域まで延在することがさらに好ましい。スポーツ中に高い可動性を提供するために、一方では、シューズが高い弾性を有することが望ましい。他方では、柔軟性は、敏感なつま先の足底の過伸展の特別なリスクの原因である。したがって、曲げ部材をつま先領域まで延在させることにより、つま先の保護が改善されると同時に、この領域においてもソールの横向きのロールアップが可能になる。
【0021】
第2の実施の形態において、本発明の課題は、ソールの上向きの曲げを可能にし、足底への曲げを妨げる、単一方向性曲げ部材により解決される。この単一方向性曲げ部材は、ソールの第1の層に配置され、この第1の層から垂直に突出している。この曲げ部材は、足から離れる第1の層の側に配置されることが好ましい。
【0022】
この実施の形態の特別な利点は、ソールのモジュラー組立てを可能にする単一方向性曲げ部材に起因する。従来技術において、複雑な製造を要する補強部材として、ソールの全体層を改変することしか知られていない。これとは反対に、本出願人は、モジュラー組立てを可能にする解決策を探求した。このことは、ソールの第1の層に曲げ部材を配置することにより可能になるが、ここで曲げ部材は、第1の層から垂直に突出している。このようにして、曲げ部材は、ソールの層とは別々に製造でき、その後、ソールの層に取り付けることができる。その曲げ部材は第1の層から垂直に突出しているので、その層自体は、曲げ部材よりも著しく薄くて差し支えない。したがって、ソールを補強部材にするために、ソールの特別な補強は必要なく、またソールは最少の厚さを有する必要もない。このことは、ソールの層がインソールである場合に、特に都合よく、したがって、この層は、曲げ部材よりも著しく薄くすることができる。
【0023】
この実施の形態において、曲げ部材の幅がソールの幅の半分未満しか占めないことも好ましい。これにより、第1の実施の形態に関して上述した同じ利点が得られる。
【0024】
曲げ部材が第1の層の凹部または開口部に配置されることが好ましい。これにより、曲げ部材を第1の層に適切に組み込むことができる。例えば、曲げ部材を別個に製造し、その後、射出成形のための成形型内に配置することができる。次いで、ソールの第1の層を、曲げ部材の周りに射出成形することによって製造する。このようにして、曲げ部材自体が、ソールの第1の層における凹部または開口部のための成形型として機能する。
【0025】
様々な実施の形態において、ソールは、インレーソール、インソールまたは中間ソールであってよい。さらに別の実施の形態において、ソールはアウトソールであり、ここで、曲げ部材は、曲げ部材を保護するために、透明材料によって被覆されていることが好ましい。
【0026】
ソールが第2の層を含み、この第2の層が曲げ部材のための窪み(indentation)を備えることがさらに好ましい。このようにして、曲げ部材はソール中に組み込むことができる。従来技術とは反対に、これには、ソールの第2の層に窪みしか必要ない。これは、ソールの全体層が補強部材として設計されている設計よりも著しく単純である。
【0027】
窪みが、曲げ部材に対応する形状を有することが好ましい。これにより、第1の層が、それに連結された曲げ部材により、第2の層に対して固定され、滑りが避けられる。
【0028】
好ましい実施の形態において、第1の層はインレーソールまたはインソールであり、第2の層はインソールまたは中間ソールである。代わりの実施の形態において、第1の層はインソールまたは中間ソールであり、第2の層はアウトソールである。これらの実施例は、請求項に記載されたソールが多くの異なる様式で実現できることを示している。
【0029】
第2の層がアウトソールである場合、このアウトソールが、そこを通して曲げ部材が見える透明領域を備えることがさらに好ましい。これにより、曲げ部材の機能の光学制御が可能になり、曲げ部材が交換可能である場合に、曲げ部材の選択をチェックすることができる。例えば、異なる色により、交換可能な曲げ部材の異なる性質が割り出され、識別が可能になるであろう。その透明領域により、使用中の特定の曲げ部材を確認することができる。さらに、曲げ部材が、アウトソールの外側に取外し可能に取り付けられる(例えば、クリップシステムを使用して)ことが考えられる。この実施の形態において、シューズを脱ぐ必要なく、外側から曲げ部材を交換することが特に簡単である。
【0030】
さらに別の実施の形態において、曲げ部材は、窪みにより隔てられたブロックを備える。これらの窪みは、曲げ部材の縦軸に対して垂直に延在することが好ましい。曲げ部材は、そこにブロックが取り付けられるプラスチック面をさらに備える。したがって、これらの窪みは、ブロック間のヒンジとして機能し、曲げ部材の曲がりを可能にする。
【0031】
曲げ部材の縦軸の方向における窪み間の距離は、曲げ部材の縦軸に対して垂直なブロックの幅よりも小さい。これにより、曲げ部材の縦軸に垂直な安定性が生じ、さらに、曲げ部材の曲げが、曲げ部材の縦軸に沿った曲げ部材の面に対して垂直に延在する曲げ面に実質的に制限されることになる。
【0032】
さらに別の実施の形態において、複数の窪みと縦軸の間の複数の角度は、90°ではない、および/または互いに異なる。これらの実施の形態において、曲げ部材の曲げは、先に記載した曲げ面から外れ、曲げ面から離れる捻れの原因となる。このことは、特定の動作をサポートするが、制限もするのに都合よい。例えば、ある方向における足の自然なロールアップをサポートでき、それとは違う方向における足の望ましくない歪み(捻挫)を避けることができる。
【0033】
さらに別の実施の形態において、曲げ部材のブロックは、異なる性質、特に、弾性を有する材料から構成される。このことにより、曲げ部材の足底の曲がりが突然遮られることが防がれるが、それどころか、曲がりが遮られる前に、足底の曲がりが最初に加減されることとなる。この曲げプロセスは、材料の性質によって調節することができる。
【0034】
ブロック間の窪みの幅が異なることがさらに好ましい。特に、異なる性質の材料の使用と共に、このことによって、足底の動作中に曲げ部材の減衰を調節する可能性がでてくる。例えば、曲げ部材の1つのブロックが、他のブロックよりも弾性が大きいと、曲げ部材が曲がれる動作範囲と、それが遮られる動作範囲との間の移行がしなやかになる。
【0035】
さらに別の実施の形態は、インレーソールの曲げ部材のための凹部を備えた対応するシューズに関する。このようにして、シューズは特に単純な様式が、曲げ部材を備えることができる。曲げ部材は、インレーソールであるので、容易に交換できる。これにより、異なる曲げ特性を有する曲げ部材の中から選ぶことができる。
【0036】
さらに好ましい実施の形態が、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下において、本発明の実施の形態の態様が、添付の図面に関して、より詳しく説明されている。
【図1】曲げ部材を備えた、シューズのソールのある実施の形態の底面斜視図
【図2】図1の曲げ部材の斜視図
【図3】図1の曲げ部材のさらに別の側面斜視図
【図4】曲げ部材を備えた、シューズのソールのさらに別の実施の形態の底面斜視図
【図5】曲げ部材を有するソールを備えたサッカーシューズの底面図
【図6】曲げ部材を有するソールを備えたシューズのある実施の形態の部分底面図と断面図
【図7】曲げ部材を有するソールを備えたある実施の形態の配置図
【図8】曲げ部材を有するソールのある実施の形態の配置図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下において、シューズ、特にサッカーシューズのソールの実施例に関して、本発明の実施の形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は、サッカーシューズのソールに限られず、シューズの使用中に可動性を制限せずに足底の過伸展(足のソールの方向における曲げ)を防ぐために、他のシューズや他のスポーツシューズのソールに適用できることが理解されよう。
【0039】
図1は、曲げ部材を有する、シューズのソール100のある実施の形態の底面斜視図を示している。この図面において、フォアフット領域110、中足骨領域120および踵領域130を有するサッカーシューズのインソールが確認できる。簡単にするために、インソールを、以下においてソール100として表記する。ソール100のフォアフット領域110において、実質的にソール100の中心線に沿って延在する曲げ部材150が配置されている。この中心線は、ソール100の長手方向に延びており、ソール100の両方の縁から実質的に等しい距離にある。代わりの実施の形態において(図示せず)、曲げ部材は、ソールの他の領域、例えば、中足骨領域120に配置されるか、またはいくつかの領域に亘り、例えば、中足骨領域120とフォアフット領域110に亘り延在する。さらに、曲げ部材150は、ソールの中心線に対して位置を変えてもおよび/または斜めになっても差し支えない。
【0040】
曲げ部材150の全ての地点で、曲げ部材150の幅は、同じ地点でのソール100の幅よりも十分に狭い。図1において、曲げ部材150の幅は、ソール100の幅の半分未満であるのが分かる。さらに別の実施の形態において(図示せず)、曲げ部材150の幅は、ソール100の幅の三分の一未満である。ソール100は曲げ部材150よりも剛性が低いので、このことにより、ソールの横方向における曲げが容易になる。これにより、このソールを有するシューズの使用中に足の側方のロールアップが可能になり、このことによつて、可動性が著しく改善される。
【0041】
図1は、曲げ部材150が、窪み152により隔てられた複数のブロック151を備えているのを示している。窪み152は、実質的に真っ直ぐであり、曲げ部材150の縦軸に対して垂直に延びている。窪み152によって、曲げ部材150およびそれに取り付けられたソール100を、ソール100の背面方向に、すなわち、足の裏に向かって(図1における下方に)曲げることができる。しかしながら、反対方向、すなわち、足底方向への(図1における上方への)曲げは、ブロック151の側壁が、足底方向の曲がり中に接触し、したがって、さらなる曲がりを妨げるので、可能にならない。
【0042】
曲げ部材150の縦軸の方向における窪み152の幅は、図1から分かるように、曲げ部材150の縦軸に対して垂直なブロック151の幅よりも小さく、好ましくは数倍小さい。これにより、曲げ部材150のその縦軸に対して垂直な安定性が得られ、さらに、曲げ部材150の曲げが、曲げ部材150の縦軸に沿った曲げ部材150の面に対して垂直に延びる曲げ面に実質的に制限されることとなる。
【0043】
代わりの実施の形態において(図示せず)、窪み152は、曲げ部材150の縦軸に対して実質的に垂直ではない。さらに、複数の窪み152と曲げ部材150の縦軸との間の角度は、互いに異なっていて差し支えない。これらの実施の形態において、曲げ部材150の曲がりは、先に記載した曲げ面からはずれており、特に、曲げ面を超えた捻れがもたらされる。このことは、サポートだけでなく、特定の動作の制限にとって有利となり得る。さらに別の実施の形態において(図示せず)、曲げ部材の窪みは、底面図または平面図において曲がっている。曲がった窪みにより、捻れ中に切れる虞が減る。
【0044】
さらに別の実施の形態において、曲げ部材150のブロック151は、異なる性質、特に異なる弾性の材料から構成される。曲げ部材の弾性および質量は、例えば、シュートのパワーに影響するであろう。特によく適した材料の例は、ポリアミドPA6である。これにより、ソール100の足底の曲がり中に、曲げ部材150の制御された減速と阻止が可能になる。例えば、曲げ部材150の1つのブロック151が、曲げ部材150が曲げられる動作範囲と、その動きが阻止される動作範囲との間の移行がしなやかになるように、他のブロックよりも弾性が大きくてもよい。
【0045】
図1はさらに、曲げ部材150の幅が、ソール100の縦軸に沿って変動していることを示している。特に、曲げ部材150は、ソールの幅が大きい領域において幅が広く、ソールの幅が狭い領域において幅が狭い。曲げ部材150の幅をこのようにしてソール100の幅に調節することによって、ソールが、曲げ部材150の領域におけるよりも弾性である、曲げ部材150の外側のソール幅部分がほぼ一定のままであるので、均一な側方のロールアップが可能になる。
【0046】
図1はさらに、曲げ部材150がソール100の第1の層から垂直に突出していることを示している。ソール100をソールの第2の層、すなわち、中間ソールたまはアウトソールに接続する場合、第2の層は、曲げ部材150の形状に対応することが好ましい凹部を備える必要がある。
【0047】
様々な実施の形態において(図示せず)、図1に示されたソール100は、インソールであるだけでなく、中間ソールまたはアウトソールである。アウトソールである場合、曲げ部材は、ある実施の形態において、足から離れたアウトソールの側に配置することができる。この場合、曲げ部材は、好ましくは透明であるカバーにより保護される。さらに別の実施の形態において、曲げ部材は、足に向いたアウトソールの側に配置される。この場合、曲げ部材の側に配置されたソール層は、曲げ部材を受け入れるための窪みを備えている。
【0048】
図2は、図1の曲げ部材の斜視図である。ブロック151とブロック151の間の窪み152を備えた曲げ部材150が確認できる。さらに、そこにブロック151が取り付けられているプラスチック面155が確認できる。プラスチック面155は、ブロック151の領域を超えて延在し、図3に関して以下により詳しく説明されるように、ソールに接続するために使用できる。図2はまた、曲げ部材150が、この図に示された初期状態において曲がっていることを示している。代わりの実施の形態において(図示せず)、ブロックは、周囲を取り囲むプラスチック・ストラップにより互いに接続されている。
【0049】
曲げ部材150は、ワンピースに射出成形されている。これは、一成分射出成形または多成分(異なる材料)射出成形を含んでよい。曲げ部材は、窪みが成形型のスライドによりこのように形成できるので、製造による理由で予め湾曲している(湾曲した状態において、窪みは「開いて」いる)。この成形型のスライドは、平行に配置することができ、したがって、一方向に取り出されるであろう。背面の予めの張力により、ソールのロールアップ特性がさらにサポートされ、阻止する許容範囲が最少になる。このことが、図3に関してより詳しく説明される。
【0050】
図3は、図1および図2からの曲げ部材のさらに別の側面斜視図である。ブロック151と窪み152並びにプラスチック面155を備えた曲げ部材150が図3に確認できる。この図面において、曲げ部材150が初期状態において湾曲しているのがはっきりと見える。
【0051】
図3の側面斜視図において、窪み152が初期状態において実質的に平行であるのがさらに示されている。したがって、曲げ部材150は、成形型を用いた適切な方法によって、単純な様式で製造されるであろう。窪み152は、成形型内部に成形型スライドを配置することによって形成される。その結果、初期状態において湾曲している曲げ部材150が得られる。
【0052】
したがって、曲げ部材150を平らにするために、外力が要求される。逆に、平らな状態において、力が、湾曲状態の方向に作用する。その結果、足のロールアップが、曲げ部材150の縦軸に沿ってサポートされる。
【0053】
図3は、プラスチック面155が、勾配が付けられており、厚さの厚い領域156を備えているのを示している。勾配領域156の厚さは、曲げ部材150に沿って変動し、特に、ミッドフット領域からフォアフット領域に(すなわち、図3の左から右に)増加している。この特性は、以下に説明するように、曲げ部材をソール、例えば、インソールに接続する場合に、適切である。
【0054】
曲げ部材150は、ソール、例えば、インレーソール、インソール、中間ソールまたはアウトソールの凹部に配置し、そのソールに取り付けることができる。ある実施の形態において、ソールは、曲げ部材150自体が凹部のための成形型を形成するように、曲げ部材150の周りに、適切な方法、例えば、射出成形を用いて製造される。
【0055】
ある実施の形態において、プラスチック面155は、ソール100の表面の一部を形成し、ソール100の厚さは、勾配領域156の厚さに相当する。したがって、勾配領域156までのプラスチック面155の領域は、ソール100への接続のための表面として利用でき、したがって、良好な結合を提供する。したがって、勾配領域156の可変の厚さにより、ソール100のそれに対応して可変の厚さがもたらされる。図3に示された曲げ部材150は、勾配領域156の厚さに対応して、フォアフット領域からミッドフット領域に増加する、そこに取り付けられるソールの厚さをもたらす。図4は、曲げ部材を備えた、シューズのソール400のさらなる実施の形態の底面斜視図である。この図は、フォアフット領域410、中足骨領域420および踵領域430を有する、特にサッカーシューズのためのインレーソールを示している。曲げ部材450は、インレーソールのフォアフット領域410に配置されている。曲げ部材450は、一方の側でつま先領域に、他方の側で中足骨領域420に延在している。曲げ部材450は、インレーソール400の横側に向かって湾曲している。代わりの実施の形態において(図示せず)、曲げ部材450は、ソール400の他の領域に、例えば、中足骨領域420に配置されているか、またはいくつかの領域に亘り、例えば、中足骨領域420とフォアフット領域410に亘り延在している。さらに、曲げ部材は、そうではなく湾曲していて差し支えなく、例えば、インレーソールの中心線に沿って配置することができる。
【0056】
曲げ部材450の全ての地点で、曲げ部材450の幅は、同じ地点でのインレーソールの幅よりも実質的に狭い。図1から3に関する曲げ部材150の幅についての説明が、図4の実施の形態においても適用される。
【0057】
図4は、曲げ部材450が、窪み452により隔てられている複数のブロック451,461を備えているのも示している。ここでも、図1から3に関して述べられたブロック151および窪み152についての説明が適用される。しかしながら、図1とは異なる様式で、曲げ部材450の縦軸に沿った窪み452の幅が異なる。言い換えれば、短いブロック461と長いブロック451がある。さらに、ブロック451,461が取り付けられるプラスチック面155が確認できる。
【0058】
曲げ部材450は、曲げ部材がワンピースから製造されるように、多成分射出成形により製造できる。あるいは、曲げ部材は、射出成形後に互いに取り付けられる、別々に成形されたツーピースから製造しても差し支えない。このことは、例えば、上述した特許文献5に記載されている。
【0059】
ブロック451,461の異なるサイズは、異なる性質を有する材料を用いる場合に、曲げ部材450の減衰を調節する役割を果たす。例えば、短いブロック461は、長いブロック461の材料よりも弾性が大きい材料からなっていてよい。このようにして、曲げ部材450が曲げられる動作範囲と、それが阻止される動作範囲との間の移行が減衰される。長いブロック451が、短いブロック461の材料よりも弾性が大きい材料から製造された場合、減衰がさらに増す。
【0060】
異なる材料から製造されたブロックを備えた曲げ部材450は、多成分射出成形により簡単な様式で製造できる。例えば、プラスチック面455およびブロック461が第1の材料からなり、ブロック451が第2の材料からなっていてよい。
【0061】
さらに、減衰部材490が踵領域430に配置されているのが図4に確認できる。
【0062】
本発明のさらに別の実施の形態(図示せず)は、インレーソールの曲げ部材のための凹部を有するインソールを備えた対応するシューズに関する。このようにして、シューズに、曲げ部材を、特に簡単な様式で、備えることができる。インレーソールであるので、曲げ部材を有するインレーソールを容易に交換することができる。必要性と個人の好みに応じて、質量、剛性、サイズなどに関する異なる性質を有する曲げ部材を使用することができる。同様に、問題が生じた曲げ部材を、低コストで交換できる。必要性に応じて、曲げ部材またはインレーソールを交換できるように、曲げ部材をインレーソールに取り外せるように取り付けることも考えられる。
【0063】
図5は、ソール500および曲げ部材550を備えたサッカーシューズの底面図を示している。ソール500の第2の層のフォアフット領域510に配置され、その下に配置された曲げ部材550を見えるようにする透明領域540が確認できる。
【0064】
図6は、ソールおよび曲げ部材を備えたシューズのある実施の形態の概略図を示している。詳しくは、ソール600および曲げ部材650を備えたサッカーシューズの底面図が示されている。図6はさらに、サッカーシューズと曲げ部材650の断面を示している。
【0065】
図7は、サッカーシューズのさらに別の配置図を示している。詳しくは、図7は、曲げ部材750を有するソール700の縦断面を示している。曲げ部材750の厚さが、シューズの縦軸に沿って変動しているのが確認できる。特に、その厚さは、最初に、ミッドフット領域からフォアフット領域に増加し、次いで、再び減少している。
【0066】
最後に、図8は、曲げ部材850を有するソール800のさらに別の実施の形態の配置図、特に、側面図、断面図、および底面図を示している。フォアフット領域に配置され、つま先領域まで延在する曲げ部材850が確認できる。この側面図は、曲げ部材850がソール800から突出し、曲げ部材850の厚さが実質的に一定であることを示している。ソール800の底面図は、曲げ部材850の窪み852が湾曲していることを示している。図8に示された寸法は、単なる例示であり、他の実施の形態において異なってよい。
【0067】
さらに別の実施の形態において、動作の特別な要求に順応できるようにするために、または問題が生じた部材を交換するために、ソール内の曲げ部材は交換できる。この場合、例えば、曲げ部材の異なる材料の使用に関して先に説明したように、異なる曲げ特性を有する曲げ部材の中から選ぶことが可能である。しかしながら、様々な機械的性質、例えば、曲げ部材のブロックの異なるサイズ、ブロック間の窪みの異なる幅、または曲げ部材の変動する厚さによっても、曲げ特性は影響を受け得る。
【0068】
あるいは、または交換に加え、曲げ部材は、例えば、曲げ部材の弾性要素の弾性領域を適合させるネジにより、弾性の適合を可能にするように、設計されてもよい。
【0069】
さらに別の実施の形態において、シューズの使用者の動作が、センサを用いた制御システムにより検出され、このシステムは、それに対して、曲げ部材の弾性を適合させる。例えば、制御システムは、走行動作と、ボールをシュートする動作との間の差を検出し、それに対して、走行中の弾性を増加させ、シュートの際の弾性を減少させても差し支えない。
【符号の説明】
【0070】
100、400、500、600、700、800 ソール
110、410、510 フォアフット領域
120、420 中足骨領域
130、430 踵領域
150、450、550、650、750、850 曲げ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズのためのソールであって、
a. 前記ソールの背面への曲げを可能にし、足底への曲げを阻止する単一方向性曲げ部材、
を備え、
b. 前記単一方向性曲げ部材の幅が前記ソールの幅の半分未満である、
ことを特徴とするソール。
【請求項2】
前記単一方向性曲げ部材が前記ソールのフォアフット領域に配置されていることを特徴とする請求項1記載のソール。
【請求項3】
前記単一方向性曲げ部材が前記ソールの中心線に沿って配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のソール。
【請求項4】
前記単一方向性曲げ部材の幅が前記ソールの幅の三分の一未満であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のソール。
【請求項5】
前記単一方向性曲げ部材の幅が前記ソールの縦軸に沿って変動することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のソール。
【請求項6】
前記単一方向性曲げ部材がつま先領域に延在することを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のソール。
【請求項7】
シューズのためのソールであって、
a. 前記ソールの背面への曲げを可能にし、足底への曲げを阻止する単一方向性曲げ部材、
を備え、
b. 前記単一方向性曲げ部材が、前記ソールの第1の層に配置され、該第1の層から垂直に突出する、
ことを特徴とするソール。
【請求項8】
前記単一方向性曲げ部材が、前記ソールの前記第1の層の、足から離れた側に配置されていることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のソール。
【請求項9】
前記単一方向性曲げ部材が前記ソールの前記第1の層の凹部内に配置されていることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のソール。
【請求項10】
前記ソールの前記第1の層が、インレーソール、インソール、中間ソール、またはアウトソールであることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のソール。
【請求項11】
前記ソールが第2の層を備え、該第2の層が、前記単一方向性曲げ部材の窪みを備えていることを特徴とする請求項7から9いずれか1項記載のソール。
【請求項12】
前記窪みが、前記単一方向性曲げ部材に対応する形状を有することを特徴とする請求項11記載のソール。
【請求項13】
前記ソールの前記第1の層がインレーソールまたはインソールであり、前記ソールの前記第2の層がインソールまたは中間ソールであることを特徴とする請求項11または12記載のソール。
【請求項14】
前記ソールの前記第1の層がインレーソール、インソールまたは中間ソールであり、前記ソールの前記第2の層がアウトソールであることを特徴とする請求項11または12記載のソール。
【請求項15】
前記アウトソールが、前記単一方向性曲げ部材がそこを通して見える透明領域を備えることを特徴とする請求項10または14記載のソール。
【請求項16】
前記単一方向性曲げ部材が交換可能であることを特徴とする請求項1から15いずれか1項記載のソール。
【請求項17】
前記単一方向性曲げ部材が、窪みにより隔てられたブロックから構成されることを特徴とする請求項1から16いずれか1項記載のソール。
【請求項18】
前記単一方向性曲げ部材が、前記ブロックがそこに取り付けられたプラスチック面をさらに備えることを特徴とする請求項17記載のソール。
【請求項19】
前記単一方向性曲げ部材の縦軸の方向における前記窪みの幅が、該単一方向性曲げ部材の縦軸に対して垂直な前記ブロックの幅よりも小さいことを特徴とする請求項17または18記載のソール。
【請求項20】
前記単一方向性曲げ部材の縦軸の方向における前記窪みの幅が互いに異なることを特徴とする請求項17から19いずれか1項記載のソール。
【請求項21】
前記単一方向性曲げ部材の縦軸と前記窪みとの間の角度が、平面図において90°ではない、および/または互いに異なることを特徴とする請求項17から20いずれか1項記載のソール。
【請求項22】
前記単一方向性曲げ部材の窪みが平面図において真っ直ぐであることを特徴とする請求項17から21いずれか1項記載のソール。
【請求項23】
前記単一方向性曲げ部材の窪みが、平面図において湾曲していることを特徴とする請求項17から21いずれか1項記載のソール。
【請求項24】
前記単一方向性曲げ部材が、側面図において初期状態で湾曲していることを特徴とする請求項1から23いずれか1項記載のソール。
【請求項25】
前記単一方向性曲げ部材の前記ブロックが、異なる性質を有する材料からなることを特徴とする請求項17から24いずれか1項記載のソール。
【請求項26】
請求項1から25いずれか1項記載のソールを備えたシューズ。
【請求項27】
前記ソールがインレーソールであることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のソール。
【請求項28】
前記シューズのインソールが、請求項27記載のインレーソールの単一方向性曲げ部材のための窪みを備えていることを特徴とするシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−148880(P2010−148880A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−292125(P2009−292125)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(503052173)アディダス インターナショナル マーケティング ベー ヴェー (23)
【氏名又は名称原語表記】adidas International Marketing B.V.
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】