説明

シュート装置

【課題】粉体が溜まりにくく周囲にも飛散しないシュート装置を提供することを課題とする。
【解決手段】上方から供給される粉体を所定の位置へ落とすシュート装置6であって、通気性部材によって形成される、粉体を所定の位置へ落とす粉体通路11と、粉体通路11を形成する通気性部材を透過した気体が粉体通路11の壁面全体から吹き出すように、粉体通路11を形成する通気性部材へ送気する送気手段18と、を備え、粉体通路11を形成する通気性部材は、粉体通路11の下流側の厚さが上流側の厚さよりも薄いものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の生産ラインにおいては、様々な材料の加工処理が行われる。ここで、粉体のような材料の場合、ベルトコンベアや配管、シュートといった各種の搬送機器によって取り扱われる(例えば、特許文献1や2を参照)。ここで、粉体を滑らせながら落とす場合、シュート内に粉体が溜まってしまう場合がある。粉体がシュート内に溜まると、粉体の搬送が阻害されてしまう虞がある。そこで、シュートを振動させて粉体が溜まるのを防ぐ技術(例えば、特許文献3を参照)や、空気で粉体を浮かせながら滑らせることで粉体が溜まるのを防ぐ技術(例えば、特許文献4〜6を参照)が開発されている。
【特許文献1】特開平10−96657号公報
【特許文献2】特開平7−171484号公報
【特許文献3】特開平10−267552号公報
【特許文献4】特開2000−118655号公報
【特許文献5】特開平8−118092号公報
【特許文献6】特開平7−109018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
粉体を気体で浮かせながら滑らせる場合、吹き出す気体の勢いが弱いと粉体の滞留を防ぐに至らない虞がある。一方、吹き出す気体の勢いが強いと粉体が周囲に飛散する虞がある。本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、粉体が溜まりにくく周囲にも飛散しないシュート装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するため、粉体通路の壁面全体から気体を吹き出させるために粉体通路を通気性部材で形成するものとし、粉体通路の下流側の厚さを上流側の厚さよりも薄くする。
【0005】
詳細には、上方から供給される粉体を所定の位置へ落とすシュート装置であって、通気性部材によって形成される、前記粉体を前記所定の位置へ落とす粉体通路と、前記粉体通路を形成する通気性部材を透過した気体が該粉体通路の壁面全体から吹き出すように、該粉体通路を形成する通気性部材へ送気する送気手段と、を備え、前記粉体通路を形成する通気性部材は、該粉体通路の下流側の厚さが上流側の厚さよりも薄いものとする。
【0006】
上記シュート装置は、粉体が落ちる粉体通路が通気性部材で形成されているため、送気手段が通気性部材へ送気すると、粉体通路の壁面全体から気体が吹き出る。これにより、粉体通路内を通過する粉体は、粉体通路の壁面を滑らかに滑りながら落ちる。
【0007】
ところで、粉体が管路等の通路を流れる場合において、この通路が閉塞するのは、何れかの箇所に粉体が溜まり、この部分に後から流れてくる粉体が溜まることにより通路が最終的に閉塞に至るからである。従って、このような粉体通路において通路の閉塞を予防するには、下流側で粉体が溜まらないようにすることが有意である。ここで、上記シュート装置は、このような箇所において、粉体が壁面に付着するのを防ぐ気体が壁面から十分に吹き出すようにするため、係る部分の通気性部材の厚さを他よりも薄くしている。通気性部材を透過する気体の圧力損失は、通気性部材の厚さに応じて変化する。このため、上記
シュート装置では、壁面から吹き出す気体の吹き出し量を通気性部材の厚さで調整している。これにより、簡単な構成で粉体が溜まりにくく、且つ周囲にも飛散しないようにすることができる。
【0008】
ここで、前記粉体通路を形成する通気性部材の厚さは、該通気性部材の厚さと透過する気体の通気量との相関関係に基づき、該粉体通路内で粉体が溜まらない吹き出し量になるように設定してもよい。通気性部材を透過する気体の圧力損失は、通気性部材の厚さに応じて変化するため、これらの相関関係に基づいて通気性部材の厚さを設定してやることにより、粉体通路内で吹き出す気体の吹き出し量が所望する適正な吹き出し量にすることができる。
【0009】
また、前記粉体通路は、筒状の通気性部材で形成されると共に、該粉体通路の上側が下側よりも大きく開口するように、該粉体通路の内周壁面のうち少なくとも一部に傾斜面が設けられているものであってもよい。粉体通路の上側が下側よりも大きく開口している場合、粉体通路を通過する粉体は下流側に行くに従い、徐々に狭い通路を通過することとなる。この場合、下流側において粉体が最も溜まりやすくなるが、上述したように係る部分で粉体通路の壁面から吹き出す気体の吹き出し量が多くなっていることにより、大きく開いた上側の開口部付近で粉体を周囲に飛散させることなく、且つ、粉体が粉体通路内で溜まらないようにする事ができる。
【0010】
また、前記粉体通路を形成する通気性部材を収容する筐体を更に備え、前記送気手段は、前記粉体通路を形成する通気性部材と前記筐体との間に形成される空間の気圧が該粉体通路内の気圧よりも高くなるように送気するものであってもよい。ここで、筐体は、通気性部材を収容可能なものであれば如何なる形状を有するものであってもよいが、少なくとも送気手段が送気する気体の圧力によって変形しないものであることを要する。筐体と通気性部材との間に形成される空間の気圧が粉体通路内の気圧よりも高くなるようにすることで、通気性部材の厚さに応じた量の気体が粉体通路内で吹き出すようになる。
【発明の効果】
【0011】
粉体が溜まりにくく周囲にも飛散しないシュート装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は、粉体塗料を噴射する塗装ユニット1の構成図である。塗装ユニット1は、図1に示すように、塗装ユニット本体2、空気を圧縮して塗装ユニット本体2へ供給する圧縮空気供給機3A,3B、圧縮空気供給機3Bが塗装ユニット本体2へ供給する空気を除湿する除湿機4、及び塗装ユニット本体2から供給される粉体塗料を噴射する塗装ノズル5で構成されている。なお、圧縮空気供給機3A,3Bは、本塗装ユニット1が設置されている工場等に通常設置されているものであり、工場内に多数設置されている機器類を制御するための制御用空気を供給する設備である。
【0013】
図2は、塗装ユニット本体2の内部構造を示す図である。塗装ユニット本体2は、粉体塗料を受け入れるシュート装置6と、圧縮空気供給機3Aから供給される圧縮空気を駆動源とし、シュート装置6から落ちる粉体塗料を塗装ノズル5に送り出すインジェクタ装置7により構成されている。
【0014】
シュート装置6は、上方に開口する開口部分から投入された粉体塗料をインジェクタ装置7へ滑り落とすシュート部材8、シュート部材8を収容する筒状の筐体9、及びシュート部材8の上端を保護する環状部材10で構成されている。
【0015】
シュート部材8は、筒状の部材を加工したものであり、管内を粉体塗料が滑り落ちる。シュート部材8は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のプラスチック粉末を焼結した連続多孔質体であり、高耐熱性、耐薬品性に優れる部材である。シュート部材8は、気孔径が5〜100μmの多孔質体であり、通気性を有している。シュート部材8は、上下方向に延びる貫通された孔により、粉体塗料が通過する粉体通路11を形成している。粉体通路11を形成するシュート部材8の内壁は、鉛直に形成されていることにより筒の内面状の壁面を形成する第一内壁面12、及び鉛直方向に対して傾くことにより円錐の内面状の傾斜壁面を形成する第二内壁面13で形成されている。シュート部材8の内壁がこのように形成されていることにより、粉体通路11は、上側が広く開口し、下側が上側よりも狭くなるように形成される。また、シュート部材8の外周側面を形成する外壁は、円柱の側面のように形成されているが、下側と上側で径が異なるように形成されており、下側の第一外壁面14が上側の第二外壁面15よりも径が小さくなるように形成されている。シュート部材8の外周側面を形成する外壁がこのように形成されていることにより、下側の第一外壁面14と上側の第二外壁面15との間には、段差面16が形成される。なお、シュート部材8は、第一外壁面14の裏側に第一内壁面12が位置し、第二外壁面15の裏側に第二内壁面13が位置するように形成されている。
【0016】
筐体9は、筒状の部材であり、シュート部材8を収容する。筐体9は、シュート部材8を収容した状態において、シュート部材8の第二外壁面15が筐体9の内壁面と当接することにより、シュート部材8を定位置に固定する。筐体9は、シュート部材8を収容した状態において、筐体9の内壁面と第一外壁面14とが離間していることにより、環状の空間であるチャンバー室18を形成する。筐体9には空気ホースを接続するための接続口17が設けられている。チャンバー室18は接続口17と連通しており、接続口17から流入する空気がチャンバー室18内に導入されるように構成されている。ここで、筐体9は、シュート部材8のような通気性を有さない部材で構成されている。従って、接続口17を介してチャンバー室18内に導入される空気は、通気性のシュート部材8を透過し、第一内壁面12や第二内壁面13から粉体通路11内へ吹き出すこととなる。なお、チャンバー室18内に圧縮空気が導入されると、粉体通路11やその周辺よりも気圧が高くなるため、段差面16に加わる気圧により、シュート部材8に上方向の力が加わる。よって、シュート部材8を何ら固定しない場合、チャンバー室18内への圧縮空気の導入によりシュート部材8が筐体9から飛び出す虞があるが、シュート部材8は、筐体9内に収容された状態で環状部材10により上端が固定されている。従って、チャンバー室18内に圧縮空気を導入しても、シュート部材8が飛び出す虞は無い。
【0017】
インジェクタ装置7は、上述したシュート装置6の粉体通路11を通過して落ちてくる粉体塗料を、圧縮空気供給機3から供給される圧縮空気で塗装ノズル5へ送り出す。
【0018】
上記塗装ユニット1は、圧縮空気供給機3A,3Bから圧縮空気を供給し、シュート装置6に粉体塗料を投入することにより、塗装ノズル5による塗料の吹き付けが可能となる。
【0019】
ここで、塗装ユニット1のシュート装置6について詳述する。図3は、シュート部材8を透過する空気の流れを示す図である。シュート装置6のチャンバー室18に圧縮空気が導入されると、チャンバー室18の気圧が粉体通路11の気圧よりも高くなるため、シュート部材8を空気が透過する。ところで、粉体通路11を形成するシュート部材8のうち下側の部分は、上述したように、第一内壁面12と第一外壁面14とにより形成されており、上側の部分は、第二内壁面13と第二外壁面15とにより形成されている。よって、チャンバー室18と粉体通路11とを仕切っているシュート部材8は、下側の厚さが上側の厚さよりも薄くなっている。このため、チャンバー室18の圧縮空気を粉体通路11内へ透過させるシュート部材8は、下側で空気抵抗が小さく、上側で空気抵抗が大きくなる
。従って、チャンバー室18からシュート部材8を透過し、粉体通路11内へ流入する空気は、粉体通路11の下側で多く通過し、上側で通過する量は下側よりも少量になる。この結果、粉体通路11内へ吹き出す空気の勢いは、下側が強く、上側が弱くなる。
【0020】
図4は粉体通路11内の空気の流れを示した図であり、図5はチャンバー室18から粉体通路11内へ吹き出す空気の強さをグラフで表したものである。上記シュート装置6は、図4および図5に示すように、粉体通路11内で最も粉体が詰まりやすい粉体通路11の下側で空気が勢いよく吹き出し、粉体塗料を周囲に飛散させやすい粉体通路11の上側で吹き出す空気の勢いが弱くなっている。これは、インジェクタ装置7に近い粉体通路11の下側では、チャンバー室18と粉体通路11とを仕切るシュート部材8の厚さが薄く、インジェクタ装置8から遠い粉体通路11の上側では、チャンバー室18と粉体通路11とを仕切るシュート部材8の厚さが厚いためである。なお、粉体通路11を構成している第一内壁面12は、高さが約300mmであるため、図5のグラフに示すように、インジェクタ装置7から約300mmの辺りまでは第一内壁面12から吹き出す空気の吹き出し量が概ね一定であり、それよりも上の部分では吹き出し量が急速に弱まっている。なお、図5のグラフでは、インジェクタ装置7から0mmの部分の空気の吹き出し量を100とし、各部分の吹き出し量を示している。インジェクタ装置7から約300mmの辺りまで、吹き出す空気の量が少しずつ弱まっているのは、接続口17がチャンバー室18の下の方に取り付けられているため、チャンバー室18の特に下の方に圧縮空気が多く流れ込むためである。通気性を有する多孔質体は、透過する空気の量が多孔質体の厚さに概ね比例するため、粉体通路11に吹き出させる空気の量を多孔質体の厚さで調整することにより、所望する最適な吹き出し量に調整することが可能である。上記シュート装置6は、多孔質体のこのような特徴に着目したものであり、粉体塗料が内部で溜まりにくく、且つ周囲にも粉体塗料が飛散しない。また、上記シュート装置6によれば、接続口17がチャンバー室18の下の方と連通しているため、塗装をしていない時でも圧縮空気供給機3B、及び除湿機4からの乾燥空気をチャンバー室18へ流すことにより、粉体通路11やインジェクタ装置7を十分に乾燥させると共に、これらをクリーニングすることができる。
【0021】
なお、上記実施形態では、管状の粉体通路11内で粉体を滑り落とすシュート装置6を例に説明したが、本発明は、断面が方形の管路からなる粉体流路を備えたシュート装置や、粉体が斜面を単に滑り落ちる粉体流路を備えたシュート装置として構成することも可能である。また、上記実施形態では、圧縮した空気を乾燥させたものを粉体通路11内に吹き出させているが、このような気体に限定されるものではない。粉体を湿らせない気体であれば如何なるものであってもよく、例えば、水分を含まない状態でボンベ等に充填された窒素ガスや炭酸ガス等を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】塗装ユニットの構成図。
【図2】塗装ユニット本体の内部構造図。
【図3】シュート部材を透過する空気の流れを示す図。
【図4】粉体通路内の空気の流れを示した図。
【図5】チャンバー室から粉体通路内へ吹き出す空気の強さを示したグラフ。
【符号の説明】
【0023】
1 塗装ユニット
6 シュート装置
8 シュート部材
11 粉体通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から供給される粉体を所定の位置へ落とすシュート装置であって、
通気性部材によって形成される、前記粉体を前記所定の位置へ落とす粉体通路と、
前記粉体通路を形成する通気性部材を透過した気体が該粉体通路の壁面全体から吹き出すように、該粉体通路を形成する通気性部材へ送気する送気手段と、を備え、
前記粉体通路を形成する通気性部材は、該粉体通路の下流側の厚さが上流側の厚さよりも薄い、
シュート装置。
【請求項2】
前記粉体通路を形成する通気性部材の厚さは、該通気性部材の厚さと透過する気体の通気量との相関関係に基づき、該粉体通路内で粉体が溜まらない吹き出し量になるように設定される、
請求項1に記載のシュート装置。
【請求項3】
前記粉体通路は、筒状の通気性部材で形成されると共に、該粉体通路の上側が下側よりも大きく開口するように、該粉体通路の内周壁面のうち少なくとも一部に傾斜面が設けられている、
請求項1または2に記載のシュート装置。
【請求項4】
前記粉体通路を形成する通気性部材を収容する筐体を更に備え、
前記送気手段は、前記粉体通路を形成する通気性部材と前記筐体との間に形成される空間の気圧が該粉体通路内の気圧よりも高くなるように送気する、
請求項1から3の何れか一項に記載のシュート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−143686(P2010−143686A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321188(P2008−321188)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】